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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B65D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65D |
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管理番号 | 1351379 |
異議申立番号 | 異議2018-700592 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-17 |
確定日 | 2019-03-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6276047号発明「包装材、包装材の製造方法及び成形ケース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6276047号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 特許第6276047号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許6276047号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年1月31日を出願日とする出願であって、平成30年1月19日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年2月7日)がされた。 本件特許異議申立て以降の経緯は、次のとおりである。 平成30年7月17日 :特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)による請求項1?7に係る特許に対する特許異議の申立て 平成30年9月25日付け :取消理由通知書 平成30年11月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年12月20日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 上記平成30年11月20日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。 本件訂正の内容は、以下のとおりである。(訂正箇所に下線を付す。) (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1の「・・・前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa以上、・・・」という記載を、「・・・前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上、・・・」と訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項2の「・・・前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa?25MPa、・・・」という記載を、「・・・前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa?25MPa、・・・」と訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項7の「・・・前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面にランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムであって、該3層共押出積層フィルムの、・・・」という記載を、「・・・前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面にランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムに対してアニーリング処理を行ったものであって、該3層共押出積層フィルムの、・・・」 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1)訂正事項1及び2について 訂正事項1及び2は、それぞれ本件訂正前の請求項1及び2に記載された「熱可塑性樹脂フィルム」の「フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度」を、本件訂正前は、それぞれ「15MPa以上」及び「15MPa?25MPa」であったものを、「15.5MPa以上」及び「15.5MPa?25MPa」と数値範囲の下限値を増加させて狭めるものであるから、特許法第第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件訂正前の本件特許明細書の段落【0066】には、 「<実施例1> ・・・前記成膜後の3層積層フィルムに対して70℃で48時間アニーリング処理を行うことによって、厚さ40μmの未延伸熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層)3を得た(図3参照)。得られた厚さ40μmの未延伸熱可塑性樹脂フィルム3のMD方向の引張降伏強度は17.6MPa、TD方向の引張降伏強度は15.5MPa、・・・」という記載があり、ここで、「・・・2)フィルム3面内におけるフィルム押出し方向に直交する方向(以下、「TD方向」という場合がある)・・・」(段落【0037】)という記載を踏まえると、訂正事項1及び2は、新規事項を追加するものではない。そして、上記訂正事項1及び2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 また、請求項1及び2を引用する請求項3?6についても同様である。 (2)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項7に記載された「3層共押出積層フィルム」を、「アニーリング処理を行ったもの」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件訂正前の特許明細書の段落【0041】には、「上記特定の4方向(e、f、g、h)における引張降伏強度がいずれも15MPa以上である熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、押出しにより熱可塑性樹脂フィルムを製造し(成膜し)、この成膜後の熱可塑性樹脂フィルムに対して65℃?90℃でアニーリング処理(残留応力解消のための加熱処理)を行うことにより、製造できる。・・・」という記載があるから、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。そして、上記訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 3.一群の請求項 訂正事項1は、訂正前の請求項1と当該請求項1と引用関係を有する請求項2?6に対して、また、訂正事項2は、訂正前の請求項2と当該請求項2と引用関係を有する請求項3?6に対して訂正するものである。よって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されている。 4.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2に示したとおり、本件訂正請求は認められたから、本件特許の特許請求の範囲に係る請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂フィルム層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む包装材であって、 前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面に、ランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムであって、該3層共押出積層フィルムの、フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である3層共押出積層フィルムが用いられていることを特徴とする包装材。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂フィルムとして、 フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa?25MPaである熱可塑性樹脂フィルムが用いられている請求項1に記載の包装材。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂フィルムのフィルム押出し方向での引張降伏強度を「V」とし、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度を「W」とし、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度を「X」とし、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度を「Y」としたとき、以下の3つの関係式が成立することを特徴とする請求項1または2に記載の包装材。 W/V ≧0.85 X/V ≧0.88 Y/V ≧0.88 【請求項4】 前記熱可塑性樹脂フィルム層は、エチレン含有率が10質量%?20質量%、融点が155℃?170℃、MFRが0.5g/10分?20g/10分であるブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面に、エチレン含有率が1質量%?10質量%、融点が135℃?165℃、MFRが0.5g/10分?20g/10分であるランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムである請求項1?3のいずれか1項に記載の包装材。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項に記載の包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。 【請求項6】 電池ケースとして用いられる請求項5に記載の成形ケース。 【請求項7】 金属箔層の一方の面に第1接着剤を介して耐熱性樹脂層が貼り合わされると共に、前記金属箔層の他方の面に第2接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルム層が貼り合わされてなる積層物を巻芯に捲回して、この捲回状態で加熱エージング処理を行うことにより、第1接着剤および第2接着剤の硬化を行う工程を含み、 前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面にランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムに対してアニーリング処理を行ったものであって、該3層共押出積層フィルムの、フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である3層共押出積層フィルムを用いることを特徴とする包装材の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 本件訂正前の請求項1?7に係る特許に対する、平成30年9月25日付け取消理由通知の概要は、次のとおりである。なお、申立人が特許異議申立書に記載した全ての取消理由が通知された。 【理由1】(新規性) 請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 【理由2】(進歩性) 請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 申立人が本件特許異議申立書に添付した甲第1号証等を、以下「甲1」等といい、甲1等に記載された発明又は事項を、それぞれ「甲1発明」等又は「甲1事項」等という。 <刊 行 物 等 一 覧> 甲1:特開2005-203294号公報 甲2:特開2013-157287号公報 甲3:「プラスチックフィルム・レジン材料総覧2004」、株式会社加工技術研究会、2003年12月12日発行、P.477. 甲4:昭和電工株式会社のニュースリリース、[online]、2005年7月4日、昭和電工株式会社のウェブサイト、インターネット <URL:http://www.sdk.co.jp/news/2005/aanw_05_0363.html> 甲5:オカモト株式会社、”OKAMOTO INDUSTRIES,INC. 第116期 事業活動のご報告 2011.4.1?2012.3.31”、P.1及びP.5、[online]、2012年6月、オカモト株式会社のウェブサイト、インターネット <URL:https://www.okamoto-inc.jp/assets/files/jigyou-houkoku_116pdf> 甲6:地方独立行政法人大阪産業技術研究所理事長による「報告書」、平成30年6月19日発行(写しを原本として提出) 甲7:特開2012-172124号公報 甲8:特開2005-32456号公報 甲9:特開2010-102935号公報 甲10:特開2011-216390号公報 甲11:特開2012-124068号公報 1.本件発明1?3について (1)【理由1】(新規性)本件発明1?3は、いずれも甲1発明である。 (2)【理由2】(進歩性)本件発明1?3は、いずれも甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.本件発明4?6について 【理由2】(進歩性)本件発明4?6は、いずれも甲1発明、甲2事項及び従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.本件発明7について (1)【理由1】(新規性)本件発明7は、甲1発明である。 (2)【理由2】(進歩性)本件発明7は、甲1発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 当審の判断 1.甲1発明 甲1には、【請求項1】、【0004】、【0020】、【0023】、【0028】の記載があり、特に、【0028】に記載された「実施例6」に着目すると、以下の甲1発明が記載されている。 「延伸ナイロンフィルムからなる基材層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、これら両層間に配設されたアルミニウム箔とを備えるリチウムイオン電池用外装材であって、 前記無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層として、両面がランダム共重合タイプのポリプロピレン樹脂で、中間がブロック共重合タイプのポリプロピレン樹脂からなる三層構成の厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)であるリチウムイオン電池用外装材。」 2.本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1の「該3層共押出積層フィルム」は、「フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である」のに対し、甲1発明の三層構成の厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)がそのようなものであるか明らかではない点。 (2)相違点1についての検討 ア.「昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20」について 甲1発明の「昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20」について検討する。 甲3の477ページには、「CPPフィルム」、「昭和電工プラスチックプロダクツ(株)」の「シヨウレックスアロマーフィルム」とのタイトルに続き「1.シヨウレックスアロマーフィルムの特徴と安全衛生性 シヨウレックスアロマーフィルムは、ポリプロピレンを主原料とした無延伸フィルムで、各用途別に以下の優れた特徴を有している。」(左欄1?4行)、及び、「3. 各用途別の代表グレードとその特徴・・・ET20は125℃までのレトルト処理に耐え、透明性が良くノンパウダー対応が可能である。・・・」(右欄1?15行)と記載されている。そして、同ページの表1には、「各用途別の代表グレードと特徴」が列挙されていて、その中には、種類が「レトルト」のものとして、「グレード名」が「ET20」のものが記載されている。 甲4は、「ニュースリリース 合成樹脂加工事業の再編について-石油化学事業の再構築 完了- 2005年7月4日」であって、「3.SPP PPは、本年6月大分工場のプラスチック積層フィルム事業(CPPフィルム)を株式会社オカモト(東京都文京区、岡本二郎社長)に譲渡いたしました。・・・」という記載がある。 甲5はオカモト株式会社の「第116期事業活動のご報告」であり、その「PRODUCTS GUIDE 1」のうちの「プラスチック製品部」の欄には、「CPP「アロマ-フィルム」 永年培ってきた「プラスチック製膜技術」を基に開発した共押出多層フィルムです。」との記載がある。 甲6には以下の事項が記載されている。 (ア)1ページには、次の記載されている。なお、「●」は甲6において、墨塗りが施されている箇所である。 a.上欄外水平方向中央部には、「報告書」と記載されている。 b.最上欄には「申込者」と記載され、その右隣は「企業名又は氏名」及び「所在地又は住所」と上下二段に分かれて、いずれの欄も「●」である。 c.「依頼事項」の右隣欄には、「引張試験」と記載され、「提出資料(名称、点数)」の右隣欄には、「アルロマET20 ♯40 11点」と記載されている。 d.「提出資料・・・」の下隣欄には、「平成30年5月29日付 第●号で申込みのあった件について次のとおり報告します。 発行日 平成30年6月19日 地方独立行政法人大阪産業技術研究所理事長」との記載があり、さらに「・・・理事長」の右隣に「地方独立行政法人大阪産業技術研究所理事長印(依頼業務報告書)」と読める印影がある。さらに、1ページの上端中央には、楔印の割り印が押され、上欄外左には、先の「・・・理事長」と同じ印影と認められる割り印が押されている。 (イ)2ページには、次の記載がある。 a.「1.提出資料」の段落には、「a)アロマET20 ^(♯)40 (名称は依頼者の申し出による) MD,TD,MDに対して右斜め45°,およびMDに対し左斜め45°それぞれ3点ずつ(ただしMDのみ2点) 計11点 なお本資料は図1に示すラベルが貼付されたものである。」 b.2ページの図1の写真には、長方形の「ラベル」が写されていて、最上欄には、「アロマ-ET20」と記載され、その下欄外には、「毎度ありがとうございます」「オカモト株式会社」との記載がある。 c.「2.方法」の段落には、「以下に示す条件により引張試験を行い,引張降伏応力を求めた。 使用機種:ミネベア(株)製万能材料試験機AL-50kNB 試験片形状:短冊状試験片(幅15mm) つかみ具間距離:100mm 試験速度300mm/min 試験温度:23.0℃」 d.「3.結果」の段落には、「a) アロマET20 ♯40 表1に各試験片の測定値および平均値を示す。」 「表1 引張降伏応力(単位:MPa)」のタイトルが記載され、その直下に記載された表1においては、 「MD」の行の試料1、2、平均のそれぞれの列に、「17.1」、「17.0」及び「17.1」という記載がある。また、「TD」の行の試料1、2、3および平均のそれぞれの列に、「15.2」、「15.3」、「15.1」、「15.2」という記載がある。そして、「右斜め45°」の行の試料1、2、3及び平均のそれぞれの列に、「16.0」、「16.2」、「16.1」、「16.1」という記載がある。さらに、「左斜め45°」の行の試料1、2、3及び平均のそれぞれの列に、「15.9」、「16.0」、「15.9」、「15.9」という記載がある。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より、甲6は、地方独立行政法人大阪産業技術研究所が平成30年5月29日に依頼を受けて実施した、申込者が「アロマET20 ^(♯)40」と称する試料についての「引張試験」の報告書であって、平成30年6月19日に発行されたものである。 当該報告書によると、「引張試験」は、上記(イ)c.に示された「方法」により実施され、その「結果」は、上記(イ)d.に示されたとおりのものである。なお、当該報告書の「提出試料」等の欄には、「アロマET20」と記載されているが、2ページ図1の「ラベル」の写真には、「アロマーET20」と記載されているから、「アロマET20」は、「アロマーET20」の誤記であると解される。 (エ)そうすると、商品名「アロマーET20」の無延伸ポリプロピレンフィルムは、当初は昭和電工株式会社により提供されていた(甲3)が、平成17年(2005年)6月に、株式会社オカモトへのプラスチック積層フィルム事業(CPPフィルム)の事業譲渡に伴って、以降、株式会社オカモトにより提供されることとなったと理解できる(甲4、甲5及び甲6)。 そして、同一商品名の化成品の組成や物性値が変化すると、顧客が混乱するであろうから、同一商品名の化成品については、その組成や物性値は同程度であると考えられ、甲1発明の「昭和電工株式会社製の商品名がアロマ-ET20」は、「共押出多層フィルム」(甲5)であって、その引張降伏強度は、株式会社オカモトの「アロマ-ET20」(甲6)のそれと等しいと考えられるから、甲1発明の上記4つの方向に対する引張降伏強度は、「MD方向で17.1MPa程度、TD方向で15.2MPa程度、右斜め45°で16.1MPa程度、左斜め45°方向で15.9MPa程度」と推認できる。 イ.【理由1】(新規性)について 上記ア.に示したとおり、甲1発明の「昭和電工株式会社製 商品名:アロマ-ET20」は、「共押出多層フィルム」(甲5)であって、上記本件発明1で特定された4つの方向に対する引張降伏強度は、株式会社オカモトの「アロマ-ET20」(甲6)のそれと等しいと考えられるから、甲1発明の上記4つの方向に対する引張降伏強度は、MD方向で17.1MPa程度、TD方向で15.2MPa程度、右斜め45°で16.1MPa程度、左斜め45°方向で15.9MPa程度と推認できるから、本件発明1と甲1発明とは実質的に次の相違点1’において相違する。 <相違点1’> 本件発明1の3層共押出積層フィルムは、「前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上」であるのに対し、甲1発明の三層構成の厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)は15.1?15.3MPaで平均が15.2MPa程度である点。 上記相違点1’は、3層共押出積層フィルムの「前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度」についての相違点であるから、形式的な相違点であるとはいえず、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 ウ.【理由2】(進歩性)について 甲1発明の三層構成の厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムである「昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20」は具体的な商品であるところ、甲1には、「前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度」を15.5MPa以上とすることの動機付けとなる記載や示唆する記載はない。さらに、甲2?甲11にも引張降伏強度について、示唆する記載もない。 本件発明1の包装材は、上記相違点1’に係る構成を備えたことで、本件特許明細書段落【0080】の【表1】に示しされているように、「しわ発生防止性」が「◎」又は「○」であって、「シール強度」が「108MPa」以上であるとの格別な作用効果を奏する。 よって、甲1発明において、相違点1’に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、その特許は特許法第29条第2項の規定により違反してされたものであるとはいえない。 (3)平成30年12月20日に提出された申立人意見書について ア.意見書と共に提出された証拠 甲12:オカモト株式会社作成のアロマーET20の試験成績表 イ.申立人は平成30年12月20に提出した意見書において、次のとおり主張している。 「甲第12号証によれば、アロマ-ET20は、MD方向の降伏強度が17.6MPaであり、TD方向の降伏強度が15.6MPaであったことが開示されている。なお、斜め45°方向(2方向)の記載はないが、以下の甲第6号証の結果との比較からも明らかなとおり、これらの斜め方向に関する降伏強度がいずれも15MPa以上となることは疑いなく予想することができる。すなわち、MD方向およびTD方向における降伏強度の比較から、甲第12号証におけるアロマーET20の測定サンプルは、甲第6号証における測定サンプルと比較し、いくらか降伏応力が大きいサンプルであったと予想される。 ・・・ 以上より、本件訂正発明1が、今般の訂正によって「フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上」との発明特定事項を具備することとなったとしても、そのような本件訂正発明1は、依然として甲第1号証に記載されているに等しい。」(4ページ26行?5ページ16行) ウ.以上の主張について検討する。 (ア)上記(2)ア.(ア)?(ウ)に示した甲6の記載から、甲6は、「地方独立行政法人大阪産業技術研究所理事長」という公的機関により発行された「職印」が押印された「報告書」であるから、甲6に記載された「1.提出資料」に対して「2.方法」に示した引張試験が実施され、「3.結果」に示された試験結果が得られたであろうことは、一応信用できる。そして、甲6の2ページの表1によれば試料1?3及び平均値における「TD」についての「引張降伏応力(単位:MPa)」は、それぞれ「15.2」、「15.3」、「15.1」、「15.2」であるから、「昭和電工株式会社、商品名:アロマーET20」の「フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度」の値は、「15.2」を中心にして、±0.1程度の値を採ると理解できる。 (イ)一方、甲12には、以下の事項が記載されている。 甲12の最上行右端には、「2018年●月●日」と記載され、その下の行には、水平方向中央に「試験成績表」との記載がある。 上記「2018年●月●日」の下方向に、「オカモト株式会社 ●工場 品質保証課」との記載があり、当該記載の直下に、「承認」「作成」の欄があり、さらにその直下の欄は、それぞれ墨塗りされている。 「オカモト株式会社 ●工場 品質保証課」よりも、若干下方の左端には、左列に上方から「品名」、「グレード名」、「ロットNo.」、「製造No.」と記載されていて、そのうち、「品名」及び「グレード名」の右隣欄には、「アロマーET20」、「ET20U40-50」との記載がある。 また、甲12の最も下に記載された表には、左端の列に上から下に「項目」、「フィルム厚み」、「降伏強度」、「表面処理強度」、「摩擦係数」、「ヘイズ」と記載されていて、さらに、「降伏強度」は、上下に「MD」と「TD」に分けられている。そして、当該表の右端の欄は、最上行に「測定値」と記載されていて、「降伏強度」の「MD」の行には「17.6」、「降伏強度」の「TD」の行には「15.6」が記載されていて、その行の「単位」の列には「MPa」と記載されている。 (ウ)甲12については、上記(イ)のとおり、作成者が明らかではない上に、測定手段や手順も不明であり採用できるものではない。 (エ)予備的検討 a.仮に甲12を採用するとして、以下のとおり予備的に検討する。甲6の試料は、「アロマーET20 ^(♯)40」であって、MD方向の引張降伏応力は、17.1MPaであるのに対し、甲12の試料は、「品名」が「アロマーET20」で「グレード名」が「ET20U40-50」であって、MD方向の引張降伏応力は17.6MPaである。 b.このことは、甲12の試料と甲6の試料とは、同じ商品名「アロマーET20」ではあるものの異なるグレードの商品であると推認できる。そして甲6の試料には、甲6の2ページの図1に示された「アロマーET20」と記載されたラベルが貼付されているから、甲1に接した当業者が選択するグレードが甲6の試料のグレードであり、通常は用いられないグレードが甲12の試料であると推認できる。 c.そうすると、仮に甲12を採用したとしても、甲1に記載された「アロマーET20」のTD方向の引張降伏応力は、甲12に示された15.6MPaではなく甲6に示された15.2±0.1MPaであるといえる。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。 よって、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことはできない。 3.本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を直接あるいは間接に引用する発明である。そうすると、上記2.を踏まえると、本件発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定された本件発明2?6は、甲1発明ではなく、特許法第29条1項第3号に該当しない。また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないともいえない。 よって、本件発明2?6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことはできない。 4.本件発明7について (1)甲1製造方法発明 甲1の段落【0023】、【0028】には、「リチウムイオン電池用外層材を作成した。」との記載があり、甲1発明の製造方法が記載されているといえるから、甲1には、次の甲1発明の製造方法発明(以下、「甲1製法発明」という。) 「延伸ナイロンフィルムからなる基材層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、これら両層間に配設されたアルミニウム箔とを備えるリチウムイオン電池用外装材であって、 前記無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層として、両面がランダム共重合タイプのポリプロピレン樹脂で、中間がブロック共重合タイプのポリプロピレン樹脂からなる三層構成の厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)であるリチウムイオン電池用外装材の製造方法。」 (2)対比 本件発明7と甲1製法発明とを対比すると、両者は以下の点で少なくとも相違する。 <相違点2> 「熱可塑性フィルム層」として、本件発明7は、「ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面にランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムに対してアニーリング処理を行ったもの」であるのに対し、甲1製法発明の「無延伸ポリプロピレンフィルム(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)からなるシーラント層」がアニーリング処理を行ったものであるか明らかではない点。 (3)相違点2についての検討 ア.【理由1】(新規性)について 相違点2は、「熱可塑性フィルム層」に対して施す熱処理についての相違点であるから、実質的な相違点である。よって、本件発明7は、甲1製法発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 イ.【理由2】(進歩性)について 甲1には、「無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層(昭和電工株式会社、商品名:アロマ-ET20)」に対してアニーリング処理を行う旨記載されていないし、示唆する記載もない。さらに、甲2?11号証においても、記載されていないし、示唆する記載もない。 したがって、甲1製法発明において、上記相違点2に係る本件発明7の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 そして、本件特許明細書の「[1]の発明では、内側層を構成する熱可塑性樹脂フィルムとして、上記特定の4方向における引張降伏強度がいずれも15MPa以上である熱可塑性樹脂フィルムが用いられているから、この包装材は、皺の発生が殆どなくて外観品位に優れていると共に、十分なシール強度が得られるものとなる。内側層を構成する熱可塑性樹脂フィルムの上記特定の4方向における引張降伏強度がいずれも15MPa以上であるから、ラミネートして得られた包装材が、巻芯に巻かれた状態で、接着剤の硬化促進のために加熱処理(エージング処理;例えば40℃)が行われても、収縮による応力等による皺の発生が抑制される。」(段落【0024】)ものである。さらに「上記特定の4方向(e、f、g、h)における引張降伏強度がいずれも15MPa以上である熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、押出しにより熱可塑性樹脂フィルムを製造し(成膜し)、この成膜後の熱可塑性樹脂フィルムに対して65℃?90℃でアニーリング処理(残留応力解消のための加熱処理)を行うことにより、製造できる。・・・」(段落【0041】)ことを踏まえると、本件発明7は、上記相違点2に係る構成を備えることで、「ラミネートして得られた包装材が、巻芯に巻かれた状態で、接着剤の硬化促進のために加熱処理(エージング処理;例えば40℃)が行われても、収縮による応力等による皺の発生が抑制される。」との格別な作用効果を奏するものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明7は、甲1製法発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件発明7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことは出来ない。 (5)平成30年12月20日提出の申立人の意見書での主張について ア.申立人は、上記平成30年12月20日提出の意見書において、次のとおり主張している。 本件訂正により、本件発明7は、「3層共押出積層フィルム」を、「アニーリング処理を行ったもの」と限定するものとなった。しかし、本件発明7には、アニーリング処理の条件(例えば温度)が規定されていない。そして、本件特許明細書の段落【0080】の【表1】によれば、アニーリング温度が30?60℃である場合は比較例1?4に例示されているように、本件訂正発明の効果を奏さず、課題を解決することができない。 イ.そこで検討する。本件特許明細書には「ところで、上記ラミネート包装材では、外側層、アルミニウム箔層、内側層の各層間の接着は、接着剤を用いたドライラミネート法等により行われ、製造された包装材は、巻芯に巻き取られた後、接着剤の硬化を促進するために、40℃程度で加熱を行うエージング処理に供される。しかるに、従来では、このエージング処理によって、巻芯に巻かれた状態の包装材において皺が発生しやすいという問題があった。このような皺が発生すると、包装材としての外観品位が低下する。また、上記電池用包装材としては、より高いシール強度を備えていることが求められていた。本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、十分なシール強度が得られると共に、皺の発生が殆どなくて外観品位に優れた包装材を提供することを目的とする。」(段落【0011】?【0014】)という記載がある。さらに、上記(3)に摘記したように、段落【0024】及び【0041】の記載がある。そうすると、本件発明は、「十分なシール強度が得られると共に、皺の発生がほとんどなくて外観品位に優れた包装材を提供すること」を課題とするもので、当該課題は、「該3層共押出積層フィルムの、フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である3層共押出積層フィルムを用いる」ことで解決できるものである。さらに、そのような「3層共押出積層フィルム」(段落【0024】)を得るために「例えば、押出しにより熱可塑性樹脂フィルムを製造し(成膜し)、この成膜後の熱可塑性樹脂フィルムに対して65℃?90℃でアニーリング処理(残留応力解消のための加熱処理)を行うことにより、製造できる」(段落【0041】)ものである。そうすると、本件発明7は、「フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である」ことを特定事項として包含するのであるから、上記課題を解決できるものが得られることが理解できる。 ウ.よって、申立人の主張は当を得たものではなく、採用することができない。 第6 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1?7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては取り消すことができない。 また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂フィルム層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む包装材であって、 前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面に、ランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムであって、該3層共押出積層フィルムの、フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である3層共押出積層フィルムが用いられていることを特徴とする包装材。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂フィルムとして、 フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15.5MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa?25MPa、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa?25MPaである熱可塑性樹脂フィルムが用いられている請求項1に記載の包装材。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂フィルムのフィルム押出し方向での引張降伏強度を「V」とし、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度を「W」とし、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度を「X」とし、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度を「Y」としたとき、以下の3つの関係式が成立することを特徴とする請求項1または2に記載の包装材。 W/V ≧0.85 X/V ≧0.88 Y/V ≧0.88 【請求項4】 前記熱可塑性樹脂フィルム層は、エチレン含有率が10質量%?20質量%、融点が155℃?170℃、MFRが0.5g/10分?20g/10分であるブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面に、エチレン含有率が1質量%?10質量%、融点が135℃?165℃、MFRが0.5g/10分?20g/10分であるランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムである請求項1?3のいずれか1項に記載の包装材。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項に記載の包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。 【請求項6】 電池ケースとして用いられる請求項5に記載の成形ケース。 【請求項7】 金属箔層の一方の面に第1接着剤を介して耐熱性樹脂層が貼り合わされると共に、前記金属箔層の他方の面に第2接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルム層が貼り合わされてなる積層物を巻芯に捲回して、この捲回状態で加熱エージング処理を行うことにより、第1接着剤および第2接着剤の硬化を行う工程を含み、 前記熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面にランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された3層共押出積層フィルムに対してアニーリング処理を行ったものであって、該3層共押出積層フィルムの、フィルム押出し方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に直交する方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し右斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上、前記フィルム押出し方向に対し左斜め45度の方向での引張降伏強度が15MPa以上である3層共押出積層フィルムを用いることを特徴とする包装材の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-03-01 |
出願番号 | 特願2014-16373(P2014-16373) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D) P 1 651・ 537- YAA (B65D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 二ッ谷 裕子 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 久保 克彦 |
登録日 | 2018-01-19 |
登録番号 | 特許第6276047号(P6276047) |
権利者 | 昭和電工パッケージング株式会社 |
発明の名称 | 包装材、包装材の製造方法及び成形ケース |
代理人 | 清水 義仁 |
代理人 | 杉浦 健文 |
代理人 | 高田 健市 |
代理人 | 清水 久義 |
代理人 | 清水 久義 |
代理人 | 高田 健市 |
代理人 | 清水 義仁 |
代理人 | 杉浦 健文 |