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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1351297
審判番号 不服2018-10805  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2014- 69563「包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-189502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年3月28日の出願であって、平成29年11月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年3月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年4月25日付けで拒絶査定がされた。
これに対して、平成30年8月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がされたものである。

2.平成30年8月7日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年8月7日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成30年3月20日の手続補正により補正された請求項1)の、
「少なくとも2枚の包装フィルムを熱シールすることによって袋を形成し、上部の少なくとも一部が開封時に内容物を注出する注出口を有する包装袋であって、
左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断するように延びる複数本の開封補助線を有し、
前記開封補助線は、少なくとも1本が、前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、
前記間隔は、0.8mm以上であり、
前記一方の側縁との間に前記間隔を有する前記開封補助線の一端部は、前記一方の側縁に形成された側縁シール部の外側に位置し、
前記開封補助線の互いの間隔は、0.5mm以上2.0mm以下である包装袋。」(以下、この発明を「本願発明」という。)を、
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の、
「少なくとも2枚の包装フィルムを熱シールすることによって袋を形成し、上部の一方の隅部に開封時に内容物を注出する注出口を有する包装袋であって、
左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる開封補助線を有し、
前記開封補助線は、前記一方の側縁に対しては少なくとも1本が前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、前記上縁に対しては前記上縁まで達するように形成されており、
前記間隔は、0.8mm以上であり、
前記一方の側縁との間に前記間隔を有する前記開封補助線の一端部は、前記一方の側縁に形成された側縁シール部の外側に位置し、
前記開封補助線の互いの間隔は、0.5mm以上2.0mm以下であり、
前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、
開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている包装袋。」(以下、この発明を「本願補正発明」という。)とする補正を含むものである。

(2)補正の適否
本件補正は、注出口を設ける位置を、「上部の少なくとも一部」から「上部の一方の隅部に」に限定し、開封補助線を設ける位置を「左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断するように延びる」から「左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる」に限定し、開封補助線について、「少なくとも1本が、前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、」から「前記一方の側縁に対しては少なくとも1本が前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、前記上縁に対しては前記上縁まで達するように形成されており、」に限定し、窪みと開封補助線について「前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている」と限定するものである。そして、本願発明と本願補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。なお、本件補正により、「複数本の開封補助線」が「開封補助線」と補正され、「複数本の」との用語が削除されているが、「前記開封補助線は、前記一方の側縁に対しては少なくとも1本が」及び「前記開封補助線の互いの間隔は、0.5mm以上2.0mm以下であり、」との発明特定事項は依然として特許請求の範囲の請求項1に記載されており、開封補助線は複数本あることを前提としているので、「開封補助線」について「複数本の」との用語の削除は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、新たな技術的事項を導入するするものでもない。

そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献記載の発明及び技術的事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2003-327255公報(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項6】 フィルムで成形されたパウチ本体の側縁の一部を部分的に突き出た形状の注口部とし、
該注口部はパウチ本体内部と連続する中空部と該中空部を隔てて対向しパウチ本体の側縁シール部と連続する一対の注口シール部を有し、
一方の注口シール部から中空部を横切り他方の注口シール部の端部まで延びる易開封加工部が形成された易開封パウチにおいて、
前記易開封加工部の終端はシール部側端から所定距離だけ手前に位置し、シール部側端との間に線無し領域が形成されていることを特徴とする易開封パウチ。
・・・」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば詰め替え容器等に用いられる易開封パウチに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の易開封パウチは、たとえば、図7に示すように、フィルムで成形されたパウチ本体100の側縁の一部を部分的に突き出た形状の注口部101としており、注口部101はパウチ本体100内部と連続する中空部102とこの中空部102を隔てて対向しパウチ本体100の側縁シール部と連続する一対の注口シール部103,104を有している。そして、一方の注口シール部103から中空部102を横切り他方の注口シール部104の端部まで延びる易開封加工部105が形成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記した従来の易開封パウチは、易開封加工部105の切断方向終端側の注口シール部側縁に応力が集中する応力集中形状部106を有している場合に、易開封加工部105の終端が応力集中形状部106に一致していた。そのため、搬送時,使用時等において、注口部101が引っ掛かると、この易開封加工部105が応力集中部106から破断するおそれがあった。
【0004】本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、弱め線の切断方向終端側の破断を防止し得る易開封パウチを提供することにある。」

(ウ)「【0007】また、易開封加工部は、切断方向始端側の注口シール部から終端側の注口シール部の応力集中形状部から離れた位置まで直線的に形成してもよい。また、他の発明は、易開封加工部の終端はシール部側端から所定距離だけ手前に位置し、シール部側端との間に線無し領域が形成されることを特徴とする。
【0008】易開封加工部は全長にわたって連続であってもよいし、破線状に形成されていてもよい。また、易開封加工部はレーザ加工により加工されることが好ましいが、機械的に加工されていてもよい。」

(エ)「【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る易開封パウチを示している。すなわち、この易開封パウチ1は、表裏一対の側壁フィルム2,2で成形されたパウチ本体3の周縁の一部を部分的に突き出た形状の注口部4としている。側壁フィルム2,2は四角形状で、上辺および左右両側辺が上辺シール部31および側辺シール部32にてヒートシールされ、自立袋の場合には底部に底部フィルム33が底部シール部34にてヒートシールされる。上辺シール部31は内容物充填後にシールされる。
【0010】注口部4はパウチ本体3内部と連続する中空部5とこの中空部5を隔てて対向しパウチ本体3の上辺シール部31および側辺シール部32と連続する一対の注口シール部6,7を有し、一方の注口シール部6から中空部5を横切り他方の注口シール部7の端部まで延びる易開封加工部としての弱め線部8が形成されていいる。図示例では、四角形状のパウチ本体3の上辺角部を注口部4としており、中空部5は角部の中心角線方向に舌状に突出している、中空部5を構成するフィルム面には中空部5を膨らませるための凸部51が張り出し成形されている。
【0011】上記注口シール部6,7の弱め線部8が形成される切断予定部分には切欠き61,71が形成されてシール幅が狭くなっており、弱め線部8はこの注口シール部6,7の切欠き61,71間に形成されている。弱め線部8は所定幅にわたって形成される互いに平行の複数本の線条によって構成され、レーザによって加工される。弱め線部8は全長にわたって連続的に形成されている。フィルムは、一般的には、ポリプロピレンやポリエチレン等の軟質樹脂層と、ポリエステル,ナイロン等の硬質樹脂層が積層された積層フィルムの場合が多く、ポリエステル,ナイロンに吸収波長を有するレーザによって、ポリエステル層,ナイロン層に選択的に溝加工をすることができる。弱め線部8の加工方法としては、レーザー加工の他に、刃物、砥石等の機械加工、コロナ放電やプラズマ放電等の放電加工でも可能である。
【0012】いずれの注口シール部6,7の切欠き61,71もほぼ矩形状となっており、底辺と内側辺との隅角部61a,71aが応力が集中しやすい応力集中形状部となっている。そして、弱め線部8の切断方向は、パウチ上辺側からパウチ側辺側に上から下に切断されるもので、パウチ上辺側の注口シール部6の弱め線始端側には、切断開始を容易にするために、不図示のノッチが設けられている。そして、本実施の形態では、上記した弱め線部8の切断方向終端位置を応力集中形状部71aから所定距離離れた位置に配置したもので、弱め線部8は、切断方向始端側の注口シール部6から中空部5を直線的に切断する開口予定線部81と、この開口予定線部81から向きを変えて応力集中形状部71aから離れる逃がし線部82と、を備えている。」

(オ)「【0015】実施の形態2
図3は、本発明の実施の形態2に係る易開封パウチを示している。上記実施の形態1では、弱め線部8の終端部を応力集中形状部71aから応力集中の無い切欠き71の底辺71bに逃がしているが、この実施の形態2では、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、シール部7の側端との間に線無し領域209を形成したものである。この弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール部7に所定長さだけ入り込んでいる。開封操作のみを考慮すると、必ずしも注口シール7部まで入り込んでいなくてもよく、中空部5が切断できれば十分である。・・・」

(カ)「【0020】また、上記各実施の形態では、弱め線部の各線条を連続線としたが、ミシン目状の破線としてもよい。このようにすれば、破断したとしても、目無し部で止まり、破断防止効果が高い。なお、上記図1及び図6に記載の実施の形態については、パウチ本体2の切断方向始端側の上辺側の注口シール部6に切欠き61が無い場合にも適用可能である。
【0021】また、図2乃至図4に実施の形態については、パウチ本体2の上辺側および側辺側の両注口シール部6,7の切欠き61,71が無い場合にも適用可能である。また、本発明は、注口部がパウチ本体の上辺角部に形成されている場合に限らず、注口部がパウチ本体3から上辺中央に設けられている場合にも適用可能である。さらに、上記実施の形態ではスタンディングパウチに適用した場合について説明したが、スタンディングパウチに限定されるものではなく、底部フィルムの無い平面的なパウチ等種々の形態のパウチについても適用することができる。」

(キ)「【0024】・・・請求項6に記載の発明によれば、易開封加工部の終端はシール部側端から所定距離だけ手前に位置し、シール部側端との間に線無し領域が形成される構成としたので、応力集中形状部の位置に制約されることなく、易開封加工部終端の破断を防止できる。」

(ク)「【図2】



(ケ)「【図3】



イ 上記記載事項(オ)の「【0015】実施の形態2
図3は、本発明の実施の形態2に係る易開封パウチを示している。上記実施の形態1では、弱め線部8の終端部を応力集中形状部71aから応力集中の無い切欠き71の底辺71bに逃がしているが、この実施の形態2では、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、シール部7の側端との間に線無し領域209を形成したものである。・・・」の記載を踏まえれば、上記記載事項(オ)及び図3に示される実施の形態2においても、弱め線部の構造を除いて、上記記載事項(エ)及び図2に示される実施の形態1と同様な構造の易開封パウチを有するといえる。

また、上記記載事項(エ)の「・・・【0011】・・・弱め線部8は所定幅にわたって形成される互いに平行の複数本の線条によって構成され、レーザによって加工される。」の記載及び図3の図示内容を踏まえると、上記記載事項(オ)及び図3に示される実施の形態2における弱め線部208も複数本の線条によって構成されるといえる。

また、上記記載事項(エ)の「・・・【0010】注口部4はパウチ本体3内部と連続する中空部5とこの中空部5を隔てて対向しパウチ本体3の上辺シール部31および側辺シール部32と連続する一対の注口シール部6,7を有し、一方の注口シール部6から中空部5を横切り他方の注口シール部7の端部まで延びる易開封加工部としての弱め線部8が形成されていいる。・・・」との記載、図2及び図3から、弱め線部208は、側辺シール部32と連続する注口シール部7から注口部4を横断して上辺シール部31と連続する注口シール部6に向かって斜め方向に延びるといえる。

また、上記記載事項(オ)の「【0015】実施の形態2
図3は、本発明の実施の形態2に係る易開封パウチを示している。上記実施の形態1では、弱め線部8の終端部を応力集中形状部71aから応力集中の無い切欠き71の底辺71bに逃がしているが、この実施の形態2では、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、シール部7の側端との間に線無し領域209を形成したものである。この弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール部7に所定長さだけ入り込んでいる。開封操作のみを考慮すると、必ずしも注口シール7部まで入り込んでいなくてもよく、中空部5が切断できれば十分である。・・・」との記載、及び図3から、弱め線部208は、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、注口シール部7の側端との間に線無し領域209を形成し、弱め線部208は、上辺シール部31と連続する注口シール部6に対しては上辺シール部31と連続する注口シール部6まで達するように形成されており、弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール7部まで入り込んでいないといえる。

さらに、上記記載事項(エ)の「・・・【0011】上記注口シール部6,7の弱め線部8が形成される切断予定部分には切欠き61,71が形成されてシール幅が狭くなっており、弱め線部8はこの注口シール部6,7の切欠き61,71間に形成されている。・・・【0012】・・・そして、弱め線部8の切断方向は、パウチ上辺側からパウチ側辺側に上から下に切断されるもので、パウチ上辺側の注口シール部6の弱め線始端側には、切断開始を容易にするために、不図示のノッチが設けられている。・・・」との記載、図2及び図3の図示内容を踏まえると、実施の形態2においても、上縁に形成された上縁シール部31に切欠き61が設けられ、切欠き61に向かって弱め線部208が延びており、切断開始を容易にするノッチが切欠き61に設けられているといえる。

ウ そうすると、引用文献1には、以下の「引用発明」が記載されている。
「表裏一体の側壁フィルム2,2がヒートシールされて成形された、パウチ本体3の上辺角部を注出部4としている易開封パウチ1であって、
側辺シール部32と連続する注口シール部7から注口部4を横断して上辺シール部31と連続する注口シール部6に向かって斜め方向に延びる左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出部4を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる複数本の弱め線部208を有し、
弱め線部208は、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、注口シール部7の側端との間に線無し領域209を形成し、弱め線部208は、上辺シール部31と連続する注口シール部6に対しては上辺シール部31と連続する注口シール部6まで達するように形成されており、
弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール7部まで入り込んでいない、
上縁に形成された上縁シール部31に切欠き61が設けられ、切欠き61に向かって弱め線部208が延びており、切断開始を容易にするノッチが切欠き61に設けられている、易開封パウチ。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「易開封パウチ1」、「注出部4」、「弱め線部208」、「側辺シール部32と連続する注口シール部7」、「上辺シール部31と連続する注口シール部6」は、その機能及び構造からみて、本願補正発明の「包装袋」、「注出口」、「開封補助線」、「側縁」あるいは「側縁シール部」、「上縁」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「切欠き61」、「切断開始を容易にするノッチ」は、本願補正発明の「凹状の第2の窪み」、「開封の起点となるV字状の切欠」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「表裏一体の側壁フィルム2,2がヒートシールされて成形された、パウチ本体3の上辺角部を注出部4としている易開封パウチ1」は、その機能及び構造からみて、本願補正発明の「少なくとも2枚の包装フィルムを熱シールすることによって袋を形成し、上部の一方の隅部に開封時に内容物を注出する注出口を有する包装袋」に相当する。
また、引用発明の「側辺シール部32と連続する注口シール部7から注口部4を横断して上辺シール部31と連続する注口シール部6に向かって斜め方向に延びる左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出部4を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる複数本の弱め線部208を有し」は、その機能及び構造からみて、本願補正発明の「左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる開封補助線を有し」に相当する。
また、引用発明の「弱め線部208は、弱め線部208の終端をシール部側端から所定距離だけ手前に位置させ、注口シール部7の側端との間に線無し領域209を形成し、弱め線部208は、上辺シール部31と連続する注口シール部6に対しては上辺シール部31と連続する注口シール部6まで達するように形成されており」は、弱め線部208は、注口シール部7の側端との間に線無し領域209を形成しているので注口シール部7の側端の間に間隔を有するものであるから、本願補正発明の「前記開封補助線は、前記一方の側縁に対しては少なくとも1本が前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、前記上縁に対しては前記上縁まで達するように形成されており、」に相当する。
また、引用発明の「弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール7部まで入り込んでいない」は、弱め線部208の終端位置は、パウチ側辺側の注口シール7部に入り込んでいないので、その外側に位置しているといえるから、本願補正発明の「前記一方の側縁との間に前記間隔を有する前記開封補助線の一端部は、前記一方の側縁に形成された側縁シール部の外側に位置し」に相当する。
また、引用発明の「上縁に形成された上縁シール部31に切欠き61が設けられ、切欠き61に向かって弱め線部208が延びており、切断開始を容易にするノッチが切欠き61に設けられている」は、その機能及び構造からみて、本願補正発明の「前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている」に相当する。

よって、本願補正発明と引用発明は、
「少なくとも2枚の包装フィルムを熱シールすることによって袋を形成し、上部の一方の隅部に開封時に内容物を注出する注出口を有する包装袋であって、
左右両側の側縁のうち一方の側縁から前記注出口を横断して上縁に向かって斜め方向に延びる開封補助線を有し、
前記開封補助線は、前記一方の側縁に対しては少なくとも1本が前記一方の側縁との間に間隔を有するように形成されており、前記上縁に対しては前記上縁まで達するように形成されており、
前記一方の側縁との間に前記間隔を有する前記開封補助線の一端部は、前記一方の側縁に形成された側縁シール部の外側に位置し、
前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、
開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている包装袋。」
で一致し、下記の点で相違する。

(相違点1)
開封補助線の少なくとも1本が一方の側縁との間に有する間隔について、本願補正発明では、0.8mm以上であるの対して、引用発明では、特定されていない点。
(相違点2)
開封補助線の互いの間隔は、本願補正発明では、0.5mm以上2.0mm以下であるのに対して、引用発明では、特定されていない点。

(5)判断
ア 相違点1について
引用発明において、注口シール部7の幅は、漏れを防止し、シールを確実にするための幅であり、一般的に、通常数mm以上の寸法とされることが技術常識である。そうすると、引用発明においても 弱め線部208の終端と注口シール部7との間隙は、注口シール部7の幅以上であるから、少なくとも数mm以上、すなわち、0.8mm以上であるから、相違点1は、実質的相違点ではない。

イ 相違点2について
包装袋(パウチ)に設けられる、開封補助線の互いの間隔は、例えば、特開2000-85791号(【0078】及び図1参照)、特開2007-55636号(【0048】、図1、図2、図12a参照)に例示されるように、通常0.7mm?1.0mm程度の範囲である。そうすると、引用発明において、開封補助線(弱め線部208)の互いの間隔として、通常採用される範囲を採用して、0.5mm以上2.0mm以下とする程度のことは、当業者が容易になし得た設計的事項にすぎないし、引用発明において、そのような寸法とすることの阻害要因も見当たらない。

ウ そして、本願補正発明により奏される「本発明の包装袋によれば、開封しやすいように開封補助線が形成されていても、包装袋の流通過程等において不測の開封を抑制することができる。」(本願明細書の段落【0015】)との効果は、当業者が引用発明から予測できる範囲内のものである(引用文献1の【0024】参照)。

エ したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年3月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(本願発明)は、前記2.(1)において記載したとおりのものである。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明が、上記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。

(3)引用文献1記載の発明及び技術的事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1記載の発明及び技術的事項は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている」との要件を限定しないものであり、さらに、注出口を設ける位置、開封補助線を設ける位置、開封補助線について、それぞれの一部の限定をしないものとするものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに「前記上縁の少なくとも一部に形成された上縁シール部に凹状の第2の窪みが設けられ、前記第2の窪みに向かって前記開封補助線が延びており、開封の起点となるV字状の切欠が前記第2の窪みに形成されている」という発明特定事項を含み、注出口を設ける位置、開封補助線を設ける位置、開封補助線について、それぞれ限定をする本願補正発明が、前記2.(4)及び(5)で述べたように、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-07 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2014-69563(P2014-69563)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西堀 宏之西山 智宏  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 竹下 晋司
蓮井 雅之
発明の名称 包装袋  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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