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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B |
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管理番号 | 1351418 |
異議申立番号 | 異議2018-700698 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-27 |
確定日 | 2019-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6290597号発明「通気性積層体及びそれを用いた使い捨てカイロ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6290597号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 特許第6290597号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6290597号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年11月11日に特許出願され、平成30年2月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年8月27日に特許異議申立人株式会社ニトムズにより特許異議の申立てがなされ、当審において平成30年10月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年12月26日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、当該訂正の請求に対して特許法第120条の5第5項の規定により特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書の提出はなかったものである。 第2 訂正の請求についての判断 1 訂正の内容 平成30年12月26日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6290597号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「不織布と多孔質フィルムとが接合されている通気性積層体であって、該不織布は部分熱圧着率が5?25%および目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性長繊維不織布からなり、該多孔質フィルムは、構成成分としてフィルム全重量に対してメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、坪量が40?100g/m^(2)、水銀圧入法によるメディアン径および細孔体積がそれぞれ1μm以下および0.3ml/g以上、並びに10%伸長時の応力が5N/10mm以上の多孔質フィルムであり、王研式透気度が5000?100000秒/100ccであることを特徴とする通気性積層体。」とあるのを、「不織布と一層の多孔質フィルムとが接合されている通気性積層体であって、該不織布は部分熱圧着率が5?25%および目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性長繊維不織布からなり、該一層の多孔質フィルムを構成する樹脂は、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなり、該一層の多孔質フィルムは、構成成分としてフィルム全重量に対して該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、該高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、坪量が40?100g/m^(2)、水銀圧入法によるメディアン径および細孔体積がそれぞれ1μm以下および0.3ml/g以上、並びに10%伸長時の応力が5N/10mm以上の一層の多孔質フィルムであり、王研式透気度が5000?100000秒/100ccであることを特徴とする通気性積層体。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。) (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項7の「スパンボンド法で熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた目付15?50g/m^(2)の部分熱圧着された熱可塑性長繊維不織布と、構成成分としてメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有する混合樹脂を2軸混練押出機で混合分散させた後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機にて、Tダイ法を用いて溶融成膜した未延伸フィルムを、延伸温度40?100℃で1軸に3?5倍延伸し、次いで5から20%緩和で熱セットして得られた坪量40?100g/m^(2)の多孔質フィルムとを、接着剤を用い、非接合面積率が15?55%となるように部分的に接合することを特徴とする通気性積層体の製造方法。」とあるのを、「スパンボンド法で熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた目付15?50g/m^(2)の部分熱圧着された熱可塑性長繊維不織布と、構成成分として、190℃におけるMFRが1?15g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、190℃におけるMFRが1.0?3.0g/10分である高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、かつ、該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび該高圧法の低密度ポリエチレンのみからなる樹脂を樹脂成分とする混合樹脂を2軸混練押出機で混合分散させた後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機にて、Tダイ法を用いて溶融成膜した未延伸フィルムを、延伸温度40?100℃で1軸に3?5倍延伸し、次いで5から20%緩和で熱セットして得られた坪量40?100g/m^(2)の一層の多孔質フィルムとを、接着剤を用い、非接合面積率が15?55%となるように部分的に接合することを特徴とする通気性積層体の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、低密度ポリエチレンについて、「高圧法」のものであること、及び多孔質フィルムについて、「一層」であって、「メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみ」からなるものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0016】の「前記低密度ポリエチレン、即ち高圧法の低密度ポリエチレンの密度は、」との記載、並びに【0047】の「メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)49wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)45wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる樹脂混合物を220℃で溶融混練し、混合原料を得た。得られた混合原料を用い、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機により、Tダイ法で溶融押出し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを温度60℃で加熱し、延伸倍率4.2倍に延伸加工して、本発明に用いる1軸延伸の坪量60g/m^(2)のポリエチレン系多孔質フィルムを得た。」及び【0049】の実施例2、【0052】の実施例4、【0054】の実施例5の同様の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、低密度ポリエチレンについて、「高圧法」のものであって、「190℃におけるMFRが1.0?3.0g/10分である」こと、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンについて、「190℃におけるMFRが1?15g/10分である」こと及び多孔質フィルムについて、「一層」であって、「メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみ」からなるものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0016】の「高圧法低密度ポリエチレンの190℃におけるMFRは、特に限定されないが、1.0?3.0g/10分が好ましく、より好ましくは1.5?2.5g/10分である。」等の記載、【0015】の「メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.90?0.94g/cm3、190℃におけるMFRが1?15g/10分、融点が101?125℃の範囲内であることが好ましい。」との記載、並びに【0047】の実施例1、【0049】の実施例2、【0052】の実施例4、及び【0054】の実施例5の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕、7についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のものである。 「【請求項1】 不織布と一層の多孔質フィルムとが接合されている通気性積層体であって、該不織布は部分熱圧着率が5?25%および目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性長繊維不織布からなり、該一層の多孔質フィルムを構成する樹脂は、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなり、該一層の多孔質フィルムは、構成成分としてフィルム全重量に対して該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、該高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、坪量が40?100g/m^(2)、水銀圧入法によるメディアン径および細孔体積がそれぞれ1μm以下および0.3ml/g以上、並びに10%伸長時の応力が5N/10mm以上の一層の多孔質フィルムであり、王研式透気度が5000?100000秒/100ccであることを特徴とする通気性積層体。 【請求項2】 前記無機充填剤が、50%平均粒径が1?10μmの炭酸カルシュウムであることを特徴とする請求項1に記載の通気性積層体。 【請求項3】 前記熱可塑性長繊維不織布がポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびポリオレフィン系繊維から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の通気性積層体。 【請求項4】 前記多孔質フィルムが、延伸倍率が3?5倍であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の通気性積層体。 【請求項5】 前記接合は部分的接合であって、非接合面積率が15?55%であることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の通気性積層体。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか一項に記載の通気性積層体を袋体構成部材として用いた使い捨てカイロ。 【請求項7】 スパンボンド法で熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた目付15?50g/m^(2)の部分熱圧着された熱可塑性長繊維不織布と、構成成分として、190℃におけるMFRが1?15g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、190℃におけるMFRが1.0?3.0g/10分である高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、かつ、該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび該高圧法の低密度ポリエチレンのみからなる樹脂を樹脂成分とする混合樹脂を2軸混練押出機で混合分散させた後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機にて、Tダイ法を用いて溶融成膜した未延伸フィルムを、延伸温度40?100℃で1軸に3?5倍延伸し、次いで5から20%緩和で熱セットして得られた坪量40?100g/m^(2)の一層の多孔質フィルムとを、接着剤を用い、非接合面積率が15?55%となるように部分的に接合することを特徴とする通気性積層体の製造方法。」 第4 当審の判断 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成30年10月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)(進歩性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証?甲第16号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)(サポート要件)本件特許は、請求項1?7に係る発明が、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消すべきものである。 なお、上記取消理由は、異議申立の理由の全てを含んでいる。 <刊行物> 甲第1号証:特開2011-104993号公報 甲第2号証:株式会社ニトムズ 重松義武による2017年6月15日付け「実験成績証明書」の写し 甲第3号証:「エルメタスN03040」の顕微鏡拡大写真の写し 甲第4号証:株式会社島津テクノリサーチによる平成29年2月23日発行の「測定分析結果報告書」の写し 甲第5号証:株式会社島津テクノリサーチによる平成29年5月29日発行の「測定分析結果報告書」の写し 甲第6号証:株式会社ニトムズ 重松義武による2018年7月16日付け「実験成績証明書」の写し 甲第7号証:特開平10-298326号公報 甲第8号証:特開2013-1435号公報 甲第9号証:特開平10-168207号公報 甲第10号証:特開2006-321151号公報 甲第11号証:特開2007-238822号公報 甲第12号証:特開2001-261868号公報 甲第13号証:特開2007-269916号公報 甲第14号証:特開2002-338721号公報 甲第15号証:特開2008-94911号公報 甲第16号証:特許第6051012号公報 2 取消理由についての判断 ア 甲第1号証記載の発明 甲第1号証には、以下の記載がある (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、使い捨てカイロなどの袋体構成部材として用いられるヒートシール用の多孔質フィルムに関する。また、該多孔質フィルムからなるヒートシール用袋体構成部材および使い捨てカイロに関する。」 (イ)「【0009】 従って、本発明の目的は、ヒートシールにより袋体とする場合には、シール強度が高く、なおかつ、シール時のエッジ切れの生じにくい、生産性に優れたヒートシール用袋体構成部材用多孔質フィルムを提供することにある。また、積層(複合)用不織布として、ポリオレフィン系(特に、ポリプロピレン系やポリエチレン系等)などの比較的低融点のポリマーからなる不織布を使用することができるヒートシール用袋体構成部材用多孔質フィルムを提供することにある。さらに、該ヒートシール用袋体構成部材用多孔質フィルムを用いた、加工性、生産性の良好なヒートシール用袋体構成部材および使い捨てカイロを提供することにある。」 (ウ)「【0102】 実施例1 (多孔質フィルム) メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部を樹脂成分とし、無機充填剤として、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、滑剤として、ステアリン酸を1重量部、酸化防止剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練し、表面層(A層)を形成するための混合原料(A層原料)を得た。 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」、密度0.919g/cm^(3)、融点118℃]100重量部を樹脂成分とし、無機充填剤として、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、滑剤として、ステアリン酸を1重量部、酸化防止剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練し、下層(B層)を形成するための混合原料(B層原料)を得た。 次に、2台の単軸スクリュー押出機を用いて、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出し、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを作製した。 さらに、該未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムを作製した。 多孔質フィルムの表面層(A層)の厚みは10μm、下層(B層)の厚みは60μmであった。 【0103】 (袋体構成部材) 次いで、ナイロン系スパンボンド不織布(目付量:40g/m^(2))に、スプレー塗工にて、ポリアミド系ホットメルト型接着剤(塗布量:5g/m^(2))を塗布し、上記で得られた多孔質フィルムの、下層(B層)側の表面に貼り合わせて、袋体構成部材(通気性袋体構成部材:本発明の袋体構成部材)を作製した。 なお、上記不織布としては、旭化成せんい(株)製、ナイロン系スパンボンド不織布(商品名「エルタスN03040」)を用いた。また、上記接着剤としては、ダイセル・エボニック(株)(旧ダイセル・ヒュルス(株))製、商品名「ベスタメルト」を用いた。 【0104】 (使い捨てカイロ) さらに、使い捨てカイロを作製した。 上記で得られた袋体構成部材とカイロ用粘着シート(日東ライフテック(株)製、商品名「ニトタック E12」)(非通気性袋体構成部材:その他の袋体構成部材)とを、それぞれ130mm(MD方向:長手方向)×95mm(CD方向:幅方向)に切断し、上記で得られた袋体構成部材の多孔質フィルム面(表面層(A層)側の表面)とカイロ用粘着シートの基材フィルム面(粘着剤層と反対側の面)が重なり合うように(向かい合うように)重ね合わせ、発熱体を封入しながらヒートシールを行い、使い捨てカイロを得た。 なお、ヒートシールは、テスター産業製の卓上ヒートシール試験機を用いて、圧力4.0kgf/cm^(2)、シール時間0.5秒で行った。ヒートシール温度は、後述のとおり、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃に変更して、それぞれのヒートシール温度で使い捨てカイロを作製した。 また、上記において、四辺のヒートシール幅は5mmでヒートシールを行った。また、発熱体には、市販品カイロの内容物(鉄粉を主成分とする混合物)を用いた。」 (エ)「【0110】 実施例7 下層(B層)を形成するための混合原料(B層原料)に用いる樹脂成分を、メタロセン系LLDPE[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」]100重量部から、メタロセン系LLDPE[三井化学(株)製、「エボリュー(SP3010)」、密度0.925g/cm^(3)、融点124℃]100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルム、袋体構成部材および使い捨てカイロを作製した。」 甲第1号証の実施例1(【0102】?【0104】)には、以下の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されている。 「ナイロン系スパンボンド不織布(目付量:40g/m^(2))と多孔質フィルムを貼り合わせた通気性袋体構成部材であって、 前記ナイロン系スパンボンド不織布は、旭化成せんい(株)製、ナイロン系スパンボンド不織布(商品名「エルタスN03040」)であり、 前記多孔質フィルムは、メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(A層原料)と、 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」、密度0.919g/cm^(3)、融点118℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(B層原料)と、を用いて、 2台の単軸スクリュー押出機により、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出しで作製した、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムである、通気性袋体構成部材。」 また甲第1号証の実施例7(【0110】)には、甲1-1のB層を形成するためのB層原料に用いる樹脂成分を、メタロセン系LLDPE[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」]100重量部から、メタロセン系LLDPE[三井化学(株)製、「エボリュー(SP3010)」、密度0.925g/cm^(3)、融点124℃]100重量部に変更した以外は、同様に作製した通気性袋体構成部材の発明(以下「甲1-2発明」という。)が記載されている。 そして、以下上記甲1-1発明と甲1-2発明とを合わせて「甲1発明」という。 イ 本件発明1の進歩性について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ナイロン系スパンボンド不織布」は、本件発明1の「不織布」に相当し、同様に「多孔質フィルム」は「多孔質フィルム」に、「通気性袋体構成部材」は「通気性積層体」に相当する。 また、甲1発明の「ナイロン系スパンボンド不織布(目付量:40g/m^(2))」と、本件発明1の「目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性長繊維不織布」とは、「目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性不織布」の限りで共通する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「不織布と一層の多孔質フィルムとが接合されている通気性積層体であって、該不織布は目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性不織布からなる通気性積層体。」 <相違点1> 不織布について、本件発明1では、「部分熱圧着率が5?25%の熱可塑性長繊維不織布」であるのに対して、甲1発明では、旭化成せんい(株)製、ナイロン系スパンボンド不織布(商品名「エルタスN03040」)である点。 <相違点2> 多孔質フィルムについて、本件発明1では、「一層」であって、「構成する樹脂は、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなり、」「構成成分としてフィルム全重量に対してメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、該高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、坪量が40?100g/m^(2)、水銀圧入法によるメディアン径および細孔体積がそれぞれ1μm以下および0.3ml/g以上、並びに10%伸長時の応力が5N/10mm以上」であるのに対して、 甲1-1発明では、メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(A層原料)と、 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」、密度0.919g/cm^(3)、融点118℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(B層原料)と、を用いて、 2台の単軸スクリュー押出機により、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出しで作製した、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムであり、 甲1-2発明では、メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(A層原料)と、 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP3010)」、密度0.925g/cm^(3)、融点124℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(B層原料)と、を用いて、 2台の単軸スクリュー押出機により、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出しで作製した、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムである点。 <相違点3> 本件発明1は、通気性積層体の「王研式透気度が5000?100000秒/100ccである」のに対して、甲1発明では、王研式透気度が不明である点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 <相違点2について> 甲第7?12号証(甲7【0044】、甲8【請求項5】、甲9【0027】、甲10【0043】甲11【0047】、甲12【0027】)には、多孔質フィルムが、使い捨てカイロに用いることは記載されているが、多孔質フィルムとして、一層であって、その構成する樹脂がメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなるものは、いずれにも記載されていない。また、甲第13?16号証のいずれにも、多孔質フィルムについて、一層であって、その構成する樹脂をメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなるものは、記載されていない。 一方、本件発明1は、「本発明の通気性積層体における多孔質フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび無機充填剤の混合物から構成されることが好ましい。このような構成の多孔質フィルムは、中間モジュラスが向上でき、未延伸フィルムの延伸加工を行うことで多孔質化でき、且つ延伸ムラが減少できるなどの特長を有している。」(【0013】)、「メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレンは、・・・であることが好ましい。また、密度違いの2種以上を混合することが好ましく、例えば、低密度および低融点の直鎖状低密度ポリエチレンを配合することで、溶液粘度が調整でき、押し出し成形加工性及び製袋加工時のヒートシール性などを向上させることができる。」(【0015】)、「本発明に用いる多孔質フィルムは、前記ポリエチレン樹脂および無機充填剤の特定範囲に配合することで、目的とするフィルム特性およびヒートシール性が得られる。」(【0020】)と記載されているように、一層であっても、特定の樹脂組成とすることで、「使い捨てカイロの袋体構成部材に使用した際に、熱シール性が良く、発熱最高温度および発熱持続時間などの使い捨てカイロの製品特性に優れ、且つ熱シール時のエッジ切れなどが少なく生産性に優れた、不織布と多孔質フィルムとの通気性積層体を提供する」(【0005】)ものである。 よって、甲1発明のA層/B層の2層積層構造の多孔質フィルムについて、1層とすること、及びその構成する樹脂がメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなるものとすることは、甲第7?16号証を参照しても、当業者が容易になし得るものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?16号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明1に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。 ウ 本件発明2?6の進歩性について 本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに特定したものであるから、上記イと同様の理由により、甲1発明及び甲第7?16号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2?6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明2?6に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。 エ 本件発明7の進歩性について 甲第1号証の実施例1(【0102】?【0104】)には、以下の発明(以下「甲1-1製法発明」という。)が記載されている。 「ナイロン系スパンボンド不織布(目付量:40g/m^(2))と多孔質フィルムを貼り合わせた通気性袋体構成部材の製造方法であって、 前記ナイロン系スパンボンド不織布は、旭化成せんい(株)製、ナイロン系スパンボンド不織布(商品名「エルタスN03040」)であり、 前記多孔質フィルムは、メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(A層原料)と、 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」、密度0.919g/cm^(3)、融点118℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(B層原料)と、を用いて、 2台の単軸スクリュー押出機により、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出しで作製した、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムである、通気性袋体構成部材の製造方法。」 そして、本件発明7と甲1製法発明とを対比すると、本件発明7と甲1-1製法発明とは、少なくとも以下の<相違点4>の点で相違する。 <相違点4> 多孔質フィルムについて、本件発明1では、「一層」であって、「構成成分として、190℃におけるMFRが1?15g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、190℃におけるMFRが1.0?3.0g/10分である高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、かつ、該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび該高圧法の低密度ポリエチレンのみからなる樹脂を樹脂成分とする」のに対して、 甲1-1製法発明では、メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP0540)」、密度0.903g/cm^(3)、融点98℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(A層原料)と、 メタロセン系触媒を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)[三井化学(株)製、「エボリュー(SP2320)」、密度0.919g/cm^(3)、融点118℃]100重量部、平均粒径3μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)90重量部、ステアリン酸を1重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」を1重量部配合し、2軸混練押出機にて200℃で溶融混練した混合原料(B層原料)と、を用いて、 2台の単軸スクリュー押出機により、それぞれA層原料、B層原料を220℃で溶融押出し、2層成型用Tダイスで共押出しで作製した、A層/B層の2層積層構造の未延伸フィルムを、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃で長手(MD)方向に延伸倍率4.0倍で延伸して多孔質化し、厚み70μmの2層積層構造の多孔質フィルムである点。 以下、上記相違点4について検討する。 上記相違点4は、上記イ(イ)の<相違点2について>で検討したのと同様の理由で、甲1-1製法発明のA層/B層の2層積層構造の多孔質フィルムについて、1層とすること、及びその構成する樹脂がメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなるものとすることは、甲第7?16号証を参照しても、当業者が容易に想到し得るとはいえない。 したがって、本件発明7は、甲1-1製法発明及び甲第2?16号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明7に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。 オ サポート要件について 本件発明が解決しようとする課題は、【0005】に「使い捨てカイロの袋体構成部材に使用した際に、熱シール性が良く、発熱最高温度および発熱持続時間などの使い捨てカイロの製品特性に優れ、且つ熱シール時のエッジ切れなどが少なく生産性に優れた、不織布と多孔質フィルムとの通気性積層体を提供することである。」と記載され、【課題を解決するための手段】の欄の【0006】に「本発明者らは、鋭意検討した結果、密度および粘性の異なる樹脂を配合すること、および特定の混錬機で樹脂を混錬・溶融することで、製膜加工性が良好となり、延伸ムラを少なく、孔の分散性を向上させることができ、その結果、特定の細孔径および細孔体積を有する、幅および長さ方向の通気性のバラツキが小さく、熱シール性に優れた多孔質フィルムが得られ、この多孔質フィルムを用いることによって上記目的が達成されることを見出だし、本発明を完成させたものである。」と記載されている。 しかし、本件特許明細書の【0013】の「本発明の通気性積層体における多孔質フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび無機充填剤の混合物から構成されることが好ましい。このような構成の多孔質フィルムは、中間モジュラスが向上でき、未延伸フィルムの延伸加工を行うことで多孔質化でき、且つ延伸ムラが減少できるなどの特長を有している。」という記載、【0015】の「メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレンは、・・・であることが好ましい。また、密度違いの2種以上を混合することが好ましく、例えば、低密度および低融点の直鎖状低密度ポリエチレンを配合することで、溶液粘度が調整でき、押し出し成形加工性及び製袋加工時のヒートシール性などを向上させることができる。」という記載、及び【0020】の「本発明に用いる多孔質フィルムは、前記ポリエチレン樹脂および無機充填剤の特定範囲に配合することで、目的とするフィルム特性およびヒートシール性が得られる。」という記載、並びに【0023】の「ギヤポンプ付き2軸混錬押出機で再度混錬することで、樹脂中の無機充填剤が均一に混ざり、孔の分散性を向上させことができ、」という記載を参照すると、上記【0006】の記載は、「密度および粘性の異なる樹脂を配合すること」で、「製膜加工性が良好となり、延伸ムラを少なく」なること、及び「特定の混錬機で樹脂を混錬・溶融することで、」「孔の分散性を向上させる」ことを意味するものであると理解できる。 そうすると、本件発明の課題は、「密度および粘性の異なる樹脂を配合すること」で解決されると理解されるから、密度および粘性の異なる樹脂を配合する本件発明1?7は、本件発明の課題を解決しているものとして把握できるから、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、その特許は取り消すべきものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1?7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 不織布と一層の多孔質フィルムとが接合されている通気性積層体であって、該不織布は部分熱圧着率が5?25%および目付けが15?50g/m^(2)の熱可塑性長繊維不織布からなり、該一層の多孔質フィルムを構成する樹脂は、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法の低密度ポリエチレンのみからなり、該一層の多孔質フィルムは、構成成分としてフィルム全重量に対して該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、該高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、坪量が40?100g/m^(2)、水銀圧入法によるメディアン径および細孔体積がそれぞれ1μm以下および0.3ml/g以上、並びに10%伸長時の応力が5N/10mm以上の一層の多孔質フィルムであり、王研式透気度が5000?100000秒/100ccであることを特徴とする通気性積層体。 【請求項2】 前記無機充填剤が、50%平均粒径が1?10μmの炭酸カルシュウムであることを特徴とする請求項1に記載の通気性積層体。 【請求項3】 前記熱可塑性長繊維不織布がポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびポリオレフィン系繊維から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の通気性積層体。 【請求項4】 前記多孔質フィルムが、延伸倍率が3?5倍であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の通気性積層体。 【請求項5】 前記接合は部分的接合であって、非接合面積率が15?55%であることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の通気性積層体。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか一項に記載の通気性積層体を袋体構成部材として用いた使い捨てカイロ。 【請求項7】 スパンボンド法で熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた目付15?50g/m^(2)の部分熱圧着された熱可塑性長繊維不織布と、構成成分として、190℃におけるMFRが1?15g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを49?62wt%、190℃におけるMFRが1.0?3.0g/10分である高圧法の低密度ポリエチレンを2?10wt%および無機充填剤を35?50wt%含有し、かつ、該メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンおよび該高圧法の低密度ポリエチレンのみからなる樹脂を樹脂成分とする混合樹脂を2軸混練押出機で混合分散させた後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機にて、Tダイ法を用いて溶融成膜した未延伸フィルムを、延伸温度40?100℃で1軸に3?5倍延伸し、次いで5から20%緩和で熱セットして得られた坪量40?100g/m^(2)の一層の多孔質フィルムとを、接着剤を用い、非接合面積率が15?55%となるように部分的に接合することを特徴とする通気性積層体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-03-22 |
出願番号 | 特願2013-233432(P2013-233432) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 赤澤 高之 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 竹下 晋司 |
登録日 | 2018-02-16 |
登録番号 | 特許第6290597号(P6290597) |
権利者 | 旭化成株式会社 大化工業株式会社 |
発明の名称 | 通気性積層体及びそれを用いた使い捨てカイロ |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 山岸 忠義 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 青木 篤 |