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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H05K
審判 全部申し立て 特174条1項  H05K
審判 全部申し立て 特29条の2  H05K
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1351375
異議申立番号 異議2017-701052  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-09 
確定日 2019-03-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6138324号発明「半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、および製品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6138324号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第6138324号の請求項1、2、及び4ないし7に係る特許を維持する。 特許第6138324号の請求項3についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6138324号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成29年5月12日付けでその特許権の設定登録がされ、平成29年5月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成29年11月9日: 特許異議申立人 山本英生による請求項1?7に対する特許異議の申立て
平成30年2月20日付け:取消理由通知
平成30年4月27日:特許権者による意見書の提出及び訂正請求
平成30年6月26日:特許異議申立人による意見書の提出
平成30年9月7日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成30年11月12日:特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、単に「訂正請求」という。)
なお、平成30年4月27日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
訂正請求は、以下の訂正事項1?11より成るものであり、それによって、特許請求の範囲の請求項1?7に係る各発明を、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明としようとするものである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子に当接させ、」と記載されているのを、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。

(2)訂正事項2-a
特許請求の範囲の請求項1に「溶融前の前記半田片を前記当接位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する案内部、」と記載されているのを、「溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁、」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。

(3)訂正事項2-b
特許請求の範囲の請求項1に「により構成された」と記載されているのを、「により構成され、前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。

(4)訂正事項3-a
特許請求の範囲の請求項2に「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に当接させ、」と記載されているのを、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、」に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。なお、平成30年11月12日付けの訂正請求書における「7 請求の理由」の「(2)訂正事項」の「ウ-a 訂正事項3-a」には、「(請求項2の記載を引用する請求項3?7も同様に訂正する)」との記載がなされているが、訂正事項4に請求項3を削除するとあることから、当該記載は「(請求項2の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する)」の明らかな誤記と認められるところ、そのように扱う。

(5)訂正事項3-b
特許請求の範囲の請求項2に「当接位置規制手段とを備えた」と記載されているのを、「当接位置規制手段とを備え、前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。

(6)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(7)訂正事項5-a
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1、2または3記載の半田付け装置。」と記載されているのを、「請求項1または2記載の半田付け装置。」に訂正する。請求項4の記載を引用する請求項5?7も同様に訂正する。

(8)訂正事項5-b
特許請求の範囲の請求項4に「前記溶融部の前記ノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅は、」と記載されているのを、「前記溶融部の前記ノズルの内径は、」に訂正する。請求項4の記載を引用する請求項5?7も同様に訂正する。

(9)訂正事項6-a
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか1つに記載の半田付け装置を用いて、」と記載されているのを、「請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、」に訂正する。

(10)訂正事項6-b
特許請求の範囲の請求項5に「供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子に当接させ、」と記載されているのを、「供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、」に訂正する。

(11)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融する」と記載されているのを、「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す」に訂正する。

(12)訂正事項8-a
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から4のいずれか1つに記載の半田付け装置を用いて、」と記載されているのを、「請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、」に訂正する。

(13)訂正事項8-b
特許請求の範囲6の請求項に「供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子に当接させ、」と記載されているのを、「供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、」に訂正する。

(14)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、」と記載されているのを、「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、」に訂正する。

(15)訂正事項10-a
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から4のいずれか1つに記載の半田付け装置を用いて、」と記載されているのを、「請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、」に訂正する。

(16)訂正事項10-b
特許請求の範囲の請求項7に「供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子に当接させ、」と記載されているのを、「供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、」に訂正する。

(17)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項7に「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、」と記載されているのを、「当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に係る発明は、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部」を「前記端子に当接させ」ることを特定している。
これに対して、訂正事項1による訂正後の請求項1は、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部」を「前記端子の先端に必ず当接させ」るとの記載により、半田片の端子側の端部が端子に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定している。
請求項1を引用する請求項4?7についても同様に、訂正事項1は、半田片の端子側の端部が端子に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)には、一貫して、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に当接させることが記載されている。
具体的には、「実施例1」に関し、特許明細書の段落【0067】には、「半田片2aは、・・・端部2bが端子Tの先端Tsに当接して当接位置APで停止し、位置が規制される。」と記載され、段落【0075】には、「溶融前の半田片2aは、当接位置APからこれ以上ランドR側へ移動しないように規制されている。」と記載されており、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に当接させることが記載されている。
同様に、「実施例2」ないし「実施例4」に関しても、特許明細書の段落【0083】、【0088】、【0090】、【0095】、【0096】、及び【0098】に鑑みるに、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に当接させることが記載されている。
さらに、上記の段落【0090】に、「ノズル224と端子Tとが左右方向に大きく位置ズレした場合においても、半田片202aの端子T側の端部の一部は端子Tの先端に必ず当接する」との記載がなされていることに照らしても、特許明細書には、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に当接させることが、一貫して記載されているということができる。
したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項1は、請求項1及び当該請求項1を引用する請求項4?7に関し、半田片の端子側の端部が端子に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2-a
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項1には、「当接位置規制手段」に関して、上記のとおり「前記当接位置」なる記載がなされていたが、請求項1のそれよりも前に「当接位置」との記載はないため、平成30年2月20日付けの取消理由通知にて指摘したように、当該請求項1の記載が不明確となっていた。また、訂正前の請求項1には、「当接位置規制手段」に関して、上記のとおり「案内部」なる記載がなされていたが、特許明細書には、「案内部」につき、実施例1?4に対応してそれぞれ段落【0060】、【0079】、【0090】、及び【0096】に一貫していない説明がなされているため、同じく当該取消理由通知にて指摘したように、訂正前の請求項1における「案内部」がノズルのいずれの場所を指すのかが不明確になっていた。
これに対して、訂正事項2-aによる訂正後の請求項1では、上記「当接位置」の代わりに、「溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置」と記載することによって、その意味内容を明瞭にする釈明をし、また、上記「案内部」の代わりに、「前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁」と記載することによって、ノズルのいずれの場所を指すのかを明瞭にする釈明をするとともに、実施例2についての「図7(A)の端面図に示すように、ノズル124は、孔126を案内部124cが狭く、溶融部124bおよび挿入部124aが広い形状に形成されている。」(段落【0079】) との記載に対応させ、もって「当接位置規制手段」の構成について、より具体的な特定を行い、更に限定している。
請求項1を引用する請求項4?7についても同様に、訂正事項2-aは、明瞭でない記載の釈明を行うとともに、「当接位置規制手段」の構成について、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項2-aは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び、同ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
特許明細書の段落【0079】には、「図7(A)の端面図に示すように、ノズル124は、孔126を案内部124cが狭く、溶融部124bおよび挿入部124aが広い形状に形成されている。」と記載され、また段落【0081】には、「案内部123c (当審注:124cの誤記と認められる) の内壁125は、ノズル124内に供給された溶融前の半田片2aの端子T側の端部2bを前記端子Tの先端Tsに当接させる当接位置規制手段として機能する。」と記載されている。これによれば、「図7(A)」の記載も併せて参照すると、特許明細書には、ノズル124の孔126が、「案内部124c」よりノズル先端側にある「溶融部124b」及び「挿入部124a」におけるよりも、「案内部124c」において狭いこと、並びに、その「案内部124c」の「内壁125」は、溶融前の半田片2aを、当該溶融前の半田片2aの端子T側の端部2bが端子Tの先端Tsに当接する位置に所定の姿勢で案内し、かつ案内方向に垂直な方向への半田片2aの移動範囲を規制する当接位置規制手段として機能することが、記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-aは、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項2-aは、請求項1及び当該請求項1を引用する請求項4?7に関し、明瞭でない記載の釈明を行うとともに、「当接位置規制手段」の構成について、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。また、上記イにおいて説示のとおり、当該訂正事項2-aは、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正である。そして、当該訂正事項2-aにより、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項2-aは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2-b
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-bは、訂正前の請求項1を、訂正前の請求項3に記載された事項を用いて減縮し、かつ、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
すなわち、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3に係る特許発明は、「加熱手段」が「前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」ことを特定している。しかしながら、訂正前の請求項3には、「加熱手段」に関して、上記のとおり、「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」なる記載がなされていたところ、平成30年2月20日付けの取消理由通知にて指摘したように、「太く短い」とは何に対して「太く短い」ことを意味するかが不明確であった。
これに対して、訂正事項2-bによる訂正後の請求項1では、「加熱手段」に関して、まず、訂正前の請求項3における上記「前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、」との特定を付加している。そして、訂正前の請求項3における上記「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」との記載の代わりに、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」と記載した特定を請求項1に付加することによって、溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定している。
訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項4?7についても同様に、訂正事項2-bは、訂正前の請求項3における特定を付加しつつ、その訂正前の請求項3に記載されていた溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定するものである。
したがって、訂正事項2-bは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
まず、訂正事項2-bにおける、上記「前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、」との特定は、訂正前の請求項3、すなわち本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項3に記載された事項である。
次に、訂正事項2-bは、上記アにおいて説示のとおり、訂正前の請求項3における上記「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」との記載の代わりに、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」と記載した特定を請求項1に付加しているところ、その特定について検討する。
特許明細書の【0069】?【0071】には、実施例1に関し、次の記載がなされている。
「半田片2aは、溶融すると表面張力により丸まって略球状になろうとするが、溶融部24bのノズル24の内壁25と端子Tの先端に規制されるため真球になれず、図6(B)の端面図に示すように、端子Tの先端Tsに接触している状態で太く短い形状に変形する。この形状は、短い円柱の両端が球面になった形状となっている。
こうして溶融すると、矢印Y1に示すように、ノズル24から半田片2aに熱が伝わり、さらに、矢印Y2に示すように、半田片2aから端子Tに熱が伝わることで、端子Tは以前にも増して急速に加熱される。この加熱中、溶融した半田片2aは端子Tに接触した状態、すなわち端子Tの上に載った状態で半田片供給方向(下方向)へ移動せずに停止している。尚、半田片2aが溶融するのは、217℃以上である。
図6(C)の端面図に示すように、溶融した半田片2aを介して適正温度にまで端子Tが加熱されると、溶融した半田片2aは、ぬれ始め、端子Tの先端Tsから端子Tの側面Twを伝って流れ出す。」
この記載によれば、図6(B)の記載も併せて参照すると、「太く短い形状」とは、「溶融した半田片2aが丸まって略球状になろうとするがノズル24の内壁25と端子Tの先端Tsに規制されるため真球になれないまま端子Tの上に載った状態で半田片2aが供給された方向へ移動せずに停止した状態」のことを指している。また、図6(C)の記載も併せて参照すると、「この停止した状態でノズル24から溶融した半田片2aに伝わる熱(矢印Y1で表示)を当該溶融した半田片2aから端子Tに伝えて(矢印Y2で表示)端子Tを加熱し、この加熱によって端子Tが加熱された後に溶融した半田片2aが流れ出す構成である」ことも、記載されている。
また、特許明細書の段落【0087】、【0088】、【0094】、【0095】、及び【0098】を参照すると、実施例2?4に関しても、溶融した半田片の挙動について、同様の事項が記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-bは、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項2-bは、請求項1及び当該請求項1を引用する請求項4?7について、訂正前の請求項3における特定を付加しつつ、その訂正前の請求項3に記載されていた溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定するものである。また、上記イにおいて説示のとおり、当該訂正事項2-bは、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正である。そして、当該訂正事項2-bにより、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項2-bは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項3-a
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項2に係る発明は、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部」を「前記端子の先端に当接させ」ることを特定している。
これに対して、訂正事項3-aによる訂正後の請求項2は、「前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部」を「前記端子の先端に必ず当接させ」るとの記載により、半田片の端子側の端部が端子の先端に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定している。
請求項2を引用する請求項4?7についても同様に、訂正事項3-aは、半田片の端子側の端部が端子の先端に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項3-aは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記(1)のイにおいて説示のとおり、特許明細書には、一貫して、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に当接させることが記載されている。
したがって、訂正事項3-aは、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項3-aは、請求項2及び当該請求項2を引用する請求項4?7に関し、半田片の端子側の端部が端子の先端に当接することについて、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項3-aは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項3-b
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3-bは、訂正前の請求項2を、訂正前の請求項3に記載された事項を用いて減縮し、かつ、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
すなわち、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3に係る特許発明は、「加熱手段」が「前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」ことを特定している。しかしながら、訂正前の請求項3には、「加熱手段」に関して、上記のとおり、「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」なる記載がなされていたところ、平成30年2月20日付けの取消理由通知にて指摘したように、「太く短い」とは何に対して「太く短い」ことを意味するかが不明確であった。
これに対して、訂正事項3-bによる訂正後の請求項2では、「加熱手段」に関して、まず、訂正前の請求項3における上記「前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、」との特定を付加している。そして、訂正前の請求項3における上記「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」との記載の代わりに、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」と記載した特定を請求項2に付加することによって、溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定している。
訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4?7についても同様に、訂正事項3-bは、訂正前の請求項3における特定を付加しつつ、その訂正前の請求項3に記載されていた溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定するものである。
したがって、訂正事項3-bは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3-bにより請求項2に付加される発明特定事項は、訂正事項2-bにより請求項1に付加される発明特定事項と同一である。
したがって、訂正事項3-bは、上記(3)のイにおいて説示したのと同様の理由により、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項3-bは、請求項2及び当該請求項2を引用する請求項4?7について、訂正前の請求項3における特定を付加しつつ、その訂正前の請求項3に記載されていた溶融した半田片に関する「太く短い形状」に係る意味内容を明瞭にする釈明を行い、それに関連し、溶融した半田片の挙動につき、より具体的な特定を行って、更に限定するものである。また、上記イにおいて説示のとおり、当該訂正事項3-bは、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正である。そして、当該訂正事項3-bにより、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項3-bは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項4
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4は、請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項5-a
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5-aは、訂正前の請求項4が請求項1、2、又は3を引用する請求項であるところ、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、当該訂正事項5-aは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項5-aは、上記アにて説示のとおり、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、当該訂正事項5-aは、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5-aは、上記アにて説示のとおり、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、当該訂正事項5-aは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項5-b
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項4には、「ノズル」に関して、「前記溶融部の前記ノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅」なる記載がなされていたが、平成30年2月20日付けの取消理由通知にて指摘したように、その記載、特に「端面」がどの部分を指しているかが不明確であった。
これに対して、訂正事項5による訂正後の請求項4では、上記「前記溶融部の前記ノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅」との記載の代わりに、「前記溶融部の前記ノズルの内径」と記載することによって、溶融して略球状になるべき半田片がノズルの内壁と当接する筒状の溶融部(ノズルの)に関し、その溶融部の「内径」を意味することを明瞭にする釈明をしている。
請求項4を引用する請求項5?7についても同様に、訂正事項5-bは、明瞭でない記載の釈明を行うものである。
したがって、訂正事項5-bは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
特許明細書には、次の記載がなされている。
「また、溶融部24bは、ノズル24の内壁25に囲まれた空間の中心軸に垂直な断面の最小幅が内径S2であり、・・・」(段落【0048】)
「溶融部24bのノズル24の内壁25は、この内壁25に囲まれた空間の中心軸に垂直な断面の最小幅である内径S2が、当接位置APで溶融し質量変化せずに真球状に変形したと仮定した場合の当該真球状の半田片2aの大円の直径(糸半田溶融球形の直径)より小さい大きさに形成されている。」(段落【0059】)
「溶融部124bのノズル124の内壁125に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅である内径S2は、当接位置APで溶融し質量変更せずに真球状に変形したと仮定した場合の当該真球状の半田片2aの大円の直径より小さく形成されている。」(段落【0080】)
「尚、本願発明と実施形態の対応において、・・・溶融部のノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅は内径S2に対応し・・・」(段落【0099】)
さらに、かかる「内径S2」については、図6(B)、図7(B)、図8(B)、及び図9(B)に記載がなされている。
それらの記載に鑑みれば、溶融部のノズルの内径S2が当接位置APで半田片2aを溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さいことが、特許明細書等には記載されているといえる。
したがって、訂正事項5-bは、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項5-bは、請求項4及び当該請求項4を引用する請求項5?7における「前記溶融部の前記ノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅」なる記載について、溶融して略球状になるべき半田片がノズルの内壁と当接する筒状の溶融部(ノズルの)に関し、その溶融部の「内径」を意味することを明瞭にする釈明を行うものである。また、上記イにおいて説示のとおり、当該訂正事項5-bは、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正である。そして、当該訂正事項5-bにより、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項5-bは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項6-a、8-a、及び10-a
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6-a、8-a、及び10-aは、それぞれ訂正前の請求項5、6、及び7が請求項1から4のいずれか1つを引用する請求項であるところ、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、それら訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項6-a、8-a、及び10-aは、上記アにて説示のとおり、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、それら訂正事項は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6-a、8-a、及び10-aは、上記アにて説示のとおり、引用請求項の数を減少させて、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないものとする訂正であるから、それら訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(10)訂正事項6-b、8-b、及び10-b
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6-b、8-b、及び10-bは、訂正事項1と同内容の訂正事項であるから、上記(1)アにおいて説示したのと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項6-b、8-b、及び10-bは、上記(1)イにおいて説示したのと同様の理由により、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6-b、8-b、及び10-bは、上記(1)ウにおいて説示したのと同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(11)訂正事項7、9、及び11
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7、9、及び11は、それぞれ請求項5、6、及び7における、請求項1から4のいずれか1つに記載の半田付け装置を用いた半田付けに係る方法に関し、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出」す点を発明特定事項として付加することにより、「加熱手段」による半田片の「加熱溶融」について、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。
したがって、訂正事項7、9、及び11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項7、9、及び11は、それぞれ請求項5、6、及び7に対し、訂正事項2-bが請求項1に対して付加する発明特定事項におけるものと同様の、溶融した半田片の挙動に関する発明特定事項を付加するものであるから、訂正事項2-bについて上記(3)のイにおいて説示したのと同様の理由により、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正であって、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項7、9、及び11は、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アにおいて説示のとおり、訂正事項7、9、及び11は、それぞれ請求項5、6、及び7に関し、「加熱手段」による半田片の「加熱溶融」について、より具体的な特定を行い、更に限定するものである。また、上記イにおいて説示のとおり、当該訂正事項7、9、及び11は、特許明細書等の関連する記載に基づく訂正である。そして、当該訂正事項7、9、及び11により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項7、9、及び11は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(12)小括
以上、(1)?(11)にて検討したとおり、訂正事項1?11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項が準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
そして、各訂正請求が一群の請求項ごとにされた訂正請求か否かについて検討すると、訂正事項1?5-bは、特定の請求項の発明特定事項を訂正するものであるが、当該請求項及びその請求項を引用する請求項について訂正を請求するものとなっているため、一群の請求項ごとにされた訂正請求である。また、訂正事項6-a?11については、訂正対象の請求項を引用している他の請求項はない。したがって、訂正事項1?11は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
さらに、本件特許異議申立てでは、全請求項1?7について特許異議の申立てがされているため、特許法第120条の5第9項が読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
以上より、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。

第3 当審の判断
1.取消理由の概要
平成30年4月27日の訂正請求により訂正された請求項1及び2、並びに請求項1又は2を引用する請求項4に係る特許に対して、当審が平成30年9月7日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1及び2、並びに請求項1又は2を引用する請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それら発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ また、請求項1及び2、並びに請求項1又は2を引用する請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であり、それら発明に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものである。
ウ したがって、請求項1、2、及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2.訂正後の請求項1、2、及び4?7に係る発明
上記訂正後の請求項1、2、及び4?7に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、及び「本件発明4」?「本件発明7」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、及び4?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁、
または、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁、
により構成され、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
半田付け装置。

【請求項2】端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内で前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
半田付け装置。

【請求項3】
(削除)

【請求項4】前記ノズルは、前記端子の先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記ノズルの内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記ノズルの内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい
請求項1または2記載の半田付け装置。

【請求項5】請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す
半田付け方法。

【請求項6】請求項1、2、または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記電子部品の端子をプリント基板のランドに半田付けする
プリント基板の製造方法。

【請求項7】請求項1、2、または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記端子と前記接続対象を半田付けする
製品の製造方法。

3.甲第1号証を引用例とする取消理由について
(1)甲第1号証の記載事項及び甲1発明
甲第1号証(特開2009-195938号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審にて付したものである(以下同様)。
ア「【請求項1】
以下の形状の筒状半田鏝であって、
半田鏝の中心軸に筒状の貫通孔を有し、
半田鏝の先端部が円錐台状又は角錐台状を形成し、先端部における貫通孔開口部の径(d)が0.5?3mmであり、
半田鏝の後端部の貫通孔の径(D)が先端部の開口部の径(d)と同じであるか、又は開口部の径(d)以上で且つ9mm以下である、
半田鏝は半田に対して濡れにくいセラミック、ステンレス、チタン又はクロムで形成されている、
ことを特徴とする筒状半田鏝。」
イ「【請求項6】
請求項1?5記載の筒状半田鏝に、前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段を設置し、該先端部の温度を250?600℃になるよう加熱する、
該先端部の開口部を電子部品の端子銅線に差込み、基盤に接触させる、
糸半田を一回の半田付けに必要な長さに切断して、得られた半田片を後端部の貫通孔から投入落下させる、
該先端部の筒内で落下半田片を溶融させ、その溶融の間、筒状半田鏝を該端子銅線を中心に相対運動させることを特徴とする、半田付け電子機器の製造方法。」
ウ「【0006】
この半田鏝によれば、鏝の軸方向に貫通孔があり、半田鏝の両端が開口しているので、この鏝をランドの上に立てて、一回の半田付けに必要な長さに切断した糸半田を鏝の後端から投入すれば、先端まで落下してランドやピンに接する。そして、鏝の先端部で半田を溶融させることにより、ピンやワイヤなどの相手側端子が一定量の半田で接合される。・・・」
エ「【0009】
半田を溶融させるための加熱手段としては、適宜、汎用の加熱手段を使用することができる。好ましい加熱手段としては、前記半田鏝の外周面にコイル状に巻かれたシーズヒーター等を挙げることができる。」
オ「【0016】
また、この製造方法に適切な装置は、
切り刃及び受け刃からなり、少なくともいずれか一方に所定の長さの糸半田を受け入れ可能な半田保持孔が形成され、互いに擦れ合いながら相対的に変位することにより、半田保持孔に挿入された糸半田を切り取るカッターユニットと、
少なくとも先端部が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な内径の貫通孔を有し、両端が開口した半田鏝と、
前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段と、
半田鏝の後端部を開閉するシャッター
を備えることを特徴とする。」
カ「【0029】
半田鏝1の貫通孔2の径(d)は、一回の半田付けに必要な半田の量に応じて適宜定めればよいが、供給半田片の径より大きく、半田付けするピンの径より大きいことが必須である。例えばピンの外径が0.6mmであるとき、糸半田Wの直径を0.8mm、貫通孔2の内径(d)を1.2mm、糸半田Wの切断片(半田片)の長さを1.2mmに設定することで、半田片が貫通孔2内でピンや貫通孔側壁に接触して起立した状態となり、半田片全体が速やかに加熱される。従って、糸半田Wが無鉛半田であった場合でも、半田鏝先端部の下端温度を350℃とすれば、良好に半田付けをすることができる。
【0030】
加熱手段3としては、汎用の加熱手段を適用することができ、半田鏝1と別体のヒータで加熱することができる。具体的には例えばシーズヒータ等を巻くことができる。いずれの場合も半田鏝1を直接加熱して立ち上がりが早く効率のよい加熱手段を適用することが望ましい。更にまた、半田付け対象のランドの予熱は、半田鏝からの輻射熱で行ってもよく、あるいは半田鏝を直接ランドとピンに当接し、伝導熱を利用して行っても良い。
【0031】
図2には、先端部の開口部2の径(d)と後端部の貫通孔4の径(D)が異なる場合の半田鏝1が示されている。半田鏝の後端部の貫通孔4の径(D)は、半田片が容易に落下し、落下途中で半田片が引っかかって溶融したり、半田片内のフラックスが蒸発しないだけの径を持つことが望ましい。具体的には、先端部の開口部2の径(d)と関係するが、径(D)は径(d)の1?5倍の範囲であることが挙げられる。また、先端部に長さ(L)の貫通孔を有しているが、この貫通孔内に半田片が落下し溶融できるように半田鏝筒内のテーパが構築されている。」
キ「【0034】
図3には、半田鏝の先端部の貫通孔の長さ(L)が0.5mm以下であるか、ほとんど長さ(L)がない場合の半田鏝で、先端部の貫通孔内部がテーパ孔となっている半田鏝が示されている。このテーパ孔についても、図2の場合と同様に、落下半田片が途中で引っかかって溶融することがなく、ランドに接地して、そこで溶融できるように半田鏝筒内のテーパが構築されている。」
ク「【0036】
配線基板のランドに金属ピンを挿入し、この配線基板5を治具に載せる。そして、半田付けすべきランドを半田鏝(先端部の開口部2)の真下に位置するように治具を配線基板5とともに移動させる。半田鏝の下端面がランドの直近に位置するところまで、あるいはランドに接触するところまで下げる。・・・」
ケ「【0037】
切り刃8を前進させると図5に示すように、切り刃8と受け刃7との間に剪断力が働いて糸半田Wが所定の長さに切断され、半田片となって保持孔9とともに排出孔13上に移動する。ここで導入孔14に接続されたプッシャー15で半田片を保持孔9から押し出す。半田片は、排出孔13よりシャッターの開口部を通過して半田鏝の貫通孔4内に落下し、ランドに接地する。ランドに達した半田片は、半田鏝の先端部筒内側壁の熱により溶融し、ランドとピンを接合する。・・・」
コ「【0038】
また、該先端部の筒内で落下半田片を溶融させる間、筒状半田鏝をピンを中心に相対運動させることによって、ランドとピンに溶融半田を充分なじませることができる。即ち、図6で示されるように、例えば半田鏝をピンの回りに偏心運動をさせることによって目的を達成させることができる。例えば、図6に要部断面図として示している実施形態では、先ず図6(a)に示すように半田片を半田鏝1の貫通孔内に落下させ、溶融させる。そして、図6(b)及び図6(c)に示すように半田鏝1を一方向(図面左方向)に移動させ、その後反対方向(同右方向)に移動させる。これにより溶融半田がランドの両端まで広がる。更に好ましくは前後方向にも移動させる。そして、半田鏝1を上方に退避させると、図6(d)に示すように半田がランド全体に広がる。いずれもランドに対して半田鏝1が相対移動すればよい。また、図示しない旋回機構によりピン18を中心として図6(e)に示すように半田鏝1を公転あるいは偏心運動をさせてもよい。・・・」
サ「【0040】
以下の実施例は、本発明の理解を補助するためのものであり、これに限定されるものではない。
実施例1:
図2で示した形状で、窒化アルミニウム焼結体から形成される半田鏝を使用した。半田鏝の先端部の径(d)が1.0mm、(L)が5mm、後端部の径(D)が2.5mmであるものを準備した。半田片は径が0.8mmであり、半田長さが1.2mmである無鉛半田を準備した。
【0041】
半田付けの対象部品として、ランド径1.5mmに電子部品の端子銅線径0.6mmのものを準備し、半田付けを行った。半田鏝の貫通孔内に半田片を供給し、半田鏝先端部の下端温度を350℃に保った。半田溶融時に、ピンを中心に半田鏝の偏心運動を行った。そのようにして半田付けを行ったところ、半田片の全部がピンとランドに付着した。これを約30回繰り返したが、半田鏝貫通孔の先端部の内面に半田が付着することなく、半田の詰まりが起きなかった。」

以上の記載事項から、甲第1号証には、次の各発明が記載されていると認められる。

「ピン18と当該ピン18に電気的に接続されるランドとを半田付けする半田付け装置であって、
前記ピン18の少なくとも先端を挿入する筒状の半田鏝1と、
前記半田鏝1の内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段3と、
前記ピン18と前記半田鏝1との近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記半田鏝1内に供給された溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部を前記ピン18の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記ランドに接触させずに前記半田鏝1内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記ピン18の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記半田鏝1の貫通孔2側壁により構成され、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部が前記ピン18の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制するものであり、
前記加熱手段3は、前記ピン18の先端に当接した前記半田片に前記半田鏝1を介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」(以下、「甲1発明1」という。)
ここで、甲1発明1の半田付け装置が、「前記半田鏝1内に供給された溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部を前記ピン18の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記ランドに接触させずに前記半田鏝1内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、前記当接位置規制手段は、前記ピン18の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記半田鏝1の貫通孔2側壁、により構成された」点については、上記カに摘記した例示事項によれば、半田鏝1の貫通孔2側壁の内径が1.2mm、ピン18の外径が0.6mm、溶融前の半田片の直径が0.8mmであることから、貫通孔2側壁のピン18の側面との間隔は0.6mm以下であるところ、当該間隔は溶融前の半田片の直径である0.8mmより短いと認められる点に基づき認定した。また、上記サに摘記した例示事項によれば、半田鏝1の貫通孔2側壁の内径が半田鏝1の先端部において1.0mm、ピン18(電子部品の端子銅線)の外径が0.6mm、溶融前の半田片の直径が0.8mmであることから、貫通孔2側壁のピン18の側面との間隔は半田鏝1の先端部において0.4mm以下であるところ、当該間隔は溶融前の半田片の直径である0.8mmより短いと認められ、この点に基づいても、認定することができる。

「ピン18と当該ピン18に電気的に接続されるランドとを半田付けする半田付け装置であって、
前記ピン18の少なくとも先端を挿入する筒状の半田鏝1と、
前記半田鏝1の内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段3と、
前記ピン18と前記半田鏝1との近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記半田鏝1内に供給された溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部を前記ピン18の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記ランドに接触させずに前記半田鏝1内で前記半田片の前記ピン18側の端部が前記ピン18の先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段3は、前記ピン18の先端に当接した前記半田片に前記半田鏝1を介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」(以下、「甲1発明2」という。)

「甲1発明1又は甲1発明2の半田付け装置において、
前記半田鏝1は、前記ピン18の先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記半田鏝1の内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記半田鏝1の内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい
半田付け装置。」(以下、「甲1発明4」という。)
ここで、甲1発明4の半田付け装置が、「前記半田鏝1は、前記ピン18の先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記半田鏝1の内壁と当接する筒状の溶融部を有し、前記溶融部の前記半田鏝1の内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい」構成を備える点については、上記サに摘記した例示事項によれば、溶融前の半田片の直径が0.8mm、長さが1.2mmであることから、その半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径は約1.05mmであり、それよりも半田鏝1の貫通孔2側壁の内径(半田鏝1の先端部におけるもの)1.0mmのほうが小さい点に基づいて認定した。

「甲1発明1、甲1発明2、又は甲1発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピン18と前記半田鏝1との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記半田鏝1に前記ピン18の少なくとも先端を挿入し、
前記半田鏝1の内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に当接させ、
当該当接によって前記ピン18側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段3により前記半田片を加熱溶融する
半田付け方法。」(以下、「甲1発明5」という。)

「甲1発明1、甲1発明2、又は甲1発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピン18と前記半田鏝1との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記半田鏝1に前記ピン18の少なくとも先端を挿入し、
前記半田鏝1の内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部を当接位置規制手段により前記ピン18の先端に当接させ、
当該当接によって前記ピン18側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段3により前記半田片を加熱溶融し、
前記溶融した半田片により前記ピン18を配線基板5のランドに半田付けする
配線基板5の製造方法。」(以下、「甲1発明6」という。)

「甲1発明1、甲1発明2、又は甲1発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピン18と前記半田鏝1との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記半田鏝1に前記ピン18の少なくとも先端を挿入し、
前記半田鏝1の内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部を当接位置規制手段により前記ピン18の先端に当接させ、当該当接によって前記ピン18側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段3により前記半田片を加熱溶融し、
前記溶融した半田片により前記ピン18と前記ランドを半田付けする
製品の製造方法。」(以下、「甲1発明7」という。)

(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ここで、後者の「ピン18」は前者の「端子」に、後者の「ランド」は前者の「接続対象」に、後者の「半田鏝1」は前者の「ノズル」に、後者の「加熱手段3」は前者の「加熱手段」に、後者の「半田鏝1の貫通孔2側壁」は前者の「ノズルの内壁」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点1並びに相違点1-1及び1-2を有する。

[一致点1]
「端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁により構成され、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」

[相違点1-1]
「当接位置規制手段」に関し、本件発明1では、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に「必ず」当接させるものであるのに対し、甲1発明1では、半田鏝1内に供給された溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に当接させているものの、「必ず」当接させるとまではいえない点。

[相違点1-2]
「溶融した半田片」に関し、本件発明1では、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対し、甲1発明1では、そのような構成を有するとはいえない点。

まず、上記相違点1-1について検討する。
本件発明1及び甲1発明1は、「当接位置規制手段」が「端子の側面との間隔が溶融前の半田片の最小幅より短く形成されたノズルの内壁」により構成されている点に変わりはない。してみれば、「当接位置規制手段」がノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に「必ず」当接させるものであるか否かは、「半田付け装置」の一部である「ノズルの内壁」と、「半田付け装置」の一部ではなく半田付け対象物の一つに属する「端子の側面」との間隔が、半田片の最小幅より短いという関係に、常にあるか否かにより定まる。換言すれば、甲1発明1において「当接位置規制手段」が上記「必ず」当接させるようにするということは、半田付け対象物としてのピン18(端子)の寸法として想定されるところに合わせて、半田付け装置における半田鏝1(ノズル)の内壁の寸法や半田片の寸法を選択することにより、(ピン18の寸法自体は一定でなかったとしても)甲1発明1に既に規定されている上記の関係を常に成り立たせるようにすることに帰着する。そして、上記(1)カ及びサに摘記したとおり、甲第1号証に記載された事項によれば、半田鏝1の貫通孔2側壁の内径が1.2mm、ピン18の外径が0.6mmであることから、貫通孔2側壁のピン18の側面との間隔は最大でも0.6mmであるところ、当該間隔は溶融前の半田片の直径である0.8mmより十分短いと認められ、あるいは、半田鏝1の貫通孔2側壁の内径が1.0mm、ピン18(電子部品の端子銅線)の外径が0.6mmであることから、貫通孔2側壁のピン18の側面との間隔は最大でも0.4mmであるところ、当該間隔は溶融前の半田片の直径である0.8mmより十分短いと認められるうえ、一般に、被加工物の寸法として想定されるところに合わせて、加工機械における加工部等の寸法を選択することは、当業者が必要に応じて行うところであるから、甲1発明1において、溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に「必ず」当接させるようにし、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。

なお、本件発明1は、「当接位置規制手段」を構成する「ノズルの内壁」に関して、「前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁」、または、「溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁」という、選択的な発明特定事項を有している。これにつき、仮に、後者の選択肢に限定して考えたとしても、かかる限定は、当業者であれば容易に想到し得たものである。すなわち、甲1発明1の認定にみるとおり、甲1発明1において「半田鏝1の貫通孔2側壁」は、「溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記ピン18側の端部が前記ピン18の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する」ものである。また、貫通孔2を備えた半田鏝1の先端部は、ピン18の少なくとも先端を挿入する部位である。ここで、かかる挿入部位である半田鏝1先端部における貫通孔2を、ピン18の挿入を容易化する等のために拡径することは、当業者が適宜行う設計的事項にすぎない。そして、先端部において拡径された貫通孔2を備えた半田鏝1にあっては、上記の「半田鏝1の貫通孔2側壁」は、半田鏝1先端部の貫通孔2内壁よりも狭いものとなる。よって、上記の限定は、当業者であれば容易に想到し得たものである。

次に、相違点1-2に関して検討すると、当該相違点に係る本件発明1の構成、特に、溶融した半田片がノズルの内壁と端子の先端に規制されつつ端子の上に載った状態で停止する構成については、甲第1号証には記載がなされていない。
また、かかる溶融半田片の挙動は、半田付け装置が「半田鏝1内に供給された溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に当接」させる構成を有しているからといって必然的に実現するというものではなく、溶融前の半田片の形状や体積、半田鏝1の貫通孔2(ノズルの内壁)の軸垂直方向断面積に対するピン18(端子)端部の面積などに関わる諸条件が満たされた場合に実現するものと認められる。そうした条件についての記載を甲第1号証に見いだすこともできない。
さらに、上記(1)のコにおいて摘記したとおり、甲第1号証には、「先端部の筒内で落下半田片を溶融させる間、筒状半田鏝をピンを中心に相対運動させることによって、ランドとピンに溶融半田を充分なじませることができる。」と記載されており、溶融中の半田片に当該相対運動による半田鏝からの外力が作用するものと認められ、そうすると、かかる記載は、溶融した半田片がノズルの内壁と端子の先端に規制されつつ端子の上に載った状態で停止する構成を想到するのを妨げる向きの記載といえる。
そして、本件発明1にあっては、相違点1-2に係る構成が、精度のよい半田付けを実現し、半田付け不良を防止することに資するものと認められる(特許明細書の段落【0073】及び【0074】等を参照)。
してみれば、相違点1-2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。

よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2
本件発明2と甲1発明2とを対比する。
ここで、後者の「ピン18」は前者の「端子」に、後者の「ランド」は前者の「接続対象」に、後者の「半田鏝1」は前者の「ノズル」に、後者の「加熱手段3」は前者の「加熱手段」に、後者の「半田鏝1の貫通孔2側壁」は前者の「ノズルの内壁」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明2とは、次の一致点2並びに相違点2-1及び2-2を有する。

[一致点2]
「端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内で前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」

[相違点2-1]
「当接位置規制手段」に関し、本件発明2では、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に「必ず」当接させるものであるのに対し、甲1発明2では、半田鏝1内に供給された溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に当接させているものの、「必ず」当接させるとまではいえない点。

[相違点2-2]
「溶融した半田片」に関し、本件発明2では、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対し、甲1発明2では、そのような構成を有するとはいえない点。

相違点2-1は、上記相違点1-1と同内容の事項であるから、当該相違点1-1について上記アにて説示したとおり、甲1発明2において、溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に「必ず」当接させるようにし、上記相違点2に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。

相違点2-2は、上記相違点1-2と同内容の事項であるから、当該相違点1-2について上記アにて説示したとおり、相違点2-2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。

よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4
本件発明4は、本件発明1又は2を引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4も、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明5?7
本件発明5ないし7を甲1発明5ないし7とそれぞれ対比すると、本件発明5ないし7のいずれも、次の相違点3を有する。

[相違点3]
本件発明5ないし7は、いずれも「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出」すという構成を有するのに対して、甲1発明5ないし7は、いずれも、かかる構成を有していない点。

当該相違点3について検討すると、これは上記相違点1-2及び2-2と同内容のものであるから、上記ア及びイにおいて説示したとおり、相違点3に係る本件発明5ないし7の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
さらに、本件発明5ないし7は、本件発明1又は2を直接的又は間接的に引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明5ないし7は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 小括
上記ア?エにて説示したとおり、本件発明1、2、及び4ないし7は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.甲第2号証を引用例とする取消理由について
(1)甲第2号証の記載事項及び甲2発明
甲第2号証(MELTING / SOLIDIFICATION ANALYSIS OF THE PB FREE SOLDER IN SLEEVE SOLDERING, Proceedings of the ASME 2015 International Mechanical Engineering Congress & Exposition IMECE 2015 (IMECE 2015-51253), November 13-19, 2015, Houston, Texas USA)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
なお、和訳は、特許異議申立人が提出した和訳を参考に、当審にて和訳したものである。

ア「・・・automatic soldering technic called Sleeve soldering has been developed recently. In the technic, a ceramic tube has been used instead of a soldering iron. This ceramic tube is called Sleeve. Fixed amount of solder is loaded into this Sleeve. The melting solder is poured from tip of the Sleeve to glue electronic parts into electronic boards.」(1頁右欄1?6行)
和訳:「・・・スリーブ半田付けと呼ばれる自動半田付け技術が最近になって開発された。この技術においては、セラミックチューブが半田ごての代わりに使用されている。当該セラミックチューブは、スリーブと呼ばれる。このスリーブには、一定量の半田が装填される。溶融半田がスリーブの先端から送り出され、電子基板に電子部品を接合する。」

イ「SLEEVE SOLDERING
Fixed amount of solder is loaded into this Sleeve. The melting solder is poured from tip of the Sleeve to glue electronic parts into electronic boards. The process of the Sleeve soldering is shown in Figure 1.」(2頁左欄3?7行)
和訳:「スリーブ半田付け
一定量の半田が、このスリーブに装填される。溶融半田がスリーブの先端から送り出され、電子基板に電子部品を接合する。スリーブ半田付けの工程を図1に示す。」

ウ「ANALYSIS METHOD
・・・Figure 2 shows an analysis model of Sleeve soldering. This 3Dmodel consists of four parts, Electronic board, pin, Sleeve, and solder. These parts are a minimum for this simulation. Each component has two parameters, temperature and contact angle. The contact angle where used to express the wettability of components. The dimension of each components is as follows: The inside diameter of the sleeve: 1.0[mm], the diameter of a through-hole: 1.0[mm], substrate thickness: 1.6[mm], the length of the pin: 5.6[mm], projecting length of the pin: 2.0[mm]. The solder has four parameters in each melting state and solidification, density, viscosity, specific heat and thermal conductivity. The solder has a dimension of 1.0[mm] diameter and 3.0[mm] length.」(2頁左欄8行?右欄11行)
和訳:「解析方法
・・・図2は、スリーブ半田付けの解析モデルを示す。この三次元モデルは、電子基板、ピン、スリーブ、及び半田の4つの部分から構成される。これらの部分は、本シミュレーションの最小構成である。各構成部分は、2つのパラメータとして、温度及び接触角を有する。接触角は、構成部分の濡れやすさを表現するために用いられる。各構成部分の寸法は、次のとおりである。スリーブ内径:1.0[mm]、貫通孔直径:1.0[mm]、基板厚さ:1.6[mm]、ピン長さ:5.6[mm]、ピン突出長さ:2.0[mm]。半田は、溶融状態及び凝固のそれぞれにおいて、4つのパラメータ、すなわち、密度、粘度、比熱、及び熱伝導率を有する。半田の寸法は、直径1.0[mm]、長さ3.0[mm]である。」

エ 図1 (Figure 1) には、上記イに摘記した「一定量の半田」としての「半田片」が図示され、また、ピンとスリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる動作が図示されている。

オ 図3 (Figure 3) には、スリーブ内に供給された溶融前の半田片のピン側の端部をピンの先端に当接させ、当該溶融前の半田片を電子基板に接触させずにスリーブ内に留めるように規制する、スリーブの内壁が記載されている。図3にはまた、当該スリーブの内壁とピンの側面との間隔が溶融前の半田片の最小幅より短く形成されている点、及び、上記スリーブの内壁が、溶融前の半田片を溶融前の半田片のピン側の端部がピンの先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への半田片の移動範囲を規制している点が看取される。図3にはさらに、上記規制がなされた半田片が加熱され、溶融する点も記載されている。

以上の記載事項から、甲第2号証には、次の各発明が記載されていると認められる。

「ピンと当該ピンに電気的に接続される電子基板とを半田付けする半田付け装置であって、
前記ピンの少なくとも先端を挿入する筒状のスリーブと、
前記スリーブの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記ピンと前記スリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記スリーブ内に供給された溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部を前記ピンの先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記電子基板に接触させずに前記スリーブ内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記ピンの側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記スリーブの内壁により構成され、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部が前記ピンの先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制するものであり、
前記加熱手段は、前記ピンの先端に当接した前記半田片に前記スリーブを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」(以下、「甲2発明1」という。)

「ピンと当該ピンに電気的に接続される電子基板とを半田付けする半田付け装置であって、
前記ピンの少なくとも先端を挿入する筒状のスリーブと、
前記スリーブの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記ピンと前記スリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記スリーブ内に供給された溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部を前記ピンの先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記電子基板に接触させずに前記スリーブ内で前記半田片の前記ピン側の端部が前記ピンの先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記ピンの先端に当接した前記半田片に前記スリーブを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」(以下、「甲2発明2」という。)

「甲2発明1又は甲2発明2の半田付け装置において、
前記スリーブは、前記ピンの先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記スリーブの内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記スリーブの内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい
半田付け装置。」(以下、「甲2発明4」という。)
ここで、甲2発明4の半田付け装置が、「前記スリーブは、前記ピンの先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記スリーブの内壁と当接する筒状の溶融部を有し、前記溶融部の前記スリーブの内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい」構成を備える点については、上記ウに摘記した事項によれば、溶融前の半田片の直径が1.0mm、長さが3.0mmであることから、その半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径は約1.65mmであり、それよりもスリーブの内径1.0mmのほうが小さい点に基づいて認定した。

「甲2発明1、甲2発明2、又は甲2発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピンと前記スリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記スリーブに前記ピンの少なくとも先端を挿入し、
前記スリーブの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記ピンの先端に当接させ、
当該当接によって前記ピン側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融する
半田付け方法。」(以下、「甲2発明5」という。)

「甲2発明1、甲2発明2、又は甲2発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピンと前記スリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記スリーブに前記ピンの少なくとも先端を挿入し、
前記スリーブの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部を当接位置規制手段により前記ピンの先端に当接させ、
当該当接によって前記ピン側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
前記溶融した半田片により前記電子部品のピンを電子基板の接合箇所に半田付けする
電子基板の製造方法。」(以下、「甲2発明6」という。)

「甲2発明1、甲2発明2、又は甲2発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記ピンと前記スリーブとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記スリーブに前記ピンの少なくとも先端を挿入し、
前記スリーブの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部を当接位置規制手段により前記ピンの先端に当接させ、当該当接によって前記ピン側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
前記溶融した半田片により前記ピンと前記電子基板を半田付けする
製品の製造方法。」(以下、「甲2発明7」という。)

(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
ここで、後者の「ピン」は前者の「端子」に、後者の「電子基板」は前者の「接続対象」に、後者の「スリーブ」は前者の「ノズル」に、後者の「スリーブの内壁」は前者の「ノズルの内壁」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、次の一致点3並びに相違点4-1及び4-2を有する。

[一致点3]
「端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁により構成され、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」

[相違点4-1]
「当接位置規制手段」に関し、本件発明1では、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に「必ず」当接させるものであるのに対し、甲2発明1では、スリーブ内に供給された溶融前の半田片のピン側の端部をピンの先端に当接させているものの、「必ず」当接させるとまではいえない点。

[相違点4-2]
「溶融した半田片」に関し、本件発明1では、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対し、甲2発明1では、そのような構成を有するとはいえない点。

まず、上記相違点4-1について検討する。
甲第1号証に関し上記3.(2)アにおいて説示したのと同様の理由により、甲2発明1において「当接位置規制手段」が上記「必ず」当接させるようにするということは、半田付け対象物としてのピン(端子)の寸法として想定されるところに合わせて、半田付け装置におけるスリーブ(ノズル)の内壁の寸法や半田片の寸法を選択することにより、(ピンの寸法自体は一定でなかったとしても)甲2発明1に既に規定されている、スリーブ(ノズル)の内壁とピン(端子)の側面との間隔が半田片の最小幅より短いという関係を常に成り立たせるようにすることに帰着する。そして、上記(1)ウに摘記したとおり、甲第2号証には、スリーブの内径が1.0mmであるのに対して、ピンの外径は特定されていないものの、溶融前の半田片の直径が1.0mmとすることが記載されているので、この場合には、スリーブの内壁とピンの側面との間隔が半田片の最小幅より短いという関係が、ピンの外径によらず成り立っているうえ、一般に、被加工物の寸法として想定されるところに合わせて、加工機械における加工部等の寸法を選択することは、当業者が必要に応じて行うところであるから、甲2発明1において、溶融前の半田片のピン側の端部をピンの先端に「必ず」当接させるようにし、上記相違点4-1に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。

なお、本件発明1は、「当接位置規制手段」を構成する「ノズルの内壁」に関して、「前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁」、または、「溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁」という、選択的な発明特定事項を有している。これにつき、仮に、後者の選択肢に限定して考えたとしても、かかる限定は、当業者であれば容易に想到し得たものである。すなわち、甲2発明1の認定にみるとおり、甲2発明1において「スリーブの内壁」は、「溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記ピン側の端部が前記ピンの先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する」ものである。また、貫通孔を備えたスリーブの先端部は、ピンの少なくとも先端を挿入する部位である。ここで、かかる挿入部位であるスリーブ先端部における貫通孔を、ピンの挿入を容易化する等のために拡径することは、当業者が適宜行う設計的事項にすぎない。そして、先端部において拡径された貫通孔を備えたスリーブにあっては、上記の「スリーブの内壁」は、スリーブ先端部の貫通孔内壁よりも狭いものとなる。よって、上記の限定は、当業者であれば容易に想到し得たものである。

次に、相違点4-2に関して検討すると、当該相違点に係る本件発明1の構成、特に、溶融した半田片が端子の上に載り半田片が供給された方向へ移動せずに停止した状態でノズルから溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から端子に伝えて端子を加熱し、この加熱によって端子が加熱された後に溶融した半田片が流れ出す構成については、甲第2号証には記載がなされていない。
また、かかる溶融半田片の挙動は、半田付け装置が「スリーブ内に供給された溶融前の半田片のピン側の端部をピンの先端に当接」させる構成を有しているからといって必然的に実現するというものではなく、溶融前の半田片の形状や体積、スリーブの内壁(ノズルの内壁)の軸垂直方向断面積に対するピン(端子)端部の面積などに関わる諸条件が満たされた場合に実現するものと認められる。そうした条件についての記載を甲第2号証に見いだすこともできない。実際、ピンの径については、記載自体がなされていない。
そして、本件発明1にあっては、相違点4-2に係る構成が、精度のよい半田付けを実現し、半田付け不良を防止することに資するものと認められる(特許明細書の段落【0073】及び【0074】等を参照)。
してみれば、相違点4-2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。

よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2
本件発明2と甲2発明2とを対比する。
ここで、後者の「ピン」は前者の「端子」に、後者の「電子基板」は前者の「接続対象」に、後者の「スリーブ」は前者の「ノズル」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明2とは、次の一致点4並びに相違点5-1及び5-2を有する。

[一致点4]
「端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内で前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置。」

[相違点5-1]
「当接位置規制手段」に関し、本件発明2では、ノズル内に供給された溶融前の半田片の端子側の端部を端子の先端に「必ず」当接させるものであるのに対し、甲2発明2では、スリーブ内に供給された溶融前の半田片のピン側の端部をピンの先端に当接させているものの、「必ず」当接させるとまではいえない点。

[相違点5-2]
「溶融した半田片」に関し、本件発明2では、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対し、甲2発明2では、そのような構成を有するとはいえない点。

相違点5-1は、上記相違点4-1と同内容の事項であるから、当該相違点4-1について上記アにて説示したとおり、甲2発明2において、溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に「必ず」当接させるようにし、上記相違点5-1に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。

相違点5-2は、上記相違点4-2と同内容の事項であるから、当該相違点4-2について上記アにて説示したとおり、相違点5-2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。

よって、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4
本件発明4は、本件発明1又は2を引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4も、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明5?7
本件発明5ないし7を甲2発明5ないし7とそれぞれ対比すると、本件発明5ないし7のいずれも、次の相違点6を有する。

[相違点6]
本件発明5ないし7は、いずれも「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出」すという構成を有するのに対して、甲2発明5ないし7は、いずれも、かかる構成を有していない点。

当該相違点6について検討すると、これは上記相違点4-2と同内容のものであるから、上記アにおいて説示したとおり、相違点6に係る本件発明5ないし7の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
さらに、本件発明5ないし7は、本件発明1又は2を直接的又は間接的に引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明5ないし7は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 小括
上記ア?エにて説示したとおり、本件発明1、2、及び4ないし7は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.甲第3号証を引用例とする取消理由について
(1)甲第3号証の記載事項及び甲3発明
甲第3号証(特願2015-31205号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の内容を掲載した特開2016-153125号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
管状の半田層の内部にフラックスの層が設けられた糸半田を切断して生成された半田片を、長手方向一端を下端部にした姿勢で加熱して、溶融した半田を下方へ供給する半田処理方法であって、
前記加熱時に、前記半田片の下端部からの前記フラックスの流出を低減させることを特徴とする半田処理方法。
・・・
【請求項10】
請求項1に記載の半田処理方法に使用する半田処理装置であって、
前記姿勢の前記半田片に対して、下側寄りの部分より上側寄りの部分を優先的に加熱する処理を行うことを特徴とする半田処理装置。
【請求項11】
加熱可能である上下に伸びた略筒形状の鏝先を有し、
当該鏝先内にて前記姿勢に保持された前記半田片に対して、当該鏝先の熱を伝えることで加熱を行う請求項10に記載の半田処理装置であって、
前記鏝先の内径について、
前記保持された半田片の上側寄り部分に対応する内径よりも、下側寄り部分に対応する内径を大きくした半田処理装置。」
イ「【0019】
図1に示すように半田付け装置Aは、上方から糸半田7を供給し、下部に設けられた鏝先5を利用して、鏝先5の下方に配置される配線基板Bdと、電子部品Epとを半田付けする装置である。なお、糸半田7は、管状の半田層71の内部にフラックス層72が設けられた構造となっている。半田付け装置Aは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5及び半田送り機構6を備えている。ヒーターユニット4と鏝先5とを組み合わせたものが、半田鏝部を構成している。」
ウ「【0021】
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板Bdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子Pとに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具GjをX方向及びY方向に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、そして、半田付け装置AはZ方向に移動可能であり、位置決め後Z方向に移動することで、鏝先5の先端をランドLdに接触させることができる。」
エ「【0034】
図2に示すように、ヒーターユニット4は、半田片70を加熱し、溶融させるための加熱装置であり、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、電気を通すことで発熱するヒーター41と、ヒーター41を取り付けるためのヒーターブロック42とを備えている。ヒーター41は円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回されている。」
オ「【0036】
鏝先5は、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5は、ヒーターブロック42の凹部421に挿入され、図示を省略した部材によって抜け止めがなされている。また、鏝先5の半田孔51は、ヒーターブロック42の半田供給孔421と連通しており、半田供給孔421から半田片70が送られる。」
カ「【0042】
そして、各送りローラ(61a、61b)を回転駆動し糸半田7を送り出す。上刃孔211と下刃孔221とが連通状態になっているので、糸半田7の先端は下刃孔221の内部に移動する。各送りローラ(61a、61b)の回転角度を調整し、下刃孔221内に進入する糸半田7の長さを半田付けに必要な長さになるようにする。下刃孔221内に進入する糸半田の長さは半田片70の長さであり、半田付けを行うランドLdや電子部品Epの端子Pの大きさ等によって決められる。」
キ「【0046】
ピストンロッド32がさらに突出すると、カム部材33が下方に摺動し、カム部材33のピン押し部333がプッシャーピン23のヘッド部232を押す。これにより、プッシャーピン23のロッド部231が下刃孔221に挿入される。このとき、下刃孔221に残っている半田片70は、ロッド部231に押され、鏝先5に向かって移動する。なお、半田片70は、切断時に自重によって下方に移動する場合もあるが、プッシャーピン23を利用することで、半田片70を確実に鏝先5の半田孔51に供給することができる。半田孔51に供給された半田片70は、後述する図6に示すように、電子部品Epの端子Pに乗るようにして、鏝先5内に立った状態で保持される。
【0047】
鏝先5には、ヒーター41からの熱が伝達されており、この熱によって半田孔51内で糸半田7は溶融される。そして、鏝先5は、配線基板BdのランドLdと電子部品Epの端子Pとを囲んでいるため、溶融した半田は、ランドLdと電子部品Epの端子Pとに流れる。そして、半田付け装置AをZ方向に移動することで、鏝先5がランドLdから離れる。これにより、半田は外気によって冷却され、固化することで、ランドLdと電子部品Epの端子Pとが半田付けされる。」
ク「【0051】
すなわち半田付け装置Aは、糸半田7の切断およびV穴73を設ける処理を行って半田片70を生成し、この生成した半田片70を、図6に示すように立てた姿勢(長手方向一端である下端部を下にした姿勢)で加熱して、下方へ溶融した半田を供給する。この加熱の際、半田層71より早く溶融したフラックスは、半田片70の上端や下端だけでなく側面のV穴73からも流出することになる。その結果、V穴73が設けられていない場合に比べて、半田片70の下端部からのフラックスの流出が低減することになる。このようにV穴73を設ける加工処理は、半田片70の加熱時に、半田片70の下端部からのフラックスの流出を低減させる処理となっている。」
ケ「【0068】
図12は、(a)半田片70が鏝先5内で立てた姿勢(下端部を下にした姿勢)に保持された状態と、(b)その状態にて半田片70の加熱を進めた状態とを示している。図12(a)に示すように、本実施形態における鏝先5の内径については、保持された半田片70の上側寄り部分に対応する内径よりも、下側寄り部分に対応する内径が大きくされている。なお、本実施形態では、電子部品Epの端子Pの上端と鏝先5との上下の位置関係や、半田片70の長さ寸法(つまり糸半田7を切断する間隔)は、予めほぼ一定となるよう設定されている。
【0069】
そのため半田片70と鏝先5内部との隙間は、半田片70の下側寄り部分よりも、上側寄り部分の方が狭くなっている。これによって図12(b)に示すように、加熱が進むと半田片70は上部より溶融し、フラックスが半田片70の上部から流れ出ることになる。その結果、第1実施形態の場合と同様の原理により、半田片70をより確実に加熱溶融させることが出来る。」
コ 図12(b)には、「加熱が進むと半田片70は上部より溶融し」(上記摘記事項ケ)た状態が図示されているところ、同図からは、「鏝先5は、端子Pの先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき半田片70が鏝先5の内壁と当接する筒状の溶融部を有し、溶融部の鏝先5の内径は、前記当接位置で半田片70を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい」構成が看取される。

以上の記載事項から、甲第3号証には、次の各発明が記載されていると認められる。

「端子Pと当該端子Pに電気的に接続されるランドLdとを半田付けする半田付け装置Aであって、
前記端子Pの少なくとも先端を挿入する筒状の鏝先5と、
前記鏝先5の内側へ半田片70を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融するヒーターユニット4と、
前記端子Pと前記鏝先5との近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記鏝先5内に供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を前記端子Pの先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片70を前記ランドLdに接触させずに前記鏝先5内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子Pの側面との間隔が溶融前の前記半田片70の最小幅より短く形成された前記鏝先5の内壁、
または、
溶融前の前記半田片70を前記溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部が前記端子Pの先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片70の移動範囲を規制する前記鏝先5の鏝先5先端部内壁よりも狭い前記鏝先5の内壁、
により構成され、
前記ヒーターユニット4は、前記端子Pの先端に当接した前記半田片70に前記鏝先5を介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置A。」(以下、「甲3発明1」という。)
ここで、甲3発明1の半田付け装置が、「前記鏝先5内に供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を前記端子Pの先端に必ず当接させ・・・る当接位置規制手段」を備える点については、次に基づいて認定した。すなわち、甲第3号証は、半田片70の長さに関して、「半田付けを行うランドLdや電子部品Epの端子Pの大きさ等によって決められる」(上記摘記事項カ)としており、そこからは「端子Pの大きさ」が一定ではないことが示唆される一方、鏝先5の半田孔51に供給された半田片70が「図6に示すように、電子部品Epの端子Pに乗るようにして、鏝先5内に立った状態で保持される」(上記摘記事項キ)と明記していることから、端子Pの大きさに変化があっても、「前記鏝先5内に供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を前記端子Pの先端に必ず当接」することが記載されているものと認められる。

「端子Pと当該端子Pに電気的に接続されるランドLdとを半田付けする半田付け装置Aであって、
前記端子Pの少なくとも先端を挿入する筒状の鏝先5と、
前記鏝先5の内側へ半田片70を供給する半田片供給手段と、
前記半田片70を加熱溶融するヒーターユニット4と、
前記端子Pと前記鏝先5との近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記鏝先5内に供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を前記端子Pの先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片70を前記ランドLdに接触させずに前記鏝先5内で前記半田片70の前記端子P側の端部が前記端子Pの先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記ヒーターユニット4は、前記端子Pの先端に当接した前記半田片70に前記鏝先5を介して熱伝達させる位置に設けられている
半田付け装置A。」(以下、「甲3発明2」という。)

「甲3発明1又は甲3発明2の半田付け装置において、
前記鏝先5は、前記端子Pの先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片70が前記鏝先5の内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記鏝先5の内径は、前記当接位置で前記半田片70を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい
半田付け装置A。」(以下、「甲3発明4」という。)

「甲3発明1、甲3発明2、又は甲3発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記端子Pと前記鏝先5との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記鏝先5に前記端子Pの少なくとも先端を挿入し、
前記鏝先5の内側に前記半田片供給手段により半田片70を供給し、
供給された溶融前の前記半田片70の端部を当接位置規制手段により前記端子Pの先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子P側へ溶融前の前記半田片70が移動しないように規制して前記ヒーターユニット4により前記半田片70を加熱溶融する
半田付け方法。」(以下、「甲3発明5」という。)

「甲3発明1、甲3発明2、又は甲3発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記端子Pと前記鏝先5との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記鏝先5に前記端子Pの少なくとも先端を挿入し、
前記鏝先5の内側に前記半田片供給手段により半田片70を供給し、
供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を当接位置規制手段により前記端子Pの先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子P側へ溶融前の前記半田片70が移動しないように規制して前記ヒーターユニット4により前記半田片70を加熱溶融し、
前記溶融した半田片70により前記電子部品Epの端子Pを配線基板BdのランドLdに半田付けする
配線基板Bdの製造方法。」(以下、「甲3発明6」という。)

「甲3発明1、甲3発明2、又は甲3発明4のいずれか1つの半田付け装置を用いて、
前記端子Pと前記鏝先5との近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記鏝先5に前記端子Pの少なくとも先端を挿入し、
前記鏝先5の内側に前記半田片供給手段により半田片70を供給し、
供給された溶融前の前記半田片70の前記端子P側の端部を当接位置規制手段により前記端子Pの先端に必ず当接させ、当該当接によって前記端子P側へ溶融前の前記半田片70が移動しないように規制して前記ヒーターユニット4により前記半田片70を加熱溶融し、
前記溶融した半田片70により前記端子PとランドLdを半田付けする
製品の製造方法。」(以下、「甲3発明7」という。)

(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲3発明1とを対比する。
ここで、後者の「端子P」は前者の「端子」に、後者の「ランドLd」は前者の「接続対象」に、後者の「鏝先5」は前者の「ノズル」に、後者の「ヒーターユニット4」は前者の「加熱手段」に、後者の「鏝先5先端部内壁」は前者の「ノズル先端部」に、後者の「鏝先5の内壁」は前者の「ノズルの内壁」に、後者の「半田付け装置A」は前者の「半田付け装置」に、それぞれ相当する。
しかしながら、甲3発明1は、本件発明1における「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」点を欠いている。甲第3号証には、他にこの点を記載したところもない。これに関連して、さらにいえば、甲第3号証は、「図12(b)に示すように、加熱が進むと半田片70は上部より溶融し、フラックスが半田片70の上部から流れ出る」(上記摘記事項ケ)と記載しており、当該記載及び図12(b)の記載に照らせば、むしろ、半田片70の端子Pに接する下部が溶融するよりも先に当該半田片70の上部が溶融し(フラックスのみならず)半田が流れ出得ることも、示唆されているといえる。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

イ 本件発明2
本件発明2と甲3発明2とを対比する。
ここで、後者の「端子P」は前者の「端子」に、後者の「ランドLd」は前者の「接続対象」に、後者の「鏝先5」は前者の「ノズル」に、後者の「ヒーターユニット4」は前者の「加熱手段」に、後者の「半田付け装置A」は前者の「半田付け装置」に、それぞれ相当する。
しかしながら、甲3発明2は、本件発明2における「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」点を欠いている。このことは、上記アにて、本件発明1と甲3発明1との対比に関して説示したのと同じである。
したがって、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

ウ 本件発明4
本件発明4と甲3発明4とを対比する。
本件発明4は、本件発明1又は2を引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも、甲第3号証に記載された発明とはいえないから、本件発明4も、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

エ 本件発明5?7
本件発明5ないし7を甲3発明5ないし7とそれぞれ対比すると、本件発明5ないし7のいずれも「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出」すという構成を有するのに対して、甲3発明5ないし7は、いずれも、かかる構成を有していない。そして、上記ア及びイにて説示した事項にも照らせば、本件発明5ないし7は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。
さらに、本件発明5ないし7は、本件発明1又は2を直接的又は間接的に引用し、その構成をすべて含む。そして、上記ア及びイにて説示したとおり、本件発明1及び2はいずれも甲第3号証に記載された発明とはいえないから、この点でも、本件発明5ないし7は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。
よって、本件発明5ないし7は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

オ 小括
上記ア?エにて説示したとおり、本件発明1、2、及び4ないし7は、甲第3号証に記載された発明ではない。

6.特許異議申立人の意見について
訂正請求により訂正された各請求項、すなわち、訂正で削除された請求項3を除く、請求項1、2、及び4?7は、いずれも、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出」すという発明特定事項を有する。
これに関し、特許異議申立人は、平成30年6月26日付けの意見書において、「鏝先に形成された貫通孔内で端子の先端に当接した半田片が溶融し流れ出す際の挙動を単に規定したものにすぎず、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明においても、鏝先(あるいはスリーブ)内において端子の先端に当接している状態の半田片が溶融すれば当然に同じ挙動をとることは明らかである」と主張している。
その主張に係る説明として、特許異議申立人は、「溶融した半田片が丸まって略球状になろうとする挙動は、溶融した半田の表面張力によるもの」であること、及び、「溶融した半田片がノズルの内壁と端子の先端に規制されるため真球になれないまま端子の上に載った状態で留まる挙動は、端子が十分に加熱されていないことによるものと考えられる」ことを挙げ、そのうえで、「甲第1号証?甲第3号証に記載の発明においても、端子に直接熱を伝えるのは半田片のみであることから、半田片が十分溶融した後に端子が十分加熱されることになり、溶融した半田片が端子の上に載った状態で留まる挙動をとることは疑う余地がない」などとしている。そして、特許異議申立人は、「次いで、端子上に載った状態の溶融した半田片を介してノズルから端子に熱が伝えられて端子が加熱され、端子が加熱された後に溶融した半田片が流れ出す挙動は、溶融した半田片がノズルの内壁と接触し且つ端子の上に載った状態で留まる前記挙動に起因して生じる次の挙動であるから、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明においても、溶融した半田片が同じ挙動を示すことは明らかである」としている。
しかしながら、かかる説明は、訂正請求により訂正された各請求項に記載されている上記の発明特定事項を「溶融した半田片」の時系列的な個々の挙動に分かち、それぞれ個々の挙動が出現した場合における原因と考えられるところを述べたものというべきであり、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明においても、それら個々の挙動が時系列的に全て出現することを示したものということはできない。具体的にいえば、「溶融した半田片が丸まって略球状になろうとする挙動」が出現した場合、それは「溶融した半田の表面張力によるもの」であるとしても、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明において、「溶融した半田の表面張力」が「溶融した半田片が丸まって略球状になろうとする挙動」を起こさせるのに十分なものであることを保証する事項の存在を認めることはできない。同様に、「溶融した半田片がノズルの内壁と端子の先端に規制されるため真球になれないまま端子の上に載った状態で留まる挙動」が出現した場合、それは「端子が十分に加熱されていないことによるものと考えられる」としても、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明において、「端子が十分に加熱されていないこと」が、かかる挙動を起こさせるのに十分なものであるかといえば、それを保証する事項の存在を認めることはできない。これについては、たとえば、甲1発明1において、加熱手段3は半田鏝1を介して半田片に熱伝達させる位置に設けられているところ、ピン18の先端に当接した半田片が加熱手段3からの熱により溶融する際、半田片のうち半田鏝1に隣接した部分が先に溶融して流れ出し、「溶融した半田片が丸まって略球状になろうとする挙動」に至らない、あるいは当該挙動に至ったとしても、溶融した半田片が「真球になれないまま端子の上に載った状態で留まる挙動」を示すまでには至らない状況が生じる可能性が考えられ、かかる可能性が排除されているとはいえない。
むしろ、訂正請求により訂正された各請求項に記載されている上記の発明特定事項に記載された溶融半田片の挙動は、たとえば甲第1号証に即していえば、前説示のとおり、半田付け装置が「半田鏝1内に供給された溶融前の半田片のピン18側の端部をピン18の先端に当接」させる構成を有しているからといって必然的に実現するというものではなく、溶融前の半田片の形状や体積、半田鏝1の貫通孔2(ノズルの内壁)の軸垂直方向断面積に対するピン18(端子)端部の面積などに関わる諸条件が満たされた場合に実現するものと認められるのであって、そうした条件についての記載を甲第1号証に見いだすことはできない。こうした事情は、甲第2号証及び甲第3号証についても、同様である。
加えていえば、甲第1号証には、「先端部の筒内で落下半田片を溶融させる間、筒状半田鏝をピンを中心に相対運動させることによって、ランドとピンに溶融半田を充分なじませることができる。」と記載されており、溶融中の半田片に当該相対運動による半田鏝からの外力が作用するものと認められ、かかる記載が、溶融した半田片がノズルの内壁と端子の先端に規制されつつ端子の上に載った状態で停止する構成を想到するのを妨げる向きの記載といえるということも、前説示のとおりである。
以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張、すなわち、訂正請求により訂正された各請求項に記載されている上記の発明特定事項について、「鏝先に形成された貫通孔内で端子の先端に当接した半田片が溶融し流れ出す際の挙動を単に規定したものにすぎず、甲第1号証?甲第3号証に記載の発明においても、鏝先(あるいはスリーブ)内において端子の先端に当接している状態の半田片が溶融すれば当然に同じ挙動をとることは明らかである」との主張を採用することはできない。

7.取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)新規事項追加
特許異議申立人は、訂正前の請求項1、5、6、及び7に関し、半田片の端子側の端部が当接する位置が「端子」とされ、出願当初の「端子の先端」よりも発明の範囲が拡大しており、その拡大がなされた平成29年1月16日付けの補正は、新規事項の追加に該当し、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨、主張した。
しかしながら、訂正後の請求項1、5、6、及び7においては、半田片の端子側の端部が当接する位置が「端子の先端」とされたため、上記の主張は理由がないものとなった。

(2)明確性要件違反
特許異議申立人は、訂正前の請求項1及び3?7に関し、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反している旨、主張した。
しかしながら、訂正により、それらの主張は理由がないものとなった。具体的には、次のとおりである。
特許異議申立人は、訂正前の請求項1における「前記当接位置」との文言の前に「当接位置」との文言がないから明確でない旨主張したが、訂正事項2-aにより、「前記当接位置」は、「前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置」となった。
特許異議申立人は、訂正前の請求項1における「案内部」がノズルのどの部分を指すのか明確でないとしたが、訂正事項2-aにより、「案内部」は「前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁」となった。
特許異議申立人は、訂正前の請求項3における「太く短い形状」が何に対して太く短いことをいうのかが不明である旨主張したが、訂正事項4により、訂正前の請求項3は削除された。そして、訂正前の請求項3の発明特定事項が訂正前の請求項1及び2にそれぞれ追加されたものの、訂正前の請求項3にあった「溶融前の前記半田片を前記当接位置で溶融させ太く短い形状に変形させる構成である」との記載は、訂正後の請求項1及び2のそれぞれにおいて、「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」となった。
特許異議申立人は、訂正前の請求項4における「空間の中心軸に垂直な端面の最小幅」がどの部分を意味しているかが不明であるとしたが、訂正事項5-bにより、「前記溶融部の前記ノズルの内壁に囲まれた空間の中心軸に垂直な端面の最小幅」は「前記溶融部の前記ノズルの内径」となった。

(3)新規性欠如
特許異議申立人は、訂正前の請求項1?7に係る発明について、それら各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから新規性がなく、また甲第2号証に記載された発明であるから新規性がないとも主張した。
しかしながら、上記第3の3.ないし5.にて検討したとおり、訂正後の請求項1、2、及び4ないし7に係る発明の各々と、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明の各々との間には、相違点が存在するから、新規性欠如との取消理由は成り立たない。この点はまた、上記6.に照らしても明らかである。

第4 むすび
本件発明1、2、及び4ないし7に係る特許は、平成30年2月20日付けの取消理由通知及び同年9月7日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、並びに、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、他に本件発明1、2、及び4ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てにおいて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノズルの内壁、
または、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁、
により構成され、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
半田付け装置。
【請求項2】
端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル内で前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する当接位置に留めるように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
半田付け装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記ノズルは、前記端子の先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前記半田片が前記ノズルの内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記ノズルの内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さい
請求項1または2記載の半田付け装置。
【請求項5】
請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す
半田付け方法。
【請求項6】
請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、
当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記電子部品の端子をプリント基板のランドに半田付けする
プリント基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に必ず当接させ、当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して前記加熱手段により前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記端子と前記接続対象を半田付けする
製品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-19 
出願番号 特願2016-150884(P2016-150884)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H05K)
P 1 651・ 113- YAA (H05K)
P 1 651・ 16- YAA (H05K)
P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 55- YAA (H05K)
P 1 651・ 851- YAA (H05K)
P 1 651・ 537- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原田 貴志  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 大町 真義
尾崎 和寛
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6138324号(P6138324)
権利者 株式会社パラット
発明の名称 半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、および製品の製造方法  
代理人 西原 広徳  
代理人 西原 広徳  

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