• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  A61K
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A61K
管理番号 1351689
審判番号 無効2017-800115  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-21 
確定日 2019-03-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4636445号発明「ソリフェナシンまたはその塩の安定な粒子状医薬組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4636445号の特許請求の範囲を平成30年9月10日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?10]について訂正することを認める。 特許第4636445号の請求項1?2、4?10に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4636445号の請求項3に係る発明についての特許についての審判請求は、成り立たない。 審判に関する費用については、その10分の1を請求人及び参加人の負担とし、10分の9を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第4636445号(以下、「本件特許」ともいう。)の請求項1?10に係る発明についての出願(以下、「本件特許出願」ともいう。)は、平成17年12月26日(パリ条約による優先権主張 2004年12月27日(US)アメリカ合衆国、2005年3月24日(JP)日本国)を国際出願日として出願されたものであり、平成22年12月3日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人 ニプロ株式会社 は平成29年8月21日付けで当該特許の請求項1から請求項10に係る発明について特許無効審決を求めて審判請求を行い、被請求人 アステラス製薬株式会社 は平成29年11月13日付け審判事件答弁書を提出するとともに同日付け訂正請求書を提出し、これに対して請求人は平成30年1月9日付け審判事件弁駁書を提出した。
その後、当審から送付した平成30年3月5日付け審理事項通知書に対して、請求人は平成30年4月6日付け回答書及び平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書を提出し、被請求人は平成30年4月6日付け回答書及び平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書を提出し、平成30年5月24日に行われた口頭審理において、請求人は、審判請求書、平成30年1月9日付け弁駁書及び平成30年4月6日付け回答書については、それらに記載のとおり陳述し、また、平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書については、8頁19行、20行に記載の「マルトースについては、融点ではなくガラス転移点を」を「マルトースについては、ガラス転移点ではなく融点を」と訂正した上で陳述をし、被請求人は、平成29年11月13日付け審判事件答弁書、平成30年4月6日付け回答書及び平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述した。

2 その後、当審から平成30年7月6日付けで審決の予告がされ、被請求人は平成30年9月10日付け訂正請求書及び上申書を提出した。これに対し、請求人は平成30年12月7日付け審判事件弁駁書を提出した。

3 参加人 大原薬品工業株式会社は、平成30年9月10日付け参加申請書を提出し、本件審判について請求人側に参加する旨を申し出て、平成30年11月6日付け参加許否の決定により参加することが許可された。

4 平成30年9月10日付けで訂正の請求がされたので、平成29年11月13日付けの訂正の請求は、特許法第134条の2第6項により、取り下げられたものとみなされる。

第2 訂正請求について
1 平成30年9月10日付け訂正請求書による訂正請求の趣旨、及び、訂正事項は、それぞれ以下のとおりのものである。

(1)訂正請求の趣旨
特許第4636445号の特許請求の範囲を、平成30年9月10日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを求める。

(2)訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」
と記載されているのを、
「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」
に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2?10も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「安定な粒子状医薬組成物。」
と記載されているのを、
「安定な粒子状医薬組成物であって、
結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物。」
に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2?10も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に
「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、スターチ、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1に記載の医薬組成物。」
と記載されているのを、
「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1に記載の医薬組成物」
に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項5?10も同様に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に
「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。」
と記載されているのを、
「結合剤が、マルトースである、請求項1に記載の医薬組成物。」
に訂正する。請求項3の記載を引用する請求項5?10も同様に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に
「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬組成物。」
と記載されているのを、
「結合剤が、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の医薬組成物。」
に訂正する。請求項4の記載を引用する請求項5?10も同様に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に
「、ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」
と記載されているのを
「前記結合剤」
と訂正する。請求項5の記載を引用する請求項6?10も同様に訂正する。

2 訂正の適否
(1)一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであることについて
訂正前の請求項1?10について、請求項2?10が直接または間接に請求項1を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1を訂正の請求の対象とする訂正事項1?2、訂正前の請求項2を訂正の請求の対象とする訂正事項3、訂正前の請求項3を訂正の請求の対象とする訂正事項4、訂正前の請求項4を訂正の請求の対象とする訂正事項5、訂正前の請求項5を訂正の請求の対象とする訂正事項6は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

(2)訂正の目的について
訂正事項1及び訂正事項2は、請求項1に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との発明特定事項を、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との発明特定事項にするとともに、請求項1に記載された「安定な粒子状医薬組成物」との発明特定事項を、「安定な粒子状医薬組成物であって、結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物」との発明特定事項にすることにより、請求項1?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項3は、請求項2に記載された「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、スターチ、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」との発明特定事項を、「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」との発明特定事項にすることにより、請求項2、5?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項4は、請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用して記載されていたものであるところ、請求項1を引用して記載するものに変更するとともに、請求項3に記載された「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」との発明特定事項を、「結合剤が、マルトースである」との発明特定事項にすることにより、請求項3、5?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項5は、請求項4が請求項1乃至3のいずれか1項を引用して記載されていたものであるところ、請求項1を引用して記載するものに変更するとともに、請求項4に記載された「結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」との発明特定事項を、「結合剤が、ポリエチレングリコールである」との発明特定事項にすることにより、請求項4?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項6は、請求項5が請求項1を引用しつつ、請求項1に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との発明特定事項を、請求項5においても重複記載していたものであるところ、請求項5におけるその記載を「前記結合剤」との記載にすることにより重複記載をなくしたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1及び訂正事項2は、請求項1に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との発明特定事項を、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との発明特定事項にするとともに、請求項1に記載された「安定な粒子状医薬組成物」との発明特定事項を、「安定な粒子状医薬組成物であって、結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物」との発明特定事項にすることにより、請求項1?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項3は、請求項2に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除することにより、請求項2、5?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項4は、請求項3に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除するとともに、請求項3が引用する請求項から請求項2を削除することにより、請求項3、5?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項5は、請求項4に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除するとともに、請求項4が引用する請求項から請求項2、3を削除することにより、請求項4?10に係る発明における結合剤の範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項1及び2は、請求項1に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との発明特定事項を、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との発明特定事項にするとともに、請求項1に記載された「安定な粒子状医薬組成物」との発明特定事項を、「安定な粒子状医薬組成物であって、結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物」との発明特定事項にするものである。
願書に添付した明細書の段落【0018】には「また、本発明に用いられるソリフェナシン又はその塩の安定化作用又は非晶質体維持抑制作用を有する結合剤としては、……具体的には、Tgもしくはmpの範囲が174℃未満のものであり、……更に好ましくは0℃以上137℃未満である。最も好ましくは10℃以上137℃未満である。結合剤の種類としては具体的には、……、好ましくは酸化エチレン鎖を有する物質、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、……及びマルトースである。但し、……、より好ましくはPEG、……などの酸化エチレン鎖を有する物質、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースであり、……、特に好ましくはPEG、ヒドロキシプロピルセルロースであり、最も好ましくはPEGである。……。また、上記に記載した結合剤は2種以上の結合剤を一緒に使用することが出来る。」との記載があることから、訂正事項1及び2は、新たな技術的事項を加えるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

訂正事項3は、請求項2に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除するものであって、新たな技術的事項を加えるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

訂正事項4は、請求項3に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除するとともに、請求項3が引用する請求項から請求項2を削除するものであって、新たな技術的事項を加えるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

訂正事項5は、請求項4に記載された結合剤の選択肢から特定の物質を削除するとともに、請求項4が引用する請求項から請求項2、3を削除するものであって、新たな技術的事項を加えるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項1?10のすべてが無効審判の請求の対象とされているので、訂正事項1?6に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(6)請求人の主張について
請求人は、平成30年12月7日付け審判事件弁駁書において、
「平成30年9月10日付けの訂正請求書によって、訂正後の請求項1では、訂正前に「140℃以下」と規定されていた結合剤のガラス転移点あるいは融点が「137℃未満」に限定された。また、結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質に限定された。
……
本件特許の願書に添付された明細書の段落番号0018には、ガラス転移点あるいは融点の範囲の上限として、「174℃未満」「156℃未満」「137℃未満」という具体的な数値が記載されているが、これらの数値は、同明細書の段落番号0044?0063の実施例と比較例に基づいて安定性がよいと判断された結合剤の表3に記載の「Tg」の値を根拠にしていると考えられる。……しかしながら、平成29年8月21日付けの審判請求書において既に説明した通り、上記の表3に記載されている温度には、ガラス転移点、融点、軟化点が混在している。……表イから明らかであるように、本件特許の願書に添付された明細書には、ガラス転移点あるいは融点が137℃の結合剤は記載されていない。また、本件特許の明細書には、実施例のうち、ガラス転移点が示されている結合剤はひとつもなく、融点が示されている結合剤は、マクロゴール6000(55?63℃)とマルトース(102?103℃)のみである。……このように、本件特許の実施例において用いられているいずれの結合剤についても、137℃のガラス転移点あるいは融点、または、137℃に臨界的意義を与えるような温度のガラス転移点あるいは融点を有していることが記載されていない。」(3頁7行?6頁5行)と述べた上で、
「上記の訂正は、訂正の要件(特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項)を満たしていない。」と主張するので、請求人のこの主張について検討する。

願書に添付した明細書の段落【0018】に、結合剤のガラス転移点あるいは融点の好ましい範囲の上限が137℃未満であることが記載されるとともに、結合剤の種類として、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースが例示されていることから、請求項1に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との発明特定事項を、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との発明特定事項にする訂正事項1、請求項1に記載された「安定な粒子状医薬組成物」との発明特定事項を、「安定な粒子状医薬組成物であって、結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物」との発明特定事項にする訂正事項2はいずれも、新たな技術的事項を加えるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
したがって、「上記の訂正は、訂正の要件(特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項)を満たしていない。」とする請求人の主張は受け入れられない。

(7)小括
上記(1)?(6)により、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
前記のとおり、平成30年9月10日付け訂正請求書による訂正が認められたので、本件特許第4636445号の請求項1?10に係る発明は、当該訂正請求書に添付された「訂正特許請求の範囲」の請求項1?10に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
ソリフェナシン又はその塩、及びガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤を含有する、安定な粒子状医薬組成物であって、
結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物。
【請求項2】
結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
結合剤が、マルトースである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
結合剤が、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ソリフェナシン又はその塩と前記結合剤とを含有する薬物溶液を粒子化することによって得られる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記粒子化させる手法が、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、高速攪拌造粒法、流動層造粒法、及び転動造粒法からなる群より選択された1種または2種以上の手法である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記粒子化が、前記薬物溶液を核粒子に噴霧コーティングすることによって行なわれる、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記結晶化促進処理が、加湿処理、マイクロ波照射処理、超音波照射処理、低周波照射処理、及び熱電子照射処理からなる群より選択された1種または2種以上の処理である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠。」
(以下、本件訂正特許請求の範囲の請求項1に係る発明を「本件発明1」、同請求項2に係る発明を「本件発明2」、以下同様に「本件発明3」、「本件発明4」、……、「本件発明10」ともいい、まとめて「本件発明」ともいう。)

第4 当事者の主張及び提出した証拠方法
1 請求人側の主張及び提出した証拠方法
以下では、請求人側参加人 大原薬品工業株式会社を「参加人」という。

(1)請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人の提出した審判請求書、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書、平成30年4月6日付け回答書、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書によれば、請求人は、「特許第4636445号の特許請求の範囲の請求項1から請求項10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として、以下の無効理由A?Fを主張し、証拠方法として、甲1?甲25号証を提出している。

(1)無効理由A(明確性要件違反)
以下の(A.1)?(A.4)のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(A.1)(審判請求書2頁19行?3頁4行、15頁23行?16頁10行、25頁21行?29頁22行、70頁1?16行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書18頁9行?21頁12行、平成30年4月6日付け回答書8頁5行?9頁2行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書3頁5行?7頁6行、7頁22行?9頁17行、11頁13?20、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書9頁8行?10頁6行)
請求項1、5において、結合剤は「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」ことが規定されている。明細書の段落0010の記載によれば、本件発明1、5は、ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤を用いることによって、類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値がともに低く安定にすることができるものである。
しかし、融点とガラス転移点は同一視できない熱力学的パラメータである。また明細書の段落0012には、本件発明1、5においては、低分子化合物では融点を指標として採用し、高分子化合物ではガラス転移点を指標として採用したとの記載があるが、低分子については融点、高分子についてはガラス転移点を取り上げ、一緒くたにして相関をとり、ガラス転移点あるいは融点が特定の温度以下であれば安定であるとすることには意味がない。
しかも、明細書には、低分子と高分子のそれぞれの定義も記載されていないので、どの化合物の場合に融点に着目し、どの化合物の場合にガラス転移点に着目するかということも不明である。
したがって、本件発明1、5において発明特定事項が選択肢(「ガラス転移点あるいは融点」)で表現されており、その選択肢同士が類似の性質を有しないため、一の請求項に記載された事項に基づいて一の発明が把握されず、本件発明1、5は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2?10はいずれも、本件発明1または本件発明5の発明特定事項のすべてを備えるものである。本件発明2?10の発明特定事項である「ガラス転移点あるいは融点」について、その選択肢同士が類似の性質を有しないため、一の請求項に記載された事項に基づいて一の発明が把握されず、本件発明2?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(A.2)(審判請求書3頁5?20行、15頁23行?16頁10行、29頁23行?31頁16行、70頁1?16行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書21頁13行?23頁14行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書3頁5行?7頁6行、11頁13?20行、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書6頁16行?7頁8行)
請求項1、5において、結合剤は「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」ことが規定されている。明細書の段落0010の記載によれば、本件発明1、5は、ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤を用いることによって、類縁物質の初期値及びその後に精製する類縁物質の値がともに低く安定にすることができるものである。そのため、本件発明1、5の粒子状医薬組成物を製造等実施するためには、製造に用いようとする結合剤のガラス転移点を測定して140℃以下であるか否かを判断する必要がある。
しかし、ガラス転移点の測定方法は多数あり、測定方法によって得られるガラス転移点の異なることが技術常識であったにもかかわらず、明細書にはガラス転移点の測定方法が記載されておらず、ガラス転移点が140℃以下である結合剤を特定することができない。
被請求人は、平成30年9月10日付け上申書において、本件特許明細書にガラス転移点の測定方法が記載されていないとしても明確性の問題が生じることはないと主張している。しかしながら、ヒドロキシプロピルセルロースとヒドロキシエチルセルロースについては、ガラス転移点も融点も、本件特許の明細書には記載されていない上、甲第5号証には、ヒドロキシプロピルセルロースのガラス転移点は示されず、融点は190?195℃であることが記載されている。したがって、結合剤が物質名によって特定されていても、当業者は、ガラス転移点あるいは融点が137℃未満のヒドロキシプロピルセルロースがどのようなものであるのか理解できない。
したがって、本件発明1、5の発明特定事項のうち、「ガラス転移点」について、その測定方法が特定されていないため、本件発明1、5は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2?10はいずれも、本件発明1または本件発明5の発明特定事項のすべてを備えるものである。本件発明2?10の発明特定事項である「ガラス転移点」について、その測定方法が特定されていないため、本件発明2?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(A.3)(審判請求書3頁21行?4頁15行、15頁23行?16頁10行、31頁17行?33頁10行、70頁1?16行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書23頁15行?24頁27行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書9頁18行?11頁11行、11頁13?20行、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書10頁7行?11頁15行)
本件発明1、5において、発明特定事項とされる「結合剤」は、明細書の段落0017及び段落0008の記載からみて、非晶質体維持抑制作用によりソリフェナシン又はその塩のための経時的分解を抑制させうる結合剤である必要があるが、請求項には、結合剤がそのような作用を有することは何等記載されておらず、当業者が結合剤の意味を理解することができない。
したがって、本件発明1、5の発明特定事項のうち「結合剤」についてはその技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明1、5は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2?10はいずれも、本件発明1または本件発明5の発明特定事項のすべてを備えるものである。本件発明2?10の発明特定事項である「結合剤」について、その技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明2?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(A.4)(審判請求書4頁16行?5頁6行、15頁23行?16頁10行、33頁11行?34頁29行、70頁1?16行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書24頁28行?26頁4行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書11頁13?20行)
請求項1には、発明特定事項として、医薬組成物が「安定な」粒子状医薬組成物であることが記載されている。
「安定な粒子状医薬組成物」について、明細書の段落0022には、「ここでいう「安定な」とは、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である粒子を意味する。」との記載があるが、どのような条件でどのような期間、保存した場合のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下であれば安定であるというのかということについては記載されていない。明細書の発明の詳細な説明の段落0061?0062に記載される実施例の安定性予試験においても、「安定な」医薬組成物の定義は記載されていない。
しかしながら、保存条件や保存期間によって、ソリフェナシン又はその塩のF1生成量が変化することは技術常識であるし、実際に、明細書に記載された実施例及び比較例のいずれでも、保存開始から1ヶ月後にはF1生成量が0.5%以下となっている。
したがって、本件発明1の発明特定事項のうち「安定な粒子状医薬組成物」についてはその技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明1は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2?10はいずれも、本件発明1または本件発明5の発明特定事項のすべてを備えるものである。本件発明2?10の発明特定事項である「安定な粒子状医薬組成物」については、明細書の記載を考慮しても、その技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明2?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(2)無効理由B(サポート要件違反)
以下の(B.1)?(B.2)のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(B.1)(審判請求書5頁7行?7頁2行、16頁11?24行、35頁3行?45頁7行、70頁17行?71頁1行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書26頁11行?29頁18行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書11頁21行?12頁1行、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書7頁9行?8頁6行))
本件発明1、5の発明特定事項について、結合剤は「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」ことが規定されている。明細書の段落0010の記載によれば、本件発明1、5は、ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤を用いることによって、類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値がともに低く安定にすることができるものである。
「安定な粒子状医薬組成物」について、明細書の段落0022には、「ここでいう「安定な」とは、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である粒子を意味する。」との記載があるが、どのような条件でどのような期間、保存した場合のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下であれば安定であるというのかということについては記載されていない。明細書の発明の詳細な説明の段落0061?0062においても、「安定な」医薬組成物の定義は記載されていない。
ここで、結合剤のガラス転移点について、明細書の表3には「各結合剤のTgガラス転移点(℃)」が記載されているが、甲6号証及び甲1号証の記載によれば、表3に示される数値には、ガラス転移点と融点だけでなく、軟化点までもが混在している。甲6号証及び甲1号証の記載によれば、明細書に記載された実施例において「ガラス転移点」が「140℃以下」の結合剤は1つもなく、「融点」が「140℃以下」の結合剤は「マクロゴール6000」と「マルトース」のみである。
そして、明細書に記載されている実施例と比較例からは、結合剤のガラス転移点が140℃以下であれば、ソリフェナシンとその結合剤を含有する粒子状医薬組成物が安定化するという相関関係までは明らかにされておらず、明細書に記載されている実施例と比較例の結果を、結合剤のガラス転移点が140℃以下であれば、ソリフェナシンとその結合剤を含有する粒子状医薬組成物が安定化するということまで拡張ないし一般化することはできない。
また、明細書に記載されている実施例と比較例からは、結合剤の融点が140℃以下であれば、ソリフェナシンとその結合剤を含有する粒子状医薬組成物が安定化するという相関関係までは明らかにされておらず、明細書に記載されている実施例と比較例の結果を、結合剤の融点が140℃以下であれば、ソリフェナシンとその結合剤を含有する粒子状医薬組成物が安定化するということまで拡張ないし一般化することはできない。
また、本件発明1、5の発明特定事項に軟化点は含まれていないが、明細書に記載されている実施例と比較例からは、結合剤の軟化点が140℃以下であれば、ソリフェナシンとその結合剤を含有する粒子状医薬組成物が安定化するという相関関係までは明らかにされていない。
以上のように、「マクロゴール6000」または「マルトース」を結合剤として用いた実施例の結果を、融点やガラス転移点の記載のない、「マクロゴール6000」または「マルトース」以外の結合剤を用いる場合を含む本件発明1、5の全範囲にまで拡張、一般化することはできない。
また、「本件発明2?4について、マクロゴール6000」または「マルトース」を結合剤として用いた実施例の結果を、「マクロゴール6000」または「マルトース」以外の結合剤を用いる場合を含む本件発明2?4の全範囲にまで拡張、一般化することはできないし、本件発明6?10の発明特定事項である「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」について、明細書に記載された実施例の結果を、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」の全範囲にまで拡張、一般化することができるものではない。
訂正後の請求項1?4において、結合剤の種類が具体的に特定されているが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」のうち、本件発明1?4において特定されるものが、ソリフェナシン又はその塩の経時的な分解が抑制された球形の粒子状医薬組成物が得られることについての技術的説明等がまったく記載されていない上に、「ガラス転移点あるいは融点が137度未満の結合剤」のうち本件発明1?4において特定されるものを用いることで、その発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できるといえる技術常識も見出せない。
そもそも「137℃」という温度は、本件特許の明細書の表3に記載されている、ヒドロキシエチルセルロースの「軟化点」の中央値であって、本件特許の実施例に用いられているいずれの結合剤のガラス転移点でも融点でもない。
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を用いれば、本件発明1?10の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できると、認識できるとは認められない。
したがって、本件発明1?10は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても当該発明の課題を解決できると認識できる範囲にないものを包含しており、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(B.2)(審判請求書7頁3行?8頁3行、16頁11?24行、45頁8行?51頁25行、70頁17行?71頁1行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書29頁19行?30頁25行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書11頁21行?12頁1行)
本件発明は、明細書の段落0010、段落0021及び段落0008などの記載から、一般的な結合剤である、ポリビニルピロリドン(PVP)やヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を結合剤として用いた場合と比較して、コハク酸ソリフェナシンの安定性をより高めることが課題とされていると解釈できる。
本件優先権の基礎とされる甲9号証には、比較例4、5として、本件発明1の発明特定事項のすべてを備える粒子状医薬組成物が記載されている。
しかし、甲9号証の比較例4、5は、結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた甲9号証の比較例3と比較して、保存開始時にはF1生成量が低いが、保存後3カ月後にはF1生成量が多く、より不安定になり、保存後6カ月後にも、同等以上のF1生成量であることがわかる。
したがって、本件発明1の発明特定事項のすべてを備える粒子状医薬組成物が本件発明1の課題を解決するために必要な安定性を有していないため、明細書に記載された実施例の結果を、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」の全範囲にまで拡張、一般化することができるものではないから、本件発明1について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2?4について、「マクロゴール6000」または「マルトース」を結合剤として用いた実施例の結果を、「マクロゴール6000」または「マルトース」以外の結合剤を用いる場合を含めた本件発明2?4の全範囲にまで拡張、一般化することはできない。
また、本件発明2?10が備える発明特定事項である「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」について、明細書に記載された実施例の結果を、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」の全範囲にまで拡張、一般化することができるものではない。
したがって、本件発明2?10についても、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(3)無効理由C(実施可能要件違反)
以下の(C)のとおり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(C)(審判請求書8頁4?23行、16頁25行?17頁2行、51頁26行?53頁9行、71頁2?8行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書30頁26行?31頁18行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁2?8行、並びに平成30年12月7日付け審判事件弁駁書8頁7行?9頁7行))
本件発明1、5の発明特定事項について、結合剤は「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」ことが規定されている。明細書の段落0010の記載によれば、本件発明1、5は、ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤を用いることによって、類縁物質の初期値及びその後に精製する類縁物質の値がともに低く安定にすることができるものである。そのため、本件発明1、5の粒子状医薬組成物を製造等実施するためには、製造に用いようとする結合剤のガラス転移点を測定して140℃以下であるか否かを判断する必要がある。
しかし、ガラス転移点の測定方法は多数あり、測定方法によって得られるガラス転移点の異なることが技術常識であったにもかかわらず、明細書にはガラス転移点の測定方法が記載されておらず、当業者は、医薬組成物に用いられる結合剤が、本件発明1、5に規定される「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」結合剤であるか否かの判断ができない。
明細書等の記載に基づいてガラス転移点が140℃以下の結合剤を特定することができないので、当業者は本件発明1、5の粒子状医薬組成物を製造等実施することができない。
被請求人は、平成30年9月10日付け上申書において、本件特許明細書にガラス転移点の測定方法が記載されていないとしても、当業者が本件特許発明を実施できなくなることはないと主張している。しかしながら、ヒドロキシプロピルセルロースは、本件特許の明細書にはガラス転移点も融点も記載されておらず、甲25号証には、ガラス転移点を示さず、融点は190?195℃であることが記載されているので、結合剤が物質名によって特定されていても、当業者は、ガラス転移点あるいは融点が137℃未満のヒドロキシプロピルセルロースがどのようなものであるのか理解できず、本件特許発明を実施することができない。
したがって、本件発明1、5の発明特定事項のうち、「ガラス転移点」については、発明の詳細な説明には、その測定方法が特定されていないため、本件発明1、5を、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(4)無効理由D(新規事項追加)
以下の(D)のとおり、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるので、特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。

(D)(審判請求書8頁24行?9頁17行、17頁3?12行、53頁10行?55頁27行、71頁9?18行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書31頁19行?33頁4行、平成30年4月6日付け回答書7頁下から4行?8頁4行及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書7頁7?21行、12頁9?17行)
平成22年1月25日付け手続補正書(甲12号証)による手続補正について、ヒドロキシエチルセルロースのガラス転移点が135?140℃であることは、同日付け意見書(甲13号証)において出願人が補正の根拠としている明細書の表3の出典である高分子大辞典(甲1号証)には記載されていない。甲1号証に記載されているのは、ヒドロキシエチルセルロースの(ガラス転移点ではなく)軟化点が135?140℃であるということである。
ガラス転移点と軟化点は同視できない別異の熱力学的パラメータ、同列に比べることもできない別異の熱力学的パラメータとして用いられる用語である。
願書に最初に添付した明細書には、ガラス転移点または融点が140℃であると記載されているものは他にない。また、実施例と比較例に用いられた結合剤に、ガラス転移点または融点が明らかに140℃であるものはない。
したがって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」の数値範囲の上限である「ガラス転移点あるいは融点が140℃である結合剤」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、請求項1、5に「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」の発明特定事項を追加した平成22年1月25日付け手続補正書によってされた補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるので、その特許は特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。

(5)無効理由E(新規性欠如)
以下の(E.1)のとおり、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
また、以下の(E.2)のとおり、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲15号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
また、以下の(E.3)のとおり、本件発明2?4は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証または甲15号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
また、以下の(E.4)のとおり、本件発明10は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(E.1)(審判請求書9頁19行?11頁、17頁13?17行、56頁1行?60頁18行、71頁19?23行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書33頁5?15行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁18?20行)
本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証には、ソリフェナシンのコハク酸塩を含有する造粒物(粒子状医薬組成物)の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用することが記載されている。
甲14号証には、造粒物(粒子状医薬組成物)が安定であるかどうか、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下であるかどうかということは記載されていない。
しかし、本件明細書に記載された実施例1、2では結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースが用いられており、そのF1生成量からみて、甲14号証に記載された造粒物(粒子状医薬組成物)は、本件発明1にいう「安定な粒子状医薬組成物」に相当する。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(E.2)(審判請求書11頁1行?12頁、17頁13?17行、60頁19行?63頁17行、71頁19?23行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書33頁5?15行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁18?20行)
本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲15号証には、ソリフェナシンのコハク酸塩と、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含有する、錠剤等の粒子状医薬組成物である経口固形製剤が記載されている。
甲15号証には、造粒物(粒子状医薬組成物)が安定であるかどうか、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下であるかどうかということは記載されていない。
しかし、本件明細書に記載された実施例1、2では結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースが用いられており、そのF1生成量からみて、甲15号証に記載された造粒物(粒子状医薬組成物)は、本件発明1にいう「安定な粒子状医薬組成物」に相当する。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲15号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(E.3)(審判請求書12頁1行?13頁9行、17頁13?17行、63頁18行?65頁5行、71頁19?23行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書33頁5?15行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁18?20行)
本件発明2?4は、本件発明1の医薬組成物に含まれる、ガラス転移点または融点が140℃以下の結合剤を特定したものであり、結合剤の選択肢には、ヒドロキシプロピルセルロースが含まれている。
結合剤にヒドロキシプロピルセルロースを用いることは、甲14号証にも甲15号証にも記載されている。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証または甲15号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(E.4)(審判請求書13頁10?21行、17頁13?17行、65頁6行?66頁16行、71頁19?23行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書弁駁書33頁5?15行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁18?20行)
本件発明10は、本件発明1?9のいずれかの医薬組成物を含有するものが口腔内崩壊錠であることを特定しているが、甲14号証の段落0020には、口腔内崩壊製剤が錠剤であることも記載されている。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(6)無効理由F(進歩性欠如)
以下の(F.1)のとおり、本件発明1?4、10は、甲14号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前または本件特許の最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
また、以下の(F.2)のとおり、本件発明1?4は、甲15号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前または本件特許の最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(F.1)(審判請求書13頁23行?14頁15行、17頁18?24行、66頁18行?68頁14行、71頁24行?72頁1行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書33頁16行?35頁下から4行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁21行?13頁3行)
請求項1?4、10について、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを用いた粒子状医薬組成物またはそれを含有する口腔内崩壊錠は、甲14号証または甲15号証の実施例には記載されていない。
しかし、甲14号証の段落0056には、結合剤として好ましいものとしてヒドロキシプロピルセルロースとポリビニルピロリドンの2つが挙げられ、ヒドロキシプロピルセルロースは好ましい結合剤の2つのうちの1つとして記載されている。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、甲14号証に記載された造粒物(粒子状医薬組成物)または口腔内崩壊錠を製造する際に、甲14号証の段落0056の記載に基づいて、好ましい結合剤として挙げられた2つのうちの1つであるヒドロキシプロピルセルロースを用いて本件発明1?4または本件発明10とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。
したがって、本件発明1?4、10は、甲14号証に記載された発明に基づいて本件特許出願の最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(F.2)(審判請求書14頁16行?15頁5行、17頁18?24行、68頁15行?69頁26行、71頁24行?72頁1行、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書33頁16行?35頁下から4行、及び平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書12頁21行?13頁3行)
甲15号証第6頁の実施例1には、ソリフェナシンのコハク酸塩と乳酸を含有するカプセル錠が記載されており、ソリフェナシンのコハク酸塩を含有することは、本件発明1の発明特定事項「ソリフェナシン又はその塩を含有する」ことに相当し、カプセル剤は、本件発明1の発明特定事項「粒子状医薬組成物」に相当する。
甲15号証の実施例1のカプセル剤は、不活性な希釈剤(甲15号証第4頁第28行)として乳糖を含有し、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」を含有していない点で、本件発明1?4と異なる。
しかし、甲15号証5頁2?11行には、不活性な希釈剤(乳糖)以外の添加剤として含有される結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの2つのみが挙げられ、ヒドロキシプロピルセルロースは結合剤の2つのうち1つとして記載されている。
さらに、本件明細書に記載された実施例と比較例からは、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることによって、「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下の結合剤」以外の結合剤を用いる場合と比較して、有利な効果があるとは言えない。
したがって、甲15号証に記載された粒子状医薬組成物を製造する際に、甲15号証5頁2?11行の記載と実施例1の記載に基づいて、甲15号証の実施例1の乳糖(不活性な希釈剤)に加えて、または、乳糖の代わりに、結合剤として具体的に挙げられた2つのうちの1つであるヒドロキシプロピルセルロースを用いて本件発明1?4とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。
したがって、本件発明1?4は、甲15号証に記載された発明に基づいて本件特許出願の最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(証拠方法)
甲1号証:三田達 監訳「高分子大辞典」,丸善株式会社,平成6年9月20日,表紙、奥付、492頁、567?569頁、770?772頁、775頁、1095頁
甲2号証:高分子学会 編集「高分子辞典 第3版」,株式会社朝倉書店,2005年6月30日,表紙、奥付、109?110頁、441頁、646頁
甲3号証:社団法人日本化学会 編「第4版 実験化学講座4 熱・圧力」,丸善株式会社,平成4年2月5日,表紙、奥付、58頁
甲4号証:高分子学会 編「新高分子実験学8 高分子の物性(1)熱的・力学的性質」,共立出版株式会社,1997年6月15日,表紙、奥付、80?81頁
甲5号証:村勢則郎,佐藤清隆 編集「食品とガラス化・結晶化技術」,株式会社サイエンスフォーラム,2000年7月4日,表紙、奥付、18頁
甲6号証:永井恒司 監修,日本医薬品添加剤協会 訳編「医薬品添加物ハンドブック」,株式会社薬事日報社,2001年10月10日,表紙、奥付、87頁、536頁、634頁、694?695頁、731?732頁
甲7号証:「IUPAC GOLDBOOK」の「macromolecule」の項(https://goldbook.iupac.org/jtml/M/M03667.html)の印刷物(各頁右下端に「2017/08/16」の印字あり)(翻訳文添付)
甲8号証:特開2005-343893号公報,平成17年12月15日公開
甲9号証:米国特許出願US60/638,388の優先権証明書,2005年4月28日
甲10号証:安斎真由美、他2名“コーンスターチ/二糖混合アモルファスの水分吸着性と二糖の結晶化”,日本食品工学会誌,Vol.12,No.1(Mar.2011),pp.11-17
甲11号証:国際公開第2006/070735号(WO2006/070735 A1),2006年7月6日公開,表紙及び請求の範囲
甲12号証:特願2006-550756号の審査に際して提出された平成22年1月25日付け手続補正書
甲13号証:特願2006-550756号の審査に際して提出された平成22年1月25日付け意見書
甲14号証:特開2004-175796号公報,平成16年6月24日公開
甲15号証:国際公開第03/006019号(WO03/006019 A1),2003年1月23日
(以上、審判請求書に添付。)

甲16号証:株式会社クラレ「<モビタール>ブチラール樹脂(PVB樹脂)」の製品情報(http://www.kuraray.co.jp/products/plastic/mowital.html)の印刷物(右下端に「2017年12月19日」の印字あり)
甲17号証:「kuraray Mowitalのガラス転移温度・軟化点」と題する図(頒布日・印刷日を示す表記なし)
甲18号証:日本規格協会 編「JISハンドブック(26)プラスチックI(試験)」(「(26)」は原文では、□内に「26」の字),表紙、奥付、25頁、54頁、86頁、594?603頁、609?613頁
甲19号証:安田武夫,“プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果<12>”,プラスチックス,Vol.52,No.1(頒布日・発行日を示す表記なし),pp.172?176、pp.166
甲20号証:国立国会図書館「NDL-OPAC-書誌情報」の印刷物(「論題 プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果(12)」、「著者 安田 武夫」、「雑誌名 プラスチックス:日本プラスチック工業連盟誌/「プラスチックス」編集委員会 編」、「巻号・年月日 52(1)2001.1」の表記があり、右下端に「2017年12月27日」の印字あり)
(以上、平成30年1月9日付け審判事件弁駁書に添付。)

甲21号証:菅原透,“ガラスの熱分析”,NEW GLASS,Vol.28,No.110(2013),pp.39?49
甲22号証:JEAN A.TANGEMAN et al.,“Determination of the limiting fictive temperature of silicate glasses from calorimetric and dilatometric methods: Application to low-temperature liquid volume measurements”, American Mineralogist,Vol.86(2001),pp.1331-1344(抄訳文添付)
甲23号証:Anne Sipp,et al.,“Equivalence of volume, enthalpy and viscosity relaxation kunetics in glass-forming silicate liquids”, Journal of Non-Crystalline Solids,Vol.298(2002),pp.202-212(抄訳添付)
甲24号証:国際公開第2006/070735号(WO2006/070735 A1),2006年7月6日
(以上、平成30年5月24日に行われた口頭審理において訂正された平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書に添付。)

甲25号証:Kararli TT et al.,“Glass-rubber transitions of cellulosic polymers by dynamic mechanical analysis”, J Pharm Sci.,Vol.79,No.9,pp.845-848のAbstractの印刷物(最下部左端に「https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2273473」との印字、最下部右端に「2018/11/16」との印字あり。)(抄訳添付)
(以上、平成30年12月7日付け審判事件弁駁書に添付。)

(2)参加人の主張及び提出した証拠方法
参加人は、その主張を示す書面を提出しておらず、証拠方法となるものも提出していない。

2 被請求人の主張及び提出した証拠方法
被請求人の提出した平成29年11月13日付け審判事件答弁書、平成30年4月6日付け回答書、及び平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書、並びに平成30年9月10日付け上申書によれば、被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする との審決を求める。」とし、前記無効理由A?Fはいずれも理由がない旨を主張し、証拠方法として、乙1?乙8号証を提出している。

(証拠方法)
乙1号証:日本規格協会 編「JISハンドブック(26)プラスチックI(試験)」(「(26)」は原文では、□内に「26」の字),表紙、奥付、572頁?577頁、1024?1027頁
乙2号証:十時稔,“高分子のDSCとTMA”,Netsu Sokutei,Vol.31,No.5,pp.241-248
乙3号証:松本光雄 他 編「薬剤学マニュアル」2版,株式会社南山堂,1998年3月31日,表紙、奥付、109頁
乙4号証:「13197の化学商品」,化学工業日報社,1997年1月29日,表紙、奥付、517頁、898頁
(以上、平成29年11月13日付け審判事件答弁書に添付。)

乙5号証:高分子学会 他 編集「新版高分子辞典」,株式会社朝倉書店,1988年11月25日,表紙、奥付、75?76頁
乙6号証:松村明 他 編著「大辞林」第三版,株式会社三省堂,2014年3月20日第三刷,表紙、奥付、2226頁
乙7号証:長倉三郎 他 編集「岩波 理化学事典」第5版,株式会社 岩波書店,2000年4月25日第4刷,表紙、奥付、267頁
(以上、平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書に添付。)

乙8号証:「ポリマーの熱分析」,表紙、目次、15?18頁、裏表紙,メトラー・トレド株式会社
(以上、平成30年9月10日付け上申書に添付。)

3 請求人の提出した証拠方法のうち、甲14号証及び甲15号証の記載事項
(1)甲14号証の記載事項
記載事項(甲14-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物を含有する口腔内崩壊製剤。
……
【請求項22】
薬物がナフトピジル、YM-905、又はKMD-3213のいずれかである請求項1ないし21のいずれか1項に記載の口腔内崩壊製剤。
……。」(特許請求の範囲)

記載事項(甲14-2)
「【0011】
5.水難溶性であって粒径が実質的に0.4?105μmの排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物と、第1の添加物である水溶性添加物及び/又は水不溶性添加剤とを混合し、造粒し、さらに第2の添加物である水溶性添加物及び/又は水不溶性添加剤を必要により混合し、得られた混合物又は造粒物を湿潤条件下で型に投入して0.1?100MPaの圧力で圧縮成型した後、乾燥することにより得られる口腔内崩壊製剤であって、該製剤中における水不溶性添加剤の含有率が10%w/w以上である場合には、その水不溶性添加剤の平均粒径が100μm以下である上記1ないし3のいずれか1項に記載の口腔内崩壊製剤。
……。」(発明の詳細な説明の段落0011)

記載事項(甲14-3)
「【0020】
……。
本発明の口腔内崩壊製剤の形状は特に限定されないが、円盤状などの放射状の形状であることが好ましい。典型的には錠剤の形状を挙げることができる。製剤のサイズも特に限定されないが、例えば指でつかみ易く、かつ口に含み易いサイズを選択できる。さらに、直接嚥下されないように若干大きめのサイズであることが好ましい。例えば、長径(円盤状であれば直径)が5?22mm、厚みが1?8mmであることが好ましく、より好ましくは長径が6?20mm、厚みが1.5?6mmであり、さらに好ましくは長径が7?18mmで厚みが2?5mm程度である。」

記載事項(甲14-4)
「【0023】
本発明において特に好ましいのは、ナフトピジル、塩酸プラゾシン、ウラピジルである。さらにナフトピジルが特に好ましい例として挙げられる。また、YM-905(solifenacin succinate;(+)-(1S,3'R)-quinuclidin-3'-yl-1-phenyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline-2-carboxylate monosuccinate;国際公開WO96/20194号)、又はKMD-3213(silodosin;(-)-(R)-1-(3-hydroxypropyl)-5-[2-[2-[2-(2,2,2-trifluoroethoxy)phenoxy]ethylamino]propyl]indoline-7-carboxamide;米国特許第5387603号明細書)も好ましい例として挙げられる。」(発明の詳細な説明の段落0023)

記載事項(甲14-5)
「【0056】
上記の方法に密接に関連する製造方法としては、上記5.の態様に従う製造方法が挙げられる。この製造方法においては、添加物として賦形剤と結合剤の組み合わせが通常好ましく選択される。賦形剤としては水溶性添加物の糖または糖アルコールが好ましく、具体的にはD-マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、乳糖、造粒乳糖(通常、噴霧乾燥による)、造粒D-マンニトール(通常、噴霧乾燥による)が挙げられ、このうち、D-マンニトール、乳糖、エリスリトール、造粒乳糖、造粒D-マンニトールが好ましい例として挙げられる。結合剤としては水溶性添加物を用いることが好ましく、具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化澱粉が挙げられ、このうち、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)を使用することが好ましい。
【0057】
本発明の方法における打錠圧の下限は特に限定されないが、好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上が例示される。打錠圧の上限も特に限定されないが、好ましくは、25MPa以下、さらに好ましくは22MPa以下であり、20MPa以下が特に好ましい。通常、打錠圧は0.1?20MPaの範囲であることが好ましい。」(発明の詳細な説明の段落0056?0057)

記載事項(甲14-6)
「【0058】
すなわち、本発明の好ましい製造方法をより具体的に記載すると、粒径の細かな水難溶性の薬物に対して、添加物として賦形剤(例えば、マンニトール及び/又は乳糖等)と結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)等)を添加して混合し、その後に得られた混合物を造粒し、必要により滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムやフマル酸ステアリルナトリウム等)、溶解補助剤、甘味剤、香料等を適宜混合し、得られた混合物を湿潤させて型に投入した後、適宜の圧力にて圧縮成型して乾燥する方法が挙げられる。」(発明の詳細な説明の段落0058)

(2)甲15号証の記載事項
記載事項(甲15-1)
「また、本発明の有効成分(化合物A)は不斉炭素原子を有するため、これに基づく光学活性体が存在し、ジアステレオマー、エナンチオマーの混合物及びその単離されたものを包含する。また本発明の有効成分には水和物、エタノール等の溶媒和物や結晶多形の物質もすべて包含する。本発明において特に好ましいのは、(+)-(1S,3’R)-キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート(ソリフェナシン)のコハク酸塩である。」(4頁12?18行)

記載事項(甲15-2)
「本発明の医薬の有効成分は優れた経口吸収性を有することから、本発明の薬剤は経口製剤に適する。最も好ましいのは患者が自ら容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な経口固形製剤である。」(4頁23?25行)

記載事項(甲15-3)
「経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固形製剤においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、デンプン、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。」(4頁26行?5頁2行)

記載事項(甲15-4)
「組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、スターチ、タルクのような潤滑剤;繊維素グリコール酸カルシウム、カルメロースカルシウムのような崩壊剤;ラクトースのような安定化剤;グルタミン酸又はアスパラギン酸のような溶解補助剤;ポリエチレングリコールのような可塑剤;酸化チタン、タルク、黄色酸化鉄のような着色剤;を含有していてもよい。」(5頁2?11行)

記載事項(甲15-5)
「発明を実施するための最良の形態
以下に実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。尚、以下の実施例等において用いる化合物1は(+)-(1S,3’R)-キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート(ソリフェナシン)のコハク酸塩を意味する。
実施例1 カプセル錠

上記成分を混合し、カプセルに充填してカプセル剤を製造した。」(6頁10行?下から5行)

記載事項(甲15-6)
「技術分野
本発明は、カプサイシン感受性知覚神経抑制剤、具体的には間質性膀胱炎、下部尿路における知覚過敏症及び/又は非細菌性前立腺炎の治療剤に係るものである。」(1頁3?6行)

記載事項(甲15-7)
「試験例1 マウス膀胱におけるカプサイシンで誘発した血漿タンパク質の血管外漏出に対する化合物1の阻害作用
……
試験例2 ヒトに経口投与したときの尿中排泄量
……
試験例1と試験例2の結果により、化合物1は成人に対し1日10?20mgの経口投与により、カプサイシン感受性知覚神経の刺激で誘発される膀胱内の炎症を抑制することができるので、間質性膀胱炎、下部尿路における知覚過敏症、及び、非細菌性前立腺炎から選択される泌尿器疾患の治療に有効であると考えられる。
また、本発明の効果は、間質性膀胱炎、下部尿路における知覚過敏症又は非細菌性前立腺炎の患者に対する臨床試験やかかる疾患の病態を反映した動物試験によっても確認できる。

記載事項(甲15-8)
「請求の範囲
1.キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート又はその塩を有効成分として含有するカプサイシン感受性知覚神経抑制用医薬組成物。
2.キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート又はその塩を有効成分として含有する間質性膀胱炎治療用医薬組成物。
3.キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート又はその塩を有効成分として含有する下部尿路における知覚過敏症治療用医薬組成物。
4.キヌクリジン-3’-イル 1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボキシレート又はその塩を有効成分として含有する非細菌性前立腺炎治療用医薬組成物。
5.経口投与製剤である請求の範囲1?4記載の医薬組成物。」(10頁1?14行)

産業上の利用可能性
本発明によれば、間質性膀胱炎、下部尿路における知覚過敏症及び/又は被災金星前立腺炎の経口治療薬を提供できる。」(6頁下から4行?9頁最終行)

第5 当審の判断
1 無効理由A(明確性要件違反)
(1)(A.1)について
平成30年9月10日付け訂正請求書による訂正により、訂正前の請求項1、5に記載された「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である」は、請求項1においては「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」と訂正され、請求項5においては「前記」と訂正された。
本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」は、文言上「ガラス転移点、融点のいずれかが137℃未満である」の意味であるところ、ガラス転移点と融点の両方を有する物質の場合、一般的にはガラス転移点が融点よりも低いこと、をふまえると、上記「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」は、
・ガラス転移点を有する物質については「ガラス転移点が137℃未満」であれば足り、
・融点は有するがガラス転移点を有しない物質については「融点が137℃未満である」ことを意味する
ものである。
これが、明細書の発明の詳細な説明の記載と矛盾しないか、検討する。

明細書の発明の詳細な説明には
「【0008】
……。
このような技術水準下、ソリフェナシン製剤の安定化につき鋭意研究した結果、予想外にも製剤の製造過程において生成した非晶質体のソリフェナシンが、主薬経時的分解の主たる原因であり、一般的な結合剤であるHPMC等の使用がソリフェナシンの非晶質体生成に大きく関与していたことを知った。
【0009】
一方、ソリフェナシンの苦味・収斂味をマスクした顆粒状物質を得るために、本発明者は、例えば結晶セルロースからなる核粒子に対し、薬物溶液を噴霧して微粒子(粒子状医薬組成物)を調製し、該微粒子に適切な高分子物質でフィルムコーティングを施す方法が有効であると考えた。しかしながら、当該微粒子を調製するためには、ソリフェナシン又はその塩を一度溶解した後に噴霧する必要があるが、その際ソリフェナシンは非晶質化されやすく、また、非晶質体から結晶体に変化する際に分解物が生じるというソリフェナシン特有の問題がすることが判明した。……。
【0010】
このような条件下、まず本発明者らは、ポリエチレングリコール(別名マクロゴール、以下、PEGと略記する場合もある)などの酸化エチレン鎖を有する物質を結合剤として使用するときは、PEG自体が一般的に薬物を非晶質化させる目的で使用される物質であるにも拘わらず、意外にもソリフェナシンが非晶質化に維持することを抑制することによってソリフェナシンの経時的な分解を抑制しうる製剤を創製することを知見した。
そして更に、フィルムコーティングするのに適した安定なソリフェナシン又はその塩の粒子状医薬組成物の創製に当たり、例えば溶解させたソリフェナシンをPEGなどの高分子物質(結合剤)とともに核粒子に噴霧する場合、ソリフェナシンがその後非晶質体を維持しうるかどうかは高分子物質(結合剤)内でのソリフェナシンの流動性に起因するものではないかとの着想を得た。そこで、鋭意検討を行ったところ、核粒子に噴霧する際に用いる結合剤に関し、薬物の流動性に影響を与える可能性がある高分子固有の物性値(ガラス転移点(以下Tgと略す)や融点(以下、mpと略す))に着目したところ、Tgが高い結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては分解の指標となる類縁物質の初期値は低かったにもかかわらず、その後の安定性に関しては不安定であることを見出した。一方、Tgが一定値よりも低い特定の結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては、意外にも類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値が共に低く安定で、かつ、粒度が均一でかつ球形のフィルムコーティングに適したものであることを見出した。」(段落0008?0010)と記載されるとともに、
「一般的に、流動性の指標としては高分子中の非晶質体部分に起因するガラス転移点(Tg,単位℃)あるいは軟化点(単位℃)および結晶部分に起因する融点(mp,単位℃)といった物質固有の熱力学的パラメータを用いることが多い。これらの値は物質の熱力学的な状態変化を示す温度であるが, Tg未満の温度では、分子の運動は抑制されるため、結晶状態に近い状態もしくはガラス状態をとり可塑性が低下しやすいのに対して,物質の温度がTg以上にある場合、分子の活動度は高まり、ゴム状になって柔軟性が増す。さらに温度の上昇によって高分子中の結晶部分が壊れて流動性を示すようになるのが高分子の融解である。このことを踏まえると、ある温度において非晶質状態の薬物が高分子中に存在していた場合,その高分子のTgが高いほど高分子自体が流動しにくいため、初期の状態である非晶質として存在しやすく、逆に低い高分子ほど結晶析出が早いことを意味している(Int. J. Pharm. 282(2004)151-162)。一方、低分子化合物については物質構造が結晶性のためTgを持たないことが多いが、熱運動性の変化を示すパラメーターという点で、低分子化合物については融点を指標として採用し、高分子については、変化がより早く出現する温度のTgを採用した。」(段落0012)と記載されている。

これらの記載は、溶解させたソリフェナシン又はその塩を核粒子に噴霧する際に結合剤として用いられるポリエチレングリコールなどの高分子のガラス転移点に着目すると、そのガラス転移点が低い場合に、得られる粒子状医薬組成物に関して、ソリフェナシン又はその塩の類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値がともに低く安定であるとした上で、結合剤として低分子化合物を用いる場合には、低分子化合物がガラス転移点を持たないことが多いことから、ガラス転移点に代えて融点を指標とし、結合剤として高分子を用いる場合には、一般的にはガラス転移点が融点よりも低いことから、ガラス転移点を指標としたことを示すものといえる。
してみると、発明の詳細な説明の記載は、
上記において「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」を、
・ガラス転移点を有する物質については「ガラス転移点が137℃未満」であれば足り、
・融点は有するがガラス転移点を有しない物質については「融点が137℃未満である」ことを意味する
としたことと整合する。

したがって、請求人による主張、すなわち、本件発明1、5において発明特定事項が選択肢(「ガラス転移点あるいは融点」)で表現されており、その選択肢同士が類似の性質を有しないため、一の請求項に記載された事項に基づいて一の発明が把握されず、本件発明1、5は明確でないとする主張は受け入れられず、無効理由Aのうち(A.1)には理由がない。

(2)(A.2)について
明細書の発明の詳細な説明に「ガラス転移点」の測定方法についての記載はない。
そして、甲18号証の54頁「ガラス転移温度」の定義の欄には「ガラス転移が行われる温度範囲のほぼ中間点。注-ガラス転移温度(Tg)は測定のため選んだ特定の特性とその試験方法及び試験条件によって著しく変化する。」と記載されていることから、「ガラス転移点」の測定結果には一般に、測定方法によって当業者にとって無視できない程度の差が生じることがあると認められる。
このことは、高分子ではなくシリケイトガラスについての刊行物ではあるものの、甲21号証48頁左欄1?6行の「DSC測定により求まるガラスの仮想温度(図3)とガラス転移温度(Tg_((DSC)).図2b)、線膨張測定により求めたガラス転移温度(Tg_((Dil)).図11)は定義が相互に異なるので値も異なる。またメルトの粘性流動の観点ではTgは粘性率が10^(12)pa・sになる温度(Tg_((12)))であると定義されている。……シリケイトガラスのTgについて次のことが言える。……(2)DSCまたはDTAとTMAによるTgは化学組成の違いにより±15℃以内の範囲で差が生ずることがある。」との記載とも整合する。

被請求人は、「ガラス転移点」の測定方法については、「ガラス転移点の主な測定方法としては、TMA法(熱機械分析法)、DSC法(示差走査熱量測定法)、DTA法(動的粘弾性分析法)が知られており、TMA法(熱機械分析法)とDSC法(示差走査熱量測定法)は、日本工業規格として採用されている(TMA法:JIS K7196、DSC法:JIS K7121)。したがって、当業者であれば、ガラス転移点に関する規格情報を踏まえて、本件特許発明に係る結合剤のガラス転移点を実際に測定することが可能である。」(平成29年11月13日付け審判事件答弁書9頁19?25行)などと述べて、複数の測定方法が知られていたことを認める。
一方で、被請求人は、医薬組成物に用いられる結合剤のガラス転移点の測定結果に対する測定方法の違いによる影響については、「医薬組成物に用いられる高分子化合物は、塗料などに用いられる高分子化合物と比較して、一般に不純物が少ないものであるから、測定方法によってガラス転移点が約50℃もバラつくとは考えられない。」(平成29年11月13日付け審判事件答弁書9頁9?12行)、「本件特許発明の明確性を判断するにあたっては、本件特許発明のような医薬組成物に用いられる結合剤について、そのガラス転移点が測定方法によって本当に約50℃もの幅でバラつくものであるかを論じる必要がある。……、そのようなデータを過度に一般化し、本件特許発明1,5に係る記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確と結論づけることはできない。」(平成30年4月6日付け回答書3頁19?24行)、「本件特許発明に係る「結合剤」は、「粒子状医薬組成物」に用いられるものである以上、医薬組成物で使用可能なものに限られる。……、このような特殊な例を根拠にして、「ガラス転移点は、測定対象とした物理量と測定機器、または、試料の履歴や測定原理の違いによって、測定温度が約50℃の幅に分散することが本件特許の出願日において技術常識であった」などと一般化することはできない。」(平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書5頁22行?6頁1行)、「本件特許発明に係る「結合剤」は、「粒子状医薬組成物」に用いられるものである以上、医薬組成物で使用可能なものに限られる。特に、訂正後の本件特許発明に関しては,物質名によって「結合剤」が化学構造の面からも特定されており、請求項1については「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質、……に結合剤が特定されている。そして医薬組成物の結合剤として用いられる「ヒドロキシエチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルセルロース」、「マルトース」、「ポリエチレングリコール」について、ガラス転移点や融点の値が、第三者の利益が不当に害されるほどに測定方法によって大きく変動してしまうとは到底考えられない。」(平成30年9月10日付け上申書7頁14?26行)などと述べるものの、ガラス転移点の測定結果が測定方法によっても第三者の利益が不当に害されるほどには大きくばらつかない具体例を示すものとして提出した乙8号証は、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移点についてのものであって、その結果から、ポリエチレンテレフタレートとは異なるポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースのガラス転移点や融点の値も測定方法によって大きく変動することはないといえる技術的説明を被請求人は何らおこなっていない。

しかも、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースについては、一般には高分子物質とされるものであるにもかかわらず、本件発明においてはその分子量の定めがないところ、甲2号証(110頁左欄15?21行に「高分子についてみれば,……,重合度が100程度以下では鎖末端の影響によりガラス転移温度は重合度と共に低下する.側鎖など主鎖以外の運動の自由度をもつ高分子では,ガラス転移温度以下において,副転移が観測される.」と記載されていることから、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースは、分子量によってガラス転移温度が変化することが技術常識から明らかであるから、「ガラス転移点」の測定方法が特定されていない以上、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースであって「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」結合剤の範囲は明確でない。

一方、マルトースは、化学構造の定まった二糖類であって、その融点は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0063の表3の記載によれば102℃、甲6号証695頁左欄12行の記載によれば102-103℃とされる。マルトースのガラス転移点自体は本件特許明細書に記載されていないものの、例えば、特開2011-229477号公報4頁45行?5頁2行(段落0022)に、示差走査熱量測定法により測定されたマルトースのガラス転移温度が92℃であると記載されていることにも示されるように、マルトースはガラス転移点を有する物質である。
ガラス転移点と融点の両方を有する物質の場合、一般的にはガラス転移点が融点よりも低いこと、をふまえると、マルトースは「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ものと認められるし、示差走査熱量測定法により測定されたマルトースのガラス転移温度が92℃であることとガラス転移点の測定方法の違いによる影響を考慮しても、マルトースは「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ものといえる。

以上のとおり、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を発明特定事項とするとともに、「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」、「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」、又は「結合剤が、ポリエチレングリコールである」ことを発明特定事項とする本件発明1?2、4?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件発明1?2、4?10の特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
一方、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を発明特定事項とするとともに、「結合剤が、マルトースである」ことを発明特定事項とする本件発明3は明確でないとする請求人の主張は受け入れられず、本件発明3の特許に対して無効理由Aのうち(A.2)には理由がない。

(3)(A.3)について
「結合剤」に関して、明細書の発明の詳細な説明には
「【0010】
このような条件下、まず本発明者らは、ポリエチレングリコール(別名マクロゴール、以下、PEGと略記する場合もある)などの酸化エチレン鎖を有する物質を結合剤として使用するときは、PEG自体が一般的に薬物を非晶質化させる目的で使用される物質であるにも拘わらず、意外にもソリフェナシンが非晶質化に維持することを抑制することによってソリフェナシンの経時的な分解を抑制しうる製剤を創製することを知見した。
そして更に、フィルムコーティングするのに適した安定なソリフェナシン又はその塩の粒子状医薬組成物の創製に当たり、例えば溶解させたソリフェナシンをPEGなどの高分子物質(結合剤)とともに核粒子に噴霧する場合、ソリフェナシンがその後非晶質体を維持しうるかどうかは高分子物質(結合剤)内でのソリフェナシンの流動性に起因するものではないかとの着想を得た。そこで、鋭意検討を行ったところ、核粒子に噴霧する際に用いる結合剤に関し、薬物の流動性に影響を与える可能性がある高分子固有の物性値(ガラス転移点(以下Tgと略す)や融点(以下、mpと略す))に着目したところ、Tgが高い結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては分解の指標となる類縁物質の初期値は低かったにもかかわらず、その後の安定性に関しては不安定であることを見出した。一方、Tgが一定値よりも低い特定の結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては、意外にも類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値が共に低く安定で、かつ、粒度が均一でかつ球形のフィルムコーティングに適したものであることを見出した。」(段落0010)と記載されるとともに、
「一般的に、流動性の指標としては高分子中の非晶質体部分に起因するガラス転移点(Tg,単位℃)あるいは軟化点(単位℃)および結晶部分に起因する融点(mp,単位℃)といった物質固有の熱力学的パラメータを用いることが多い。これらの値は物質の熱力学的な状態変化を示す温度であるが, Tg未満の温度では、分子の運動は抑制されるため、結晶状態に近い状態もしくはガラス状態をとり可塑性が低下しやすいのに対して,物質の温度がTg以上にある場合、分子の活動度は高まり、ゴム状になって柔軟性が増す。さらに温度の上昇によって高分子中の結晶部分が壊れて流動性を示すようになるのが高分子の融解である。このことを踏まえると、ある温度において非晶質状態の薬物が高分子中に存在していた場合,その高分子のTgが高いほど高分子自体が流動しにくいため、初期の状態である非晶質として存在しやすく、逆に低い高分子ほど結晶析出が早いことを意味している(Int. J. Pharm. 282(2004)151-162)。一方、低分子化合物については物質構造が結晶性のためTgを持たないことが多いが、熱運動性の変化を示すパラメーターという点で、低分子化合物については融点を指標として採用し、高分子については、変化がより早く出現する温度のTgを採用した。」(段落0012)と記載されている。

これらの記載から、平成29年11月13日付け訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1にいう「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」及び同請求項5にいう「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」はいずれも、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制させうる結合剤を意味すると解釈され、同請求項1を引用する同請求項2?同請求項5にいう「結合剤」も、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制させうる結合剤を意味すると解釈される。

したがって、請求人による主張、すなわち、本件発明1?10の発明特定事項のうち「結合剤」についてはその技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明1?10は明確でないとする主張は受け入れられず、無効理由Aのうち(A.3)には理由がない。

(4)(A.4)について
「安定な粒子状医薬組成物」に関して、明細書の発明の詳細な説明には
「【0022】
本発明にいう「安定な粒子状医薬組成物」とは、ソリフェナシンまたはその塩等を用いて得られうる粒子で、かつ、経時的分解を抑制させた安定な粒子であれば特に限定はない。ここでいう「安定な」とは、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である粒子を意味する。……。」(段落0022)と記載されている。

この「本発明にいう「安定な粒子状医薬組成物」とは、ソリフェナシンまたはその塩等を用いて得られうる粒子で、かつ、経時的分解を抑制させた安定な粒子であれば特に限定はない。」なる記載からみて、請求項1にいう「安定な」粒子状医薬組成物とは、請求項1における結合剤を配合することにより、配合しない場合に比較して、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解が抑制されている粒子状医薬組成物であれば足りると解釈される。そして、上記「ここでいう「安定な」とは、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である粒子を意味する。」における「具体的には」は、その後の直後に「より好ましくは」とあることからも、「好ましくは」と同義であると解釈される。

したがって、請求人による主張、すなわち、本件発明1?10の発明特定事項のうち「安定な粒子状医薬組成物」についてはその技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件発明1?10は明確でないとする主張は受け入れられず、無効理由Aのうち(A.4)には理由がない。

(5)小括
以上(1)?(4)のとおり、無効理由Aのうち(A.1)、(A.3)及び(A.4)には理由がなく、(A.2)には本件発明3の特許に対して理由がないが、本件発明1?2、4?10の特許に対して理由があり、本件発明1?2、4?10は明確でなく、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由B(サポート要件違反)
特許請求の範囲が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるとされる。

ここで、明細書の発明の詳細な説明には、
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、ソリフェナシンまたはその塩の製剤を臨床現場に提供するに当たり、フィルムコーティングに適した球形で、かつ、経時的な分解を抑制できる安定なソリフェナシンまたはその塩の粒子状医薬組成物を提供する必要があった。」(段落0006?0007)との記載、及び
「そこで、鋭意検討を行ったところ、核粒子に噴霧する際に用いる結合剤に関し、薬物の流動性に影響を与える可能性がある高分子固有の物性値(ガラス転移点(以下Tgと略す)や融点(以下、mpと略す))に着目したところ、Tgが高い結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては分解の指標となる類縁物質の初期値は低かったにもかかわらず、その後の安定性に関しては不安定であることを見出した。一方、Tgが一定値よりも低い特定の結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては、意外にも類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値が共に低く安定で、かつ、粒度が均一でかつ球形のフィルムコーティングに適したものであることを見出した。
さらに、鋭意検討した結果、加湿乾燥処理等の結晶化促進処理を施したほうがより安定な粒子状医薬組成物を創製することを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落0010)との記載がある。

これらの記載から、本件発明1?10の課題は「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」であると認められる。

(1)(B.1)について
甲2号証(高分子学会編「高分子辞典」第3版、朝倉書店、2005年6月30日)において、「ガラス転移点」の項(110頁)に「→ガラス転移」と記載されるとともに、「ガラス転移」の項(109頁)が「軟化点」の項(441頁)とは別に設けられていること、及び「軟化点」の項(441頁)の最後尾に「これらの測定条件は,ISOやJIS規格で定められている。このようにして求めた軟化点は,荷重をかけた状態での温度であるため,融点やガラス転移温度より低い。」と記載されていることから、「ガラス転移点」、「軟化点」及び「融点」は異なるものであることが技術常識であると認められる。
そして、甲4号証に「本来,TMA法によって求まる温度は軟化温度であるが,樹脂が非晶性であれば,その軟化温度は、熱可塑性、熱硬化性を問わずTgにほぼ等しいという実験事実に基づいて,ここではTMA法による軟化温度をTgと見なすことにする。」(80頁15?18行)との記載があり、乙2号証に「TMAは軟化温度自体を測定しているという見方もあり,後述するJIS規格もそのような内容になっている」(241頁右欄4?6行)との記載があることから、TMA法による「軟化点」の測定結果が「ガラス転移点」と同視されることはあると認められるものの、本件明細書には、そこに記載されたガラス転移点が、DSC法またはDTA法によって測定されたガラス転移点ではなく、TMA法によって測定された軟化温度であることを示す記載はなく、また、DSC法またはDTA法によって測定されたガラス転移点が軟化温度と同視されるものであることは、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、技術常識であるとも認められない。

ここで、本件明細書の発明の詳細な説明(段落0043?段落0063)に記載された実施例1?8及び比較例1?6に用いられた結合剤に関して、本件明細書の発明の詳細な説明(段落0063)には、
「各結合剤のTgガラス転移点(℃)
【表3】

*融点(mp,℃)にて代用
**出典[医薬品添加物ハンドブック] 薬事日報社 2001年10月10日発行
***出典「高分子辞典」丸善 平成6年9月20日発行」
が記載されている。
出典とされる「[医薬品添加物ハンドブック]薬事日報社 2001年10月10日発行」に対応する甲6号証には、
・マクロゴール6000の融点が55?63℃であること(634頁)
・マルトースの融点が102?103℃であること(695頁)
・ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の軟化点が130℃であること(536頁)
・エチルセルロース(EC)のガラス転移点が129?133℃であること(87頁)、及び
・メチルセルロースは190?200℃で褐色となり、225?230℃で炭化すること(732頁)
が記載されている。
出典とされる「「高分子辞典」丸善 平成6年9月20日発行」に対応すると認められる甲1号証には、
・ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の軟化点が135?140℃であること(567頁)
・エチルセルロース(EC)の軟化点が152?162℃であること(569頁)
・ポリビニルピロリドン(PVP)のガラス転移点が175℃であること(492頁)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の軟化点が240℃であること(568頁)
・メチルセルロース(MC)の融点が290?305℃であること(568頁)
が記載されている。そして、甲6号証及び甲1号証は、各々、周知のハンドブック及び辞典であるから、それらに記載されている事項は技術常識であるといえる。

すると、「ガラス転移点」、「軟化点」及び「融点」は異なるものであるという上記の技術常識並びに本件明細書の発明の詳細な説明(段落0063)に記載された表3及び甲6号証及び甲1号証に示された技術常識に照らすと、本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載されている組成物に用いられた結合剤のうち、「ガラス転移点」が分かるものはなく、「融点」が分かるものであって「137℃未満」であるものは「マクロゴール6000」及びマルトースのみであることを、当業者は認識する。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明に比較例として記載されている組成物に用いられた結合剤のうち、「ガラス転移点」が分かるものは比較例3、4に用いられたPVP(ポリビニルピロリドン)(ガラス転移点175℃)のみであり、「融点」が判明するものは比較例5、6に用いられたMC(メチルセルロース)(融点290?305℃(ただし、炭化する))のみであることを、当業者は認識する。
してみると、「ガラス転移点」、「軟化点」及び「融点」は異なるものであるという上記の技術常識並びに本件明細書の発明の詳細な説明(段落0063)に記載された表3及び甲6号証及び甲1号証に示された技術常識に照らして、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例1?8及び比較例1?6に用いられた結合剤のうち「ガラス転移点」または「融点」が分かるものは「マクロゴール6000」及びマルトースの2種類のみとごく少数であって、実施例1?8及び比較例1?6についての記載に接した当業者が、「マクロゴール6000」、マルトース以外の「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であるポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを含有させることにより、ソリフェナシン又はその塩の経時的な分解が抑制された球形の粒子状医薬組成物が得られるとは、認識できない。

また、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を使用することにより、その化学構造とは関係なく、ソリフェナシン又はその塩の経時的な分解が抑制された球形の粒子状医薬組成物が得られることについての技術的説明等がまったく記載されておらず、「マクロゴール6000」、マルトース以外の「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であるポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを用いることで、本件発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できる根拠となる技術常識も見出せない。

なお、被請求人は、「本特許権者はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いた場合と比較して優れた安定性を示すことを確認しており、本件特許の審査段階において提出した意見書において具体的な実験データを提出している。……。さらに、ガラス転移点の低いことが安定性向上に関係するという仮説に基づいて、セルロース系結合剤を種々試験したところ、……、本発明者らの仮説が正しいことが実際に確認されている。本件特許発明によって優れた安定性向上効果が発現する作用機構については、……、動きやすい結合剤を用いた場合、非晶体として存在したソリフェナシンが結晶質体に変化しやすいのに対し、動きにくい結合剤を用いた場合、非晶質体として存在したソリフェナシンが結晶質体に変化しにくく、これが、粒子状医薬組成物の安定性に影響しているものと推測される。」(平成29年11月13日付け審判事件答弁書14頁12行?15頁10行)などと述べている。
しかし、本件特許出願の後に提出された実験結果や推測される作用機構についての説明は、本件特許出願時に明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件特許出願時の技術常識を示すものでもないから、当業者が出願時の技術常識に照らして認識できる範囲のものとして参酌することはできない。

また、被請求人は、本件発明1?10について、結合剤の種類が化学構造の面からも具体的に特定されており、いずれも、本件明細書の実施例で具体的に使用したものであるか、ガラス転移点が低く、いわゆる動きやすい高分子であるから、本件発明1?10に関するサポート要件違反の無効理由が存在しない旨を述べている(平成30年9月10日付け上申書8頁21行?11頁最終行)。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」のうち「マクロゴール6000」、マルトース以外のポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースにより、ソリフェナシン又はその塩の経時的な分解が抑制された球形の粒子状医薬組成物が得られることについての技術的説明等がまったく記載されていない上に、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」のうち「マクロゴール6000」、マルトース以外のポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを用いることで、その発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できるといえる技術常識も見出せない。

「マクロゴール6000」及びマルトースについては、本件明細書の発明の詳細な説明の段落0063の表3に融点が記載されており、ガラス転移点と融点の両方を有する物質の場合、一般的にはガラス転移点が融点よりも低いこと、をふまえると、「マクロゴール6000」及びマルトースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」結合剤であると当業者は認識する。
しかし、「マクロゴール6000」はポリエチレングリコールのうち特定のものであり、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ポリエチレングリコールがすべて「マクロゴール6000」と同様の化学的特性を有することが技術常識であるとは認められないから、本件明細書の発明の詳細な説明における「マクロゴール6000」についての記載に接した当業者が、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ポリエチレングリコールを用いることにより、「マクロゴール6000」を用いる場合と同様に、本件発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できると、認識できるとは認められない。
一方、マルトースは、化学構造の定まった二糖類であって、その融点は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0063の表3の記載によれば102℃、甲6号証695頁左欄12行の記載によれば102-103℃とされる。マルトースのガラス転移点自体は本件特許明細書に記載されていないものの、例えば、特開2011-229477号公報4頁45行?5頁2行(段落0022)に、示差走査熱量測定法により測定されたマルトースのガラス転移温度が92℃であると記載されていることにも示されるように、マルトースはガラス転移点を有する物質である。
ガラス転移点と融点の両方を有する物質の場合、一般的にはガラス転移点が融点よりも低いこと、をふまえると、マルトースは「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ものと認められるし、示差走査熱量測定法により測定されたマルトースのガラス転移温度が92℃であることとガラス転移点の測定方法の違いによる影響を考慮しても、マルトースは「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」ものといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明におけるマルトースについての記載に接した当業者は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である」マルトースを用いることにより、本件発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できると、認識できる。

以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者が、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であるポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを用いれば、本件発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できると、認識できるとは認められない。
したがって、本件発明1?2、4?10は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても当該発明の課題を解決できると認識できる範囲にないものを包含しており、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者が、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であるマルトースを用いれば、本件発明の課題「フィルムコーティングに適した球形で、かつ、含有されるソリフェナシン又はその塩の経時的な分解を抑制できる、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物を提供すること」が解決できると、認識できると認められる。
したがって、本件発明3は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても当該発明の課題を解決できると認識できる範囲にないものを包含しており、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとする請求人の主張は受け入れられず、本件発明3の特許に対して無効理由Bのうち(B.1)は理由がない。

(2)(B.2)について
甲9号証の記載内容は、本件特許出願時における技術常識を示すものではなく、本件発明1?10は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても当該発明の課題を解決できると認識できる範囲にないものを包含しているとする根拠にはなり得ない。

したがって、請求人による主張、すなわち、本件発明1?10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとする主張は受け入れられず、無効理由Bのうち(B.2)には理由がない。

(3)小括
以上(1)?(2)のとおり、無効理由Bのうち(B.2)には理由がなく、(B.1)には本件発明3の特許に対して理由がないが、本件発明1?2、4?10の特許に対して理由があり、本件発明1?2、4?10に係る特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

3 無効理由C(実施可能要件違反)
特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ,この規定にいう「実施」とは,物の発明においては,当該発明にかかる物の生産,使用等をいうものであるから,実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が当該発明に係る物を生産し,使用することができる程度のものでなければならないとされる。

本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明5は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を含有すること、及び「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」ことを発明特定事項としている。
一方、明細書の発明の詳細な説明に「ガラス転移点」の測定方法についての記載はない。
そして、甲18号証の54頁「ガラス転移温度」の定義の欄には「ガラス転移が行われる温度範囲のほぼ中間点。注-ガラス転移温度(Tg)は測定のため選んだ特定の特性とその試験方法及び試験条件によって著しく変化する。」と記載されていることから、「ガラス転移点」の測定結果には一般に、測定方法によって当業者にとって無視できない程度の差が生じることがあると認められる。
このことは、高分子ではなくシリケイトガラスについての刊行物ではあるものの、甲21号証48頁左欄1?6行の「DSC測定により求まるガラスの仮想温度(図3)とガラス転移温度(Tg_((DSC)).図2b)、線膨張測定により求めたガラス転移温度(Tg_((Dil)).図11)は定義が相互に異なるので値も異なる。またメルトの粘性流動の観点ではTgは粘性率が10^(12)pa・sになる温度(Tg_((12)))であると定義されている。……シリケイトガラスのTgについて次のことが言える。……(2)DSCまたはDTAとTMAによるTgは化学組成の違いにより±15℃以内の範囲で差が生ずることがある。」との記載とも整合する。

被請求人は、「ガラス転移点」の測定方法については、「ガラス転移点の主な測定方法としては、TMA法(熱機械分析法)、DSC法(示差走査熱量測定法)、DTA法(動的粘弾性分析法)が知られており、TMA法(熱機械分析法)とDSC法(示差走査熱量測定法)は、日本工業規格として採用されている(TMA法:JIS K7196、DSC法:JIS K7121)。したがって、当業者であれば、ガラス転移点に関する規格情報を踏まえて、本件特許発明に係る結合剤のガラス転移点を実際に測定することが可能である。」(平成29年11月13日付け審判事件答弁書9頁19?25行)などと述べて、複数の測定方法が知られていたことを認める。
一方で、被請求人は、医薬組成物に用いられる結合剤のガラス転移点の測定結果に対する測定方法の違いによる影響については、「医薬組成物に用いられる高分子化合物は、塗料などに用いられる高分子化合物と比較して、一般に不純物が少ないものであるから、測定方法によってガラス転移点が約50℃もバラつくとは考えられない。」(平成29年11月13日付け審判事件答弁書9頁9?12行)、「本件特許発明の明確性を判断するにあたっては、本件特許発明のような医薬組成物に用いられる結合剤について、そのガラス転移点が測定方法によって本当に約50℃もの幅でバラつくものであるかを論じる必要がある。……、そのようなデータを過度に一般化し、本件特許発明1,5に係る記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確と結論づけることはできない。」(平成30年4月6日付け回答書3頁19?24行)、「本件特許発明に係る「結合剤」は、「粒子状医薬組成物」に用いられるものである以上、医薬組成物で使用可能なものに限られる。……、このような特殊な例を根拠にして、「ガラス転移点は、測定対象とした物理量と測定機器、または、試料の履歴や測定原理の違いによって、測定温度が約50℃の幅に分散することが本件特許の出願日において技術常識であった」などと一般化することはできない。」(平成30年5月10日付け口頭審理陳述要領書5頁22行?6頁1行)、「本件特許発明に係る「結合剤」は、「粒子状医薬組成物」に用いられるものである以上、医薬組成物で使用可能なものに限られる。特に、訂正後の本件特許発明に関しては,物質名によって「結合剤」が化学構造の面からも特定されており、請求項1については「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質、……に結合剤が特定されている。そして医薬組成物の結合剤として用いられる「ヒドロキシエチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルセルロース」、「マルトース」、「ポリエチレングリコール」について、ガラス転移点や融点の値が、第三者の利益が不当に害されるほどに測定方法によって大きく変動してしまうとは到底考えられない。」(平成30年9月10日付け上申書7頁14?26行)などと述べるものの、ガラス転移点の測定結果が測定方法によっても第三者の利益が不当に害されるほどには大きくばらつかない具体例を示すものとして提出した乙8号証は、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移点についてのものであって、その結果から、ポリエチレンテレフタレートとは異なるポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースのガラス転移点や融点の値も測定方法によって大きく変動することはないといえる技術的説明を被請求人は何らおこなっていない。

しかも、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースについては、一般には高分子物質とされるものであるにもかかわらず、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明5においてはその分子量の定めがないところ、甲2号証(110頁左欄15?21行に「高分子についてみれば,……,重合度が100程度以下では鎖末端の影響によりガラス転移温度は重合度と共に低下する.側鎖など主鎖以外の運動の自由度をもつ高分子では,ガラス転移温度以下において,副転移が観測される.」と記載されていることから、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースは、分子量によってガラス転移温度が変化することが技術常識から明らかである。

してみると、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」を含有すること、及び「結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である」ことを発明特定事項としている本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明5を実施しようとする当業者は、結合剤としてポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを用いる場合に、その「ガラス転移点」が137℃未満であるか否かを確かめるために、少なくとも、TMA法(熱機械分析法)、DSC法(示差走査熱量測定法)及びDTA法(動的粘弾性分析法)により様々な測定条件の下で測定することが必要となる上に、それぞれの測定法による結合剤の「ガラス転移点」の測定結果が、いずれかで137℃未満であり、いずれかで137℃以上である場合には、その結合剤が「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に該当するか否か定まらないという状況に陥るから、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、当業者は本件発明1、5に係る粒子状医薬組成物を生産し、使用する手段を理解できない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1、5を、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

4 無効理由D(新規事項追加)
平成22年1月25日付け手続補正書(甲12号証)による手続補正により、本件発明1?10において「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との事項が加えられた。
しかし、前記「第3 本件発明」に記したとおり、平成30年9月10日付け訂正請求書による訂正が認められたので、本件発明1?10における「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」との事項は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との事項に訂正された。
国際出願日における、本件特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)又は請求の範囲のうち、明細書の段落[0018]には「また、本発明に用いられるソリフェナシン又はその塩の安定化作用又は非晶質体維持抑制作用を有する結合剤としては、……具体的には、Tgもしくはmpの範囲が174℃未満のものであり、……更に好ましくは0℃以上137℃未満である。最も好ましくは10℃以上137℃未満である。」との記載があることから、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」との発明特定事項は、国際出願日における、本件特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)又は請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項ではない。
よって、平成22年1月25日付け手続補正書(甲12号証)による手続補正が、国際出願日における、本件特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)又は請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであったとしても、その後の平成30年9月10日付け訂正請求書による訂正により当該新たな技術的事項の導入は解消しており、無効理由Dには理由がない。

5 無効理由E(新規性欠如)
(1)(E.1)について
請求人は、記載事項(甲14-1)?記載事項(甲14-2)及び記載事項(甲14-4)から、甲14号証にはソリフェナシンのコハク酸塩を含有する粒子状医薬組成物が記載されるとするとともに、記載事項(甲14-5)?記載事項(甲14-6)から、甲14号証には結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用することが記載されているとした上で、甲14号証に記載された発明は「ソリフェナシンのコハク酸塩と結合剤を含有する造粒物(粒子状医薬組成物)の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用する発明」であると主張している。
しかし、記載事項(甲14-2)には口腔内崩壊製剤の製造過程において造粒を行う製造法が記載され、記載事項(甲14-3)には口腔内崩壊製剤の形状は特に限定されないが円板状などの形状が好ましいことが記載され、記載事項(甲14-5)?記載事項(甲14-6)には用いることが好ましい結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースが挙げられているものの、それら記載事項はそれぞれ個別に記載されたものであって、関連づけて記載されたものとはいえず、甲14号証には、ソリフェナシンのコハク酸塩にヒドロキシプロピルセルロースを組み合わせて医薬組成物に含有させることは記載されていないから、甲14号証に記載された発明を「ソリフェナシンのコハク酸塩と結合剤を含有する造粒物(粒子状医薬組成物)の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用する発明」であるとすることはできない。
そして、記載事項(甲14-1)から、甲14号証には「排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物を含有する口腔内崩壊製剤であって、その薬物がナフトピジル、YM-905、又はKMD-3213のいずれかである口腔内崩壊製剤。」の発明が記載されていると認められるところ、記載事項(甲14-4)に「YM-905」とはソリフェナシンのコハク酸塩であることが示されているから、甲14号証に記載された発明は「排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物を含有する口腔内崩壊製剤であって、その薬物がナフトピジル、ソリフェナシンのコハク酸塩、又はKMD-3213のいずれかである口腔内崩壊製剤」(以下、「甲14発明」という。)と認められる。

ソルフェナシンのコハク酸塩は本件発明1にいう「ソルフェナシン又はその塩」に相当するから、本件発明1は、甲14発明とは、
一致点(14-1):ソリフェナシン又はその塩を含有する医薬組成物であること
で一致するものの、
相違点(14-1):本件発明1は、ソリフェナシン又はその塩、及び「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとされているのに対し、甲14発明は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとはされていないこと、
相違点(14-2):本件発明1は「安定な」ものとされるのに対し、甲14発明は「安定な」ものとはされていないこと、及び
相違点(14-3):本件発明1は粒子状であるのに対し、甲14発明は粒子状とはされていないこと
で、相違する。

したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるとする請求人の主張は受け入れられず、無効理由Eのうち(E.1)は理由がない。

(2)(E.2)について
請求人は、記載事項(甲15-1)?記載事項(甲15-4)から、甲15号証に記載された発明は「ソリフェナシンのコハク酸塩と、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含有する、錠剤等の粒子状医薬組成物である経口固形製剤」であると主張している。
しかし、記載事項(甲15-1)には特に好ましい有効成分としてソリフェナシンのコハク酸塩が記載され、記載事項(甲15-2)には最も好ましい製剤は経口固形製剤であることが記載され、記載事項(甲15-3)には経口固形製剤として、散剤、細粒剤、顆粒剤などが用いられることが記載され、記載事項(甲15-4)には含有していてもよい添加剤の一例として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような結合剤が記載されてはいるものの、記載事項(甲15-1)は、記載事項(甲15-2)?記載事項(甲15-4)とは別に記載されたものであって、関連づけて記載されたものとはいえず、甲15号証には、有効成分としてソリフェナシンのコハク酸塩を用いるとともに、記載事項(甲15-2)及び記載事項(甲15-3)の製剤の例示から粒子状のものを選択し、併せて記載事項(甲15-4)の含有してもよい添加剤の例示から、結合剤のうちのヒドロキシプロピルセルロースを選択することは記載されていないから、甲15号証に記載された発明を「ソリフェナシンのコハク酸塩と、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含有する、錠剤等の粒子状医薬組成物である経口固形製剤」であるとすることはできない。

そして、記載事項(甲15-6)に、甲15号証に記載された発明がカプサイシン感受性知覚神経抑制剤、具体的には間質性膀胱炎、下部尿路における知覚過敏症及び/又は非細菌性前立腺炎の治療剤に係るものであることが記載されていること、並びに、記載事項(甲15-7)及び記載事項(甲15-8)から、甲15号証には「ソリフェナシンのコハク酸塩を有効成分として含有する、カプサイシン感受性知覚神経抑制用、間質性膀胱炎治療用、下部尿路における知覚過敏症治療用及び/又は非細菌性前立腺炎治療用の経口投与医薬組成物」の発明(以下、「甲15発明」という。)が記載されていると認められる。

ソルフェナシンのコハク酸塩は本件発明1にいう「ソルフェナシン又はその塩」に相当するから、本件発明1は、甲15発明とは、
一致点(15-1):ソリフェナシン又はその塩を含有する医薬組成物であること
で一致するものの、
相違点(15-1):本件発明1は、ソリフェナシン又はその塩、及び「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとされているのに対し、甲15発明は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとはされていないこと、
相違点(15-2):本件発明1は「安定な」ものとされるのに対し、甲15発明は「安定な」ものとはされていないこと、及び
相違点(15-3):本件発明1は粒子状であるのに対し、甲15発明は粒子状とはされていないこと
で、相違する。

したがって、本件発明1は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲15号証に記載された発明であるとする請求人の主張は受け入れられず、無効理由Eのうち(E.2)は理由がない。

(3)(E.3)について
本件発明2?4は、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を、さらに特定の物質に限定したものである。
上記「(1)(E.1)について」に記したとおり、本件発明1が甲14発明とは相違する以上、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を、さらに特定の物質に限定した本件発明2?4も甲14発明とは相違する。
上記「(2)(E.2)について」に記したとおり、本件発明1が甲15発明とは相違する以上、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を、さらに特定の物質に限定した本件発明2?4も甲15発明とは相違する。

したがって、本件発明2?4は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証、甲15号証に記載された発明であるとする請求人の主張は受け入れられず、無効理由Eのうち(E.3)は理由がない。

(4)(E.4)について
本件発明10は、本件発明1?9のいずれかの医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠であって、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものである。
上記「(1)(E.1)について」に記したとおり、本件発明1が甲14発明とは相違する以上、本件発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とする本件発明10もまた甲14発明とは相違する。

したがって、本件発明10は、本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である甲14号証に記載された発明であるとする請求人の主張は受け入れられず、無効理由Eのうち(E.4)は理由がない。

(5)小括
以上(1)?(4)のとおり、無効理由Eの(E.1)?(E.4)はいずれも理由がない。

6 無効理由F(進歩性欠如)について
(1)(F.1)について
ア 本件発明1について
前記「5(1)(E.1)について」に記したとおり、本件発明1は、甲14発明「排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物を含有する口腔内崩壊製剤であって、その薬物がナフトピジル、ソリフェナシンのコハク酸塩、又はKMD-3213のいずれかである口腔内崩壊製剤」とは、
一致点(14-1):ソリフェナシン又はその塩を含有する医薬組成物であること
で一致し、
相違点(14-1):本件発明1は、ソリフェナシン又はその塩、及び「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとされているのに対し、甲14発明は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとはされていないこと、
相違点(14-2):本件発明1は「安定な」ものとされるのに対し、甲14発明は「安定な」ものとはされていないこと、及び
相違点(14-3):本件発明1は粒子状であるのに対し、甲14発明は粒子状とはされていないこと
で、相違する。

(ア)相違点(14-1)及び相違点(14-2)について
前記「1(4)(A.4)について」に記したとおり、本件発明1にいう「安定な」とは、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を配合することにより、配合していない場合に比較して、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解が抑制されているものであると解釈される。

甲14号証には、甲14発明の製造に際して用いることの好ましい結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースが記載されている(記載事項(甲14-5)、記載事項(甲14-6))ものの、甲14号証には、当該ヒドロキシプロピルセルロースのガラス転移点、融点は記載されておらず、当該ヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当することを示す記載はない。また、甲14号証には、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いて配合することにより、配合しない場合に比較して、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解が抑制されることを示す記載はない。

請求人の提出した証拠方法のうち、甲6号証536頁にはヒドロキシプロピルセルロースの項に「融点:軟化点,130℃ 炭化,260-275℃」と記載されており、これは請求人が審判請求書37頁下から9?7行において述べるとおり、ヒドロキシプロピルセルロースの軟化点が130℃であることを示すと認められるものの、軟化点についてのこの記載が、甲14号証に、甲14発明の製造に際して用いることの好ましい結合剤として記載されたヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当することを示す根拠になるとは認められない。また、請求人の提出した他の証拠方法からも、甲14号証に、甲14発明の製造に際して用いることの好ましい結合剤として記載されたヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当することを示す根拠を見出すことはできない。
また、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、口腔内崩壊製剤に用いる結合剤は一般に「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であることが技術常識であるといえる根拠も見出すことはできない。
したがって、甲14号証に、甲14発明の製造に際して用いることの好ましい結合剤として記載されたヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当するとは認められない。

また、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、甲14発明に対して「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有させることにより、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制できることを示す根拠を見出すことはできない。
さらに、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、口腔内崩壊性剤に用いる結合剤が「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」であれば、有効成分の経時的分解を抑制できることが技術常識であるといえる根拠も見出すことはできない。

したがって、相違点(14-1)及び相違点(14-2)に関して、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、甲14発明に対して「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有させるとともに「安定な」ものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(イ)相違点(14-3)について
請求人は、甲14号証(記載事項(甲14-2))に記載される、口腔内崩壊錠の製造過程において造粒を行う製造法において、造粒されたものは粒子状医薬組成物であると主張するが(審判請求書57頁13行?58頁4行)、口腔内崩壊錠の製造過程で造粒されたものが粒子状であるとしても、それは当業者には、口腔内崩壊錠を製造するための材料として認識されるものであって、粒子状医薬組成物として認識されるとは認められないので、請求人のこの主張は受け入れられない。
そして、甲14号証には「本発明の口腔内崩壊製剤の形状は特に限定されないが、円盤状などの放射状の形状であることが好ましい。典型的には錠剤の形状を挙げることができる。」(記載事項(甲14-3))との記載があり、錠剤の形状にすることは記載されているものの、粒子状にすることは記載されていない。

そして、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、当業者が、甲14発明の口腔内崩壊製剤を粒子状医薬組成物に変更する動機づけとなる根拠は見出せない。
また、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、一般に、口腔内崩壊製剤を粒子状医薬組成物に変更することは技術常識であるといえる根拠を見出すことはできない。

したがって、相違点(14-3)に関して、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、甲14発明を粒子状医薬組成物に変更することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)以上のとおり、相違点(14-1)及び相違点(14-2)、相違点(14-3)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえないので、本件発明1について、無効理由Fのうち(F.1)は理由がない。

イ 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を、特定の物質に限定したものである。
上記アに記したとおり、本件発明1と甲14発明との相違点である相違点(14-1)及び相違点(14-2)、相違点(14-3)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、本件発明2?4と甲4発明との相違点も、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌して、当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明2?4について、無効理由Fのうち(F.1)は理由がない。

ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1?9のいずれかの医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠であって、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものである。
上記アに記したとおり、本件発明1が甲14発明との相違点である相違点(14-1)及び相違点(14-2)、相違点(14-3)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、本件発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とする本件発明10と甲14発明との相違点も、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌して、当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明10について、無効理由Fのうち(F.1)は理由がない。

(2)(F.2)について
ア 本件発明1について
甲15号証には、実施例1として、ソリフェナシンのコハク酸塩と乳糖を充填したカプセル剤が記載されている(記載事項(甲15-5))。
請求人は、カプセル剤は本件発明1の発明特定事項「粒子状医薬組成物」に相当すると主張するが(審判請求書68頁19?20行)、甲15号証において、「カプセル剤」は、「散剤」、「細粒剤」及び「顆粒剤」とは別個に記載されており(記載事項(甲15-3))、しかも「カプセル剤」が「粒子状医薬組成物」の概念に包含されるものであることを示す記載はない。
しかも、当業界における用語として、「カプセル剤」が「粒子状医薬組成物」に相当するものとされることが技術常識であるといえる根拠を請求人は示しておらず、請求人のこの主張は受け入れられない。

したがって、記載事項(甲15-5)からは、甲15号証には「ソリフェナシンのコハク酸塩1.0mg、10.0mg又は100.0mgと、乳糖を含有する、ソリフェナシンのコハク酸塩と乳糖の合計量が200.0mgであるカプセル錠」の発明(以下、「甲15’発明」という。)が記載されていると認められる。

ソリフェナシンのコハク酸塩は医薬成分であることが技術常識であることを参酌すると、本件発明1は、甲15’発明「ソリフェナシンのコハク酸塩1.0mg、10.0mg又は100.0mgと、乳糖を含有する、ソリフェナシンのコハク酸塩と乳糖の合計量が200.0mgであるカプセル錠」とは、
一致点(15’-1):ソリフェナシン又はその塩を含有する医薬組成物であること
で一致し、
相違点(15’-1):本件発明1は、ソリフェナシン又はその塩、及び「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとされているのに対し、甲15’発明は、「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有するとはされていないこと、
相違点(15’-2):本件発明1は「安定な」ものとされるのに対し、甲15’発明は「安定な」ものとはされていないこと、及び
相違点(15’-3):本件発明1は粒子状であるのに対し、甲15’発明はカプセル錠であること
で、相違する。

(ア)相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)について
前記「1(4)(A.4)について」に記したとおり、本件発明1にいう「安定な」とは、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を配合することにより、配合していない場合に比較して、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解が抑制されているものであると解釈される。

甲15号証には、甲15’発明に含有してもよい添加剤の一例に、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースが挙げられている(記載事項甲15-4)ものの、甲15号証には、当該ヒドロキシプロピルセルロースのガラス転移点、融点は記載されておらず、当該ヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が140℃以下である結合剤」に相当することを示す記載はない。また、甲15号証には、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースを含有させることにより、含有させない場合に比較して、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解が抑制されることを示す記載はない。

請求人の提出した証拠方法のうち、甲6号証536頁にはヒドロキシプロピルセルロースの項に「融点:軟化点,130℃ 炭化,260-275℃」と記載されており、これは請求人が審判請求書37頁下から9?7行において述べるとおり、ヒドロキシプロピルセルロースの軟化点が130℃であることを示すと認められるものの、軟化点についてのこの記載が、甲15号証に、甲15’発明に含有してもよい添加剤の一例に挙げられた、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当することを示す根拠になるとは認められない。また、請求人の提出した他の証拠方法からも、甲15号証に、甲15’発明に含有してもよい添加剤の一例に挙げられた、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当することを示す根拠を見出すことはできない。
また、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、カプセル剤に用いる結合剤は一般に「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であることが技術常識であるといえる根拠も見出すことはできない。
したがって、甲15号証に、甲15’発明に含有してもよい添加剤の一例に挙げられた、結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースが「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」に相当するとは認められない。

また、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、甲15’発明に対して「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有させることにより、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制できることを示す根拠を見出すことはできない。
さらに、請求人の提出した証拠方法のいずれからも、カプセル剤に用いる結合剤が「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」であれば、有効成分の経時的分解を抑制できることが技術常識であるといえる根拠も見出すことはできない。

したがって、相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)に関して、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、甲14発明に対して「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」をともに含有させるとともに「安定な」ものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(イ)相違点(15’-3)について
甲15号証には「経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。」(記載事項(15-3))との記載がある。甲15’発明の「カプセル錠」はこの「カプセル剤」に対応するものと認められるところ、記載事項(15-3)には「経口固形製剤」として、「錠剤」又は「カプセル剤」の他に、「散剤」、「細粒剤」又は「顆粒剤」などにすることが記載されていることから、特段の事情のない限り、「散剤」、「細粒剤」又は「顆粒剤」など「粒子状医薬組成物」に相当するものに形状を変更することは、当業者が容易に想到し得たものと認められ、「カプセル錠」を「粒子状」に変更することよって当業者の予想し得ない効果が得られているとは認められない。

(ウ)以上のとおり、相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)、相違点(15’-3)のうち、相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえないので、本件発明1について、無効理由Fのうち(F.2)は理由がない。

イ 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1における「ガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤」であって「ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質」を、特定の物質に限定したものである。
上記アに記したとおり、本件発明1と甲15’発明との相違点である相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)、相違点(15’-3)のうち、相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、本件発明2?4と甲4発明との相違点も、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌して、当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明2?4について、無効理由Fのうち(F.1)は理由がない。

ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1?9のいずれかの医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠であって、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものである。
上記アに記したとおり、本件発明1が甲15’発明との相違点である相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)、相違点(15’-3)のうち、相違点(15’-1)及び相違点(15’-2)は、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、本件発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とする本件発明10と甲15’発明との相違点も、請求人の提出した証拠方法の記載及び技術常識を参酌して、当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明10について、無効理由Fのうち(F.2)は理由がない。

(3)小括
以上(1)?(2)のとおり、無効理由Fの(F.1)?(F.2)はいずれも理由がない。

第6 結び
本件発明1、5についての特許は、請求人の主張する無効理由A、無効理由B、無効理由Cにより、無効にすべきものであり、本件発明2、4、6?10についての特許は、請求人の主張する無効理由A、無効理由Bにより、無効にすべきものである。
本件発明3についての特許は、請求人の主張する無効理由A?Fによっては、無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その10分の1を請求人及び参加人の負担とし、10分の9を被請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリフェナシン又はその塩、及びガラス転移点あるいは融点が137℃未満である結合剤を含有する、安定な粒子状医薬組成物であって、
結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、上記医薬組成物。
【請求項2】
結合剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
結合剤が、マルトースである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
結合剤が、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ソリフェナシン又はその塩と前記結合剤とを含有する薬物溶液を粒子化することによって得られる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記粒子化させる手法が、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、高速攪拌造粒法、流動層造粒法、及び転動造粒法からなる群より選択された1種または2種以上の手法である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記粒子化が、前記薬物溶液を核粒子に噴霧コーティングすることによって行なわれる、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記結晶化促進処理が、加湿処理、マイクロ波照射処理、超音波照射処理、低周波照射処理、及び熱電子照射処理からなる群より選択された1種または2種以上の処理である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-01-28 
結審通知日 2019-01-31 
審決日 2019-02-13 
出願番号 特願2006-550756(P2006-550756)
審決分類 P 1 113・ 561- ZDA (A61K)
P 1 113・ 113- ZDA (A61K)
P 1 113・ 854- ZDA (A61K)
P 1 113・ 537- ZDA (A61K)
P 1 113・ 121- ZDA (A61K)
P 1 113・ 536- ZDA (A61K)
P 1 113・ 851- ZDA (A61K)
P 1 113・ 855- ZDA (A61K)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 松浦 安紀子榎本 佳予子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 穴吹 智子
村上 騎見高
登録日 2010-12-03 
登録番号 特許第4636445号(P4636445)
発明の名称 ソリフェナシンまたはその塩の安定な粒子状医薬組成物  
代理人 末吉 剛  
代理人 中村 充利  
代理人 向野 颯馬  
代理人 吉岡 亜紀子  
代理人 福永 聡  
代理人 山本 秀策  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中村 充利  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 赤岡 迪夫  
代理人 赤岡 和夫  
代理人 小野 新次郎  
代理人 難波 早登至  
代理人 石川 大輔  
代理人 末吉 剛  
代理人 山本 健策  
代理人 廣瀬 しのぶ  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ