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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C12M
管理番号 1351385
異議申立番号 異議2018-700561  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-10 
確定日 2019-03-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6256963号発明「暗環境同時観察培養装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6256963号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6256963号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6256963号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年5月1日を国際出願日とする出願であって、平成29年12月15日にその特許権の設定登録がされた。その特許について、平成30年7月10日に特許異議申立人山田雄子により特許異議の申立てがされ、当審において同年9月20日付けで取消理由が特許権者に通知され、その指定期間内である同年11月22日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、また、同年12月6日に当該訂正の請求に係る訂正請求書の補正がなされた。その後、同年12月12日付けで特許法第120条の5第5項に規定された通知書を特許異議申立人に送付したところ平成31年1月16日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正事項
特許請求の範囲の請求項1において、「観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラ」と記載されているのを「培養中の観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラ」に訂正する。

2 一群の請求項
訂正前の請求項1?7について、請求項2?7はすべて直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、上記訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?7に対応する訂正後の請求項〔1?7〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、上記訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 訂正の目的の適否
上記訂正事項は、赤外線カメラにより撮影する「観察対象」を「培養中の観察対象」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

4 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
「観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラ」を「培養中の観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラ」に限定する訂正事項は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

5 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の【0022】に「菌の培養を暗環境培養室で行いつつ、培養過程において観察対象の像を撮影するための赤外光源と赤外光カメラ」との記載があり、【0047】に「培養しつつ観察対象を撮影する」との記載があることからみて、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された本件発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件発明1?7」という。)。

「【請求項1】
寒天培地に菌源を付加した観察対象を保持するための観察対象保持部と、
暗環境下で観察対象保持部に保持された観察対象の中の菌の培養を行ってコロニーを発生させるための暗環境培養室と、
暗環境培養室内に納められる観察対象保持部に保持された観察対象を近赤外光で照射する赤外光源と、
赤外光源により近赤外光を照射される培養中の観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラと、
を有する暗環境同時観察培養装置。
【請求項2】
赤外光カメラが観察対象を複数回にわたり継続して撮影するための複数撮影制御を行う制御部をさらに有する請求項1に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項3】
赤外光源には赤外光の所定の波長帯を遮るフィルターが備わる請求項1又は2に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項4】
赤外光カメラには赤外光の所定の波長帯を遮るフィルターが備わる請求項1から3のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項5】
赤外光カメラは、暗環境培養室内の天井側に下方に向けて配置され、
赤外光源は、暗環境培養室内の床側に上方に向けて配置され、
観察対象保持部は、赤外光カメラと赤外光源との間に配置される請求項1から4のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置を用いた観察培養方法であって、
暗環境培養室内に暗環境下で菌の培養を行うために寒天培地に菌源を付加してコロニー未発生状態の観察対象を設置する観察対象設置ステップと、
暗環境培養室内に納められた観察対象に前記赤外光源により近赤外光を照射する赤外光照射ステップと、
前記赤外光カメラにより赤外光源により近赤外光を照射されている状態で観察対象の近赤外光透過像を撮影する撮影ステップと、
を有する観察培養方法。
【請求項7】
前記撮影ステップは、赤外光カメラが観察対象を複数回にわたり継続して撮影するための複数撮影制御を行う制御サブステップをさらに有する請求項6に記載の観察培養方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成30年9月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証(特開2004-12398号公報)に記載された発明、及び甲第3号証(特開昭60-184398号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証
本件出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2004-12398号公報)には、以下の記載がある。

ア 「食品業界では、食品中の・・・食中毒菌の有無を検出するため、微生物検査が行われる。微生物検査では、食品1gまたは1ml当たりの一般生菌数・・・が食品の微生物汚染の指標として用いられている。一般生菌数は、通常、標準寒天培地を用いて・・・培養して検出される。生菌数の計数をするには、通常、寒天培地上のコロニーを目視で数えるか、コロニーカウンターを使用するか、あるいは、試料と混ぜ合わせた寒天培地を用いて培養し、培地中のコロニーを計数する混釈法と呼ばれる方法が用いられる。」(【0002】)

イ 「・・・試料には、大腸菌E . coli (ATCC25922)、その他種々の細菌を用いることができる。試料となる生菌は以下の手順で培養する。試料をシャーレAに1ml入れ、これに約50℃に保温した15?20mlの標準寒天培地を加える。・・・」(【0019】)

ウ 「試料支持部材13によりシャーレAを支持する。・・・ 」(【0020】)

エ 「ハウジング11内で、加熱器17によりシャーレAの雰囲気を35℃に加熱し、試料の微生物の培養に適した温度に上げる。温度制御装置18により、シャーレAの温度を試料の微生物の培養に適した所定の温度に保つことができる。」(【0021】)

オ 「光源16からシャーレAおよび透明板12を通してイメージセンサ15に向けて光を照射する。イメージセンサ15で透明板12を通して試料支持部材13により支持されるシャーレA内の試料の画像を入力し、デジタル信号化して出力する。画像の入力は、所定時間ごとに行なう。・・・画像処理用コンピュータ19では、画像データから各シャーレAの試料のコロニー数を計算し、図4に示すようにグラフ化する。」(【0022】)

カ 「

」(【図1】)

キ 「

」(【図4】)

(2)甲第3号証の記載事項
本件出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開昭60-184398号公報)には、以下の記載がある(下線は当審によるもの)。

ア 「(1)国内の某特異地区の腐食土を採取し、その水溶液をシャーレ内の寒天上に散布して特定温度の培養槽内に所定の時間放置した結果、目視観察で多数のコロニーが生育したことが認められた。これにタングステンランプ(2700?3000K近傍)光を照射し、0.7μm以下を除去するカットフィルタを備えたビデオカメラ(受光感度領域は可視から0.9μm)で撮像した。その結果、テレビモニタで識別されたコロニーの数は、カットフィルタを除いた場合(可視+近赤外)8?9種類、カットフィルタを入れた場合(近赤外)1種類であった。この1種類のみを選択抽出して培養した結果、醸造工学上有効と推定するに足る新種らしいことが判明した。」(第2頁右下欄第1行?第14行)

イ 「(3)国内の某特異地区の川の沈澱土を採取し上記と類似の条件で培養した結果、目視観察で多数のコロニーが生育した。この培養シャーレ中の任意の点(肉眼でコロニーの生育が認められる点と肉眼ではコロニーを視認できない点とを含めて)から他のシャーレに移植して培養した結果を、超高圧水銀ランプ(0.17?0.7μm)光源装置からの光を上記(2)の例と同様に数種波長選別して照射し、紫外線ビデオカメラ(0.2?0.7μm)で観察した。この場合、移植時に肉眼ではコロニーの存在を視認できなかった点からの移植点を含めて多数のコロニーの生育を観察することができた。これらの中には、コロニー自体の色彩によって視認できるもの、コロニーの発する螢光によって視認できるものなどの他に、コロニーが紫外線域で吸収スペクトルを持つため紫外線ビデオカメラで識別できるものが発見された。肉眼で視認できなかった点から移植したものから培養し紫外線吸収コロニーとして識別された或る特定のコロニーについて培養した結果、或る種の微生物の生育を阻止する効果が判明し、薬学上有効と判断するに足る新種の微生物らしいことが判った。なお、この場合に紫外線ビデオカメラからの信号は通常の培養期間に比してかなり短時間(1/3以下)で透過光受光によりコロニー生育を識別できることも判明した。」(第3頁左上欄第17行?左下欄第2行)

ウ 「波長0.5?1.0nmの軟X線を照射して、その波長範囲に感度を有する素子たとえばシンチレータ、螢光板などで受光する方式、190nm以下の真空紫外線(波長吸収しないガス例えばN雰囲気中で動作)または200?400nmの紫外線すなわちUV光を照射して、その波長範囲に感度を有する素子たとえばシンチレータ、螢光板、UVビデオカメラなどで受光する方式、400?700nmの可視光を照射し、アンチストークスの法則によるUV光またはストークスの法則による近赤外光を受光する方式、700nm?20μmの赤外光すなわちIR光を照射してその波長範囲に感度を有する素子たとえばIRイメージチューブ、IRビデオカメラ、又はIRアレイやIRモザイク等の固体素子などで受光する方法を、微生物の性質に応じてそれぞれ選択し、且つ、反射光受光方式、透過光受光方式、反射光受光透過光受光併用方式を、コロニーの性質に対応して使い分けることによって、コロニーの培養、微生物選別、薬品や環境への耐性検査など広くコロニー認識操作において、肉眼では不可視なコロニーの観測判定操作が可能になると共に、培養基中の生育時間が短いためコロニーの繁殖が未熟な場合にも観測操作が可能になる。」(第3頁左下欄第3行?右下欄第5行)

3 判断
当審の取消理由通知では、前記2(1)イ?キから甲第1号証に記載された発明(以下「引用発明1」という。)を認定し、また相違点1及び2を認定した上で、相違点1(引用発明1において「赤外光」あるいは「近赤外光」という特定がない点)について、前記2(2)ウからみて、「甲3号証においては、微生物やコロニーの性質に応じて・・・赤外光を照射し、その透過光を撮像することで、繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となることが示唆されて」いるから、「引用発明1において、繁殖が未熟なコロニーの観察を可能とするために、光源として赤外光源を用い、赤外光透過像を赤外光カメラにて撮像しようとすることは当業者が容易に想到し得たこと」と指摘した。
これに対して、特許権者は、平成30年11月22日に提出した意見書において、前記2(2)ウは、照射光として4種類の光(軟X線、紫外線、可視光及び赤外線)から一つを微生物の性質に応じて選択し、3種類の受光方式(反射光、透過光及び反射光透過光併用)から一つをコロニーの性質に対応して使い分けることで、「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」との一般論を述べたに過ぎないものであり、前記2(2)イの記載が示すように、照射光として紫外線を選択し、受光方式として透過光を選択した場合について「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」といえたとしても、照射光として赤外線を選択し、受光方式として透過光を選択する場合において、「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」とまではいえない旨を主張している。
そこで、上記相違点1(訂正前の請求項1?7に係る発明と訂正後の本件発明1?7とで共通)の容易想到性について検討すると、確かに、前記2(2)ウは、4種類の光と3種類の受光方式とからそれぞれ1つを選択した12通り全てにおいて「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」ことまでは開示していない。ここで、甲第3号証において「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」ことが具体的に開示されているのは、前記2(2)イにおける、照射光として紫外線を選択し、受光方式として透過光を選択した場合のみであるところ、当該場合においてどのような理由により「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」のかは、甲第3号証において何ら説明されておらず、また、その理由が当業者に明らかであるともいえない。そのため、甲第3号証の記載、特に前記2(2)イ及び2(2)ウに接した当業者であっても、照射光として紫外線を選択し、受光方式として透過光を選択する以外に、どのような照射光を4種類の光から選択し、また、どのような受光方式を3種類の中から選択することで「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」のかを把握することはできないから、甲第3号証には、照射光として赤外線を選択し、受光方式として透過光を選択する場合に「繁殖が未熟なコロニーの観察が可能となる」ことが開示ないしは示唆されているとはいえない。
そのため、引用発明1において、甲第3号証に記載の照射光としての赤外線を、取消理由通知において指摘したように「繁殖が未熟なコロニーの観察を可能とする」との動機付けにより採用することができるとはいえない。
加えて、前記2(2)アからは、照射光として可視光でなく赤外光を用いた場合に、可視光を用いる場合と比べて検出される菌のコロニーの数や菌の種類が大幅に少なかったことがわかる。一方、前記2(1)アからわかるように、引用発明1は、食品中の食中毒菌を培養時のコロニーの計測によって検出するための微生物検査に用いられる装置の発明であるから、そのような装置における照射光として赤外光を採用することには、可視光を用いる場合と比べて検出される菌のコロニーの数や菌の種類の大幅な減少により食中毒菌の検出の可能性が低くなる点において阻害要因があり、また少なくともそのような採用に動機付けがないというべきである。
これに対して、特許異議申立人は、平成31年1月16日付け意見書において、甲第3号証の記載について、「甲第3号証には、技術的思想の創作が明確に記載され、コロニーに近赤外光を照射し透過光を受光して撮像し、コロニーを観測することが明確に記載されています」と主張しているものの、「明確に記載されて」いるとする具体的な根拠が示されておらず、当該主張を踏まえても、これまで検討したとおり、引用発明1において甲第3号証に記載の照射光としての赤外線を採用することには阻害要因があり、また少なくともそのような採用に動機付けがないというべきである。
そのため、引用発明1において、上記相違点1に関し、甲第3号証に記載の照射光としての赤外線を採用することを当業者が容易に想到し得たとはいえないから、相違点2(訂正前の請求項1?7に係る発明と訂正後の本件発明1?7とで共通)について検討するまでもなく、訂正後の本件発明1?7は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 小括
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によって訂正後の本件発明1?7についての特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 周知技術(甲第4号証)を用いる特許異議申立理由について
訂正前の請求項1?7に係る発明についての特許異議申立理由は、甲第1号証に記載された発明における照射光として、近赤外光を用いることは当業者であれば容易に想到することであり、その根拠として甲第3号証を用いた場合、又は周知技術(甲第4号証(特開2014-44070号公報))を用いた場合のいずれの場合であっても、訂正前の請求項1?7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許は取り消されるべきものであるとしたものである。
この特許異議申立理由のうち、甲第3号証を用いた場合の特許異議申立理由については、取消理由通知において採用したものの、周知技術(甲第4号証)を用いた場合の特許異議申立理由については、取消理由通知において採用しなかった。
ここで、周知技術(甲第4号証)を用いた場合の特許異議申立理由について、甲第4号証は、特許異議申立書において「当該技術分野において、透過光に近赤外光を用いることは従来周知(例えば甲第4号証に近赤外線光を照射し、透過した光によって撮像することが記載されている)である」(第13頁第11行?第13行)として挙げられたものである。しかしながら、甲第4号証に「本発明は非接触、非破壊により検査対象である食品に含まれる異物を検出するための食品検査装置に関するものである」(【0001】)と記載されるとおり、甲第4号証には、食品中の異物を検出するという技術分野において近赤外光の透過光を用いる技術が示されるにとどまっている。一方、甲第1号証に記載された発明は、前記第4の2(1)アのとおり、食品中の微生物を培養により検出するという技術分野に属するものであるところ、検出対象が培養された微生物である場合と食品中の異物である場合とでは、検出測定技術は大きく異なる。
してみると、甲第4号証によって、食品中の異物を検出するという技術分野において近赤外光の透過光を用いる技術が本件出願日当時に周知であったといえたとしても、食品中の微生物を培養により検出するという技術分野に属する甲第1号証に記載された発明において当該技術を採用することを、当業者が容易に想到し得たということができない。
そのため、周知技術(甲第4号証)を用いる特許異議申立理由によっても訂正後の本件発明1?7を当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、周知技術(甲第4号証)を用いる特許異議申立理由によって、訂正後の本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。

2 甲第2号証の記載事項、及び/又は甲第5号証に示される周知技術を用いる特許異議申立理由について
特許異議申立理由において、甲第2号証の記載事項は、訂正前の請求項1?7に係る発明についての相違点2(甲第1号証に記載された発明には「暗環境」にて培養することが特定されていない点)について用いられるものであり、当該相違点2は、訂正前の請求項1?7に係る発明と訂正後の本件発明1?7とで共通するものである。また、甲第5号証に示される周知技術は、訂正前の請求項3、4に係る発明において特定される事項について用いられるものであり、当該特定される事項は、訂正前の請求項3、4に係る発明と訂正後の本件発明3、4とで共通するものである。
一方、前記第4の3において検討したとおり、訂正後の本件発明1?7は、甲第1号証に記載された発明との相違点1に関し、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、訂正後の本件発明1?7に関する相違点2、及び訂正後の本件発明3、4において特定される事項についての容易想到性を検討するまでもなく、訂正後の本件発明1?7を当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、甲第2号証の記載事項、及び/又は甲第5号証に示される周知技術を用いる特許異議申立理由によって、訂正後の本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、訂正後の本件請求項1?7に係る特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天培地に菌源を付加した観察対象を保持するための観察対象保持部と、
暗環境下で観察対象保持部に保持された観察対象の中の菌の培養を行ってコロニーを発生させるための暗環境培養室と、
暗環境培養室内に納められる観察対象保持部に保持された観察対象を近赤外光で照射する赤外光源と、
赤外光源により近赤外光を照射される培養中の観察対象の近赤外光透過像を撮影する赤外光カメラと、
を有する暗環境同時観察培養装置。
【請求項2】
赤外光カメラが観察対象を複数回にわたり継続して撮影するための複数撮影制御を行う制御部をさらに有する請求項1に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項3】
赤外光源には赤外光の所定の波長帯を遮るフィルターが備わる請求項1又は2に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項4】
赤外光カメラには赤外光の所定の波長帯を遮るフィルターが備わる請求項1から3のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項5】
赤外光カメラは、暗環境培養室内の天井側に下方に向けて配置され、
赤外光源は、暗環境培養室内の床側に上方に向けて配置され、
観察対象保持部は、赤外光カメラと赤外光源との間に配置される請求項1から4のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の暗環境同時観察培養装置を用いた観察培養方法であって、
暗環境培養室内に暗環境下で菌の培養を行うために寒天培地に菌源を付加してコロニー未発生状態の観察対象を設置する観察対象設置ステップと、
暗環境培養室内に納められた観察対象に前記赤外光源により近赤外光を照射する赤外光照射ステップと、
前記赤外光カメラにより赤外光源により近赤外光を照射されている状態で観察対象の近赤外光透過像を撮影する撮影ステップと、
を有する観察培養方法。
【請求項7】
前記撮影ステップは、赤外光カメラが観察対象を複数回にわたり継続して撮影するための複数撮影制御を行う制御サブステップをさらに有する請求項6に記載の観察培養方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-18 
出願番号 特願2017-516241(P2017-516241)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C12M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野村 英雄  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 小暮 道明
澤田 浩平
登録日 2017-12-15 
登録番号 特許第6256963号(P6256963)
権利者 宮下 光良
発明の名称 暗環境同時観察培養装置  
代理人 工藤 一郎  
代理人 工藤 一郎  
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