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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B22C
管理番号 1351463
異議申立番号 異議2019-700065  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-30 
確定日 2019-05-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6367451号発明「焼結人工砂」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6367451号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6367451号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成29年11月10日に出願され、平成30年7月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年1月30日に特許異議申立人 佐藤 彰芳(以下、「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6367451号の請求項1?6の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含み、前記原料中の夾雑物として含有される低融点組成とを含有した焼結人工砂において、
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、初晶としてムライト結晶が晶出する組成において、前記低融点組成としてのK_(2)Oが0.20%以下であり、
前記ムライト結晶の間に結晶の重なり合いの隙間が存する結晶間構造を備え、
かさ比1.6g/cm^(3)未満、アスペクト比が0.85以上であり、
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において液相線よりマイナス50℃以内の耐火度を示すものであることを特徴とする焼結人工砂。
【請求項2】
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、Al_(2)O_(3)が40%?60%の組成であることを特徴とする請求項1記載の焼結人工砂。
【請求項3】
かさ比重が1.515g/cm^(3)以下、粒子強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結人工砂。
【請求項4】
請求項1?3の何れかに記載の焼結人工砂を含有する鋳物砂。
【請求項5】
請求項1?3の何れかに記載の焼結人工砂を含有する鋳型。
【請求項6】
Al_(2)O_(3)とSiO_(2)と夾雑物として含有される低融点組成とを含む原料を焼結させることにより焼結人工砂を製造する方法において、
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、前記低融点組成の量を制御することで、請求項1?3の何れかに記載の焼結人工砂を得ることを特徴とする焼結人工砂の製造方法。」

3 申立理由の概要
(1)申立理由1(明確性要件違反)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1に記載の「アスペクト比」及び「かさ比」並びに請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」は不明瞭であるから、本件発明1及び本件発明6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、本件発明1及び本件発明6に係る特許は、取り消されるべきものである旨主張する。

(2)申立理由2(サポート要件違反)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、本件発明6に係る特許は、発明の詳細な説明に記載したものではないため、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、本件発明6に係る特許は、取り消されるべきものである旨主張する。

(3)申立理由3(実施可能要件違反)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1に記載の「アスペクト比」について、明細書の発明の詳細な説明には、明確かつ十分に記載されておらず、発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。

(4)申立理由4(進歩性要件違反)
特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証?甲第10号証を提出し、又は、主たる証拠として甲第9号証及び従たる証拠として甲第1号証?甲第8号証及び甲第10号証を提出し、本件発明1?6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1?6に係る特許は、取り消すべきものである旨主張する。

[証拠]
甲第1号証:特公平4-40095号公報
甲第2号証:特許第5567353号公報
甲第3号証:「アルミナ系耐火物」-現状と今後-、岡山セラミックス技術振興財団、2007年3月1日、第3頁
甲第4号証:新素材シリーズ「ムライト」、株式会社内田老鶴圃、昭和60年11月20日、第126?129頁
甲第5号証の1:エム・シー砿産(株)新井茂樹、外1名、「セラビーズの特性と新たなる展開」、平成3年6月6日発表、第1?20頁
甲第5号証の2:エム・シー砿産(株)北亦司、外1名、「“セラビーズの特性と新たなる展開”から10年を経て」、平成13年11月8日発表、第1?16頁
甲第6号証:特開2003-251434号公報
甲第7号証:特開2013-75313号公報
甲第8号証:伊藤忠セラテック 脇田健二、外1名、「鋳物砂の耐火度と鋳型としての耐熱性の関係」、第139回全国講演大会講演概要集、社団法人日本鋳造工学会、平成13年10月19日、第70頁
甲第9号証:エム・シー砿産(株)蜂谷一郎、外2名、「ムライト製人工球状粒子の鋳物砂への適用」、第64巻、第8号、平成4年8月25日、第562?567頁
甲第10号証:「鋳鉄工場への人工砂導入のための指針と事例」、社団法人日本鋳造協会 技術部会 人工砂委員会、2012年5月18日、第13?14頁及び第73?76頁

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証の記載
ア 甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同)。

(ア)第1欄第14?17行
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム、銅合金等の鋳造用に使われる鋳物砂を工業的に合成し、製造する方法に関するものである。」

(イ)第3欄第20?36行
「先ず、原料としては、粘土鉱物(耐火粘土、クレー、カオリン)、珪砂、バン土ケツ岩、ボーキサイト、シリマナイト鉱物、水酸化アルミニウム、か焼アルミナ等を用い、これらを相互に組み合せ、鋳物砂として使用可能な化学組成(Al_(2)O_(3)20?70重量%、SiO_(2):80?30重量%、不純物としてFe_(2)O_(3)、TiO_(2)、K_(2)O、Na_(2)O、CaO、MgO等の合計が5重量%以下)となるように配合して、原料組成物を調整する。
なお、かかる原料組成物において、Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを上記の如き組成割合とした理由は、そのような組成範囲において、純粋なアルミナ-シリカ系であつて、液相生成温度は1600℃弱となり、加工し易く、かつまたその熱膨張率(常温から1000℃までの)が、珪砂のみ或いはアルミナのみの場合に比して、大幅に低下し、鋳型としての寸法精度が著しく向上するからである。」

(ウ)第7欄第24?30行
「かくして得られた焼成球状粒子の物理的特性(0.212?0.300mm粒子について)を表4に、またその化学分析値を表5に示した。
なお、ここで、吸水率、見掛比重、嵩比重及び見掛気孔率の測定は、何れも、JIS R2205-74「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率及び比重の測定方法」に準じて、行なつた。」

(エ)表4及び表5


(オ)第11欄第24行?第12欄第5行
「〔発明の効果〕
以上の説明より明らかなように、本発明に従えば、高アルミナ質粉末の配合により、球状粒子の焼成に際して、その融着が有効に阻止され得、従つて高アルミナ質粉末との混合状態で造粒粒子を高温度で焼成することにより、各粒子は相互に融着することなく、充分に焼結されるため、焼成粒子は緻密なものとなつて、粒子強度は高くなり、これによつて鋳物砂の繰り返し使用が可能となる利点が生じる。」

イ 上記アでの記載から,甲第1号証には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
(ア)上記ア(ア)(イ)及び(オ)から、Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含み、前記原料中の不純物としてK_(2)Oを含有した焼結された鋳物砂が記載されている。

(イ)上記ア(エ)から、Al_(2)O_(3)の組成が58.02重量%、SiO_(2)の組成が39.67重量%であることが記載されている。

(ウ)上記ア(エ)から、K_(2)Oの組成が0.13重量%であることが記載されている。

(エ)上記ア(ウ)から、鋳物砂の粒子が球状であることが記載されている。

ウ 上記イでの記載からみて、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。
「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含み、前記原料中の不純物としてのK_(2)Oを含有した焼結された鋳物砂において、
Al_(2)O_(3)の組成が58.02重量%、SiO_(2)の組成が39.67重量%であり、
K_(2)Oの組成が0.13重量%であり、
鋳物砂の粒子が球状である鋳物砂。」

(2)甲第9号証の記載
ア 甲第9号証には、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与)。

(ア)第562頁2.1
「2.1 製造工程
ムライト製人工球状粒子(ナイガイセラビーズ60.以後セラビーズ)の製造工程を図1に示す.・・・焼結させてセラミックス粒(焼成品)とする.・・・」

(イ)第563頁表2、表3
表2には、Al_(2)O_(3) の組成が60.83%、SiO_(2)の組成が36.50%であることが記載されている。
表3には、セラビーズ#750の粉体嵩密度(※1 粉体嵩密度は振動嵩密度測定器で3分間振動後に測定)が1.69g/cm^(3) であり、耐火度が1825℃であることが記載されている。

イ 上記アでの記載から,甲第9号証には,次の技術的事項が記載されている。
(ア)上記ア(ア)及び(イ)から、Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含む、焼結されたムライト製人工球状粒子が記載されている。

(イ)上記ア(イ)から、Al_(2)O_(3) の組成が60.83%、SiO_(2)の組成が36.50%であることが記載されている。

(ウ)上記ア(イ)から、粉体嵩密度が1.69g/cm^(3)であることが記載されている。

(エ)上記ア(イ)から、耐火度が1825℃であることが記載されている。

ウ 上記イでの記載からみて、甲第9号証には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。
「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含み、焼結されたムライト製人工球状粒子において、
Al_(2)O_(3) の組成が60.83%、SiO_(2)の組成が36.50%であり、
粉体嵩密度が1.69g/cm^(3) であり、
耐火度が1825℃である
ムライト製人工球状粒子。」

(3)その他の甲各号証の記載
ア 甲第2号証には、「純粋なムライト(3Al_(2)O_(3)・2SiO_(2) )は、その融点が1850℃と、高融点であり、・・・その化学量論組成は、Al_(2)O_(3)が約70重量%、SiO_(2) が約30重量%の化学組成である。・・・更に、粒子中には、Fe_(2)O_(3)、TiO_(2)、K_(2)O、Na_(2)O、CaO、MgO等の不可避の不純物成分が存在することにより、液相生成温度は更に低下することとなり、このため、ムライトが持つ高融点特性を著しく損なうものであった。」(段落【0010】参照)と記載されており、したがって、「Al_(2)O_(3)とSiO_(2) とを原料として含むムライトは、前記原料中の不純物として含有されるK_(2)O、Na_(2)O等の存在によって、ムライトが持つ高融点特性を著しく損なう」ことが開示されていると認められる。

イ 甲第3号証には、Al_(2)O_(3)-SiO_(2) 系相平衡状態図から、初晶としてムライト結晶が晶出する組成としては、Al_(2)O_(3)の割合が、約70%以下である旨が示唆されている(第3頁図1-1(A)参照)。

ウ 甲第4号証から、Al_(2)O_(3)/SiO_(2) 組成(%)が47/49、55/41、60/38である市販ムライトセラミックスにおいて、ムライト針状結晶の間に結晶の重なり合いの隙間が存する結晶間構造が存在していることが読み取れる(第127頁Table8-4及び第129頁Fig8-5参照)。

エ 甲第5号証の1には、セラビーズの特性として、Al_(2)O_(3):61%、SiO_(2) :37%の主な化学成分を有し、粉体嵩密度(重装):1.69g/cm^(3) 、耐火度:SK37(1825℃)である旨が記載されている(第5頁表2参照)。
また、新砂のセラビーズの試験結果として、Al_(2)O_(3):60.64%及びSiO_(2) :35.88%と共に、K_(2)Oの含有量が0.08%の組成を有しており、その粒物性として、粉体嵩密度(軽装)が1.58g/cm^(3)であり、粉体嵩密度(重装)が1.76g/cm^(3)である旨が記載されている(第8頁表4-1及び表4-2参照)。
さらに、元砂の特性として、Al_(2)O_(3):61.23%及びSiO_(2) :35.95%と共に、K_(2)Oの含有量が0.03%の組成を有しており、その粒物性として、粉体嵩密度(軽装)が1.54g/cm^(3)であり、粉体嵩密度(重装)が1.68g/cm^(3)である旨が記載されている(第13頁表5-1及び表5-3参照)

オ 甲第5号証の2には、上記甲第5号証の1が、平成3年6月6日のJACT春季大会において講演発表されたものである旨が記載されている(第1頁第2?3行参照)。

カ 甲第6号証には、「アルミナ40?90重量%、シリカ60?10重量%の合成ムライトを主とする球伏物からな」る「鋳型用砂」について、「ほぼ球形であることから、粘結剤の量をより少なくすることができる」ことが記載されている(【請求項1】及び段落【0055】参照)。

キ 甲第7号証には、「Al_(2)O_(3)の40重量%超、70重量%未満とSiO_(2) の30重量%超、60重量%未満を、主成分として含み、・・・ムライト結晶から構成された耐火性の多孔質球状粒子」について、「ムライト結晶から実質的に構成される粒子は、SK36(1790℃)?SK38(1850℃)を示す」ことが記載されている(段落【0015】及び【0016】参照)。

ク 甲第8号証には、セラミックサンド(セラビーズ)のゼーゲルコーン耐火度がSK38(2,123K)である旨が記載されている(第70頁表1参照)。

ケ 甲第10号証には、「造粒焼結法にて製造された球形のムライト系人工砂であるナイガイセラビーズ60が、Al_(2)O_(3):60.5%、SiO_(2) :36.3%を含有すると共に、K_(2)Oの含有量が0.2%である組成を有しており、その粗充填かさ密度が1.5g/cm^(3)であり、耐火度がSK37(1,825℃)である旨が記載されている(第76頁表8.3.1b参照)。

5 当審の判断
(1)申立理由1(明確性要件違反)
ア 判断
(ア)本件発明1について
請求項1に記載の「アスペクト比」について、本件特許明細書の段落【0023】には「アスペクト比が0.85以上の球状」と記載されていること、表3及び表4(b)おいて、粒子のSEM像とともに記載された各粒子のアスペクト比の具体的数値、そして、本件特許明細書の段落【0007】?【0011】において引用する、特許文献4(特開2004-202577号公報)や特許文献5(特許第4877923号公報)等で「球形度」について記載されていることを勘案すれば、請求項1に記載の「アスペクト比」が球状粒子の短径を長径で除したものを指すことは明らかであるから、本件発明1で特定された「アスペクト比」に係る事項は明確に理解できる。
また、請求項1に記載の「かさ比」については、請求項1で「かさ比」をを「1.6g/cm^(3)未満」と特定した点について、本件特許明細書の段落【0021】には、「・・・本発明の焼結人工砂にあっては、結晶の重なり合いの隙間が存する結晶間構造を備えているため、1.6g/cm^(3)未満のかさ比重に抑えることができる。・・・」と記載されていることから、請求項1に記載の「かさ比」は本件特許明細書の「かさ比重」を指していることは明らかである。そして、本件特許明細書の段落【0062】には、「(かさ比重の測定方法)かさ比重の測定は、中小企業事業団が平成11年5月に発行した「鋳型および鋳型材料に関する試験方法」に規定される「S-10鋳物砂の充填性(かさ比重)試験法」に準じて測定した。異なる点は投入容器であり、これは「S-5鋳物砂の流動度試験法」に定められたフォードカップ♯4を用いた。つまり、かさ比重と流動度の同時測定である。かさ比重にあっては、空隙の構造とは無関係に結晶構造由来の隙間と焼結時の空隙の両者を含む空隙が多いほど、かさ比重が小さくなる傾向を示す。」と、かさ比の具体的な測定方法が記載されているから、本件発明1で特定された「かさ比」に係る事項は明確に理解できる。
以上より、本件発明1は明確である。

(イ)本件発明6について
請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」について、本件特許明細書の段落【0015】には「本発明は、Al_(2)O_(3)-SiO_(2)と、原料中の夾雑物として含有される低融点組成とを含有した焼結人工砂の改良に関するものであり、前記低融点組成の種類と量を制御することで、前記焼結人工砂が、Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において液相線よりマイナス50℃以内の耐火度を示すように構成した焼結人工砂を提供することによって上記の課題を解決するものである。」と、同段落【0017】には「本発明において、低融点組成とは、鋳込まれる金属の鋳込み温度(例えば鋳鋼であれば1550℃)よりも低い融点を有する組成を言う。この低融点組成は、例えば、原料中に表1に示したような塩基性酸化物や弱塩基性酸化物として存在し、具体的にはNa_(2)O、K_(2)O、FeOを例示することができる。」と、低融点組成とは具体的に何を指すか、また、「融点が高く鉄溶湯と反応し難い機能を有する焼結人工砂の提供を図る」という段落【0013】に記載された課題を解決するため、具体的にどのように制御するのかについて記載されており、本件特許明細書を参酌すれば、本件発明6で特定された「低融点組成の量を制御する」に係る事項は明確に理解できる。
したがって、本件発明6は明確である。

イ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、特許異議申立書において、明確性要件違反について、「・・・本件特許明細書には、・・・アスペクト比について、何等の特別な定義も、技術的説明も為されていない・・・本件特許の請求項1の構成・・・「アスペクト比が0.85以上であり」との文言が、何を意味しているのか、当業者にとって、技術的に全く理解することが出来ず、不明瞭であると言わざるを得ない」と主張している(第10頁下から10行目?第11頁第6行)。
しかしながら、上記ア(ア)のとおり、請求項1に記載の「アスペクト比」は、球状粒子の短径を長径で除したものを指すことは明らかであるから、本件特許明細書に定義や説明がないからといって不明確であるとまでいえない。また、長径を短径で除して上限を画するのと、短径を長径で除して下限を画するのとでは、明確性の観点から実質的な相違は認められない。

(イ)特許異議申立人は、特許異議申立書において、明確性要件違反について、「この「かさ比」が、技術的に不明確な表現であって、不適切なものであることは、極めて明らかなところである。なお、本件特許明細書の記載からして、それが、「かさ比重」の誤記であるとしても、それは正しい表現に訂正されるべきである。」と主張している(第11頁下から3行目?第12頁第1行)。
しかしながら、上記ア(ア)のとおり、本件特許明細書において、請求項1に記載の「かさ比」の具体的な測定方法が記載されているから、不明確であるとまではいえない。また、請求項1に記載の「かさ比」の単位が「g/cm^(3)」と特定されていることからしても、「かさ比」が「かさ比重」を指していることは明らかである。

(ウ)特許異議申立人は、特許異議申立書において、明確性要件違反について、「本件特許の請求項6には、・・・Al_(2)O _(3) -SiO_(2)系相平衡状態図において、「低融点組成の量を制御する」ことにより、請求項1?3にて規定される特性を有する焼結人工砂が得られるとされているのであるが、かかる低融点組成の量をどのように制御すれば、目的とする特性(かさ比重、アスペクト比、耐火度)を実現することが出来るのか、何等明らかにされておらず、この点において、請求項6は不明確と言わざるを得ない」と主張している(第13頁iii)の第1?6行目)。
しかしながら、上記ア(イ)のとおり、請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」における低融点組成とは具体的に何を指すか、また、どのような課題を解決するため具体的にどのように制御するのかについて、本件特許明細書の段落【0013】、【0015】、【0017】に記載されており、本件発明6で特定された「低融点組成の量を制御する」に係る事項は明確に理解できるから、本件発明6が不明確であるとまではいえない。

以上より、特許異議申立人の主張は採用できない。

ウ まとめ
本件発明1及び本件発明6は明確であるから、本件発明1及び本件発明6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。

(2)申立理由2(サポート要件違反)
上記(1)ア(イ)のとおり、請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」における低融点組成とは具体的に何を指すか、また、どのような課題を解決するため具体的にどのように制御するのかについて、本件特許明細書の段落【0013】、【0015】、【0017】に記載されており、本件発明6で特定された「低融点組成の量を制御する」に係る事項は明確に理解でき、本件発明6の課題と構成とは対応付けて理解できるので、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、本件発明6が規定されているとまではいえない。

特許異議申立人は、特許異議申立書において、サポート要件違反について、「本件特許明細書の【0017】には、低融点組成として、Na_(2)O、K_(2)O、FeOが例示されているのであるが、それらの低融点組成をどのように制御すれば、本件特許発明にて目的とする特性を有する焼結人工砂が製造され得るのか、請求項6は、何等、具体的でない。」と主張している(第13頁iii)の第7?10行目)。
しかしながら、上記のとおり、請求項6に記載の「低融点組成の量を制御する」という事項は、本件特許明細書に記載されており、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるから、本件発明6に係る特許が、特許法第36条第1号の規定に違反してされたものであるということはできない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

以上より、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。

(3)申立理由3(実施可能要件違反)
上記(1)ア(ア)のとおり、請求項1に記載の「アスペクト比」が球状粒子の短径を長径で除したものを指すことは明らかであるから、本件発明1で特定されたアスペクト比に係る事項は明確に理解できる。

したがって、発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。

(4)申立理由4(進歩性要件違反)
ア 主たる証拠を甲第1号証としたときの理由
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明1における「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)」、「原料中の不純物としてのK_(2)O」、「焼結された鋳物砂」は、それぞれ、本件発明1における「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)」、「原料中の夾雑物として含有される低融点組成」、「焼結人工砂」に相当する。

引用発明1の「K_(2)Oの組成が0.13重量%」であることは、本件発明1の「低融点組成としてのK_(2)Oが0.20%以下」であることの範囲に含まれている。

引用発明1における「Al_(2)O_(3)の組成が58.02重量%、SiO_(2)の組成が39.67重量%」であることは、技術常識(上記4(3)イ参照)から、本件発明1における「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、初晶としてムライト結晶が晶出する組成」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1との間には、次の一致点1、相違点1?4があるといえる。

(一致点1)
「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含み、前記原料中の夾雑物として含有される低融点組成とを含有した焼結人工砂において、
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、初晶としてムライト結晶が晶出する組成において、前記低融点組成としてのK_(2)Oが0.13重量%である焼結人工砂。」

(相違点)
(相違点1)
本件発明1の焼結人工砂は、「ムライト結晶の間に結晶の重なり合いの隙間が存する結晶間構造を備え」るのに対して、引用発明1の鋳物砂がかかる結晶間構造を備えるかどうか、明らかでない点。

(相違点2)
本件発明1の焼結人工砂は、「かさ比1.6g/cm^(3)未満」であるのに対して、引用発明1の鋳物砂は、嵩比重2.80であるが、本件特許明細書の段落【0062】に記載された「かさ比重の測定方法」を用いて求めた数値ではない点。

(相違点3)
本件発明1の焼結人工砂は、「アスペクト比が0.85以上」であるのに対して、引用発明1の鋳物砂のアスペクト比は不明である点。

(相違点4)
本件発明1の焼結人工砂は、「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において液相線よりマイナス50℃以内の耐火度を示す」のに対して、引用発明1の鋳物砂の耐火度は不明である点。

(イ)相違点についての判断
最初に相違点2について検討する。甲第1号証の鋳物砂の嵩比重の測定方法は、本件明細書段落【0062】で示されたような鋳物砂のかさ比重の測定方法と関連するものではなく、甲第1号証には、本件明細書上記段落で示されたような鋳物砂のかさ比重の数値について何ら記載されておらず、甲第1号証には相違点2に係る構成について記載や示唆がされていない上に、甲第2号証?甲第10号証のいずれを参照しても甲第1号証と同一の組成からなる鋳物砂のかさ比重について記載や示唆がされていないことから、引用発明1のかさ比を1.6g/cm^(3)未満とするための根拠を欠く。

また、相違点4について検討すると、甲第1号証には、耐火度について何ら記載されておらず、甲第1号証には相違点4に係る構成について記載や示唆がされていない上に、甲第2号証?甲第10号証のいずれを参照しても甲第1号証と同一の組成からなる鋳物砂の耐火度について記載や示唆がされていないことから、引用発明1の耐火度を液相線よりマイナス50℃以内とするための根拠が不明である。

したがって、相違点1や相違点3について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び甲第2号証?甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(ウ)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1に対して、さらに、「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、Al_(2)O_(3)が40%?60%の組成である」等という技術的事項を追加したものである。したがって、上記(イ)に示した理由と同様の理由により、本件発明2?6は、引用発明及び甲第2号証?甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(エ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「本件特許発明1において採用する「かさ比重」が、先に検討せるように、当業者に周知の「ゆるみ(粗充填)かさ密度又は軽装かさ密度」に相当するものであることは、明らかなところであるところ、そのような「ゆるみ(粗充填)かさ密度又は軽装かさ密度」が1.6g/cm^(3)未満である焼結人工砂は、本件特許の出願当時、甲第5号証の1、甲第9号証、甲第10号証より明らかな如く、市販の焼結人工砂である「セラビーズ」が有する周知の特性値に過ぎないものであったことは、疑う余地のないところである。」(第25頁第19?25行)と主張しているが、甲第5号証の1、甲第9号証、甲第10号証のいずれも、甲第1号証と同一の組成からなる鋳物砂を対象としたかさ比重について記載や示唆がされていないこと、セラビーズと同様に呼ばれていることをもって同一の組成を有するとみなすことはできないことから、上記主張には理由がない。

b 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第7号証には、Al_(2)O_(3)の40重量%超70重量%未満と、SiO_(2)の30重量%超60重量%未満を主成分として含む化学組成を有するムライト系の焼結人工粒子(砂)が、SK36(1790℃)?SK38(1850℃)の耐火度を示すことが明らかにされており、また甲第8号証には、球状の焼結人工砂であるセラミックサンド(セラビーズ)が、SK38(2123K、即ち1850℃)であることが明らかにされているところから、それら甲号証に開示の数値を用いて、本件特許発明1の構成Fにおける耐火度を算出すると、以下の通りとなる。
すなわち、甲第7号証においては、Al_(2)O_(3)の補正濃度(X)を限りなく70重量%に近い数値として、69 %を採用する一方、甲第8号証のセラビーズのAl_(2)O_(3)の補正濃度(X)としては、甲第9号証に開示のセラビーズ組成(Al_(2)O_(3):60.83%、SiO_(2):36.50%)から求めた補正濃度である約62%を採用して、それぞれ、本件特許明細書の【0082】に示される(1)式から初晶ムライトの液相線温度(Y1)を計算すると、それぞれ、約1886℃、及び1881℃となり、そしてその液相線温度(Y1)から、甲第7号証及び甲第8号証に開示の焼結人工砂の耐火度:SK38(1850℃)を減ずると、それぞれ、-36℃及び-31℃となる。
そうすると、それら甲第7号証及び甲第8号証に開示の、ゼーゲルコーン耐火度がSK38(1850℃)であるムライト系焼結人工砂は、何れも、本件特許発明1における構成Fを満足するものであることは、疑う余地のないところである。」と主張している(第27頁第22行?第28頁第13行)。
しかしながら、甲第7号証、甲第8号証のいずれも、甲第1号証と同一の組成からなる鋳物砂を対象としたかさ比重について記載や示唆がされていないこと、また、別々の証拠に開示され、必ずしも同一でない焼結人工砂について液相線と耐火度を比較するのは不適切であることから、上記主張には理由がない。

c 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第2号証の【0010】?【0012】には、K_(2)O、Na_(2)O等の低融点組成の存在によって、耐熱特性や高融点特性が悪化して、高温の溶湯と化学的な反応を惹起することにより、焼着欠陥が生じることが指摘されているのであり、また甲第5号証の1には、セラビーズ(焼結人工砂)は、耐火度が高く、鋳鉄(鋳鋼)製品の鋳造に適応し得るものであることが明らかにされており(甲第5号証の2にも、その事実が指摘されている)、更に甲第9号証にも、セラビーズ(焼結人工砂)は、耐火度がジルコンサンドと略同等であり、ジルコンサンドを使用している鋳鋼品の代表的なアイテムにおける焼着対策砂として、特に問題がないことが明らかにされており(同号証第566頁右欄第10?14行参照)、加えて、甲第10号証においても、造粒焼結法にて得られる人工砂であるセラビーズを含む球状の人工砂は、その成分効果として、シリカ分が少ないことにより、融着欠陥が低減され、且つ熱的効果として、耐熱性が高いために、焼付き欠陥が低減される等の特徴乃至は効果が発揮され得るとされているのであって、そこには、本件特許発明1における、耐火度(融点)を高めて、鉄系溶湯と反応し難い機能を発揮させ、更に製品付着砂の発生量を減少させると共に、焼付き欠陥を防止し、廃棄される鋳造製品を少なくさせることが出来ることが、如実に開示乃至は示唆されているのである。」と主張している(第28頁第18行?第29頁第6行)。
しかしながら、引用発明1と同等の組成において耐火度を液相線よりマイナス50℃以内とすることを示唆する文献も見当たらない以上、引用発明1の耐火度を液相線よりマイナス50℃以内と試みるための動機に欠けるといわざるを得ない。したがって、上記主張には理由がない。

イ 主たる証拠を甲第9号証としたときの理由
(ア)本件発明1と引用発明2との対比
本件発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明2における「焼結されたムライト製人工球状粒子」は、本件発明1における「焼結人工砂」及び「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、初晶としてムライト結晶が晶出する組成」であることに相当する。

したがって、本件発明1と引用発明2との間には、次の一致点2、相違点5?9があるといえる。

(一致点2)
「Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを原料として含む、焼結人工砂において、
Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、初晶としてムライト結晶が晶出する組成を有する焼結人工砂。」

(相違点)
(相違点5)
本件発明1の焼結人工砂は、「原料中の夾雑物として含有される低融点組成とを含有」し、「低融点組成としてのK_(2)Oが0.20%以下で」あるのに対して、引用発明2のムライト製人工球状粒子が低融点組成を含有するかどうか、明らかでない点。

(相違点6)
本件発明1の焼結人工砂は、「ムライト結晶の間に結晶の重なり合いの隙間が存する結晶間構造を備え」るのに対して、引用発明2のムライト製人工球状粒子がかかる構造を備えるかどうか、明らかでない点。

(相違点7)
本件発明1の焼結人工砂は、「かさ比1.6g/cm^(3)未満」であるのに対して、引用発明2のムライト製人工球状粒子の粉体嵩密度は1.69g/cm^(3) である点。

(相違点8)
本件発明1の焼結人工砂は、「アスペクト比が0.85以上」であるのに対して、引用発明2のムライト製人工球状粒子のアスペクト比は不明である点。

(相違点9)
本件発明1の焼結人工砂は、「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において液相線よりマイナス50℃以内の耐火度を示す」のに対して、引用発明2のムライト製人工球状粒子の耐火度は1825℃であるものの、液相線よりマイナス50℃以内かどうかは明らかでない点。

(イ)相違点についての判断
最初に相違点5について検討する。甲第9号証は、ムライト製人工球状粒子として、「ナイガイセラビーズ60」を用いていて(上記4(2)ア(ア)参照)、甲第10号証のナイガイセラビーズ60は、K_(2)Oの含有量が0.2%である組成を有している(上記4(3)ケ参照)。
甲第9号証のムライト製人工球状粒子がAl_(2)O_(3)やSiO_(2) 以外の酸化物もごく少量含んでいること(第563頁表2参照)や不純物をできるだけ回避すべきという技術常識を勘案すれば、引用発明2のムライト製人工球状粒子において、K_(2)Oを含んでいても、その含有量を0.20%以下に抑制し、相違点5に係る構成とすることに格別の困難性は認められない。

相違点7について検討すると、引用発明のムライト製人工球状粒子の粉体嵩密度1.69g/cm^(3) は振動嵩密度測定器で3分間振動後に測定されたものであり(上記4(2)ア(イ)参照)、本件明細書段落【0062】で示されたような鋳物砂の測定方法で自由落下させたものを測定すれば、1.69g/cm^(3) より減少し、本件発明1の「かさ比1.6g/cm^(3) 」に近づくことは想定されるものの、「かさ比1.6g/cm^(3) 未満」となるかどうかは不明である。
また、甲第10号証のナイガイセラビーズ60は粗充填かさ密度が1.5g/cm^(3) であるが(上記4(3)ケ参照)、甲第10号証のナイガイセラビーズ60は、甲第9号証のナイガイセラビーズ60とで、Al_(2)O_(3)やSiO_(2) の組成が異なっている上、かさ密度の密充填の値の測定方法が同一であるかどうか不明であるし、数値も同一といえる根拠を欠く。また、甲第1号証?甲第8号証のいずれを参照しても甲第9号証と同一の組成からなるムライト製人工球状粒子のかさ比について記載や示唆がされていないことから、引用発明2のかさ比を1.6g/cm^(3)未満とするための根拠に欠けるといわざるを得ない。

相違点9について検討すると、甲第9号証のムライト製人工球状粒子のAl_(2)O_(3)及びSiO_(2) の組成から算出される液相線を1881℃として、甲第9号証の耐火度1825℃の差分を算出すると56℃となり、相違点9に係る構成を備えていない。
また、甲第10号証の甲第10号証のナイガイセラビーズ60のAl_(2)O_(3)及びSiO_(2) の組成から算出される液相線を1882℃として、甲第10号証の耐火度1825℃の差分を算出すると57℃となり、相違点9に係る構成を備えていない。
さらに、甲第8号証には、耐火度を2,123K、すなわち、1,850℃とすることが記載されている(上記4(3)ク参照)が、甲第8号証のセラミックサンド(セラビーズ)の組成が不明であり、引用発明2と同等の組成であるとする根拠を欠く。また、引用発明2と同等の組成において耐火度を液相線よりマイナス50℃以内とすることを示唆する他の文献も見当たらない以上、引用発明2の耐火度を液相線よりマイナス50℃以内とする根拠がないといわざるを得ない。

したがって、相違点6や相違点8について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明2及び甲第1号証?甲第8号証及び甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(ウ)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1に対して、さらに、「Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系相平衡状態図において、Al_(2)O_(3)が40%?60%の組成である」という技術的事項を追加したものである。したがって、上記(イ)に示した理由と同様の理由により、本件発明2?6は、引用発明及び甲第2号証?甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

以上より、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

ウ 上記アのように主たる証拠を甲第1号証としても、上記イのように主たる証拠を甲第9号証としても、本件発明1?6は、甲第1号証?甲第10号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

6 むすび
以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-05-16 
出願番号 特願2017-216940(P2017-216940)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B22C)
P 1 651・ 536- Y (B22C)
P 1 651・ 537- Y (B22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 齋藤 健児
青木 良憲
登録日 2018-07-13 
登録番号 特許第6367451号(P6367451)
権利者 株式会社ツチヨシ産業 山▲東▼金璞新材料有限公司
発明の名称 焼結人工砂  
代理人 鮫島 武信  
代理人 鮫島 武信  
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