• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1351256
審判番号 不服2018-429  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-12 
確定日 2019-05-30 
事件の表示 特願2014- 1514「フィルム状接着剤,フィルム状接着剤付きダイシングテープ,半導体装置の製造方法,及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日出願公開,特開2014-187353,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月8日(優先権主張平成25年2月20日)の出願であって,平成29年7月19日付けで拒絶理由通知がされ,同年9月12日に意見書と手続補正書が提出され,同年10月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年4月20日に上申書が提出され,当審において,平成31年2月5日付けで拒絶理由通知がされ,同年3月28日に電話応対がなされ,同年4月2日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成31年4月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
熱可塑性樹脂及び導電性粒子を含み,
ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり,
エポキシ樹脂をさらに含み,
前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,
25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり,
25℃における貯蔵弾性率が2×10^(2)MPa以上である,
半導体ウエハ用のフィルム状接着剤。」

なお,本願発明2-7の概要は以下のとおりである。

本願発明2-6は,本願発明1を減縮した発明である。

本願発明7は,請求項1-4のいずれかに記載のフィルム状接着剤を用いて半導体チップを被着体にダイアタッチする工程を含む半導体装置の製造方法の発明であり,本願発明1の発明特定事項に対応する構成を全て含みカテゴリ表現が異なる発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-276925号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂と,導電性粒子とを含む樹脂組成物で構成される導電性接着フィルムであって,
前記導電性接着フィルムの硬化処理後の破断伸度が2%以上であることを特徴とする導電性接着フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物は,さらに硬化性樹脂を含むものである請求項1に記載の導電性接着フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は,-10?50℃である請求項1または2に記載の導電性接着フィルム。」

「【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の導電性接着フィルムを介して,半導体素子と,支持部材とが接合されていることを特徴とする半導体装置。」

「【0004】
これらの問題を解決する手法として,ポリイミドを用いたフィルム状の接着剤が提案されている(例えば,特許文献1参照)。
このフィルム状の接着剤は,多量の銀粒子を含んでいるため可とう性が不十分であり,作業性に劣っていた。また,ポリイミドを用いたフィルム状の接着剤は,高温で接着する必要があるため,高密度化した半導体素子,リードフレーム等に熱損傷を与える場合があった。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は,導電性に優れ,作業性良好な導電性接着フィルムおよびそれを用いた半導体装置を提供するものである。」

「【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,導電性に優れ,作業性良好な導電性接着フィルムおよびそれを用いた半導体装置を得ることができる。
また,特定のアクリル酸共重合体を用いる場合,特に高温での密着性に優れ,接続信頼性を向上することができる。」

「【0010】
まず,導電性接着フィルムについて説明する。
前記熱可塑性樹脂は,前記導電性接着フィルムに可とう性を付与するものである。また,前記導電性粒子は,導電性を付与するものである。また,前記導電性接着フィルムの硬化処理後の破断伸度が2%以上とすることにより,前記導電性接着フィルムをダイシングフィルムとしても使用することができ,ダイシング性を特に向上することができるものである。
ここで,前記硬化処理後とは,厚さ10?100μmの前記導電性接着フィルムを180℃,1時間処理した後である。」

「【0017】
前記熱可塑性樹脂(特にアクリル系樹脂)のガラス転移温度は,特に限定されないが,-10?50℃が好ましく,特に0?40℃が好ましい。ガラス転移温度が前記下限値未満であると粘着力が強くなり作業性を向上する効果が低下する場合があり,前記上限値を超えると導電性接着フィルムがもろくなりすぎる場合がある。」

「【0028】
前記樹脂組成物は,さらに硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより,熱圧着時には濡れ性を向上することができる。なお,硬化性樹脂としては,後述するような硬化剤としての機能を有するようなものを含んでいても良い。さらに熱圧着後の加熱により,硬化反応が進行し,三次元網目状化して,半導体素子と金属リードフレーム等の支持部材との接着性を向上することができる。
前記硬化性樹脂としては,・・・<途中省略>・・・これらの中でもエポキシ樹脂が特に好ましい。これにより,耐熱性および密着性をより向上することができる。」

「【0032】
さらに,前記エポキシ樹脂は,室温で固形のエポキシ樹脂と,室温で液状のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。これにより,導電性接着フィルムで半導体素子等を接着する際のフロー性(導電性接着フィルムの濡れ拡がり性)を向上することができる。
前記室温で固形のエポキシ樹脂と,液状のエポキシ樹脂との併用割合は,特に限定されないが,固形のエポキシ樹脂/液状のエポキシ樹脂が重量比で9/1?5/5が好ましく,特に8/2?6/4が好ましい。併用割合が前記範囲内であると,特に導電性接着フィルムのフロー性を特に向上することができる。」

「【0048】
(実施例1)
1.樹脂ワニスの調製
アクリル系樹脂としてアクリル酸共重合体A(ナガセケムテックス社製,SG-P3-DR,ガラス転移温度15℃,重量平均分子量850,000,アクリロ二トリル含有量30重量%,グリシジルメタクリレート含有量3.0重量%)11.9重量%と,硬化性樹脂としてエポキシ樹脂A(日本化薬社製,EOCN-1020-80,当量200g/eq)6.0重量%と,シアネート樹脂(旭チバ社製,AroCy L-10)1.4重量%と,導電性粒子としてフレーク状銀粉(DMC2ジャパン社製,SF-86S,平均粒子径3.0μm,最大粒子径30μm以下)30重量%と,球状銀粉A(DMC2ジャパン社製,SF-48,平均粒子径5.0μm,最大粒子径30μm以下)10重量%と,アドマイズド銀粉(福田金属社製,AgXF301H,平均粒子径5.0μm,最大粒子径30μm以下)40重量%と,硬化促進剤としてイミダゾール化合物(四国化成工業社製,1B2PZ)0.1重量%と,カップリング剤としてシラン系カップリング剤(信越化学社製,KBM403E)0.6重量%とをメチルエチルケトンに溶解して,固形分61.1重量%の樹脂ワニスを得た。
【0049】
2.導電性接着フィルムの製造
上述の樹脂ワニスをコンマコーターで支持基材PETフィルム(RL-07(38),厚さ38μm)に塗布し,80℃,8分乾燥して導電性接着フィルムを得た。
【0050】
3.半導体装置の製造
半導体素子(厚さ300μm)のウエハの裏面に,温度130℃,線圧1.0MPa,速度5mm/秒の条件でラミネートした。さらにダイシングテープ(住友ベークライト社製,FSN-40006)を室温でラミネートした後,導電性接着フィルム付きウエハを8.0×10.0mmに切断し,ダイシングテープを剥離して導電性接着フィルム付き半導体チップとした。これを42アロイのリードフレームへの加圧時間を1秒間,温度を200℃,圧着圧力を1.0MPaとして熱圧着した。その後,住友ベークライト社製エポキシ封止材(EME-6300S)により封止し,半導体装置(QFP,大きさ14mm×20mm×2mm)を得た。」

「【0062】
各実施例および比較例で得られた導電性接着フィルムについて,下記の評価を行った。評価内容を評価項目と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1.初期密着性
各実施例および比較例で得られた導電性接着フィルムを150℃でシリコンウエハに貼り付けた後,ダイシング装置(ディスコ製,DAD341)を使用して4mm×4mmのチップサイズにダイシングした。 次に,4mm×4mmの導電性接着フィルム付半導体素子を,圧着温度160℃,圧力10MPa,圧着時間1.0秒でチップマウントし,室温でダイシェア強度を測定し初期密着性を測定した。各符号は,以下の通りである。
◎:ダイシェア強度が2.0MPaを超える。
○:ダイシェア強度が,1.5?2.0MPa以下である。
△:ダイシェア強度が,1.0?1.5MPa未満である。
×:ダイシェア強度が,1.0MPa未満である。」

「【0072】
表1から明らかなように,実施例1?10は体積抵抗値が低く,初期密着性に優れていた。したがって,導電性および低温での接着可能であることが示された。
また,実施例1?3,6,7および9は,密着性に優れており,接続信頼性にも優れていた。
また,実施例1,2,5?7および9は,作業性にも優れていた。
また,実施例1?4および6?10は,耐熱性にも優れていた。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アクリル系樹脂としてアクリル酸共重合体A(ナガセケムテックス社製,SG-P3-DR,ガラス転移温度15℃,重量平均分子量850,000,アクリロ二トリル含有量30重量%,グリシジルメタクリレート含有量3.0重量%)11.9重量%と,硬化性樹脂としてエポキシ樹脂A(日本化薬社製,EOCN-1020-80,当量200g/eq)6.0重量%と,シアネート樹脂(旭チバ社製,AroCy L-10)1.4重量%と,導電性粒子としてフレーク状銀粉(DMC2ジャパン社製,SF-86S,平均粒子径3.0μm,最大粒子径30μm以下)30重量%と,球状銀粉A(DMC2ジャパン社製,SF-48,平均粒子径5.0μm,最大粒子径30μm以下)10重量%と,アドマイズド銀粉(福田金属社製,AgXF301H,平均粒子径5.0μm,最大粒子径30μm以下)40重量%と,硬化促進剤としてイミダゾール化合物(四国化成工業社製,1B2PZ)0.1重量%と,カップリング剤としてシラン系カップリング剤(信越化学社製,KBM403E)0.6重量%とをメチルエチルケトンに溶解して得た固形分61.1重量%の樹脂ワニスを,コンマコーターで支持基材PETフィルム(RL-07(38),厚さ38μm)に塗布し,80℃,8分乾燥して作製した導電性接着フィルムであって,
前記導電性接着フィルムを150℃でシリコンウエハに貼り付けた後,ダイシング装置(ディスコ製,DAD341)を使用して4mm×4mmのチップサイズにダイシングすることで評価する初期密着性が優れたものである導電性接着フィルム。」

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-069586号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0047】
ダイシング・ダイボンドフィルム10において,粘着剤層2における前記部分2aの半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力は,前記他の部分2bの半導体ウェハ貼り付け部分3aとは異なる部分3bに対する粘着力よりも小さくなる様に設計されている。常温(23℃)での粘着力(剥離角度15度,剥離速度300mm/分)に基づいて,前記部分2aの粘着力は,ウェハの固定保持力や形成したチップの回収性などの点より0.5?1.5N/10mmであることが好ましい。粘着力が0.5N/10mm未満であると半導体チップの接着固定が不十分となるため,ダイシングの際にチップ飛びを生じる場合がある。また,粘着力が1.5N/10mmを超えると粘着剤層2はダイボンドフィルム3を過度に接着し過ぎるため,半導体チップのピックアップが困難になる場合がある。一方,前記他の部分2bの粘着力は,0.5?10N/10mm,さらには1?5N/10mmであるのが好ましい。前記部分2aが低い粘着力であっても,前記他の部分2bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え,ウェハ加工の為に必要な保持力を発揮させることができる。」

3.引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2012-142370号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0055】
また,ダイボンドフィルム3,3’は,熱硬化前における25℃での引張貯蔵弾性率が0.01GPa?10GPaであり,好ましくは0.05GPa?5GPa,より好ましくは,0.1GPa?2GPaである。ダイボンドフィルム3,3’の熱硬化前における25℃での引張貯蔵弾性率が0.01GPa以上であると,比較的高い弾性率を有するため,エキスパンド時に応力が伝わりやすくなり,隣り合う半導体チップを良好に破断することができる。また,前記熱硬化前における25℃での引張貯蔵弾性率が10GPa以下であると,貼り合わせ時や巻き取り時に気泡が混入するのを防ぐことができる。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
引用発明における「アクリル系樹脂としてアクリル酸共重合体A(ナガセケムテックス社製,SG-P3-DR,ガラス転移温度15℃,重量平均分子量850,000,アクリロ二トリル含有量30重量%,グリシジルメタクリレート含有量3.0重量%)」,「『導電性粒子としてフレーク状銀粉』,『球状銀粉A』,『アドマイズド銀粉』」,「硬化性樹脂としてエポキシ樹脂A(日本化薬社製,EOCN-1020-80,当量200g/eq)」,「シリコンウエハ」及び「導電性接着フィルム」は,それぞれ,本願発明1における「熱可塑性樹脂」,「導電性粒子」,「エポキシ樹脂」,「半導体ウエハ」及び「フィルム状接着剤」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
「熱可塑性樹脂及び導電性粒子を含み,
エポキシ樹脂をさらに含む,
半導体ウエハ用のフィルム状接着剤。」

<相違点>
(相違点1)本願発明1は,「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり」という構成を備えるのに対し,引用発明では,そのような構成が特定されていない点。

(相違点2)本願発明1は,「前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」という構成を備えるのに対し,引用発明では,そのような構成が特定されていない点。

(相違点3)本願発明1は,「エポキシ樹脂」について,「25℃における貯蔵弾性率が2×10^(2)MPa以上である」という構成を備えるのに対し,引用発明では,そのような構成が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1及び相違点2を併せて検討する。
本願発明1は,「本発明によれば,40℃程度の低温でフィルム状接着剤を半導体ウエハに張り付けできるので,半導体ウエハへの熱影響を防止でき,半導体ウエハの反りを抑制できる。」(本願明細書の【0019】)という課題解決を得るために,「フィルム状接着剤」が備える特性として「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上」であることを特定し,さらに,前記「フィルム状接着剤」が,良好な低温張りつき性を得るため(本願明細書【0038】)に,「25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であ」ることを特定するものと解される。

一方,引用文献1の「また,ポリイミドを用いたフィルム状の接着剤は,高温で接着する必要があるため,高密度化した半導体素子,リードフレーム等に熱損傷を与える場合があった。」(【0004】)との記載から,引用文献1において,「高温」での接着による熱損傷が,解決すべき課題として認識されていることは認められるものの,引用文献1の「ここで,前記硬化処理後とは,厚さ10?100μmの前記導電性接着フィルムを180℃,1時間処理した後である。」(【0010】),「各実施例および比較例で得られた導電性接着フィルムを150℃でシリコンウエハに貼り付けた後,ダイシング装置(ディスコ製,DAD341)を使用して4mm×4mmのチップサイズにダイシングした。」(【0062】),及び,「表1から明らかなように,実施例1?10は体積抵抗値が低く,初期密着性に優れていた。したがって,導電性および低温での接着可能であることが示された。」との記載に照らして,引用文献1においては,「150℃」での「貼りつけ」は,「低温」での接着と扱われているものと解され,したがって,引用文献1において,解決すべき課題として認識されている前記「高温」とは,前記「150℃」よりも相当程度,高い温度であると認められる。
してみれば,引用文献1の記載からは,「導電性接着フィルム」における,前記「150℃」よりも低い「40℃」という温度で貼りつけた際の密着力を,所定の値よりも大きなものとするという動機を見いだすことはできない。

さらに,引用文献1には,「前記エポキシ樹脂は,室温で固形のエポキシ樹脂と,室温で液状のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。」(【0032】)と記載されているものの,好ましい併用割合としては,「固形のエポキシ樹脂/液状のエポキシ樹脂が重量比で9/1?5/5が好ましく,特に8/2?6/4が好ましい。」と規定されており,本願発明1の「25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」という範囲とは重複せず,また,引用文献1において,好ましい併用割合として記載されている前記「固形のエポキシ樹脂/液状のエポキシ樹脂が重量比で9/1?5/5が好ましく,特に8/2?6/4が好ましい。」とする範囲を,「25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90」とする動機を見いだすこともできない。
そして,上記判断は,引用文献2,3の記載を参酌しても左右されるものではない。

したがって,上記相違点3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6も,本願発明1の「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり」及び「前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7について
本願発明7は,請求項1-4のいずれかに記載のフィルム状接着剤を用いて半導体チップを被着体にダイアタッチする工程を含む半導体装置の製造方法の発明であり,本願発明1の「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり」及び「前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,理由1(特許法第36条第6項第1号)として,請求項1,3-7に係る発明には,熱可塑性樹脂のガラス転移温度が-10℃を超えた場合も含みうるから,当該請求項に係る発明は,「半導体ウエハへの熱影響を防止でき,半導体ウエハの反りを抑制できるフィルム状接着剤・・・・を提供すること」との課題を解決するための手段が反映されておらず,発明の詳細な説明に記載されたもとのは認めることができず,さらに,理由3(特許法第29条第2項)として,請求項1,3-7に係る発明は,上記引用文献1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成31年4月2日付けの手続補正で補正された請求項1,3-7は,いずれも,「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり」,「前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」という事項,あるいは,「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上であり,前記密着力は,剥離角度180度,剥離速度300mm/minにて測定されたものであり」,「前記エポキシ樹脂は,25℃で固形のエポキシ樹脂及び25℃で液状のエポキシ樹脂を含み,25℃で固形のエポキシ樹脂の重量/25℃で液状のエポキシ樹脂の重量で表される重量比率が,49/51?10/90であり」に対応する構成を有する記載となっており,前記補正と審判請求書,平成30年4月20日に提出された上申書,及び,平成31年4月2日に提出された意見書における説明によって,原査定の上記理由1は解消した。
さらに,上記のとおり,本願発明1,3-7は,上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第4項第1号について
当審では,請求項1-7に記載された発明は,発明の詳細な説明の記載が明確でないことから,当該記載に基づいて実施することができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成31年4月2日に提出された意見書における説明によって,この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第1号について
当審では,本願の発明の詳細な説明の記載からは,本願の請求項1-7に記載された発明において特定される範囲においてまで,本願の課題が解決されることを,発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識からは理解することができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成31年4月2日に提出された補正において,「ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後,25℃で測定した密着力が4N/10mm以上」,「25℃における貯蔵弾性率が2×10^(2)MPa以上」及び「半導体ウエハ用のフィルム状接着剤」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,請求項1,3-7の記載は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たす。また,本願発明1,3-7は,当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2014-1514(P2014-1514)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 フィルム状接着剤、フィルム状接着剤付きダイシングテープ、半導体装置の製造方法、及び半導体装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ