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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 1項2号公然実施  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1351688
審判番号 無効2015-800023  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-06 
確定日 2019-03-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5403850号「眼科用清涼組成物」の特許無効審判事件についてされた平成29年10月11日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10210号、平成30年9月6日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第5403850号の明細書及び特許請求の範囲を、平成29年9月4日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5403850号(請求項の数6)は、平成17年6月7日に出願(優先権主張 平成16年6月8日)され、平成25年11月8日に設定登録された。
これに対して、池田尚美(以下「請求人」という。)は、平成27年2月6日提出の審判請求書によって、本件特許を無効にすることについて、本件特許無効審判を請求した。
以後の主な手続の経緯は次のとおりである。

平成27年 4月24日付け 答弁書(被請求人)
同年 6月16日付け 審理事項通知書(当審)
同年 8月25日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 8月25日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 8月26日付け 上申書(請求人)
同年 9月 8日 口頭審理
同年 9月24日付け 上申書(請求人)
同年12月 1日付け 無効2015-800023号の審決
(本件審判の請求は成り立たない。)
(第一次審決)
平成28年 1月 8日 知財高裁出訴
平成29年 1月18日 平成28年(行ケ)第10005号判決言渡 (審決取消)(第一次判決)
同年 3月 3日付け 訂正請求書、上申書(被請求人)
同年 4月17日付け 請求人及び被請求人に対する審尋
同年 5月18日付け 回答書、弁駁書(請求人)
同日付け 回答書(被請求人)
同年 6月26日付け 審決予告
同年 9月 4日付け 訂正請求書、上申書(被請求人)
同年 9月 7日付け 上申書(被請求人)
同年 9月20日付け 訂正請求書についての手続補正書
同年10月11日付け 無効2015-800023号の審決
(訂正を認める。請求項1ないし6に係る 発明を無効とする。)(第二次審決)
同年11月16日 知財高裁出訴
平成30年 9月 6日 平成29年(行ケ)第10210号判決言渡 (審決取消)(第二次判決)

第2 訂正請求について
平成29年3月3日付け訂正請求書による訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。
平成29年9月20日付け手続補正書により補正された、平成29年9月4日付け訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正」という。)の趣旨及び訂正の内容は、それぞれ以下のとおりのものである。

1 訂正請求の趣旨
特許第5403850号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。

2 訂正の内容
本件訂正による訂正の内容は、次の(1)?(5)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「0.5万?4万」とあるのを、「2万?4万」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「眼科用清涼組成物。」とあるのを、「眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」と訂正する。

(3)訂正事項3、6
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0021】に「、マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約0.7万等)等が利用できる。」とあるのを、「が利用できる。」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「0.5万?4万」とあるのを、「2万?4万」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「眼科用清涼組成物。」とあるのを、「眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」と訂正する。

なお、訂正事項1?3は、一群の請求項である請求項1?5について請求され、また、訂正事項4?6は、請求項6について請求されている。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、4について
訂正事項1、4は、訂正前の請求項1又は6において、コンドロイチン硫酸或いはその塩の平均分子量の数値範囲を、「0.5万?4万」から「2万?4万」へ限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、コンドロイチン硫酸或いはその塩の平均分子量の数値について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」ともいう。)の段落【0021】には、「本発明に用いるコンドロイチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり、平均分子量が0.5万?50万のものを用いる。より好ましくは0.5万?20万、さらに好ましくは平均分子量0.5万?10万、特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又はその塩は市販のものを利用することができ、例えば、生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万、平均分子量約4万等)、マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約0.7万等)等が利用できる。」と記載されている。
当該段落では、コンドロイチン硫酸或いはその塩の平均分子量として、「特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。」と、「0.5万?4万」の範囲が記載されているところ、当該「0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩」に該当する市販のものとして、「生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万、平均分子量約4万等)」が記載されていると理解できる。すなわち、「0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩」に該当する具体的な平均分子量の数値として、「2万」「4万」という数値が記載されているといえる。
そうすると、訂正事項1、4は、本件特許明細書に記載された「0.5?4万」の範囲に包含される範囲に限定するものであって、下限値を具体的に記載される数値「2万」にしたものといえるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2、5について
訂正事項2、5は、本件訂正前の「眼科用清涼組成物」から、甲1に記載された、必須の成分として「局所麻酔剤」を含む眼科用清涼組成物を除くものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件訂正前の「眼科用清涼組成物」から、甲1に記載された、必須の成分として「局所麻酔剤」を含む眼科用清涼組成物を除くこととする訂正事項2、5は、本件特許明細書に、局所麻酔剤は任意成分であり(段落【0034】)、実施例として局所麻酔剤を含有しない眼科用清涼組成物が具体的に記載されていることを併せ考慮すると、新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3、6について
訂正事項3、6は、本件訂正前の請求項1又は6において、コンドロイチン硫酸或いはその塩の平均分子量の数値範囲を、「0.5万?4万」から「2万?4万」へ限定する訂正事項1、4と整合させるために、本件特許明細書の段落【0021】の「かかるコンドロイチン硫酸或いはその塩は市販のものを利用することができ、例えば、生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万、平均分子量約4万等)、マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約0.7万等)等が利用できる。 」なる記載における、「、マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約0.7万等)等」なる記載を削除したものといえる。 このため、訂正事項3、6は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3、6は、本件特許明細書の段落【0021】の記載から「マルハ株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約0.7万等)等」なる記載を削除しただけであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、平成29年9月4日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。

第3 訂正発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、平成29年9月4日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、請求項の番号に従い「訂正発明1」?「訂正発明6」といい、まとめて「訂正発明」ともいう。)。
「【請求項1】
a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。
【請求項2】
さらに、非イオン性界面活性剤を0.001?5w/v%含有する請求項1に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項3】
さらに、エデト酸又はその塩を0.0001?1w/v%含有する請求項1又は2に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項4】
さらに、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を、それらの総量として0.01?5w/v%含有する請求項1乃至3に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項5】
点眼剤又は洗眼剤である請求項1乃至4に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項6】
a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」

第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法
1 請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法
請求人が提出した審判請求書、口頭審理陳述要領書及び上申書によれば、請求人は、「特許第5403850号の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された発明(以下、請求項の番号に従い「本件特許発明1」?「本件特許発明6」という。)についての特許を無効とする、審判請求費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、以下の無効理由により、本件特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として下記の書証を提出している。

(1)無効理由1
本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。
(1-1)本件特許発明1?6は、「平均分子量」の意義が不明であるから明確性要件に違反し、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1-2)本件特許発明1?6は、「0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」を発明特定事項とするところ、その含量の記載である「0.01?10w/v%」は、列挙される全成分の総量なのか各列挙された成分ごとの量なのか不明であるため、その発明の範囲が不明であり、本件特許発明1?6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)無効理由2
本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。
(2-1)本件特許発明は、「平均分子量」の定義がないため、実施例の意義が不明であり、また追試不能であるから、本件特許の発明の詳細な説明は実施可能に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2-2)本件特許発明について、本件特許明細書は、「平均分子量」2万以外のコンドロイチン硫酸ナトリウムについて(本件特許発明1?5)、及び本件特許発明6については「平均分子量」1万と「平均分子量」2万の特定の組合せの実施形態以外のコンドロイチン硫酸ナトリウムについて発明の詳細な説明に実施可能な記載がなされていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2-3)コンドロイチン硫酸ナトリウムについて実施例に記載の「特定濃度」以外は本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施可能に記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2-4)コンドロイチン硫酸ナトリウムに加えて他の高分子(粘稠化剤)を含む剤型は本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施可能に記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2-5)無機塩として塩化ナトリウム0.5w/v%を用いる態様以外の態様は本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施可能に記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2-6)清涼化剤としてl-メントール、d-カンフル及びd-ボルネオールの3種類を特定濃度で混合したもの以外の態様は本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施可能に記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)無効理由3
本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。
(3-1)本件特許発明は、「平均分子量」の定義がないため、実施例の意義が不明であり、また追試不能であるから、本件特許発明の詳細な説明には、本件特許発明が記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3-2)本件特許発明について、本件特許明細書は、「平均分子量」2万以外のコンドロイチン硫酸ナトリウムについて(本件特許発明1?5)、及び本件特許発明6については「平均分子量」1万と「平均分子量」2万の特定の組合せの実施形態以外のコンドロイチン硫酸ナトリウムについて本件特許発明の範囲にまで一般化又は拡張できるように本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3-3)コンドロイチン硫酸ナトリウムについて実施例に記載の「特定濃度」以外の本件特許発明の範囲にまで一般化又は拡張できるように本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3-4)コンドロイチン硫酸ナトリウムに加えて他の高分子(粘稠化剤)を含む剤型等の本件特許発明の範囲にまで一般化又は拡張できるように本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3-5)無機塩として塩化ナトリウム0.5w/v%を用いる態様以外の態様は本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施可能に記載されておらず、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明が記載されていないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3-6)清涼化剤としてl-メントール、d-カンフル及びd-ボルネオールの3種類を特定濃度で混合したものから、本件特許発明の範囲にまで一般化又は拡張できるように本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4)無効理由4
本件特許発明1?6は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(5)無効理由5
本件特許発明1、3?6は、甲第4号証、甲第7?10号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(6)無効理由6
本件特許発明1、3?6は、甲第4号証、甲第7?10号証によって証明されるように、本件出願前に公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(7)無効理由7
本件特許発明1?6は、甲第1、3、4、5?13、14号証に記載された発明又は公然実施された発明に基づいて、甲第2、6、10、11?13、15?16、21?22、23、24号証の記載に照らし、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。
(7-1)本件特許発明1?6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(7-2)本件特許発明1?6は、甲第13号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(7-3)本件特許発明1?6は、本件特許出願前に公然実施され刊行物公知となった「新スマイルコンタクトクール」に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(7-4)本件特許発明1?6は、本件特許出願前に公然実施され刊行物公知となった「新アスパライトフレッシュ(中新薬業)」、「新アスパクール(中新薬業)」、「ピタール目薬(中新薬業)」に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(8)証拠方法
甲第1号証 特開2003-183157号公報
甲第2号証 マルハニチロ報告書(2014年2月4日作成)
甲第3号証 最近の新薬2004、薬事日報社、2004年5月発行
甲第4号証 一般薬 日本医薬品集、じほう、2003年7月発行
甲第5号証 新スマイルコンタクトクールの販売時期を示すウェブサイト(http://www.kion.co.jp/press/2003080.htmより2013年12月13日ダウンロード)
甲第6号証 新スマイルコンタクトクール添付文書(ライオン)
甲第7号証 新アスパライトフレッシュ添付文書(中新薬業)
甲第8号証 新アスパクール添付文書(中新薬業)
甲第9号証 ピタール目薬添付文書(中新薬業)
甲第10号証 新アスパライトフレッシュ、新アスパクール、ピタールの販売時期を示すウェブサイト(http://www.pref.toyama/jp/sections/1208/syonin.htmより2003年11月12日ダウンロード)
甲第11号証 ケミカルプロファイル(コンドロイチン硫酸ナトリウムの項)、2009年6月号、Vol.38, No. 6 83-84
甲第12号証 ファインケミカル2004(コンドロイチン硫酸ナトリウムの項)、2003年
甲第13号証 特開2001-187733号公報
甲第14号証 特開2002-97129号公報
甲第15号証 眼科ケア2005年、Vol.7、No.2 p10?18、2005年2月
甲第16号証 Maurice L.Huggins J.Am.Chem.Soc.,1942, 64 (11), pp2716-2718
甲第17号証 高分子大辞典、952-953頁、平成6年(1994年)発行、丸善、監訳者三田達
甲第18号証 明治大学プレゼン資料(http://jstshingi.jp/abst/p/10/1044/ryu-mei5.pdf、2010年ごろ作成、2014年1月9日ダウンロード)
甲第19号証 本件特許の拒絶査定不服審判段階で提出された平成25年9月3日付回答書
甲第20号証 本件特許の審査段階で提出された平成23年9月15日付意見書
甲第21号証 臨眼、36(6):567-571、1982
甲第22号証 生化学工業コンドロイチン硫酸ナトリウム、医家向けパンフレット(2006年4月)
甲第23号証 Mathews,M.B.,Biol.Rev.,42,499-551(1967)[写しは547頁まで入手可能であったため499-547頁を提出]
甲第24号証 医薬品添加物ハンドブック、日本薬学会訳編、50頁?53頁、奥付及び表紙(1989年、丸善株式会社)
甲第25号証 総合多糖類科学、349?361頁、奥付、表紙、1974年
甲第26号証 第十四改正日本薬局方解説書 生薬総則、第二部医薬品各条、参照紫外可視吸収スペクトル、参照赤外吸収スペクトル、参考情報、附録、のうち、D-959, 2001、廣川書店
甲第27号証 高分子辞典、622-623、627-628頁、朝倉書店1971年
<以上、審判請求書に添付。>

甲第28号証 特開2004-196695号公報
甲第29号証 特開2004-263109号公報
甲第30号証 特開2000-191534号公報
甲第31号証 特開平06-128289号公報
甲第32号証 特開2002-097129号公報
甲第33号証 「関節機能改善剤 処方せん医薬品 スベニールRディスポ関節注25mg、スベニールRバイアル関節注25mg、SUVENYLR ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射液」インタビューフォーム(2011年2月)
甲第34号証 「関節機能改善剤 処方せん医薬品 スベニールRディスポ、スベニールRバイアル、SUVENYLR ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射液」の添付文書(2000年6月改訂)
甲第35号証 特開2011-37736号公報
甲第36号証 化学大辞典2 縮刷版(共立出版株式会社、1963年)249?251頁「海水」の項(海水)、表紙、奥付
甲第37号証 製剤学(南山堂、1974年)162?165頁、表紙、奥付
甲第38号証 医薬品添加物事典 2000(日本医薬品添加剤協会編集、2000年4月) 70頁(「乾燥炭酸ナトリウム」の項)、165頁(「炭酸ナトリウム」の項)、表紙、奥付
甲第39号証 医薬品添加物事典 2000(日本医薬品添加剤協会編集、2000年4月) 72?73頁(「d-カンフル」および「dl-カンフル」の項)、287頁(「l-メントール」の項)、表紙、奥付
甲第40号証 甲第4号証(一般薬 日本医薬集、2003年発行、編集:財団法人日本医薬情報センター)の凡例(viii頁)
甲第41号証 被請求人が出願した別出願(特願2010-50461号)において平成24年11月9日に提出した意見書
甲第42号証 眼科New Insight 「点眼薬-常識と非常識-」(1994)11頁
甲第44号証 ’98?’99 ヴィジョンケア マーケットレポート(1999年、株式会社矢野経済研究所)224?226頁および表紙
<以上、口頭審理陳述要領書に添付。>

甲第43号証 マルハニチロ社報告書(「弊社製品「局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム」の平均分子量について」、平成27年8月24日付)
<以上、平成27年8月26日付け上申書に添付。>

甲第45号証 局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム Lot No. PUC-790の試験成績書(出荷年月日2003年1月6日)
甲第46号証 医薬発第1097号 厚生労働省医薬局長通知平成13年10月5日
甲第47号証 International Standard ISO9394“Ophthalmic optics -Contact Lenses and contact lens care products - Determination of biocompatibility by ocular study with rabbit lenses ” Reference number 9394:1998(E)Second Edition 1998-08-15 (1998年)
甲第48号証 OECD SIDS MENTHOLS(CASNo:2216-51-5, 15356-60-2, 89-78-1, 1490-04-6, UNEP PUBLICATIONS,SIDS Initial Assessment Report, For SIAM 16(Paris27-30, May 2003)(最終更新2003年8月)
<以上、平成27年9月24日付け上申書に添付。>

甲第49号証 知財高判平成20年12月25日・平成20年(行ケ)10254号審決取消請求事件[「遊技機の回転リールユニット」事件]
甲第50号証 知財高判平成20年5月30日・平成18年(行ケ)10563号審決取消請求事件[ソルダーレジスト事件]
甲第51号証 特許庁審査基準 第IV第2章「新規事項を追加する補正」
甲第52号証 判例タイムズ1290号,224頁[WestLawRJAPANのPDF版を提出]
甲第53号証 知財高判平成18年6月20日(平成17(行ケ)10608号)[車輛用衝突補強材の製造方法事件]
甲第54号証 知財高判平成27年1月28日・平成26年(行ケ)第10068号事件[熱可塑性プラスチック事件]
<以上、 平成29年5月18日付け弁駁書に添付。>

(以下「甲第1号証」?「甲第54号証」を、それぞれ「甲1」?「甲54」という。)

2 被請求人の主張、及び、提出した証拠方法
被請求人が提出した答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書によれば、被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件特許には、上記無効理由は存在しない点を主張し、証拠方法として、下記の書証を提出している。

(1)証拠方法
乙第1号証 特開平10-139666号公報
乙第2号証 特開平9-202731号公報
乙第3号証 特開2002-3384号公報
乙第4号証 特開2001-187731号公報
乙第5号証 特開2002-154989号公報
乙第6号証 特開2001-125052号公報
乙第7号証 特開2003-201241号公報
乙第8号証 特開2002-345929号公報
乙第9号証 特開2002-20320号公報
乙第10号証 信越化学工業株式会社が作成した医薬品添加剤メトローズのカタログ(1994年 8月)
<以上、答弁書に添付。>

乙第11号証 薬事審査研究会監修「医薬品製造指針別冊 一般用医薬品製造(輸入)承認基準 2000年版」、株式会社じほう、平成12年 4月25日発行、第99-100頁
乙第12号証 「非臨床試験マニュアル」、株式会社エル・アイ・シー、2001年 7月20日発行、第179頁
<以上、口頭審理陳述要領書に添付。>

乙第13号証 国際公開第01/12675号
乙第14号証 特開2003-160498号公報
乙第15号証 特開2000-65837号公報
乙第16号証 特開2003-335801号公報
<以上、平成29年3月3日付け上申書に添付。>

乙第18号証 特開2002-3384号公報
乙第19号証 特開2004-43645号公報
乙第20号証 国際公開第2004/081054号
乙第21号証 特開2004-361144号公報(なお、配列表に係る第14-332頁省略)
乙第22号証 生化学工業株式会社医薬営業部長伊達晋が2017年4月26日に作成した回答書
乙第23号証 2015年 4月に発行された生化学工業株式会社のコンドロイチン硫酸ナトリウムのパンフレット(英語版)
乙第24号証 特開平11-172029号公報
<以上、平成29年5月18日付け回答書に添付。>

乙第25号証 大阪大学薬学部中川晋作教授が作成した2017年8月3日付陳述書(写し)
乙第26号証 特開2003-252906号公報
乙第27号証 特開2004-210714号公報
<以上、平成29年9月4日付け上申書に添付。>

乙第28号証 生化学工業株式会社医薬営業部長伊達晋が2017年9月7日に作成した回答書(写し)
<以上、平成29年9月7日付け上申書に添付。>

(以下「乙第1号証」?「乙第28号証」を、それぞれ「乙1」?「乙28」という。)

第5 当審の判断
当審は、本件特許は請求人が主張する無効理由1?7によっては無効にすべきものであるとはいえない、と判断する。その理由は、以下のとおりである。

1 無効理由1について
(1)請求人は、「平均分子量」の意義が不明である点(1-1)、及び、塩化カリウム等の成分bの含有量の記載である「0.01?10w/w%」は、列挙される全成分の総量なのか各列挙された成分ごと量なのか不明である点(1-2)を指摘し、明確性要件を満たしていないと主張するので、以下検討する。

ア 無効理由(1-1)について
第二次判決では、本件訂正後の特許請求の範囲の明確性要件について、次のとおり判示された。

「ア 本件訂正後の特許請求の範囲にいう『平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩』にいう平均分子量が,本件出願日当時,重量平均分子量,粘度平均分子量,数平均分子量等のいずれを示すものであるかについては,本件訂正明細書において,これを明らかにする記載は存在しない。もっとも,このような場合であっても,本件訂正明細書におけるコンドロイチン硫酸又はその塩及びその他の高分子化合物に関する記載を合理的に解釈し,当業者の技術常識も参酌して,その平均分子量が何であるかを合理的に推認することができるときには,そのように解釈すべきである。
イ 上記1(2)カのとおり,本件訂正明細書には,『本発明に用いるコンドロイチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり,平均分子量が0.5万?50万のものを用いる。より好ましくは0.5万?20万,さらに好ましくは平均分子量0.5万?10万,特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又はその塩は市販のものを利用することができ,例えば,生化学工業株式会社から販売されている,コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万,平均分子量約2万,平均分子量約4万等)が利用できる。』(段落【0021】)と記載されている。
上記の『生化学工業株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万,平均分子量約2万,平均分子量約4万等)』については,本件出願日当時,生化学工業株式会社は,同社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量について重量平均分子量の数値を提供しており,同社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量として当業者に公然に知られた数値は重量平均分子量の数値であったこと…からすれば,その『平均分子量』は重量平均分子量であると合理的に理解することができ,そうだとすると,本件訂正後の特許請求の範囲の『平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩』にいう平均分子量も重量平均分子量を意味するものと推認することができる。加えて,本件訂正明細書の上記段落に先立つ段落に記載された他の高分子化合物の平均分子量は重量平均分子量であると合理的に理解できること…,高分子化合物の平均分子量につき一般に重量平均分子量によって明記されていたというのが本件出願日当時の技術常識であること…も,本件訂正後の特許請求の範囲の『平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩』にいう平均分子量が重量平均分子量であるという上記の結論を裏付けるに足りる十分な事情であるということができる。
ウ よって,本件訂正後の特許請求の範囲の記載は明確性要件を充足するものと認めるのが相当である。」(第二次判決第24頁第2行?第25頁第13行)

すなわち、第二次判決は、本件訂正後の特許請求の範囲の「平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩」にいう「平均分子量」は、重量平均分子量であると合理的に理解することができるから、明確である旨を判示しており、この判決の判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、本件特許無効審判事件について、当合議体を拘束する。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の「平均分子量」は、重量平均分子量であると合理的に理解することができるから、明確である。

イ 無効理由(1-2)について
(ア)本件訂正後の請求項1には、「b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」と記載されており、「0.01?10w/v%」が、列挙される全成分の総量なのか各列挙された成分ごとの量なのか、記載されてはいない。このことから、訂正後の請求項1の記載は、それ自体で明確であるとはいえない。
もっとも、このような場合であっても、訂正明細書における記載を合理的に解釈し、当業者が技術常識も参酌して、「0.01?10w/v%」が何の量であるかを合理的に推認することができるときは、そのように解釈すべきである。

(イ)訂正明細書には、成分bについて、以下の記載がある。
「【0013】
本発明の眼科用清涼組成物は、無機塩類を必須成分として含有する。かかる無機塩類としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられる。なかでも、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0014】
本発明において眼科用清涼組成物中のこれらの無機塩類は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は無機塩類の総量として、好ましくは0.01?10%、より好ましくは0.1?10%、特に好ましくは0.1?5%程度である。無機塩類が0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、10(w/v)%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強くなりすぎる傾向があり使用者によっては刺激を感じる場合がある。」

(ウ)特段の事情がない限り、当業者は訂正明細書中に記載された用語は、いずれも同一の意味で用いられていると理解するから、本件訂正後の請求項1に記載された無機成分の含量についても、段落【0014】の記載と同様、総量により表示されていると理解するものと認められる。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の「0.01?10w/v%」は、列挙される全成分の総量を意味することは明確である。

ウ 上記ア及びイのとおり、本件訂正後の特許請求の範囲の「平均分子量」及び「0.01?10w/v%」の記載は明確である。また、その他に、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に不明確な点は見出せない。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、明確である。

(2)請求人の主張について
請求人は、審判請求書中の第23頁第11?18行目において
「また、本件特許発明は、請求項1及び6におけるb)において、「0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」という記載があるところ、その含量の記載である「0.01?10w/v%」は、列挙される全成分の総量なのか各列挙された成分ごとの量なのか不明(例えば、1つ目の成分と2つ目の成分を0.005%ずつ含むものは範囲内なのか範囲外なのか不明)であるため、その発明の範囲が不明である。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第13頁第14?18行目において
「明細書中および同じ請求項中で他の箇所では「総量」と明記してありながら当該箇所で記載しないということは、明細書中の記載や請求項の他の箇所とは異なる解釈をすべきと強く推認されるものであるため、b)が量的関係について何を特定しようとするのかが不明確であり、明確性要件に違反し、無効とすべきであると思料する。」
と主張しているが、上記(1)イのとおり、訂正明細書における記載を参酌すれば、「0.01?10w/v%」が列挙される全成分の総量を意味することは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(3)小括
以上によれば、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は明確であり、請求人が主張する無効理由1は理由がない。

2 無効理由2及び無効理由3について
(1)訂正明細書の記載内容
訂正明細書には、おおむね以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトコンタクトレンズ装用中に眼に適用することで、ソフトコンタクトレンズ装用時においても十分な清涼感を付与することができる眼科用清涼組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用清涼組成物においては、メントールに代表される清涼化剤が配合される。清涼化剤の配合は、快適な強さの清涼感を不快な刺激を伴うことなく付与できるよう処方設計することが重要であり、常時起こっている涙液交換、すなわち涙液による希釈と排出を被っても適度な強さの清涼感を付与できるだけの高濃度のメントールの投与が必要になる。しかしながら、過剰に高濃度のメントールは、点眼直後に清涼感を超えた強すぎる不快な刺激を伴うため、眼科用清涼組成物に配合できるメントール量にはおのずと限界がある。

【0004】
このように、メントール等の清涼化剤を単に増量することなく、十分な清涼感を持続させるとともにメントールの刺激性を改善する方法が示されている。しかしながら、これらの方法や点眼剤は、専らソフトコンタクトレンズを装用していない使用者、すなわち裸眼或いはハードコンタクトレンズを常用する使用者に対して清涼感を付与することを主目的として開発されており、ソフトコンタクトレンズ装用における特有の課題については何ら考慮されてはいない。
【0005】
ところで、ソフトコンタクトレンズ装用においては以下のような特有の課題がある。
角膜は知覚神経に富む組織であり、角膜上皮における神経密度は皮膚の約300?600倍といわれている。(非特許文献1)。したがって、使用者が清涼感を感じるかどうかは、角膜表面にメントールがどの程度接触したかに影響される。ハードコンタクトレンズ直径は角膜径よりも小さく、ハードコンタクトレンズを装用しても角膜周縁部が露出しているが、ソフトコンタクトレンズ径は、角膜よりも大きくソフトコンタクトレンズを装用すると角膜表面はソフトコンタクトレンズに覆われてしまう。そのため、ソフトコンタクトレンズ装用者は、裸眼の場合に比して格段に清涼感を感じにくい。
また、ソフトコンタクトレンズを装用中は、レンズ後面(角膜側)とレンズに覆われていない部分(結膜表面)との涙液交換率が極めて低下する。ハードコンタクトレンズでは、ベストフィッティングでの涙液交換率が健常眼の涙液メニスカスにおける涙液交換率と同程度の高値25.6±11.1(%/分)を示すが、ソフトコンタクトレンズでは、ベストフィッティングでの涙液交換率ですら、16.5±1.1(%/分)と低値を示す(非特許文献2 レンズと涙液交換率の低下)。そのため、メントールがソフトコンタクトレンズと眼表面の間隙にある涙液層を経て角膜中央部に到達するための涙液交換も著しく遅く、清涼感の感度低下を増長してしまう。
【0006】
これまで、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼に適用した場合においても、十分な清涼感を付与することができる眼科用清涼組成物は知られていなかった。また、ソフトコンタクトレンズ装用中にレンズ後面の涙液交換を促進する方法も、ほとんど知られていない。このようにソフトコンタクトレンズ装用中に所要の清涼感を一定時間持続させつつ、刺激を緩和することは極めて困難であった。
さらに、メントールなどの清涼化剤や、クロロブタノール等の局所麻酔作用剤、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩などの防腐剤等、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン等の血管収縮剤等のソフトコンタクトレンズに悪影響(吸着や変形)を及ぼすことが懸念される成分を含有する場合には、製剤設計が制限される。

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題解決のために鋭意検討の結果、a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01(w/v)%以上0.1(w/v)%未満、b)無機塩類、およびc)平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロース、平均分子量が5万?50万のメチルセルロース、平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドン、平均分子量が5万?50万のコンドロイチン硫酸又はその塩、平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種から選ばれる少なくとも1種を含有する眼科用清涼組成物が、ソフトコンタクトレンズ装用時の眼に適用しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明者は、かかる知見に基づいて開発されたものである。

なお、本明細書中、特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼科用清涼組成物によれば、清涼化剤のなかでも特にメントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を単独または組み合わせて、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満の限定された範囲内で含有したうえで、無機塩類を必須の構成成分として含有し、さらに、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物を提供することができる。
これまで、ソフトコンタクトレンズ装用中に適用する点眼剤としては、人工涙液型点眼剤が広く用いられている。従来型の人工涙液型点眼剤では、十分な清涼感を付与したくてもメントールなどの清涼化剤がソフトコンタクトレンズに吸着することが安全面での弊害となり、高濃度のメントールを含有することができなかった。また吸着の問題を解決してメントールを増量しても、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼では、角膜が露出していないうえに涙液交換率が低下しているために、メントール等による刺激を受けることがなく清涼感の付与が困難であった。
本発明の眼科用清涼組成物によれば、眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、かつ刺激が緩和されているため、ソフトコンタクトレンズ装用者に快い清涼感を付与するための眼科用清涼組成物を提供できる。さらに、本発明によれば、メントールを少量用いても十分な清涼感を付与することができ、刺激がなく安全性が高い眼科用清涼組成物を提供できる。
さらに、本発明の眼科用清涼組成物は、清涼化剤の刺激を伴うことなく清涼感を感じることができるので、例えばソフトコンタクトレンズ装用によって障害を有する眼となった、ソフトコンタクトレンズ常用者がソフトコンタクトレンズの装用中のみならずソフトコンタクトレンズを外した後の眼に清涼感を付与するためのソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物としても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の眼科用清涼組成物は、メントール、カンフル又はボルネオールから選択される1種又は2種以上の化合物をそれらの総量として0.01%以上0.1%未満で含有する。下限として好ましくは、0.012%以上、より好ましくは0.014%以上、特に好ましくは0.016%以上であり、上限として好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下、特に好ましくは0.04%以下である。0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、0.1%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強く、使用者によっては反って刺激を感じる場合があるため好ましくない。なお、これらの化合物は公知の化合物であり市販のものを利用でき、d体又はl体のいずれでも用いることができる。
【0013】
本発明の眼科用清涼組成物は、無機塩類を必須成分として含有する。かかる無機塩類としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられる。なかでも、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0014】
本発明において眼科用清涼組成物中のこれらの無機塩類は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は無機塩類の総量として、好ましくは0.01?10%、より好ましくは0.1?10%、特に好ましくは0.1?5%程度である。無機塩類が0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、10(w/v)%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強くなりすぎる傾向があり使用者によっては刺激を感じる場合がある。
【0015】
本発明の眼科用清涼組成物では、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有することが必須の構成となる。

【0021】
本発明に用いるコンドロイチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり、平均分子量が0.5万?50万のものを用いる。より好ましくは0.5万?20万、さらに好ましくは平均分子量0.5万?10万、特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又はその塩は市販のものを利用することができ、例えば、生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万、平均分子量約4万等)が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のコンドロイチン硫酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.01?5%、特に好ましくは0.05?3%程度である。
【0022】
本発明の清涼感付与効果は、非イオン性界面活性剤を配合した場合に顕著になる。
【0023】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、通常当業者が眼科用清涼組成物に利用しうるものを用いることができ、例えばポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)…などが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0024】
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類から選ばれる非イオン性界面活性剤であり、特に好ましくは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。
【0025】
本発明の眼科用清涼組成物において非イオン性界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常0.001?5%、好ましくは0.001?1%、より好ましくは0.005?0.5%程度で用いられる。
【0026】
本発明の清涼感付与効果は、眼科用清涼組成物にエデト酸またはその塩を配合した場合に、更に顕著となる。また、エデト酸またはその塩と非イオン性界面活性剤を組み合わせて配合した場合に更に顕著になる。
【0027】
かかるエデト酸またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)などが例示できる。これらは、1種又は2種以上配合でき、薬理学的に又は生理学的に許容される塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)として使用してもよい。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)である。
【0028】
本発明の眼科用清涼組成物中におけるエデト酸またはその塩の含有量は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、好ましくは0.0001?1%、より好ましくは0.0005?0.5%、特に好ましくは0.001?0.3%程度である。
【0029】
本発明の清涼感付与効果は、眼科用清涼組成物に、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を配合した場合に、更に顕著となる。この場合に、上記したエデト酸またはその塩や非イオン性界面活性剤と組み合わせて配合した場合に更に顕著になる。
【0030】
本発明の眼科用清涼組成物中におけるこれらの成分は、総量として、0.01?5%配合するのが好ましく、特に好ましくは0.05?3%程度である。
【0031】
本発明の眼科用清涼組成物は、清涼感付与の観点から、適切な粘度を設計することが望ましい。20℃における粘度として、好ましくは2?100mPa・s、より好ましくは、2?80mPa・s、特に好ましくは2?50mPa・s程度に設計する。下限としては、2mPa・s以上に設計することが好ましく、上限としては100mPa・sを超えた粘度では、点眼直後の清涼感が十分に付与されない傾向がある。…
【0032】
本発明の眼科用清涼組成物としては、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼やソフトコンタクトレンズ常用者に適用されるものであれば特に制限されることはないが、点眼剤(点眼薬)、洗眼剤(洗眼薬)が好適である。…
【0035】
また、本発明の眼科用清涼組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または清涼化剤、緩衝剤、などの各種添加剤を挙げることができる。
【0036】
以下に本発明の眼科用清涼組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸またはその塩、マクロゴール、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、デキストラン、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン、トレハロースなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
界面活性剤:例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。

pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン-アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。

【0038】
本発明の眼科用清涼組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整して用いる。浸透圧は、100?1200mOsm、好ましくは100?600mOsm、特に好ましくは150?400mOsm程度であり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.4?4.1、好ましくは0.3?2.1、特に好ましくは0.5?1.4程度である。
【0039】
本発明の眼科用清涼組成物は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内の浸透圧に調整して用いる。pHは、通常、pH5.0?10.0、好ましくは6.0?9.0、特に好ましくは6.5?8.5である。pHの調整は、緩衝剤、前記pH調整剤などを用いて行うことができる。
【0040】
本発明の眼科用清涼組成物は、公知の方法により製造できる。例えば、液剤であれば基
剤と各成分とを混合し、調製できる。さらに、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器へ
の充填工程等を加えることができる。

【実施例】
【0042】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
実施例および比較例の調製
試験に用いた各実施例及び試験例の調製は、表1?6に示す処方に従った。具体的には、表1に記載の実施例1の調製方法を示す。ヒドロキシエチルセルロース(HEC-CF-G)を約100mLの精製水中にて攪拌溶解した(調製液A)。次に、ポリソルベート80、l-メントール、d-カンフル、d-ボルネオールを攪拌溶解した(調整液B)。エデト酸ナトリウムと塩化ナトリウムを50mLの精製水に溶解し、調整液Aおよび調製液Bを加え、さらに精製水を加えてpHを調整して(pH=7.4)、全体を200mlとした。さらに実施例1に従い、他の実施例及び比較例も調製した。
【0044】
清涼感付与試験
試験溶液を無菌的に濾過し、10mlずつ点眼容器に充填して、20名のソフトコンタクトレンズを常用している専用パネラーにおいて、ソフトコンタクトレンズを装用中又は裸眼時(ソフトコンタクトレンズを外した直後)に点眼した場合の、点眼直後及び点眼5分後、点眼10分後の清涼感の評価を行った。使用したソフトコンタクトレンズは、グループIV(2ウイークアキュビュー(登録商標)、ジョンソンエンドジョンソン株式会社)のソフトコンタクトレンズを用いた。
各パネラーには、清涼感について全く感じない場合を0点、十分に強い清涼感を感じる場合を6点として7段階評価してもらった。同様に眼刺激について全く感じない場合を6点、強い刺激を感じる場合を0点として7段階評価してもらった。パネラー全員の評価点を平均して、その平均値が0?2点未満を×、2点以上3点未満を△、3点以上4点未満を○、4点以上6点以下を◎として表に結果を示す。

【0055】
【表6】


【0056】
試験の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万)又は/及びコンドイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約2万)を塩化ナトリウムと組み合わせて含有する本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。」

(2)実施可能要件について
ア 物の発明について、実施可能要件を充足するといえるためには、明細書の発明の詳細な説明において、その記載及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要するものである。
そこで、この観点から、以下検討する。

イ 訂正発明1について
(ア)訂正発明1は、成分a、b及びcをそれぞれ所定量含み、局所麻酔剤を含まない、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に係る発明である。

(イ)訂正明細書の発明の詳細な説明には、成分aについて、「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される1種又は2種以上の化合物をそれらの総量」が、「0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、0.1%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強く、使用者によっては反って刺激を感じる場合があるため好ましくない」ことが記載されている(段落【0012】)。
また、成分bについて、「これらの無機塩類は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ」ること、及び、「無機塩類が0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、10(w/v)%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強くなりすぎる傾向があり使用者によっては刺激を感じる場合がある」ことが記載されている(段落【0014】)
さらに、成分cについて、「平均分子量が…特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用い」、「例えば、生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万,平均分子量約4万等)が利用でき」、「コンドロイチン硫酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.001?10%…である」ことが記載されている(段落【0021】)。この「平均分子量」とは、上記1(1)アに示したように、「重量平均分子量」であると合理的に理解することができる。
そして、訂正明細書の【実施例】の欄においては、20名のソフトコンタクトレンズを常用している専門パネラーによる、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後の清涼感と刺激を評価する試験で、コンドロイチン硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムを含まない比較例1、成分aの合計量が0.01w/v%を下回る比較例11、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含まない比較例4は、×又は△を含む評価であったのに対し、訂正発明1の発明特定事項を全て備える実施例20及び実施例21は、いずれの点においても◎又は〇の評価が得られたことが示され(表6)、当該試験の結果について、「試験の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万)又は/及びコンドイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約2万)を塩化ナトリウムと組み合わせて含有する本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。」(段落【0056】)と記載されている。

(ウ)このような訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、実施例20及び21だけでなく、成分a、b及びcをそれぞれ所定量含み、局所麻酔剤を含まない訂正発明1に係る組成物を製造することができ、また、その製造した組成物は、実施例20及び21と同様に、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がなく、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」として使用できることを理解することができる。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明1に係る組成物について、当業者がこれを製造し、使用することができる程度の記載があるといえる。

ウ 訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1を引用し、さらに、「非イオン性界面活性剤を0.001?5w/v%を含有する」こと(訂正発明2)、「エデト酸又はその塩を0.0001?1w/v%を含有する」こと(訂正発明3)、「アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸,アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を、それらの総量として0.01?5w/v%を含有する」こと(訂正発明4)、「点眼剤又は洗眼剤である」こと(訂正発明5)を、それぞれ限定した発明である。
訂正明細書の段落【0022】?【0030】、【0032】の記載をみれば、上記の追加の成分を含む組成物を製造すること、また、それらの組成物を、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物である点眼剤又は洗眼剤として使用できることを、当業者は理解することができる。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明2?5に係る組成物について、当業者がこれを製造し、使用することができる程度の記載があるといえる。

エ 訂正発明6について
訂正発明6は、訂正発明1と同じ組成である「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」に係る発明である。
「ソフトコンタクトレンズ常用者用」とは、訂正明細書の段落【0011】の「ソフトコンタクトレンズ装用によって障害を有する眼となった、ソフトコンタクトレンズ常用者がソフトコンタクトレンズの装用中のみならずソフトコンタクトレンズを外した後の眼に清涼感を付与するためのソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物としても利用できる。」との記載からみて、ソフトコンタクトレンズ常用者が、ソフトコンタクトレンズ装用中だけなく裸眼の場合に使用することを意図するものと解される。
上記イ(イ)に示した訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、実施例20及び21だけでなく、成分a、b及びcをそれぞれ所定量含み、局所麻酔剤を含まない組成物を製造することができ、また、その製造した組成物は、実施例20及び21と同様に、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がなく、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」として使用できることを理解することができる。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明6に係る組成物について、当業者がこれを製造し、使用することができる程度の記載があるといえる。

オ 以上によれば、訂正明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明1?6に係る組成物について、当業者がこれを製造し、使用することができる程度の記載があるといえるから、訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明1?6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

(3)サポート要件について
ア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
そこで、この観点から、以下検討する。

イ 訂正発明1について
上記(1)の訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供する」ことを課題とし、その解決手段として、清涼化剤のなかでも特にメントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を単独又は組み合わせて、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満の限定された範囲内で含有させたうえで、無機塩類を必須の構成成分として含有し、さらに、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有する組成物とするものである(段落【0008】?【0011】)。
そして、訂正明細書の発明の詳細な説明には、上記(2)イ(イ)に示した記載がある。
このような訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、実施例20及び21だけでなく、成分a、b及びcをそれぞれ所定量含み、局所麻酔剤を含まない訂正発明1に係る組成物は、実施例20及び21と同様に、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、「ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供する」という課題を解決できることを認識することができる。
したがって、訂正発明1は、当該発明の課題を解決できることを認識できる範囲内のものである。

ウ 訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定する発明であり、上記(1)の訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、訂正発明2?5の課題も、訂正発明1と同じであるといえる。
そして、訂正発明2?5は、訂正発明1において特定された成分を全て含むものであるから、訂正発明1と同様に、訂正発明2?5も、当該発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲内のものである。

エ 訂正発明6について
訂正発明6は、訂正発明1と同じ組成である「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」に係る発明である。
上記(1)の訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、訂正発明6の課題も、訂正発明1と同じであるといえる。
そして、訂正発明6は、訂正発明1と同じ組成を有するものであるから、訂正発明1と同様に、訂正発明6も、当該発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲内のものである。

オ 以上によれば、訂正発明1?6は、当該発明の課題を解決できることを当業者が認識することができる範囲内のものであるから、訂正発明1?6は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。

(4)請求人の主張について
ア 無効理由(2-1)(3-1)について
請求人は、本件特許発明1?6は、「平均分子量」の定義がないため、その意義が不明であることを前提として、実施可能要件及びサポート要件を満たしていない旨主張する。

しかしながら、上記1(1)アのとおり、第二次判決において、「平均分子量」が「重量平均分子量」を意味することは明確である旨判示されたので、請求人の主張はその前提において失当である。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

イ 無効理由(2-2)(3-2)について
(ア)請求人は、審判請求書の第25頁第4行目?第26頁第5行において、
「「平均分子量」1万のものについては、「SCL装用時の点眼直後の刺激」が、コンドロイチン硫酸ナトリウムのないこと以外は同じ成分の「比較例4」に比べて劣っている(すなわち、実施例19では、○であるのに対して、比較例4では◎となっている…。したがって、実施例19の剤型では、比較例よりも多くの刺激が存在したことを意味するといえる)ため、対比すべき「比較例4」と比べて改善されていないどころか劣化させるものである。このことは、本件特許明細書【0056】において「眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された」と記載されていることとも矛盾するため、本件特許発明の所与の作用効果を満たさないものであるといえる。

よって、「平均分子量」1万のものについて、被請求人が主張する本件特許発明1?5の「ソフトコンタクトレンズ装用時」の効果は実証されていない。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第15頁第3?19行目において、
「(1) 実施例19および20は「実施例」ではない
審判請求書24?29頁でも説明したように、「平均分子量」1万のものについて、被請求人が主張する本件特許発明1?5の「ソフトコンタクトレンズ装用時」の効果は実証されておらず、本件特許発明6については、「平均分子量」1万及び2万の特定の組合せ(実施例21)以外は本件特許発明の所与の作用効果を満たしていない。
この点、被請求人は、「十分な清涼感」が、表6でいう結果「○ないし◎」のことであり、そして「刺激がなく」「刺激を伴うことなく」が、表6でいう結果「○ないし◎」のことであると推論すると主張し(答弁書28頁1?3行)、これを前提に「本件特許の発明の詳細な説明の表6に記載された実施例19及び20の組成物の結果は、「本件特許明細書【0056】…」と矛盾せず、そして「本件特許発明の所与の作用効果を満たさないものである」との結論を導き出さない。」と結論付ける。
しかしながら、本件特許明細書には、「『十分な清涼感』が、表6でいう結果『○ないし◎』のことであり、そして『刺激がなく』『刺激を伴うことなく』が、表6でいう結果『○ないし◎』」とは記載されておらず、仮にそうだとすると、比較例4は、裸眼時(SCLを外した直後)の評価では「実施例」に該当してしまうことになる。したがって、被請求人の主張は、本件特許明細書の記載と整合しておらず、この点で失当であることは明確である。」
と主張する。

しかしながら、訂正明細書の表6には、「×」「△」が含まれるものが比較例(1,11,4)、「〇」「◎」のみ含むものが実施例(19,20,21)として記載され、段落【0056】には、表6について「試験の結果、・・・本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された」と記載されているのであるから、「十分な清涼感」、「刺激がなく安全性が高い」とは、【表6】における評価が「○」ないし「◎」を意味すると解される。したがって、実施例20及び21は、訂正発明の所与の効果を奏する「実施例」であるといえる。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムとして平均分子量が1万のもののみを用いた実施例19は訂正発明には含まれないので、請求人の実施例19についての主張は、本件において関係がない。
また、比較例4は、裸眼時に限れば点眼直後の清涼感と刺激の評価は「〇」であるものの、ソフトコンタクトレンズ装用時の点眼直後の清涼感の評価が「×」であるから、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」(訂正発明1?5)、又は、ソフトコンタクトレンズを装用していることもある「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」(訂正発明6)として使用できるとはいえず、訂正発明の課題も解決できない。そうすると、比較例4は、訂正発明の所与の効果を奏さず、当該課題も解決できない「比較例」であることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(イ)請求人は、審判請求書の第27頁第2?4行目において、
「引用例に対する「平均分子量」の特定について実質的に臨界的意義を主張して特許査定がなされたにもかかわらず、その境界点の臨界的意義を示していない。」
と主張する。

しかしながら、被請求人による臨界的意義に関する主張は、進歩性があることを示すためのものであり、実施可能要件又はサポート要件についての主張ではない。
したがって、実施可能要件及びサポート要件に関する判断に、被請求人の上記主張は影響しない。

(ウ)請求人は、審判請求書の第27頁第9?14行目において、
「仮に、実施例に記載された例が本件特許発明の所与の作用効果を奏することが認められるとしても、実施例以外の範囲について、本件特許発明を実施可能にする記載も示唆もなされていない。また、これらの実施例から、本件特許発明の「平均分子量」(0.5万から4万)にまで一般化又は拡張可能であるという説明も本件特許明細書に記載されていないから、サポートされているとは言えないし、実施可能な記載がなされているともいえない。」
と主張する。

しかしながら、前記(2)及び(3)のとおり、訂正明細書には、訂正発明に対応する実施例20及び21が開示され、かつ、段落【0021】には、「特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。」と記載されていることから、特段の事情がない限り、当業者であれば、実施例20及び21で用いられた「2万」を含む限られた範囲である訂正発明の平均分子量(2万?4万)であれば、実施可能であり、サポートされていると認識することができる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)請求人は、審判請求書の第27頁最下行?第28頁第2行目において、
「したがって、「平均分子量」1万?2万の間ですら、被請求人が主張する本件特許発明の作用効果について、どのような挙動をするのかわからないのである。」
と主張し、審判請求書の第28頁第14行目?第29頁第2行目において、
「この点を措くとしても、「平均分子量」2万と「平均分子量」1万とを比較すると、「SCLの装用時の点眼直後の刺激」は、◎、○と減じる方向であることに変わりはなく、「平均分子量」1万未満ではさらに減少すると合理的に推定されるから、必ずしも○に留まるとはいえず、△又は×になる可能性も十分に大きいものである…。他方、「平均分子量」2万を超える部分についても、データが存在せず、…「平均分子量」10万のものが提示されている(「比較例c」)ところ…、この10万のものでは、点眼直後の刺激について、顕著に効果が減じている(△と表示されている)ところ、「平均分子量」2万を超えると効果が減じることが強く推定される。したがって、「平均分子量」4万まで被請求人が主張するような効果が奏されるかは、出願後に提示されたデータを考慮しても不明であり、ましてや出願当初明細書の記載のみからは知る由もない。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第16頁下から3行目?第17頁第9行目において、
「本件特許明細書の点数分布をもとに、それらの平均値をそれぞれの代表値としてプロットして視覚的に評価する。ここで、各々の記号について中点をとり、×は1.0、△は2.5、○は3.5、◎は5.0として本件特許明細書0044段落の記載に基づいて例えば、裸眼時の点眼直後の刺激についてプロットすると、以下のようになり、被請求人主張が合理的な解釈に基づくものとは言えないことが明らかとなる。



以上のプロットからも明らかなように、「平均分子量」1?2万の範囲を外れるとほぼ即座に△または×の領域(すなわち、刺激がある状態)に陥ることが容易に推測できる。したがって、「…平均分子量約1万?約2万のコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する組成物が上述のように効果0056を奏するのであるから、平均分子量が0.5万?約1万又は約2万?4万のコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する組成物でも、平均分子量約1?約2万のコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する組成物と同様の効果を奏するというのが自然な理解である」との主張は全く失当であることが明らかである。」
と主張する。

しかしながら、平均分子量10万と平均分子量2万との間には相当程度の分子量の差が存在し、平均分子量10万のものが△と評価されていることをもって、平均分子量2万を超えると効果が減じることが推定されるとまではいえない。
また、請求人が示したプロット図は、3点が評価点4近辺に存在しており、訂正明細書の段落【0021】の「特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。」との記載を鑑みれば、平均分子量が1万?2万の範囲外であっても、同様に評価点4近辺において推移するものと推定でき、請求人が記した実線、点線のように評価点が変化し、平均分子量が1万?2万の範囲を外れると、ただちに評価点3を下回るとまではいえない。
さらにいえば、実施例20では、コンドロイチン硫酸ナトリウムが0.5g/100mlで含まれるのに対し、実施例21では、コンドロイチン硫酸ナトリウムが0.3g/100mlで含まれており、含量の差異を全く考慮せず、単に平均分子量と評価点のみをもってプロットすることに、何ら合理性を見出せない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(オ)請求人は、口頭審理陳述要領書の第17頁下から4行目?第18頁第14行目において、
「被請求人の論拠は、出願後に提出された甲第20号証の追加例(表A)の分子量10万のデータ等に基づくものなのかもしれない。…
…ある数値範囲の一部の具体的開示しかない場合にその残りの部分の数値範囲でも同様の効果が奏されると主張するためには、技術常識に基づく相応の合理的な根拠が必要であるといえる。」
と主張している。

しかしながら、訂正発明が訂正明細書の記載に基づいて実施可能であり、サポートされていることは、上記(2)及び(3)で既に示したとおりであり、出願後に提出された甲20とは直接は関係がない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 無効理由(2-3)(3-3)について
請求人は、審判請求書の第29頁最下行?第33頁第14行目において、
「この点をさらにみると、本件特許発明が奏するべき作用効果として清涼感及び点眼直後の刺激の低減が主張されている…ところ、その寄与因子として本件特許明細書【0031】に「本願発明の眼科用清涼組成物は、清涼感付与の観点から、適切な粘度を設計することが望ましい」…と記載されている…。したがって、本件特許は、適切な粘度を提供することで、清涼感付与がなされているものと理解されるし、現に本件特許の審査においても、被請求人はそのような主張をなしている…。ここで、液体の粘度は、粘性を与える物質…の物性に依拠するところ、その物性として含有量(濃度)(そして究極的には粘度)も重要な役割と果しているものである。
…いずれにしても、特定の濃度で清涼感が満足ゆくものとして得られたとしても、その濃度を変更すると、濃度に依存して粘度が劇的に変化することになり、その結果清涼感や刺激も大きく変動することが予測されることが当業者には容易に理解される…。
しかしながら、本件特許明細書には、実施例において、「平均分子量」1万単独が0.5%、「平均分子量」2万単独が0.5%、又は、「平均分子量」1万及び2万がそれぞれ0.1%及び0.2%含有されるものしか記載されていない。他方、本件特許発明の範囲は、濃度について「0.001?10w/v%」と広範囲に及ぶものであるところ、1種類の「平均分子量」の場合で500分の1もの低濃度、ないし、20倍もの高濃度の場合の挙動が予測できたとはいえない。加えて、2種類又はそれより多い種類の「平均分子量」を用いた場合の濃度は、合計をしても「平均分子量」一種で行った例の濃度に満たない上に、個々の「平均分子量」の分子をどの程度入れるべきかも不明である。したがって、どのような濃度のコンドロイチン硫酸ナトリウムを用いるべきか、当業者は理解することができない。…
また、粘度について言えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムのタイプによって同じ平均分子量でも粘度が異なり得るという事実も、本件特許発明が実施可能ではなくサポート要件を満たしていない点において重要である…。ここで、本件特許明細書【0031】では、「本発明の眼科用清涼組成物は、清涼感付与の観点から、適切な粘度を設計することが望ましい」と記載されており、適切な粘度が付与されるべきことが記載されているのであり、この点でも、本件特許明細書は、実施可能な記載がなされておらず、サポート要件も満たしていないといえる。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第19頁第1?13行目において、
「そもそも何故「塩化ナトリウムとコンドロイチン硫酸ナトリウムを組み合わせると効果0056が奏されることが分かり」といえるのか説明していないし、依拠する記載を見ても【0012】?【0014】【0022】?【0029】には使用できる成分が列挙されそれらの個別の説明があるのみで、本件特許発明全体への一般化又は拡張のための合理的な説明がされているわけではなく、【0045】?【0054】は実施例であり、実施例自体の説明があるのみで、本件特許発明全体にわたり何故実施可能となるのかの説明は見当たらない。せいぜい【0031】に記載される粘度との関係くらいが、一般化・拡張可能であると主張するための合理的な説明となり得るものであるが、これについては、被請求人は、むしろ「粘度という技術的手段によって初期の課題を解決しまた所期の効果を奏するというものではない」と主張し(答弁書30頁14?15行)ており、自ら一般化・拡張可能であると主張するための合理的根拠ではないことを自認してしまっている。このように、被請求人が摘示した個所を見ても、何故、実施例から本件特許発明の全体にわたり一般化拡張可能であることを説明しておらず、全く根拠を提示することができていない。」
と主張している。

しかしながら、訂正明細書の段落【0031】には、清涼感付与の観点から、適切な粘度を設計することが望ましい旨が記載されているだけであって、特定の粘度とすることが清涼感付与のために必須であると記載されているわけではない。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムは、特定の粘度とするための成分として記載されているわけでもない。したがって、仮に、コンドロイチン硫酸ナトリウムの含有量が粘度に影響するとしても、段落【0031】の記載があるからといって、実施例以外のコンドロイチン硫酸或いはその塩の含有量まで一般化・拡張可能ではないとする根拠とはならない。
そして、コンドロイチン硫酸或いはその塩の含有量が0.001?10w/v%程度の範囲内において、実施可能であり、サポートされているといえることは、上記(2)及び(3)に示したとおりである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 無効理由(2-4)(3-4)について
請求人は、審判請求書の第33頁下から6行目?第36頁第6行目において、コンドロイチン硫酸ナトリウムに加えて他の高分子を含む剤型はサポートされておらず、実施可能でもない旨主張し、さらに、口頭審理陳述要領書の第20頁下から4行目?第21頁第4行目において、
「本件特許明細書【0031】では、「上限としては100mPa・sを超えた粘度では、点眼直後の清涼感が十分に付与されない傾向がある」と記載されているため、当業者は、少なくともいわゆる「効果0056」が少なくとも阻害されないためには、粘度を調整する必要があると理解することは明らかである。他方で、被請求人からは粘度と「効果0056」とが無関係とも主張されている。そうすると、コンドロイチン硫酸或いはその塩が高濃度になった場合や他の増粘物質(高分子)を含めた場合に、実施例の記載からはどの程度の量を含めれば効果0056を奏することができるかを理解することはできず、皆目見当がつかないというべきである。すでに述べたが、本件特許明細書では、同じコンドロイチン硫酸或いはその塩でも複数の種類の平均分子量(1万および2万)の成分が使用された場合に、各々の成分からは予測できない効果が示されている(審判請求書34?35頁)のであって、ましてや、他の高分子が含まれる場合にどのような効果が奏されるかは皆目見当がつかないというべきである。」
と主張している。

しかしながら、そもそも、コンドロイチン硫酸ナトリウム以外の高分子を含むことは、訂正発明における必須の発明特定事項ではないから、コンドロイチン硫酸ナトリウムに加えて他の高分子を含む剤型について、実施可能要件及びサポート要件について検討すべき必要はない。
また、訂正明細書に記載された他の高分子を併用する際には、訂正発明の奏する効果を損なわない程度とすることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

オ 無効理由(2-5)(3-5)について
(ア)請求人は、口頭審理陳述要領書の第22頁下から13?4行目において、
「海水の塩分濃度(その約78%は塩化ナトリウム濃度)はおよそ3.5%とされている…が、本願発明は、その3倍量もの塩化ナトリウムも許容するものである。しかし、技術常識から、海水のような高塩濃度の塩水が目に刺激を与えないとはいえず、むしろ明らかに悪影響があり、実施可能ではないとご理解いただけると思料する。なお、浸透圧という点からはせいぜい1.5%が上限であり、10%などありえない(…(甲第37号証)…)が、「等張化作用に着目する」ことを否定する…被請求人が本件特許発明の効果に必須であると主張する「塩化ナトリウム」が「効果0056」のためにどの程度の濃度が必要なのかは本件特許明細書からは一切明らかではない。」
と主張している。

しかしながら、訂正発明に係る組成物には、塩化ナトリウム以外にも種々様々な成分が含有されており、単純に海水と比較して訂正発明が実施不可能であるともいえないし、訂正明細書の段落【0038】には、生理食塩水に対する浸透圧比は「通常、0.4?4.1」程度と、ある程度の幅を持った数値範囲に調整することが記載されていることを勘案すると、甲37を参酌したところで、塩化ナトリウムの濃度が10%などありえないとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(イ)請求人は、口頭審理陳述要領書の第23頁第6?9行目において、
「例えば、一例として、炭酸ナトリウムについてみると、約0.2重量%以上では使用できない^(4)とされており(…(甲第38号証)…)、眼科領域では一定濃度以上は禁忌であると思料され、実施例での塩化ナトリウムと同じ濃度(0.5重量%)で使用することはできないこととなる。」
と主張している。

請求人の主張するとおり、甲38には、乾燥炭酸ナトリウムや炭酸ナトリウム水和物の眼科用剤における最大使用量として、それぞれ1.2mg/g、1.62mg/gの記載がある。しかしながら、甲38には、当該濃度以上の使用が必ず禁忌である旨の記載はなく、また、訂正発明には無機成分以外の成分が含有されていることを勘案すると、炭酸ナトリウムなどを、塩化ナトリウムと同じ濃度で使用することはできないとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

カ 無効理由(2-6)(3-6)について
(ア)請求人は、審判請求書の第38頁第3?16行目において、
「詳細に述べると、本件の「実施例」と称される21例では、すべてにおいて、l-メントール0.020g/100mL、d-カンフル0.005g/100mL、及びd-ボルネオール0.010g/100mLの組合せしか試験されていない。この点をさらにみると、あえて21例もこの用量で固定して試験されていることに加えて、高分子を含む場合の対応する比較例としては、比較例2、3、5、7、9?11が記載されているところ、これらの「比較例」はl-メントール、d-カンフル及びd-ボルネオールがそれぞれ0.003、0.001、0.001g/100mL含有されるものしか試験されていない。本件特許発明は清涼感及び刺激の減少のバランスを図るものであるところ、実際に効果のあった用量以外は所与の作用効果が奏されるかどうか不明であり、一般化又は拡張することができる説明も何らされていない。したがって、これらの実施例から、「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」という範囲にまで一般化ないし拡張可能であるとは言えない。」
と主張している。

しかしながら、実施例と比較例において、清涼化剤の種類と含有量がある程度固定されているからといって、実際に効果のあった清涼剤の種類と含有量以外の訂正発明に係る眼科用清涼組成物が所与の作用効果を奏することに、当業者が何らかの疑念を抱く合理的な理由は認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用し得ない。

(イ)請求人は、審判請求書の第38頁第17?28行目において、
「この点さらにみると、本件特許明細書では、【0036】には、添加し得る「香料又は清涼化剤」として、「上記したメントール、カンフル、ボルネオール以外の、ゲラニオール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など」を加えてもよいとすら記載されている。この点、本件特許発明は、本件特許発明1及び本件特許発明6において、「a」、…c)…含有することを特徴とする」と記載されているため、「メントール、カンフル、ボルネオール」以外の「香料又は清涼化剤」も含有し得るようにも解釈し得るため、本件特許発明の内容が「メントール、カンフル、ボルネオール」以外の「清涼化剤」を含むことを意図するものであれば、そのような態様についても、本件特許の発明の詳細な説明は、実施可能に記載されておらず、サポート要件を満たしていないものであることはより明らかである。」と主張している。

しかしながら、「ゲラニオール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など」は、訂正発明において、単なる任意成分に過ぎず必須の発明特定事項ではないから、「メントール、カンフル、ボルネオール」以外の「清涼化剤」を含む態様についても、実施可能要件及びサポート要件について検討すべき必要はない。
また、当業者がこれらの成分を使用する際には、訂正発明の効果を損なわない程度とすることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)請求人は、口頭審理陳述要領書の第23頁下から7行目?最下行において、
「「効果がある」と確認された量の3倍もの量の清涼化剤を入れた場合に「刺激がない」状態を維持できることの根拠がないのである。すなわち、「合計量」で0.035w/v%含有する実施例19?21において点眼直後の刺激が「○または◎」だったものについて、刺激の原因である清涼化剤の量を、訂正発明が許容する上限の0.1w/v%と3倍にも増やして、3倍に増量する前と同様に「刺激がなく」あるいは「刺激を伴うことなく」使用できるなどとは当業者は合理的に理解できない。」と主張している。

しかしながら、訂正明細書には、清涼化剤の配合量が0.1w/v%を超える際の弊害が具体的に記載されていることや、訂正発明は清涼化剤のみならず、その他の成分も含む組成物であることを勘案すると、上限である0.1w/v%が実施例に開示された配合量の3倍に相当するからといって、そのことから直ちに、0.1w/v%近辺では、刺激を伴うと当業者が認識するとは認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)小括
以上によれば、訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明1?6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、訂正発明1?6は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるから、請求人が主張する無効理由2及び無効理由3は理由がない。

3 無効理由4について
(1)甲1、17、28、29、45について
ア 甲1について
本件特許優先日前に頒布された甲1には、以下の記載がある。
甲1-1)「【要約】
【課題】 眼に対する刺激性が低く、良好な清涼感を付与することができ、かつ、清涼感の持続性の高い眼科用組成物の提供。
【解決手段】 テルペノイド類と、水溶性高分子化合物と、局所麻酔剤と、を含有することを特徴とする眼科用組成物である。テルペノイド類が、メントール類、カンフル類、ボルネオール類、ゲラニオール、シネオール、リナロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、及びローズ油から選択される少なくとも1種である態様、水溶性高分子化合物が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも1種である態様等が好ましい。」
甲1-2)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 テルペノイド類と、水溶性高分子化合物と、局所麻酔剤と、を含有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項2】 テルペノイド類が、メントール類、カンフル類、ボルネオール類、ゲラニオール、シネオール、リナロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、及びローズ油から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】 水溶性高分子化合物が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも1種である請求項1又は2に記載の眼科用組成物。

【請求項5】 点眼剤用、洗眼剤用、及びコンタクトレンズ装着液用の少なくともいずれかに用いられる請求項1から4のいずれかに記載の眼科用組成物。」
甲1-3)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、眼科用組成物に関し、更に詳しくは、テルペノイド類と、水溶性高分子と、局所麻酔剤とを含有することにより、良好な清涼感を付与でき、清涼感が持続すると共に刺激性が低く、特に点眼剤用、洗眼剤用、及びコンタクトレンズ装着液用等に好適な眼科用組成物に関する。」
甲1-4「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする、即ち、本発明は、眼に対する刺激性が低く、良好な清涼感を付与することができ、かつ、清涼感の持続性の高い眼科用組成物を提供することを目的とする。
甲1-5)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、テルペノイド類と、水溶性高分子と、局所麻酔剤とを配合することにより、眼に対する刺激性が低く、良好な清涼感を付与でき、かつ、清涼感の持続性の高い眼科用組成物が提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。」
甲1-6)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明する。本発明の眼科用組成物は、テルペノイド類と、水溶性高分子化合物と、局所麻酔剤と、を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0009】[テルペノイド類]前記テルペノイド類としては、特に制限はないが、強い清涼感を付与でき、持続性が高い点で、モノテルペノイド化合物が好ましい。具体的には、メント-ル(l-メント-ル、dl-メントール)、カンフル(dl-カンフル、d-カンフル)、ボルネオール(d?ボルネオール、リュウノウ)、ゲラニオール、シネオール、及びリナロール等が好ましく使用される。前記テルペノイド類としては、テルペノイド類を含有する精油を用いてもよく、該テルペノイド類を含有する精油としては、具体的には、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ローズ油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、フタバガキ科植物の精油、ロズマリン油、及びラベンダー油等が挙げられる。これらのテルペノイド類(テルペノイド類を含有する精油を含む。)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。…
【0010】前記テルペノイド類の、前記眼科用組成物における含有量としては、0.0001?2w/v%(「質量/容量%」を意味する。以下、同様である。)が好ましく、0.0005?1w/v%がより好ましく、0.001?0.5w/v%が更に好ましい。前記含有量が、0.0001w/v%未満であると、充分な清涼感が得られないことがある一方、2w/v%を超えると、使用時の眼に対する刺激が高いことがある。
【0011】[水溶性高分子化合物]前記水溶性高分子化合物は、涙液による希釈等によって、点眼剤等が結膜嚢から消失してしまうのを、効果的に防止可能である点で、特に好ましい。該水溶性高分子化合物としては、特に制限はないが、具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】前記水溶性高分子としては、具体的には、以下の市販品を好適に使用することができる。例えば、メチルセルロースであれば、信越化学工業(株)製メトローズSM(粘度グレード15、25、100、400、1500、4000、8000)、…コンドロイチン硫酸ナトリウムであれば、マルハ(株)製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム等の市販品が挙げられる。
【0013】前記水溶性高分子化合物の、前記眼科用組成物における含有量としては、該水溶性高分子化合物が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、及びヒアルロン酸ナトリウムである場合、0.001?5w/v%が好ましく、0.005?3w/v%がより好ましく、0.01?2w/v%が更に好ましい。また前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムである場合、0.01?20w/v%が好ましく、0.05?10w/v%がより好ましく、0.01?5w/v%が更に好ましい。前記含有量が、前記各々の好ましい数値範囲に満たないと、清涼感の持続が得られないことがある一方、前記各々の好ましい数値範囲を超えると、使用感が悪くなることがある。
【0014】[局所麻酔剤]前記局所麻酔剤としては、特に制限はないが、具体的には、クロロブタノール、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸ジブカイン、及び、塩酸オキシブプロカイン、等が挙げられる。これらの局所麻酔剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】前記局所麻酔剤の、前記眼科用組成物における含有量としては、該局所麻酔剤がクロロブタノールである場合、0.001?3w/v%が好ましく、0.005?1.0w/v%がより好ましく、0.01?0.5w/v%が更に好ましい。…前記含有量が、前記各々の数値範囲に満たないと、清涼化剤による刺激が生じたり、清涼感の持続が得られないことがある一方、前記各々の好ましい数値範囲を超えると、使用感が悪くなることがある。」
甲1-7)「【0016】[その他の成分]本発明においては、前述の成分のほか、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等、各種の眼科用製剤の調製に使用される公知の成分、例えば、緩衝剤、溶解補助剤、等張化剤、安定化剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤等の各種の添加剤、及びその他の薬学的有効成分を、通常使用量において配合することができる。
【0017】前記緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】前記溶解補助剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(p=60)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(p=20)ソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びグリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】前記安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、クエン酸又はその塩、及びジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】前記キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」
甲1-8)「【0028】<眼科用組成物の用途>本発明の眼科用組成物の用途としては、特に制限はないが、清涼感が良好で、更に清涼感の持続性も良好であると共に、清涼化剤等による、眼に対する刺激性が低いことから、特に点眼剤として配合されるのが好ましい。該点眼剤としては、医療用点眼剤でもよく、一般用点眼剤でもよく、またソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である。また本発明の眼科用組成物の用途としては、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等も好ましい。」
甲1-9)「【0030】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】(実施例1、及び比較例1?3)表1に示す処方の眼科用組成物(点眼剤)を調製(配合量:g/100mL)し、容器に充填した後、点眼直後の清涼感、該清涼感の持続性、及び眼刺激性について各々評価した。結果を表1に示す。尚、点眼直後の清涼感、及び、該清涼感の持続性は、専門パネラーによる官能試験により評価した。眼刺激性については、厚生省科学研究報告(昭和45年)における点眼用保存剤粘膜刺激性短期試験方法に準じて行なった。各々の評価においては、下記評価基準に従い評価した。
【0032】<評価基準>
-点眼直後の清涼感-
5:清涼感を非常に強く感じる
4:清涼感を強く感じる
3:清涼感を感じる
2:清涼感が殆ど感じられない
1:清涼感が感じられない
【0033】-清涼感の持続性-
◎:清涼感が、10分以上持続して感じられる
○:清涼感が、5分以上10分未満持続して感じられる
△:清涼感が、1分以上5分未満持続して感じられる
×:清涼感が、1分未満で感じられなくなる
【0034】-眼刺激性-
◎:Draize法による平均評点が0点以上2点未満である
○:Draize法による平均評点が2点以上4点未満である
△:Draize法による平均評点が4点以上6点未満である
×:Draize法による平均評点が6点以上である」
甲1-10)「【0039】(実施例2?22)表2?4に示す処方(配合量:g/100mL)にて、常法に準じて実施例2?19の眼科用組成物(点眼剤)、実施例20?21の眼科用組成物(洗眼剤)及び実施例22の眼科用組成物(コンタクトレンズ装着液)を調製し、実施例1及び比較例1?3と同様にして各評価を行った。どの実施例においても、眼に対する刺激性が低く、清涼感及び清涼感の持続性が極めて高いことが確認された。結果を表2?4に各々示す。」
甲1-11)「【0042】
【表3】



【0043】尚、表3において、メチルセルロースは、信越化学工業(株)製 メトローズSM-100であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、同60SH-50(実施例9,10)、60SH-4000(実施例11,12)、65SH-1500(実施例14)、65SH-4000(実施例15)であり、ヒドロキシエチルセルロースは、住友精化(株)製 フジケミHEC CF-Wであり、ポリビニルアルコールは、日本合成化学(株)製 ゴーセノールEG-05であり、ポリビニルピロリドンは、BASF社製 Kollidon 25であり、カルボキシビニルポリマーは、Goodrich社製 カーボポール981であり、ヒアルロン酸ナトリウムは、キューピー(株)製 ヒアルロンサン HA-QAである。」
甲1-12)「【0044】
【表4】



【0045】尚、表4において、メチルセルロースは、信越化学工業(株)製 メトローズSM-4000であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、同60SH-4000(実施例17,19,21)、60SH-50(実施例18,22)であり、ポリビニルアルコールは、日本合成化学(株)製 ゴーセノールEG-05であり、ポリビニルピロリドンは、BASF社製 Kollidon 90Fであり、ヒアルロン酸ナトリウムは、マルハ(株)製 ヒアルロン酸ナトリウム「マルハ」(点眼用)である。」

イ 甲17について
本件特許優先日前に頒布された甲17には、以下の記載がある。
甲17-1)「重量平均分子量は,光散乱および超遠心法で決定することができる.」(第953頁左欄「重量平均分子量」参照)

ウ 甲28について
本件特許優先日前に頒布された甲28には、以下の記載がある。
甲28-1)「【0028】
(実施例1)
コンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-791,サメ由来)の3w/v%水溶液900mLに、塩化第二鉄水溶液(Fe_(2)Cl_(3)・6H_(2)O 7.9w/v%)を45mL加え攪拌した(図2:Fe-1)。次に、水酸化ナトリウム水溶液(10.6w/v%)を10mL加えて攪拌して初期調整をした後(図2:OH-1)、さらに、同濃度の水酸化ナトリウム水溶液15mLを加えて攪拌した(図2:OH-2)。なお初期調整した後のpHは約4.0であった。そして、先と同濃度の塩化第二鉄水溶液を45mL加えた後(図2:Fe-2)、水酸化ナトリウム水溶液15mLと塩化第二鉄水溶液45mLをそれぞれ6回交互に添加混合し(図2:OH-3,Fe-3…OH-8,Fe-8)、水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合液のpHを7.7に調整した上で最後に水を加えて全量を1.5Lとした。この間、操作は常温下で行い、回転数3,500rpmで攪拌をし続けた。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図2に示す。
【0029】
用いたコンドロイチン硫酸ナトリウムは、平均分子量21,500、ΔDi-6Sが74.6重量%、ΔDi-4Sが16.5重量%、2硫酸totalが7.3重量%であった。
【0030】
〔コンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量の測定〕
コンドロイチン硫酸ナトリウム20mgを精密に量り、移動相で正確に10mLとして試料溶液とした。別にプルラン標準品(分子量20,000)20mgを精密に量り、移動相で正確に20mLとして標準溶液とした。試料溶液および標準溶液300μLにつき、次の操作条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、光散乱データ処理 GPC LALLSプログラムにより試料の平均分子量を算出した。
試験条件
HLC-8120GPCシステム
検出器:示差屈折計、光散乱光度計
カラム:TOSOH TSK-GEL G3000PWXL 7.8mm×300mm
カラム温度:40℃
移動相:0.2mol/L NaNO_(3)水溶液
流量:0.8mL/min」
甲28-2)「【0033】
(実施例2)
平均分子量24,100、ΔDi-6Sが68.4重量%、ΔDi-4Sが20.5重量%、2硫酸totalが9.2重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-794,サメ由来)1.5w/v%の水溶液1,800mLに、塩化第二鉄水溶液(Fe_(2)Cl_(3)・6H_(2)O 7.9w/v%)を45mL加え、攪拌した(図3:Fe-1)。次に、水酸化ナトリウム水溶液(10.6w/v%)を12mL加えて攪拌して初期調整をした後(図3:OH-1)、最終pHを約8.1に調整すると共に全量を水で3Lとした他は実施例1と同様に行った。なお初期調整後のpHは約4.4であった。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図3に示す。
【0034】
(実施例3)
平均分子量24,100、ΔDi-6Sが56.0重量%、ΔDi-4Sが28.3重量%、2硫酸totalが10.3重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-790,サメ由来)3.0w/v%の水溶液を用い、最終pHを約7.9に調整した以外は実施例1と同様に行った。なお初期調整後のpHは約4.0であった。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図4に示す。」

エ 甲29について
本件特許優先日前に頒布された甲29には、以下の記載がある。
甲29-1)「【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明についてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
コンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-790,サメ由来)の3.9w/v%水溶液1000mLに、当該水溶液を攪拌(1000rpm)しながら水酸化ナトリウム水溶液(5.9w/v%)を10mL/hの速度で添加を始めた。混合液のpH目標値が9.0、変動域が0.1(pH目標値±0.05)となるように塩化第二鉄水溶液(FeCl3・6H_(2)O 23.7w/v%)を10mL/hの速度で加え、所定量の塩化第二鉄(塩化第二鉄水溶液28.5mL)が添加されるまで、約3時間の添加攪拌を続けた。この間、塩化第二鉄水溶液および水酸化ナトリウム水溶液の添加は、pHコントローラー(株式会社日伸理化製、NPH-8800)により制御された。添加終了後、pHコントローラーによる制御を止め、攪拌しながら残量の塩化第二鉄水溶液(1.5ml)を添加した。この液のpHは7.4、得られた鉄コロイド粒子の平均粒子径は126nmであった。
【0033】
なお、用いたコンドロイチン硫酸ナトリウムは、平均分子量21,500、ΔDi-6Sが74.6重量%、ΔDi-4Sが16.5重量%、2硫酸totalが7.3重量%であった。
【0034】
〔コンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量の測定〕
コンドロイチン硫酸ナトリウム20mgを精密に量り、移動相で正確に10mLとして試料溶液とした。別にプルラン標準品(分子量20,000)20mgを精密に量り、移動相で正確に20mLとして標準溶液とした。試料溶液および標準溶液300μLにつき、次の操作条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、光散乱データ処理 GPC LALLSプログラムにより試料の平均分子量を算出した。
【0035】
試験条件
HLC-8120GPCシステム
検出器:示差屈折計、光散乱光度計
カラム:TOSOH TSK-GEL G3000PWXL 7.8mm×300mm
カラム温度:40℃
移動相:0.2mol/L NaNO_(3)水溶液
流量:0.8mL/min」
甲29-2)「【0039】
(実施例2)
平均分子量21,200、ΔDi-6Sが68.4重量%、ΔDi-4Sが20.5重量%、2硫酸totalが9.2重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-794,サメ由来)を用い、当該水溶液を攪拌(1000rpm)しながら水酸化ナトリウム水溶液(5.9w/v%)を15mL/hの速度で添加を始めた。次に、混合液のpH目標値を10.0、pH変動域を0.1(pH目標値±0.05)となるように、塩化第二鉄水溶液(FeCl_(3)・6H_(2)O 23.7w/v%)を15mL/hの速度で加えた。そして、所定量の塩化第二鉄(塩化第二鉄水溶液26.5mL)が添加されるまで、約2時間の添加攪拌を続けた。この間、塩化第二鉄水溶液および水酸化ナトリウム水溶液の添加は、pHコントローラー(株式会社日伸理化製、NPH-8800)により制御された。添加終了後、pHコントローラーによる制御を止め、攪拌しながら残量の塩化第二鉄水溶液(3.5ml)を添加した。この液のpHは7.5であり、その後水酸化ナトリウム水溶液を加えて液のpHを8.0に調整した。得られた鉄コロイド粒子の平均粒子径は73nmであった。」

オ 甲45について
作成日不明の甲45には、以下の記載がある。
甲45-1)「




(2)甲17、28、29、45より認定される事実
上記(1)ウに示した摘示甲28-1)、甲28-2)より、甲28には、マルハ株式会社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムとして、「Lot.PUC-791」、「Lot.PUC-794」、「Lot.PUC-790」が記載されており、それらの光散乱法により求められる平均分子量は、それぞれ、21500、24100、24100である旨が記載されている。
また、上記(1)エに示した摘示甲29-1)、甲29-2)より、甲29には、マルハ株式会社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムとして、「Lot.PUC-790」、「Lot.PUC-794」が記載されており、それらの光散乱法により求められる平均分子量は、それぞれ、21500、21200である旨が記載されている。
ここで、甲17によれば、光散乱法により決定される平均分子量は重量平均分子量であることから、甲28、甲29に記載の平均分子量は、重量平均分子量であると認められる。
その上で、甲45によれば、マルハ株式会社は、局外規コンドロイチン硫酸ナトリウムのロットを特定する際に、「PUC-790」との表現を用いていたものと認められることから、甲28、甲29に記載された「Lot.PUC-790」、また類似した表現の「Lot.PUC-791」、「Lot.PUC-794」は、そのいずれもが、マルハ株式会社製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウムであると認められる。
そして、同じ製品名を有するコンドロイチン硫酸ナトリウムであっても、ロット毎に、その重量平均分子量に多少のぶれが存在することや、重量平均分子量の測定値にはある程度のぶれがあることは技術常識であることを勘案すれば、マルハ株式会社製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウムは、約20000?25000程度の重量平均分子量を有するものと認められる。

(3)甲1に記載された発明
甲1の実施例において、いかなるコンドロイチン硫酸ナトリウムを用いたかについて直接的には記載されていないものの、甲1の段落【0012】には「コンドロイチン硫酸ナトリウムであれば、マルハ(株)製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム等の市販品が挙げられる。」と記載されており、その他に、使用し得るコンドロイチン硫酸ナトリウムの具体例は甲1中に開示されていないことから、実施例においても「マルハ(株)製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム」が用いられたものと認められる。

その上で、上記(2)に示したとおり、マルハ株式会社製の局外規コンドロイチン硫酸ナトリウムは、約20000?25000の重量平均分子量を有するものと認められるから、甲1には、上記(1)アの記載(特に、段落【0028】、実施例11及び実施例17)からみて、次の発明が記載されているものと認められる。

「下記の成分(含有量はg/100mL)からなり、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である、眼に対するDraize法により評価される刺激性が低く、点眼直後の清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤。
<成分>
l-メントール:0.03、dl-カンフル:0.003、シネオール:0.01、ベルガモット油:0.008、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:0.2、約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:2、クロロブタノール:0.3、塩酸テトラヒドロゾリン:0.05、マレイン酸クロルフェニラミン:0.03、塩酸ピリドキシン:0.1、L-アスパラギン酸カリウム:1、シアノコバラミン:0.01、ホウ酸:0.5、塩化ナトリウム:0.4、エデト酸ナトリウム:0.1、プロピレングリコール:1、塩化ベンザルコニウム:0.01、pH調整剤(HCl/NaOH):適量、滅菌精製水:適量 」(以下「甲1発明11」という。)

「下記の成分(含有量はg/100mL)からなり、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である、眼に対するDraize法により評価される刺激性が低く、点眼直後の清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤。
<成分>
l-メントール:0.02、dl-カンフル:0.03、d-ボルネオール:0.01、ローズ油:0.01、メチルセルロース:0.2、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2、約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:0.5、クロロブタノール:0.3、塩化ナトリウム:0.44、塩化カリウム:0.1、L-アスパラギン酸カリウム:1、アミノエチルスルホン酸:0.2、ホウ酸:1、ホウ砂:0.2、ポリオキシエチレン(P=20)ソルビタンモノオレエート:0.05、エデト酸ナトリウム:0.1、プロピレングリコール:0.5、ソルビン酸カリウム:0.1、pH調整剤(HCl/NaOH):適量、滅菌精製水:適量 」(以下「甲1発明17」という。)

(4)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲1発明11とを対比する。
甲1発明11の「l-メントール:0.03、dl-カンフル:0.003」は、訂正発明1の「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」に相当する。
甲1発明11の「塩化ナトリウム:0.4」は、訂正発明1の「b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲1発明11の「約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:2」は、訂正発明1の「c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%」に相当する。
甲1発明11の「清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤」は、訂正発明1の「清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当する。
甲1発明11の「ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である」清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤とは、ハードコンタクトレンズ装用時だけでなく、ソフトコンタクトレンズ装用時においても清涼感を付与できるといえるから、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用時に」清涼感を付与するための眼科用清涼組成物に相当する。
甲1発明11の「クロロブタノール」は、訂正発明1の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲1発明11との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物。」

【相違点1】
訂正発明1は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲1発明11は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。

イ 訂正発明1と甲1発明17とを対比する。
甲1発明17の「l-メントール:0.02、dl-カンフル:0.03、d-ボルネオール:0.01」は、訂正発明1の「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」に相当する。
甲1発明17の「塩化ナトリウム:0.44、塩化カリウム:0.1」は、訂正発明1の「b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲1発明17の「約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:0.5」は、訂正発明1の「c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲1発明17の「清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤」は、訂正発明1の「清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当する。
甲1発明17の「ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である」清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤とは、ハードコンタクトレンズ装用時だけでなく、ソフトコンタクトレンズ装用時においても清涼感を付与できるといえるから、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用時に」清涼感を付与するための眼科用清涼組成物に相当する。
甲1発明17の「クロロブタノール」は、訂正発明1の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲1発明17との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物。」

【相違点1’】
訂正発明1は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲1発明17は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。

ウ 判断
上記(1)アの甲1の記載によれば、甲1に記載された発明は、「眼に対する刺激性が低く、良好な清涼感を付与することができ、かつ、清涼感の持続性の高い眼科用組成物を提供すること」を課題とし、当該課題を解決するための必須の成分として局所麻酔剤を配合するものであり、局所麻酔剤が所定量の数値範囲に満たないと、清涼化による刺激が生じたり、清涼感の持続が得られないことがあるとされている(段落【0005】、【0006】、【0015】)。
そうすると、局所麻酔剤の有無についての相違点1?1’は、実質的な相違点である。
したがって、訂正発明1は、甲1発明11又は甲1発明17と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。

(5)訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(4)に示したとおり、訂正発明1は甲1に記載された発明とはいえないから、訂正発明2?5も、同様の理由により、甲1に記載された発明とはいえない。

(6)訂正発明6について
ア 訂正発明6と甲1発明11とを対比する。
甲1発明11の「l-メントール:0.03、dl-カンフル:0.003」は、訂正発明6の「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」に相当する。
甲1発明11の「塩化ナトリウム:0.4」は、訂正発明6の「b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲1発明11の「約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:2」は、訂正発明6の「c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲1発明11の「清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤」は、訂正発明6の「眼科用清涼組成物」に相当する。
甲1発明11の「ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である」とは、ソフトコンタクトレンズ常用者も点眼可能であると解されることから、訂正発明6の「ソフトコンタクトレンズ常用者用」に相当する。
甲1発明11の「クロロブタノール」は、訂正発明6の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明6と甲1発明11との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物。」

【相違点3】
訂正発明6は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲1発明11は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。

イ 訂正発明6と甲1発明17とを対比する。
甲1発明17の「l-メントール:0.02、dl-カンフル0.03、d-ボルネオール:0.01」は、訂正発明6の「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」に相当する。
甲1発明17の「塩化ナトリウム:0.44、塩化カリウム:0.1」は、訂正発明6の「b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲1発明17の「約20000?25000の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム:0.5」は、訂正発明6の「c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲1発明17の「清涼感及び清涼感の持続性が極めて高い点眼剤」は、訂正発明6の「眼科用清涼組成物」に相当する。
甲1発明17の「ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等を装用した状態でも点眼可能である」とは、ソフトコンタクトレンズ常用者も点眼可能であると解されることから、訂正発明6の「ソフトコンタクトレンズ常用者用」に相当する。
甲1発明17の「クロロブタノール」は、訂正発明6の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明6と甲1発明17との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物。」

【相違点3’】
訂正発明6は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲1発明17は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。

ウ 判断
相違点1?1’と同様に、局所麻酔剤の有無についての相違点3?3’は、実質的な相違点である。
したがって、訂正発明6は、甲1発明11又は甲1発明17と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。

(7)請求人の主張について
請求人は、本件訂正前の本件特許発明1?6は、甲1に記載された発明と同一である旨を主張している。
しかしながら、本件特許発明1?6は訂正されて、「ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く」ものとなり、相違点1?1’及び相違点3?3’において、実質的に甲1に記載された発明と相違するものとなった。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(8)小括
以上のとおり、訂正発明1?6に係る発明は、甲1に記載された発明とはいえないから、請求人が主張する無効理由4は理由がない。

4 無効理由5について
(1)甲4、甲7?甲10について
ア 甲4について
本件特許優先日前に頒布された甲4には、以下の記載がある。
甲4-1)「新アスパクール…:100mL中メチル硫酸ネオスチグミン5mg,イプシロン-アミノカプロン酸1g,マレイン酸クロルフェニラミン30mg,塩酸ピリドキシン100mg,アミノエチルスルホン酸1g,コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg 添(当審注:添は□囲いの添):クロロブタノール,パラベン,エデト酸Na,D-マンニトール,l-メントール,d-ボルネオール,ホウ酸,塩化Na,エタノール 適(当審注:適は□囲いの適)目の疲れ,結膜充血,眼病予防…,紫外線その他の光線による眼炎…,眼瞼炎…,ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感,眼のかゆみ,目のかすみ(目やにの多いときなど)」(第689頁「新アスパクール」欄参照)
甲4-2)「新アスパライトフレッシュ…:100mL中メチル硫酸ネオスチグミン5mg,イプシロン-アミノカプロン酸1g,マレイン酸クロルフェニラミン30mg,塩酸ピリドキシン100mg,アミノエチルスルホン酸1g,コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg 添(当審注:添は□囲いの添):クロロブタノール,パラベン,エデト酸Na,D-マンニトール,l-メントール,d-ボルネオール,ホウ酸,塩化Na,エタノール 適(当審注:適は□囲いの適)目の疲れ,結膜充血,眼病予防…,紫外線その他の光線による眼炎…,眼瞼炎…,ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感,眼のかゆみ,目のかすみ(目やにの多いときなど)」(第690頁「新アスパライトフレッシュ」欄参照)
甲4-3)「ピタール目薬…:100mL中メチル硫酸ネオスチグミン5mg,イプシロン-アミノカプロン酸1g,マレイン酸クロルフェニラミン30mg,塩酸ピリドキシン100mg,アミノエチルスルホン酸1g,コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg 添(当審注:添は□囲いの添):クロロブタノール,パラベン,エデト酸Na,D-マンニトール,l-メントール,d-ボルネオール,ホウ酸,塩化Na,エタノール 適(当審注:適は□囲いの適)目の疲れ,結膜充血,眼病予防…,紫外線その他の光線による眼炎…,眼瞼炎…,ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感,眼のかゆみ,目のかすみ(目やにの多いときなど)」(第699頁「ピタール目薬」欄参照)

イ 甲7について
頒布日が不明の甲7は、新アスパライトフレッシュ添付文書であり、以下の記載がある。
甲7-1)「スキッとした清涼感のある目薬です。」
甲7-2)「(4)ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用しないで下さい」

ウ 甲8について
頒布日が不明の甲8は、新アスパクール添付文書であり、以下の記載がある。
甲8-1)「スキッとした清涼感のある目薬です。」
甲8-2)「(4)ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用しないで下さい。」

エ 甲9について
頒布日が不明の甲9は、ピタール目薬添付文書であり、以下の記載がある。
甲9-1)「(4)ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用しないで下さい。」

オ 甲10について
本件特許優先日前である2003/11/12と日付(当審注:当該日付はダウンロード日)が記入された甲10には、以下の記載がある。
甲10-1)「


上記甲10-1)における「H15.6.26」は、各医薬品製造の承認日である。

(2)本件特許優先日前に頒布された刊行物について
上記のとおり、甲7?甲9は、その頒布日が不明であるため、甲4、甲7?甲10のうち、本件特許優先日前に頒布された刊行物は、甲4、甲10のみであると認める。
そして、甲10は、自然法則を利用した技術的思想の創作であるところの発明が記載されていないことから、無効理由5の判断において検討する必要があるのは、甲4に記載された発明についてのみである。

(3)甲4に記載された発明
上記(1)アに示した摘示甲4-1)?甲4-3)より、甲4には、次の発明が記載されているものと認められる。

「100mL中に、メチル硫酸ネオスチグミン5mg、イプシロン-アミノカプロン酸1g、マレイン酸クロルフェニラミン30mg、塩酸ピリドキシン100mg、アミノエチルスルホン酸1g、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg、さらに添加剤として、クロロブタノール、パラベン、エデト酸Na、D-マンニトール、l-メントール、d-ボルネオール、ホウ酸、塩化Na、エタノールを添加した、眼科用薬であって、目の疲れ、結膜充血、眼病予防、紫外線その他の光線による眼炎、眼瞼炎、ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、眼のかゆみ、又は、目のかすみに対して適用する、眼科用薬。」(以下「甲4発明」という。)

(4)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「l-メントール、d-ボルネオール」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲4発明の「塩化Na」は、訂正発明1の「塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲4発明の「100mL中に」「コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲4発明の「眼科用薬」は、訂正発明1の「眼科用」「組成物」に相当する。
甲4発明の「クロロブタノール」は、訂正発明1の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする眼科用組成物。」

【相違点5】
訂正発明1は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲4発明は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。
【相違点6】
訂正発明1は、a)成分を「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、甲4発明は、含有量を特定していない点。
【相違点7】
訂正発明1は、b)成分を「0.01?10w/v%」含むのに対し、甲4発明は、含有量を特定していない点。
【相違点8】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲4発明は、平均分子量を特定していない点。
【相違点9】
訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」であるのに対し、甲4発明は、「目の疲れ、結膜充血、眼病予防、紫外線その他の光線による眼炎、眼瞼炎、ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、眼のかゆみ、又は、目のかすみに対して適用する、眼科用薬」である点。

イ 判断
相違点5?9は、いずれも実質的な相違点であるから、訂正発明1は、甲4発明と同一ではなく、甲4に記載された発明とはいえない。

(5)訂正発明3?5について
訂正発明3?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(4)に示したとおり、訂正発明1は甲4に記載された発明とはいえないことから、同様の理由により、訂正発明3?5も、甲4に記載された発明とはいえない。

(6)訂正発明6について
ア 訂正発明6と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「l-メントール、d-ボルネオール」は、訂正発明6の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲4発明の「塩化Na」は、訂正発明6の「塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲4発明の「100mL中に」「コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg」は、訂正発明6の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲4発明の「眼科用薬」は、訂正発明6の「眼科用」「組成物」に相当する。
甲4発明の「クロロブタノール」は、訂正発明6の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明6と甲4発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする眼科用組成物。」

【相違点5’】
訂正発明6は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、甲4発明は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。
【相違点6’】
訂正発明6は、a)成分を「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、甲4発明は、含有量を特定していない点。
【相違点7’】
訂正発明6は、b)成分を「0.01?10w/v%」含むのに対し、甲4発明は、含有量を特定していない点。
【相違点8’】
訂正発明6は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲4発明は、平均分子量を特定していない点。
【相違点9’】
訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」であるのに対し、甲4発明は、「目の疲れ、結膜充血、眼病予防、紫外線その他の光線による眼炎、眼瞼炎、ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、眼のかゆみ、又は、目のかすみに対して適用する、眼科用薬」である点。

イ 判断
上記相違点5’?9’は、いずれも実質的な相違点であるから、訂正発明6は、甲4発明と同一ではなく、甲4に記載された発明とはいえない。

(7)小括
以上のとおり、訂正発明1、3?6は、甲4、甲7?10に記載された発明とはいえず、請求人が主張する無効理由5は理由がない。

5 無効理由6について
(1)本件特許優先日前に公然実施されていた発明について
本件特許優先日前に頒布された甲4、10には、それぞれ、上記4(1)に示したとおり記載されていることから、甲4発明に係る組成を有する「新アスパクール」「新アスパライトフレッシュ」「ピタール目薬」が、それぞれ本件特許優先日前に公然実施されていたものと認められる。
そして、甲7?9は、その頒布日が不明であるものの、いずれも添付文書であることを勘案すると、次の発明が本件特許優先日前に公然実施されていたものと認められる。

「100mL中に、メチル硫酸ネオスチグミン5mg、イプシロン-アミノカプロン酸1g、マレイン酸クロルフェニラミン30mg、塩酸ピリドキシン100mg、アミノエチルスルホン酸1g、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg、さらに添加剤として、クロロブタノール、パラベン、エデト酸Na、D-マンニトール、l-メントール、d-ボルネオール、ホウ酸、塩化Na、エタノールを添加した組成であり、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない清涼感のある眼科用薬である新アスパクール」(以下「公然実施発明1」という。)

「100mL中に、メチル硫酸ネオスチグミン5mg、イプシロン-アミノカプロン酸1g、マレイン酸クロルフェニラミン30mg、塩酸ピリドキシン100mg、アミノエチルスルホン酸1g、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg、さらに添加剤として、クロロブタノール、パラベン、エデト酸Na、D-マンニトール、l-メントール、d-ボルネオール、ホウ酸、塩化Na、エタノールを添加した組成であり、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない清涼感のある眼科用薬である新アスパライトフレッシュ」(以下「公然実施発明2」という。)

「100mL中に、メチル硫酸ネオスチグミン5mg、イプシロン-アミノカプロン酸1g、マレイン酸クロルフェニラミン30mg、塩酸ピリドキシン100mg、アミノエチルスルホン酸1g、コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg、さらに添加剤として、クロロブタノール、パラベン、エデト酸Na、D-マンニトール、l-メントール、d-ボルネオール、ホウ酸、塩化Na、エタノールを添加した組成であり、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない眼科用薬であるピタール目薬」(以下「公然実施発明3」という。)

(2)訂正発明1について
公然実施発明1?3は、それらの組成が共通していることから、まとめて訂正発明1と対比する。
公然実施発明1?3の「l-メントール、d-ボルネオール」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
公然実施発明1?3の「塩化Na」は、訂正発明1の「塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
公然実施発明1?3の「100mL中に」「コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
公然実施発明1?2の「清涼感のある眼科用薬」は、訂正発明1の「清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当し、公然実施発明3の「眼科用薬」は、訂正発明1の「眼科用」「組成物」に相当する。
公然実施発明1?3の「クロロブタノール」は、訂正発明1の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明1と公然実施発明1?3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【訂正発明1と公然実施発明1?2との一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする、清涼感を付与するための眼科用清涼組成物。」

【訂正発明1と公然実施発明3との一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする、眼科用組成物。」

【相違点10】
訂正発明1は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、公然実施発明1?3は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。
【相違点11】
訂正発明1は、a)成分を「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、公然実施発明1?3は含有量を特定していない点。【相違点12】
訂正発明1は、b)成分を「0.01?10w/v%」含むのに対し、公然実施発明1?3は、含有量を特定していない点。
【相違点13】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、公然実施発明1?3は、平均分子量を特定していない点。
【相違点14】
訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズ装用時に」清涼感を付与するためのものであるのに対し、公然実施発明1?3は、「ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない」ものであり、特に、公然実施発明3は、清涼感を付与するためのものであるのか不明である点。

イ 判断
上記相違点10?14はいずれも実質的な相違点であるから、訂正発明1は、公然実施発明1?3のいずれとも同一ではなく、公然に実施された発明とはいえない。

(3)訂正発明3?5について
訂正発明3?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(2)に示したとおり、訂正発明1は公然実施発明1?3のいずれとも同一ではなく、公然に実施された発明ではないから、訂正発明3?5も、同様の理由により、公然実施発明1?3のいずれとも同一ではなく、公然に実施された発明とはいえない。

(4)訂正発明6について
公然実施発明1?3は、それらの組成が共通していることからまとめて、訂正発明6と対比する。
公然実施発明1?3の「l-メントール、d-ボルネオール」は、訂正発明6の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
公然実施発明1?3の「塩化Na」は、訂正発明6の「塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
公然実施発明1?3の「100mL中に」「コンドロイチン硫酸ナトリウム100mg」は、訂正発明6の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
公然実施発明1?2の「清涼感のある眼科用薬」は、訂正発明6の「眼科用清涼組成物」に相当し、公然実施発明3の「眼科用薬」は、訂正発明6の「眼科用」「組成物」に相当する。
公然実施発明1?3の「クロロブタノール」は、訂正発明6の「局所麻酔剤」に相当する。

以上のことから、訂正発明6と公然実施発明1?3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【訂正発明6と公然実施発明1?2との一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする眼科用清涼組成物。」

【訂正発明6と公然実施発明3との一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする眼科用組成物。」

【相違点10’】
訂正発明6は、局所麻酔剤を含有するものを除いているのに対し、公然実施発明1?3は、局所麻酔剤であるクロロブタノールを含む点。
【相違点11’】
訂正発明6は、a)成分を「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、公然実施発明1?3は含有量を特定していない点。【相違点12’】
訂正発明6は、b)成分を「0.01?10w/v%」含むのに対し、公然実施発明1?3は、含有量を特定していない点。
【相違点13’】
訂正発明6は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、公然実施発明1?3は、平均分子量を特定していない点。
【相違点14’】
訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用」であるのに対し、公然実施発明1?2は、「ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない」ものであり、また、訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用」の「清涼組成物」であるのに対し、公然実施発明3は、「ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない」ものであり、清涼感を付与するためのものであるのか不明である点。

イ 判断
上記相違点10’?14’は、いずれも実質的な相違点であるから、訂正発明6は、公然実施発明1?3のいずれとも同一ではなく、公然に実施された発明とはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の第48頁下から2行目?第49頁第3行目において、
「なお、添付文書ではハードコンタクトレンズ装着用に特定されているが、これは薬事上の承認の問題であって、特許要件とは独立した問題であってソフトコンタクトレンズ装用中に使用できないというものではない(D-1も実質的に充足)。したがって、実質的に同一であるという点を変更させるものではない。」
と主張している。

しかしながら、訂正発明、公然実施発明1?3は、いずれも医薬分野の発明であることを勘案すると、ソフトコンタクトレンズ装用時に使用するための眼科用組成物と、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない眼科用組成物とは、その用途が明らかに異なる。また、ソフトコンタクト常用者用の眼科用組成物と、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない眼科用組成物についても、同様の理由により、その用途が明らかに異なるといわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上のとおり、訂正発明1、3?6は、甲4、甲7?10によって証明される本件特許優先日前に公然実施された発明であるとはいえず、請求人が主張する無効理由6は理由がない。

6 無効理由(7-1)について
(1)甲1について
上記3(3)に示したとおり、甲1には、甲1発明11と甲1発明17が記載されている。

(2)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲1発明11又は甲1発明17とを対比すると、両者は上記3(4)ア及びイに示したとおりの点で一致し、相違点1?1’において相違する。

イ 判断
甲1の記載によれば、甲1に記載された発明は、「眼に対する刺激性が低く、良好な清涼感を付与することができ、かつ、清涼感の持続性の高い眼科用組成物を提供すること」を課題とし、当該課題を解決するための手段として局所麻酔剤を配合するものであり、局所麻酔剤が所定量の数値範囲に満たないと、清涼化による刺激が生じたり、清涼感の持続が得られないことがあるとされている(段落【0005】、【0006】、【0015】)。
そうすると、甲1発明から局所麻酔剤を除くと、当該発明の課題が解決できないことは明らかであるから、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明から局所麻酔剤を除くことには阻害要因がある。
また、甲2、11?14、22、23、25等の他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明から局所麻酔剤を除く動機付けを裏付ける記載は見出せない。
したがって、訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(3)訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(2)に示したとおり、訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえないから、訂正発明2?5も、同様の理由により、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をし得たものとはいえない。

(4)訂正発明6について
ア 訂正発明6と甲1発明11又は甲1発明17とを対比すると、両者は上記3(6)ア及びイに示したとおりの点で一致し、相違点3?3’において相違する。

イ 判断
上記(2)イのとおり、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明から局所麻酔剤を除くことには阻害要因があり、また、甲2、11?14、22、23、25等の他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明から局所麻酔剤を除く動機付けを裏付ける記載は見出せない。
したがって、訂正発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をし得たものとはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は、本件訂正前の本件特許発明1?6は、実施例に記載した特定の態様以外については、所与の作用効果を奏しないこと、及び、本件特許発明1が「ソフトコンタクトレンズ装用時」に清涼感を付与するためのものであるのに対して、甲1発明がそうでない点は実質的な相違点ではないこと等を指摘し、本件特許発明1?6は進歩性がない旨を主張する。

しかしながら、本件特許発明1?6は訂正されて、「ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く」ものとなり、この点(相違点1?1’、3?3’)で相違するものとなった。そして上記したように、甲1に記載された発明において必須の発明特定事項である局所麻酔剤を除くことには阻害要因があるから、訂正発明1?6の効果を検討するまでもなく、訂正発明1?6は進歩性があるといわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上のとおり、訂正発明1?6は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえず、請求人が主張する無効理由(7-1)は理由がない。

7 無効理由(7-2)について
(1)甲13について
ア 本件特許優先日前に頒布された甲13には、以下の記載がある。
甲13-1)「【請求項1】高分子化合物及びアミノ酸類を含有することを特徴とするコンタクトレンズ用眼科組成物
【請求項2】高分子化合物、及びアミノ酸類を増粘化剤として含有し、35℃における粘度が1?30mPa・sであることを特徴とするコンタクトレンズ用眼科組成物」
甲13-2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンタクトレンズ装用者に適用される眼科組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】コンタクトレンズの装用は、異物を眼に挿入するという観点から、装着時または装用時に異物感を感じる等、様々な問題がある。これらの問題を解決するために、様々なコンタクトレンズ用点眼剤(点眼液、装着液等)が開発されている。その中で、高分子化合物を配合して組成物の粘度を上げ、装着感、装用感を改善する点眼剤が知られているが、高分子化合物特有のべたつきを生じるため、使用感は満足できるものではなかった。したがって、装着時、装用時の使用感が優れたコンタクトレンズ用の点眼剤の開発が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、装着時、装用時のべたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供するものである。本発明は、さらに、コンタクトレンズ用組成物に適した、べたつきが抑制された増粘技術を提供するものである。」
甲13-3)「【0004】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高分子化合物及びアミノ酸類を配合することにより、高分子化合物特有のべたつきが抑制された水性液が得られることを知見した。さらに、高分子水溶液にアミノ酸類を添加することにより粘度が増し、しかもべとつきが低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。」
甲13-4)「【0011】好ましく用いられるアミノ酸類は、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、グルタミン酸、グリシン、リジンとそれらの塩である。特に好ましくは、アスパラギン酸、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸またはそれらの塩である。
【0012】本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物におけるアミノ酸類の含有量は、好ましくは0.005?10g/100ml、特に好ましくは0.001?5g/ml、さらに好ましくは0.05?3g/100mlである。この範囲で、特に良好な使用感や増粘効果が得られ、しかも眼への刺激がない優れた組成物が得られる。
【0013】本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の粘度は、35℃における粘度が 1?30mPa・s、好ましくは1?20mPa・sである。この範囲で、特に良好なコンタクトレンズ装用感が得られる。さらに、点眼液の場合は点眼のし易さ等の点から1?10、特に1?3mPa・sが好ましい。また、装着液の場合は装着作業性等の点から1?20mPa・sが好ましい。組成物の粘度は、高分子化合物とアミノ酸類の量により、調整することができる。なお、本発明の組成物の粘度は、E型粘度計で測定することができる。」
甲13-5)「【0015】本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、さらに使用感を向上させるために、モノテルペノイド化合物、セスキテルペノイド化合物、及びそれらの誘導体(以下テルペノイド類)から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。モノテルペノイド化合物としては、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リモネン、オイゲノール等があげられる。セスキテルペノイド化合物としては、ファルネソール、ネロリドール等があげられる。誘導体としては、前記テルペノイド化合物のアルキルまたはアルケニルエステルやエーテルをあげることができる。
【0016】前記テルペノイド類は、1種または2種以上の混合物として含有することができる。これらは、精製された成分を配合しても良いし、前記テルペノイド類を含有する植物精油を配合しても良い。植物精油としては、ローズマリー油、ラベンダー油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ベルガモット油、ハッカ油、ウイキョウ油等があげられる。
【0017】本発明の組成物に含有される前記テルペノイド類の量は、好ましくは0.0001?0.5g/100ml、特に好ましくは0.0005?0.2g/100ml、さらに好ましくは0.001?0.05g/100mlである。ましくは0.001?0.05g/100mlである。」
甲13-6)「【0021】等張化剤としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、プロピレングリコール、グリセリン等があげられる。」
甲13-7)「【0025】
【発明の効果】本発明によれば、高分子化合物とアミノ酸類を配合することにより、べたつきがなく適度な粘度を有する、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物(点眼液、装着液等)が得られる。」
甲13-8)「【0032】<使用感の評価>
点眼液;被検者9名に、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ3名、酸素透過性ハードコンタクトレンズ3名、ソフトコンタクトレンズ3名)を装用したまま点眼させ、装用感の評価を以下の基準で行った。
5:べたつきがなく、非常に使用感が良い
4:べたつきがほとんどなく、使用感が良い
3:べたつきがややあり、使用感はやや悪い
2:べたつきがあり、使用感が悪い
1:べたつきがひどく、非常に使用感が悪い
5段階評価の平均点が4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、2未満を×とした。
【0033】装着液;被検者9名に、表5、6の装着液を使用してコンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ3名、酸素透過性ハードコンタクトレンズ3名、ソフトコンタクトレンズ3名)を装着させ、装着時および装着後の使用感評価を行った。評価は、点眼液と同じ基準で5段階評価とした。」
甲13-9)「【0034】
【表3】


甲13-10)「【0035】
【表4】



甲13-11)「【0037】
【表6】



なお、【表3】、【表4】、【表6】には、その数値の単位が記載されていないが、摘示甲13-4)、摘示甲13-5)などを参酌すると、その単位は、「g/100ml」であると認められる。

イ 甲13に記載の発明
上記アに示した摘示事項13-8)?13-11)より、甲13には、次の発明が記載されていると認められる。

「以下の組成(含有量はg/100ml)からなる、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズ装用時においても使用可能な点眼液。
<組成>
コンドロイチン硫酸Na:0.5、ポリビニルピロリドン:0.1、メチルセルロース:0.3、塩化ナトリウム:0.3、ホウ酸:0.5、ホウ砂:0.05、エデト酸ナトリウム:0.01、ソルビン酸カリウム:0.1、プロピレングリコール:0.5、l-メントール:0.003、dl-カンフル:0.003、滅菌精製水:残部」(実施例13より。以下「甲13発明13」という。)

「以下の組成(含有量はg/100ml)からなる、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用可能なコンタクトレンズ用装着液。
<組成>
アミノエチルスルホン酸:0.05、コンドロイチン硫酸Na:2、ポリビニルピロリドン:2.5、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:0.05、塩化ナトリウム:0.7、α-シクロデキストリン:0.1、ホウ酸:1.5、ホウ砂:0.05、エデト酸ナトリウム:0.05、塩化ベンザルコニウム(10%):0.05、グリセリン:0.1、l-メントール:0.003、dl-カンフル:0.003、滅菌精製水:残部」(実施例17より。以下「甲13発明17」という。)

「以下の組成(含有量はg/100ml)からなる、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用できるコンタクトレンズ用装着液。
<組成>
アミノエチルスルホン酸:0.05、コンドロイチン硫酸Na:2、ポリビニルピロリドン:2.5、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2、ヒドロキシエチルセルロース:0.05、塩化ナトリウム:0.7、α-シクロデキストリン:0.1、エデト酸ナトリウム:0.05、塩化ベンザルコニウム(10%):0.05、プロピレングリコール:0.1、l-メントール:0.003、dl-カンフル:0.003、滅菌精製水:残部」(実施例28より。以下「甲13発明28」という。)

(2)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲13発明13とを対比する。
甲13発明13の「l-メントール」「dl-カンフル」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲13発明13の「塩化ナトリウム:0.3」は、訂正発明1の「0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲13発明13の「コンドロイチン硫酸Na:0.5」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲13発明13の「点眼液」は、訂正発明1の「眼科用」「組成物」に相当する。
甲13発明13は、局所麻酔剤を含まないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲13発明13との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする、眼科用組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」

【相違点15】
訂正発明1は、成分aを「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、甲13発明13は、0.006g/100ml(w/v%)しか含まない点。
【相違点16】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲13発明13は、平均分子量を特定していない点。
【相違点17】
訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明13は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズ装用時においても使用可能な点眼液」であるものの、清涼感を付与するためのものであるのか不明である点。

イ 訂正発明1と甲13発明17とを対比する。
甲13発明17の「l-メントール」「dl-カンフル」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲13発明17の「塩化ナトリウム:0.7」は、訂正発明1の「0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲13発明17の「コンドロイチン硫酸Na:2」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲13発明17の「装着液」は、訂正発明1の「眼科用」「組成物」に相当する。
甲13発明17は、局所麻酔剤を含まないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲13発明17との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする、眼科用組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」

【相違点15’】
訂正発明1は、成分aを「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、甲13発明17は、0.006g/100ml(w/v%)しか含まない点。
【相違点16’】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲13発明17は、平均分子量を特定していない点。
【相違点17’】
訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明17は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用可能なコンタクトレンズ用装着液」であるものの、清涼感を付与するためのものであるのか不明である点。

ウ 訂正発明1と甲13発明28とを対比する。
甲13発明28の「l-メントール」「dl-カンフル」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲13発明28の「塩化ナトリウム:0.7」は、訂正発明1の「0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種」に相当する。
甲13発明28の「コンドロイチン硫酸Na:2」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲13発明28の「装着液」は、訂正発明1の「眼科用」「組成物」に相当する。
甲13発明28は、局所麻酔剤を含まないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲13発明28との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とする、眼科用組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。」

【相違点15”】
訂正発明1は、成分aを「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、甲13発明28は、0.006g/100ml(w/v%)しか含まない点。
【相違点16”】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲13発明28は、平均分子量を特定していない点。
【相違点17”】
訂正発明1は、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明28は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用可能なコンタクトレンズ用装着液」であるものの、清涼感を付与するためのものであるのか不明である点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点15?15’’、16?16’’、17?17’’についてまとめて検討する。
(ア)訂正発明1の特徴
訂正発明1は、ソフトコンタクトレンズ装用者は、ハードコンタクトレンズ装用時又は裸眼の場合に比べ各段に清涼感を感じにくいという、ソフトコンタクトレンズ装用における特有の課題を解決するための発明である。訂正発明1は、一致点である成分bを所定量含有することに加え、成分aについての相違点15?15’’及び成分cについての相違点16?16’’に係る発明特定事項を備えることにより、眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いものとでき、「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための」「清涼組成物」という相違点17?17’’に係る用途として、上記課題を解決したものである(段落【0002】、【0004】?【0006】、【0008】、【0056】)。

(イ)甲13に記載された発明の特徴
上記(1)アによれば、コンタクトレンズ装着時又は装用時に感じる異物感を感じる等の問題を解決するために、コンタクトレンズ用点眼剤に高分子化合物を配合して粘度を上げ、装着感、装用感を改善することが行われているが、高分子化合物特有のべたつきを生じ、使用感は満足できるものではなかったところ、甲13に記載された発明は、装着時、装用時のべたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供することを課題とし、その解決手段として、高分子化合物とともにアミノ酸類を添加することを採用したものである(段落【0002】?【0004】)。
また、甲13の段落【0011】、【0012】には、アミノ酸類の具体例として、コンドロイチン硫酸又はその塩が例示され、アミノ酸類の含有量は0.005?10g/100mlの範囲で、良好な使用感や増粘効果が得られ、しかも眼への刺激がない優れた組成物が得られることが記載されている。
さらに、甲13の段落【0015】、【0017】には、さらに使用感を向上させるために、メントール、カンフル、ボルネオール等のテルペノイド類を、好ましくは0.0001?0.5g/100ml、さらに好ましくは0.001?0.05g/100mlの量で含有することが好ましいことが記載されている。
そして、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28においては、l-メントールとdl-カンフルが合計で0.006g/100ml添加され、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズのいずれに対しても、装着液又は点眼液として、べたつきがなく使用感が良いことも記載されている。

(ウ)甲13に記載された発明の課題は、「べたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供すること」であり、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用者は、ハードコンタクトレンズ装用時又は裸眼の場合に比べ各段に清涼感を感じにくい」という問題点を認識したうえでの「ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供すること」という課題とは異なっており、甲13においては、ソフトコンタクトレンズ特有の問題点には着目していない。
このことは、甲13の実施例における評価において、3種類のコンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ)が同等に扱われていることからも理解できる。

(エ)甲13には、テルペノイド類を「好ましくは0.001?0.5g/100ml」添加できることが記載され、テルペノイド類は、一般に清涼感を付与する成分であることは技術常識であるから、この範囲内で、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28におけるl-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして清涼感を増強させるという示唆はあるといえる。
しかしながら、清涼感を感じにくいソフトコンタクレンズ装用者において、どの程度テルペノイド類の含有量を増やせばよいかという点は具体的に記載されておらず、テルペノイド類による刺激の観点からの含有量についても記載がない。
また、甲13には、高分子化合物とは異なる成分であるアミノ酸類の一種として、コンドロイチン硫酸又はその塩が記載されているものの、その平均分子量をどの程度に設定すればよいか、その手がかりとなる記載は全くなく、コンドロイチン硫酸又はその塩とテルペノイド類の清涼感や刺激との関係についても記載はない。
そして、甲13には、塩化ナトリウム等の無機塩とテルペノイド類の清涼感や刺激との関係についても記載されていない。
そうすると、甲13の記載に接した当業者が、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28において、塩化ナトリウムの含有量は変更しない(あるいは変更したとしても0.01?10w/v%の範囲内にとどめる)としたうえで、l-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして0.01w/v%以上0.1w/v%未満、及び、コンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量を2万?4万とすることを同時に行って、清涼感を感じにくいソフトコンタクトレンズ装用時においても清涼感を付与するための清涼組成物とすることが、当業者が容易に想到し得た事項であるとする具体的な根拠に欠ける。

(オ)また、甲14には、点眼時の清涼化成分の刺激を緩和し、清涼感や爽快感を長時間に亘り持続できる方法を提供する発明が記載され(段落【0007】)、「清涼化成分を高濃度に含有しても、粘稠化剤により特定の粘度範囲に調整することによって不快な眼刺激性が軽減または緩和され、清涼感が持続し、疲れ目を解消できる利点がある。」(段落【0016】)と記載され、当該粘稠化剤として、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸等の甲13において「高分子化合物」として記載されたものなどの例示があるものの、コンドロイチン硫酸は例示されていない(段落【0010】)。
したがって、甲14の記載を考慮しても、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含む甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28において、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万とし、同時に、l-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして0.01w/v%以上0.1w/v%未満の範囲とする動機付けがあるともいえない。
甲2、11、12、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28から訂正発明1に至ることが当業者において容易であったことを裏付ける記載は見出せない。

(カ)そして、訂正発明1は、成分aのメントール、カンフル又はボルネールから選択される化合物の総量を0.01w/v%以上0.1w/v%未満、成分bの塩化ナトリウム等の特定の無機塩を0.01?10w/v%とし、更に、平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する組成とすることにより、「眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高い」という効果を奏するものであり(段落【0056】)、このような効果を奏することを、甲13の記載から当業者が予測することができたとはいえない。

(キ)したがって、訂正発明1は、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(3)訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(2)に示したとおり、訂正発明1が、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえないから、訂正発明2?5についても、同様の理由により、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4)訂正発明6について
ア 訂正発明6と甲13発明13とを対比すると、両者は上記(2)アに示したとおりの点で一致し、相違点15、相違点16、及び以下の点で相違する。
【相違点18】
訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明13は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズ装用時においても使用可能な点眼液」であるものの、清涼組成物であるのか不明である点。

イ 訂正発明6と甲13発明17とを対比すると、両者は上記(2)イに示したとおりの点で一致し、相違点15’、相違点16’及び以下の点で相違する。
【相違点18’】
訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明17は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用可能なコンタクトレンズ用装着液」であるものの、清涼組成物であるのか不明である点。

ウ 訂正発明6と甲13発明28とを対比すると、両者は上記(2)ウに示したとおりの点で一致し、相違点15”、相違点16”及び以下の点で相違する。
【相違点18”】
訂正発明6は、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の」「清涼組成物」であるのに対し、甲13発明28は、「ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズのいずれのレンズにおいても使用可能なコンタクトレンズ用装着液」であるものの、清涼組成物であるのか不明である点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点15?15’’、16?16’’、18?18’’についてまとめて検討する。
(ア)訂正発明6の特徴
訂正発明6は、ソフトコンタクトレンズ装用者は、ハードコンタクトレンズ装用時又は裸眼の場合に比べ各段に清涼感を感じにくいという、ソフトコンタクトレンズ装用における特有の課題を解決するための発明である。訂正発明6は、一致点である成分bを所定量含有することに加え、成分aについての相違点15?15’’及び成分cについての相違点16?16’’に係る発明特定事項を備えることにより、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がないものとでき、「ソフトコンタクトレンズ常用者用の」「清涼組成物」という相違点18?18’’に係る用途として、上記課題を解決したものである(段落【0002】、【0004】?【0006】、【0008】、【0056】)。

(イ)甲13に記載された発明の特徴
甲13に記載された発明の特徴は、上記(2)エ(イ)のとおりである。

(ウ)甲13に記載された発明の課題は、「べたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供すること」であり、訂正発明6の「ソフトコンタクトレンズ装用者は、ハードコンタクトレンズ装用時又は裸眼の場合に比べ各段に清涼感を感じにくい」という問題点を認識したうえでの「ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供すること」という課題とは異なっており、甲13においては、ソフトコンタクトレンズ特有の問題点には着目していない。
このことは、甲13の実施例における評価において、3種類のコンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ)が同等に扱われていることからも理解できる。

(エ)甲13には、テルペノイド類を「好ましくは0.001?0.5g/100ml」添加できることが記載され、テルペノイド類は、一般に清涼感を付与する成分であることは技術常識であるから、この範囲内で、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28におけるl-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして清涼感を増強させるという示唆はあるといえる。
しかしながら、ソフトコンタクトレンズを装用する場合には清涼感を感じにくいソフトコンタクレンズ常用者に対して使用する場合には、どの程度テルペノイド類の含有量を増やせばよいかという点は具体的に記載されておらず、テルペノイド類による刺激の観点からの含有量についても記載がない。
また、甲13には、高分子化合物とは異なる成分であるアミノ酸類の一種として、コンドロイチン硫酸又はその塩が記載されているものの、その平均分子量をどの程度に設定すればよいか、その手がかりとなる記載は全くなく、コンドロイチン硫酸又はその塩とテルペノイド類の清涼感や刺激との関係についても記載されていない。
そして、甲13には、塩化ナトリウム等の無機塩とテルペノイド類の清涼感や刺激との関係についても記載されていない。
そうすると、甲13の記載に接した当業者が、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28において、塩化ナトリウムの含有量は変更しない(あるいは変更したとしても0.01?10w/v%の範囲内にとどめる)としたうえで、l-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして0.01w/v%以上0.1w/v%未満、及び、コンドロイチン硫酸ナトリウムを平均分子量を2万?4万とすることを同時に行って、ソフトコンタクトレンズ常用者用の清涼組成物とすることが、当業者が容易に想到し得た事項であるとする具体的な根拠に欠ける。

(オ)また、甲14には、点眼時の清涼化成分の刺激を緩和し、清涼感や爽快感を長時間に亘り持続できる方法を提供する発明が記載され(段落【0007】)、「清涼化成分を高濃度に含有しても、粘稠化剤により特定の粘度範囲に調整することによって不快な眼刺激性が軽減または緩和され、清涼感が持続し、疲れ目を解消できる利点がある。」(段落【0016】)と記載され、当該粘稠化剤として、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸等の甲13において「高分子化合物」として記載されたものなどの例示があるものの、コンドロイチン硫酸は例示されていない(段落【0010】)。
したがって、甲14の記載を考慮しても、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含む甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28において、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万とし、同時に、l-メントールとdl-カンフルの合計量を増やして0.01w/v%以上0.1w/v%未満の範囲とする動機付けがあるともいえない。
甲2、11、12、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、甲13発明13、甲13発明17、甲13発明28から訂正発明6に至ることが当業者において容易であったことを裏付ける記載は見出せない。

(カ)そして、訂正発明6は、成分aのメントール、カンフル又はボルネールから選択される化合物の総量を0.01w/v%以上0.1w/v%未満、成分bの塩化ナトリウム等の特定の無機塩を0.01?10w/v%とし、更に、平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する組成とすることにより、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がないものとできるという効果を奏するものであり(段落【0056】)、このような効果を奏することを、甲13の記載から当業者が予測することができたとはいえない。

(キ)したがって、訂正発明6は、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は口頭審理陳述要領書の第38頁第20行目?最下行において、
「被請求人は、甲第13号証に記載される「べたつきを抑制する」ことが「清涼感を付与するもの」とは異なることを主張しているようである。
しかしながら、甲第13号証【0012】、【0015】等では、コンドロイチン硫酸等のアミノ酸類を添加すると「良好な使用感や増粘効果が得られ、しかも眼への刺激がない優れた組成物」が得られることが明記されており、特にべたつきとは独立した記載となっているのである。加えて、【0015】で「本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、さらに使用感を向上させるために、モノテルペノイド化合物、セスキテルペノイド化合物、及びそれらの誘導体(以下テルペノイド類)から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。」と記載しており、清涼感を付与することが記載されている。そして、「適宜増量することができることは当業者が容易に想到し得た事項で」はない」点については、上記甲第14号証から指摘したように、(メントール等の)清涼化成分を高濃度に含有しても、(コンドロイチン硫酸等の)粘稠化剤により特定の粘度範囲に調整することによって不快な眼刺激性が軽減または緩和され、清涼感が持続し、疲れ目を解消できる利点が明記されており、甲第14号証には、コンドロイチン硫酸をメントールとともに使用することで、メントールの許容使用量を増大させることについて、明確に示唆がされている。したがって、照会事項(ト)については、被請求人主張が失当であることがご理解頂けるかと思料する。」
と主張している。

しかしながら、上記(1)アに示した摘示甲13-8)のとおり、段落【0032】には、甲13に記載された「使用感」は「べたつき」により評価することが記載されている。よって、請求人が主張する段落【0012】、【0015】に記載された「使用感」についても、「べたつき」の改善を意味するものと認められ、甲13に記載される「べたつきを抑制する」こと、「使用感」を改善することは、「清涼感を付与する」こととは、異なるものであると認められ、請求人の主張は採用し得ない。
また、「清涼感を付与することが記載されている」と請求人は主張するが、甲13にはそのような記載はなく、請求人の主張には根拠がない。
さらに、甲14には「コンドロイチン硫酸」すら記載されていないため、特定の平均分子量範囲にあるコンドロイチン硫酸を特定の濃度範囲で使用することにより、清涼化成分を高濃度化することによる不快な刺激を解決することを容易に想到し得たとは認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

イ 請求人は、審判請求書の第60頁第13行目?第61頁第1行目において、
「そして、実際に使用されるl-メントール等の量については、実施例で試験された清涼化剤の総量(最大でも0.006g/100ml)は、本件特許発明の下限(0.01g/100ml)より少ないが、甲第13号証の【0017】には、最大0.5g/100mlまで含め得ることが記載されており、甲第14号証の【0016】には清涼化成分を高濃度に含有しても、粘稠化剤により特定の粘度範囲に調整することによって不快な眼刺激性が軽減または緩和され、清涼感が持続し、疲れ目を解消できる」と記載されている。甲第14号証自体には粘稠化剤の例としてコンドロイチン硫酸は記載されていないものの、コンドロイチン硫酸は甲第13号証の【0012】や実施例で示されているように、増粘効果があることが知られ粘稠化剤と知られていたことから、甲第13-14号証のこれらの記載に照らし、甲第13号証に記載のソフトコンタクトレンズ用の点眼剤において清涼化剤を適宜増量することができることは当業者に容易に想到し得た事項である。
また、甲第1号証に関する議論においても述べたように、「平均分子量」の定義に関する議論は措くとしても、その分子量については、従来の眼科用のコンドロイチン硫酸ナトリウムを使用するにすぎず、臨界的意義も示されていないから、この点を特定することに困難性も顕著な効果も見出すことができないため、進歩性を認めることはできない。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第39頁第19?33行目において、
「照会事項(ホ)でも述べたが、審判請求書でも主張したように、優先日当時眼科領域で使用されていたコンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量はまさに1?4万の間のものでしかないため、本件特許発明のこの数値は眼科領域で使用されるコンドロイチン硫酸ナトリウムを特定したにすぎないのである。本件特許の出願時の技術水準を考慮すると、コンドロイチン硫酸ナトリウムとして通常用いられる分子量が0.5万?4万であることが記載されており、それにより、ソフトコンタクトレンズを装用した状態により適した清涼感の持続性の高い点眼剤も提供されているのであるから、これが「当業者が全く想到できないことである」などと結論付けることはありえないといえる。
加えて、(ホ)に関して述べたように、優先日当時眼科領域で市販されていたコンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量はまさに1?4万の間のものでしかないため、本件特許発明のこの数値は眼科領域で使用されるコンドロイチン硫酸ナトリウムを特定したにすぎない。また、審判請求書57?61頁でも主張したように、「分子量が0.5万?4万」とすることに臨界的意義があることは実証されておらず、また他にも何ら主張されていないため、この特定の数値範囲は単なる設計事項としか評価することができず、進歩性を見出すことはできない。」
と主張している。

しかしながら、被請求人が提出した乙2には、以下の記載がある。
乙2-1)「【0026】本発明の薬剤の有効成分である硫酸化多糖の分子量は、特に限定されないが、平均分子量5千?15万の硫酸化多糖を用いることが好ましく、平均分子量5千?12万の硫酸化多糖を用いることがより好ましく、平均分子量1万?12万の硫酸化多糖を用いることが特に好ましい。また、平均分子量は、重量平均分子量であることが好ましい。」
乙2-2)「【0041】<製造例>
製造例1:マイカの軟骨由来のコンドロイチン硫酸Eの製造
マイカより採取した軟骨240gを細断し、20分間煮沸した後、水240mlとアクチナーゼ(科研製薬株式会社製)2.4gで、pH7.5、55℃の条件下で一晩抽出した。この抽出液に炭酸ナトリウム1.2gを添加して、pH10.5、50℃の条件下で1時間攪拌した後、ろ過し、ろ液を200mlまでに濃縮した。この濃縮溶液を0.5N NaOH水溶液及び0.2%NaHSO_(3) 水溶液により35℃で2時間アルカリ処理した後、エタノール200ml、エタノール+3%酢酸ナトリウム(pH4.8)200ml、エタノール+3%酢酸ナトリウム(pH4.8)240mlで3回分画し、その溶液を、レジンHPA-11M(三菱化成株式会社(現三菱化学株式会社)製)に吸着させた。塩化ナトリウム濃度を3.7M にしたときの溶出液を濃縮、ろ過し、純水に対して透析したものを200mlまで濃縮した。この濃縮溶液に活性炭0.5gを加え、pH4.8、50℃条件下で1時間攪拌した。その後、ろ過、精密ろ過を行い、4倍量のエタノールを加えて得た沈殿物(以下、「コンドロイチン硫酸E(マイカ軟骨由来)[1]」とする)を乾燥した。乾燥重量は2gであり、光散乱法で分子量を求めたコンドロイチン硫酸A及びコンドロイチン硫酸Cの標準標品をスタンダードとしたゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;以下、「GPC」とする)において、平均分子量は9万4千であった。」(当審注:[1]は、丸数字1)
乙2-3)「【0066】<製剤例>
製剤例1:眼用溶液
製造例1で得たコンドロイチン硫酸E[1] 1mg
塩化ナトリウム 900mg
チオメルサール 1mg
上記に精製水を加えて全100mlとし、pH5.5?7.5に調整したのち無菌濾過し、無菌容器に充填した。」(当審注:[1]は、丸数字1)
上記摘示乙2-1)?乙2-3)より、乙2には、眼用溶液の成分として、重量平均分子量が9万4千のコンドロイチン硫酸が用いられており、明らかに重量平均分子量4万より大きいものが用いられている。このため、訂正発明に用いられるコンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量2万?4万は、従来の眼科用のコンドロイチン硫酸ナトリウムを使用するにすぎない、とする請求人の主張は採用し得ない。また、訂正発明が、少なくとも分子量2万?4万の範囲内において、その効果を奏することは、上記2に示したとおりであり、当該効果は甲13、甲14に記載された効果とは明らかに異なることも、上記(5)アに示したとおりである。
したがって、甲13、甲14の記載から、訂正発明が奏する効果を当業者が予測し得たとはいえず、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 請求人は、口頭審理陳述要領書の第39頁第7?16行目において、
「なお、「べたつき」とは、物質が吸着しやすい性質をいい表したものであるから、「べたつき」を抑制するとは、物質が吸着することを抑制することにほかならない。本件特許発明は、メントール等の清涼化剤が、ソフトコンタクトレンズに吸着してしまうため、その清涼化効果を発揮しにくい(本件特許明細書【0006】)という問題があったものを、吸着を抑制することでメントール等の量を増量せずに清涼化効果を発揮させること(本件特許明細書【0011】)も特徴である。
そうすると、「べたつきを抑制する」性質を利用して、メントール等の吸着を抑制し、清涼化剤であるメントール等の効果を増強することは、まさに「清涼感を付与する」ことに他ならないのであって、(チ)で指摘する「D-2を充足する」が誤りであるとの被請求人主張は失当である。」
と主張している。

しかしながら、上記(1)アに示した摘示13-2)のとおり、甲13の段落【0002】には、「その中で、高分子化合物を配合して組成物の粘度を上げ、…高分子化合物特有のべたつきを生じるため、使用感は満足できるものではなかった。」と記載され、かつ、実施例においてべたつきはパネリストによる官能試験により評価されていることから、甲13に記載の「べたつき」は、眼科組成物と眼との間のべたつきであり、コンタクトレンズ表面のべたつきを意味するものではないと認められる。また、「べたつき」は、「高分子化合物特有」のものであるとも明記されており、メントールの吸着と関連づける記載は一切ない。よって、「「べたつきを抑制する」性質を利用して、メントール等の吸着を抑制し、清涼化剤であるメントール等の効果を増強することは、まさに「清涼感を付与する」ことに他ならない」との請求人の主張は、その根拠がなく、採用することはできない。

エ 請求人は、口頭審理陳述要領書の第39頁下から3行目?第40頁第2行目において、
「加えて、甲第13および14号証等の記載に照らし、粘度を特定のものとすることで、刺激なしに清涼感を付与する効果を提供することができることが示唆されているから、粘度を指標として、適宜コンドロイチン硫酸ナトリウムを採用することに何ら困難性はなく、予想外の顕著な効果も奏されていないから、進歩性を推認することはできない。」
と主張している。

しかしながら、仮に、粘度を指標としてコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量を調整したとしても、それが2万?4万の限られた範囲となる根拠はどこにもない。
そして、甲13と甲14の記載を併せ考慮しても、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万の限られた範囲とすることが容易であったといえないことは、上記のとおりである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上のとおり、訂正発明1?6は、甲13に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえず、請求人が主張する無効理由(7-2)は理由がない。

8 無効理由(7-3)について
(1)刊行物公知について
ア 甲3について
本件特許優先日前である2004年5月15日に頒布された甲3には、以下の記載がある。
甲3-1)「新スマイルコンタクトクール… ●ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズを装用しているときの不快感に角膜保護成分配合、1.瞳をいたわる角膜保護成分を配合しました。2.レンズにうるおいを与え、2つの栄養成分が装用中の疲れ目に効きます。…3.ひんやり冷たいさし心地です。…100mL中 ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906 0.25g、L-アスパラギン酸カリウム0.1g、アミノエチルスルホン酸0.1g、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g 添(当審注:添は□囲いの添。)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸Na、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビン酸K、l-メントール、dl-カンフル、pH調整剤 効(当審注:効は□囲いの効)ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズを装着している時の不快感、涙液の補助(目のかわき)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)」(第203頁「新スマイルコンタクトクール」欄参照)

イ 甲3に記載された発明
上記(1)アに示した摘示甲3-1)より、甲3には、次の発明が記載されている。

「ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25g/100ml、L-アスパラギン酸カリウム0.1g/100ml、アミノエチルスルホン酸0.1g/100ml、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100ml、さらに添加剤として、ホウ酸、トロメタモール、エデト酸Na、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビン酸K、l-メントール、dl-カンフル、pH調整剤を含む、ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズ装用時に点眼可能なひんやり冷たいさし心地である新スマイルコンタクトクール」(以下「甲3発明」という。)

ウ 甲5について
本件特許優先日前である「2003年8月26日」との日付が記載された甲5には、以下の記載がある。
甲5-1)「角膜保護成分と清涼感をプラスした高機能のコンタクト用目薬
『新スマイルコンタクトクール』を新発売」(タイトル参照)
甲5-2)「ライオン株式会社(社長・高橋 達直)は、角膜保護成分と清涼感をプラスした高機能コンタクトレンズ用目薬『新スマイルコンタクトクール』を2003年9月5日(金)から、全国の薬局薬店で新発売いたします。」(本文第1?3行目参照)
甲5-3)「2.発売日・地域 2003年9月5日(金) 全国」(「2.発売日・地域」欄参照)
甲5-4)「3.商品特長
(1)瞳をいたわる角膜保護成分「コンドロイチン硫酸ナトリウム」を新配合
涙を角膜に保持する「コンドロイチン硫酸ナトリウム」が、コンタクトレンズの装用によって起こりやすい瞳のダメージを抑え、疲れ目を改善します。
(2)清涼感がアップ。さらに冷たいさし心地で瞳をリフレシュさせる
(3)コンタクトレンズの潤い効果に優れた水溶性高分子配合

(4)2種類の栄養成分「L-アスパラギン酸カリウム」「アミノエチルスルホン酸」配合

(5)すべてのコンタクトレンズ(ソフトレンズ、使い捨てレンズ、O2透過性レンズ、ハードレンズ)装用時に点眼できる」(「3.商品特長」欄参照)
甲5-5)「4.有効成分 <100ml中>
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906 0.25g
L-アスパラギン酸カリウム(栄養成分) 0.1g
アミノエチルスルホン酸(栄養成分) 0.1g
コンドロイチン硫酸ナトリウム(角膜保護成分) 0.05g」(「4.有効成分」欄参照)
甲5-5)「5.効能・効果
ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、涙液の補助(目のかわき)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)」(「5.効能・効果」欄参照)

エ 甲5の公知日について
上記ウにも示したとおり、甲5には「2003年8月26日」との日付が記載されており、摘示甲5-2)の記載があることから、甲5は、少なくとも2003年9月5日(金)よりも以前、つまり、本件特許優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであると認められる。

オ 甲5に記載された発明
上記(1)ウに示した摘示甲5-1)、甲5-2)、甲5-4)、甲5-5)より、甲5には、次の発明が記載されている。

「ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25g/100ml、L-アスパラギン酸カリウム0.1g/100ml、アミノエチルスルホン酸0.1g/100ml、角膜保護成分であるコンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100mlを含む、すべてのコンタクトレンズ装用時に点眼可能な清涼点眼剤である新スマイルコンタクトクール」(以下「甲5発明」という。)

カ 甲6について
頒布日が記載されていない甲6には、以下の記載がある。
甲6-1)「ソフト・使い捨て・O_(2)・ハードコンタクトレンズを装用しているときの不快感に
角膜保護成分配合
…新スマイルコンタクトクール…」(タイトル参照)
甲6-2)「「新スマイルコンタクトクール」は、コンタクト装用で負担をかけている瞳の表面をいたわる作用に優れた「角膜保護成分」を配合。コンタクトが角膜にあたって起きるダメージを抑えるとともに、「うるおい効果」と栄養補給による「疲れ目改善効果」に優れた冷たいさし心地の高機能目薬です。」(本文第3?7行目参照。)
甲6-3)「1.瞳をいたわる角膜保護成分を配合しました。
角膜保護成分「コンドロイチン硫酸ナトリウム」が、コンタクト装用によって起こりやすい瞳のダメージを抑え、疲れ目を改善します。」(「●新スマイルコンタクトクールの特徴」欄参照)
甲6-4)「ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズを装着している時の不快感、涙液の補助(目のかわき)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)」(「●効能」欄参照)
甲6-5)「有効成分 含量
ヒプロメロース 0.25g
L-アスパラギン酸カリウム 0.1g
タウリン 0.1g
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.05g

添加物として、ホウ酸、トロメタモール、エデト酸Na、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビン酸K、l-メントール、dl-カンフル、pH調整剤を含む。」(「●成分(100mL中)」欄参照)

キ 甲6の公知日について
甲6には頒布日が記載されておらず、平成27年9月8日に行われた口頭審理において、合議体から請求人に対して、その頒布日を明らかにできるか確認したが、請求人は甲6の頒布日について明らかにできなかった。このため、甲6の頒布日は不明である。
よって、甲6に記載の発明は、本件特許優先日前に頒布された刊行物に記載の発明とは認められない。

(2)公然実施された発明について
上記(1)ウに示した摘示甲5-2)、甲5-3)より、「新スマイルコンタクトクール」は、本件特許優先日前に公然実施されていたものと認められる。その上で、甲6は、新スマイルコンタクトクール添付文書であることから、その文書としての性格を勘案すると、上記(1)アに示した摘示甲3-1)、上記(1)ウに示した摘示甲5-1)、甲5-2)、甲5-4)、甲5-5)および、上記(1)カに示した摘示甲6-1)、6-5)より、本件特許優先日前に、次の発明が公然実施されていたものと認められる。

「ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25g/100ml、L-アスパラギン酸カリウム0.1g/100ml、アミノエチルスルホン酸0.1g/100ml、角膜保護成分であるコンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100ml、さらに添加物として、ホウ酸、トロメタモール、エデト酸Na、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビン酸K、l-メントール、dl-カンフル、pH調整剤を含む、すべてのコンタクトレンズ装用時に点眼可能な清涼点眼剤である新スマイルコンタクトクール」(以下「公然実施発明4」という。)

(3)訂正発明1について
ア 甲3発明に基づく進歩性について
(ア)訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「l-メントール、dl-カンフル」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
甲3発明の「コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100ml」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲3発明の「ひんやり冷たいさし心地である新スマイルコンタクトクール」は、訂正発明1の「清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当し、甲3発明は、ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズ装用時に点眼可能であることから、甲3発明の「ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズ装用時に点眼可能なひんやり冷たいさし心地である新スマイルコンタクトクール」は、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当する。
甲3発明は、添加剤として局所麻酔剤を含んでいないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含むものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含むものを除く)。」

【相違点19】
訂正発明1は、a成分を「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含有するのに対し、甲3発明は、含有量を特定していない点。
【相違点20】
訂正発明1は、0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種を含むのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
【相違点21】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲3発明は、平均分子量を特定していない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点19?21をまとめて検討する。
a 甲3には、l-メントール、dl-カンフルの総量が記載されておらず、かつ、目薬であれば訂正発明1の成分aの含有量の範囲内で含有するとの技術常識も存在しない(例えば、甲13の実施例13では、これらの成分の含有量は0.006w/v%であり、訂正発明1の範囲外である。)。
また、甲3には、訂正発明1の成分bについて何ら記載はない。甲3発明に含まれるグリセリンとプロピレングリコールは、等張化剤として用いられていると認められるものの(甲13段落【0021】参照)、甲3発明のグリセリンやプロピレングリコールを、他に等張化剤として用いられるものの中でも、特に、無機塩成分である塩化カリウムや塩化ナトリウム等に置換し、その量を0.01?10w/v%の範囲とする強い動機付けがあるともいえない。あるいは、目薬において使用される多種多様なpH調製剤の中から、甲3発明におけるpH調製剤として、炭酸水素ナトリウムやリン酸水素二ナトリウム等の訂正発明1の成分bに含まれるものを選択し、その量を0.01?10w/v%の範囲とする強い動機付けがあるともいえない。
さらに、甲3には、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量について何ら記載がなく、様々な平均分子量の中から特に2万?4万のものを特に選択する動機付けは見出せない。
そうすると、甲3発明において、l-メントール、dl-カンフルの総量を0.01w/v%以上0.1w/v%未満とし、甲3発明のグリセリンやプロピレングリコールを塩化カリウムや塩化ナトリウム等の無機塩に置換してその含有量を0.01?10w/v%とし、さらに、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万という限られた範囲とした組成物とすることは、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるとするには根拠に乏しい。

b 甲1、2、11?16、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、相違点19?21の点を同時に満たす組成とすることが、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であると断定することは困難である。

c そして、訂正発明1は、相違点19?21に係る発明特定事項を備える組成とすることにより、ハードコンタクトレンズよりも清涼感の感度が低下するソフトコンタクトレンズを装着している場合においても、「眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高い」(段落【0056】)という効果を奏するものであり、このような効果を奏することを、甲3の記載から当業者が予測することができたとはいえない。

イ 甲5発明に基づく進歩性について
(ア)訂正発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100ml」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
甲5発明の「すべてのコンタクトレンズ装用時に点眼可能な清涼点眼剤である新スマイルコンタクトクール」は、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するために用いることができるものであるから、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当する。
甲5発明は、添加剤として局所麻酔剤を含んでいないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含むものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含むものを除く)。」

【相違点19’】
訂正発明1は、メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満含有するのに対し、甲5発明は、清涼感を付与するための成分として何がどれだけ含まれているのか特定がない点。
【相違点20’】
訂正発明1は、0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種を含むのに対し、甲5発明は、そのような特定がない点。
【相違点21’】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、甲5発明は、平均分子量を特定していない点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点19’?21’についてまとめて検討する。
a 甲5には、清涼感を付与するための成分が記載されておらず、かつ、目薬であれば訂正発明1の成分aの三種の成分を0.01w/v%以上0.1w/v%未満で含有するとの技術常識も存在しない(例えば、甲13の実施例13では、これらの成分の含有量は0.006w/v%であり、訂正発明1の範囲外である。)。
また、甲5には、訂正発明1の成分bについて何ら記載はなく、敢えて成分bの無機塩を添加する動機付けがあるとはいえない。
さらに、甲5には、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量について何ら記載がなく、様々な平均分子量の中から特に2万?4万のものを選択する動機付けは見出せない。
そうすると、甲5発明において、清涼感を付与するための成分として、成分aの三種の成分を選択してその総量を0.01w/v%以上0.1w/v%未満とし、さらに、成分bの無機塩を0.01?10w/v%の範囲で添加し、それに加えて、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万という限られた範囲とした組成物とすることは、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるとするには根拠に乏しい。

b 甲1、2、11?16、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、相違点19’?21’の点を同時に満たす組成とすることが、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるとすることは困難である。

c そして、訂正発明1は、相違点19’?21’に係る特定の組成とすることにより、ハードコンタクトレンズよりも清涼感の感度が低下するソフトコンタクトレンズを装着している場合においても、「眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高い」(段落【0056】)という効果を奏するものであり、このような効果を奏することを、甲5の記載から当業者が予測することができたとはいえない。

公然実施発明4に基づく進歩性について
(ア)訂正発明1と公然実施発明4とを対比する。
公然実施発明4の「l-メントール、dl-カンフル」は、訂正発明1の「メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物」に相当する。
公然実施発明4の「コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05g/100ml」は、訂正発明1の「コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する」に相当する。
公然実施発明4の「すべてのコンタクトレンズ装用時に点眼可能な清涼点眼剤である新スマイルコンタクトクール」は、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するために用いることができるものであるから、訂正発明1の「ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物」に相当する。
公然実施発明4は、添加剤として局所麻酔剤を含んでいないことから、訂正発明1の「ただし、局所麻酔剤を含むものを除く」ものに相当する。

以上のことから、訂正発明1と公然実施発明4との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含むものを除く)。」

【相違点19”】
訂正発明1は、成分aを「総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満」含むのに対し、公然実施発明4は、含有量を特定していない点。
【相違点20”】
訂正発明1は、0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種を含むのに対し、公然実施発明4は、そのような特定がない点。
【相違点21”】
訂正発明1は、コンドロイチン硫酸或いはその塩について「平均分子量が2万?4万」と特定しているのに対し、公然実施発明4は、平均分子量を特定していない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点19’’?21’’をまとめて検討する。
a 公然実施発明4には、l-メントール、dl-カンフルの総量が開示されておらず、かつ、目薬であれば訂正発明1の成分aの含有量の範囲内で含有するとの技術常識も存在しない(例えば、甲13の実施例13では、これらの成分の含有量は0.006w/v%であり、訂正発明1の範囲外である。)。
また、公然実施発明4には、訂正発明1の成分bについて何ら開示がない。公然実施発明4に含まれるグリセリンとプロピレングリコールは、等張化剤として用いられていると認められるものの(甲13段落【0021】参照)、公然実施発明4のグリセリンやプロピレングリコールを、他に等張化剤として用いられるものの中でも、特に、無機塩成分である塩化カリウムや塩化ナトリウム等に置換し、その量を0.01?10w/v%の範囲とする強い動機付けがあるともいえない。あるいは、目薬において使用される多種多様なpH調製剤の中から、公然実施発明4におけるpH調製剤として、炭酸水素ナトリウムやリン酸水素二ナトリウム等の訂正発明1の成分bに含まれるものを選択し、その量を0.01?10w/v%の範囲とする強い動機付けがあるともいえない。
さらに、公然実施発明4には、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量について何ら開示がなく、様々な平均分子量の中から特に2万?4万のものを特に選択する動機付けは見出せない。
そうすると、公然実施発明4において、l-メントール、dl-カンフルの総量を0.01w/v%以上0.1w/v%未満とし、公然実施発明4のグリセリンやプロピレングリコールを塩化カリウムや塩化ナトリウム等の無機塩に置換してその含有量を0.01?10w/v%とし、さらに、コンドロイチン硫酸ナトリウムの分子量を2万?4万という限られた範囲とした組成物とすることは、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるとするには根拠に乏しい。

b 甲1、2、11?16、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、相違点19’’?21’’の点を同時に満たす組成とすることが、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であると断定することは困難である。

c そして、訂正発明1は、相違点19’’?21’’に係る発明特定事項を備える組成とすることにより、ハードコンタクトレンズよりも清涼感の感度が低下するソフトコンタクトレンズを装着している場合においても、「眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高い」という効果を奏するものであり(段落【0056】)、このような効果を奏することを、公然実施発明4から当業者が予測することができたとはいえない。

エ したがって、訂正発明1は、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4のいずれかに基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4)訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(3)に示したとおり、訂正発明1は、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4のいずれかに基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえないから、訂正発明2?5も、同様の理由により、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4であるのいずれかに基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5)訂正発明6について
ア 訂正発明6と甲3発明、甲5発明又は公然実施発明4とを対比する。
これらの各発明の成分組成についての対比は、上記(3)に示した訂正発明1と甲3発明、甲5発明又は公然実施発明4との対比において示したとおりである。
甲3発明の「ひんやり冷たいさし心地である新スマイルコンタクトクール」は、訂正発明6の「眼科用清涼組成物」に相当し、甲3発明は、ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズ装用時に点眼可能であり、ソフトコンタクト常用者が使用できると解されるので、甲3発明の「ソフト・O_(2)・ハードコンタクトレンズ装用時に点眼可能なひんやり冷たいさし心地である新スマイルコンタクトクール」は、訂正発明6の「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」に相当する。
また、甲5発明又は公然実施発明4の「すべてのコンタクトレンズ装用時に点眼可能な清涼点眼剤である新スマイルコンタクトクール」は、訂正発明6の「ソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物」に相当する。

以上のことから、訂正発明6と甲3発明、甲5発明又は公然実施発明4とは、次の点で一致し、上記(3)ア?ウに示した相違点19?19’’、20?20’’、21?21’’において相違する。
【一致点】
「a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物、
c)コンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有するソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含むものを除く)。」

イ 判断
上記(3)に示したとおり、甲3発明、甲5発明又は公然実施発明4において、相違点19?19’’、20?20’’、21?21’’に係る訂正発明6の発明特定事項を同時に満たす組成とすることは、甲1、2、11?16、22、23、25等の他の甲号証の記載をみても、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるとすることは困難である。
そして、訂正発明6は、相違点19?19’’、20?20’’、21?21’’に係る特定の組成とすることにより、ハードコンタクトレンズよりも清涼感の感度が低下するソフトコンタクトレンズを装着している場合においても、ソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がないという効果を奏するものであり(段落【0056】)、このような効果を奏することを当業者が予測することができたとはいえない。
したがって、訂正発明6は、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4のいずれかに基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(6)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の第18頁の「(新スマイルコンタクトクール)」欄において、
「本件特許発明1と甲第3号証のライオン製品とは、塩化ナトリウム等の有無で異なる。しかしながら、これは、等張化剤として加えられているものであり、等張化剤としてグリセリン(プロピレングリコールも等張化剤)は慣用されたものであるから、実質的な差異はない(甲第13号証【0021】、甲第15号証)。したがって、新規性がない。また、塩化ナトリウム等の有無が相違点であったとしてもいずれも、等張化剤として加えられているものであり、等張化剤として塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコールが並列して記載されているところ、等張化剤の目的でこれを交換することは容易であるから、仮に新規性があったとしても、進歩性はない。」
と主張し、審判請求書の第67頁第4?16行目において、
「ここで、成分としては、塩化ナトリウム等が含まれていないため、文言上はこの成分が相違する。塩化ナトリウム等は等張化剤として使用されるものであり(甲第15号証)、グリセリンもまた、塩化ナトリウムと同様に等張化剤として使用される代表的な添加物である(甲第15号証、B-2)。ここで、A、B及びCの各成分の濃度限定については、いずれも通常使用される程度の濃度であり、(i)やサポート要件/実施可能要件でも詳述したように、実施例からかい離した広い範囲を請求するものであり、また、格別の臨界的意義を有するものではないから、設計事項であるといえる(甲第24号証 医薬品添加物ハンドブック、日本薬学会訳編(1989年、丸善株式会社)によれば、エデト酸及びエデト酸二ナトリウムが掲載され、医薬品(眼科用)での通常使用濃度は0.005-1%w/vとされている。)。したがって、A-2、B-1については当業者に容易に想到し得た範囲の事項であるといえる。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第47頁第17行目?第48頁第3行目において、
「(5-4)の点は、(1)に上述したように、含まれているグリセリンもまた、塩化ナトリウムと同様に等張化剤として使用される代表的な添加物(甲第15号証、甲第42号証)であり、これを変更することは通常の創作の範囲内(例えば、甲第13号証【0021】)である。
なお、この点被請求人は、ソフトコンタクトレンズを装着している時の清涼感アップの観点から、当業者が甲5発明のグリセリンやプロピレングリコールはもちろん、その等張化作用に着目する事情は全くないし、ましてやコンタクトレンズを装着している時の清涼感アップのために、等張化作用に着目してグリセリンやプロピレングリコールを塩化ナトリウム等に代える動機はない、と主張する。しかしながら、甲3、5および6号証に記載されたスマイルコンタクトクールは、そもそも清涼感が付与(プラス)されているものであって、等張化剤として適宜設計を変更しても、同様に清涼感が付与されたままであることは当業者であれば容易に理解できるし、被請求人からは、グリセリンやプロピレングリコールを塩化ナトリウムに変更したときに清涼感が予想外に顕著に上昇したとの主張も立証もなされていないから、予想外の効果を主張することはできない。
また、本件特許発明は眼科薬であるから「等張化作用に着目する事情が全くない」はずがない。眼に使う組成物であれば、浸透圧を適切に調節することが当然の技術常識で、そのために当然に当業者は等張化作用に着目するものである。例えば、甲第37号証(南山堂「製剤学」(1974)164頁の等張化剤の項目)をみても塩化ナトリウム(食塩水)のような等張化剤は、緩衝能力を考慮したとしても、一定程度の範囲にすべきであるとされているし、洗眼液であれば、出来るだけ等張化しておくことが必要であるとされており、眼科薬である限り、「等張化作用に着目」せざるをえない。したがって、等張化作用を奏する塩化ナトリウムを使用する動機があるのであり、被請求人の主張は当該分野の技術を正しく理解しないで行うものであって失当である。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第49頁第2?10行目において、
「また、合議体からは、(ヌ)グリセリンやプロピレングリコールを塩化ナトリウムに代える動機はないとの点について意見するよう求められている。
これについては、甲第43号証(眼科New Insight「点眼薬-常識と非常識-」(1994)11頁【表2】)において、グリセリンと塩化ナトリウムとが等張化剤として記載され必要な濃度とともに記載されており、同様の機能を有する添加剤として、グリセリン等に代えて塩化ナトリウムを採用することは通常の眼科薬の設計事項として、眼科領域の当業者には十分な動機づけがあるといえる。同様の趣旨の記載は甲第15号証にも存在するため眼科領域の当業者には、グリセリンやプロピレングリコールを塩化ナトリウムに代える動機付けは十分にあったといえる。」
と主張している。

しかしながら、グリセリンやプロピレングリコールと塩化ナトリウムとは、明らかに異なる物質であり、甲3発明、甲5発明又は公然実施発明4が塩化ナトリウムを含まない点は、実質的な相違点である。また、甲3発明又は公然実施発明4において等張化剤と認められるグリセリンとプロピレングリコールを、他に等張化剤として用いられるものの中でも、特に、無機塩成分である塩化カリウムや塩化ナトリウム等に置換する十分な動機付けがあるともいえないし、等張化剤について記載のない甲5発明において、敢えて、等張化剤の中でも塩化ナトリウム等の特定の無機塩を添加する十分な動機があるともいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

イ 請求人は、審判請求書の第67頁下から4行目?第68頁第1行目において、
「したがって、甲第3、5、6号証及び甲第1、2、11?16、22、23および25号証並びに他の周知文献の記載から、・・・その効果も上記(i)で述べたように、その全範囲にわたって顕著な効果が示されているものでもないから、予想外の顕著な効果を考慮することができないため、進歩性がない。」
と主張している。

しかしながら、請求人の「その全範囲にわたって顕著な効果が示されているものでもない」との主張が採用できないことは、上記2に示したとおりである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 請求人は、口頭審理陳述要領書の第48頁下から5行目?最下行において、
「加えて、甲第13および14号証等の記載に照らし、粘度を特定のものとすることで、刺激なしに清涼感を付与する効果を提供することができることが示唆されているから、粘度を指標として、適宜コンドロイチン硫酸ナトリウムを採用することに何ら困難性はなく、予想外の顕著な効果も奏されていないから、進歩性を推認することはできない。」
と主張している。

しかしながら、上記7(2)エに示したとおり、甲13及び甲14の記載を考慮しても、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4における角膜保護成分としてのコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量を粘度を指標として調節するといえず、仮に調節したとしても、それが2万?4万という限られた範囲となるということもできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(7)小括
以上のとおり、訂正発明1?6は、甲3に記載された発明、甲5に記載された発明又は公然実施発明4のいずれかに基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえず、請求人が主張する無効理由(7-3)は理由がない。

9 無効理由(7-4)について
(1)本件特許優先日前に公然実施された発明について
上記5(1)に示したとおり、本件特許優先日前に、「公然実施発明1」、「公然実施発明2」、「公然実施発明3」が、公然実施されていたものと認められる。

(2)訂正発明1について
ア 訂正発明1と公然実施発明1?3とを対比すると、上記5(2)アに示した点で一致し、相違点10?14において、両者は相違する。

イ 判断
まず、相違点14について検討する。
公然実施発明1?3は、いずれもソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない眼科用薬である。
ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならないことが特定されている医薬分野の製品を、ソフトコンタクトレンズ装用時に使用することは、通常あり得ず、その転用には阻害要因があるといわざるを得ない。
また、甲1、2、11?16、22、23、25等のその他の甲号証をみても、当該阻害要因を覆す根拠は見出せない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、公然実施発明1?3に基づいて、訂正発明1に至ることが当業者において容易であったということはできない。
そして、公然実施発明1?3を、ソフトコンタクトレンズ装用時に使用した場合に、何ら不都合なく目薬として使用できること、加えて、特有の問題が生じるソフトコンタクトレンズ装用中においても、十分な清涼感を付与でき、かつ、不快な刺激がないとの効果を奏することを、当業者が予測できたとはいえない。
したがって、訂正発明1は、公然実施発明1?3のいずれに基づいても、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(3)訂正発明2?5について
訂正発明2?5は、訂正発明1をさらに限定するものである。
上記(2)に示したとおり、訂正発明1は、公然実施発明1?3のいずれに基づいても、当業者が容易に発明し得たものとはいえないから、訂正発明2?5も、同様の理由により、公然実施発明1?3のいずれに基づいても、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4)訂正発明6について
ア 訂正発明6と公然実施発明1?3とを対比すると、上記5(4)アに示した点で一致し、相違点10’?14’において、両者は相違する。

イ 判断
まず、相違点14’について検討する。
公然実施発明1?3は、いずれもソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない眼科用薬である。
ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならないことが特定されている医薬分野の製品を、ソフトコンタクトレンズ常用者が使用することは通常あり得ず、その転用には阻害要因があるといわざるを得ない。
また、甲1、2、11?16、22、23、25等のその他の甲号証をみても、当該阻害要因を覆す根拠は見出せない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、公然実施発明1?3に基づいて、訂正発明6に至ることが当業者において容易であったということはできない。
そして、公然実施発明1?3を、ソフトコンタクトレンズ常用者が使用した場合に、何ら不都合なく使用できること、加えて、特有の問題が生じるソフトコンタクトレンズ装用時及び当該レンズを外した直後のいずれにおいても十分な清涼感が得られ、刺激がないという訂正発明6の効果を奏することを、当業者が予測できたとはいえない。
したがって、訂正発明6は、公然実施発明1?3のいずれに基づいても、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の第18頁「(中新薬業製品について)」欄において、
「他方で、ソフトコンタクトレンズへの使用がない点については、その作用効果がないという意味ではなく、単に承認の問題であるから、実質的な相違点たりえない。」
と主張し、審判請求書の第74頁第7?11行目において、
「なお、添付文書ではハードコンタクトレンズ装着用に特定されているが、これは承認の問題であって、ソフトコンタクトレンズ装用中に使用できないというものではない(D-1も実質的に充足)。したがって、実質的に同一であり、あるいは、仮に言えないとしても容易に想到し得た範囲であるという点を変更させるものではない。」
と主張し、口頭審理陳述要領書の第43頁下から6行目?最下行において、
「この点について、眼科薬(装着液)の添付文書の記載は、承認の問題であるから、「ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感」と記載されていたとしても、「ソフトコンタクトレンズ」への転用を意図しないものではない。むしろ、経済的に許容できる限り、製薬メーカーは効能拡大を図ろうとするものであって、動機付けがないとは言えないものである。この点についての判断は、薬事上の規制の問題を、発明の動機づけと混同するものであって妥当ではないと思料する。」
と主張している。

しかしながら、公然実施発明1?3のいずれの添付文書にも、「ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用してはならない」と明記されているのであるから、「ソフトコンタクトレンズ装用中に使用できないというものではない」とする請求人の主張は採用し得ないし、公然実施発明1?3において、禁止された「ソフトコンタクトレンズ装用時」に使用することは阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上のとおり、訂正発明1?6は、本件特許優先日前に公然実施され刊行物公知となった公然実施発明1?3である「新アスパライトフレッシュ(中新薬業)」、「新アスパクール(中新薬業)」、「ピタール目薬(中新薬業)」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、請求人が主張する無効理由(7-4)は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1?7にはいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、訂正特許請求の範囲に記載された請求項1?6に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
眼科用清涼組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトコンタクトレンズ装用中に眼に適用することで、ソフトコンタクトレンズ装用時においても十分な清涼感を付与することができる眼科用清涼組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用清涼組成物においては、メントールに代表される清涼化剤が配合される。清涼化剤の配合は、快適な強さの清涼感を不快な刺激を伴うことなく付与できるよう処方設計することが重要であり、常時起こっている涙液交換、すなわち涙液による希釈と排出を被っても適度な強さの清涼感を付与できるだけの高濃度のメントールの投与が必要になる。しかしながら、過剰に高濃度のメントールは、点眼直後に清涼感を超えた強すぎる不快な刺激を伴うため、眼科用清涼組成物に配合できるメントール量にはおのずと限界がある。
【0003】
そこで、眼科用清涼組成物において、テルペノイド類と水溶性高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)と、局所麻酔剤(クロロブタノール等)を配合した点眼剤やコンタクトレンズ装着液が、良好な清涼感を付与でき、清涼感が持続するとともに刺激性が低いことが知られている(特許文献1)。また、メントールに対して一定の比率以上のカンフルとボルネオールを配合することで、眼刺激を抑制しつつ清涼感を持続させる方法が開示され、0.015w/v%を上限とするメントールの刺激が緩和できる(特許文献2)。
【0004】
このように、メントール等の清涼化剤を単に増量することなく、十分な清涼感を持続させるとともにメントールの刺激性を改善する方法が示されている。しかしながら、これらの方法や点眼剤は、専らソフトコンタクトレンズを装用していない使用者、すなわち裸眼或いはハードコンタクトレンズを常用する使用者に対して清涼感を付与することを主目的として開発されており、ソフトコンタクトレンズ装用における特有の課題については何ら考慮されてはいない。
【0005】
ところで、ソフトコンタクトレンズ装用においては以下のような特有の課題がある。
角膜は知覚神経に富む組織であり、角膜上皮における神経密度は皮膚の約300?600倍といわれている。(非特許文献1)。したがって、使用者が清涼感を感じるかどうかは、角膜表面にメントールがどの程度接触したかに影響される。ハードコンタクトレンズ直径は角膜径よりも小さく、ハードコンタクトレンズを装用しても角膜周縁部が露出しているが、ソフトコンタクトレンズ径は、角膜よりも大きくソフトコンタクトレンズを装用すると角膜表面はソフトコンタクトレンズに覆われてしまう。そのため、ソフトコンタクトレンズ装用者は、裸眼の場合に比して格段に清涼感を感じにくい。
また、ソフトコンタクトレンズを装用中は、レンズ後面(角膜側)とレンズに覆われていない部分(結膜表面)との涙液交換率が極めて低下する。ハードコンタクトレンズでは、ベストフィッティングでの涙液交換率が健常眼の涙液メニスカスにおける涙液交換率と同程度の高値25.6±11.1(%/分)を示すが、ソフトコンタクトレンズでは、ベストフィッティングでの涙液交換率ですら、16.5±1.1(%/分)と低値を示す(非特許文献2 レンズと涙液交換率の低下)。そのため、メントールがソフトコンタクトレンズと眼表面の間隙にある涙液層を経て角膜中央部に到達するための涙液交換も著しく遅く、清涼感の感度低下を増長してしまう。
【0006】
これまで、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼に適用した場合においても、十分な清涼感を付与することができる眼科用清涼組成物は知られていなかった。また、ソフトコンタクトレンズ装用中にレンズ後面の涙液交換を促進する方法も、ほとんど知られていない。このようにソフトコンタクトレンズ装用中に所要の清涼感を一定時間持続させつつ、刺激を緩和することは極めて困難であった。
さらに、メントールなどの清涼化剤や、クロロブタノール等の局所麻酔作用剤、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩などの防腐剤等、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン等の血管収縮剤等のソフトコンタクトレンズに悪影響(吸着や変形)を及ぼすことが懸念される成分を含有する場合には、製剤設計が制限される。
【0007】
【非特許文献1】角膜表面の知覚に関する文献 新しい眼科,4(1),p11-20,1987年
【非特許文献2】日本コンタクトレンズ学会誌45(1),p1-10,2003年
【特許文献1】特開2003-183157号公報
【特許文献2】特開平9-132526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、ソフトコンタクトレンズを装用中においても、十分な清涼感を付与できる清涼組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題解決のために鋭意検討の結果、a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01(w/v)%以上0.1(w/v)%未満、b)無機塩類、およびc)平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロース、平均分子量が5万?50万のメチルセルロース、平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドン、平均分子量が5万?50万のコンドロイチン硫酸又はその塩、平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種から選ばれる少なくとも1種を含有する眼科用清涼組成物が、ソフトコンタクトレンズ装用時の眼に適用しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明者は、かかる知見に基づいて開発されたものである。
すなわち、本発明は、下記(1)?(12)に掲げる眼科用清涼組成物である。
(1)a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)無機塩類、および
c)平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロース、平均分子量が5万?50万のメチルセルロース、平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドン、平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコール、又は平均分子量が0.5万?50万のコンドロイチン硫酸或いはその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物、
(2) 平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロースを、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(3) 平均分子量が5万?50万のメチルセルロースを、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(4) 平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドンを、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(5) 平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロースを、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(6) 平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコールを、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(7) 平均分子量が0.5万?50万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を、0.001?10w/v%で含有する(1)に記載の眼科用清涼組成物、
(8) さらに、非イオン性界面活性剤を0.001?5w/v%含有する(1)乃至(7)に記載の眼科用清涼組成物、
(9)さらに、エデト酸又はその塩を0.0001?1w/v%含有する(1)乃至(8)に記載の眼科用清涼組成物、
(10)さらに、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を、それらの総量として0.01?5w/v%含有する(1)乃至(9)に記載の眼科用清涼組成物、
(11)点眼剤又は洗眼剤である(1)乃至(10)に記載の眼科用清涼組成物、
(12)a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)無機塩類、および
c)平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロース、平均分子量が5万?50万のメチルセルロース、平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドン、平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコール、又は平均分子量が0.5万?50万のコンドロイチン硫酸或いはその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物。
なお、本明細書中、特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼科用清涼組成物によれば、清涼化剤のなかでも特にメントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を単独または組み合わせて、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満の限定された範囲内で含有したうえで、無機塩類を必須の構成成分として含有し、さらに、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物を提供することができる。
これまで、ソフトコンタクトレンズ装用中に適用する点眼剤としては、人工涙液型点眼剤が広く用いられている。従来型の人工涙液型点眼剤では、十分な清涼感を付与したくてもメントールなどの清涼化剤がソフトコンタクトレンズに吸着することが安全面での弊害となり、高濃度のメントールを含有することができなかった。また吸着の問題を解決してメントールを増量しても、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼では、角膜が露出していないうえに涙液交換率が低下しているために、メントール等による刺激を受けることがなく清涼感の付与が困難であった。
本発明の眼科用清涼組成物によれば、眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、かつ刺激が緩和されているため、ソフトコンタクトレンズ装用者に快い清涼感を付与するための眼科用清涼組成物を提供できる。さらに、本発明によれば、メントールを少量用いても十分な清涼感を付与することができ、刺激がなく安全性が高い眼科用清涼組成物を提供できる。
さらに、本発明の眼科用清涼組成物は、清涼化剤の刺激を伴うことなく清涼感を感じることができるので、例えばソフトコンタクトレンズ装用によって障害を有する眼となった、ソフトコンタクトレンズ常用者がソフトコンタクトレンズの装用中のみならずソフトコンタクトレンズを外した後の眼に清涼感を付与するためのソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物としても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の眼科用清涼組成物は、メントール、カンフル又はボルネオールから選択される1種又は2種以上の化合物をそれらの総量として0.01%以上0.1%未満で含有する。下限として好ましくは、0.012%以上、より好ましくは0.014%以上、特に好ましくは0.016%以上であり、上限として好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下、特に好ましくは0.04%以下である。0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、0.1%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強く、使用者によっては反って刺激を感じる場合があるため好ましくない。なお、これらの化合物は公知の化合物であり市販のものを利用でき、d体又はl体のいずれでも用いることができる。
【0013】
本発明の眼科用清涼組成物は、無機塩類を必須成分として含有する。かかる無機塩類としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられる。なかでも、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0014】
本発明において眼科用清涼組成物中のこれらの無機塩類は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は無機塩類の総量として、好ましくは0.01?10%、より好ましくは0.1?10%、特に好ましくは0.1?5%程度である。無機塩類が0.01%未満では、組成物を眼に適用した直後に十分な清涼感を感じにくく、10(w/v)%以上では、組成物を眼に適用した直後の清涼感が強くなりすぎる傾向があり使用者によっては刺激を感じる場合がある。
【0015】
本発明の眼科用清涼組成物では、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有することが必須の構成となる。すなわち、本発明では、平均分子量が20万?250万のヒドロキシエチルセルロース、平均分子量が5万?50万のメチルセルロース、平均分子量が1万?15万のポリビニルピロリドン、平均分子量が5万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量が1万?30万のポリビニルアルコール、又は平均分子量が0.5万?50万のコンドロイチン硫酸或いはその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0016】
本発明に用いるヒドロキシエチルセルロースは公知の高分子化合物であり、平均分子量が20万?250万のものが用いられ、より好ましくは50万?200万、特に好ましくは80万?150万のヒドロキシエチルセルロースを用いる。かかるヒドロキシエチルセルロースは市販のものを利用することができ、例えば住友精化株式会社から販売されているHEC-CF-G(平均分子量約40万)、HEC-CF-H(平均分子量約70万)、HEC-CF-V(平均分子量約100万)、HEC-CF-W(平均分子量約130万)、HEC-CF-X(平均分子量約150万)、HEC-CF-Y(平均分子量約180万)等が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のヒドロキシエチルセルロースの含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.005?5%、特に好ましくは0.01?3%程度である。
【0017】
本発明に用いるメチルセルロースは公知の高分子化合物であり、平均分子量が5万?50万のものが用いられる。さらに好ましくは平均分子量10万?50万であり、特に好ましくは20万?50万のメチルセルロースを用いる。かかるメチルセルロースは市販のものを利用することができ、例えば、メトローズSMシリーズとして信越化学工業株式会社から販売されている、SM-15(平均分子量約7万)、SM-25(平均分子量約9万)、SM-50(平均分子量約11万)、SM-100(平均子量約12万)、SM-400(平均分子量約17万)、SM-1500(平均分子量約29万)、SM-4000(平均分子量約36万)等が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のメチルセルロースの含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.005?5%、特に好ましくは0.01?3%程度である。
【0018】
本発明に用いるポリビニルピロリドンは公知の高分子化合物であり、平均分子量が1万?15万のものが用いられる。さらに好ましくは平均分子量2万?15万のポリビニルピロリドンを用いる。かかるポリビニルピロリドンは市販のものを利用することができ、例えば、コリドンシリーズとしてBASF株式会社から販売されている、コリドン25(平均分子量約3万)、コリドン30(平均子量約5万)、コリドン17PF(平均分子量約9万)、コリドン90(平均分子量約12万)等が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のポリビニルピロリドンの含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.01?5%、特に好ましくは0.1?3%程度である。
【0019】
本発明に用いるヒドロキシプロピルメチルセルロースは公知の高分子化合物であり、平均分子量が5万?50万のものが用いられる。さらに好ましくは平均分子量10万?50万であり、特に好ましくは20万?50万のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる。かかるヒドロキシプロピルメチルセルロースは市販のものを利用することができ、例えば、メトローズSHシリーズとして信越化学工業株式会社から販売されている、60SH-15(平均分子量約7万)、60SH-25(平均分子量約9万)、60SH-50(平均分子量約11万)、60SH-100(平均分子量約12万)、60SH-400(平均分子量約17万)、60SH-1500(平均分子量約29万)、60SH-4000(平均分子量約36万)等が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.005?5%、特に好ましくは0.01?3%程度である。
【0020】
本発明に用いるポリビニルアルコールは公知の高分子化合物であり、平均分子量が1万?30万のものを用いる。さらに好ましくは平均分子量2万?20万、特に好ましくは平均分子量2万?15万のポリビニルアルコールを用いる。かかるポリビニルアルコールは市販のものを利用することができ、例えば、ゴーセノールシリーズとして日本合成化学株式会社から販売されている、ゴーセノールEG05(平均分子量約3万)、ゴーセノールEG40(平均分子量約12万)等が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.01?5%、特に好ましくは0.1?3%程度である。
【0021】
本発明に用いるコンドロイチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり、平均分子量が0.5万?50万のものを用いる。より好ましくは0.5万?20万、さらに好ましくは平均分子量0.5万?10万、特に好ましくは0.5万?4万のコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又はその塩は市販のものを利用することができ、例えば、生化学工業株式会社から販売されている、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万、平均分子量約2万、平均分子量約4万等)が利用できる。
本発明において眼科用清涼組成物中のコンドロイチン硫酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.01?5%、特に好ましくは0.05?3%程度である。
【0022】
本発明の清涼感付与効果は、非イオン性界面活性剤を配合した場合に顕著になる。
【0023】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、通常当業者が眼科用清涼組成物に利用しうるものを用いることができ、例えばポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)-ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188など);ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20),モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80),POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5,POE硬化ヒマシ油10,POE硬化ヒマシ油20,POE硬化ヒマシ油40,POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類などが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0024】
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類から選ばれる非イオン性界面活性剤であり、特に好ましくは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。
【0025】
本発明の眼科用清涼組成物において非イオン性界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常0.001?5%、好ましくは0.001?1%、より好ましくは0.005?0.5%程度で用いられる。
【0026】
本発明の清涼感付与効果は、眼科用清涼組成物にエデト酸またはその塩を配合した場合に、更に顕著となる。また、エデト酸またはその塩と非イオン性界面活性剤を組み合わせて配合した場合に更に顕著になる。
【0027】
かかるエデト酸またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)などが例示できる。これらは、1種又は2種以上配合でき、薬理学的に又は生理学的に許容される塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)として使用してもよい。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)である。
【0028】
本発明の眼科用清涼組成物中におけるエデト酸またはその塩の含有量は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、好ましくは0.0001?1%、より好ましくは0.0005?0.5%、特に好ましくは0.001?0.3%程度である。
【0029】
本発明の清涼感付与効果は、眼科用清涼組成物に、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を配合した場合に、更に顕著となる。この場合に、上記したエデト酸またはその塩や非イオン性界面活性剤と組み合わせて配合した場合に更に顕著になる。
【0030】
本発明の眼科用清涼組成物中におけるこれらの成分は、総量として、0.01?5%配合するのが好ましく、特に好ましくは0.05?3%程度である。
【0031】
本発明の眼科用清涼組成物は、清涼感付与の観点から、適切な粘度を設計することが望ましい。20℃における粘度として、好ましくは2?100mPa・s、より好ましくは、2?80mPa・s、特に好ましくは2?50mPa・s程度に設計する。下限としては、2mPa・s以上に設計することが好ましく、上限としては100mPa・sを超えた粘度では、点眼直後の清涼感が十分に付与されない傾向がある。
粘度の測定は、円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい-平板形回転粘度計」の項に記載の方法)に従い行うことができる。一例として、E型粘度計の1種であるTVE-20L形粘度計コーンプレートタイプ(トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本))を用いて以下の測定条件の下で測定を行うことができる。
TVE-20L形粘度計コーンプレートタイプに付属の標準コーンロータ(α=1°34’、半径(R)=2.4cm)をフルスケール・トルク67.37×10^(-6)Nmのスプリングを介してモータで回転させる。測定時、粘度計は回転軸が水平面に対して垂直になるように設置する。被検試料1mlをコーンロータの所定のプレート位置に載置し、温度が20℃になるまで放置する。次いで、装置を被検試料の粘度に応じた回転数で回転させ、4分後に、表示された粘度を読み取る。高精度の測定結果を得るために、被検試料測定前に、JIS Z 8809により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として用い、測定値が標準液の粘度に一致するように調整する。測定時の使用ローター、回転数、測定試料量等は適宜選択できる。
【0032】
本発明の眼科用清涼組成物としては、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼やソフトコンタクトレンズ常用者に適用されるものであれば特に制限されることはないが、点眼剤(点眼薬)、洗眼剤(洗眼薬)が好適である。
本発明の眼科用清涼組成物を用いることができるソフトコンタクトレンズとしては、ソフトコンタクトレンズのカーブ形状やエッジの形状、材質等によらず利用することができ、非含水ソフトコンタクトレンズや、厚生省医薬安全局によるソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の審査におけるソフトコンタクトレンズの分類方法によってグループI?グループIVに分類されるいずれのソフトコンタクトレンズであっても、十分な清涼感を付与することができる。例えば、非含水ソフトコンタクトレンズ、グループI(メダリスト・登録商標、ボシュロム・ジャパン株式会社)、グループII(メニコンソフトS・登録商標、メニコン株式会社)、グループIII(ハイフローAce・登録商標、HOYAヘルスケア株式会社)、グループIV(2ウイークアキュビュー・登録商標、ジョンソンエンドジョンソン株式会社)等のソフトコンタクトレンズが挙げられる。
【0033】
本発明の眼科用清涼組成物は、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有するのに適している。眼科用清涼組成物に通常用いられる充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、糖類などが例示できる。具体的には、以下に挙げる成分が例示できる。
【0034】
充血除去成分:例えば、α-アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン-アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
【0035】
また、本発明の眼科用清涼組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または清涼化剤、緩衝剤、などの各種添加剤を挙げることができる。
【0036】
以下に本発明の眼科用清涼組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸またはその塩、マクロゴール、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、デキストラン、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン、トレハロースなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
界面活性剤:例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン-アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
香料又は清涼化剤:例えば、上記したメントール、カンフル、ボルネオール以外の、ゲラニオール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
【0037】
本発明の眼科用清涼組成物には、上記のように様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有することができるが、専らソフトコンタクトレンズ装用時に適用されるため、クロロブタノール(1,1,1-トリクロロ-2-メチル-2 プロパノール)、塩化ベンザルコニウム(アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)、メチルパラベン,エチルパラベン,プロピルパラベン,ブチルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン等、ソフトコンタクトレンズに吸着しやすい成分やコンタクトレンズの変形を起こしやすい成分、或いはコンタクト装用時の重篤な病症を隠匿してしまう恐れのある充血除去剤を含有する場合には、製剤設計を工夫する必要がある。また、実質的にこれらの成分を含まない製剤設計とすることも可能であり、場合によっては実質的にこれらの成分を含まない眼科用清涼組成物が望ましい。
【0038】
本発明の眼科用清涼組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整して用いる。浸透圧は、100?1200mOsm、好ましくは100?600mOsm、特に好ましくは150?400mOsm程度であり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.4?4.1、好ましくは0.3?2.1、特に好ましくは0.5?1.4程度である。
【0039】
本発明の眼科用清涼組成物は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内の浸透圧に調整して用いる。pHは、通常、pH5.0?10.0、好ましくは6.0?9.0、特に好ましくは6.5?8.5である。pHの調整は、緩衝剤、前記pH調整剤などを用いて行うことができる。
【0040】
本発明の眼科用清涼組成物は、公知の方法により製造できる。例えば、液剤であれば基剤と各成分とを混合し、調製できる。さらに、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器への充填工程等を加えることができる。
【0041】
また、本発明の眼科用清涼組成物は、清涼化剤の刺激を伴うことなく清涼感を感じることができるので、例えばソフトコンタクトレンズ装用によって障害を有する刺激に敏感な眼に対して、ソフトコンタクトレンズを常用している使用者がソフトコンタクトレンズの装用中のみならずソフトコンタクトレンズを外した後の眼に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物としても利用できる。
清涼化剤のなかでも特にメントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を単独または組み合わせて、その総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満の限定された範囲内で含有したうえで、無機塩類を必須の構成成分として含有し、さらに、特定の分子量を有する特定の高分子を組み合わせて含有することで、ソフトコンタクトレンズを常用することによって眼に障害を有して、刺激に敏感になった眼に適用した場合においても、適用直後から十分な清涼感が付与され、かつ、刺激が緩和されている使用感に優れた組成物を提供することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
実施例および比較例の調製
試験に用いた各実施例及び試験例の調製は、表1?6に示す処方に従った。具体的には、表1に記載の実施例1の調製方法を示す。ヒドロキシエチルセルロース(HEC-CF-G)を約100mLの精製水中にて攪拌溶解した(調製液A)。次に、ポリソルベート80、l-メントール、d-カンフル、d-ボルネオールを攪拌溶解した(調整液B)。エデト酸ナトリウムと塩化ナトリウムを50mLの精製水に溶解し、調整液Aおよび調製液Bを加え、さらに精製水を加えてpHを調整して(pH=7.4)、全体を200mlとした。さらに実施例1に従い、他の実施例及び比較例も調製した。
【0044】
清涼感付与試験
試験溶液を無菌的に濾過し、10mlずつ点眼容器に充填して、20名のソフトコンタクトレンズを常用している専用パネラーにおいて、ソフトコンタクトレンズを装用中又は裸眼時(ソフトコンタクトレンズを外した直後)に点眼した場合の、点眼直後及び点眼5分後、点眼10分後の清涼感の評価を行った。使用したソフトコンタクトレンズは、グループIV(2ウイークアキュビュー(登録商標)、ジョンソンエンドジョンソン株式会社)のソフトコンタクトレンズを用いた。
各パネラーには、清涼感について全く感じない場合を0点、十分に強い清涼感を感じる場合を6点として7段階評価してもらった。同様に眼刺激について全く感じない場合を6点、強い刺激を感じる場合を0点として7段階評価してもらった。パネラー全員の評価点を平均して、その平均値が0?2点未満を×、2点以上3点未満を△、3点以上4点未満を○、4点以上6点以下を◎として表に結果を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
試験の結果、本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
【0047】
【表2】

【0048】
試験の結果、本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
【0049】
【表3】

【0050】
試験の結果、本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
【0051】
【表4】

【0052】
試験の結果、ポリビニルピロリドン(平均分子量約3万)又は/及びポリビニルピロリドン(平均分子量約12万)を塩化ナトリウムと組み合わせて含有する本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
【0053】
【表5】

【0054】
試験の結果、ポリビニルアルコール(平均分子量約3万)又は/及びポリビニルアルコール(平均分子量約12万)を塩化ナトリウムと組み合わせて含有する本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
【0055】
【表6】

【0056】
試験の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万)又は/及びコンドイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約2万)を塩化ナトリウムと組み合わせて含有する本発明の実施例では眼に組成物を適用した直後から十分な清涼感が得られ、刺激がなく安全性が高いことが示された。また、ソフトコンタクトレンズを常用すると、涙液の減少や角膜表面に何らかの障害を惹起することが知られており、特にソフトコンタクトレンズを外した直後は、メントール等の清涼感に対して極めて過敏になっているが、この極めて過敏な眼に対しても刺激を伴うことなく十分な清涼感を付与することができることが確認された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時に清涼感を付与するための眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。
【請求項2】
さらに、非イオン性界面活性剤を0.001?5w/v%含有する請求項1に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項3】
さらに、エデト酸又はその塩を0.0001?1w/v%含有する請求項1又は2に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項4】
さらに、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルコース又はトレハロースから選択される少なくとも1種以上の成分を、それらの総量として0.01?5w/v%含有する請求項1乃至3に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項5】
点眼剤又は洗眼剤である請求項1乃至4に記載の眼科用清涼組成物。
【請求項6】
a)メントール、カンフル又はボルネオールから選択される化合物を、それらの総量として0.01w/v%以上0.1w/v%未満、
b)0.01?10w/v%の塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも1種、および
c)平均分子量が2万?4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩を0.001?10w/v%含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ常用者用の眼科用清涼組成物(ただし、局所麻酔剤を含有するものを除く)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-01-11 
結審通知日 2019-01-16 
審決日 2019-02-08 
出願番号 特願2005-167147(P2005-167147)
審決分類 P 1 113・ 536- YAA (A61K)
P 1 113・ 112- YAA (A61K)
P 1 113・ 121- YAA (A61K)
P 1 113・ 113- YAA (A61K)
P 1 113・ 537- YAA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 淺野 美奈
藤原 浩子
登録日 2013-11-08 
登録番号 特許第5403850号(P5403850)
発明の名称 眼科用清涼組成物  
代理人 草深 充彦  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 山本 健策  
代理人 中塚 岳  
代理人 吉住 和之  
代理人 坂西 俊明  
代理人 城戸 博兒  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 坂西 俊明  
代理人 中塚 岳  
代理人 城戸 博兒  
代理人 ▲駒▼谷 剛志  
代理人 清水 義憲  
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