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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  D04H
審判 一部申し立て 発明同一  D04H
審判 一部申し立て 2項進歩性  D04H
管理番号 1351459
異議申立番号 異議2019-700045  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-24 
確定日 2019-05-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6362067号発明「ポリマーナノファイバシート及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6362067号の請求項1、4?6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6362067号(以下「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成26年1月31日の出願であって、平成30年7月6日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報発行 平成30年7月25日)、その後、請求項1、4?6に係る特許について、平成31年1月24日に特許異議申立人佐藤昭憲(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件特許発明
本件特許の請求項1、4?6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、4?6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
ポリマーナノファイバ(ただし、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含有するポリマーナノファイバを除く)が積層され、かつ三次元的に絡み合ってなるポリマーナノファイバシートであって、
前記ポリマーナノファイバの少なくとも一部が、架橋性部位と、非架橋性部位と、からなる架橋部で架橋され、
前記架橋部が、分子量100乃至3000の低分子エポキシ化合物から形成され、前記非架橋性部位が、化学的に架橋してない前記低分子エポキシ化合物を有することを特徴とするポリマーナノファイバシート。
【請求項4】
前記ポリマーナノファイバを構成する繰り返し構造にイミド構造が含まれることを特徴とする請求項1に記載のポリマーナノファイバシート。
【請求項5】
前記ポリマーナノファイバがポリアミドイミドからなることを特徴とする請求項4に記載のポリマーナノファイバシート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマーナノファイバシートの製造方法であって、
分子量100乃至3000の低分子エポキシ化合物を含有したポリマー溶液(ただし、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含有する溶液を除く)を紡糸して、ポリマーナノファイバを有するシートを形成するシート形成工程と、
加熱処理によって前記シートを構成するポリマーナノファイバの少なくとも一部を架橋させる架橋工程と、を有することを特徴とするポリマーナノファイバシートの製造方法。

3.申立理由の概要
申立人は、甲第1号証?甲第16号証(以下「甲1」?「甲16」という。)を提出し、以下の理由を申立てている。

[理由1] 本件発明1及び6は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反するものであり、本件発明1及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
[理由2] 本件発明1及び6は、甲2に記載された発明であり、または、本件発明1、4及び6は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1、4及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
[理由3] 本件発明1及び6は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、または、本件発明1、4?6は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1、4?6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲1:特願2013-119208号(特開2014-234581号)
甲2:特開2010-196175号公報
甲3:特開2008-297387号公報
甲4:特表2010-526941号公報
甲5:特開2011-88349号公報
甲6:特開2011-184809号公報
甲7:特開2014-1477号公報
甲8:特開2008-156766号公報
甲9:特開2009-24290号公報
甲10:特開2011-183254号公報
甲11:特表2010-531394号公報
甲12:特開2008-285793号公報
甲13:松崎啓他1名訳、「化学繊維II」、丸善株式会社、昭和46年1月20日発行、321頁
甲14:特開2007-56440号公報
甲15:特開2008-682号公報
甲16:特開2008-221074号公報

4.当審の判断
(1)理由1(特許法第29条の2)について
ア 甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書」という。特に、段落【0018】、【0043】?【0046】参照。)には、以下の「先願発明」が記載されている。
「ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点:165℃)に、ポリベンゾイミダゾール(PBI、佐藤ライト工業株式会社製、PBI DOPE S26)を加えた溶解溶液に対して、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDE、沸点:266℃)を溶解させ、紡糸溶液を調製し、この紡糸溶液を静電紡糸により繊維化して、捕集体であるドラム上に直接集積させて繊維ウエブを形成し、この繊維ウエブに熱処理を実施して、エポキシ化合物である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが、ポリベンゾイミダゾールと反応してポリマー鎖を架橋して得た、不織布。」
イ 本件発明1と先願発明を対比すると、エポキシ化合物について、本件発明1が「ポリマーナノファイバの少なくとも一部が、架橋性部位と、非架橋性部位と、からなる架橋部で架橋され、前記架橋部が、分子量100乃至3000の低分子エポキシ化合物から形成され」るのに対し、先願発明は「エポキシ化合物である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが、ポリベンゾイミダゾールと反応してポリマー鎖を架橋」するものである点(以下「相違点1」という。)で少なくとも相違する。
ウ この相違点1について検討する。
本件発明1の「ポリマーナノファイバの少なくとも一部が、架橋性部位と、非架橋性部位と、からなる架橋部で架橋され」るとの事項は、本件特許明細書に「ポリマーナノファイバ2同士を連結するための架橋部3」(段落【0014】)と記載されることから、ポリマーナノファイバとポリマーナノファイバの間が架橋部で架橋されることを意味するものと解され、本件発明1は、この「架橋部」により、「ポリマーナノファイバ間に架橋部が適度に設けられるため、ポリマーナノファイバ間の剥離耐性や機械強度が高く、擦れ等の外的要因によるポリマーナノファイバの剥離・脱落が起こりにくくなる。」(同じく段落【0017】)との効果を奏するものである。
一方、先願発明の「エポキシ化合物である1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル」は、「ポリベンゾイミダゾールと反応してポリマー鎖を架橋」するものであって、静電紡糸により繊維化した繊維と繊維の間を、エポキシ化合物で架橋させるものではない。また、先願明細書に、エポキシ化合物により、静電紡糸により繊維化した繊維と繊維の間を架橋させることについて記載されておらず、このことが技術常識であるともいえない。
そうすると、本件発明1と先願発明とは、ともにエポキシ化合物を含むものではあるものの、架橋する対象で相違するから、上記相違点1は単なる設計上の微差とはいえず、本件発明1は先願発明と同一であるとはいえない。
エ また、本件発明6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件発明1は上記のように先願発明と同一ではないから、本件発明6も先願発明と同一ではない。
オ よって、本件発明1及び6は、特許法第29条の2の規定に違反するものではないから、本件発明1及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

(2)甲2に基づく理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(特許法第29条第2項)について
ア 甲2(特に、請求項1、請求項2、請求項4、段落【0017】、【0019】、【0030】?【0032】)には、以下の「甲2発明」が記載されている。
「ポリグルタミン酸ナトリウムと、オキサゾリン基含有高分子架橋剤と、エポキシ基含有高分子架橋剤を用いて、ポリグルタミン酸溶液を調整し、静電紡糸によりナノファイバーを形成し、このナノファイバーを加熱してポリグルタミン酸繊維を熱架橋処理することにより得られたポリグルタミン酸繊維架橋体であって、エポキシ基含有高分子架橋剤はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルであり、加熱処理を施すことによりポリグルタミン酸ナトリウムと架橋させたものである、ポリグルタミン酸繊維架橋体。」
イ 本件発明1と甲2発明を対比すると、エポキシ化合物について、本件発明1が「ポリマーナノファイバの少なくとも一部が、架橋性部位と、非架橋性部位と、からなる架橋部で架橋され、前記架橋部が、分子量100乃至3000の低分子エポキシ化合物から形成され、前記非架橋性部位が、化学的に架橋してない前記低分子エポキシ化合物を有する」のに対し、甲2発明は「エポキシ基含有高分子架橋剤はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルであり、加熱処理を施すことによりポリグルタミン酸ナトリウムと架橋させたもの」である点(以下「相違点2」という。)で少なくとも相違する。
ウ 上記相違点2について検討する。
本件発明1の「架橋部」のうち「非架橋性部位」が、化学的に架橋してない低分子エポキシ化合物を有するのに対し、甲2発明の「エポキシ基含有高分子架橋剤」は、ポリグルタミン酸繊維とポリグルタミン酸繊維との間で架橋し得るものではあるが、「架橋性部位」と化学的に架橋してない低分子エポキシ化合物を有する「非架橋性部位」とを有するとはいえないから、上記相違点2は実質的な相違点である。
そして、本件発明1の「架橋部」は、上記「(1)ウ」で述べたように、「ポリマーナノファイバ間の剥離耐性や機械強度が高く、擦れ等の外的要因によるポリマーナノファイバの剥離・脱落が起こりにくくなる」との効果を奏するものであるところ、申立人が提出したいずれの証拠にも、ポリマーナノファイバ間を、「架橋性部位」と化学的に架橋してない低分子エポキシ化合物を有する「非架橋性部位」とを有する「架橋部」で架橋することにより、このような効果を奏することについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1は甲2発明と相違点2で少なくとも相違するから、本件発明1は甲2発明ではなく、また、相違点2に係る本件発明1の構成を、甲2発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ また、本件発明6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件発明1は上記のように甲2発明ではなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明6も甲2発明ではなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ よって、本件発明1及び6は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定に違反するものでもないから、本件発明1及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

(3)甲4に基づく理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(特許法第29条第2項)について
ア 甲4(特に、段落【0038】、【0040】、【0049】、【0052】、【0055】)には、以下の「甲4発明」が記載されている。
「繊維の直径はナノメートルの範囲であって、繊維はポリマー繊維であり、繊維は紡糸溶液を電界紡糸により形成されるものであり、電界紡糸の前に、架橋剤が紡糸溶液に添加され、架橋剤の添加は、電界紡糸繊維を強化するのに役立ち得るものであり、電界紡糸によって作製された繊維は熱処理されて膜が形成され、架橋剤は1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである、電界紡糸繊維により形成された膜。」
イ 本件発明1と甲4発明を対比すると、エポキシ化合物について、本件発明1が「ポリマーナノファイバの少なくとも一部が、架橋性部位と、非架橋性部位と、からなる架橋部で架橋され、前記架橋部が、分子量100乃至3000の低分子エポキシ化合物から形成され」るのに対し、甲4発明は「架橋剤は1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル」であり、「電界紡糸の前に、架橋剤が紡糸溶液に添加され、架橋剤の添加は、電界紡糸繊維を強化するのに役立ち得るもの」である点(以下「相違点3」という。)で少なくとも相違する。
ウ 上記相違点3について検討する。
甲4発明の「架橋剤」は、「電界紡糸の前に、架橋剤が紡糸溶液に添加され、電界紡糸繊維を強化するのに役立ち得るもの」であることからすると、電界紡糸されたポリマー繊維中のポリマーとポリマーを架橋するものであり、本件発明1のように、ポリマーナノファイバとポリマーナノファイバの間を架橋するものとはいえないから、上記相違点3は実質的な相違点である。
そして、本件発明1の「架橋部」は、上記「(1)ウ」で述べたように、ポリマーナノファイバ間を架橋することにより、「ポリマーナノファイバ間の剥離耐性や機械強度が高く、擦れ等の外的要因によるポリマーナノファイバの剥離・脱落が起こりにくくなる」との効果を奏するものであるところ、申立人が提出したいずれの証拠にも、ポリマーナノファイバ間を架橋することにより、このような効果を奏する「架橋部」を備えることについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1は甲4発明と相違点3で少なくとも相違するから、本件発明1は甲4発明ではなく、また、相違点3に係る本件発明1の構成を、甲4発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ また、本件発明4?6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件発明1は上記のように甲4発明ではなく、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4及び6も甲4発明ではなく、本件発明4?6は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ よって、本件発明1、4及び6は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明1、4?6は、特許法第29条第2項の規定に違反するものでもないから、本件発明1、4?6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

5.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、4?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、4?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-05-10 
出願番号 特願2014-16616(P2014-16616)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (D04H)
P 1 652・ 161- Y (D04H)
P 1 652・ 113- Y (D04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 相田 元  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 井上 茂夫
佐々木 正章
登録日 2018-07-06 
登録番号 特許第6362067号(P6362067)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 ポリマーナノファイバシート及びその製造方法  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 山口 芳広  
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