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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B64C
管理番号 1351464
異議申立番号 異議2019-700023  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-16 
確定日 2019-05-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6358791号発明「飛行体制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6358791号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6358791号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成25年10月7日に出願されたものであって、平成30年6月29日に特許の設定登録がされ、同年7月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、特許異議申立人 佐藤奈緒美(以下「異議申立人」という。)は、平成31年1月16日付けで特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6358791号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
端末装置と、飛行体とを備える飛行体制御システムであって、
前記端末装置は、
地図上の位置を示す地図位置情報を有する情報であり、地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部と、
前記飛行体の3次元の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部と、
前記地図情報と、前記受信部が受信した前記飛行体位置情報とを用いて、当該飛行体位置情報が示す前記飛行体の位置を基点とした前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する飛行情報取得部と、
前記飛行情報取得部が取得した前記飛行情報を、前記飛行体に送信する送信部とを備え、
前記飛行体は、
前記飛行体位置情報を取得する飛行体位置情報取得部と、
前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記端末装置に送信する飛行体送信部と、
前記飛行情報を前記端末装置から受信する飛行体受信部と、
前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行するように前記飛行体を制御する飛行体制御部とを備え、
前記飛行情報取得部は、前記飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報および当該2以上の位置間のコストを有する飛行可能グラフを作成し、前記飛行体の位置情報を当該飛行可能グラフに適用して前記飛行情報を取得する飛行体制御システム。
【請求項2】
前記飛行情報取得部は、前記地図情報と、前記受信部が受信した前記飛行体位置情報とを用いて、当該飛行体位置情報が示す出発位置から、予め決められた条件を満たす上空の到着位置までの前記飛行経路を探索し、当該飛行経路を示す前記飛行情報を取得し、
前記飛行体制御部は、前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行するように前記飛行体を制御する請求項1記載の飛行体制御システム。
【請求項3】
前記飛行情報取得部は、前記地図情報と、前記受信部が受信した前記飛行体位置情報とを用いて、当該飛行体位置情報が示す出発位置から、予め決められた条件を満たす地上の着陸位置までの前記飛行経路を探索し、当該飛行経路を示す前記飛行情報を取得し、
前記飛行体制御部は、前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行し、当該飛行情報が示す前記着陸位置に着陸するように前記飛行体を制御する請求項1または請求項2記載の飛行体制御システム。
【請求項4】
前記飛行体は、前記端末装置との通信が可能であるか否かを判断する飛行体判断部をさらに備え、
前記飛行体制御部は、前記飛行体受信部による前記飛行情報の受信後に、前記飛行体判断部が、前記端末装置との通信が可能でないと判断した場合、前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路または前記着陸位置に従い飛行または着陸するように前記飛行体を制御する請求項3記載の飛行体制御システム。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 異議申立理由1(特許法第29条第2項,甲第1号証が主引例)
異議申立人は甲第1?10号証を提出し、本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2、3号証に記載された技術的事項、証拠の提出のない周知技術、甲第4、5号証に記載された周知技術及び甲第6?8号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明4は、更に加えて甲第9、10号証に記載された周知技術及び甲第10号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

2 異議申立理由2(特許法第29条第2項,甲第2号証が主引例)
異議申立人は甲第2、4、5号証を提出し、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、証拠の提出のない周知技術及び甲第4、5号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

3 証拠
・甲第1号証:特開2011-174789号公報
・甲第2号証:特開平6-149376号公報
・甲第3号証:特開平7-12582号公報
・甲第4号証:特開2012-37204号公報
・甲第5号証:特開2009-223407号公報
・甲第6号証:特開2003-30800号公報
・甲第7号証:特開平3-2972号公報
・甲第8号証:特開平11-23303号公報
・甲第9号証:特許第4658892号公報
・甲第10号証:特開2006-264573号公報

第4 特許異議申立理由についての検討
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項等
ア 記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第1号証には以下の記載がある(なお、下線は当審で付加した。以下同様。また、それぞれ「記載事項(1a)」等という。)。
(1a)「【請求項1】
乗物に設けられた乗物装置と、当該乗物装置と無線通信する端末装置とを備えた情報通信システムであって、
前記乗物装置は、
前記乗物の移動中に変化する情報である乗物情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した乗物情報を前記端末装置に無線で送信する送信部と、を備え、
前記端末装置は、
前記送信部から無線で送信された乗物情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した乗物情報を出力する出力部と、を備えた、情報通信システム。
【請求項2】
前記乗物情報は、前記乗物の現在位置を含んでおり、
前記出力部は、前記乗物情報を蓄積するものであり、
前記端末装置は、
地図情報が記憶される地図情報記憶部と、
前記出力部が蓄積した乗物情報に含まれる現在位置に応じた地図情報を前記地図情報記憶部から読み出して表示する表示部と、をさらに備えた、請求項1記載の情報通信システム。」

(1b)「【0004】
しかしながら、例えば、自動車に乗っているユーザが、携帯電話等のナビゲーション機能を使用したとしても、その自動車に装着されているカーナビゲーション装置ほど、高い精度で現在位置を取得することができないという問題がある。自動車の内部では、屋外の場合に比べて、携帯電話等のナビゲーション機能の精度が落ちてしまうからである。
【0005】
一般的にいえば、乗物に乗っているユーザの使用する端末装置によって、その乗物に装着されている装置が取得することができる情報と同様の情報を取得したいという要望があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、乗物に装着されている装置が取得できる情報と同様の情報を取得することができる端末装置を有する情報通信システム等を提供することを目的とする。」

(1c)「【0020】
図1は、本実施の形態による情報通信システムの構成を示す図である。本実施の形態による情報通信システムは、乗物1に設けられた乗物装置10と、その乗物装置10と無線通信する端末装置20とを備えたものである。なお、図1では、乗物1が自動車である場合について示しているが、乗物1は、自動車であってもよく、バスであってもよく、電車であってもよく、船であってもよく、飛行機であってもよく、オートバイであってもよく、自転車であってもよく、その他の人を乗せて移動する移動体であってもよい。端末装置20は、通常、持ち運び可能な固定されていない携帯端末(例えば、自動車である乗物1の車内で用いられる携帯端末であってもよい)であるが、乗物1に装着される装置であってもよい。その端末装置20は、例えば、携帯電話であってもよく、PDA(Personal Digital Assistant)であってもよく、PND(Portable Navigation Device)であってもよく、その他の装置であってもよい。また、通常、端末装置20は、乗物1に乗っているユーザ、例えば、自動車に乗車している人や、バスや電車、船、飛行機等の乗客、オートバイや自転車に乗っている人が使用するものである。また、通常、その端末装置20は、乗物1の内部において用いられるものとする。また、その端末装置20を使用するユーザは、乗物1の運転や操縦をしている以外の者であることが好適である。また、図1では、情報通信システムが1個の端末装置20を備える場合について示しているが、情報通信システムは、2以上の端末装置を備えていてもよいことは言うまでもない。
【0021】
図2は、本実施の形態による乗物装置10の構成を示すブロック図である。図2において、本実施の形態による乗物装置10は、取得部11と、送信部12とを備える。
【0022】
取得部11は、乗物情報を取得する。乗物情報は、乗物1の移動中に変化する情報である。乗物情報は、例えば、乗物1の現在位置を含んでいてもよい。現在位置は、例えば、緯度・経度であってもよく、ある基準点を基準とした座標値であってもよく、あるいは、その他の位置を指定できる情報であってもよい。また、乗物情報は、例えば、乗物1の速度の情報、乗物1の進行方向に関する情報、乗物1の動力に関する情報、乗物1のエネルギーに関する情報のうち、任意の1以上の情報を含んでいてもよい。乗物1の速度の情報は、乗物1のスピード(例えば、時速や分速等)であってもよく、速度の属性(例えば、速い、普通、遅い等)であってもよい。また、乗物1の進行方向に関する情報は、自動車やバス、オートバイ、自転車等のハンドルの角度を示す情報であってもよく、船の舵の方向を示す情報であってもよく、飛行機の操縦桿の方向を示す情報であってもよく、乗物1の向いている方角(例えば、北が0度となり、東が90度となる方位角であってもよい)を示す情報であってもよい。また、乗物1の動力に関する情報は、乗物1を駆動する機関に関する情報であり、例えば、エンジンやモータ等の回転数や、エンジンやモータ等の温度、動力を伝達する経路で採用されているギヤ比(例えば、自動車の1速、2速等)等であってもよい。また、乗物1のエネルギーに関する情報は、乗物1が移動する際に消費するガソリンや電力等のエネルギーに関する情報であり、例えば、残っているエネルギー量(例えば、ガソリンの残量や、バッテリーの電力残量など)であってもよく、単位時間あたりのエネルギーの消費量(例えば、ガソリンの燃費や、消費電力量等)であってもよく、乗物1を駆動する機関に供給しているエネルギー量(例えば、モータに供給している電気の電流値や電力など)であってもよい。このように、乗物情報は、乗物1の状態(位置や速度、エンジンやモータ等の回転数、進行方向、エネルギー量等)の変化に関する情報であり、例えば、乗物情報は、乗物1の現在位置や、速度、進行方向などの乗物1の移動に関する情報を含んでいてもよく、あるいは、乗物1の動力やエネルギーに関する情報などの乗物1の駆動に関する情報を含んでいてもよい。また、乗物情報は、通常、緯度経度等の座標情報や、速度、方位の情報などの数値やテキストの情報である。また、本実施の形態では、乗物情報に現在位置が含まれている場合について主に説明する。
【0023】
また、取得部11は、その乗物情報を、通常、乗物1から取得する。取得部11は、例えば、乗物1に装着されているGPS(Global Positioning System)や、ジャイロなどの自律航法装置等から現在位置を取得してもよい。なお、それらのGPSや自律航法装置等は、乗物1に装着されているナビゲーション装置に含まれていてもよい。また、取得部11は、例えば、乗物1のスピードメータ等から乗物1の速度の情報を取得してもよい。また、取得部11は、例えば、乗物1のハンドルや操縦桿、舵等に設けられた角度検出センサから乗物1の進行方向に関する情報を取得してもよく、乗物1に設けられた方位センサから乗物1の進行方向に関する情報を取得してもよい。また、取得部11は、例えば、乗物1を駆動するエンジンやモータ等の機関や、その機関に設けられたセンサ、動力を伝達する経路を制御している制御手段等から、乗物1の動力に関する情報を取得してもよい。また、取得部11は、例えば、乗物1の燃料タンクやバッテリー、乗物1を駆動するエンジンやモータ等の機関等に設けられたセンサ等(例えば、燃料の残量センサや、電流計、電圧計等)から、乗物1のエネルギーに関する情報を取得してもよい。取得部11が取得した乗物情報は、図示しない記録媒体に蓄積されてもよい。
【0024】
送信部12は、取得部11が取得した乗物情報を端末装置20に無線で送信する。送信部12と端末装置20との間の無線送信は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信であってもよく、Wi-Fi等の無線LANによる通信であってもよく、その他の無線通信であってもよい。なお、送信部12は、乗物情報の送信を行うまでに、乗物情報の送信先である端末装置20のアドレスを、端末装置20や他の構成要素等から受け取り(例えば、乗物情報を取得したい端末装置20が、乗物装置10にアクセスすることによって、端末装置20のアドレスを登録するようにしてもよい)、その受け取ったアドレスを送信先として乗物情報を送信してもよく、あるいは、無線ネットワーク上の不特定多数の端末装置20に対して、ブロードキャストによって乗物情報を送信してもよい。なお、前者の場合には、乗物情報の送信先のアドレスは、例えば、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。」

(1d)「【0027】
図3は、本実施の形態による端末装置20の構成を示すブロック図である。図3において、本実施の形態による端末装置20は、受信部21と、出力部22と、地図情報記憶部23と、表示部24とを備える。
【0028】
受信部21は、乗物装置10の送信部12から無線で送信された乗物情報を受信する。本実施の形態では、前述のように、その乗物情報に現在位置が含まれているものとする。なお、受信部21は、受信を行うための無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受信部21は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。」

(1e)「【0030】
地図情報記憶部23では、地図に関する情報である地図情報が記憶される。地図情報は、例えば、地図の画像情報であってもよい。この画像情報は、例えば、ラスタデータ(ビットマップデータ)であってもよく、ベクタデータであってもよい。また、画像情報がラスタデータである場合には、地図情報に、複数の縮尺に対応した画像情報が含まれていてもよい。例えば、同じ地域について、縮尺の大きい画像情報、縮尺の中ぐらいの画像情報、縮尺の小さい画像情報が地図情報に含まれていてもよい。また、地図情報は、タイル状に分割された地図を示すものであり、それらを適宜組み合わせることによって、様々な領域の地図を表示することができるようになっていてもよい。ここで、「地図」は、地形図や、地勢図、地質図、土地利用図、住宅地図、路線図、道路地図、ガイドマップ等であってもよい。この地図情報は道路地図であってもよい。また、この地図情報は歩行者や自転車用の道路地図であってもよい。また、その地図情報は、ルート探索を行うことができるものであってもよい。すなわち、地図情報は、道路の位置を示すものであってもよい。また、その地図情報は、道路の属性(例えば、制限速度や、主要な道路であるのか、脇道であるのかなど)を知ることができるようになっているものであってもよい。また、例えば、この地図情報は、カーナビゲーションで用いられるKIWIフォーマットのものであってもよい。また、「地図」は、地形や道路等が把握可能な航空写真や衛星写真、それらに記号や文字等が記入されたものなどであってもよい。地図情報において、地図の各地点と、座標(位置)との対応を知ることができるようになっているものとする。座標とは、ある基準点を原点とした座標(この座標は、例えば、距離でもよい)であってもよく、緯度・経度であってもよく、その他の位置を識別できる情報であってもよい。地図情報に、その座標そのものが含まれていてもよい。本実施の形態では、座標が緯度・経度である場合について説明する。また、この地図情報には、地名や、山や川などの地形に関する文字情報が含まれていてもよい。また、この地図情報において、北などの特定の方位がどちらであるのかが設定されていてもよい。なお、地図情報は、2次元のオンライン地図や電子地図等として公知であり、その詳細な説明を省略する。」

イ 記載された発明
記載事項(1c)の段落【0020】、【0022】に、「乗物1」が「飛行機」である場合が示されている。
以上のことと、上記アの各記載事項より、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「飛行機である乗物1に設けられた乗物装置10と、当該乗物装置10と無線通信する端末装置20とを備えた情報通信システムであって、
前記乗物装置10は、
前記乗物1の移動中に変化する情報である乗物情報を取得する取得部11と、
前記取得部11が取得した乗物情報を前記端末装置20に無線で送信する送信部12と、を備え、
前記端末装置20は、
前記送信部12から無線で送信された乗物情報を受信する受信部21と、
前記受信部21が受信した乗物情報を出力する出力部22と、
地図情報が記憶される地図情報記憶部23と、
前記出力部22が蓄積した乗物情報に含まれる現在位置に応じた地図情報を前記地図情報記憶部23から読み出して表示する表示部24と、を備え、
前記乗物情報は、乗物1の現在位置を含んでいて、現在位置は、例えば、緯度・経度、ある基準点を基準とした座標値、あるいは、その他の位置を指定できる情報であるものであり、
前記出力部22は、前記乗物情報を蓄積するものである情報通信システム。」

(2)甲第2号証の記載事項等
ア 記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第2号証には以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】 経路作成のための情報を入力する入力装置と、3次元の地形情報を記憶する3次元地形情報記録部と、経路コスト計算のための関数を記憶する評価関数記憶部と、前記入力装置から入力された情報に基づいて経路コスト評価のための関数、および、水平面を矩形に分割する4枚の鉛直平面と2枚の水平面とで囲まれた領域を探索領域とし、前記探索領域を前記4枚の鉛直平面のうち少なくとも1つの平面に平行な平面群と、前記2枚の水平面の間に設定した水平面によって要素分割することを決定する経路探索推論部と、前記経路探索推論部から決定された情報に基づいて前記3次元地形情報記憶部から探索領域内の3次元地形情報を抽出する3次元地形情報抽出部と、前記経路探索推論部からの情報と前記3次元地形情報抽出部により抽出された3次元地形情報に基づいて経路コストが最小となるような経路を探索する経路探索部と、前記経路探索部で探索された経路を表示する出力装置とを備えた経路生成装置。」

(2b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】適切な経路誘導用に道標としてランドマークを活用することは有効である。このため、経路生成に際し、実際の地形情報などからランドマークとして活用できるものを取り入れて経路探索を行うことは有効である。しかし、従来の経路生成方法では山などを障害物として扱う以外には、地形情報を誘導のためのランドマークとして有効に活用せず、必ずしも最適な経路を決定しているとは言えなかった。
【0008】また、ヘリコプタを例にとると、ヘリコプタは比較的柔軟に飛行経路を変えることができるので、その特徴を生かした飛行経路を生成することは有効である。さらにその飛行高度や飛行目的に関連して、巡航、ほふくなどのいくつかの複数の飛行形態があり、このヘリコプタ特有の動作特性を考慮して飛行経路生成を行い、さらにその飛行形態を指定した情報を出力することも有効である。しかし、従来の経路生成方法では、飛行機の2次元平面的な移動を基調として、高い高度での直線的巡航と出発地点・目的地点周辺での低空飛行のみを考慮した飛行経路を想定しており、ヘリコプタのような移動手段の特有の柔軟な移動特性を加味した、いくつかの移動パターンを柔軟に継ぎ合わせた経路は生成できなかった。
【0009】この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、地形情報を経路探索に有効活用した、迅速に経路生成が行えるような、探索された経路だけでなく、移動手段の移動形態についての情報をも提供するような経路生成装置を得ることを目的とする。」

(2c)「【0003】以下に、図6を用いて2次元平面の経路探索の問題について、A*アルゴリズムを用いた経路探索の原理を簡単に説明する。図6に示す格子状に分割された2次元平面において、出発地点を点S(2,2),目的地点を点G(7,7)とする。また、図6において矢印1目盛は探索1ステップ分を表す。出発地点から探索を始めると、出発地点S(2,2)から次に展開される可能性、すなわち、進む可能性のある候補群からなる待ち行列の中から、その先頭の候補を取り出して次の進行地点を展開する。最初は待ち行列に出発地点S(2,2)のみが存在するので、待ち行列の先頭であるこの地点を取り出してこれが目的地点かどうか調べる。いまは明らかにそうではないので、この出発地点を取り出して展開をする。この出発地点を基礎として新たな待ち行列の成分となる候補となる点、すなわち、次の進行地点となる可能性のある地点はA(1,2)、B(2,3)、C(3,2)、D(2,1)である。ここで、それぞれの候補に対し、出発地点からその地点までのコストと、その地点から目的地点までのコストの見積もり値との和である総コストの計算を行い、この総コストの昇順に待ち行列内の点A?点Dを並び換えの操作を行う。
【0004】次に、この新たな待ち行列の先頭の地点に対し、これが目的地点かどうかを調べる。目的地点ではないとすれば、先と同様にこの先頭の地点を基礎としてまた新たな待ち行列の成分となる候補を模索し総コストを計算する。そしてまたこの総コストの昇順に待ち行列内の候補の並び換えを行い、さらに、先と同様な操作を次々と探索の基礎となる地点が目的地点である点Gに達するまで続けていく。図6は出発地点からある地点まで経路探索が行われた結果、出発地点からある地点までの総コスト最小となる経路を経路候補として待ち行列に残し、それ以外のものは捨てて経路を探索した状態を示している。このような探索を繰り返し行い、探索の基礎となる地点が目的地点である点Gに達した段階でその経路が最適な経路として決定される。
【0005】また、Bates,S.,他,Heuristic Route Planning:Application to Fighter Aircraft,pp.1114-1120,National Aerospace and Electronics Conference,1988,IEEE ではA*アルゴリズムを用いて2次元の経路探索問題に帰着させた空間経路探索を行う例を示し、そこでは空間中に点在する脅威を考慮して飛行の安全性を経路探索の際に反映させるために、2次元平面方向には空間を格子状に要素分割し、各々の要素に脅威の度合いを表す経路コストに換算して数値として記し、格子状に分割された平面の第n番目の要素に対し、p(n)を出発地点から第n番目の要素までの経路コスト、d(n)を経路が第n番目の要素を通過した場合の脅威度の積算値、kを脅威度を経路コストに換算する重み係数として、出発地点から第n番目の要素までの総コストをk*p(n)+(1-k)*d(n);(0<k<1)として計算し、第n番目の要素から目的地点までの経路コストの見積もり値もこの計算方法に準じて算出している。」

(2d)「【0016】
【実施例】実施例.1
次に、実施例1.について説明する。図1は本発明にかかる経路生成装置の構成図であり、図2はこの経路生成装置の地上システム部分の詳細な構成を示す図、図3はこの経路生成装置のヘリコプタに搭載した機上システムのディスプレイ画面および地上システムのディスプレイ画面を示す図、図4はこの経路生成装置の経路探索前の準備段階における動作の流れを示すフローチャート、図5はこの経路生成装置の経路探索実行段階における動作の流れを示すフローチャートである。図1において、101は地上システム、102はヘリコプタに搭載した機上システム、103は地上システム通信部と交信するヘリコプタに搭載した機上システム通信部、104はヘリコプタに搭載した機上システムの入力装置、105はヘリコプタに搭載した機上システムのディスプレイである。
【0017】図2に示す地上システムの構成図において、110は各種の情報や命令を入力する、キーボード111、マウス112からなる入力装置、120は入力された情報および後述の経路選択戦略推論部の情報に基づいて経路評価を行う評価関数、探索領域を決定する経路選択戦略推論部、130は経路コスト計算のための関数、および脅威評価の関数を記録する知識ベース、140は経路探索を行う経路探索部、150は生成した経路を表示するディスプレイ、160は探索した経路をヘリコプタに搭載した機上システム103に伝えたり、ヘリコプタに搭載した機上システム103からの情報を受け取る地上システム通信部である。
【0018】一方、170は河川や道路などの線状の地形情報を記録する線地形データベース、171は線地形データベース170の記録内容を探索の際に参照されるテーブルである線地形ランドマークデータに加工する線地形ランドマークデータ前処理部、172は線地形ランドマークデータ前処理部171で加工された線地形ランドマークデータを記録する線地形ランドマークデータ記録部、173は線地形ランドマークデータ記録部172の記録内容から探索領域内のものを抽出して線地形ランドマークマップを作成する線地形ランドマークマップ抽出部である。
【0019】また、180は山頂や建物などの点状の地形情報を記録する点地形データベース、181は点地形データベース180の記録内容を探索の際に参照されるテーブルである点地形ランドマークデータに加工する点地形ランドマークデータ前処理部、182は点地形ランドマークデータ前処理部181で加工された点地形ランドマークデータを記録する点地形ランドマークデータ記録部、183は点地形ランドマークデータ記録部182の記録内容から探索領域内のものを抽出して点地形ランドマークマップを作成する点地形ランドマークマップ抽出部である。
【0020】さらに、190は標高地形情報を記憶する標高データベース、191は標高データベース190の記録内容を探索の際に参照されるテーブルである標高データに加工する標高データ前処理部、192は標高データ前処理部191で加工された標高データを記録する標高データ記録部、193は標高データ記録部92の記録内容から探索領域内のものを抽出して標高マップを作成する標高マップ抽出部である。
【0021】ここで、経路探索を行う前のシステムの準備段階として地形情報に関する各データベース、すなわち、線地形データベース170、点地形データベース180、標高データベース190については、広範囲な領域の各種地形情報を経路探索を行う前に予め該当するデータベースに入力し、そのうち、探索領域付近の地形情報として採用することが適切であると考えられる代表的な情報、例えば、点状の地形情報について云えば脅威障害物とその位置を、線地形ランドマークデータ前処理部171、点地形ランドマークデータ前処理部181、標高データ前処理部191においてそれぞれ線地形ランドマークデータ、点地形ランドマークデータ、標高データとして加工し、経路探索の際に使用できるよう予め作成しておく。
【0022】準備段階におけるこれら各種のデータの作成順序は、図4に示す手順にしたがう。線状の地形情報については、ステップS10で線地形データから選ばれた情報を線地形データベース170に登録し、さらに、線ランドマークデータ前処理部171において、2次元平面方向に対しては格子状に分割して線ランドマークデータを作成し、線ランドマークデータ記憶部172に記憶する。点状の地形情報については、ステップS20で点地形データから選ばれた情報を点地形データベース180に加工し、さらに、点ランドマークデータ前処理部181において、2次元平面方向に対しては格子状に分割して点ランドマークデータを作成し、点ランドマークデータ記憶部182に記憶する。標高情報については、ステップS30で標高データから選ばれた情報を標高データベース190に登録し、さらに、標高ランドマークデータ前処理部191において、2次元平面方向に対しては格子状に分割して標高ランドマークデータを作成し、標高ランドマークデータ記憶部192に記憶する。このようにして経路探索の際に必要となる各ランドマークデータを作成する。この準備段階の各ランドマークデータ作成の処理は、システム開発時、システムの仕様変更時や地形情報の更新時などの保守時等において行われる。」(なお、段落【0017】の「機上システム103」は「機上システム102」の誤記と認める。)

(2e)「【0025】すると、それら上記の入力された情報は経路選択戦略推論部120に送られ、ステップS160?S190にしたがって、経路選択戦略推論部120は、入力された探索空間の分割方法にしたがって探索空間を分割し、探索用マップを作成する。ここでは図8(a)に示すような、前記第1の分割方法に従った要素分割が指示されたとする。その結果、その探索すべき空間領域は、前記第1の分割方法に従った要素分割がなされ、小直方体状に細分化されて探索用マップが作成される。
【0026】同時に、経路選択戦略推論部120は、入力された飛行目的、気象状態に基づいて、採用すべき経路選択戦略、すなわち、経路コスト計算のための関数、および脅威評価の関数を知識ベース130から捜し出し、さらに、それらを組み合わせて探索すべき空間領域の経路評価を行う評価関数を決定する。
【0027】一方、経路選択戦略選択推論部120で探索すべき空間領域が決定されると、河川や道路などの線状の地形情報については、予め作成されている線地形ランドマークデータ記録部172の中から、この探索領域内に存在するものが線地形ランドマークマップ抽出部173において抽出され、線地形ランドマークマップの形に整理される。また、山頂や建物などの点状の地形情報についても同様に、予め作成されている点地形ランドマークデータ記録部182の中から、この探索領域内に存在するものが点地形ランドマークマップ抽出部183において抽出され、点地形ランドマークマップの形に整理される。さらに、標高情報についても同様で、予め作成されている標高データ記録部192の中から、この探索領域内に存在するものが標高マップ抽出部193において抽出され、標高データの形に整理される。以上のようにして、探索の際に必要となる各構成要素が決定され、経路探索が経路探索部140において行われる。
【0028】 経路探索は、ステップS200にしたがい、前記従来例に示す、待ち行列とA*アルゴリズムで表される探索アルゴリズムを用いた探索方法を用いて経路探索を行い、そうしてできる隣接する要素間での経路をつなぎ合わせて全体の経路を作る、という方法をとる。ここで隣接する要素とは、その要素を囲む8個の頂点および12個の辺のうち少なくとも1つを共有する要素であり、ある1つの要素に対する隣接する要素は最大26要素存在し得る。各要素には、前記準備段階においてその空間位置を通ることによる脅威度を表すパラメータが数値として与えられているので、空間位置を移動することによるコストと共に、気象状態や飛行目的に応じて選択された評価関数において、その計算の中で組み込まれる。
【0029】分割された要素間の経路を探索する場合には、線地形ランドマークマップ、点地形ランドマークマップ、標高マップを参照する。例えば、線地形ランドマークマップの場合は、3次元空間内のある要素Aからその隣接する要素の1つである要素Bへと経路をとるとする。その要素Aと要素Bを2次元水平面状のマップに写像した場合、そのマップを線地形ランドマークマップと対比し、要素Aと要素Bが同じ種類の地形ランドマーク上にあるときは、評価関数において脅威度に相当する数に1より小さい所定のパラメータを掛け合わせ、その経路を採ることによる脅威度が小さくなるようにする。また、点地形ランドマークマップの場合は、例えば探索を目的地点から始めるとすると、要素Aから要素Bへ経路を作る先の例では、要素Aに対応する点ランドマークテーブルを参照してこの地点に点ランドマークが存在する場合、脅威度は小さいものとして、要素B以降、要素Aから特定距離を経るまで、経路コストとして加算される脅威度に相当する値に1より小さい所定のパラメータを掛け合わせて用いる。このパラメータは、気象状態や飛行目的などの条件から設定される可変のものである。これによって、点ランドマークに向かう経路は脅威が小さい経路として以後の探索で扱われることになる。次に、標高マップの場合は、標高データも同様、空間分割に対応して2次元水平面状のマップに写像された形の2次元配列に各々標高値が書かれ、要素Aの標高値と要素Bの標高値とを比較して差があれば、所定の評価関数を適用して経路コストを増減する。また、標高データから求められる地形被覆情報を用いるときも同様に脅威度の値を、所定の方法、所定のパラメータを用いて計算して経路コストに反映させ、通過に伴う脅威度を増減させることとする。」

(2f)「【0031】このようにして地上システム101において探索された結果は、ステップS210にしたがい、図1に示すように、データリンクを介してヘリコプタに搭載した機上システム102に伝えられ、図3に示すように、ヘリコプタに搭載した機上システムのディスプレイ画面上でも同じ経路情報が表示される。ここでは、例として、川沿いに、山の斜面に一定高度で地形追従する経路が示され、指定経路への追従の容易さを得るための経路が選択されている。
【0032】一方、ヘリコプタに搭載した機上システム側では、測地衛星を用いたGPS(グローバル・ポジショニング・システム)と自律航法装置によって現在位置を認識しており、その情報をヘリコプタに搭載した機上システムの通信部103を介して機上システムのディスプレイ画面上にマーカとして表示する。これによって、パイロットは探索経路からの現在位置のずれを認識することができる。また、飛行中に新たな脅威対象物を発見した場合、ヘリコプタに搭載した機上システム102の入力装置110のトラックボール113を用いてディスプレイ画面上にその位置を示し、機上システムの通信部106を介して地上システム101に送信することで、新たな位置情報を誤りなく送付することができ、さらに、現在位置も送付することにより、地上システム101でもヘリコプタの現在位置を画面上にマーカとして表示することができ、地上システムユーザは現在状況を認識することができる。」(なお、段落【0032】の「機上システムの通信部106」という記載は、「機上システム通信部103」の誤記と認める。)

(2g)「【0034】実施例1.によれば、地形情報を用いて、誤りの起こりにくい誘導を可能とする経路が選択できるようになる。これによって、指定経路からはずれることによって起こる危険性を回避し、指定経路に沿うために無為にジグザグに飛ぶ無駄を減らすことで、平均飛行所要時間を短縮する。また、多くの脅威の存在など、経路決定に関する困難な意思決定を緊急に行う必要のある場合には、客観的な根拠を持った合理的な経路を装置が示唆することで、意思決定の遅れや状況認識不足による危険発生の可能性を減少させることができる。」

(2h)「【0035】実施例2.次に、実施例2.について説明する。実施例2.の装置の構成は実施例1.の装置の構成と同様である。実施例2.においては、探索領域は実施例1.のような直方体領域ではなく、要素分割の方法として選択メニューから、図8(b)に示すように、相互に直交する4枚の鉛直平面と1水平面、そして地表面とで囲まれる領域が選択されたとする。ここで、1水平面の高度は、ヘリコプタの飛行最大高度として与えられる高度に対応したものとし、この探索領域を、4枚の鉛直平面に平行な平面と、地表面の曲面と最上部の平面の間に設定した曲面とによって分割してとらえる。この際、要素の高さついては図8(b)に示すように、高度方向におおむね均等分割になるような高さを要素の高さとし、探索用マップを作成する。この要素分割以外、経路探索の方法は実施例1.と同様である。
【0036】実施例2.によれば、経路探索を行う際、飛行経路とならないの地面部分にあたる空間要素部分を生成・保持せず、必要に応じたきめ細かな探索が可能となるため、装置の負荷の軽減を図ることができ、その結果、迅速に経路の探索を行うことができる。」

イ 記載された発明
記載事項(2d)の段落【0018】?【0022】の記載より、記載事項(2a)の「3次元地形情報記憶部」は、「線地形データベース170」、「点地形データベース180」、「標高データベース190」からなるものであることが理解でき、同様に記載事項(2a)の「3次元地形情報抽出部」は、「線地形ランドマークマップ抽出部173」、「点地形ランドマークマップ抽出部183」、「標高マップ抽出部193」からなるものであることが理解できる。また、記載事項(2d)の段落【0017】の「150は生成した経路を表示するディスプレイ」は、記載事項(2a)の「探索された経路を表示する表示装置」に相当することが理解できる。
以上のことと、上記アの各記載事項より、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「地上システム101と、ヘリコプタに搭載した機上システム102を備える経路生成装置であって、
前記地上システム101は、
経路作成のための情報を入力する入力装置110と、
探索した経路を機上システム102に伝えたり、機上システム102からの情報を受け取る地上システム通信部160と、
線地形データベース170、点地形データベース180、標高データベース190からなる3次元地形情報記憶部と、
経路コスト計算のための関数、および脅威評価の関数を記録する知識ベース130と、
前記入力装置110から入力された情報に基づいて経路コスト評価のための関数、および、水平面を矩形に分割する4枚の鉛直平面と2枚の水平面とで囲まれた領域を探索領域とし、前記探索領域を前記4枚の鉛直平面のうち少なくとも1つの平面に平行な平面群と、前記2枚の水平面の間に設定した水平面によって要素分割することを決定する経路探索推論部120と、
前記経路探索推論部120から決定された情報に基づいて前記3次元地形情報記憶部から探索領域内の3次元地形情報を抽出する、線地形ランドマークマップ抽出部173、点地形ランドマークマップ抽出部183、標高マップ抽出部193からなる3次元地形情報抽出部と、
前記経路探索推論部120からの情報と前記3次元地形情報抽出部により抽出された3次元地形情報に基づいて経路コストが最小となるような経路を探索する経路探索部140と、前記経路探索部140で探索された経路を表示するディスプレイ150とを備え、
地上システム101において探索された結果は、データリンクを介して前記ヘリコプタに搭載した機上システム102に伝えられ、
前記ヘリコプタに搭載した機上システム102は、
測地衛星を用いたGPS(グローバル・ポジショニング・システム)と自律航法装置によって現在位置を認識しており、
飛行中に新たな脅威対象物を発見した場合、機上システムの通信部103を介して地上システム101に送信することで、新たな位置情報を誤りなく送付することができ、さらに、現在位置も送付することにより、地上システム101でもヘリコプタの現在位置を画面上にマーカとして表示することができ、地上システムユーザは現在状況を認識することができる経路生成装置。」

(3)甲第3号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第3号証には以下の記載がある。
(3a)「【0008】即ち、この発明にかかる経路探索システムは、あらかじめ判別された分布状態の脅威、および飛行環境を有する任意の領域内で、与えられた出発地点と到着地点とを結ぶ経路を探索するシステムにおいて、(a) 探索地域の位置情報を表すデータを含む地図データベースと、(b) 探索地域における気象情報,飛行の制限情報などの飛行環境に係るデータを含む飛行環境データベースと、(c) 地上の目標物の位置情報、及び特性情報などの目標物に関するデータを含む目標物データベースと、(d) 複数の種類の脅威の位置、及び広がりの特性などの脅威に関するデータを含む脅威データベースと、(e) 各種の命令,情報を入力する入力装置と、(f) 探索結果,入力画面等を表示する表示装置と、(g) 上記脅威データ,飛行環境データなどの変化した情報を入手するための通信システムと、(h) 上記各種データベースからの情報を基に経路探索処理を行う情報処理装置とを備えたものである。」

(3b)「【0020】次に、ステップS3において、情報処理装置8にて、算出したすべての目標物データを基に、出発地点から目標地点までの間で隣接する目標物間をそれぞれ結び、探索経路モデルを複数作成する。ただしこの時、出発地点と目標地点を結ぶ直線に対し、ある一定の角度以上を作り出す経路モデルは除くようにする。」

(3c)「【0022】次に、ステップS4において、探索経路モデル作成段階において、各目標物間を結んだ経路モデルのそれぞれについて、脅威データベース4で保有する脅威データを基に、そこを飛行する上での脅威値を情報処理装置8にて算出し、割り付ける。脅威値は言うまでもなく飛行速度によって変るから、これは飛行速度が考慮されて計算される。
【0023】次に、ステップS5において、脅威値を割り付けられた探索経路モデルを、基にA*アルゴリズムなどの探索アルゴリズムにより、脅威値の総和が最小になるような最適な飛行経路を、情報処理装置8にて算出し、目標地点までの経路ができた場合(ステップS6でYES)、表示装置6に出力し、これは地図データベース1で保有する地図データと共に表示される。」

(3d)「【0026】このような本実施例1の経路探索システムでは、有視界飛行する航空機の目じるしとなるチェックポイントの中から、視程などの飛行環境に応じて適したチェックポイントを選択し、その中でチェックポイント間の空間をモデリングし、そのモデルの中で最適経路を算出するようにしたので、求められた経路はチェックポイントとなるべき点の近傍を通過することとなり、これにより、有視界航行する航空機に適した飛行経路となることとなり、地上の特徴物を考慮した上で、空間を飛行するという、ヘリコプター等,有視界航行をする航空機の特性に合った経路探索システムを得ることができる」

(3e)「【0031】情報処理装置8では、算出した飛行経路と航空機の位置情報とを比較し(ステップS8)、あらかじめ決定した、ある一定以上の値のずれが生じた場合(ステップS8でNO)、ステップS9においてその地点を出発地点として、目標地点までの飛行経路を上記と同様、ステップS1?S6により算出する。」

(4)甲第4号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第4号証には以下の記載がある。
(4a)「【0024】
上記のように本発明の地雷探索装置では、自動航行機能を備え、予め複数の位置から構成される飛行経路を装置に読み込ませておく。そして実際に飛行経路に従って飛行する間に地面方向に向かって地雷検出用の電波を発信し続け、地面からの反射波を受信する。受信された反射波は、飛行位置と対応付けられて記録される。当該構成により、予め定めた範囲の中で地雷が発見された場所と地雷が発見されなかった場所を記録する。」

(4b)「【0033】
なお、第3の障害物回避行動を行っても障害物を回避できない場合は、飛行制御部105は、袋小路に迷い込んだと判断して、帰還用プログラムである第4のプログラムを実行させる。飛行制御部105において帰還用プログラムが作動されると、飛行制御部105は自動航行制御部104に帰還指示信号を出力する。自動航行制御部104は、飛行制御部から帰還指示信号を受信すると、記録部に記録されている初期位置から現在位置までのこれまでの飛行経路を読み込み、これまでの飛行経路を時系列を遡って逆走することで初期位置まで戻るように自動航行が行われる。このように構成することで、本装置がデッドロックに陥った場合でも適切に帰還させることが出来る。なお、所定の位置までの帰還方法は飛行経路を逆走する方法に限るものではなく、帰還用プログラムを実行し、自動航行制御部は帰還指示信号に基づいて予め設定されている帰還用の位置である所定の位置を飛行予定位置と再設定し、当該飛行予定位置と現在位置に基づいて飛行補正信号を生成して飛行制御部へ出力する。飛行制御部では飛行補正信号に基づいて飛行方向を決定すると共に、高度を地雷探索モードで設定される地面付近の低い高度から帰還モードで設定される障害物の少ない高い高度に設定し、障害物のない上空を飛行して所定位置まで帰還する。位置検出部より出力される現在位置と設定された所定の位置が同一になった場合、自動航行制御部は所定位置に到達したと判断して、着陸信号を生成して飛行制御部に出力する。飛行制御部は自動航行制御部より着陸信号を入力する所定の速度で高度を下げて着陸する。」

(4c)「【0064】
自動航行制御部104は、位置検出部から入力した現在位置及び図示せぬ一時記録部に記録された飛行予定航路情報に基づいて自動航行を行う。飛行予定経路情報は予め使用者から無線入力された車両が走行する経路すなわち本装置の飛行経路に関する情報である。また自動航行制御部は無線通信部より、車両の位置情報及び車両速度情報を入力し、これらの情報に基づいて飛行予定経路情報の中から現在飛行すべき位置を求め、現在位置との差分の大きさ及び方向から飛行補正信号を生成して飛行制御部105に出力する。」

(4d)「【0076】
図14は本装置の使用者が有するポータブル通信端末であり、地雷探索装置を遠隔地から制御できるリモートコントローラーでもある。」

(4e)【図11】は次のとおりである。


(5)甲第5号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第5号証には以下の記載がある。
(5a)「【0011】
無人飛行機110は、GPS受信機やMEMSセンサなどの測位センサ(計測機器の一例)を用いて機体の飛行位置・姿勢角を計測し、計測結果に基づいて所定の飛行経路を飛行するように自律して機体を制御し、上空から災害地の様子を撮像する小型航空機である。」

(5b)「【0019】
無人機計算機112(測位装置、操舵装置)は、災害地への飛行中、災害地での撮像中および災害地からの帰還中、測位センサ115により取得された測位情報に基づいて機体の位置、姿勢角および速度を算出し、算出した機体の位置、姿勢角および速度に基づいて所定の飛行経路を飛行するように機体を操舵制御する。操舵制御において、無人機計算機112は機体の姿勢角(飛行方向)や速度を制御する。また、無人機計算機112は算出した機体の位置、姿勢角および速度(測位結果)を算出時刻と共に測位データとして無人機記憶部119に記憶する。
発信前処理において、無人機計算機112は、所定の飛行経路を示す飛行経路情報を管理装置140から信号ライン102を通じて受信し、受信した飛行経路情報を無人機記憶部119に記憶する。また、発進前処理において、無人機計算機112は、無人飛行機110の各機器(測位センサ115、無線通信機114およびビデオカメラ116)を起動して初期化させる。
災害地から帰還した無人飛行機110から災害地で取得された撮像データが回収される情報回収処理において、無人機計算機112は無人機記憶部119に記憶された収集情報を信号ライン102を通じて管理装置140に出力し、収集情報の出力後、電源を切って停止(終了)する。例えば、無人機計算機112は、ビデオカメラ116により取得された画像・音声(以下、撮像データという)と機体の位置、姿勢および速度を示す測位データとを時刻で対応付けて、収集情報として、管理装置140に出力する。
保管前処理において、無人機計算機112は電源を切って停止する。」

(5c)「【0028】
管理部143は、災害検出部141により災害の発生が検出されたとき、端子接続部142を介して無人飛行機110に命令信号を出力し、無人飛行機110に発信前処理を実行させる。管理部143は、無人飛行機110に発信前処理を実行させるとき、管理装置記憶部149に記憶されている飛行経路情報およびその他の情報を無人飛行機110に出力する。・・・」

(5d)【図2】は次のとおりである。


(6)甲第6号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第6号証には以下の記載がある。
(6a)「【0007】図2を用いて誘導経路設定部1における経路設定手順を説明する。 まず、新規に出発機若しくは到着機がエントリした時(201)、空港面ネットワーク図を形成する(202)。これは、空港内の通路、交差点及びスポットの幾何学的な接続関係を示す。次に、初期コスト行列(Costij)を作成する(203)。Costijのi及びjは全てのノードに対応する。この作成過程では、まず、全てのノードの組み合わせである行列要素に初期値を与える(204)。具体的には、行列の対角要素(i=j)の場合は0、それ以外の要素(i≠j)の場合は∞を与える(205)。次に、全てのリンク(p,q)すなわち接続状態にあるノードの組み合わせに対して距離コストを設定する(206)。ここでは、交差点pと交差点q間の距離Lpqをコストとして与える(207)。なお、ここでは距離を与えたが、予測速度で各リンク距離を割り、進行時間コストとしても同様の結果が得られる。次に、全ての航空機(1?n)に対して現在位置から目的地まで衝突コストを204?207までに設定したコストに加算する(208?211)。衝突コストは、順方向と逆方向で異なる数値を与える。加算する衝突コストは、順方向の場合、例えばζ(n)・A/dn,mm’とする(210)。 ここで、ζ(n)は、nの時のみ0となり、他は1となる関数とする。すなわち、航空機nの経路を設定する時には、航空機nの予定経路上のリンクについて、航空機nに対してはコストを加算せず、他の航空機に対してはコストを加算することを意味する。 ここで、A及びdn,mm’の設定方法は幾つかあり、定量的には対象とする空港のリンクの平均長さにより異なる。例えば平均のリンク長さが200mであれば、Aを200前後とし、dn,mm’を2^(航空機からの距離/200)とする。この様に設定することで航空機近傍1?3ブロック以内のみ大きなコストを与えるとともに、航空機から離れた予定経路には小さなコストを加算できる。衝突コストの目的から、dn,mm’は航空機からの距離の単調増加関数であれば良い事になるが、効果的なコストとしては、前記の様に平均リンク長さを考慮した数値とするのが良い。一方、航空機の進行方向と逆方向には、より大きなコストB/dn,mm’を与える(211)。ここで、例えばB=5×Aとする。目的からすれば、B>Aであれば良いことになるが、Bを大きくすることは安全側になる。しかし、余り大きくすると、先行航空機の予定経路を後続の航空機に対して閉鎖してしまうことになる。前記の様に、dn,mm’を2^(航空機からの距離/200)とする場合、B=5×A程度にすれば、5?8ブロック先まで大きなコストを与え、それより先は小さなコストを加算することができる。最後に、緊急移動体が存在する場合、その全てに緊急コストを与える(212)。緊急移動体が航空機である場合(213)、目的地までの全リンク(214)に緊急コストZを与える(215)。ここで、Zは、上記のコストと比較して極めて大きな値を与える。例えば、平均リンク距離が200であれば、10000以上を与える。これは、目的地までのリンク距離の合計と比較しても大きい値を与えることで緊急移動体の進行予定経路には進入しない様にする。一方、緊急移動体が航空機でない場合、その緊急移動体の存在するリンクにのみ緊急コストZを与える(216)。一方、最適経路を格納する行列を経路行列(Pij)とするが、その初期値としてPij=iを与える(217)。次に、手順201?216により作成した初期コスト行列及び初期経路行列から最小コスト演算をする(218)。この計算方法としては、任意の点間の最短経路問題を解く手法であればいずれも利用できる。例えば、べき乗法やウォーシャル・フロイド法がそれである。これらの手法の説明は、例えば「ネットワーク理論(伊里、古林著、日科技連刊)」に掲載されているが、本実施形態ではウォーシャル・フロイド法を用いる。なお、この方法の詳細な手順については、図3から図7を用いて後述する。以上により、全てのノード間の最小コスト経路が格納された最小コスト経路行列が求まる。最後に、それを用いて誘導走行待ちの航空機を含めた誘導中の全ての航空機に対して(219)、現在位置と目的地間の最適な経路を検索し(220)、ルートを指示する(221)。なお、これ以降、新規エントリがあるか若しくは変更要求があった場合(222)は、手順224に戻り、初期コスト行列作成203から繰り返す。」

(7)甲第7号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第7号証には以下の記載がある。
(7a)「第1図は、本発明による最短経路探索方式の一実施例を示すブロツク図である。
第1図において、1は地名インデクステーブル検索論理手段、2は地名インデクステーブル手段、3は分類済み経路候補データ群テーブル手段、4は必要経路候補データ群選択論理手段である。
第1図において、101は出発地および目的地のデータ、102は分割された小地区ごとに与えられたインデクス番号、103は出発地あるいは目的地となり得る地名、104は地名インデクステーブル、105は地名インデクステーブル検索ルーチン、106は出発地および目的地インデクス、107は出発地および目的地のインデクスを与えるルーチン、108は2つの地名とその間の交通機関および所要時間から成る個々の経路データ、109は個々の経路データをインデクス番号により分類してまとめた経路候補データ群、110は必要な経路候補データ群のみを選択するためのルーチン、111は経路探索および結果出力のルーチンである。
出発地および目的地のデータ101は、それぞれ最短経路探索の起点、および終点となるもので、プログラムの実行時に各種入力装置から入力される。地名インデクステーブル検索ルーチン105は、出発地および目的地のデータ101を地名インデクステーブル104の地名103と逐次比較する。両者が等しくなつたところで、出発地および目的地のインデクスに値を与えるためのルーチン107を呼ぶ。出発地および目的地のインデクス108に値を与えるためのルーチン107は、出発地および目的地のインデクス106に対して、対応するインデクス番号102を代入する。必要な経路候補データ群のみを選択するためのルーチン110は、分類された経路候補データ群109のなかから、出発地および目的地のインデクス106の値により、必要なデータ群のみを選択し、他は経路探索の対象から外す。経路探索および結果出力ルーチン111は、出発地および目的地のデータ101をもとにして、経路侯補データ群109のうちで選択されたものの中の個々の経路データ108を逐次探索して最句時間となる経路を探索し、結果を各種出力装置に出力する。
第2図は、経路候補データが存在する全地域を複数個の小地区に分割した模様を示す説明図である。個々の小地区には、それぞれ一つづつインデクス番号が付けられる。このインデクス番号は、その小地区内で取扱われているすべての地区のデータと対応しており、この対応付けは地名インデクステーブル104で実施されている。地名インデクステーブル104の中の地名のデータ103のいずれについても、経路候補データ群109の中の地名のデータの中に同一のデータが一つ以上存在する。」(第2頁右上欄第12行?第3頁左上欄第4行)

(8)甲第8号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第8号証には以下の記載がある。
(8a)【0029】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について以下に説明する。本発明は、その好ましい実施の形態において、与えられたグラフについて経路を探索し、与えられた2つのノードを結ぶ最小コスト経路を出力する経路探索装置において、ノードの仮想座標値を記憶する仮想座標記憶手段(図1の103)と、ノードとノードの間を結ぶアークからなるネットワーク構造を記憶するグラフ構造記憶手段(図1の101)と、グラフ構造記憶手段(図1の101)よりグラフ構造を逐次読み出して、探索の対象範囲を探索処理の途中状態として記憶する探索範囲記憶手段(図1の102)と、探索範囲記憶手段(図1の102)に対して探索範囲を逐次読み出し、書き込みを行いながら、与えられた出発点ノードから到達点ノードに至る最短コスト経路を探索する経路探索手段(図1の106)と、迂回量を記憶する第1のしきい値記憶手段(図1の105)と、仮想座標記憶手段(図1の103)に記憶された、出発点ノードの仮想座標と、到達点ノードの仮想座標とで画定される領域を、第1のしきい値記憶手段に記憶された、迂回量のしきい値以上に逸脱する仮想座標をもつノードを経由する経路を、探索範囲記憶手段(図1の102)から削除する探索範囲限定手段(図1の107)と、を備えて構成されている。」

(9)甲第9号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第9号証には以下の記載がある。
(9a)「【0046】
制御装置搭載部R5は、後記する移動制御部130、無線通信部150、主制御部200、バッテリ(図示せず)等を収納している。各センサ61?63等の検出データは、制御装置搭載部R5内の各制御部に送られる。また、各電動モータは、各制御部からの駆動指示信号により駆動される。」

(9b)「【0077】
監視部(監視手段)202は、無線通信部150における無線環境を監視するものである。ここでは、監視部202は、無線通信部150から出力される総合無線環境データの値に基づいて、無線環境が劣化した、あるいは、通信不可(切断状態)となったことを判定する。例えば、総合無線環境データの値が、70%以上の場合は「良好」状態、50%以上70%未満を無線環境が劣化した「低下」状態、50%未満を無線通信の切断の可能性がある「切断」状態と判定する。この監視結果は、探索部203に出力される。
なお、この基準(総合無線環境データの値)は、一例であって、例えば、無線通信の精度を高めたい場合には、基準値を高くする。
また、監視部202は、無線通信部150において、総合無線環境データを算出しない場合は、無線強度、データのエラー回数、再送回数等によって、無線通信の状態を判定することとしてもよい。」

(9c)【図2】は次のとおりである。



(10)甲第10号証の記載事項
本件の出願日前に頒布された甲第10号証には以下の記載がある。
(10a)「【0056】
ステップS7:ステップS2で通信状態が良好でないと判別されると、前記制御基板33はカメラ装置12のモードを緊急モードに設定して緊急モードで飛行する。このとき、制御基板33は同時にコントロールボックス37に対して自動帰還プログラムを実行するように指令し、無人ヘリコプタ1は地上局に向かって正面を向いて自動的に帰還する。」

2 異議申立理由1(特許法第29条第2項,甲第1号証が主引例)について
(1)請求項1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「飛行機である乗物1」は、前者の「飛行体」に相当し、同様に、「端末装置20」は、「端末装置」に相当する。

(イ)前者の「飛行体」は「飛行体位置情報取得部」等のシステム関連の構成を備えるものであり、後者の「飛行機である乗物1に設けられた乗り物装置10」もシステム関連の構成である。
そうすると、上記(ア)も踏まえると、後者の「飛行機である乗物1に設けられた乗物装置10と、当該乗物装置10と無線通信する端末装置20とを備えた情報通信システム」と、前者の「端末装置と、飛行体とを備える飛行体制御システム」とは、「端末装置と、飛行体とを備える飛行体に関するシステム」の限度で一致するといえる。

(ウ)後者の「地図情報が記憶される地図情報記憶部23」は、前者の「地図上の位置を示す地図位置情報を有する情報であり、地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部」に相当するといえる。

(エ)後者の「乗物情報」は、「乗物1の現在位置を含んでいて、現在位置は、例えば、緯度・経度、ある基準点を基準とした座標値、あるいは、その他の位置を指定できる情報であるものであ」り、「送信部12」は「飛行機である乗物1に設けられた乗物装置10」に備えられるものであるから、後者の「前記送信部12から無線で送信された乗物情報を受信する受信部21」と、前者の「前記飛行体の3次元の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部」とは、「前記飛行体の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部」の限度で一致するといえる。

(オ)上記(エ)を踏まえると、後者の「前記乗物1の移動中に変化する情報である乗物情報を取得する取得部11」は、前者の「前記飛行体位置情報を取得する飛行体位置情報取得部」に相当するといえる。

(カ)上記(エ)、(オ)を踏まえると、後者の「前記取得部11が取得した乗物情報を前記端末装置20に無線で送信する送信部12」は、前者の「前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記端末装置に送信する飛行体送信部」に相当するといえる。

(キ)以上のことより、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「端末装置と、飛行体とを備える飛行体に関するシステムであって、
前記端末装置は、
地図上の位置を示す地図位置情報を有する情報であり、地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部と、
前記飛行体の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部と、
を備え、
前記飛行体は、
前記飛行体位置情報を取得する飛行体位置情報取得部と、
前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記端末装置に送信する飛行体送信部とを備える
飛行体に関するシステム。」

〔相違点1〕
本件発明1が「飛行体制御システム」であって、「端末装置」は「前記地図情報と、前記受信部が受信した前記飛行体位置情報とを用いて、当該飛行体位置情報が示す前記飛行体の位置を基点とした前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する飛行情報取得部と、前記飛行情報取得部が取得した前記飛行情報を、前記飛行体に送信する送信部とを備え」、「前記飛行情報取得部は、前記飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報および当該2以上の位置間のコストを有する飛行可能グラフを作成し、前記飛行体の位置情報を当該飛行可能グラフに適用して前記飛行情報を取得する」ものであり、「飛行体」は「前記飛行情報を前記端末装置から受信する飛行体受信部と、前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行するように前記飛行体を制御する飛行体制御部とを備え」るという事項を有するのに対し、甲1発明は、「情報通信システム」であって、「飛行機である乗物1」(飛行体)を制御するものではなく、「端末装置20」及び飛行機1である乗物1に設けられた「乗物装置10」は、本件発明1の上記事項に相当する事項を有さない点。

〔相違点2〕
飛行体の位置を示す「飛行体位置情報」に関し、本件発明1が「3次元の位置」を示すものであるのに対し、甲1発明は3次元の位置の特定がない点。

イ 判断
相違点1について検討する。
甲1発明は、「乗物に乗っているユーザの使用する端末装置によって、その乗物に装着されている装置が取得することができる情報と同様の情報を取得したいという要望」があり、そのため「乗物に装着されている装置が取得できる情報と同様の情報を取得することができる端末装置を有する情報通信システム等を提供すること」(摘示事項(1b))を解決しようとする課題としているものと認める。
すなわち、甲1発明が示すところは、「飛行機である乗物1に設けられた乗物装置10」により取得された「乗物1の現在位置を含んでい」る「乗物情報」を「端末装置20」に送信するにとどまるものであり、「飛行機である乗物1」の操縦は人間が行っているものであるから(摘示事項(1c)の段落【0020】の「乗物1の・・・操縦」、同【0022】の「飛行機の操縦桿」との記載を参照。)、「端末装置20」により本件発明1の「飛行情報」に相当するものを取得して「乗物装置10」に対し当該情報を送信する必要性はもとよりないものである。
そうすると、甲第2号証あるいは甲第3号証に「経路生成装置」あるいは「経路探索システム」に係る技術的事項が記載されているとしても、当該技術的事項を甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。また、仮に、甲1発明に当該技術的事項を適用したとしても、甲第2号証あるいは甲第3号証に記載されているのは、甲1発明と同様人間が操縦を行っているものであって(記載事項(2f)、記載事項(3d)参照。)、「飛行体制御部」に係る事項を有するものではなく、さらに、「飛行体位置情報が示す飛行体の位置を基点とした前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する」ものでもないため(なお、記載事項(3e)に示されるのは、「ある一定以上の値のずれが生じた場合」にその地点を出発地点とするものであり、ずれが生じなければ、当初の設定通りであるため、本件発明1の上記「飛行情報を取得する」こととは技術的な意味が異なるものである。)、上記相違点1に係る本件発明1の事項を有するものには至らない。
異議申立人は、本件発明1が「飛行体制御システム」であることに対し、「甲第4号証及び甲第5号証に示すように、『端末装置が飛行体を制御する飛行体制御システム』は、飛行体の制御分野における周知技術である。」(特許異議申立書第16頁第22?24行)と主張し、「飛行体受信部」及び「飛行体制御部」に対し、「『外部(端末装置等)から受信した経路(飛行情報)に従って自動的に飛行する制御を行うことについても、甲第4号証及び甲第5号証に示すように、飛行体の制御分野における周知技術である。」(特許異議申立書第16頁第26行?末行)と主張する。しかしながら、異議申立人が主張する技術が周知技術であるとしても、上述したとおり、甲1発明が示すところは、「飛行機である乗物1に設けられた乗物装置10」により取得された「乗物1の現在位置を含んでい」る「乗物情報」を「端末装置20」に送信するにとどまるものであり、「飛行機である乗物1」の操縦は人間が行っているものである上、「端末装置20」はその使用時には「乗物1」内で用いられるものであって(記載事項(1c)の段落【0020】参照。)、甲1発明の上記課題から考えても、異議申立人のいう周知技術を甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
また、「経路探索において出発地点を現在地にすることは文献を挙げるまでもなく周知技術である。」(特許異議申立書第15頁末行?第16頁第1行)と主張するが、仮に当該技術が周知技術であったとしても、甲1発明は、本件発明1の「飛行情報」に相当する情報を「端末装置20」において取得し、その情報を「乗物装置10」が受信して「飛行機である乗物1」の制御を行うものではないので、当該周知技術を適用するための前提を欠いているものであり、甲1発明の上記課題から考えても、異議申立人のいう周知技術を甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。なお、「更に言えば、この甲2号証には、ヘリコプタが現在地を検出して地上システムに送信すること(段落0031)、言い換えれば、出発地点を現在地にすることが可能な構成についても記載されている。」(特許異議申立書第16頁第2?4行;なお、段落【0031】には主張に対応する記載はなく、段落【0032】の誤記と認める。)とも主張するが、記載事項(2e)の段落【0032】の「地上システム101でもヘリコプタの現在位置を画面上にマーカとして表示することができ、地上システムユーザは現在状況を認識することができる。」との記載から明らかなように、単に地上システムユーザがヘリコプタの現在位置の把握を可能とすることにとどまるものであり、「現在位置」を「経路生成」に利用することの示唆があるとはいえない。
そして、他の証拠を検討しても、上記相違点1に係る本件発明1の事項を容易想到とする技術の開示は見当たらない。

以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲第2、3号証に記載された技術的事項、証拠の提出のない周知技術、甲第4、5号証に記載された周知技術及び甲第6?8号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

(2)請求項2?4について
本件発明2?4は、請求項1に特定される事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(1)と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

3 異議申立理由2(特許法第29条第2項,甲第2号証が主引例)について
(1)請求項1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)後者の「ヘリコプタ」は、前者の「飛行体」に相当する。

(イ)後者の「地上システム101」も前者の「端末」も、コンピュータを用いた装置であることは技術的に明らかである。また、前者の「飛行体」は、「飛行体位置情報取得部」等のシステム関連の構成を備えるものであり、後者の「ヘリコプタに搭載した機上システム102」もシステム関連の構成である。
そうすると、上記(ア)も踏まえると、後者の「地上システム101と、ヘリコプタに搭載した機上システム102を備える経路生成装置」と、前者の「端末装置と、飛行体とを備える飛行体制御システム」とは、「コンピュータを用いた装置と、飛行体とを備える飛行体に関するシステム」の限度で一致するといえる。

(ウ)後者の「線地形データベース170、点地形データベース180、標高データベース190からなる3次元地形情報記憶部」は、前者の「地図上の位置を示す地図位置情報を有する情報であり、地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部」に相当するといえる。

(エ)後者の「前記ヘリコプタに搭載した機上システム102は、測地衛星を用いたGPS(グローバル・ポジショニング・システム)と自律航法装置によって現在位置を認識しており、飛行中に新たな脅威対象物を発見した場合、機上システムの通信部106を介して地上システム101に送信することで、新たな位置情報を誤りなく送付することができ、さらに、現在位置も送付する」という事項について、「現在位置」の受信が「地上システム通信部160」により行われていることは明らかであり、当該「地上システム通信部160」は、前者の「受信部」に相当するといえる。
そうすると、後者の上記事項と、前者の「前記飛行体の3次元の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部」とは、「前記飛行体の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部」の限度で一致するといえる。

(オ)後者の「経路コスト計算のための関数、および脅威評価の関数を記録する知識ベース130と、前記入力装置110から入力された情報に基づいて経路コスト評価のための関数、および、水平面を矩形に分割する4枚の鉛直平面と2枚の水平面とで囲まれた領域を探索領域とし、前記探索領域を前記4枚の鉛直平面のうち少なくとも1つの平面に平行な平面群と、前記2枚の水平面の間に設定した水平面によって要素分割することを決定する経路探索推論部120と、前記経路探索推論部120から決定された情報に基づいて前記3次元地形情報記憶部から探索領域内の3次元地形情報を抽出する、線地形ランドマークマップ抽出部173、点地形ランドマークマップ抽出部183、標高マップ抽出部193からなる3次元地形情報抽出部と、前記経路探索推論部120からの情報と前記3次元地形情報抽出部により抽出された3次元地形情報に基づいて経路コストが最小となるような経路を探索する経路探索部140と、前記経路探索部140で探索された経路を表示する出力装置150とを備え」るという事項について、「経路」は飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなることは技術的に明らかである。
そうすると、後者の上記事項と、前者の「前記地図情報と、前記受信部が受信した前記飛行体位置情報とを用いて、当該飛行体位置情報が示す前記飛行体の位置を基点とした前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する飛行情報取得部」とは、「前記地図情報を用いて、前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する飛行情報取得部」の限度で一致するといえる。

(カ)後者の「地上システム101において探索された結果は、データリンクを介して前記ヘリコプタに搭載した機上システム102に伝えられ」るという事項について、「探索された結果」の送信が「地上システム通信部160」により行われていることは明らかであり、当該「地上システム通信部160」は、前者の「送信部」に相当するといえる。
そうすると、後者の上記事項は、前者の「前記飛行情報取得部が取得した前記飛行情報を、前記飛行体に送信する送信部」に相当するといえる。

(キ)後者の「測地衛星を用いたGPS(グローバル・ポジショニング・システム)と自律航法装置によって現在位置を認識しており」、「現在位置も送付することにより、地上システム101でもヘリコプタの現在位置を画面上にマーカとして表示することができ、地上システムユーザは現在状況を認識することができる」という事項について、「地上システム101」はヘリコプタの位置情報取得部といえるものを有していることは自明のことである。
そうすると、後者の上記事項は、前者の「前記飛行体位置情報を取得する飛行体位置情報取得部」に相当するといえる。

(ク)後者の「飛行中に新たな脅威対象物を発見した場合、機上システムの通信部103を介して地上システム101に送信することで、新たな位置情報を誤りなく送付することができ、さらに、現在位置も送付すること」という事項について、「機上システムの通信部103」が、前者の「飛行体送信部」に相当するといえる。
そうすると、上記(イ)も踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記端末装置に送信する飛行体送信部」とは、「前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記コンピュータを用いた装置に送信する飛行体送信部」の限度で一致するといえる。

(ケ)後者の「地上システム101において探索された結果は、データリンクを介して前記ヘリコプタに搭載した機上システム102に伝えられ」るという事項について、「機上システムの通信部103」により「結果」が受信されていることは自明のことであり、当該「機上システムの通信部103」は前者の「飛行体受信部」にも相当する。
そうすると、上記(イ)、(オ)も踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記飛行情報を前記端末装置から受信する飛行体受信部」とは、「前記飛行情報を前記コンピュータを用いた装置から受信する飛行体受信部」の限度で一致するといえる。

(コ)後者の「経路コスト計算のための関数、および脅威評価の関数を記録する知識ベース130と、前記入力装置110から入力された情報に基づいて経路コスト評価のための関数、および、水平面を矩形に分割する4枚の鉛直平面と2枚の水平面とで囲まれた領域を探索領域とし、前記探索領域を前記4枚の鉛直平面のうち少なくとも1つの平面に平行な平面群と、前記2枚の水平面の間に設定した水平面によって要素分割することを決定する経路探索推論部120と、前記経路探索推論部120から決定された情報に基づいて前記3次元地形情報記憶部から探索領域内の3次元地形情報を抽出する、線地形ランドマークマップ抽出部173、点地形ランドマークマップ抽出部183、標高マップ抽出部193からなる3次元地形情報抽出部と、前記経路探索推論部120からの情報と前記3次元地形情報抽出部により抽出された3次元地形情報に基づいて経路コストが最小となるような経路を探索する経路探索部140と」を備えるという事項について、記載事項(2e)を踏まえると、後者の「経路コスト」は、前者の「2以上の位置間のコスト」に相当するといえ、また、前者の「飛行可能グラフ」とは、具体的には「飛行体12が飛行可能な2以上の位置を示す位置情報、および、当該2以上の位置間のコストを有する情報」(本件明細書段落【0047】)というものであるから、後者の「経路」を算出するにあたり実質的に飛行可能グラフに相当するものを用いているといえる。
そうすると、上記(オ)も踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記飛行情報取得部は、前記飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報および当該2以上の位置間のコストを有する飛行可能グラフを作成し、前記飛行体の位置情報を当該飛行可能グラフに適用して前記飛行情報を取得する」ということとは、「前記飛行情報取得部は、前記飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報および当該2以上の位置間のコストを有する飛行可能グラフを作成し、前記飛行情報を取得する」ということの限度で一致するといえる。

(サ)以上のことより、本件発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「コンピュータを用いた装置と、飛行体とを備える飛行体に関するシステムであって、
前記コンピュータを用いた装置は、
地図上の位置を示す地図位置情報を有する情報であり、地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部と、
前記地図情報を用いて、前記飛行体の飛行可能な範囲の条件である飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報からなる飛行経路を示す飛行情報を取得する飛行情報取得部と、
前記飛行体の位置を示す飛行体位置情報を、前記飛行体から受信する受信部と、
を備え、
前記飛行体は、
前記飛行体位置情報を取得する飛行体位置情報取得部と、
前記飛行体位置情報取得部が取得した前記飛行体位置情報を、前記コンピュータを用いた装置に送信する飛行体送信部と、
前記飛行情報を前記コンピュータを用いた装置から受信する飛行体受信部と、
前記飛行情報取得部は、前記飛行範囲条件を満たす2以上の位置情報および当該2以上の位置間のコストを有する飛行可能グラフを作成し、前記飛行情報を取得する飛行体に関するシステム。」

〔相違点3〕
本件発明1が「飛行体制御システム」であって、「コンピュータを用いた装置」は「端末装置」であり、「端末装置」の「飛行情報取得部」は「前記飛行体の位置情報を当該飛行可能グラフに適用して前記飛行情報を取得する」ものであり、「飛行体」は「前記飛行情報を前記端末装置から受信する飛行体受信部と、前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行するように前記飛行体を制御する飛行体制御部とを備え」るという事項を有するのに対し、甲2発明は、「経路生成装置」であって、ヘリコプタ(飛行体)を制御するものではなく、「コンピュータを用いた装置」は「地上システム101」であり、「地上システム101」及び「ヘリコプタに搭載した機上システム102」は、本件発明1の上記事項に相当する事項を有さない点。

〔相違点4〕
飛行体の位置を示す「飛行体位置情報」に関し、本件発明1が「3次元の位置」を示すものであるのに対し、甲2発明は3次元の位置の特定がない点。

イ 判断
相違点3について検討する。
甲2発明は、「適切な経路誘導用に道標としてランドマークを活用することは有効である。このため、経路生成に際し、実際の地形情報などからランドマークとして活用できるものを取り入れて経路探索を行うことは有効である。しかし、従来の経路生成方法では山などを障害物として扱う以外には、地形情報を誘導のためのランドマークとして有効に活用せず、必ずしも最適な経路を決定しているとは言えなかった。」(記載事項(2b)の段落【0007】)ということを主たる解決しようとする課題とし、そして、甲2発明の構成を採用することにより、「地形情報を用いて、誤りの起こりにくい誘導を可能とする経路が選択できるようになる。これによって、指定経路からはずれることによって起こる危険性を回避し、指定経路に沿うために無為にジグザグに飛ぶ無駄を減らすことで、平均飛行所要時間を短縮する。また、多くの脅威の存在など、経路決定に関する困難な意思決定を緊急に行う必要のある場合には、客観的な根拠を持った合理的な経路を装置が示唆することで、意思決定の遅れや状況認識不足による危険発生の可能性を減少させることができる。」(記載事項(2g))という作用効果を奏するものと認める。
すなわち、甲2発明が示すところは、パイロットが誤った操縦をしないようにするために「地上システム101」がランドマークを活用して作成した「経路」を「機上システム102」に伝え、パイロットはその「経路」を参照しながら操縦をするものである(記載事項(2f)参照。)。
異議申立人は、本件発明1が「飛行体制御システム」であることに対し、「本件特許発明1のIは、上述したように、飛行体の制御分野における周知技術であるため、甲2発明にこの周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。」(特許異議申立書第19頁第18?20行;「I」は「前記飛行体受信部が受信した前記飛行情報が示す前記飛行経路に従い飛行するように前記飛行体を制御する飛行体制御部とを備え」という事項であり、「上述したように」との主張は特許異議申立書第16頁第26行?末行におけるものと認める。上記2(1)イ参照。)と主張する。
しかしながら、異議申立人の主張する技術が周知技術であったとしても、上述したとおり、甲2発明が示すところは、上述したようにパイロットが誤った操縦をしないようにするために「地上システム101」がランドマークを活用して作成した「経路」を「機上システム102」に伝え、パイロットはその「経路」を参照しながら操縦をするものであって、甲2発明の上記課題から考えても、異議申立人のいう周知技術を甲2発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
また、「経路探索において出発地点を現在地にすることは文献を挙げるまでもなく周知技術である。」(特許異議申立書第19頁第15?16行)とも主張するが、仮に当該技術が周知技術であったとしても、甲2発明において、「経路」を探索するのは「端末装置」ではなく「地上システム101」である上、上述したとおり「地上システム101」から「機上システム102」により伝えられた「経路」を参照しながらパイロットがヘリコプタを操縦するものであって、「現在位置」を出発地点とするものではもとよりなく、さらに、「現在位置」の送付は、「地上システム101でもヘリコプタの現在位置を画面上にマーカとして表示することができ、地上システムユーザは現在状況を認識することができる」ためのものであって、「現在位置」を「経路」の探索に利用することの示唆があるとはいえないので、当該周知技術を甲2発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
そして、他の証拠を検討しても、上記相違点3に係る本件発明1の事項を容易想到とする技術の開示は見当たらない。

以上のとおりであるから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、証拠の提出のない周知技術及び甲第4、5号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-24 
出願番号 特願2013-210196(P2013-210196)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B64C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 諸星 圭祐森本 哲也  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
中村 泰二郎
登録日 2018-06-29 
登録番号 特許第6358791号(P6358791)
権利者 株式会社 ミックウェア
発明の名称 飛行体制御システム  
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