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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1351376
異議申立番号 異議2018-700005  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2019-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6159385号発明「液晶表示装置用モジュール及びこれを含む液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6159385号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。 特許第6159385号の請求項1ないし2、6ないし19に係る特許を維持する。 特許第6159385号の請求項3ないし5に係る異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6159385号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、平成27年12月29日(パリ条約による優先権主張:2014年12月31日 韓国、2015年11月3日 韓国)に特許出願され、平成29年6月16日付けでその特許権が設定登録され、同年7月5日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年1月5日に特許異議申立人 大森英恵(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし19に対して特許異議の申し立てがされ、同年3月13日付けで取消理由が通知され、同年6月14日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、同年8月1日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年8月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月30日付け(同年12月3日受付)で意見書の提出及び訂正請求(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)がされ、平成31年1月16日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターン、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターン、または、頂上部に曲面を有し、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターンを含む」とあるのを、「前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンを含み」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターン、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターン、または、頂上部に曲面を有し、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターンを含む」の後に、「前記高屈折率パターン層は、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、
前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である」を付加する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターン、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターン、または、頂上部に曲面を有し、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターンを含む」の後、訂正事項2に係る記載の前に、「前記陰刻パターンのアスペクト比は0.7?1.0であり、幅は5μm?20μmであり、最大高さは5μm?20μmであり、」を付加する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「陰刻パターン」を「レンチキュラーレンズパターン、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターン、または、頂上部に曲面を有し、断面が三角形状?十角形状であるプリズムパターンを含む」ものから、「レンチキュラーレンズパターンを含」むものに限定するものであるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記アから明らかなように上記訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 上記訂正事項1に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0053】に「高屈折率パターン層122には第1の面124を有し、第1の面124には、一つ以上の陰刻パターン127と平坦部126とが形成されている。図2及び図3は、一つの陰刻パターン127と一つの平坦部126とが交互に配置された光学フィルムを示したものであるが、陰刻パターン127と平坦部126のそれぞれの形成順序は限定されない。図2及び図3は、陰刻パターン127が曲面を含むレンチキュラーレンズパターンである場合を例示するが、本発明がこれに限定されることはない。」(下線は、当審が付加した。以下同様。)と記載されている。

よって、上記訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 上記訂正事項2は、「高屈折率パターン層」として、(訂正事項2-1)「前記高屈折率パターン層は、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み」、(訂正事項2-2)「前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である」と訂正するものからなる。

そして、(訂正事項2-1)は、「高屈折率パターン層」の形状を「互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含」むものに限定し、(訂正事項2-2)は、「高屈折率パターン層」を「前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である」ものに限定するものであるから、上記訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記アから明らかなように上記訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 上記(訂正事項2-1)に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0053】に「高屈折率パターン層122には第1の面124を有し、第1の面124には、一つ以上の陰刻パターン127と平坦部126とが形成されている。」と記載され、上記(訂正事項2-2)に関し、同段落【0053】に「高屈折率パターン層122の全体幅(A)に対する陰刻パターン127の最大幅(P3)の和(B)の比率(B/A)は、約40%?約60%であってもよく、具体的には約45%?約55%であってもよい。」と記載されている。

よって、上記訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

(3)訂正事項3について
ア 上記訂正事項3は、「陰刻パターン」として、(訂正事項3-1)「前記陰刻パターンのアスペクト比は0.7?1.0であり」、(訂正事項3-2)「幅は5μm?20μmであり」、(訂正事項3-3)「最大高さは5μm?20μmであり」と訂正するものからなる。

そして、(訂正事項3-1)、(訂正事項3-2)、(訂正事項3-3)は、それぞれ「陰刻パターン」の「アスペクト比」が「0.7?1.0」であるもの、「幅」が「5μm?20μm」であるもの、「最大高さ」が「5μm?20μm」であるものに限定するものであるから、上記訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記アから明らかなように上記訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 上記(訂正事項3-1)に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0053】に、「陰刻パターン127は、アスペクト比(H3/P3)が約1.0以下であってもよく、具体的には約0.4?約1.0、より具体的には約0.7?約1.0であってもよい。」と記載され、上記(訂正事項3-2)に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0054】に、「陰刻パターン127の幅(P3)は、約30μm以下であってもよく、具体的には約5μm?約20μmであってもよい。」と記載され、上記(訂正事項3-3)に関し、同段落【0054】に、「陰刻パターン127の最大高さ(H3)は、約20μm以下であってもよく、具体的には約15μm以下、より具体的には約5μm?約15μm、さらに具体的には約5μm?約10μmであってもよい。」と記載されている。

よって、上記訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

(4)訂正事項4ないし6について
上記訂正事項4ないし6は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正における一群の請求項の存否
訂正前の請求項1ないし19は、請求項2ないし19が請求項1の記載を直接的または間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、本件特許の請求項1ないし19に係る訂正の請求は一群の請求項として請求された訂正である。

3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 当審の判断
(1)本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし19係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の偏光板、第2の偏光板、及び前記第1の偏光板と前記第2の偏光板との間に位置する液晶パネルを含み、
前記第2の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子上に配置された光学フィルムを含み、
前記光学フィルムは、一つ以上の陰刻パターンを有する高屈折率パターン層、及び前記陰刻パターンの少なくとも一部を充填する充填パターンを含む低屈折率パターン層を含み、前記高屈折率パターン層と前記低屈折率パターン層との屈折率差は0.1?0.2であり、
前記光学フィルムは、前記液晶パネルから出射された光が前記低屈折率パターン層に入射され、前記高屈折率パターン層を介して出射されるように配置され、
前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層が順次積層され、
前記陰刻パターンはストライプ状に延長された形態に形成された光学フィルムであり、
前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンを含み、
前記陰刻パターンのアスペクト比は0.7?1.0であり、幅は5μm?20μmであり、最大高さは5μm?20μmであり、
前記高屈折率パターン層は、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、
前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である、液晶表示装置用モジュール。
【請求項2】
前記液晶パネルはPVAモードである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記低屈折率パターン層は、屈折率が1.50未満である、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項7】
前記高屈折率パターン層は、屈折率が1.50以上である、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項8】
前記充填パターンは、前記陰刻パターンを完全に充填するものである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項9】
前記第2の偏光板は、前記光学フィルム上に配置された第2の保護層をさらに含む、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項10】
前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層、及び前記第2の保護層が順次積層された積層構造を有する、請求項9に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項11】
前記第2の偏光板は、前記偏光子、第2の保護層、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された高屈折率パターン層が順次積層された積層構造を有する、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項12】
前記第2の保護層は、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、及び環状オレフィンポリマーのうち一つ以上の樹脂を含む、請求項11に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項13】
前記第2の偏光板は機能層をさらに含み、
前記機能層は、前記第2の保護層または前記高屈折率パターン層上に別途の層として配置される、または、前記第2の保護層または前記高屈折率パターン層の一面が前記機能層である、請求項10に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項14】
前記第1の偏光板の下部に配置された複合光学シートをさらに含み、
前記複合光学シートは、一面に一つ以上の第1のプリズムパターンを含む第1の光学シート、及び前記第1の光学シート上に配置され、一面に一つ以上の第2のプリズムパターンを含む第2の光学シートを含み、前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンであって、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含む、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項15】
前記第1の偏光板の下部に配置された複合光学シートをさらに含み、
前記複合光学シートは、一面に一つ以上の第1のプリズムパターンを含む第1の光学シート、及び前記第1の光学シート上に配置され、一面に一つ以上の第2のプリズムパターンを含む第2の光学シートを含み、前記陰刻パターンはプリズムパターンである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項16】
前記液晶表示装置用モジュールは、前記複合光学シートの下部に配置された拡散板と光源とを含む、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項17】
前記液晶表示装置用モジュールは、前記複合光学シートの下部に配置された導光板及び光源をさらに含み、前記光源は前記導光板の側面に配置される、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項18】
前記複合光学シートは、-40゜?+40゜の出射角で光を出射させる、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項19】
請求項1の液晶表示装置用モジュールを含む液晶表示装置。」

(2)取消理由(決定の予告)の概要
平成30年8月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、訂正前の請求項1ないし4、6ないし19に係る特許は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるというものである。


甲第1号証:特開平10-96924号公報
甲第2号証:西川善司、「サムスンPVAを斬る!最新版液晶パネル技術の全解説」、マイナビニュース、株式会社マイナビ、インターネット、2010年9月3日、<URL:https://news.mynavi.jp/article/20100903-lcd/4>
甲第3号証:特開2011-118393号公報
甲第4号証:特開2012-145944号公報
甲第5号証:井出文雄監修、「ディスプレイ用光学フィルムの開発動向」、株式会社シーエムシー出版、2008年11月23日
甲第6号証:済木雄二、「LCD用偏光板の技術動向」、日本ゴム協会誌、社団法人日本ゴム協会、第84巻、第8号、237?241頁、2011年、インターネット、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/84/8/84_8_237/_pdf>

(3)引用文献の記載
ア 甲第1号証について
甲第1号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造を有する透明基材における前記プリズム状凹凸の少なくとも凹部を、屈折率が異なる固体又は液状流動体で埋設してなることを特徴とする光路制御板。
【請求項2】 請求項1において、透明基材と埋設材の屈折率差が0.01以上である光路制御板。
・・・(略)・・・
【請求項4】 請求項1?3において、透明基材におけるプリズム状凹凸が規則的又は不規則な断面三角形、断面台形、三角柱、三角錐、曲面又は円形面からなる連続面又は不連続面である光路制御板。
・・・(略)・・・
【請求項6】 請求項1?5に記載の光路制御板を液晶セルの視認側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】従来、液晶表示装置における視野角拡大等の視認特性を向上させるための光路制御板としては、表面を粗面化したシートや反射性粒子を含有させたシート等からなる拡散シート、あるいはレンズシートが知られていた。しかしながら、臨界角以上の入射光が表面での全反射で戻り光となるバックスキャッタが多くて画面が白け、コントラストの低下で視認性の向上が困難な問題点があった。
【0003】
【発明の技術的課題】本発明は、入射光の分割拡散機能又は混合集収機能に優れる光路制御板を得ると共に、それにより視野角の拡大やモアレの防止等による視認特性が改善された液晶表示装置を得ることを目的とする。
【0004】
【課題の解決手段】本発明は、表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造を有する透明基材における前記プリズム状凹凸の少なくとも凹部を、屈折率が異なる固体又は液状流動体で埋設してなることを特徴とする光路制御板、及びその光路制御板を液晶セルの視認側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0005】
【発明の効果】本発明によれば、表面反射によるバックスキャッタが少なくてコントラストの低下を防止でき、画像光の拡大や方向制御、あるいはモアレの発生防止などの視認特性の向上性に優れる光路制御板を得ることができる。その結果、かかる光路制御板を用いて液晶式等の表示装置における視野角の拡大、上下ないし左右方向における視認性の均等化、又はモアレの発生防止などの種々の視認特性を大幅に改善することができる。」

(ウ)「【0006】
【発明の実施形態】本発明の光路制御板は、表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造を有する透明基材における前記プリズム状凹凸の少なくとも凹部を、屈折率が異なる固体又は液状流動体で埋設したものからなる。その例を図1(a),(b)に示した。1が透明基材、2が埋設層である。」

(エ)「【0008】透明基材の表面における微細なプリズム状凹凸は、多数の凹凸の繰返し構造として設けられる。そのプリズム状凹凸の形態については、特に限定はなく、例えば図2(a),(b),(c)の如く三角形11,12や台形13等の断面形態、あるいは図2(d)の如くレコード盤の如き曲面ないし円形面14からなる形態、その他、三角柱や三角錐やドーム形からなる形態、階段状ないしステップ部を有する多段形態などの適宜な形態とすることができる。またプリズム状凹凸は、図2(d)や図3(a)に例示の如く連続面14,15として形成されていてもよいし、図2(c)や図3(b)に例示の如く不連続面13,16,17として形成されていてもよい。
・・・(略)・・・
【0010】上記したプリズム状凹凸の形態やその繰返し構造等を制御することにより、目的とする視認特性の改善に有利な光路制御板を得ることができる。ちなみに液晶表示装置等における、上下や左右方向の視野角特性の改善には、図2(a),(b),(c)に例示の如き三角状や台形状の凹凸のストライプ状又は格子状等の一定ピッチによる規則的な配列が有利であり、画素に由来するモアレの発生を防止する点よりは、レコード盤の溝形状の如く不定形の曲線斜面やグレイズ等の不規則な配置からなるプリズム状凹凸が有利である。」

(オ)「【0013】プリズム状凹凸を形成する斜面の傾斜角は、目的とする光路の制御方向や光の利用効率、斜め入射光のカット角などに応じて適宜に決定される。一般には、透明基材における水平面を基準に70度以下、就中5?60度、特に10?50度の傾斜面を少なくとも1面有する構造とされる。従って本発明においては、図2(b)に例示の如く傾斜角が90度の面を有する構造も許容され、これは上又は下方向、あるいは左又は右方向などの光路の一方向を制御する場合などに好ましく用いうる。
【0014】またプリズム状凹凸の幅(ピッチ)は、使用目的などに応じて適宜に決定でき、一般には1mm以下、就中500μm以下、特に5?300μmとされる。液晶表示装置に用いる場合には、液晶セルの画素ピッチよりも小さいピッチ、就中1/2以下、特に1/3以下のピッチでプリズム状凹凸の繰返し構造を形成したものが、モアレの防止や視野角の拡大などの点より特に好ましい。
【0015】ちなみにカラー化液晶セルにおける各色の画素を100μm×300μmとし、それを縦長に配列したピッチとした場合、縦長のプリズム状凹凸を100μm以下、就中50μm以下、特に30μm以下のピッチで有する光路制御板をその凹凸の縦長方向を画素の縦長(垂直)方向に対応させて配置することで、モアレの発生なく横(水平)方向の視野角を拡大することが可能となる。なおプリズム状凹凸のピッチは、回折現象を抑制する点より5μm以上とすることが好ましい。
【0016】プリズム状凹凸を設けた透明基材の厚さは、使用目的等による光路の制御度などに応じて適宜に決定できるが、一般には薄いほど好ましく、3mm以下、就中10μm?1mm、特に30?500μmとされる。またプリズム状凹凸の高さないし深さも使用目的等に応じて適宜に決定でき、一般には1mm以下、就中0.1?800μm、特に1?300μmとされる。」

(カ)「【0017】本発明の光路制御板は、図1に例示の如く透明基材1に設けたプリズム状凹凸の少なくとも凹部を、屈折率が異なる固体又は液状流動体2で埋設したものである。その埋設材としては固体又は液状流動体の適宜なものを用いることができ、光路の制御性や反射損の防止性などの点より、透明基材との屈折率差が0.01以上、就中0.02?0.4、特に0.03?0.3の埋設材が好ましく用いうる。」

(キ)「【0022】光路制御板は、2枚以上の透明基材を用いた積層物として形成することもでき、また表面に反射光による視認妨害の防止等を目的とした防眩処理や反射防止処理などを施すこともできる。その防眩処理や反射防止処理は、従来に準じて施すことができ、ちなみに反射防止層は、例えばフッ化マグネシウムや屈折率が1.38以下のフッ素系樹脂等を用いてなる50?300nm厚の低屈折率透明膜や多層薄膜などとして形成することができる。
【0023】また光路制御板には、被着体への接着を目的とした粘着層を設けることもできる。粘着層の付設は、適宜な塗工機を用いて粘着剤を塗工する方式や、セパレータ上に設けた粘着層を移着する方式などの適宜な方式で行うことができる。粘着層の厚さは、使用目的に応じて決定でき、一般には1?500μmとされる。付設した粘着層は、実用に供するまでの間、セパレータなどを仮着して保護しておくことが好ましい。」

(ク)「【0025】本発明の光路制御板は、図1(a)に矢印で示した如く、入射光の分割拡散機能又は混合集収機能を示すものであり、プリズム状凹凸の形状や大きさ、配置形態やピッチなどで光路を制御ができ、バックスキャタ等によるコントラストの低下、特に黒表示の低下を有効に防止することができると共に、視認特性の改善目的に応じた光路制御板を用いることで、視野角の調節や拡大、モアレの防止などの視認特性の向上をはかることができる。
【0026】従って本発明の光路制御板は、例えば表示装置における画像光の拡散などの種々の目的に用いることができる。特にプロジェクションテレビの如き各種のプロジェクション式の表示装置や液晶式の表示装置などにおけるコントラストを維持した、画像光の視野角拡大やモアレ防止などに好ましく用いることができる。
【0027】光路制御板の各種装置への適用に際しては、液晶セル等の表示主体の適宜な位置に配置することができ、就中、視認性の向上には視認側への配置が好ましい。また視認側への配置に際してもその位置は適宜に決定でき、例えば液晶セル等の表示主体の表面や、その装置全体の表面などの適宜な位置に1層又は2層以上を配置することができる。特に上記したように、複屈折による位相差の少ない光路制御板は、液晶表示装置の外表面のほか、偏光板や位相差板の内側にも好ましく配置することができる。
【0028】ちなみに図5、図6に本発明の光路制御板を有する液晶表示装置を例示した。図5は液晶セルの視認側表面に光路制御板を配置したものであり、図6は装置全体の視認側表面に光路制御板を配置したものである。なお図5、図6において、3は光路制御板、5は偏光板、6はカラー表示式の液晶セル、7はバックライトシステム、8は位相差板である。
【0029】液晶表示装置は一般に、偏光板や液晶セル、及び必要に応じてのバックライトや反射板や位相差板等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより構成されるが、本発明においては上記した光路制御板を用いる点を除いて特に限定はなく従来に準じて形成することができ、プロジェクション式の表示装置等の他の用途においても同様である。
【0030】前記において、左右又は上下方向の視野角を拡大するための光路制御板としては、図2aに例示の如き三角状のプリズム状凹凸を例えばストライプ状や縦列(横列)の如く一方向に有するものが特に好ましい。これによれば、そのプリズム状凹凸の形成方向に基づいて視認における視野角の拡大方向を制御することができる。ちなみにプリズム状凹凸がストライプの場合、そのストライプ方向を画面の縦方向として配置することで画面の左右方向の視野角を拡大でき、またストライプ方向を画面の横方向として配置することで画面の上下方向の視野角を拡大することができる。
【0031】従って、画面の視野角を改善したい視認方向と垂直な方向にプリズム状凹凸を配列させることで、目的方向の視野角を拡大することができる。なおプリズム状凹凸の配列が一方向でない場合における視野角の拡大方向は、各プリズム状凹凸の各方向毎の斜面の合計面積と傾斜角、屈折率差より算出される屈折力の積分により算定でき、その積分値が最大となる方向が視野角の最大拡大方向である。」

(ケ)「【0034】
【実施例】
実施例1
屈折率(n_(d)、以下同じ)1.59のポリカーボネートシートの片表面に稜角90度の三角柱(図2a)をストライプ状に100μmピッチで隣接形成してなる市販のプリズムシートのプリズム形成面に、屈折率1.40のトリフルオロエチルアクリレート90部(重量部、以下同じ)と屈折率1.48の架橋剤10部と光反応開始剤5部を配合してなる屈折率1.41の埋設材を塗布し、紫外線照射で硬化させて、プリズム部を埋設層(屈折率差0.18)で密着充填した厚さ300μmの光路制御板を得た。
【0035】前記の光路制御板を市販のスーパーツイスト型液晶表示装置の表面にその画素と対応した縦方向のストライプ状態で厚さ20μmのアクリル系粘着層を介し接着したところ、画面の正面(垂直)方向を基準とした左右方向の±60度の範囲で画像反転のない良好な視認を示した。なお光路制御板を用いないブランク状態で液晶表示装置を視認した場合、左右方向における画像反転のない良好な視認範囲は、±30度の範囲であった。
【0036】実施例2
屈折率1.49のポリメチルメタクリレートシートの片表面に稜角90度の三角柱をストライプ状に100μmピッチで隣接形成してなる市販のプリズムシートのプリズム形成面に、屈折率1.33の蒸留水を塗布し、その埋設層(屈折率差0.16)を厚さ100μmのガラス板で封止して厚さ400μmの光路制御板を得、それを実施例1に準じて液晶表示装置の表面に接着したところ、左右方向±50度の範囲で画像反転のない良好な視認を示した。また界面での反射等による表示品位の低下も認められなかった。
【0037】実施例3
実施例1で用いた屈折率1.41の埋設材を市販のLPレコード(プリズム稜角90度)の表面に塗布し、厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムで封止して紫外線照射で硬化させたのち剥離し、透明基材を得た。その基材におけるプリズム状凹凸は、稜角90度のプリズム面を有する不均一な台形の連続体からなり、円形状のプリズム部の円弧に微細なウネリを有してその繰返し構造は不均一不規則な周期であった。
【0038】次に、前記の透明基材のプリズム形状転写面に、屈折率1.59のスチレン90部と屈折率1.48の架橋剤10部と光反応開始剤5部を配合してなる屈折率1.58の埋設材を塗布し、厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムで封止して紫外線照射で硬化させ、プリズム部を埋設層(屈折率差0.17)で密着充填した厚さ500μmの光路制御板を得、それを実施例1に準じて液晶表示装置の表面に接着したところ、画素との干渉がなくてモアレのない良好な視認を示した。
【0039】実施例4
プリズムシートに、45度と90度の傾斜面からなる屋根型のプリズム状凹凸(図2b)を有するものを用いたほかは実施例1に準じて光路制御板を得、それを低屈折率側を介し、かつストライプ方向を画面の左右方向とすると共に、90度傾斜面が上側となるように液晶表示装置の表面に接着したところ、上下方向における視野角特性の不揃いが解消されて上下方向各30度の範囲で良好な視認を示し、対称な視野角特性が得られた。なお光路制御板を用いないブランク状態で液晶表示装置を視認した場合、上下方向における良好な視認範囲は、上方向で40度、下方向で20度であった。」

(コ)図1は次のものである。


(サ)図2は次のものである。


(シ)図6は次のものである。


(ス)図6を参考に、上記(ク)の「図6は装置全体の視認側表面に光路制御板を配置したものである。なお図5、図6において、3は光路制御板、5は偏光板、6はカラー表示式の液晶セル、7はバックライトシステム、8は位相差板である。」からみて、視認側から、光制御板3、視認側偏光板5、位相差板8、カラー表示式の液晶セル6、バックライト側偏光板5の順で積層されていることが読み取れる。

(セ)上記(ケ)の実施例1ないし実施例4の透明基材の屈折率及び埋設材の屈折率からみて、透明基材の屈折率は、埋設層の屈折率より高いことが読み取れる。

(ソ)図1、6を参考に、上記(ケ)の「プリズムシートに、45度と90度の傾斜面からなる屋根型のプリズム状凹凸(図2b)を有するものを用いたほかは実施例1に準じて光路制御板を得、それを低屈折率側を介し、かつストライプ方向を画面の左右方向とすると共に、90度傾斜面が上側となるように液晶表示装置の表面に接着」から、光路制御板は、埋設層側が液晶セルに配置されることが読み取れる。

(タ)図2を参考に、上記(ク)の「左右又は上下方向の視野角を拡大するための光路制御板としては、図2aに例示の如き三角状のプリズム状凹凸を例えばストライプ状や縦列(横列)の如く一方向に有するものが特に好ましい。」から、光路制御板の透明基材は、プリズム状凹凸をストライプ状に有することが読み取れる。

上記記載から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「光路制御板、視認側偏光板、位相差板、カラー表示式の液晶セル、バックライト側偏光板の順で積層され、
前記光路制御板は、表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造を有する透明基材と、屈折率が異なる固体又は液状流動体からなる埋設層とからなり、
前記透明基材の屈折率は、前記埋設層の屈折率より高く、
前記透明基材と前記埋設層の屈折率差が0.01以上であり、
前記光路制御板は、前記埋設層側が前記液晶セルに配置され、
前記透明基材は、プリズム状凹凸をストライプ状に有し、
前記プリズム状凹凸の形態は、ドーム形からなる形態であり、
光路制御板を液晶セルの視認側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置。」

イ 甲第2号証について
甲第2号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「サムスンのPVA液晶の仕組み
サムスンの「PVA型液晶は、マルチドメイン化を実現したMVA液晶になる。垂直配向する液晶を4方向に倒すために、独自の「斜め電界法」を考案し、この分野の筆頭になったのだ。
・・・(略)・・・
まとめると、PVA型液晶は、マルチドメイン化をさらに押し進めた改良型のVA型液晶であり、視野角の問題を徹底的に克服させたバージョンということができる。これは視線が左右方向にも、上下方向にも行くことになる大型サイズの液晶パネルには欠かせない技術である。」(「サムスンのPVA液晶の仕組み」の1?4段落)

上記記載から、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「マルチドメイン化をさらに押し進めた改良型のVA型液晶であり、視野角の問題を徹底的に克服させたバージョンということができる。これは視線が左右方向にも、上下方向にも行くことになる大型サイズの液晶パネルには欠かせないPVA型液晶。」

ウ 甲第3号証について
甲第3号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルムであって、
層をなすバックグラウンド層と、
前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部と、を含み、
液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で上記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させ、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させることを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルム。
【請求項2】
前記レンズ部は、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が0.25以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルム。
【請求項3】
前記レンズ部は、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5?0.95であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルム。」(【特許請求の範囲】)

(イ)「【0028】
上記構成を有する本発明では、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することで、ディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができるという効果を奏する。」

(ウ)「【0046】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムを示す断面図及び斜視図であり、図9は、本発明の第3の実施形態に係るレンズ部を示す断面図である。
【0047】
レンズ部が、三角形断面及び半円形断面を有することができることを示している。
【0048】
図10及び図11は、それぞれ本発明の第4の実施形態及び第5の実施形態に係るレンズ部を示す断面図である。」

(エ)「【0052】
バックグラウンド層の屈折率を1.5、バックグラウンド層の厚さを100μmとし、レンズ部を両面半円形断面形態で形成し、レンズ部の幅(半円直径)を30μm、レンズ部間の間隔を90μmとして光学フィルムを製造し、視聴角の増大に伴うフルホワイトのカラーシフトを測定して、図13に示すような結果を得た。」

(オ)「【0064】
目視にて区別できるカラーシフトの程度は、Du'v'=0.004以上である。したがって、視聴角0°から60°の間で最大Du'v'=0.02水準のカラーシフトを有するディスプレイパネル(カラーシフト特性が最も優れているS-IPSパネル基準)が目視にて区別できるカラーシフト改善効果を示すためには、少なくとも色変化の改善率が20%以上(最大Du'v'=0.016以下)でなければならない。図16のグラフから、色変化の改善率が20%以上になるためには、レンズ部の深さ/幅の比が0.25以上でなければならないことが分かる。また、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が6を超えると、通常のレンズ部形成方法ではフィルムの製造が不可能であるため、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比は6以下にならなければならない。
【0065】
図17は、レンズ部間の間隔c/ピッチPの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【0066】
同様に、図17のグラフから、カラーシフト改善率が20%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.95以下でなければならない。
【0067】
図18は、レンズ部間の間隔c/ピッチPの比と透過率との関係を示す図である。
【0068】
図18のグラフから分かるように、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が大きいほど、フィルム透過率は上がる。フィルム透過率が50%以上になってはじめて商品としての価値があり、透過率が50%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5以上にならなければならない。
【0069】
したがって、図17及び図18のグラフから、好適なレンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5?0.95にならなければならないことが分かる。」

(カ)「【0071】
図19に示すように、レンズ部(レンズ部の幅27μm、深さ81μm、ピッチ90μm)の曲率を変化させながら、二重像(ghost)を観察した結果、半楕円形断面を有するレンズ部が二重像の発生を最も効果的に抑制することができる。」

(キ)「【0076】
図27及び図28は、それぞれ本発明の第9の実施形態及び第10の実施形態に係るディスプレイ装置を概略的に示す図であって、本発明のカラーシフト低減光学フィルムの二重像及びヘイズの除去に係る方案を示す図である。
・・・(略)・・・
【0078】
このとき、レンズ部は、視聴者側でないディスプレイパネル側と向き合った方がヘイズ低減の面で好ましい。(これは、カラーシフト低減光学フィルムがディスプレイパネルと離間して設けられる場合にも同様である。)
【0079】
ここで、自己粘着性を有するバックグラウンド層は、紫外線で硬化が可能な透明弾性重合体からなり、容易にディスプレイパネルに直接付着できる。材料としては、アクリル系エラストマー、シリコン系エラストマー(PDMS)、ウレタン系エラストマー、ポリビニルブチラール(PMB)エラストマー、エチレン-酢酸ビニル系(EVA)エラストマー、ポリビニルエーテル系エラストマー、無定形の飽和ポリエステル系エラストマー、メラミン樹脂系エラストマーなどを使用することができる。
【0080】
未説明の図面符号25は、バックグラウンド層21を支持するバッキングであって、例えば、ガラス基板であればよい。また、未説明の図面符号27は反射防止層を示す。」

(ク)「【0088】
図32は、図5のS-PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性をもつカラーシフト低減光学フィルム(レンズ部の幅30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。」

(ケ)「【0090】
図33は、カラーシフト低減光学フィルムを具備していないS-IPSモードLCD TVの色変化を示す図であり、図34は、図33のLCDTVに自己粘着性をもつカラーシフト低減光学フィルム(レンズ部の幅30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。」

(コ)「【0096】
【表2】



(サ)図9は次のものである。


(シ)図10は次のものである。


(ス)図16は次のものである。


(セ)図17は次のものである。


(ソ)図18は次のものである。


(タ)図27は次のものである


(チ)図9、10を参考に、上記(ウ)、(オ)の記載から、光学フィルムのレンズ部が、半円形断面と平坦部からなり、平坦部/レンズ部のピッチが0.5?0.95であることが読み取れる。

上記記載から、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することで、S-PVAモードLCDTVであるディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができる液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルムであって、フィルムのレンズ部が、半円形断面と平坦部からなり、平坦部/レンズ部のピッチが0.5?0.95である光学フィルム」

エ 甲第4号証について
甲第4号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルムであって、
層をなすバックグラウンド層と、
前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部とを含み、
液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、
レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、前記レンズ部の断面の輪郭線は、第1の辺、第2の辺、及び第3の辺を含み、前記第1の辺と第2の辺とは互いに向き合い、前記第3の辺は、前記第1の辺と第2の辺とを連結し、前記第3の辺の平均曲率は、前記第1の辺の平均曲率及び前記第2の辺の平均曲率よりも小さいことを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルム。
・・・(略)・・・
【請求項7】
前記レンズ部の深さ/幅の比が2以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルム。」(【特許請求の範囲】)

(イ)「【0027】
前記構成によれば、本発明は、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することでディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができるという効果を奏する。」

(ウ)「【0054】
目視にて区別できるカラーシフトの程度は、Δu'v'=0.004以上である。したがって、視聴角0°から60°の間で最大Δu'v'=0.02水準のカラーシフトを有するディスプレイパネル(カラーシフト特性が最も優れているS-IPSパネル基準)が目視にて区別できるカラーシフトの改善効果を示すためには、少なくとも色変化の改善率が20%以上(最大Δu'v'=0.016以下)でなければならない。図15のグラフにおいてカラーシフトの改善率が20%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.95以下でなければならない。
【0055】
図16は、レンズ部の間隔c/ピッチPの比と透過率との関係を示す図である。
【0056】
図16のグラフから分かるように、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が大きいほど、フィルム透過率は上がる。フィルム透過率が50%以上になってはじめて商品としての価値があり、透過率が50%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.5以上になる必要がある。
【0057】
したがって、図15及び図16のグラフから、好適なレンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比は0.5?0.95にならなければならないことが分かる。」

(エ)「【0059】
図17に示すように、レンズ部(レンズ部の幅27μm、深さ81μm、ピッチ90μm)の曲率を変化させながら、二重像を観察した結果、半楕円形断面を有するレンズ部が二重像の発生を最も効果的に抑制することができる。」

(オ)「【0072】
図29は、図5のS-PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減光学フィルム(レンズ部の幅は30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。」

(カ)「【0074】
図30は、比較実施形態のカラーシフト低減光学フィルムを具備していないS-IPSモードLCD TVの色変化を示す図であり、図31は、図30のLCD TVに自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減光学フィルム(レンズ部の幅30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。」

(キ)「【0089】
なお、レンズ部の深さ/幅の比を増大させると、下表2から分かるように、色変化の改善率と透過率は向上する。
【表2】



(ク)「【0092】
レンズ部を、次表3のように作製して二重像の発生程度を測定した。
【表3】



(ケ)「【0095】
図50は、比較実施形態のカラーシフト低減光学フィルムの色変化の改善率が相対的に低い原因を示す図であり、図51は、色変化の改善率の向上をもたらす、本発明のカラーシフト低減光学フィルムを概略的に示す図である。」

(コ)「【0097】
このような観点から、レンズ部の深さ/幅の比が2以下の範囲内では、二重像を人が認知しにくい。この範囲内で、二重像の強さは減少し、また原像との距離も減少するようになる。しかしながら、表2に表すように、この範囲内で比較実施形態に係るカラーシフト低減光学フィルムによって得られる最大の色変化の改善率は38%であった。したがって、38%の相対的に低い色変化の改善率を向上させることができる方案が要求される。」

(サ)「【0105】
第3の辺23cの大きさ(ボトム幅)が増大するほど、下表4に表すように、色変化の改善率は向上し、透過率はそのまま保たれる。ボトム幅が0よりも大きいとき、色変化の改善率が増大しはじめ、ピッチの1/3になる時点が限界となるので、好ましくは、0<ボトム幅/ピッチ≦1/3の関係を満たす。また、図15及び図16を参照するとき、好ましくは、0.5≦1-(トップ幅-ボトム幅)/ピッチ≦0.95を満たす。
【表4】



(シ)図10は次のものである。


(ス)図15は次のものである。


(セ)図16は次のものである。


(ソ)図51は次のものである。


(タ)図10、図51を参考に、上記(ウ)、(オ)の記載から、光学フィルムのレンズ部が、半楕円形断面と平坦部からなり、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5?0.95であることが読み取れる。

上記記載から、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。

「視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することで、S-PVAモードLCDTVであるディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができる液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルムであって、フィルムのレンズ部が、半楕円形断面と平坦部からなり、平坦部/レンズ部のピッチが0.5?0.95である光学フィルム」

オ 甲第5号証について
甲第5号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「5 表面反射防止付偏光フィルム
明るい環境下では、LCDの表面で外光が反射し,画像の視認性が著しく低下する。そのためフロント側に用いられる偏光フィルムの表面には,反射防止処理が施されるのが一般的である。」(71頁1?3行)

(イ)「2 偏光板の構成
偏光板は,一般にPVAフィルムを一軸延伸して染色するか,または染色して一軸延伸した後,ホウ素加工物で固定処理を行うことにより得られた偏光フィルムに,三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた構成となっている(図3)。
PVAフィルムを一軸延伸することにより,PVA分子に吸着する二色性染料を配向させさせ,一定方向(直線偏光)だけ透過する偏光板が得られる(図4)。」(84頁2?85頁2行)

(ウ)図4は次のものである。


上記記載から、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。

「PVAフィルムからなる偏光子の両側に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた偏光板」

カ 甲第6号証について
甲第6号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「 3.2吸収型偏光板
3.2.1PVA-ヨウ素系偏光板
現在,量産されている偏光板には,ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素化合物を吸着して配向させたヨウ素系偏光板,ヨウ素の代わりに2色性有機染料を用いた染料系偏光板がある.染料系偏光板は耐久性に優れており,一部の高耐久が必要な車載用ディスプレイやプロジェクターなどで使用されている.TVなどの一般的な多くのアプリケーションには透過率が高く,偏光特性にも優れているヨウ素系偏光板が使用されている.偏光板の基本的な構成をFigure3に示す.偏光板で偏光性能を発現させているのは,PVAフィルムにヨウ素化合物を吸着し,これを高次に延伸配向させ,高い可視光の吸収二色性を発現させた偏光子である.偏光子は機械的強度,耐熱性,耐湿性を確保する為にトリアセチルセルロース(TAC)などの,光学的に等方性の透明フィルムにより両面からラミネートされている.さらに,液晶セルへ固定するための粘着剤層,セパレータ(剥離紙),傷防止のための表面保護フィルムによって構成されている.」(238頁右欄3?21行)

(b)Figure3は、次のものである。


上記記載から、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ポリビニルアルコール(PVA)フィルムからなる偏光子の両側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの等方性の透明フィルムを貼り合わせた偏光板」

(4)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)本件特許発明1の「第2の偏光板」、及び、「第2の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子上に配置された光学フィルムを含み」と、甲1発明の「光路制御板、視認側偏光板」からなる構成とを対比する。

偏光板は、通常、偏光子の両側に、各種フィルムからなる光学部材を積層して構成されるものであり、甲1発明の「光路制御板」は、実施例では厚さ300μm?500μmのフィルム状であり、「視認側偏光板」に積層されるから、甲1発明の「光路制御板、視認側偏光板」からなる構成は、フィルムを有する偏光板である。

よって、甲1発明の「光路制御板、視認側偏光板」からなる構成は、本件特許発明1の「第2の偏光板」に相当し、甲1発明の「光路制御板」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。

(イ)甲1発明の「バックライト側偏光板」は、本件特許発明1の「第1の偏光板」に相当する。

(ウ)甲1発明の「カラー表示式の液晶セル」は、「光路制御板、視認側偏光板、位相差板、カラー表示式の液晶セル、バックライト側偏光板の順で積層され」るから、本件特許発明1の「前記第1の偏光板と前記第2の偏光板との間に位置する液晶パネル」に相当する。

(エ)甲1発明の「前記光路制御板は、表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造を有する透明基材と、屈折率が異なる固体又は液状流動体からなる埋設層とからなり、前記透明基材の屈折率は、前記埋設層の屈折率より高く、前記透明基材と前記埋設層の屈折率差が0.01以上であ」る構成は、「透明基材」が、「表面に微細なプリズム状凹凸の繰返し構造」による高屈折率の陰刻パターンを有しているといえ、「埋設層」が、「透明基材」を埋設して充填する低屈折率のパターンであるといえるから、本件特許発明1の「前記光学フィルムは、一つ以上の陰刻パターンを有する高屈折率パターン層、及び前記陰刻パターンの少なくとも一部を充填する充填パターンを含む低屈折率パターン層を含み、前記高屈折率パターン層と前記低屈折率パターン層との屈折率差は0.1?0.2であ」る構成に相当する。

(オ)甲1発明の「前記光路制御板は、前記埋設層側が前記液晶セルに配置され」る構成は、本件特許発明1の「前記光学フィルムは、前記液晶パネルから出射された光が前記低屈折率パターン層に入射され、前記高屈折率パターン層を介して出射されるように配置され」る構成に相当する。

(カ)甲1発明の「光路制御板、視認側偏光板」からなる構成は、「前記光路制御板は、前記埋設層側が前記液晶セルに配置され」、「光路制御板、視認側偏光板、位相差板、カラー表示式の液晶セル、バックライト側偏光板の順で積層され」るから、本件特許発明1の「前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層が順次積層され」る構成に相当する。

(キ)甲1発明の「前記透明基材は、プリズム状凹凸をストライプ状に有」する構成は、本件特許発明1の「前記陰刻パターンはストライプ状に延長された形態に形成された光学フィルム」に相当する。

(ク)甲1発明の「前記プリズム状凹凸の形態は、ドーム形からなる形態であ」る構成は、ドーム形のプリズム状凹凸の構造がレンチキュラーレンズであるから、本件特許発明1の「前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンを含」む構成に相当する。

(ケ)甲1発明の「液晶表示装置」は、液晶セルや偏光板等をモジュール構造としたものを含むものであるから、本件特許発明1の「液晶表示装置用モジュール」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「第1の偏光板、第2の偏光板、及び前記第1の偏光板と前記第2の偏光板との間に位置する液晶パネルを含み、
前記第2の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子上に配置された光学フィルムを含み、
前記光学フィルムは、一つ以上の陰刻パターンを有する高屈折率パターン層、及び前記陰刻パターンの少なくとも一部を充填する充填パターンを含む低屈折率パターン層を含み、前記高屈折率パターン層と前記低屈折率パターン層との屈折率差は0.1?0.2であり、
前記光学フィルムは、前記液晶パネルから出射された光が前記低屈折率パターン層に入射され、前記高屈折率パターン層を介して出射されるように配置され、
前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層が順次積層され、
前記陰刻パターンはストライプ状に延長された形態に形成された光学フィルムであり、
前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンを含む、
液晶表示装置用モジュール。」

(相違点1)
本件特許発明1では、「前記陰刻パターンのアスペクト比は0.7?1.0であり、幅は5μm?20μmであり、最大高さは5μm?20μmであり、前記高屈折率パターン層は、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である」のに対し、甲1発明の「透明基材」は、そのような特定がない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。

上記(3)ア(オ)において摘記した、甲第1号証の【0014】段落に、透明基材のプリズム状凹凸の幅(ピッチ)として、「1mm以下、就中500μm以下、特に5?300μm」という数値範囲が記載され、【0016】段落に、プリズム状凹凸の高さないし深さとして、「1mm以下、就中0.1?800μm、特に1?300μm」という数値範囲が記載され、上記相違点1に係る構成について、プリズム状凹凸のアスペクト比、幅、高さのより広い数値範囲が記載されているが、これは、特に、アスペクト比として「0.7?1.0」、幅として「5μm?20μm」、最大高さとして「5μm?20μm」を選択することが記載されているものではなく、「互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である」ものにおいてそのような数値範囲を選択することが記載されているものでもない。

上記(3)ウ(エ)において摘記した、甲第3号証の段落【0052】に、フィルムノレンズ部の幅として、「30μm」という数値が、レンズ部間の間隔として、「90μm」という数値が記載され、上記(3)ウ(カ)において摘記した、段落【0071】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「27μm」、「81μm」、「90μm」という数値が記載され、上記(3)ウ(ク)において摘記した、段落【0088】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「30μm」、「深さ60μm」、「ピッチ83μm」という数値が記載され、上記(3)ウ(コ)において摘記した、段落【0096】の【表2】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「20μm」、「62.5μm」、「90μm」という数値、それぞれ「10μm」、「31.25μm」、「45μm」という数値、それぞれ「6μm」、「18.75μm」、「27μm」という数値、それぞれ「4μm」、「12.5μm」、「18μm」という数値が記載されているが、これらは、特に、アスペクト比として「0.7?1.0」、幅として「5μm?20μm」、最大高さとして「5μm?20μm」を選択することが記載されているものではなく、本件特許発明1のように、陰刻パターンがレンチキュラーレンズパターンを含み、高屈折率パターン層と低屈折率パターン層との屈折率差が0.1?0.2であり、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%であるものにおいてそのような数値範囲を選択することが記載されているものでもない。

上記(3)エ(エ)において摘記した、甲第4号証の段落【0059】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「27μm」、「81μm」、「90μm」という数値が記載され、上記(3)エ(オ)において摘記した、段落【0072】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「30μm」、「60μm」、「83μm」という数値が記載され、上記(3)ウ(カ)において摘記した、段落【0074】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「30μm」、「60μm」、「83μm」という数値が記載され、上記(3)エ(キ)において摘記した、段落【0089】の【表2】に、レンズ部の幅、ピッチとして、それぞれ「20μm」、「90μm」という数値、深さとして、「40μm」ないし「80μm」という数値が記載され、上記(3)エ(ク)において摘記した、段落【0092】の【表3】に、レンズ部の幅、深さ、ピッチとして、それぞれ「9μm」、「9μm」、「60μm」という数値、それぞれ「18μm」、「18μm」、「120μm」という数値、それぞれ「9μm」、「45μm」、「60μm」という数値、それぞれ「18μm」、「90μm」、「120μm」という数値が記載され、上記(3)エ(ケ)において摘記した、段落【0105】の【表4】に、レンズ部の深さ、ピッチとして、それぞれ「40μm」、「90μm」という数値、トップ幅として、「20μm」ないし「50μm」と言う数値が記載されているが、これらは、特に、アスペクト比として「0.7?1.0」、幅として「5μm?20μm」、最大高さとして「5μm?20μm」を選択することが記載されているものではなく、本件特許発明1のように、陰刻パターンがレンチキュラーレンズパターンを含み、高屈折率パターン層と低屈折率パターン層との屈折率差が0.1?0.2であり、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%であるものにおいてそのような数値範囲を選択することが記載されているものでもない。

したがって、甲3発明及び甲4発明の光学フィルムは、レンズ部が半(楕)円形部と平坦部を有し、かつ、平坦部/レンズ部のピッチが0.5?0.95であるが、甲1発明の光路制御板のプリズム状凹凸の繰返し構造として、甲3発明や甲4発明のものを採用したとしても、上記相違点1に係る構成を備えたものとすることはできない。

また、平成30年11月30日付け意見書に添付された実験成績証明書(1)、(2)を参照すると、本件特許発明1において、画面のコントラスト比が高いものがあることも認められる。

甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証にも、上記相違点1に係る構成は記載されていない。

よって、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明2、6ないし19について
本件特許発明2、6ないし19は、本件特許発明1の特定事項をすべて含み、他の事項によってさらに限定を加えたものであるから、上記第3(4)に記載した理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)特許異議申立理由について
特許異議の申立ての理由には、特許法第29条第2項に加えて、同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるという理由も含まれるが、上記相違点1に係る構成は、甲第1号証に記載されたものでなく、これは設計上の微差といえず、自明でもなく、単なる周知技術の付加ともいえないから、当該理由によっても特許を取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)によって通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2、6ないし19に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1、2、6ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件特許の請求項3ないし5に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3ないし5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光板、第2の偏光板、及び前記第1の偏光板と前記第2の偏光板との間に位置する液晶パネルを含み、
前記第2の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子上に配置された光学フィルムを含み、
前記光学フィルムは、一つ以上の陰刻パターンを有する高屈折率パターン層、及び前記陰刻パターンの少なくとも一部を充填する充填パターンを含む低屈折率パターン層を含み、前記高屈折率パターン層と前記低屈折率パターン層との屈折率差は0.1?0.2であり、
前記光学フィルムは、前記液晶パネルから出射された光が前記低屈折率パターン層に入射され、前記高屈折率パターン層を介して出射されるように配置され、
前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層が順次積層され、
前記陰刻パターンはストライプ状に延長された形態に形成された光学フィルムであり、
前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンを含み、
前記陰刻パターンのアスペクト比は0.7から1.0であり、幅は5μmから20μmであり、最大高さは5μmから20μmであり、
前記高屈折率パターン層は、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含み、
前記高屈折率パターン層の全体幅に対する前記陰刻パターンの最大幅の和の比率は40%から60%である、液晶表示装置用モジュール。
【請求項2】
前記液晶パネルはPVAモードである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記低屈折率パターン層は、屈折率が1.50未満である、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項7】
前記高屈折率パターン層は、屈折率が1.50以上である、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項8】
前記充填パターンは、前記陰刻パターンを完全に充填するものである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項9】
前記第2の偏光板は、前記光学フィルム上に配置された第2の保護層をさらに含む、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項10】
前記第2の偏光板は、前記偏光子、前記低屈折率パターン層、前記低屈折率パターン層の直上に配置された前記高屈折率パターン層、及び前記第2の保護層が順次積層された積層構造を有する、請求項9に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項11】
前記第2の偏光板は、前記偏光子、第2の保護層、前記低屈折率パターン層、及び前記低屈折率パターン層の直上に配置された高屈折率パターン層が順次積層された積層構造を有する、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項12】
前記第2の保護層は、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、及び環状オレフィンポリマーのうち一つ以上の樹脂を含む、請求項11に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項13】
前記第2の偏光板は機能層をさらに含み、
前記機能層は、前記第2の保護層または前記高屈折率パターン層上に別途の層として配置される、または、前記第2の保護層または前記高屈折率パターン層の一面が前記機能層である、請求項10に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項14】
前記第1の偏光板の下部に配置された複合光学シートをさらに含み、
前記複合光学シートは、一面に一つ以上の第1のプリズムパターンを含む第1の光学シート、及び前記第1の光学シート上に配置され、一面に一つ以上の第2のプリズムパターンを含む第2の光学シートを含み、前記陰刻パターンは、レンチキュラーレンズパターンであって、互いに隣接する前記陰刻パターンの間に平坦部を含む、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項15】
前記第1の偏光板の下部に配置された複合光学シートをさらに含み、
前記複合光学シートは、一面に一つ以上の第1のプリズムパターンを含む第1の光学シート、及び前記第1の光学シート上に配置され、一面に一つ以上の第2のプリズムパターンを含む第2の光学シートを含み、前記陰刻パターンはプリズムパターンである、請求項1に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項16】
前記液晶表示装置用モジュールは、前記複合光学シートの下部に配置された拡散板と光源とを含む、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項17】
前記液晶表示装置用モジュールは、前記複合光学シートの下部に配置された導光板及び光源をさらに含み、前記光源は前記導光板の側面に配置される、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項18】
前記複合光学シートは、-40°?+40°の出射角で光を出射させる、請求項14または15に記載の液晶表示装置用モジュール。
【請求項19】
請求項1の液晶表示装置用モジュールを含む液晶表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-28 
出願番号 特願2015-257669(P2015-257669)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯野 光司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
古田 敦浩
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6159385号(P6159385)
権利者 三星エスディアイ株式会社
発明の名称 液晶表示装置用モジュール及びこれを含む液晶表示装置  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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