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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1351442
異議申立番号 異議2018-701039  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-20 
確定日 2019-05-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6347930号発明「鉄骨梁の仕口構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6347930号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6347930号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成25年9月27日に出願され、平成30年6月8日にその特許権の設定登録がされ、平成30年6月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年12月20日に異議申立人古川慎二(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。その後、当審は、平成31年2月26日付けで審尋を通知し、それに対して、特許権者は、平成31年4月3日に回答書を提出した。


2 本件発明
特許第6347930号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
大梁を挟んで2本の小梁を突き合わせ状態で接合する鉄骨梁の仕口構造であって、
前記大梁のウェブの両側にそれぞれ仕口部材が固定され、
2本の前記小梁のウェブがそれぞれ前記仕口部材にボルトで接合されるとともに該小梁の下フランジがそれぞれ前記仕口部材にボルトまたはメタルタッチで接合され、
前記大梁の上フランジと前記小梁の上フランジとに亘って載置されるスラブが、これらの上フランジにシアコネクタにより接合され、
前記スラブには、前記大梁を跨ぐとともに2本の前記小梁に沿って延びる補強部材が配置され、
2本の前記小梁の上フランジが前記大梁の上フランジに接合されることなく前記スラブのみを介して互いに接合されて2本の前記小梁が連続梁に構成されていることを特徴とする鉄骨梁の仕口構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記スラブの内部に設けられたスラブ筋とは別に設けた補強用鉄筋である請求項1に記載の鉄骨梁の仕口構造。
【請求項3】
複数の前記補強用鉄筋が、その長手方向に直交する方向に所定の間隔を空けて並べて配置される請求項2に記載の鉄骨梁の仕口構造。
【請求項4】
前記補強部材は、前記スラブの内部に設けられたスラブ筋であって、他のスラブ筋よりも大径のものである請求項1に記載の鉄骨梁の仕口構造。」


3 申立理由の概要
申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であって、同法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明1ないし4は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)本件発明3は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
(4)本件発明1ないし4は、特許を受けようとする発明が明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。

〔証拠〕
甲第1号証:ECCS - Technical Committee 11 - Composite Structures
Design of Composite Joints for Buildings、ECCS、1999年、
表紙、4,6,7枚目、1.1,1.3,1.4,2.4,2.5,4.5,5.6,
5.7,5.10,5.11,6.5,7.9頁
甲第2号証:特開平4-80443号公報
甲第3号証:社団法人 日本鉄鋼連盟 編集、デッキプレート床構造
設計・施工基準-2004、技報堂出版株式会社、2004年7月
20日 1版1刷、表紙、33?35頁、奥付
甲第4号証:国土交通省国土技術政策総合研究所 外4名 編集、
デッキプレート版技術基準解説及び設計・計算例、工学図書株式会社、
平成16年7月20日 第1版第1刷、表紙、目次、9,10,
13,14頁、奥付
甲第5号証:QLデッキ 設計マニュアル、JFE建材株式会社、
平成17年5月、表紙、まえがき、目次、28?30頁

4 文献の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、翻訳文は、申立人が提示したものを採用した。(下線は決定で付した。また、○囲み数字は「○数字」と表記した。以下同様。)
ア 「Preface

Across the world, wide-spread use is made of structural steelwork
in frames for multi-storey buildings. Important factors which
influence this include speed of construction,adaptability for future
use and the low cost of the basic structure. The most cost-effective
structural option is often composite steel-concrete construction,
whether in the form of composite steel beams and slabs or
slimfloor systems.

If composite beams are designed as simply-supported, the
calculations are straightforward, the end connections do not require
much fabrication and erection is fast. Extensive use is therefore
made of this approach, particularly where the serviceability and
durability of the structure will not be harmed by cracking in the
slab around the supports. However, if such cracking needs to be
limited, reinforcement is provided as restraint. This results in
composite action at the supports. The ends of the beam are not
free to rotate and both the stiffness and the load resistance of the
member increase.

This publication describes how beam-to-column and beam-to-beam
connections may be deliberately designed with composite action to
provide quantifiable end restraint. Guidance on global analysis of
frames is included, with both elastic and plastic methods
considered. Thus the effects of joint. behaviour at serviceability
and ultimate limit states can be accounted for. Composite joints
require little additional site work in return for substantial
benefits in terms of greater load capacity, better performance in
service and reductions in steel section. Their use in recent
practice includes the prestigious Millennium Tower in Vienna.

Although such composite connections are recognised by Eurocode 4,
no detailed rules are given, This publication therefore includes
design recommendations in the form of model code clauses. These
can be used in conjunction with Eurocode 4 and are in harmony
with design provisions for steel structures given in Eurocode 3.
Their use is illustrated by worked examples. Help in "getting
started" is also provided. The derivation of the recommendations
and comparisons with observed behaviour are described in "Composite
steel-concrete joints in braced frames for buildings"
(ed. D. Anderson), published in 1997 by the European Commission :
European Cooperation in the Field of Scientific and Technical
Research.」(6枚目1?31行)

(翻訳文)
「序文
世界各地で複層建築物に鋼構造フレームが広く使用されている。鋼構造フレームの使用に関して重視されることは、建設期間の速さと建築物の使用用途における適応性および基本鋼構造の低コスト化である。このうち最もコストに影響を及ぼす構造の一つとして、鋼-コンクリートの複合構造、あるいは、鉄骨梁とスラブの合成梁構造、若しくは鉄骨梁とスリムフロアシステムとの複合構造、があげられる。

合成梁が単純梁として設計されている場合は、その構造計算は簡単で、梁端加工も最小限で済むため、建設工期も早い。そのため単純梁として設計する手法が一般的である、特に、建築構造物の有用性と耐久性は、支持部周辺のスラブにクラックが入ったとしても害されることはない。そのようなクラックを制限する必要があるとしても補強部材が抵抗力として働く。これは支持部において応力再分配のような複合挙動が働くからである。鉄骨梁の小梁端部は回転をフリーにするのではなく、部材の剛性と耐力(荷重負荷、つまり回転を拘束した場合に生じる梁端部の負曲げモーメントへの抵抗力のこと)の両方を考慮して設計する。

本書は、複合挙動を伴う、柱-梁継手、および梁-梁継手の設計方法について詳述するものであり、梁端部の拘束状態を定量化することを目的としたものである。また、本書のガイダンスには、骨組みの全体解析に関し、弾性域における解析手法と塑性域における解析手法の両方を収録している。したがって、通常時と終局状態における継手部挙動について説明がなされたものとなっている。複合継手に要求される条件は、より大きな許容耐力、作業性の向上および鉄骨断面の軽量化を目的とするものであり、現場での追加作業をほとんど必要としないことである。これらの設計方法は、近年、ウィーンの有名なミレニアムタワーに採用されている。

このような複合構造の継手はEurocode 4 で認められているが、詳細なルールはEurocode 4 では示されていなかった。それゆえ本書は、そのモデル設計を通して設計上の推奨を提示するものである。これらは、Eurocode 4 とあわせて利用することができ、Eurocode 3 において記された鋼構造の設計規定と一致するものである。これらの複合構造の設計例は、事例を交えて説明されている。“はじめるにあたって”に助言も提供されている。「ブレース構造における鋼とコンクリートの複合継手」が1997年にEuropean Commission : European Cooperation in the Field of Scientific and Technical Research によって出版されており、設計時の推奨論とその挙動検証の実例が詳述されている。」

イ 「1. Introduction

1,1 Composite construction and composite joints

This publication concerns building frames with composite steel-
concrete beams. The primary aim is to explain how to design joints
in hogging bending as composite elements. The key feature is the
provision of continuous slab reinforcement to act in tension across
the joint. This increases substantially both resistance and
stiffness for little increase in work on site. Many types of joint
are possible (figure 1.1).」(1.1頁1?7行)

(翻訳文)
「1.緒言
1.1 複合構造及び複合継手
この刊行物は、鋼-コンクリートの複合梁の建築構造に関する。本書の主な目的は、複合構造とすることで負曲げ(上に凸の変形が生じる曲げ)がかかった状態での継手の設計法を説明することである。鍵となるのは、継手にわたって発生する負曲げモーメントからの引張力を負担する連続スラブの補強部材の規定である。この規定は、現場作業を増やすことなく、継手部に引張力と剛性の両方を実質的に負担させる思想である。この規定は多数の継手に適用可能である(図1.1)。

ウ 1.1頁「Figure 1.1 Examples of composite joints」の図
(ア)中段左「c. joints with fins and contact plates」の図は以下のとおり。


(イ)中段右「d. joints with cleated connections」の図は以下のとおり。



エ 「Generally there is lack of full continuity between the
floor system and the column; frames with composite joints are
therefore semi-continuous in nature. This type of framing enables
advantage to be taken of the stiffness and moment resistance
inherent in many forms of connection whilst avoiding the expense
of rigid and full-strength steelwork connections [1.1]. The
recognition of this approach is widely regarded as one of the
advances in Eurocode 3 [1.2], compared to earlier standards.」(1.1頁8?13行)

(翻訳文)
「一般に、床版(floor system)と柱は、完全な連続性は欠如している。それゆえ、複合継手を有するフレームは、元来、「半剛接合」である。図1.1に示すこの種の仕口構造は、鉄骨部材の継手の固定度を完全固定とするのを避け、継手に内在する剛性とモーメントへの抵抗力を利用して設計することができる。このアプローチの認識は、初期の設計基準と比較し、Eurocode3[1.2]の優位性の一つとして広く知られている。」

オ 「1.3 Scope

In the model clauses detailed provisions are given for

・joints with flush or partial-depth end-plates (figure 1.1b)
・joints with boltless connections and contact plates (figures 1.1c
and 1.1e).

The joints are intended for conventional composite beams in which
the structural steel section is beneath the slab. It is assumed that
the connections are subject to hogging bending moment due to
static or quasi-static loading. Profiled steel decking may be used
both to form the in-situ concrete and to act as tensile
reinforcement, creating a composite slab; alternatively, the slab
may be of in-situ reinforced-concrete construction or may use
precast units.」(1.3頁20?29行)

(翻訳文)
「1.3 範囲
各モデル毎の詳細な条件は以下のとおりである。

・フラッシュエンドプレート(梁端にぴったり揃えられたエンドプレート)またはパーシャルデプスエンドプレートがある継手(梁端の高さ方向の一部に取り付けられたエンドプレート)(図1.lb)

・ボルトレス接合部とコンタクトプレートがある継手(図1.lc、図1.le)
上記の継手は、鉄骨断面がスラブの下にある従来の合成梁を意図したものである。その接合部には、静的荷重あるいはそれに準ずる静的荷重が作用することにより、上向きの負曲げモーメントが発生すると仮定する。鋼製デッキプレートは、合成スラブを形成するために、コンクリートを所定の位置に流し込むことと、引張力に対する補強部材としての両方の役割で使用されている。前記合成スラブの代わりに、スラブは、補強鉄筋入りコンクリートであってもよいし、プレキャストのユニットであってもよい。」

カ 「1.4 Getting started

Design aids and calculation procedures are presented in Chapter 9.

The simplest forms of composite connection are those shown in
figures 1.1c and 1.1e. At the construction stage the structure is
designed as "simple" and a steelwork connection is provided to
resist vertical shear. Moment resistance and flexural stiffness is
provided at the composite stage through:
・tensile action from the slab reinforcement」(1.4頁10?9行)

(翻訳文)
「1.4 解析準備

本設計の目的と解析手順は第9章を参照されたし。
合成継手の代表的な形式を図1.lcと図1,leに示す。建築構造の施工段階においては、単純梁として設計され、鉄骨継手に働く鉛直方向のせん断力に耐えるように設計する。(コンクリート硬化後の)合成スラブの効果が発現する段階においては、モーメントへの抵抗力と半剛状態の剛性を持つようになるのでそれらを考慮して設計する。

・スラブの補強部材から伝達される引張力」

キ 2.4頁「Figure 2.2 Choice of joint type」の図
(ア)1段目の図は以下のとおり。


(イ)3段目右側の図は以下のとおり。


(ウ)5段目右側の図は以下のとおり。


ク 「The remaining connections, 5-7, may be designed compositely.
By adjusting the reinforcement, the designer is able to vary at will
the structural properties of the joint. The moment resistance and
stiffness of the steel connection can also be varied by changing its
details. Indeed, joint types 5-7 can be replaced by contact-plate
joints, as shown in figure 2.2. This freedom helps the designer
achieve economically a uniform depth of construction, despite
the different loads and spans of the various beams. In a large
floor grid the beams and their connections would be repeated
many times. The resulting reductions in beam section would
therefore be widespread and there would be substantial repetition
in fabrication and erection.

Finally, it will be noted that composite connections are used about
both axes of the internal column. With a decking say 70mm deep
and a thin overall slab depth (say 120-130mm), problems could
arise in accommodating the two layers of reinforcement in a
limited thickness of slab.」(2.5頁16?28行)

(翻訳文)
「その他の接合部、図2.2の○5?○7は、複合的に設計されてよい。補強材を調節することにより、設計者は、継手の構造的な特徴を意のままに変更することができる。鋼構造の接続部のモーメント抵抗と剛性は、その細部を変化させることによっても変更可能である。実際、継手タイプ○5?○7は、図2.2に示されるようにコンタクトプレート継手に置き換えることができる。この自由度は、様々な梁の異なる荷重とスパンに関わらず、設計者が経済的に建築物の一定の詳細設計を行う助けになる。大きなフロアグリッドでは、梁とそれらの接続は多数繰り返し利用されるだろう。それゆえ、その結果として、鉄骨梁の断面減少は広範囲にわたるものとなり、部材組み立て段階と建設段階において、必然的にそれらが繰り返し行われるだろう。
最後に、複合接合部は、内部の柱の水平X方向と水平Y方向のどちらの方向にも使用される。デッキ成70mm深さ、かつ、全体に亘って薄いスラブ深さ(120-130mm)では、スラブの制限された厚さ内に補強部材の2つの層を配置する場合に問題が生じ得る。」

ケ 「Contact plate joint:In such joints, the steelwork
connection provides no resistance to tension arising from bending.
The distribution of internal forces is therefore easy to obtain. As
can be seen from figure 4.3, the compression force is assumed to
be transferred at the centroid of the lower beam flange and the
tension force at the centroid of the reinforcement.」(4.5頁21?末行)

(翻訳文)
「コンタクトプレート継手:この種の継手においては、(鉄骨梁の上フランジが柱又は梁に接合されておらず、また鉄骨梁の下フランジがコンタクトプレートという接触部材を介して柱又は梁にメタルタッチされているだけであるため)鉄骨継手は発生する曲げモーメントに対しては何の引張力も負担しない。そのため、内部応力の伝達は簡単である。図4.3から分かるように、梁の下フランジの中心軸に発生する圧縮力と、スラブ補強部材の中心軸に発生する引張力によって伝達される。」

コ 4.5頁「Figure 4.3 Contact plate joint with one row of
reinforecement」の図


サ 「5.4 Joints in semi-continuous construction

5.4.1 Introduction

Composite moment-resisting joints provide the opportunity to
improve further the economy of composite construction. Earlier
chapters have described how to predict the behaviour of a composite
joint and how to model such joints in global frame analysis. Advice
is now given on the implementation of these in practice.」 (5.6頁1?6行)

(翻訳文)
「5.4 半連続構造の継手
5.4.1 緒言
モーメントに抵抗する複合継手は、さらに複合構造の経済性を改善する機会を提供する。先の章では、複合継手の挙動の予測の仕方及び全体の骨格解析においてそのような継手の形成の仕方を記述した。ここでは、実際のこれらの実行について助言する。」

シ 5.6頁「Figure 5.4 Types of composite joint」の図
(ア)中段左「c. joints with fins and contact plates」の図は以下のとおり。



(イ)中段右「d. joints with cleated connections」の図は以下のとおり。



ス 「Several possible arrangements for composite joints are
shown in figure 5.4, demonstrating the wide variety of steelwork
connection that may be used. In the interests of economy though, it
is desirable that the steelwork connection is not significantly more
complicated than those used for simple construction of steel frames.
Joints which use end plates, fin plates or web cleats fall into this
category. With conventional unpropped construction, the joints are
therefore nominally pinned at the construction phase. Later the
steelwork connection combines with the slab reinforcement to form
a composite joint of substantial resistance and stiffness. The
flexibility of the simple steelwork connection resulting, for
example, from thin end plates, also ensures that this part of the
composite connection does not limit its rotation capacity,

A particularly straightforward arrangement arises with "boltless"
steelwork connections. At the composite stage all of the tensile
resistance is provided by the slab reinforcement, and no bolts act
in tension.」(5.6頁8?末行)

(翻訳文)
「図5.4には、複合継手についていくつかの考えられる構成が示されており、使用可能な鋼構造の接合部を広範囲に例証している。経済性のために、鋼構造の接合部は、鉄骨の単純梁に使用されるものよりも顕著に複雑でないことが望ましい。端部プレートを使用する継手、ガセットプレート(フィンプレート)又はウェブ金具はこのカテゴリーに入る。従来の支柱を除いた構造では、それゆえその継手は施工段階では通常通り単純梁である(梁端はピン接合として固定される)。その後、鋼構造の接合部はスラブの補強部材と連結して実質的な耐力及び剛性の複合継手を形成する。例えば、薄手のエンドプレートのような単純梁(ピン端)の鋼構造の接合部のフレキシビリティーは、複合継手のこの部分の回転を制限するものではない。

典型的な構成は「ボルトが無い」鋼構造の接合部において生じる。複合構造を形成した後の段階では、引張力に抵抗する部材は全てスラブの補強部材によって負担され、引張力に対抗して働くボルトは無い。」

セ 「5.4.3 Joint characteristics

The component method described in Chapter 4 enables the designer to
predict the key structural properties of various joint
configurations. Although described in terms of beam-to-column
joints, the method is readily applied to beam-to-beam joints by
omitting the components related to the column.」(5.7頁14?18行)

(翻訳文)
「5.4.3 継手の特徴
第4章で述べた構成要素は、設計者が建築物の設計において様々な継手を配置することを想定したものである。本書の解説は、主に柱-梁継手について述べているが、柱に関する構成要素を梁に置き換えることによって、梁-梁継手にも直ちに適用できる。」

ソ 「Failure in the slab (other than by yielding of the
longitudinal bars) may arise under unbalanced loading. The slab on
the less heavily loaded side bears against the column, as shown in
figure 5.5. This in turn creates transverse tension which has to be
resisted by transverse reinforcement. The requirements are shown in
figure 5.6. The transverse bars supplement transverse reinforcement
present to prevent longitudinal shear failure in the composite beam.」(5.10頁9?14行)

(翻訳文)
「スラブにおける損傷(縦方向鉄筋の降伏によるものの他)は、アンバランスな荷重の下で発生する。図5.5に示されているように、柱に対して左右両側にスラブがあるが、アンバランスな荷重が発生すると、あまり大きくない荷重を受ける側のスラブができる。すると、スラブ内に水平方向の引張力が生じるため、柱梁接合部を横断するように配筋された補強部材によってこれを負担しなければならない。その必要条件は、図5.6に示されている。この接合部を横断するスラブ内の補強鉄筋は通常配筋の補強部材を補完するものとして、合成梁の縦方向のせん断破壊を防ぐために配置される。」

タ 「If the decking spans onto the beam, it can be assumed that
the decking is effective in restraining the lop flange. This
situation is not covered by Eurocode 3, but a conservative solution
can be obtained from BS5950 [6.6].」(6.5頁1?3行)

(翻訳文)
「合成床版の床デッキプレートが小梁上部に載置された場合、当該床デッキプレートは、小梁の上側フランジに拘束された状態で効果を発揮するものと思われる。この状況はEurocode3ではカバーされていないが、保守的な解決方法はBS5950[6.6]から得ることができる。」

チ 「contact plates joint」(コンタクトプレートジョイント)に関する上記ケの記載を勘案して、上記シ(ア)の「c.joints with fins and contact plates」右側の図をみると、
・大梁を挟んで2本の小梁を突き合わせた状態で接合する鉄骨梁の仕口構造であること、
・大梁のウェブの両側にそれぞれ仕口部材が固定されていること、
・2本の小梁のウェブがそれぞれ仕口部材にボルトで接合されていること、
・小梁の下フランジがそれぞれ大梁側に対してメタルタッチで接合されていること、
・大梁の上フランジと小梁の上フランジとに亘ってスラブが載置されていること、
・2本の前記小梁の上フランジが大梁の上フランジに接合されていないこと、
が看取できる。

ツ 上記アないしチからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「大梁を挟んで2本の小梁を突き合わせ状態で接合する鉄骨梁の仕口構造であって、
前記大梁のウェブの両側にそれぞれ仕口部材が固定され、
2本の前記小梁のウェブがそれぞれ前記仕口部材にボルトで接合されるとともに該小梁の下フランジがそれぞれ前記大梁側にメタルタッチで接合され、
前記大梁の上フランジと前記小梁の上フランジとに亘ってスラブが載置され、
2本の前記小梁の上フランジが前記大梁の上フランジに接合されていない、鉄骨梁の仕口構造。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「2.特許請求の範囲
大梁の上面、及び同大梁を挟んでその両側に配設され、且つ接合端部がスラブ厚さに等しい上面欠損部を有する鉄骨鉄筋コンクリート部に形成された相対する鉄骨小梁の各上面に亘って、補強鉄筋を配設するとともに、コンクリートを打設してなることを特徴とする連続小梁構造。
3.発明の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本発明は鉄骨造の大スパン連続小梁構造に係るものである。」(1頁左下欄4?14行)

イ 「本発明は前記従来技術の有する問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とする処は、従来の鉄骨連続小梁構造に比して剛性が高く、撓み量が減少され、構造上の信頼性が高い連続小梁構造を提供する点ある。」(2頁左上欄3?7行)

ウ 「(実施例)
以下本発明を図示の実施例について説明する。
第1図乃至第3図において、(A)は鉄骨大梁、(B)は相隣る大梁(A)間に架設される鉄骨小梁で、同小梁(B)の両端部にスラブ厚tを欠損した鉄骨鉄筋コンクリート部(a)が形成され、更に前記小梁(B)の端面より剪断抵抗部材を構成するガゼツトプレート(1)が突設されている。
図中(2)は鉄骨鉄筋コンクリート部(a)におけるコンクリート部、(3)は同部の下部水平補強鉄筋、(4)は同補強鉄筋(3)に捲装された肋筋で、上端部が前記鉄骨鉄筋コンクリート部(a)の上面欠損部内に突出している。
更に前記大梁(A)における小梁接合位置には、剪断抵抗部材を構成するガゼツトプレート(5)が突設されている。
而して前記鉄骨小梁(B)を相隣る鉄骨大梁(A)に架設し、前記各ガゼツトプレート(1)(5)を高張力ボルト(6)で接合し、鉄骨大梁(A)の上面、及び同大梁(A)を挟んでその両側に配設された相隣る鉄骨小梁(B)(B)における鉄骨鉄筋コンクリート部(a)上面の欠損部に亘って補強鉄筋(7)を配設し、同欠損部を含む鉄骨小梁(B)上面及び大梁小梁接合部にコンクリート(8)(8’)を打設し、前記鉄骨大梁(A)と鉄骨小梁(B)とを剛接合し、連続小梁構造を構成する。」(2頁右上欄12行?左下欄16行)

エ 「(発明の効果)
本発明によれば前記したように、大梁の上面、及び同大梁を挟んでその両側に配設され、且つ接合端部がスラブ厚さに等しい上面欠損部を有する鉄骨鉄筋コンクリート部に形成された相対する鉄骨小梁の各上面に亘って、補強鉄筋を配設するとともにコンクリートを打設して、前記大梁と鉄骨小梁とを剛接合し、連続小梁構造を構成することによって、鉄骨小梁の断面を縮減し、経済性を向上し、作業性を改善しうるものである。
また前記鉄骨小梁の両端部が鉄骨鉄筋コンクリート部に形成されているので、従来の純鉄骨よりなる連続小梁構造に比して、剛性が高く撓み量が減少され、スラブ振動の障害が少なくなる。」(3頁左上欄8行?右上欄1行)

オ 「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明に係る大梁と小梁の接合構造の一実施例を示す一部縦断正面図で第4図の矢視I一I図、第2図及び第3図は夫々第1図の矢視II-II図、並に矢視III-III図、第4図は本発明の適用された建築物の架構を示す平面図、」(3頁右上欄2?7行)

カ 第1図、第3図は以下のとおり。
第1図


第3図



(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「5.4.3 デッキ合成スラブと梁との接合
デッキ合成スラブと梁との接合は,床スラブから伝達される面内せん断力に対して十分な性能を有している接合形式とする.この要求を満たすものとして,梁が鉄骨造の場合,溶接,焼抜き栓溶接,打込み鋲および頭付スタッドがある.」(33頁4?7行)

イ 「なお,頭付きスタッドでデッキ合成スラブと鉄骨梁を堅固に接合すると,実態として,合成梁が構成されることになる.上記指針は「デッキプレートを用いるスラブ」を持つ合成梁の設計についても示している.」(33頁21?23行)

ウ 34頁「図5.E ひび割れ拡大防止用の割増配筋例」の図は以下のとおり。


エ 34頁「図5.F 溶接金網の重ね部」の図は以下のとおり。


オ 「4.2節で述べたようにデッキ合成スラブ構造の安全性は,無筋でも確保することはできるが,支持縁上の負曲げモーメントによるひび割れの発生および拡大やコンクリートの乾燥収縮ひび割れは,床スラブの剛性低下を招き,振動障害などの原因になるので,6mm径以上の鉄筋を強辺,弱辺方向とも150mm間隔以下で,仕様規定として床全面に配することとした.
(1)項はひび割れ拡大防止用配筋として,デッキプレート山上の平板部状の最小鉄筋量を0.2%以上と規定した.ひび割れを分散させたい場合や構造上引張応力の発生が予測される箇所,または用途上ひび割れを避けたい床等では,日本建築学会「鉄筋コンクリート造のひび割れ対策(設計・施工)指針・同解説(2002)」に従い,コンクリート全断面積の0.3%程度以上の配筋量が望ましい.仕上げ納まりなどでコンクリートを増打ちする仕様で,構造躯体部分と一体にコンクリートを打設する場合は,増打ち部分も考慮した上で,鉄筋比0.2%以上を確保することが大事である.
デッキ合成スラブは,デッキプレートの凹凸部があるのでコンクリートの凝結・硬化時間に差が生ずることや,鋼板とコンクリートが付着することなどに起因する乾燥収縮ひび割れが発生しやすい傾向にある.また,コンクリートが強度を発現するまでは,デッキプレートのみがコンクリート自重を支えており振動しやすい.さらに,デッキ合成スラブの構造解析は,一方向性スラブとして設計計算しているためコンクリート強度が発現し,デッキ合成スラブになってからも計算外である弱辺方向の床スラブ支持縁上の構造ひび割れには注意をする必要がある.特に,柱まわりや梁上にひび割れ拡大防止用の鉄筋を割増すなどの対策が必要と考えられる(図5.E).」(34頁1?末行)

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「b)コンクリートのひび割れ拡大防止措置
デッキプレート版を合成スラブとした場合,通常は鋼板の部分が引張側となるが,上端コンクリート部分が引張側となる場合にはひび割れが進展し,水分の浸入等によるスラブ内部の鉄筋等の腐食を生ずるおそれがある。床版がはり等の横架材を介して連続する場合や片持ち床となる場合,床版の中央に支柱を設ける場合には特に注意が必要であり,このような個所について溶接金網等で有効に補強することとされた。ただし,設計上必要と考えられる床版内の一部の箇所のみにひび割れ拡大防止措置を講じた場合,その周辺の未措置の部分との構造性能の不連続が弱点となり得るので,特に検討を加えた場合を除いて,床版全体に対策を講ずることが望ましい。具体的なひび割れ拡大防止のための措置については,(社)日本建築学会「鉄筋コンクリート造のひび割れ対策(設計・施工)指針・同解説」等が参考となる。溶接金網の設置は,ひび割れ拡大の防止以外に床版の剛性低下の防止に対しても有効な措置である。」(13頁下から6行?14頁5行)

イ 14頁「図2.2.5 上端コンクリートのひび割れ拡大防止措置」の図は以下のとおり。


(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「例2
右図の長さ12mの小梁を合成梁として設計する。
設計条件 デッキプレート QL99-75-12G
コンクリート 普通、F_(c)=18N/mm^(2)、S=80mm
ひび割れ防止筋 φ6-150×150
D10-@300を一方向に追加配筋
合成スラブ自重 W_(DL)=2860N/m^(2)
積載荷重(事務所) 2900/m^(2)
床仕上げ他 1000/m^(2)
W_(LL)=3900N/m^(2)
施行荷重 W_(WL)=1470N/m^(2)」(28頁)

イ 28頁右上の図は以下のとおり。


ウ 「○7 床スラブ面内せん断力の検討
(長期荷重時)
・・・(中略)・・・
従って横方向の下端鉄筋の必要量(a_(t))は、
a_(t)=0.00178×80×1000=143mm^(2)/m

単筋配置として上記の2倍(a_(t)=286mm^(2)/m)が必要である。
合成スラブのひび割れ防止筋との兼用配置は、溶接金網φ6-100でa_(t)=282mm^(2)/mとなり、若干不足する。
ここでは、溶接金網φ6-150×150に加えて、D10-@300を梁と直交方向に配置する。
(a_(t)=426mm^(2)/m)」(29頁左欄?右欄)

5 当審の判断
(1)取消理由1及び2について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、
「大梁を挟んで2本の小梁を突き合わせ状態で接合する鉄骨梁の仕口構造であって、
前記大梁のウェブの両側にそれぞれ仕口部材が固定され、
2本の前記小梁のウェブがそれぞれ前記仕口部材にボルトで接合されるとともに該小梁の下フランジがそれぞれ前記大梁側にメタルタッチで接合され、
前記大梁の上フランジと前記小梁の上フランジとに亘ってスラブが載置され、
2本の前記小梁の上フランジが前記大梁の上フランジに接合されていない、鉄骨梁の仕口構造。」で一致しているものの、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも、本件発明1は、大梁の上フランジと小梁の上フランジとに亘って載置されるスラブが、これらの上フランジにシアコネクタにより接合され、2本の小梁の上フランジがスラブのみを介して互いに接合されているのに対し、甲1発明の大梁、小梁、スラブには、そのような特定がない点で相違している。

(イ)判断
そこで、申立人が提示するその他の文献の記載事項を確認すると、まず、甲第2、4、5号証には、シアコネクタについての記載はなく、また、甲第3号証には、頭付きスタッドについての記載はあるものの、大梁の上フランジ及び小梁の上フランジの両方にシアコネクタを設け、両フランジのシアコネクタによりスラブが接合され、2本の小梁の上フランジがスラブのみを介して互いに接合されることは記載されておらず、示唆する記載もない。
よって、上記相違点に係る構成は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(ウ)申立人の主張について
シアコネクタについて、申立人は「甲第1号証のc右側図に示される継手構造は、デッキプレート40とコンクリートとの合成スラブ42が、大梁10の上フランジ10bと小梁の上フランジ20bとに亘って載置されている。そして、スラブ42は、小梁20の上フランジ20bにシアコネクタ14によって接合されている。なお、c右側図には、スラブ42は、大梁10の上フランジ10bにもシアコネクタ14により接合されていることが明示されていない。d右側図に示されている継ぎ手構造も同様である。この点について、甲第1号証のp2.4の「Figure 2.2 Choice of joint type」(翻訳文:図2.2 継手タイプの選択)において、○5の代わりとして○9に示される1本の大梁と2本の小梁との継ぎ手構造では、大梁10の上フランジ10bと小梁20の上フランジ20bとに亘って載置されるスラブ42は、これらの上フランジ10b、20bにそれぞれシアコネクタ14により接合されている。従って、c右側図及びd右側図に示される各継ぎ手構造においても、技術思想上、小梁20の上フランジ20bだけでなく、大梁10の上フランジ10bにもシアコネクタ14によってスラブ42が接合されており、『前記大梁10の上フランジ10bと前記小梁の上フランジ20bとに亘って載置されるスラブ42が、これらの上フランジ10b、20bにシアコネクタ14により接合され、』(発明特定事項D)を満たしている。」(特許異議申立書57頁下から5行?59頁1行)と主張している。
しかしながら、上記のc右側図(上記4の(1)シ(ア))をみると、小梁の上フランジ上に、何らかの部材が突出しているようにみえるが、該部材が何であるのか、また何の機能を有しているのかについて、甲第1号証に明確には記載はない。また、上記p2.4の「Figure 2.2 Choice of joint type」(上記4の(1)キ(ウ))の図をみると、大梁の上フランジよりも上側は不鮮明であって、大梁の上フランジ上や小梁の上フランジ上に何かの部材が突出していることが判別できず、また、両フランジ上にシアコネクタが設けられていることを説明する記載もない。
甲第1号証の上記両図面からは、大梁の上フランジ上及び小梁の上フランジ上にシアコネクタやフランジボルトが設けられていることを読みとることはできない。
なお、仮に、上記のc右側図に記載の該部材が、申立人が主張するようにスタッドボルトであったとしても、上記p2.4の「Figure 2.2 Choice of joint type」の図からは、両フランジ上、特に大梁のフランジ上にシアコネクタが設けられていることを読み取ることができないことからみても、申立人の主張は採用できない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で説示した理由と同じ理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)取消理由3について
ア 申立人は、本件発明3について、「請求項3の構成要件のうち『その長手方向に直交する方向』が、鉛直方向と水平方向を含む権利範囲になっているにもかかわらず、鉛直方向がサポートされておらず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではない。『その長手方向』とは、補強用鉄筋の長手方向と読めるが、『その長手方向に直交する』とは2軸あり、明細書には1軸しか記載がなく、2軸を含む範囲は明細書に記載された内容を大幅に超える範囲を請求するものであり、サポート要件をみたしているというにはあまりに酷である。」(特許異議申立書92頁下から10?2行)と主張している。

イ ここで、補強部材(補強用鉄筋14)の配置について、本件明細書のの記載を確認すると、スラブ筋に補強用鉄筋14として機能される例として、「【0050】・・・図9に示す変形例においては、床スラブ12の内部に設けられて大梁3を跨ぐとともに2本の小梁4に沿って配置されるスラブ筋13のうち、小梁4の軸心を中心とした所定幅内にあるものを、他のスラブ筋13よりも外径が大きい大径のものとし、これを補強用鉄筋14としている。・・・小梁4の軸心を中心とした所定幅内において小梁4に沿って配置されるスラブ筋として他のスラブ筋13よりも径が太いものを用い、これを補強用鉄筋14として機能させることにより、スラブ筋13の他に補強用鉄筋14を設けることなく床スラブ12を補強することができる。」及び「【0053】本変形例においても、補強用鉄筋14とされるスラブ筋の太さ、本数等は、床スラブ12が小梁4の負曲げモーメントに抵抗できるように、種々の条件等に応じて設計により任意に設定することができる。」と記載され、また【図9】(b)をみると、補強用鉄筋14が鉛直方向に並んでいることが看取できる。
してみると、スラブ筋に補強用鉄筋14の機能をさせる例ではあるが、補強用鉄筋14を鉛直方向に並べることが記載されているのであるから、明細書及び図面の記載は鉛直方向もサポートしている。

ウ 以上のとおりであるから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載したものである。


(3)取消理由4について
ア 申立人は、本件発明1について、「請求項1において『小梁に沿って延びる補強部材』の指す範囲が、小梁からどのくらいの離れているものまでを対象としているのか、その効果を発現する距離が小梁のウェブ中心から50cm程度までなのか、500cm程度までなのか、不明であるため、特許を受けようとする発明が明確でない。」(特許異議申立書93頁末行?94頁3行)、と主張している。
しかしながら、補強部材で補強すべき範囲は、特定の数値の範囲となるものではなく、負荷に対してどの程度まで補強しようとするのか、また大梁、小梁、スラブ筋や補強部材の形状や強度等によって、設計上変わってくるものであって、該設計において、「床スラブ12の内部に補強用鉄筋14が配置されることにより、床スラブ12の大梁3を挟んだ2本の小梁4の接合部分に対応する部分が補強され、これにより床スラブ12の小梁4に沿う方向の曲げ強度が高められている」(段落【0038】)という効果を発揮する範囲であれば良いものであるから、補強部材を配置して補強する範囲は、補強部材が該効果を発揮するのに必要な範囲であることは明らかである。

イ また、申立人は、「請求項2、請求項3において、スラブ筋とは別に設けられる『補強部材』と、請求項4において、スラブ筋として設けられる『補強部材』の2つのケースに分けられるが、『スラブ筋』の用語の技術的範囲が明確ではないため、特許を受けようとする発明が明確でない。」(特許異議申立書94頁5?10行)、「『スラブ筋』について、本件特許には、コンクリートに埋設された構成に限らないことと、負曲げ応力を伝達するスラブ筋があることが記載されており、その範囲は非常に広い。そのため、そのような広い特徴・機能を持つ鉄筋が『スラブ筋』に含まれると解釈すると、一般に当業者の間で用いられる『スラブ筋』の定義を含むのかどうかがはっきりしない。一般に設計で考慮するスラブ筋には、スラブ内に配筋される上端鉄筋、下端鉄筋、それらを格子状に組み立てた格子状鉄筋、ひび割れを防止するために配筋されるひび割れ防止用鉄筋、モーメントやせん断力に抵抗するために配筋される鉄筋、支持縁など構造上引張応力が作用する部分に配筋される鉄筋、開口部周辺に設けられる補強用鉄筋、柱梁接合部周辺に設けられる補強用鉄筋、大梁上や小梁上に発生するモーメントやそのモーメントによって生じる引張力に抵抗するために梁上に設けられる補強用鉄筋、及びそれらの目的別に配筋される鉄筋を兼用配置として構造計算を行い配筋される鉄筋等が「スラブ筋」に含まれているものと当業者は解釈する。」(特許異議申立書96頁5?18行)と主張している。
しかしながら、「スラブ筋」は、その用語のとおりに、通常、当業者が理解する技術的な意味を有するものであって、明確なものであり、また、本件発明2、3の「スラブ筋」と別に設けた「補強部材(補強用鉄筋)」との区別についても、十分理解できる。
さらに、本件発明4の「前記補強部材は、前記スラブの内部に設けられたスラブ筋であって、他のスラブ筋よりも大径のものである」については、一部のスラブ筋が補強部材の機能を有し、他のスラブ筋とは、その径に違いがあるから、本件発明4の「スラブ筋」及び「補強部材」も、明確であって十分理解できるものである。

ウ 最後に、申立人は、「請求項3の構成要件のうち『その長手方向』とは、補強用鉄筋の長手方向と読めるが、『その長手方向に直交』とは2軸あり、断面図から判断すれば直交する方向は“鉛直方向”であり、一方、平面図から判断すれば直交する方向は“水平方向”であるが、鉛直と水平のどちらの方向に直交するのか、または両方向を指すのか、発明が明確でない。」(特許異議申立書108頁11?17行)、と主張している。
しかしながら、『その長手方向に直交』は、鉛直方向と水平方向の2軸方向あることは、上記(2)で説示したとおりであるから、上記『その長手方向に直交』に不明確な点はない。

エ 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1?4の記載は明確である。


6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-26 
出願番号 特願2013-201858(P2013-201858)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04B)
P 1 651・ 113- Y (E04B)
P 1 651・ 537- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小野 郁磨小池 俊次富士 春奈  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
登録日 2018-06-08 
登録番号 特許第6347930号(P6347930)
権利者 川田工業株式会社
発明の名称 鉄骨梁の仕口構造  
代理人 杉村 憲司  
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