• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23D
管理番号 1351445
異議申立番号 異議2018-700998  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-06 
確定日 2019-05-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6339764号発明「丸鋸」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6339764号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6339764号の請求項1に係る特許についての出願は、平成25年2月25日に出願され、平成30年5月18日にその特許権の設定登録がされ、平成30年6月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年12月6日に特許異議申立人 吉川俊雄は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6339764号の請求項1の特許に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
台金(12)の外周部に互いに間隔をあけて接合された複数のチップ(30)を有し、該チップ(30)に設けた切れ刃(32)によってワークを切削する丸鋸において、
前記チップ(30)は、前記切れ刃(32)に接する第1すくい面(40)と、該チップ(30)の回転方向前側に設けられた歯袋(16)に面して、半径方向内側の内縁が該歯袋(16)を画成する台金(12)の外周縁に接する第2すくい面(42)とを有し、
前記第2すくい面(42)は、丸鋸の回転中心(O)から前記切れ刃(32)に引いた第1基準線(L1)と、前記内縁を該第2すくい面(42)に沿って通る第2基準線(L2)とがなす第2すくい角(θ2)が負の角度になるように形成され、
前記チップ(30)の背面(34)に連なり、且つ前記切れ刃(32)より半径方向内側に延在する歯体(14)の外周縁(14a)には、該外周縁(14a)から半径方向外側に突出する突部(20)が形成され、該突部(20)における半径方向外側の頂部が、前記切れ刃(32)よりも半径方向内側に位置するよう設定され、
前記第1すくい面(40)は、前記第1基準線(L1)に対する第1すくい角(θ1)が負の角度で形成され、
前記第2すくい面(42)は、前記第1すくい面(40)よりも半径方向内側に形成されると共に、前記第2すくい角(θ2)が前記第1すくい角(θ1)よりも正側に大きくなるよう設定されており、
前記チップ(30)は、前記第2すくい面(42)の内縁より半径方向内側に延出する基部(31)を、該基部(31)の周面に合わせて半径方向内側へ向けて凹むように前記台金(12)に形成された設置部(18)に嵌め合わせて、該基部(31)の周面を台金(12)に接合することで固定されており、
前記チップ(30)は、前記第2すくい面(42)の内縁の半径方向内側に連ねて、前記第2基準線(L2)に対して回転方向後側に傾いた分散面(44)を、前記基部(31)の周面に備え、
前記分散面(44)は、前記第1基準線(L1)に対して正の角度で傾斜するよう形成されたことを特徴とする丸鋸。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人 吉川俊雄は、主たる証拠として独国特許出願公開3943321号明細書(以下「文献1」という。)及び従たる証拠として特開2006-305863号公報(以下「文献2」という。)を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 文献の記載
文献1には、以下の事項が記載されている。
1-ア(第1欄1-10行)

(仮訳:明細書
本発明は、丸鋸刃用切削インサート、より具体的には、木材、非金属部分、および金属部分の切断または彫刻用のインサートに関する。
一般に、丸鋸刃はリーフディスク、リーフディスクの周囲に一様に配置されている歯、および歯の各先端部にそれぞれ固定されている切削歯インサートを含む。)
1-イ(第2欄8-40行)

(仮訳:本発明のこれらの目的は、中心軸を有し、かつこの中心軸を通る半径方向の線を画定するリーフディスクと、リーフディスクの外周端部に設けられている歯と、各歯の先端部にそれぞれ設けられている切削インサートとを備える丸鋸刃を作製することによって実現され、改善点は、切削インサートのそれぞれが、インサートの径方向外側部に配置された、半径方向の線に対して負のすくい角を形成する第1のすくい面と、第2のすくい面と、インサートの径方向内側部に配置された、半径方向の線に対して正のすくい角を形成する第3のすくい面とを有し、第2のすくい面が第1のすくい面と第3のすくい面の間に配置されていることを特徴とする。
切断を行うとき、第1のすくい面は大きな切断負荷を受ける。しかしながら、第1のすくい面は負のすくい角を有するため、切断衝撃に対し抵抗力のある高い機械的強度を示すことができる。第3のすくい面は正のすくい角を有するため、歯の底部に隣接して広い空間が設けられる。そのため切りくずがこの空間にたまり、それにより切りくずが厳密な切断領域に押しやられるのを妨げることができる。ゆえに、切削インサートは切りくずによる損傷を受けない。第2のすくい面は、第1のすくい面と第3のすくい面の間に画定される角を緩め、それにより切削インサートが折り取られないようにできる。)
1-ウ(第4欄17-45行)

(仮訳:これを考慮し、本発明では、第3のすくい面4が正のすくい面を有し、それにより、図13(a)に示すように、歯の径方向内側領域において、ふさがっていない空間Sの領域が拡大する。すなわち、第3のすくい面が正の方向であることによって、隣接する歯間に画定されている底部の領域または空間を拡大できる。上述のように、切断時に被削材から切りくずが発生しにくいにもかかわらず、拡大された空間Sに切りくずが一時的に溜まる可能性がある。そのため、切りくずが厳密な切断領域に入り込まなくなることで、できるだけ、切断領域に巻き込まれることによる切断効率の悪化を防ぐことができる。
これに関連して、第3のすくい面が負角を有する場合、切りくずは第1のすくい面に対して径方向外側に押しやられる。しかしながら、上述のように、切断材の厳密な切断領域と鋸刃の間の接触点が狭くしなやかであるため、切断材から切りくずが発生しにくいことから、径方向外側に発生した切りくずは、被削材の主な切断作業が行われる第1のすくい面を損傷する可能性がある。そのため、切削インサートと、とりわけその第1すくい面は、劣化または損傷する可能性がある。)
1-エ(第4欄46行-第5欄13行)

(仮訳:本発明による第1の実施形態を図4?図6に示す。本実施形態では、図4に示すように、第1、第2、第3のすくい面3、4、5は、それぞれ平面的に不連続であり、全ての歯は互いに等距離にある。より具体的には、丸鋸は、リーフディスクDと、リーフディスクDの周縁部に配置された複数の歯1と、歯1の半径方向外側部分に配置された同様の複数の切削インサート2とを含む。リーフディスクDでは、丸穴を回転させるための駆動軸(図示せず)と係合することができる中央孔1aが形成されている。半径方向の線bが画成され、それぞれ半径方向の孔1aの中心軸を通る。
各切削インサート2は、負のすくい角αを形成するその半径方向外側部分に配置された第1のすくい面3、切削インサート2の半径方向内側部分に配置された第2または中間すくい面5および第3のすくい面4を有する。中間すくい面5は、正または負のすくい角を有することができる。図示の実施形態では、第2のすくい面5は、第3のすくい面4の正のすくい角βよりも小さい正のすくい角γを形成する。
切削インサート2はまた、図5および図8に示すように、平らな外面7を有する。しかしながら、外面は中央平坦面7aと2つの傾斜した側面7bとで形成されることで、インサートの半径方向最外側の先端縁部における破断を回避することができ、それにより切削インサートの寿命やサービスを更に延ばすことができうる。)
また、添付図面として以下の図が図示されている。

これらを総合すると、文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「リーフディスクDと、該リーフディスクDの周縁部に配置された複数の歯1と、該各々の歯1の半径方向外側部分に配置された複数の切削インサート2を含む丸鋸であって、
前記切削インサート2は、丸鋸の外周部に互いに間隔をあけて配置され、外周縁の部分は平らな外面7とされ、該外面7から半径方向に向かって順に第1のすくい面3が形成され、該第1のすくい面3に続き第2のすくい面5が形成され、該第2のすくい面5に続き第3のすくい面4が形成されており、該第3のすくい面4は、切削インサート2の回転方向前側の前記ブレードディスクDに形成された略円形の凹部に連なるものとされており、
前記第1すくい面3は、丸鋸の中央孔1aを通る半径方向の線bに対し負のすくい角αを有し、前記第2すくい面5は正のすくい角γを有し、前記第3のすくい面4は、γより大きい正のすくい角βを有するように各々設定されている、
丸鋸。」

次に、文献2には、以下の事項が記載されている。
2-ア
「【0014】
図1を参照すると、本発明第1実施形態の丸鋸又はディスクカッター2の側面図が示されている。丸鋸2は2×4の木材パネルからなる壁の穴開けに特に適している。
【0015】
丸鋸2は、板厚約1.6mmの環状ディスク形状ベース(ベースディスク)4の外周に複数個(例えば24個)の鋸歯状チップサポート8が円周方向に等ピッチ間隔で形成されている。隣接するチップサポート8の間にはガレット9が画成されている。
【0016】
ベースディスク4はJIS規格SKS5(合金工具鋼)、JIS規格SK5(炭素工具鋼)、またはJIS規格SK6(炭素工具鋼)等の鋼から形成されている。ベースディスク4の直径は、例えば185mm、中心穴6の直径は約16mmであるが、本発明の丸鋸はこれらの数値に限定されるものではない。
【0017】
図2の拡大図に示すように、各チップサポート8にはリセス10が形成されており、これらのリセス10中にチップインサート12が蝋付け等により固着されている。チップインサート12はWC粉末とCo粉末の焼結超硬合金から形成されている。
【0018】
ベースディスク4の半径方向中程の実質上同一円周上で、且つ円周方向に等間隔離間して一対の開口14が形成されている。各開口14を画成するベースディスク4の回転方向下流側の壁面14aにはワイパーチップ16が蝋付け等により固着されている。
【0019】
図2及び図3に示されるように、各チップサポート12は例えば先端逃げ角が12°の逃げ面12aと、第1すくい角が例えば5°の第1すくい面12bと、第2すくい角が例えば10°の第2すくい面12cを有している。更に、図3に示されるように、逃げ面12aは例えば半径3mmの曲面に加工されている。」
また、添付図面として以下の図が図示されている。

図2及び図3の図示によると、ベースディスク4上に配置された複数のチップインサート12の下部は第2すくい面12cであることが引き出し線により示されている。また、図2内にはチップサポート8とガレット9の間に、半径方向外側に膨出する半円部分の存在が見てとれる。

これらの記載を総合的に参酌すると、文献2には、ベースディスク4の外周上に間隔を置いて複数の切削チップインサート12が蝋付け等で固着された丸鋸2であって、前記インサート12の間の前記ベースディスク4の外周側には半径方向外側に膨出する半円部分が設けられている丸鋸が記載されている。

5 当審の判断
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「リーフディスクD」は、本件発明の「台金(12)」に相当する。
また、引用発明1の「歯1」は「リーフディスクDの周縁部に配置され」ているから、「各々の歯1の半径方向外側部分に配置された複数の切削インサート2」は、本件発明の「台金(12)の外周部に互いに間隔をあけて接合された複数のチップ(30)」に相当する。
そして、引用発明1の「平らな外面7」と「第1のすくい面3」とでなす部分は、本件発明の「チップ(30)に設けた切れ刃(32)」に相当し、引用発明1の「丸鋸」がワークを切削するものであることは自明であるから、本件発明の「ワークを切削する丸鋸」に相当する。
また、引用発明1において「外面7から半径方向に向かって」「形成され」ている「第1のすくい面3」が、本件発明の「切れ刃(32)に接する第1すくい面(40)」に相当し、同様に、「切削インサート2の回転方向前側の前記リーフディスクDに形成された略円形の凹部」が、「該チップ(30)の回転方向前側に設けられた歯袋(16)」に相当するところ、引用発明1の「第3のすくい面4」は「略円形の凹部に連なるもの」であるから、本件発明の「半径方向内側の内縁が該歯袋(16)を画成する台金(12)の外周縁に接する第2すくい面(42)」に相当する。
また、引用発明1の「丸鋸の中央孔1aを通る半径方向の線b」が本件発明の「丸鋸の回転中心(O)から前記切れ刃(32)に引いた第1基準線(L1)」に相当するところ、引用発明1の「第3のすくい面4」は、「すくい角βを有するように各々設定されて」おり、当該すくい角βは上記の線bと第3のすくい面4との角度であるから、引用発明1の「第3のすくい面4」が、「すくい角βを有するように各々設定されて」いることは、本件発明の「前記第2すくい面(42)は、丸鋸の回転中心(O)から前記切れ刃(32)に引いた第1基準線(L1)と、前記内縁を該第2すくい面(42)に沿って通る第2基準線(L2)とがなす第2すくい角(θ2)」が「形成され」ていることに相当する。

そして、引用発明1の「歯1」には、チップ(30)に相当する切削インサート2が配置されており、当該チップ(30)よりも半径方向内側に存在することは明らかであるから、本件発明の「前記チップ(30)の背面(34)に連なり、且つ前記切れ刃(32)より半径方向内側に延在する歯体(14)」に相当する。

また、引用発明1において「第1すくい面3は、丸鋸の中央孔1aから半径方向の線bに対し負のすくい角αを有」することは、本件発明において「前記第1すくい面(40)は、前記第1基準線(L1)に対する第1すくい角(θ1)が負の角度で形成され」ることに相当する。
さらに、引用発明1において、「外面7から半径方向に向かって順に第1のすくい面3が形成され、該第1のすくい面3に続き第2のすくい面5が形成され、該第2のすくい面5に続き第3のすくい面4が形成されて」いることは、本件発明において「前記第2すくい面(42)は、前記第1すくい面(40)よりも半径方向内側に形成される」ことに相当し、引用発明1の「第3のすくい面4」が「正のすくい角βを有する」ことは、負のすくい角αを有する第1のすくい面3よりも正側に大きい角度であることを意味するから、本件発明において「前記第2すくい角(θ2)が前記第1すくい角(θ1)よりも正側に大きくなるよう設定されて」いることに相当する。
以上をまとめると、両発明は、
「台金の外周部に互いに間隔をあけて接合された複数のチップを有し、該チップに設けた切れ刃によってワークを切削する丸鋸において、
前記チップは、前記切れ刃に接する第1すくい面と、該チップの回転方向前側に設けられた歯袋に面して、半径方向内側の内縁が該歯袋を画成する台金の外周縁に接する第2すくい面とを有し、
前記第2すくい面は、丸鋸の回転中心から前記切れ刃に引いた第1基準線と、前記内縁を該第2すくい面に沿って通る第2基準線とがなす第2すくい角が形成され、
前記チップの背面に連なり、且つ前記切れ刃より半径方向内側に延在する歯体が設定され、
前記第1すくい面は、前記第1基準線に対する第1すくい角が負の角度で形成され、
前記第2すくい面は、前記第1すくい面よりも半径方向内側に形成されると共に、前記第2すくい角が前記第1すくい角よりも正側に大きくなるよう設定されている丸鋸。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
第2すくい角が、本件発明では負の角度であるのに対して、引用発明1では正の角度である点。
(相違点2)
本件発明は、「歯体(14)の外周縁(14a)には、該外周縁(14a)から半径方向外側に突出する突部(20)が形成され、該突部(20)における半径方向外側の頂部が、前記切れ刃(32)よりも半径方向内側に位置するよう設定され」ているのに対して、引用発明1の歯1の外周縁には、そのような突部が形成されていない点。
(相違点3)
本件発明では、「前記チップ(30)は、前記第2すくい面(42)の内縁より半径方向内側に延出する基部(31)を、該基部(31)の周面に合わせて半径方向内側へ向けて凹むように前記台金(12)に形成された設置部(18)に嵌め合わせて、該基部(31)の周面を台金(12)に接合することで固定されており、前記チップ(30)は、前記第2すくい面(42)の内縁の半径方向内側に連ねて、前記第2基準線(L2)に対して回転方向後側に傾いた分散面(44)を、前記基部(31)の周面に備え、前記分散面(44)は、前記第1基準線(L1)に対して正の角度で傾斜するよう形成され」ているのに対して、引用発明1では、そのように形成されていない点。

相違点1について検討すると、本件発明では外周縁から内側へ向かって順にすくい角が負の第1すくい面(40)が形成され、該第1すくい面に連なってやや角度が小さいながらも同じく負のすくい角である第2すくい角をとる第2すくい面となるようにチップ(30)が形成されることにより、切削くず等を歯袋から外周方向へ出すことができ、チップと台金との境界への負荷を抑えることができるとしたものである。そのため、本件発明における第2すくい面は上記対比の箇所で、「該チップ(30)の回転方向前側に設けられた歯袋(16)に面して、半径方向内側の内縁が該歯袋(16)を画成する台金(12)の外周縁に接する」すくい面としては、引用発明1では「第2のすくい面5」が該当せず、「第3のすくい面4」が対応するとの判断を行っている。
そして、歯袋を形成する台金の外周縁に接する箇所に配されたチップないしインサートのすくい面が、小なる負のすくい角とされた事項については、引用文献1に記載されていないことはもちろんのこと、本件特許異議の申し立てに添付された他の証拠である文献2には対応する開示がない。
そうすると、他の相違点2、3を検討するまでもなく、本件特許発明の相違点1に係る事項を公知技術であるとすることができず、また当該事項が当業者にとり周知慣用技術であるということもできないので、本件発明は当業者にとり容易想到とはできないことが明らかである。
よって、本件発明は、引用発明1及び文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。

特許異議申立人 吉川俊雄は、本件発明の負のすくい角と設定される「第2のすくい面」について、引用文献1の第4欄33-35行に「第3のすくい面が負角を有する場合」の言及があり、かつ、単なる可能性としての教示に留まらず、一実施例として記載がある旨主張する。しかし、上記4に示す文献1の記載事項1-ウには、特許異議申立人が採り上げた記載箇所の直前の記載によれば、第3のすくい面を正のすくい面とすることによるメリットが記載され、また、特許異議申立人が採り上げた記載箇所の直後の記載によれば、第3のすくい面を負角とした場合のデメリットが記載されていることが理解できるところから見て、特許異議申立人が採り上げた記載は、あくまで引用文献1の発明では第3のすくい面を正のすくい角とすべきであり、これを仮に負の角にした場合にはデメリットが生じるから、負の角度とすべきでないとの趣旨で記載されたものと見るのが相当である。また、引用文献1全体を見ても、第3のすくい面のなす角度を負の角度とした実施例は見当たらない。
よって、特許異議申立人のかかる主張にはなんら正当性が見いだせず、本件特許を容易想到とする根拠と扱うことはできないため、取り消すに足る理由がない。

以上のとおり、請求項1に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-23 
出願番号 特願2013-34207(P2013-34207)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B23D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 五十嵐 康弘  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 齋藤 健児
西村 泰英
登録日 2018-05-18 
登録番号 特許第6339764号(P6339764)
権利者 兼房株式会社
発明の名称 丸鋸  
代理人 山本 喜幾  
代理人 山田 健司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ