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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B22F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22F
審判 全部申し立て 2項進歩性  B22F
管理番号 1351424
異議申立番号 異議2018-700069  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-26 
確定日 2019-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6170994号発明「粉末積層造形に用いるための造形用材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6170994号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6170994号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6170994号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成27年12月22日に特許出願され、平成29年 7月 7日に特許権の設定登録がされ、同年 7月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1?7に係る特許について、平成30年 1月26日に特許異議申立人石川宗利(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は次のとおりである。
平成30年 4月17日付け 取消理由通知
同年 6月18日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月 9日 異議申立人による意見書の提出
同年10月22日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年12月11日 特許権者代理人 弁理士安部 誠らとの面接
同年12月25日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 2月 8日 異議申立人による意見書の提出


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年12月25日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲の訂正を請求するものであって、その内容は、以下の訂正事項1?4のとおりである。
なお、本件訂正の請求がされたことによって、平成30年 6月18日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
ア 特許請求の範囲の請求項1に
「粉末積層造形に用いる造形用材料であって、
セラミックを含む造粒粉末である第1粉末と、
金属を含む第2粉末と、を含み、」
とあるのを
「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料であって、
セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末と、
金属を70質量%以上含む第2粉末と、を含み、
前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」
に訂正する。

イ 請求項1を引用する請求項2?7についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
ア 特許請求の範囲の請求項5に
「一次粒子は」
とあるのを
「前記一次粒子は」
に訂正する。

イ 請求項5を引用する請求項6、7についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「造形用材料の三次元造形物」
とあるのを
「造形用材料を用いた粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって造形された三次元造形物」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「造形用材料を用いて三次元造形を行う」
とあるのを
「造形用材料を用い、粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって三次元造形を行う」
に訂正する。


2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項1は、以下の訂正事項1-1?1-4からなる。
・訂正事項1-1
「粉末積層造形に用いる造形用材料」との記載を「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料」との記載にする訂正。
・訂正事項1-2
「セラミックを含む造粒粉末である第1粉末」との記載を「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末」との記載にする訂正。
・訂正事項1-3
「金属を含む第2粉末」との記載を「金属を70質量%以上含む第2粉末」との記載にする訂正。
・訂正事項1-4
「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」との記載を追加する訂正。

(イ)訂正事項1-1による訂正は、訂正前の「粉末積層造形に用いる造形用材料」との記載に対し、「粉末床溶融結合法による」との記載を付加することで、「粉末積層造形」の種類を具体的に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(ウ)訂正事項1-2による訂正は、訂正前の「セラミックを含む造粒粉末である第1粉末」との記載において、「セラミック」の含有量が任意であったところ、「60質量%以上」との記載を付加することで、「セラミック」の含有量を具体的に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(エ)訂正事項1-3による訂正は、訂正前の「金属を含む第2粉末」との記載において、「金属」の含有量が任意であったところ、「70質量%以上」との記載を付加することで、「金属」の含有量を具体的に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(オ)訂正事項1-4による訂正は、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」との記載を付加して、訂正前の「セラミックを含む造粒粉末である第1粉末」との記載に含まれる「造粒粉末」を具体的に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1-1に関連し、願書に添付した明細書には、
「粉末積層造形とは、付加製造技術において造形物の材料として粉末状の材料を用いる各種の造形手法を広く包含する。具体的には、例えば、・・・レーザ焼結法,レーザ選択焼結(Selective Laser Sintering:SLS)法,電子ビーム焼結法等に代表される粉末床溶融結合(Powder bed fusion)法等と呼ばれるものが含まれる。この造形用材料は緻密な造形物の造形に好適であるとの観点から、指向性エネルギー堆積法、粉末床溶融結合法を採用することがより好ましい。」(段落【0017】、当審注:「・・・」により記載の省略を示す。以下同様。)
との記載があるから、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

(イ)訂正事項1-2に関連し、願書に添付した明細書には、
「第1粉末は本質的にセラミックを含む。第1粉末は、典型的には、主成分としてセラミックを含む。ここでいう主成分とは、第1粉末の60質量%以上を占める成分を意味する。」(段落【0019】)
との記載があるから、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

(ウ)訂正事項1-3に関連し、願書に添付した明細書には、
「第2粉末は本質的に金属を含む。第2粉末は、典型的には、主成分として金属を含む。ここでいう主成分とは、第2粉末の70質量%以上を占める成分を意味する。」(段落【0054】)
との記載があるから、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

(エ)訂正事項1-4のうち、「一次粒子」が「セラミック」からなることに関連し、願書に添付した明細書には、
「換言すると、第1粉末において、セラミック成分は、例えば、1次粒子として含まれる。」(段落【0009】)、「ここで第1粉末におけるセラミックは、一次粒子として存在し、この一次粒子同士が三次元的に結合されて造粒粒子(延いては造粒粉末)を構成している。」(段落【0020】)、「また、セラミックを含む第1粉末としては、上記の性状を有するセラミック粉末(一次粒子に相当)を原料粉末とし、このセラミック粉末を造粒もしくは、造粒焼結することで用意することができる。」(段落【0059】)
との記載がある。
また、訂正事項1-4のうち、「前記造粒粉末」は、「一次粒子」が、「融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されて」いることに関連し、願書に添付した明細書には、
「第1粉末は、造粒粉末から構成されている。換言すると、第1粉末は、上記のとおり二次粒子の形態を有する造粒粒子の集合として構成されている。ここで造粒粒子とは、一次粒子が三次元的に結合され、一体となって一つの粒のように振る舞う粒子状物(粒子の体をなしたもの)をいう。そしてここでいう「結合」とは、直接的または間接的に、2つ以上の一次粒子が結びつくことを意味する。例えば、・・・一次粒子の表面が融着または焼結して一体化した結合、バインダ(接着剤)による結合等が含まれる。」(段落【0025】)
との記載がある。
したがって、訂正事項1-4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。


(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、請求項5の「一次粒子」を「前記一次粒子」に訂正することによって、請求項5の「一次粒子」が、訂正事項1-4による訂正後の請求項1に記載の「一次粒子」を示すことを明確にするものである。
したがって、訂正事項1-1による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2による訂正は、単に「一次粒子」に「前記」を付す訂正であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。


(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、請求項6の「造形用材料の三次元造形物」を「造形用材料を用いた粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって造形された三次元造形物」に訂正することによって、訂正事項1-1による訂正後の請求項1に記載の「粉末床溶融結合法」との対応関係を明確にするものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3による訂正は、訂正事項1-1による訂正と同様に、願書に添付した明細書の段落【0017】に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。


(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4による訂正は、請求項7の「造形用材料を用いて三次元造形を行う」を「造形用材料を用い、粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって三次元造形を行う」に訂正することによって、訂正事項1-1による訂正後の請求項1に記載の「粉末床溶融結合法」との対応関係を明確にするものである。
したがって、訂正事項4による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4による訂正は、訂正事項1-1による訂正と同様に、願書に添付した明細書の段落【0017】に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。


3 一群の請求項
本件訂正前の請求項1?7について、請求項2?7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?7は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?7〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。


4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
前記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、訂正箇所に下線を付した。

「【請求項1】
粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料であって、
セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末と、
金属を70質量%以上含む第2粉末と、を含み、
前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、
前記第1粉末と前記第2粉末との合計に対する前記第2粉末の割合は、10質量%超過90質量%未満である、造形用材料。
【請求項2】
前記第1粉末の平均粒子径は、1μm以上100μm以下である、請求項1に記載の造形用材料。
【請求項3】
前記第2粉末の平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下である、請求項1または2に記載の造形用材料。
【請求項4】
前記第1粉末は、前記セラミックからなる粉末と、第2の金属からなる粉末とが造粒された造粒粉末である、請求項1?3のいずれか1項に記載の造形用材料。
【請求項5】
前記第1粉末において、前記造粒粉末を構成する前記一次粒子は焼結により一体化されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の造形用材料。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の造形用材料を用いた粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって造形された三次元造形物である、物品。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか1項に記載の造形用材料を用い、粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって三次元造形を行う、三次元造形物の製造方法。」


2 申立理由と取消理由について
(1)申立理由について
ア 特許異議申立書(以下単に「異議申立書」という。)において異議申立人が主張する申立理由の概要は、以下のとおりである。それぞれの申立理由を、便宜的に「申立理由1」?「申立理由5」という。

・申立理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・申立理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)
請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・申立理由3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)
請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・申立理由4 特許法第29条第1項第3号又は同第2項(新規性進歩性)
請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、当該請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。

・申立理由5 特許法第29条第2項(進歩性)
請求項1?7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、当該請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。

イ [証拠方法]
以下においては、「甲第1号証」?「甲第11号証」を、それぞれ単に「甲1」?「甲11」と表記する。
甲1 :特開2002-220652号公報
甲2 :京極秀樹外5名「超硬合金のレーザ積層造形」
近畿大学次世代基盤技術研究所報告 Vol.2(2011) p.95 - 100
甲3 :国際公開第2015/162206号
甲4 :五日市剛「溶射用粉末材料 -サーメット-」
電気製鋼 Vol.74 No.4 2003年10月15日 p.259 - 265
甲5 :黒田聖治外1名「溶射サーメット(WC-Co)皮膜の組織と特性」
高温学会誌第36巻第6号 2010年11月20日 p.254 - 263
甲6 :特開2015-135099号公報
甲7 :早野誠治「粉末焼結積層造形装置の課題」
素形材 Vol.48 No.7 2007年7月20日 p.6 - 12
甲8 :「3Dプリンター用ガスアトマイズ粉末」
山陽特殊製鋼技報第22巻第1号 2015年6月17日 p.62 - 64
甲9 :特表2017-519101号公報
甲10:Dongdong Gu外1名
「Influence of reinforcement weight fraction on microstructure
and properties of submicron WC-Cop/Cu bulk MMCs
prepared by direct laser sintering」
Journal of Alloys and Compounds 431 (2007) p.112 - 120
甲11:Y.Xiong外4名
「(Ti, W)C-Ni cermets by laser engineered net shaping」
Powder Metallurgy Vol.53 No.1 (2010) p.41 - 46


(2)平成30年 4月17日付けの取消理由通知書に記載した取消理由について
当該取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。それぞれの取消理由を、便宜的に「取消理由1」?「取消理由4」という。
ここで、取消理由1は、申立理由1として申し立てられた内容のうちの一部に対応する。また、取消理由2、3は、それぞれ、申立理由4、5に対応する。そして、取消理由4は、当審での職権審理によるものである。
なお、申立理由のうち、申立理由1の一部(取消理由1として採用しなかった部分)と、申立理由2、3は、取消理由として採用しなかった。

・取消理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・取消理由2 特許法第29条第1項第3号又は同第2項(新規性進歩性)
請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・取消理由3 特許法第29条第2項(進歩性)
請求項1?7に係る特許は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

・取消理由4 特許法第29条第1項第3号又は同第2項(新規性進歩性)
請求項1、3、6、7に係る発明は、甲第10号証に記載された発明であるか、甲第10号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該請求項に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。


(3)平成30年10月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
当該取消理由通知書には、前記(2)で示した取消理由1?4のうち、取消理由1と取消理由3を再度通知した。なお、取消理由3に関し、甲2を主引例とした進歩性に係る理由に加えて、新規性に係る理由を職権で追加した。


(4)取消理由2?4に係る甲1?甲5、甲7、甲8、甲10の記載について
当審の判断において必要な上記の各甲号証の記載について、以下に摘記する。なお、以下において、特段の断りがない限り、下線は当審で付したものである。
ア 甲1には、以下の記載がある。
「【請求項1】 皮膜形成に用いる溶射用粉末において、その全体の重量に対し、80?97%のサーメット粉末と3?20%の金属粉末からなり、前記金属粉末は、CrとNiの合計が金属粉末全体の重量に対し90%以上を占め、かつ、Crの含有量が金属粉末全体の重量に対し0?55%であることを特徴とする溶射用粉末。」

「【0004】通常、「溶射」と同様の意味で、「肉盛り」や「スプレー」といった言葉が使用されることがある。これらの言葉に明確な定義の差はなく、また、これらに使用される粉末に関しても区別して用いられておらず、溶射皮膜形成用の粉末であっても溶射用に限定されるわけではない。つまり、溶射用の粉末が肉盛りやスプレーに用いられたり、逆に肉盛りやスプレー用の粉末が溶射に用いられている。従って、本発明における「溶射用粉末」とは「肉盛り」や「スプレー」などの用途にも供されるものであることは言うまでもない。」

「【0010】これら造粒-焼結法、焼結-粉砕法、あるいは溶融-粉砕法によって調製されたサーメット粉末はそのまま溶射用粉末として使用されるが、例えば緻密な溶射皮膜を形成する目的で、サーメット粉末に自溶合金粉末を添加、混合した溶射用粉末を溶射した後、フュージング処理を行い、皮膜を形成する場合もある。一方、湿式環境下において優れた耐食性および耐摩耗性を有した溶射皮膜を形成するための溶射用粉末としては、例えば、セラミックス原料として、タングステンカーバイドとクロムカーバイドに、結合材としてNiまたはNi基合金を混ぜ合わせ、造粒-焼結法で製造されたWC/CrC/Ni系溶射用粉末が産業界で広く使われている。」

「【0018】また、本発明は、造粒-焼結法、焼結-粉砕法、または溶融-粉砕法により調製したサーメット粉末、およびCrとNiの合計が金属粉末全体の重量に対し90%以上であり、かつ、Crの含有量が金属粉末全体の重量に対し0?55%である金属粉末を、溶射用粉末全体の重量に対し各々80?97%、3?20%の含有量となるよう添加、混合することを特徴とする、皮膜形成に用いる溶射用粉末の製造方法を提供するものである。」

「【0033】一例として、粒度分布5?75μmの顆粒粉末を焼結し、解砕、分級することにより、高速フレーム溶射に適した粒度分布が6?63μmのサーメットを得ることができる。また、必要に応じて、造粒、解砕、または分級条件を変更することにより、粒度分布6?38μm、10?45μm、15?45μm、15?53μm、20?63μmのサーメット粉末を調製し、溶射装置の種類や溶射条件に応じて使い分けることができる。」

「【0043】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<溶射用粉末の調製>まず、表1の組成に従い、サーメット粉末に使用する原料を混合し、これに3.6%PVA水溶液を混合し、十分に撹拌してスラリーを調製する。このスラリーを、噴霧造粒機等を用いて粒度分布が5?75μmとなるよう球状の顆粒粉末を調製し、真空脱脂焼結炉においてアルゴン雰囲気下で脱脂した後、1250℃で5時間、焼結する。焼結後の粉末は、ボールミルを用いて解砕し、次いで振動式篩機および気流式分級機を用いて分級を行い、粒度分布が15?45μmとなるようサーメット粉末を調製した。
【0044】また、前記サーメットとは別に、表1の組成に従い、アトマイズ法により作製された金属粉末をサーメット粉末と同様の方法で分級し、15?45μmに粒度調整した。前記方法により得られたサーメットおよび金属粉末をV型混合装置にて混合し、実施例1?15(表1)、比較例1?8(表2)の試料を調製した。」

「【0046】

【表1】


なお、注1):溶射用粉末全量に対する重量割合
注2):サーメット粉末全量に対する重量割合
注3):金属粉末全量に対する重量割合
注4):表記の合金中における数字は、それぞれの金属の含有量を重量%で示したものである。例、Ni-20Cr-10Co合金は20重量%のCrと10重量%のCoを含み、残部70重量%のNiを含む合金を示す。」


イ 甲2には、以下の記載がある(囲み及び下線は異議申立人が付したものである。)。



(第95頁)




(第96頁)




(第97頁)




(第98頁)




(第99頁)




(第100頁)


ウ 甲3には、以下の記載がある(訳は、甲3に対応する公表公報である甲9を参考に当審にて作成したものである。)。



(第1頁第3行?第7行)
(訳:
技術分野
本開示は、緻密な球状の超硬合金又はサーメット顆粒の粉末の作製方法に関する。本開示は、当該方法により生産された粉末、及び、結合剤噴射技術による3D印刷などの付加製造における前記粉末の使用にも関する。)




(第2頁第20行?第30行)
(訳:
請求項1に記載の方法の利点の1つは、サーメット又は超硬合金の凝集した(多孔性)成分を含む球状の顆粒の粉末を、緻密な球状のサーメット又は超硬合金顆粒を含む粉末に変換することができることである。前記粉末は、各顆粒が付着したり焼結したりする(これ以降「顆粒間焼結」と呼ぶ)問題を低減しつつ生産され得る。焼結緻密化の間、個々の球状顆粒間の接触を阻害剤粉末が防止するからである。顆粒間焼結では典型的に、焼結した粉末が互いに付着し、これにより共焼結した粒が凝集するか或いは粉末の焼結ケーキが形成される。焼結した粉末ケーキは粉砕されて再び粉末を形成する可能性があり、顆粒が幾分破損し、顆粒の一部の球形状が失われ、最も微小な球状顆粒の量が低下する。)




(第4頁第26行?第2行)
(訳:
定義:
本明細書において、用語「サーメット」は、セラミック相すなわち硬質成分と、金属結合剤相とを含む材料を表すことを意図する。

本明細書において、用語「超硬合金」は、セラミック相すなわち硬質成分と、金属結合剤相とを含む材料を表すことを意図し、セラミック相はWCを含み、金属相はCoと、任意選択的に、Ni、Fe、Cr、及びMoのうち一以上とを含む。

用語「顆粒(granule)」は、例えば、噴霧乾燥により生産された混合物の凝集状態をさす。)




(第5頁第26行?第6頁第10行)
(訳:
詳細な説明
本開示は、緻密な球状のサーメット又は超硬合金顆粒の粉末を作製する方法に関する。該方法は下記の工程を含む。
(a)金属、硬質成分、及び有機結合剤を含む球状顆粒を形成する工程、
(b)前記球状顆粒を焼結阻害剤粉末と混合し、球状顆粒と焼結阻害剤粉末との混合物を形成する工程、
(c)球状顆粒と焼結阻害剤粉末との混合物を、炉室内にロード(load)する工程、
(d)工程(b)で得られた混合物を、炉室内で焼結温度で熱処理して、球状顆粒から有機結合剤を除去し、硬質成分を各球状顆粒中の金属と焼結することにより、焼結された緻密な球状顆粒と焼結阻害剤粉末との混合物を形成する工程、
(e)焼結された緻密な球状顆粒と焼結阻害剤粉末との混合物を、炉室からアンロード(unload)する工程、並びに
(f)焼結された緻密な球状顆粒から焼結阻害剤粉末を分離することにより、緻密な球状のサーメット又は超硬合金顆粒の粉末を形成する工程。)




(第13頁第10行?第14行)
(訳:
実施例
実施例1‐酸化イットリウムの阻害剤粉末
WC、Co、Cr、PEGの粉末、及びエタノールを含むスラリから顆粒が形成された。WC及びCo粉末の平均粒径はそれぞれ、0.8μmと1.3μmであった。Niro噴霧乾燥機器でスラリが噴霧乾燥された。形成された噴霧乾燥顆粒は63μmネットでふるい分けされ、顆粒粉末のうち最小の部分のみが残った。)




(第14頁第15行?第18行)
(訳:
1410℃で焼結した超硬合金粉末の焼結された緻密な球状顆粒の粒径は、d(0.1):22.4μm,d(0.5):32μm、及びd(0.9):46μmであった。0.02vol%よりも低い(<A02)気孔率を示すスルーカット(through cuts)球状顆粒が幾つか観察された。)


エ 甲4には、以下の記載がある(囲みは異議申立人が付したものである。)。



(第260頁下半分)




(第261頁左下部)




(第261頁右下部)




(第262頁左上部)




(第262頁下半分)

オ 甲5には、以下の記載がある(囲みは異議申立人が付したものである。)。



(第255頁右側部)




(第256頁左側部)




(第256頁右側部)

カ 甲7には、以下の記載がある(囲みは異議申立人が付したものである。)。



(第7頁左側部)

キ 甲8には、以下の記載がある(囲みは異議申立人が付したものである。)。



(第62頁)




(第63頁)

ク 甲10には、以下の記載がある(訳は当審によるものである。)。
「Abstract
Direct metal laser sintering (DMLS), due to its flexibility in materials and shapes, exhibits a great potential for fabricating complex shaped bulk metal matrix composites (MMCs). In the present work, the submicron WC-10% Co particulate reinforced Cu matrix composites were prepared using DMLS.」
(当審訳:
要約
直接金属レーザ焼結(DMLS)は、材料及び形状において融通が利くことから、複雑な形状のバルク金属マトリックス複合材料(MMC)を製造するための大きな可能性を示す。本研究では、DMLSを用いて、サブミクロンWC-10%Co微粒子で強化されたCuマトリックス複合材を調製した。)

「2.1 powder preparation
Electrolytic 99% purity Cu powder with round dendrite shape and mean particle size of 15μm (Fig. 1a) and WC-10% Co composite powder with irregular shape and mean equivalent spherical diameter of 0.6μm (Fig. 1b) were used in this experiment. The WC-Co composite powder was synthesized using a novel “spray drying and fixed bed” technique, which involved spray drying a precursor solution containing ammonium metatungstate (AMT) and Co(NO_(3))_(2), followed by roasting, ball milling, reduction, and carbonization [30]. The two components were mixed according to Cu:WC-Co weight ratios of 80:20, 70:30, and 60:40.」(第113頁右側欄第12行?21行)
(当審訳:
2.1 粉末の調製
本研究では、円みを帯びたデンドライト形状を有する、平均粒子径が15μmの純度99%の電解Cu粉末(図1a )と、不規則な形状を有する平均円相当径が0.6μmのWC-10%Co複合粉末(図1b )とが、使用された。WC-Co複合粉末の合成は、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)およびCo(NO_(3))_(2)を含有する前駆体溶液の噴霧乾燥と、それに引き続く焙焼、ボールミル粉砕、還元及び炭素化を含んだ、新規な“spray drying and fixed bed”技術を用いて行われた[30]。上記2種の成分は、80:20、70:30、および60:40のCu:WC-Co重量比に従って混合した。)

「2.2 Laser processing
The DMLS system used in this study, as schematically shown in Fig. 2, mainly consists of a continuous wave Gaussian CO_(2) laser with a maximum output power of 2000W, an automatic powder delivery system, and a computer system for process control. When a part was to be fabricated, a steel substrate was placed on the building platform and leveled. Then, a thin layer of loose powder was spread on the substrate by the roller. Subsequently, a laser beam scanned the powder bed surface to form a layer-wise profile according to the CAD data of the part. The similar process was repeated until the part was completed. The entire sintering process was performed in air at room temperature.
A series of preliminary DMLS experiments were carried out to determine the processing conditions which were generally suitable for the laser sintering of the three different WC-Co/Cu powder systems. Further DMLS processes were performed to prepare the bulk MMCs specimens using the following fixed processing parameters: spot size of 0.30 mm, laser power of 700W, scan speed of 0.06 m/s, scan line spacing of 0.15 mm, and layer thickness of 0.20 mm.」(第113頁右側欄第24行?同欄最下行)
(当審訳:
2.2 レーザー処理工程
この研究で使用したDMLSシステムは、図2に模式的に示すように、2000Wの最大出力電力を有する連続波ガウス型CO_(2)レーザ、自動粉末送出システム、及びプロセス制御のためのコンピュータ・システムから主に構成される。部品が製造されたとき、鋼基材が成型台上に置かれ、水平にされた。そして、ゆるい粉末の薄層が、ローラによって基材上に広げられた。その後、レーザビームが、その部品のCADデータに応じた層ごとのプロファイルを形成するために、粉末層表面を走査した。部品が完了するまで同様の処理が繰り返された。全体の焼結工程は、空気中で室温で実施された。
一連の予備DMLSの実験は、3種類の異なるWC-Co/Cu粉末系のレーザ焼結のための概略的に適切な処理条件を決定するために実施された。更なるDMLSプロセスは、以下の固定された処理パラメータを用いてバルクMMC試験片を調製するために実施された:スポットサイズ0.30mm、レーザパワー700W、スキャン速度0.06m/s、走査線間隔0.15mm、層厚0.20mmである。)」




(当審訳:図1 出発粉末のSEM像:(a) Cu粉末と(b) WC-10%Co粉末)




(当審訳:図2 DMLS装置の概略)



3 当審の判断
当審は、平成30年10月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消せないと判断する。その理由は、後記(1)及び(2)のとおりである。
また、当審は、平成30年 4月17日付けの取消理由通知書に記載したが、平成30年10月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載しなかった取消理由によっては、本件特許を取り消せないと判断する。その理由は、後記(3)及び(4)のとおりである。
また、当審は、平成30年 4月17日付けの取消理由通知書及び平成30年10月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)のいずれにも記載しなかった特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消せないと判断する。その理由は、後記(5)及び(6)のとおりである。
すなわち、後記(1)?(6)は、それぞれ、次の事項を記載する。
(1)取消理由1(サポート要件)について
(2)取消理由3(甲2を主引例とした新規性進歩性)について
(3)取消理由2(甲1を主引例とした新規性進歩性)について
(4)取消理由4(甲10を主引例とした新規性進歩性)について
(5)申立理由1(サポート要件)のうち取消理由1として採用しなかった部分と、申立理由2(明確性要件)について
(6)申立理由3(実施可能要件)について

以下、順に詳述する。
なお、以下において、「特許権者の意見書」は、特許権者による平成30年12月25日付け意見書のことを意味し、「異議申立人の意見書」は、異議申立人による平成31年 2月 8日付け意見書のことを意味する。

(1)取消理由1(サポート要件)について
(1)-1 本件発明1について
ア 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断される。

イ まず、本件発明が解決しようとする課題(以下、単に「本件課題」という。)について検討すると、本件明細書の段落【0007】には
「本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉末積層造形に用いるための粉末状の造形用材料であって、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能な新規な造形用材料を提供することにある。」
との記載があるから、本件課題は「セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能な新規な造形用材料を提供すること」であると認められる。

ウ 上記本件課題を解決できる発明に関連し、本件明細書には、以下の記載がある。
「【0057】
以上の構成の造形用材料は、セラミックを含む造粒粉末である第1粉末のみではなく金属を含む第2粉末を含んでいる。金属は、一般にセラミックよりも融点が低い。このことにより、造形用材料においては第1粉末よりも第2粉末の溶融が先行し、第2粉末の融液が第1粉末の表面に濡れ広がって、第1粉末の溶融を促進させる。あるいは、第2粉末が溶融してなるマトリックス内に第1粉末を分散状態で取り込み、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができる。例えば、サーメットや超硬合金の形態の緻密な造形物を得ることができる。
【0058】
ここで、第1粉末と前記第2粉末との合計に対する第2粉末の割合は、10質量%を超過している。このことにより、十分に溶融し難い第1粉末の表面に第2粉末が好適に濡れ広がり、緻密な造形を可能とすることができる。第2粉末の割合は、所望の造形物の物性に応じて適宜調整することができるものの、例えば、12質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。しかしながら、第2粉末が多すぎると、セラミックを含む第1粉末の特徴が損なわれ得るために好ましくない。そこで、第1粉末と前記第2粉末との合計に対する第2粉末の割合は、90質量%未満に規定している。第2粉末の割合は、所望の造形物の物性に応じて適宜調整することができるものの、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が特に好ましい。」

「【0079】
<実施例>
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0080】
第1粉末として、タングステンカーバイド(WC)からなる粉末に、12質量%となるようコバルト(Co)粉末を配合して造粒したサーメット(WC/12Co)からなる造粒粉末を用意した。この造粒粉末の平均粒子径は30μmに調整されており、嵩密度は5.1g/cm^(3)であった。
第2粉末として、ステライト(ステライトNo.6)の粉末を用意した。この粉末の平均粒子径は9μmに調整されており、嵩密度は4.0g/cm^(3)であった。
用意したサーメット粉末と金属粉末とを、表1に示す配合で撹拌混合することで、例1?8の造形用材料を用意した。
【0081】
なお、上記で用意した粉末の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA-300)を用いて測定した体積基準に基づく粒度分布の累積50%粒径(D50)である。上記サーメット粉末は、必要に応じて分級(ふるい分け)することで、平均粒子径が30μmとなるように粒度を調整したものである。
嵩密度は、JIS Z2504:2012に規定される金属粉-見掛密度測定方法に準じて測定した。具体的には、直径2.5mmのオリフィスから自然に流れ出す粉末により、所定の容量の容器を自然充填の状態で満たしたときの、当該粉末の質量を測定することで、嵩密度を算出した。嵩密度の測定には、金属粉用のJISカサ比重測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用いた。
【0082】
[選択的レーザ溶融法(セレクトレーザメルティング法;SLM)]
上記で用意した造形材料を、粉末積層造形である選択的レーザ溶融法により積層造形することで三次元造形物を得た。積層造形には、レーザ焼結型粉末積層造形システム(SLM solution社製、SLM125HL)を用いた。具体的には、上記の造形材料を1層あたり50μmの厚みで造形エリアに供給し、装置に付随のワイパで造形材料を平坦化して造形材料の堆積層(薄層)を形成した。その造形材料からなる薄層に対してファイバーレーザを2次元的に照射し、まずは層状の造形物を形成した。そして、造形用材料の供給と平坦化の工程、それに対してレーザ照射する工程を繰り返すことで、三次元造形物(設計:20層(1mm))を得た。なお、加工時の条件として、レーザ焦点は約150φμm、レーザ出力は100W、レーザ走査速度は300mm/sec、温度環境は常温、造形用材料周囲の雰囲気はArガスとした。
【0083】
[気孔率]
作製した三次元造形物の仕上がりを評価する指標として、三次元造形物の気孔率を測定した。気孔率は、それぞれの三次元造形物を造形方向(厚み方向)で切断した研磨断面に対して、画像解析法により測定された値を求めた。具体的には、三次元造形物の断面の画像を取得し、画像解析ソフトを用いて三次元造形物の断面を気孔部と固相部(造形された造形物部分)とに分離する2値化を行い、全断面積に占める気孔部の面積の割合を気孔率として算出した。
【0084】
なお、気孔率の測定には、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S-3000N)による観察像(好適には、二次電子像、組成像あるいはX線像のいずれかであり得る。)を用いた。参考のため、例1および例5の造形物についてのSEM像を図2(a)および(b)に順に示した。また、画像解析ソフトとしては、Image-Pro(Media Cybernetics社製)を使用した。三次元造形物の気孔率の測定結果を、表1の「気孔率」の欄に示した。
【0085】
[硬度]
それぞれの造形物に対して、JIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さ試験方法に基づき硬度を測定した。具体的には、硬微小硬度測定器(株式会社島津製作所製、HMV-1)を用い、造形物の表面に対面角136°のダイヤモンド圧子を試験力1.96Nで押圧したときに得られる圧痕から、ビッカース硬さ(Hv0.2)を算出した。その結果を、表1の「硬度」の欄に示した。
【0086】
[1層あたりの造形厚み]
造形精度や造形速度を評価する指標として、レーザ1走査あたり(すなわち1層あたり)の造形厚みを求めた。1層あたりの造形厚みは、得られた造形物の全厚みを測定し、これを積層数(厚み方向でのレーザ走査回数)で除することで算出される値を採用した。造形物の全厚みは、上記の気孔率の測定の際に行ったSEM観察により、造形方向(厚み方向)で切断した研磨断面における造形物の厚みを測定することで得た。造形物の全厚みは、各造形物に対して、3視野以上のSEM観察像について、各視野ごとに3点以上で測定し、その平均値を採用した。その結果を、表1の「1層厚み」の欄に示した。
【0087】
【表1】


【0088】
[評価]
サーメット粉末(ここではWC/12Co)に対して金属粉末(ここではステライト6)を含まない例1の造形用材料を用いた場合は、得られる造形物の気孔率が15%と高く、図2(a)に示すようなポーラスな組織を有する造形物しか得られないことがわかった。そして例2?8に示されるように、サーメット粉末に金属粉末を混合して造形用材料とすることで、造形物の気孔率を低減できることがわかった。ここで、造形用材料における金属粉末の割合を増大させるにつれて、得られる造形物の気孔率も徐々に低減される。そして金属粉末の割合が10質量%を超えると、造形物の気孔率が10%未満となり、(サーメットとして)セラミック成分を含む造形用材料を用いた場合であっても緻密な造形物の造形が可能であることが確認された。
【0089】
また同時に、造形用材料における金属粉末の割合を増大させるにつれて、1層あたりの厚みが徐々に増大されることも確認された。このことは、造形用材料の粉末積層造形において、金属粉末が比較的低温から軟化溶融し、サーメット粉末のバインダとして作用することに加え、サーメット粉末や金属粉末自身の飛散を防止することに寄与しているものと考えらえる。
【0090】
上記のように、造形用材料における金属粉末の割合が多くなればなるほど、金属材料からなる造形溶材料を用いた場合と同様に、造形物の気孔率が低減され易くなる。しかしながら、造形物の硬度については、金属粉末の割合が0質量%から増えるにつれて50質量%程度までは上昇するものの、金属粉末の割合が更に増えると減少に転じることがわかった。これは、金属粉末の割合が50質量%程度まではバインダの増加効果が良好に作用するのに対し、過剰な金属の存在が造形物の組織を軟質化してしまうことによるものと考えらえる。例えば、金属粉末の割合が90質量%程度にまで達すると、造形物の硬度は金属材料の物性に大きく依存し、サーメット粉末を用いることの利点が失われてしまうために好ましくないといえる。」

エ 上記ウの記載を踏まえ、技術常識も考慮した上で、発明の詳細な説明において、本件課題である「セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能な新規な造形用材料を提供すること」を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲について検討する。
(ア)(本件課題を解決するための作用機序の説明について)
段落【0057】、【0058】によれば、「造形用材料」が、セラミックを含む造粒粉末である「第1粉末」のみではなく、セラミックよりも融点が低い金属を含む「第2粉末」を含んでいることによって、「造形用材料」においては「第1粉末」よりも「第2粉末」の溶融が先行し、「第2粉末」の融液が「第1粉末」の表面に濡れ広がって、「第1粉末」の溶融を促進させるか、あるいは「第2粉末」が溶融してなるマトリックス内に「第1粉末」を分散状態で取り込むことによって、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができるとされている(以下、この作用機序のことを「本件作用機序」ということがある。)。
そして、このとき、「第1粉末」と「第2粉末」との合計に対する「第2粉末」の割合(以下、これを「第2粉末割合」という。)を10質量%を超過したものとすることにより、十分に溶融し難い「第1粉末」の表面に「第2粉末」が好適に濡れ広がり、緻密な造形を可能とすることができるとされている。

(イ)(実施例の記載について)
実施例に関して、段落【0087】の表1及び段落【0088】には、セラミック粉末である「タングステンカーバイド(WC)からなる粉末」に、「12質量%となるよう」金属粉末である「コバルト(Co)粉末を配合して造粒したサーメット(WC/12Co)」を「第1粉末」とし、金属粉末である「ステライト(ステライトNo.6)」を「第2粉末」とし、表1に示す配合で撹拌混合して、例1?8の造形用材料を用意し、選択的レーザ溶融法で三次元造形物を製造することが記載されている。
そして、実施例の記載によって、「第1粉末」及び「第2粉末」を特定の材料とした「造形用材料」において、「第2粉末割合」を10重量%とすること(例2参照)で、「第2粉末」を含まない場合(例1参照)に比較して、気孔率が大きく低減するとともに、「第2粉末割合」を10重量%を超過してさらに増大させる(例3?8を参照)につれて、気孔率がさらに低減し、緻密な造形物が得られることが実験的に裏付けられているといえる。

(ウ)(技術常識を踏まえると、「第1粉末」及び「第2粉末」を実施例とは異なる材料とした場合においても、「第1粉末」がセラミックを主成分として十分な量で含み、かつ、「第2粉末」が金属を主成分として十分な量で含んでいれば、「第2粉末割合」を10重量%を超過するものとすることで、上記(ア)の「本件作用機序」の説明が当てはまると認められることについて)
本件明細書には、「造形用材料」において、「第1粉末」及び「第2粉末」を実施例とは異なる材料とした場合であっても、「第2粉末割合」を10重量%を超過するものとすることで、緻密な造形物が得られることの実験的な裏付けは記載されていない。
しかしながら、一般的に金属の融点がセラミックの融点よりも低いものであるという技術常識を踏まえると、「造形用材料」が、「第1粉末」がセラミックを主成分として十分な量で含み、かつ、「第2粉末」が金属を主成分として十分な量で含んでいれば、「第2粉末割合」を10重量%を超過するものとすることで、実施例と異なる材料とした場合においても、「第1粉末」よりも「第2粉末」の溶融が先行して「第1粉末」の表面に「第2粉末」が好適に濡れ広がる現象が生じるものと認められるから、上記(ア)で述べた「本件作用機序」の説明が当てはまり、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができるものと認められる。

(エ)(本件課題に含まれる「高密度な造形物」という事項について)
a 本件明細書には、本件課題に含まれる「セラミックを含みながらも高密度な造形物」という事項における「高密度」の基準が、どのような数値であるのかを直接的に示す記載はない。
そのため、本件課題に含まれる「セラミックを含みながらも高密度な造形物」との事項は、定量的な意味において特定の数値以上の「高密度」を実現することまでを要求するものではなく、定性的な意味において「高密度」を実現することを要求するに過ぎないものと解するほかない。
そして、上記(ア)で述べたとおり、本件明細書の段落【0057】、【0058】によれば、「造形用材料」が、セラミックを含む造粒粉末である「第1粉末」のみではなく、セラミックよりも融点が低い金属を含む「第2粉末」を含んでいることによって、「造形用材料」においては「第1粉末」よりも「第2粉末」の溶融が先行し、「第2粉末」の融液が「第1粉末」の表面に濡れ広がって、「第1粉末」の溶融を促進させるか、あるいは「第2粉末」が溶融してなるマトリックス内に「第1粉末」を分散状態で取り込むことによって、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができるとされており、この「本件作用機序」に関する説明が当てはまる「造形用材料」である限り、少なくとも、当該「本件作用機序」に関する説明が当てはまらない「造形用材料」に比較して、得られる造形物の気孔率は低くなり、定性的な意味において「高密度」の造形物が得られるものと認められる。

b なお、本件課題における「高密度」に関連し、本件明細書の段落【0006】に「例えば、セラミックを含む粉末積層造形物の相対密度については、様々な造形条件や粉末材料の性状を厳格に調整した場合であっても、90%程度に達しないのが現状である。」との記載があり、また、段落【0088】に「金属粉末の割合が10質量%を超えると、造形物の気孔率が10%未満となり、(サーメットとして)セラミック成分を含む造形用材料を用いた場合であっても緻密な造形物の造形が可能であることが確認された。」との記載があり、相対密度が「90%程度」という数値や、気孔率が「10%未満」という数値が記載されている。
しかしながら、これらの記載からは、従来の造形物の相対密度が「90%程度」に達しないことが背景となって本件課題が設定されたことや、実施例で得られた造形物の気孔率が「10%未満」となっており十分に緻密な造形物が得られたことを把握できるものの、当該「90%程度」又は「10%未満」という数値が、本件課題に含まれる「高密度」の基準そのものであるとは断言できない。そのため、上記a のとおり判断した。

(オ)上記(ア)?(エ)の検討より、本件明細書及び技術常識によれば、「造形用材料」が、セラミックを主成分として十分な量で含む造粒粉末である「第1粉末」に加えて、金属を主成分として十分な量で含む「第2粉末」を含むとともに、「第2粉末割合」が10重量%を超えるという手段(以下、「本件課題解決手段」という。)を備えることで、上記(ア)で述べた「本件作用機序」が発揮されて、前記セラミック及び前記金属が特定の材料でなくとも、本件課題である「セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能な新規な造形用材料を提供すること」を解決できると、当業者は認識できるものと認められる。

オ そして、本件発明1は、「造形用材料」において、「第1粉末」は「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末」であって、セラミックを主成分として十分な量で含む造粒粉末であるといえ、また、「第2粉末」は「金属を70質量%以上含む」ものであって、金属を主成分として十分な量で含む粉末であるといえ、その上で「第2粉末割合」が「10質量%超過90質量%未満」であることを特定しているから、上記エ(オ)で述べた「本件課題解決手段」を備えるものである。
したがって、本件発明1は、本件明細書及び技術常識に照らし、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。

カ なお、特許権者は、平成30年12月25日付け意見書とともに、乙第1号証を提出した。
乙第1号証は、以下のとおりのものである。




乙第1号証は、「3.報告の内容」の「3-3 確認試験の方法と結果」の項と表1-1及び表1-2に記載された、本件明細書の実施例とは異なる造形用材料を用意し、本件明細書の実施例と同様の選択的レーザ溶融法により積層造形することで三次元造形物を得て、得られた造形物の気孔率、硬度、1層厚みを本件特許明細書の記載と同様に測定した結果を開示したものであると認められる。
そして、乙第1号証の表1-1及び表1-2によれば、第2粉末を含まない場合(例1、6、12、19、26、33)の造形物の気孔率に対し、第2粉末を加えることで、造形物の気孔率が大幅に低減しており、特に、第2粉末を10質量%含む場合(例2、7、13、20、27、34)の造形物の気孔率は、第2粉末を含まない場合に比べて、少なくとも10%低減している。
この乙第1号証の内容は、上記エ(オ)で述べたとおりの内容を裏付けるものであるといえる。すなわち、「造形用材料」が、「本件課題解決手段」を備えることで、「本件作用機序」が発揮されて、「第1粉末」のセラミック及び「第2粉末」の金属が特定の材料でなくとも、本件課題を解決できることを裏付けるものである。


(1)-2 本件発明2?7について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項を全て含む「造形用材料」の発明であるから、本件発明1と同じ理由で、発明の詳細な説明に記載したものである。
また、本件発明6は、本件発明1?5の「造形用材料」を用いて製造された三次元造形物の発明であり、本件発明7は、本件発明1?5の「造形用材料」を用いて三次元造形物を製造する製造方法の発明であるから、本件発明1?5と同様の理由で、発明の詳細な説明に記載したものである。


(1)-3 異議申立人の、取消理由1(サポート要件)に関する主張について
ア 異議申立人の意見書において、異議申立人は、以下のとおり主張する(第6頁第13行?第7頁第2行の(vi))。
「実験報告書(当審注:乙第1号証のこと)の「<3>結果」には「例37と他の例との比較から、造形用材料が混合粉末のみからなる場合と、造粒粉末を含む場合とでは、レーザによる造形用材料の溶融具合が異なる様子が観察された。すなわち、混合粉末は1つの粒子が小さく軽いために、レーザ照射によって粉末材料の飛散が多く発生し、レーザを照射した位置に造形用材料を堆積させることが困難な様子が観察された。」(第3頁)と記載されている。
ここで、WC造粒粉末は空隙を有するため、同じ粒径であれば必然的にWC粉末よりも軽くなることに照らせば、例37においてD50が9μmのWC粉末が飛散するというのであれば、本件訂正発明2では「第1粉末の平均粒子径は、1μm以上100μm以下」であり、実験報告書において「レーザを照射した位置に造形用材料を堆積させることが困難」とされた9μm以下のものを含むことになる。さらに本件訂正発明1は「第1粉末の平均粒子径」を規定しない、すなわち、さらに細かい平均粒子径の第1粉末をも包含する上位概念である。すなわち、実験報告書の記載は、そもそも本件訂正発明1、2等が、積層造形自体が困難な構成を含み、「高密度な造形物をより効率的に造形する」という課題解決が困難な構成を含む点を自認していることに他ならず、かかる観点からも本件訂正発明は特許法36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たさない。」
この主張は、「第1粉末」の平均粒子径が特定されていないことに起因して、本件発明1が本件課題を解決し得ない態様を含むことを主張するものであるが、この主張は、異議申立書には記載されていない実質的に新たな理由を主張するものであって、訂正の請求の内容に付随して生じる理由ではなく、また、適切な取消理由を構成することが一見して明らかであるともいえないから、この主張は採用することができない。

イ そして、異議申立人の意見書において、異議申立人は、他にも取消理由1(サポート要件)に関して縷々主張しているが、そのいずれの主張も、前記(1)-1及び(1)-2で示した、本件発明1?7が発明の詳細な説明に記載したものであるとした判断の結論を左右するものではない。


(2)取消理由3(甲2を主引例とした新規性進歩性)について
(2)-1 引用発明について
ア 甲2では、「3.1. WC-10%Coのレーザ積層造形」の欄において、「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」を用いたレーザ積層造形の結果が記載され、その結果を踏まえ、「3.2. Cu-Sn粉末を添加した場合のレーザ積層造形」の欄において、「Cu-20%Sn粉末」を30%添加した場合の結果が記載され、また、「3.3. Cu粉末を添加した場合のレーザ積層造形」の欄において、「Cu粉末」を30%添加した場合の結果が記載されている。

イ 「3.2.」欄における「Cu-20%Sn粉末を30%添加」(第97頁囲み部)、及び「3.3.」欄における「Cu粉末を30%添加」(第98頁囲み部)の「30%添加」の百分率の基準について明らかではないが、甲2の「Guら^((5)-(8))は、・・・作製している。これらの研究においては、Cu添加量が30%以上と多いため」との記載(第95頁右側部下から第5行?最下行)があるところ、ここで言及している「Guら^((5)-(8))」のうちの文献(7)である甲10には「Cu:WC-Co weight ratios of 80:20, 70:30, and 60:40」との記載(第113頁右側欄20行?21行)があり、CuとWC-Coとの比率を「weight ratios」で表現していることに照らせば、甲2の「30%添加」の百分率の基準量も重量%であると解するのが合理的である。

ウ そうすると、甲2の「3.2.」欄に記載のレーザ積層造形で用いられた粉末は、「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」に対し「Cu-20%Sn粉末」を30重量%添加したものであるといえ、また、「3.3.」欄に記載のレーザ積層造形で用いられた粉末は、「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」に対し「Cu粉末」を30重量%添加したものであるといえるから、甲2には、以下の「甲2発明」が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「レーザ積層造形に用いる造形用材料であって、
一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末と、
添加剤としてのCu-20%Sn粉末またはCu粉末とを有し、
前記添加剤を30重量%添加した、造形用材料。」


(2)-2 本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
(ア)甲2の第95頁に記載の英文タイトルである「Direct Selective Laser Melting of WC Cemented Carbide」からみて、甲2発明における「レーザ積層造形」は具体的には「Selective Laser Melting」すなわち選択的レーザ溶融法であるともいえるところ、この方法は、本件明細書の「レーザ焼結法,レーザ選択焼結(Selective Laser Sintering:SLS)法,電子ビーム焼結法等に代表される粉末床溶融結合(Powder bed fusion)法等と呼ばれるものが含まれる。」との記載(段落【0017】)における「レーザ選択焼結」に相当する方法であると認められる。
ゆえに、甲2発明における「レーザ積層造形」は、本件発明1の「粉末床溶融結合法による粉末積層造形」に相当するといえることから、甲2発明の「レーザ積層造形に用いる造形用材料」は、本件発明1の「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料」に相当する。

(イ)甲2発明における「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」の「WC」はセラミックであることが明らかである。そして、甲2発明における「10%Co」の百分率の基準が明らかではないが、この基準が質量基準であれば、当該「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」において、WCは60質量%以上含まれているといえるし、この基準が体積基準であったとしても、WCは60質量%以上含まれているといえることは明らかである。
これらのことを踏まえると、甲2発明における「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」と本件発明1の「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末」とは、「セラミックを60質量%以上含む」「粉末」である点で共通する。

(ウ)甲2発明における「添加剤としてのCu-20%Sn粉末またはCu粉末」は、いずれも100%の金属を含むものといえるから、本件発明1の「金属を70質量%以上含む第2粉末」に相当する。

(エ)「重量%」と「質量%」とが結果的に同じ数値に対応するという当業者にとっての技術常識を踏まえると、甲2発明における「前記添加剤を30重量%添加した」との数値限定は、本件発明1の「前記第1粉末と前記第2粉末との合計に対する前記第2粉末の割合は、10質量%超過90質量%未満である」との数値限定と、「30質量%」の点で一致する。

(オ)以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料であって、
セラミックを60質量%以上含む粉末である第1粉末と、
金属を70質量%以上含む第2粉末と、を含み、
前記第1粉末と前記第2粉末との合計に対する前記第2粉末の割合は、30質量である、造形用材料。」

(相違点1)
「セラミックを60質量%以上含む粉末である第1粉末」が、本願発明1は「造粒粉末」であって、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されて」いるものであるのに対し、甲2発明では、そのような「造粒粉末」であるか否かは不明である点


イ 上記相違点1が実質的なものか否かについての検討
(ア)甲2発明における「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」に関し、甲2の全体を参照しても、具体的にどのような粉末であるかについて記載はない。

(イ)ところで、甲2の図1(a)には、甲2発明において用いられた「WC-10%Co粉末」のSEM写真が示されている。
甲2においてはこのSEM写真は鮮明ではないところ、特許権者は、平成30年12月25日付け意見書とともに、乙第5の1号証として、甲2の図1の鮮明な拡大図を提出した。これを以下に示す。





また、特許権者は、同時に、乙第5の2号証として、WC粉末とCo粉末とをWC-10%Coの組成となるように配合し、ボールミルにより混合した「(1)WC-10%Co混合粉末」と、WC粉末とCo粉末とをWC-10%Coの組成となるように配合し噴霧造粒した「(2)WC-10%Co造粒粉末」のSEM写真も提出した。
これを以下に示す。





(ウ)乙第5の1号証は、確かに、甲2の図1を拡大したものであると認められるから、乙第5の1号証の「(a)WC-10%Co粉末」の写真は、甲2発明における「WC-10%Co粉末」のSEM写真であるといえる。
乙第5の1号証と、乙第5の2号証との比較によれば、乙第5の1号証の「(a)WC-10%Co粉末」の個々の粒子の形状は、乙第5の2号証の「(1)WC-10%Co混合粉末」(ボールミルにより混合)の個々の粒子の形状と極めて近いといえる一方、乙第5の2号証の「(2)WC-10%Co造粒粉末」の個々の粒子の形状とは著しく異なるといえることから、甲2発明における「WC-10%Co粉末」は、造粒粉末ではなく、ボールミル等で単に混合された粉末であると推認される。

(エ)したがって、甲2発明における「WC-10%Co粉末」は、「造粒粉末」であるとはいえないから、相違点1は、実質的なものである。

ウ 本件発明1の容易想到性についての検討
(ア)甲3?甲5には、以下a ?c に示すとおり、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に相当する粉末、すなわち、「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」に相当する粉末が開示されており、また、甲3?甲5には、当該粉末が球状であることについても記載がある。
a 甲3には、3D印刷などの付加製造に使用される粉末であって、Co等の金属と、WC等のセラミックと、有機結合剤を含む球状顆粒を形成し、これを焼結することによって緻密な球状のサーメット又は超硬合金の粉末を形成することが記載されているといえ、当該粉末は、本件発明1の「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」に相当するものと認められる。

b 甲4の表1にはサーメット溶射材料の例が示され、WC/12%Co等が開示されている。また、甲4の表2によれば、「サーメット溶射材料」の製法のうち、「造粒-焼結法」の需要率が81%であり他の製法に比べて圧倒的に需要率が高いものである。
そして、「造粒-焼結法」は、「微粉末原料に溶媒とバインダーを添加してスラリー化して、造粒装置で球形度の高い顆粒を作った後、焼結して解砕・分級」する方法であって、この方法により製造される粉末は、「一次粒子」に相当する微粉末が焼結されて一体化されているものであるから、本件発明1の「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」に相当するものと認められる。
また、甲4の図4(3)には、模式図ではあるものの、「焼結-造粒法」により得られるサーメット粉末が、球状となることが示されており、甲4の図5及び図6には、球状のサーメット粉末のSEM写真が示されている。

c 甲5には「一般的にサーメット粉末は焼結-粉砕法、あるいは造粒-焼結法と呼ばれる製法によって単一粒子の中にセラミックと金属を複合化して作製されており、多くのメーカーは造粒-焼結法によって製造している。この造粒-焼結法とは微粉末を混合、造粒した後に焼結し、解砕・分級したものである。」(第255頁右側部囲み部)と記載されているとともに、「WC-Co造粒焼結粉」(第255頁右側部下から第3行)について記載されている。
甲5の当該記載によれば、サーメット粉末の製法として、造粒-焼結法は、多くのメーカーが採用している一般的なものであるといえる。そして、製造された「WC-Co造粒焼結粉」は、「一次粒子」に相当する微粉末が焼結されて一体化されているものであるから、本件発明1の「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」に相当するものと認められる。
また、甲5の図3は、「WC-Co造粒焼結粉」における、12wt%Coの組成を有するもののBSE像(後方散乱電子像)を示すものであるところ、粉末が球状となっていることが見て取れる。

(イ)そして、甲8には、「パウダーベット法」を含む3D積層造形技術において、「球状粉末は流動性に優れ高充填化も可能なため、良好な粉末供給性や積層性が得られると共に高密度な造形物が得られる」(第63頁右上部)と記載されており、甲8の図1(第62頁)によれば、「パウダーベット法」とは、「粉末床溶融結合法」に相当するものであることは明らかであるから、甲8を参照した当業者は、甲2発明のような、「粉末床溶融結合法」に相当するレーザ積層造形技術においては、良好な粉末供給性や積層性が得られると共に高密度な造形物が得られるという観点から、球状粉末を用いることが好ましいことを認識し得る。

(ウ)したがって、「粉末床溶融結合法」に相当する技術に係る甲2発明において、「一般的に用いられている超硬合金WC-10%Co粉末」を、甲3?甲5に記載された「球状粉末」であって、「一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」とすることで、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を想到することは、良好な粉末供給性や積層性が得られると共に高密度な造形物が得られるようにするという観点から、当業者が容易になし得たことということができる。

(エ)ところで、本件発明1は、「造形用材料」において、「第1粉末」は「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末」であり、「第2粉末」は「金属を70質量%以上含む」ものであり、「第2粉末割合」が「10質量%超過90質量%未満」であることを特定するものであって、本件発明1においては、そのことによって、前記(1)-1エ(ア)、(オ)及びオで述べたように、「第1粉末」よりも「第2粉末」の溶融が先行し、「第2粉末」の融液が「第1粉末」の表面に濡れ広がって、「第1粉末」の溶融を促進させるか、あるいは「第2粉末」が溶融してなるマトリックス内に「第1粉末」を分散状態で取り込むことによって、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができるという「本件作用機序」が発揮され、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能となるという効果を奏するものであると認められる。

(オ)一方、甲2?甲5、甲8には、本件発明1が特定する事項のうち、「造形用材料」が、「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末」である「第1粉末」に加えて、「金属を70質量%以上含む」「第2粉末」を含むという事項について記載や示唆がなく、そのため、「本件作用機序」や、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能となるという効果についても記載や示唆はない。
したがって、本件特許の出願時において、本件発明1が奏する、セラミックを含みながらも高密度な造形物が得られるという効果は、当業者が予測し得たものではない。

(カ)なお、甲2には、「レーザ積層造形体としては密度の高い積層造形物を得ることができた。」との記載はあるが、そのようにいえる理由は、図12のSEM写真と「図12に示すように、レーザ出力9W、走査速度20mm/sおよび走査ピッチ0.05mmで空隙の少ない面を作製できることがわかった。」との記載のみであるところ、甲2では、本件明細書の段落【0083】に記載されているような気孔率の測定は行われておらず、しかも、甲2の図12のSEM写真を見る限り、依然として多数の空隙の存在が認められるから、甲2に記載の「密度の高い積層造形物」が、本件発明1の「造形用材料」によって得られる造形物と同程度に「高密度」であるとまではいえない。
また、甲8には、高密度な造形物が得られる旨の記載はあるものの、これは、金属粉末を用いた場合に関する記載であって、セラミックを含む粉末を用いた場合の記載ではないから、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能となるという本件発明1が奏する効果を記載又は示唆するものではない。

(キ)そうすると、たとえ上記(ウ)のとおり、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を想到することを、当業者が容易になし得たことということができたとしても、上記(エ)?(カ)での検討のとおり、当業者が予測し得ない効果を奏する本件発明1は、甲2発明に基づき、甲3?甲5、甲8の記載に加え、技術常識を考慮したとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである。

(ク)そして、他の甲号証の記載を考慮したとしても、当業者が予測し得ない効果を奏する本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
よって、本件発明1は甲2に記載された発明ではないし、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


(2)-3 本件発明2?7について
本件発明2?7についても、本件発明1と同様にして、甲2に記載された発明ではないし、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


(2)-4 異議申立人の、取消理由3(甲2を主引例とした新規性進歩性)に関する主張について
ア 異議申立人の意見書の(イ)(iv)の主張について
異議申立人の意見書において、異議申立人は、以下のとおり主張する(第10頁第1行?第21行)。
(異議申立人の主張)
WC-Co系超硬合金においても、造粒-焼結粉末を用いることは周知慣用技術である(必要であれば、特開平11-131101号公報(参考資料1)、特開2003-221631号公報(参考資料2)、特開2006-045601号公報(参考資料3)、特開2008-031552号公報(参考資料4)、およびこれらにおける従来技術等)。
そもそも、甲第3号証等(必要であれば「CIRP Annals 2007 Vol56 Issue2 」(参考資料5)の「The Fraunhofer Institute of Production Technology (IPT) worked with different compacted, respective ground, WC-Co powder particles: see Figure 42. A higher mean density could be achieved when applying the spherical particles of the compacted WC-Co powder, in comparison with the irregular particles of the ground WC-Co powder.」との記載(第746頁 右欄 第1行?第6行)、およびFigure 42)に記載されているように、3Dプリンターなどの付加製造用用途においても、超硬合金またはサーメットの穎粒粉末(造粒粉末)は周知である。

(当審の判断)
上記参考資料1?5の記載について検討する。参考資料1?5には、それぞれ、以下のような記載がある。
参考資料1:「以下に、粉末冶金用原料として超硬粉末を用いた場合の実施例について説明する。表1に示す成分の超硬粉末No.2(WC+Co:11%)200kgを湿式で粉砕・混合し乾燥後、2重量%のパラフィン(ワックス)を混合した後、乾式篩(24?200mesh)で篩い粉末の粒を揃えて、粒度調整する。粒度調整された原料粉20kgを前記図1に示す造粒装置の造粒ケースに原料粉を充填して粉体層を形成する。」(段落【0053】)

参考資料2:「タングステン炭化物基超硬合金は、少なくとも1種の硬質相の細粒(μmスケール)を結合相内に含有させた複合材料である。タングステン炭化物基超硬合金中には硬質相としてタングステン炭化物(WC)が必ず存在している。・・・結合相は普通はコバルト(Co)である。・・・
タングステン炭化物基超硬合金の工業的な製造方法の1つとして、原料と添加物とをアルコール(通常はエタノール)または水またはこれらの混合液を用いて練り合わせる。得られた混練物を湿式粉砕してスラリーにする。湿式粉砕の目的は、凝集している原料を離散(解膠)させ、全ての構成成分を均等に分散させ、個々の原料粒子をある程度分塊することである。粉砕処理が完了したら、得られたスラリーを噴霧乾燥機内で乾燥及び粒状化する。この粒状物を一軸圧縮成形して生材(グリーンボディー、未焼体)とするか、あるいはペレットにして射出成形または押出しに供する。」(段落【0002】?【0003】)

参考資料3:「本願発明は、水溶媒と炭化タングステン、Coを含み、不可避不純物との組合せの原料粉末からなるスラリーを乾燥・造粒した硬質粉末において、該硬質粉末の平均粒径が30から80μm、嵩密度が3.0から3.7g/cm^(3)、平均球形度が0.7以上であることを特徴とする硬質粉末である。・・・本発明によって、粉末冶金法により炭化タングステン基超硬合金を製造する時に用いる硬質粉末が、充填性、流動性に優れた特性を有する硬質粉末を提供することができた。」(段落【0005】?【0006】)

参考資料4:「実施例1 プレス成形可能な超硬合金粉末を製造した。先ず、スラリーを、WC93wt%、Co5wt%、結合剤としてのバロプラスチック重合体2wt%及び粉砕用液0.3l/kgをベースにして製造した。バロプラスチック重合体は、ポリスチレンのシェルとポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)のコアを有する約100nmの大きい粒子のエマルションとして添加した。粉末を平均粒度3μmになるように粉砕した。スラリーを実地標準に従って乾燥させ、図1に示す良く発達した凝集体を含む凝集化粉末混合物にした。この粉末をプレス成形して物体にした。破砕された生素地は、図4に示す通りの残留凝集構造を見せなかった。生素地を真空において1410℃で焼結した。」(段落【0021】)

参考資料5:「Consolidation phenomena in laser and powder-bed based layered manufacturing」(タイトル 当審訳:「レーザパウダーベッド法積層造形における固化現象」)

「3.3 Cermets and hardmetals
Cermets and hardmetals, being composites in which ceramic particles are embedded in a metal matrix (binder), can be readily processed by liquid phase SLS using a mixture of ceramics particles that remain solid throughout the process and metal particles that are melted by the laser [36, 39, 206, 210].」
(第746頁左側欄下から第18行?下から第12行 当審訳:「セラミック粒子が金属マトリックス(バインダー)に埋め込まれた複合体であるサーメットや硬質金属は、プロセス全体を通じて固体状態を維持するセラミック粒子とレーザによって融解する金属粒子との混合物を用いた液相SLSにより、容易に造形される。[36, 39, 206, 210]」)

「The Fraunhofer Institute of Production Technology (IPT) worked with different compacted, respective ground, WC-Co powder particles: see Figure 42. A higher mean density could be achieved when applying the spherical particles of the compacted WC-Co powder, in comparison with the irregular particles of the ground WC-Co powder.」
(第746頁右側欄第1行?第6行 当審訳:「フラウンホーファー生産技術研究所(IPT)は、凝集された、さらにそれぞれ粉砕された、異なるWC-Co粉末粒子を用いて検討した。図42を参照されたい。WC-Co粉末が凝集された球状粒子を適用した場合、粉砕された不定形粒子と比較して、より高い平均密度が得られた。」)

これらの参考資料1?4の記載からみて、WCとCoとを造粒して造粒粉末としたもの自体は、周知であるといえる。
しかしながら、これらの参考資料1?4は、当該造粒粉末を、粉末冶金技術(すなわち粉末を成型し焼結して部品を製造する技術)に適用することを示しているのであって、「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料」に適用することを示すものではない。
また、参考資料5は、「compacted WC-Co powder」(凝集されたWC-Co粉末)を用いて「粉末床溶融結合法」に相当する方法により粉末積層造形を行うことを開示するものと認められるが、「compacted WC-Co powder」が具体的にどのような粉末であるのかの具体的な説明はなく、本件発明1の「前記セラミックからなる一次粒子が、融着又は焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されて」いる「造粒粉末」に相当するかどうかが不明である。仮に、参考資料5に記載の「compacted WC-Co powder」が、本件発明1の「造粒粉末」に相当するとしても、参考資料5には、「造粒粉末」である「第1粉末」に対し、さらに「第2粉末」に相当する粉末を組み合わせることについて記載はない。
甲第3号証についても、「造粒粉末」である「第1粉末」に対し、さらに「第2粉末」に相当する粉末を組み合わせることについて記載はない。
そうすると、参考資料1?5及び甲第3号証のいずれも、「造形用材料」が、セラミックを含む造粒粉末である「第1粉末」のみではなく、セラミックよりも融点が低い金属を含む「第2粉末」を含んでいることによって発揮される「本件作用機序」を示唆するものではないし、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能となるという本件発明1が奏する効果を示唆するものでもない。
そのため、上記主張は、前記(2)-2で示した、当業者が予測し得ない効果を奏する本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである、とした上記判断の結論を左右するものではない。

イ 異議申立人の意見書の(イ)(v)に含まれる主張について
(異議申立人の主張)
異議申立人の意見書において、異議申立人は、以下のとおり主張する(第11頁第17行?第28行)。
本件明細書および乙第1号証において、「従来の金属やサーメットを含む粉末材料を用いた粉末積層造形で得られる造形物」の気孔率や緻密性を示す比較例は存在せず、「従来の金属やサーメットを含む粉末材料を用いた粉末積層造形で得られる造形物」に比べて「より緻密な造形が可能になる」ことは、何ら確認されていないから、特許権者の意見書の(6)オにおける「セラミックからなる一次粒子を含む造粒粉末である第1粉末と、金属を含む第2粉末と、を組み合わせ造形用材料とすることによって、本願明細書の実施例や乙第1号証に開示されるような、より緻密な造形が可能になるという本願発明1の効果を想起することは不可能であると思料いたします。」(意見書 第11頁下から第9行?下から第6行)との主張は客観的根拠もなく失当である。

(当審の判断)
確かに、本件明細書や乙第1号証では、「従来の金属やサーメットを含む粉末材料を用いた粉末積層造形で得られる造形物」に比べて「より緻密な造形が可能になる」ことは、実験的に確認されてはいない。
しかしながら、前記(1)-1エ(ア)、(オ)で述べたとおり、本件明細書の段落【0057】、【0058】によれば、「造形用材料」が、セラミックを含む造粒粉末である「第1粉末」のみではなく、セラミックよりも融点が低い金属を含む「第2粉末」を含んでいることによって、「造形用材料」においては「第1粉末」よりも「第2粉末」の溶融が先行し、「第2粉末」の融液が「第1粉末」の表面に濡れ広がって、「第1粉末」の溶融を促進させるか、あるいは「第2粉末」が溶融してなるマトリックス内に「第1粉末」を分散状態で取り込むことによって、金属相中にセラミック相が分散された形態の緻密な造形物を得ることができるとされており、この「本件作用機序」に関する説明が当てはまる限り、少なくとも、当該「本件作用機序」に関する説明が当てはまらない場合に比較して、得られる造形物の気孔率は低くなり、定性的な意味において「高密度」の造形物が得られるものと認められる。
したがって、特許権者の「より緻密な造形が可能になるという本願発明1の効果を想起することは不可能であると思料いたします。」との主張が失当であるとまではいえない。

ウ 異議申立人の意見書の(イ)(vii)の主張について
(異議申立人の主張)
異議申立人の意見書において、異議申立人は、以下のとおり主張する(第12頁第3行?第23行)。
本件明細書および乙第1号証において、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」との構成を備える場合と備えない場合とで、得られる三次元造形物の形態、特性等が比較されていないから、特許権者が主張する「セラミックからなる一次粒子を含む造粒粉末である第1粉末と、金属を含む第2粉末と、を組み合わせ造形用材料とすることによって、本願明細書の実施例や乙第1号証に開示されるような、より緻密な造形が可能になる」(特許権者の意見書 第11頁第20行?第23行。)という点は、本件明細書等において全く実証されておらず、前記の構成を備えることに参酌すべき顕著な効果もないというべきである。

(当審の判断)
確かに、本件明細書や乙第1号証では、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」との構成を備える場合と備えない場合とで、得られる三次元造形物の形態、特性等が比較されていない。
しかしながら、上記イでも述べたとおり、「造形用材料」に関し、「本件作用機序」に関する説明が当てはまる限り、少なくとも、当該「本件作用機序」に関する説明が当てはまらない場合に比較して、得られる造形物の気孔率は低くなり、定性的な意味において「高密度」の造形物が得られるものと認められる。
したがって、本件明細書や乙第1号証において「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、」との構成を備える場合と備えない場合とで、得られる三次元造形物の形態、特性等が比較されていなかったとしても、当該構成を備えることに参照すべき顕著な効果がないと断ずることはできない。

エ そして、異議申立人の意見書において、異議申立人は、他にも取消理由3(甲2を主引例とした新規性進歩性)に関して縷々主張しているが、そのいずれの主張も、前記(2)-2で示した、当業者が予測し得ない効果を奏する本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである、とした上記判断の結論を左右するものではない。


(3)取消理由2(甲1を主引例とした新規性進歩性)について
(3)-1 引用発明について
甲1の実施例3に着目すると、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「肉盛やスプレー用途にも使用可能な溶射用粉末であって、
造粒-焼結法により調整したサーメット粉末と、
金属粉末からなり、
溶射用粉末全量に対する金属粉末の重量割合が、18%である、溶射用粉末。」


(3)-2 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
両発明を対比すると、少なくとも、以下の相違点Aで相違する。
(相違点A)
本件発明1は「粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料」であるのに対し、甲1発明は「肉盛やスプレー用途にも使用可能な溶射用粉末」である点

イ 上記相違点Aについての検討
(ア)付加製造技術における技術常識からみて、本件発明1の「粉末床溶融結合法」と、甲1発明の「肉盛やスプレー用途」や「溶射」とは、同じ方法であるとはいえないから、相違点Aは実質的なものである。

(イ)また、「肉盛やスプレー用途」や「溶射」に用いられる粉末を、「粉末床溶融結合法」に適用し得ることを当業者が容易に想到し得たといえる証拠は見当たらず、技術常識からみても、そのようなことを当業者が容易に想到し得たとまでは断言できないから、当業者が、相違点Aに係る本件発明1の構成を容易に想到し得たとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明1と甲1発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、他の甲号証及び技術常識を考慮しても、甲1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(3)-3 本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様にして、甲1に記載された発明ではないし、他の甲号証及び技術常識を考慮しても、甲1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(4)取消理由4(甲10を主引例とした新規性進歩性)について
(4)-1 引用発明について
甲10には、以下の甲10発明が記載されていると認められる。
[甲10発明]
「直接金属レーザ焼結(DMLS)に用いる粉末であって、WC-Co複合粉末と、Cu粉末とを含み、
前記WC-Co複合粉末の合成は、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)およびCo(NO_(3))_(2)を含有する前駆体溶液の噴霧乾燥と、それに引き続く焙焼、ボールミル粉砕、還元及び炭素化を含んだ方法によって行われるものであり、
WC-Co複合粉末と、Cu粉末との重量比は、80:20、70:30、又は60:40であり、
WC-Co複合粉末は、平均円相当径が0.6μmであり、
Cu粉末は、平均粒子径が15μmである、
粉末。」


(4)-2 本件発明1について
ア 本件発明1と甲10発明との対比
両発明を対比すると、少なくとも、以下の相違点Bで相違する。
(相違点B)
本件発明1は「セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末」を含み、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されて」いるのに対し、甲10発明は「メタタングステン酸アンモニウム(AMT)およびCo(NO_(3))_(2)を含有する前駆体溶液の噴霧乾燥と、それに引き続く焙焼、ボールミル粉砕、還元及び炭素化を含んだ方法」によって合成される「WC-Co複合粉末」を含むものの、この粉末が「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されて」いるとの事項を満たす「造粒粉末」であるかどうかが不明である点

イ 上記相違点Bについての検討
(ア)甲10の記載全体を考慮したとしても、甲10発明における「メタタングステン酸アンモニウム(AMT)およびCo(NO_(3))_(2)を含有する前駆体溶液の噴霧乾燥と、それに引き続く焙焼、ボールミル粉砕、還元及び炭素化を含んだ方法」によって合成される「WC-Co複合粉末」が、本件発明1に特定される「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成され」た「造粒粉末」であることは記載されておらず、技術常識を考慮したとしても、甲10発明の前記「WC-Co複合粉末」が、本件発明1の前記「造粒粉末」に実質的に相当すると断言することまではできない。

(イ)また、甲10は、「メタタングステン酸アンモニウム(AMT)およびCo(NO_(3))_(2)を含有する前駆体溶液の噴霧乾燥と、それに引き続く焙焼、ボールミル粉砕、還元及び炭素化を含んだ方法」によって合成される「WC-Co複合粉末」を用いて直接レーザ焼結法により構造体を製造し、その構造体の物性を調査することを文献全体の趣旨としていると認められるから、「WC-Co複合粉末」の合成を他の方法で行うことの動機付けは存在しない。
そのため、例えば甲3?甲5に記載された、本件発明1の「前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合」「によって一体化されて構成されて」なる「造粒粉末」に相当する粉末を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明1と甲10発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲10に記載された発明ではないし、他の甲号証及び技術常識を考慮しても、甲10に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(4)-3 本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様にして、甲10に記載された発明ではないし、他の甲号証及び技術常識を考慮しても、甲10に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(5)申立理由1(サポート要件)のうち取消理由1として採用しなかった部分と、申立理由2(明確性要件)について(異議申立書第20頁第1行?第22頁第6行の「(2)特許法第36条第6項第2号及び1号について」の部分に対応)
(異議申立人の主張)
異議申立人は、以下のとおり主張する。
請求項1に係る発明の「造粒」に関し、本件明細書の段落【0025】を参酌すると、「単純吸着によって一次粒子同士が引き合う結合」や「静電気により引き合う効果を利用した一次粒子同士の結合」が含まれるといえるが、これらの結合は、結合力が弱いため、平均粒径の測定にすら耐えられず、また、材料の混合やその後の取り扱いにおいて、造粒粉末の形態を維持できない蓋然性が高いため、「造粒」との文言を含む請求項1に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たさない。
また、「単純吸着」や「静電気」によって一次粒子同士が結びついた粉末が、「造粒粉末」としての形態を維持できない場合は、作用効果を発揮し得なくなり、課題の解決もできないから、請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たさない。

(当審の判断)
本件発明1は、本件訂正によって、「前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており」という事項を備えるものとなり、「単純吸着」や「静電気」によって一次粒子同士が結びついた粉末は、本件発明1の「造粒粉末」に含まれないこととなった。
したがって、上記の主張には理由がない。


(6)申立理由3(実施可能要件)について(異議申立書第22頁第7行?第23頁の第10行の「(3)特許法第36条第4項第1号について」の部分に対応)
(異議申立人の主張1 異議申立書第22頁第7行?第17行に対応)
異議申立人は、以下のとおり主張する。
本件明細書の実施例には、「第1粉末」に関しては「造粒粉末」としか記載されておらず、その作製方法・条件が一切記載されておらず、段落【0025】に記載されたいずれの「結合」によるのかも示されていない。結局、請求項1に特定される「10質量%超過90質量%未満」という数値範囲の規定が妥当する可能性がある唯一の実施例においても、造粒の形態が全く不明であるから、結局のところ、いかなる場合に「10質量%超過90質量%未満」とすれば課題を解決でき作用効果が発揮されるのかが不明である。

(当審の判断)
物の発明について、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そうすると、本件発明1が実施可能要件を充足するか否かは、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、本件発明1を実施することができるか否かを判断すれば足りるものであって、いかなる場合に「10質量%超過90質量%未満」とすれば課題を解決でき作用効果が発揮されるのかが不明であるか否かについての判断には左右されない。
そして、本件明細書の段落【0025】?【0027】には「造粒粉末」について記載があり、段落【0059】?【0065】には造形用材料の製造方法について記載があり、そのうち段落【0060】?【0065】には、造粒法について記載があり、段落【0066】?【0075】には、造形用材料を用いた三次元造形物の製造方法について記載がある。以上の記載によれば、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて、本件発明1を実施することができるといえる。
また、請求項1を引用する本件発明2?7についても同様である。
したがって、上記の主張には、理由がない。

(異議申立人の主張2 異議申立書第22頁第18行?第23頁第6行に対応)
異議申立人は、以下のとおり主張する。
請求項2及び3ではそれぞれ第1粉末の平均粒子径、第2粉末の平均粒子径を規定している。平均粒子径に関しては、本件明細書の段落【0053】の記載によれば、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径であると解される。しかしながら、請求項2及び3が引用する請求項1における造形用材料は、第1粉末と第2粉末とが混合された状態のものであり、かかる状態のものから第1粉末の平均粒子径、第2粉末の平均粒子径をレーザ回折・散乱法によって平均粒子径を測定する方法は本件明細書に記載されていない。そして、混合する前の第1粉末の平均粒子及び第2粉末の平均粒子径をレーザ回折・散乱法で測定することはできても、造形用材料における第1粉末の平均粒子径および第2粉末の平均粒子径は測定することはできない。

(当審の判断)
本件発明2、3が実施可能要件を充足するか否かは、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、本件発明1を実施することができるか否かを判断すれば足りるものである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づけば、「第1粉末」と「第2粉末」を混合する前においては、「第1粉末」と「第2粉末」のそれぞれの平均粒子径を、レーザ回折・散乱法で測定することができることは明らかであるから、当業者は、平均粒子径が1μm以上100μm以下の「第1粉末」と、平均粒子径が0.1μm以上100m以下の「第2粉末」を得ることができるといえる。そして、そのようにして得られた「第1粉末」と「第2粉末」とを混合することで、本件発明2、3に係る「造形用材料」を得ることができる。
したがって、「第1粉末」と「第2粉末」とが混合された状態で各粉末の平均粒子径を測定することができるか否かにかかわらず、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて、本件発明2、3を実施することができるといえる。
また、請求項2、3を引用する本件発明4?7についても同様である。
したがって、上記の主張には、理由がない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床溶融結合法による粉末積層造形に用いる造形用材料であって、
セラミックを60質量%以上含む造粒粉末である第1粉末と、
金属を70質量%以上含む第2粉末と、を含み、
前記造粒粉末は、前記セラミックからなる一次粒子が、融着または焼結による結合、または、バインダによる結合によって一体化されて構成されており、
前記第1粉末と前記第2粉末との合計に対する前記第2粉末の割合は、10質量%超過90質量%未満である、造形用材料。
【請求項2】
前記第1粉末の平均粒子径は、1μm以上100μm以下である、請求項1に記載の造形用材料。
【請求項3】
前記第2粉末の平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下である、請求項1または2に記載の造形用材料。
【請求項4】
前記第1粉末は、前記セラミックからなる粉末と、第2の金属からなる粉末とが造粒された造粒粉末である、請求項1?3のいずれか1項に記載の造形用材料。
【請求項5】
前記第1粉末において、前記造粒粉末を構成する前記一次粒子は焼結により一体化されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の造形用材料。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の造形用材料を用いた粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって造形された三次元造形物である、物品。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか1項に記載の造形用材料を用い、粉末床溶融結合法による粉末積層造形によって三次元造形を行う、三次元造形物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-15 
出願番号 特願2015-250694(P2015-250694)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B22F)
P 1 651・ 113- YAA (B22F)
P 1 651・ 537- YAA (B22F)
P 1 651・ 121- YAA (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 ▲辻▼ 弘輔
中澤 登
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6170994号(P6170994)
権利者 株式会社フジミインコーポレーテッド
発明の名称 粉末積層造形に用いるための造形用材料  
代理人 谷 征史  
代理人 谷 征史  
代理人 安部 誠  
代理人 大井 道子  
代理人 安部 誠  
代理人 大井 道子  

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