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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16F
管理番号 1351728
審判番号 不服2018-6624  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-15 
確定日 2019-06-04 
事件の表示 特願2014- 21159「ショックアブソーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-148273、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月6日の出願であって、平成29年7月27日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年2月22日付け(発送日:同年2月27日)で拒絶査定され、これに対し、同年5月15日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月22日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-3
・引用文献等 1-6
<引用文献等一覧>
1.実願昭63-61276号(実開平1-165343号)のマイクロフィルム
2.特開2002-349621号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-3546号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2013-242011号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-175043号公報(周知技術を示す文献)
6.実願昭61-91277号(実開昭62-202548号)のマイクロフィルム(新たに追加した周知技術)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年10月3日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ショックアブソーバであって、
一端からピストンロッドが延出したシリンダと、
前記シリンダの外周に固定されたカラーと、
前記カラーに圧入されたスプリングシートと、
前記カラーに圧入され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケットと、
を備えることを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のショックアブソーバであって、
前記カラーが固定された前記シリンダ、前記スプリングシート、および前記ブラケットを個別に塗装した後に、前記スプリングシートおよび前記ブラケットが、前記カラーに圧入される、
ことを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項3】
請求項1に記載のショックアブソーバであって、
前記カラーは、前記スプリングシートの軸方向の位置を規定する第1の段部と、前記ブラケットの軸方向の位置を規定する第2の段部と、を有する、
ことを特徴とするショックアブソーバ。」


第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1及び引用発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
(1)「第1図は本考案にかかる緩衝器の要部断面図である。
緩衝器はシリンダ1内に上方からピストンロッド2を挿入し、このピストンリッド2(当審注:「ピストンロッド2」の誤記。)の先端部にはシリンダ1内に摺接する図示しないピストン等を装着し、またシリンダ1の上端部外周面にはロアスプリングシート3を装着し、(以下省略)」(第4ページ第11?17行)

(2)「第2図は本考案にかかる油圧緩衝器の別実施例を示す要部断面図、第3図は同緩衝器の更なる他の実施例を示す要部段面図である。
第2図に示す実施例は、シリンダ1の上端部外周面に係止部11を形成して、この係止部11にダストカバー8の下端部を装着し、また第2図(当審注:「第3図」の誤記。)に示す実施例は、シリンダ1の上端部に装着したシリンダキャップ12の下端部に係止部13を形成して、この係止部13にダストカバー8の下端部を装着している。」(第5ページ第15行?第6ページ第4行

(3)第1図ないし第3図からは、ダストカバー8がピストンロッド2を保護する構造が見て取れる。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「緩衝器であって
上方からピストンロッド2が挿入されたシリンダ1と、
前記シリンダ1の上端部外周面にロアスプリングシート3を装着し、
前記シリンダ1の上端部に装着され、前記ピストンロッド2を保護するダストカバー8の下端部を装着しているシリンダキャップ12と、
を備える緩衝器。」

2 引用文献2
原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0055】(第3実施形態)(図6、図7)
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、図6、図7に示す如く、スプリングシート17と別体のカラー120を、外筒12の外周へのスプリングシート17の取付部121とし、カラー120のための溶接部122をピストンロッド15の伸び切り時のリバウンドシート25とピストン35の間の範囲に対応する位置に設けたことにある。(中略)カラー120の長さや形状(シート受部124の位置)は容易に、任意に設定できるから、カラー120へのスプリングシート17の取付位置を簡易に調整でき、スプリングシート17の形状も任意に設定できる。」

(2)「【0057】尚、スプリングシート17の固定部123をリング状に形成して、カラー120に圧入固定しても良い。」

3 引用文献3
原査定の拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0015】
このようにして外筒3に対するスリーブ11の嵌着が終了したら、外筒3をしごき装置20内から取出し、その後、図3に示すようにこのスリーブ11を介してスプリングシート10を外筒3に嵌合固定する。外筒3に対するスプリングシート10の嵌合固定に際しては、先ず、図3の左半分に示すように、スプリングシート10の円筒部15を、適宜の圧入治具を用いてスリーブ11の縮径部12に圧入し、続いて、図3の右半分に示すように、スプリングシート10の段部16をスリーブ11の拡径部13に係合させてその軸方向移動を規制し、これにて外筒3に対するスプリングシート10の嵌合固定は終了する。」

4 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項4】
上記延長カバーは、上記アウターシェルおよびダストカバーの外表面の塗装後に当該ダストカバーの外周に取り付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の緩衝器。」

(2)「【0025】
また、延長カバー4の取付前に吹付け塗装をすることで、アウターシェル1の外表面に未塗装部分を生じさせずに済み、アウターシェル1の錆を防止でき、且つ、延長カバー4を取り付ける前にダストカバー3とアウターシェル1を塗装することができるから、ダストカバー3の装着前に緩衝器本体Dを最収縮状態に維持したり、ピストンロッド2の外周をマスキングしたりする等してアウターシェル1を塗装するような面倒な塗装方法を採用する必要もないので、塗装加工も非常に簡単である。」

5 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献5には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項5】
前記塗装工程の後に、前記鍔部に前記ロッドを覆う筒状のダストカバーを取付けるダストカバー取付工程を有することを特徴とする請求項3または4に記載のシリンダ装置の製造方法。」

6 引用文献6の記載事項
原査定に引用された引用文献6には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「上述したシリンダ2の一端部(上端部)外周には、第2図にも示すように、係止リング16が配設されている。この筒体16は、筒状体を形成することにより、中央部に形成された小径の固定部16aと、固定部16aから上方に向けてテーパ状に拡径した後シリンダ2外周とほぼ平行に延びるオイル溜湯筒部16bと、固定部16aから下方に向けてテーパ状に拡径した後シリンダ2外周とほぼ平行に延びる環状係止突部16cと、を有する。そして、固定部16aがシリンダ2の外壁に溶接あるいは圧入により固定されて、シリンダ2の上端部外壁とオイル溜形成筒部16bとの間の空間がオイル溜17とされている。」(第7ページ第9行?第8ページ第1行)

(2)「このダストカバー18の上端部には上壁19が形成され、ダストカバー18の下部は、下方に向かうに従って肉厚が大きくなる厚肉筒部20とされている。しかも、厚肉筒部20の下端部内周面には上下に間隔をおいて第1、第2環状突条21、22が形成され、この第1、第2環状突部21、22間が環状係止溝23とされている。そして、上壁19は筒状体10の上壁と第2段部8及びバウンドバンパーラバー9の上端との間に挟持固定され、環状係止突部16cには環状係止溝23が嵌着されている。」(第8ページ第5?16行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「緩衝器」は本願発明1の「ショックアブソーバ」に相当し、以下同様に、「ピストンロッド2」は「ピストンロッド」に、「シリンダ1」は「シリンダ」に、「ロアスプリングシート3」は「スプリングシート」に、「ダストカバー8」は「ダストブーツ」に、「シリンダキャップ12」は「ブラケット」に、それぞれ相当する。
そして引用発明の「上方からピストンロッド2が挿入された」ことは、本願発明1の「一端からピストンロッドが延出した」ことに相当し、同様に「ダストカバー8の下端部を装着している」ことは「ダストブーツの一端を保持する」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「ショックアブソーバであって、
一端からピストンロッドが延出したシリンダと、
スプリングシートと、
前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケットと、を備えるショックアブソーバ。」
の点で一致し、次の相違点で相違する。

[相違点]
本願発明1は「前記シリンダの外周に固定されたカラーと、
前記カラーに圧入されたスプリングシートと、
前記カラーに圧入され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケットと、を備える」のに対し、引用発明は、本願発明1の「カラー」に相当する構成を有しない点で相違する。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献2及び3の記載事項から、シリンダの外周に固定されたカラーと、前記カラーに圧入されたスプリングシートとをショックアブソーバに備えることは周知技術と認められる。他方、それら引用文献2及び3に、ダストブーツを保持するブラケットを前記カラーに圧入する点は記載されていない。
また、引用文献6には、シリンダ2の外壁に、係止リング16(本願発明1の「ブラケット」に相当)を圧入することは記載されているが、シリンダ2の外壁と係止リング16との間にカラーを介在させることについては記載されていない。
さらに、引用文献4及び5に、ダストブーツを保持するブラケットは記載されていない。
そうすると、引用発明に上記周知技術及び引用文献2?6に記載された事項を組み合わせても、「カラーに圧入され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケット」の構成には至らない。

また、引用発明において、シリンダ1の外周に固定されたカラーを設けるとともに、「ピストンロッド2を保護するダストカバー8の下端部を装着しているシリンダキャップ12」をかかるカラーに圧入する動機付けはない。

そして、本願発明1は、「カラーに圧入され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケット」の構成を有することで、ブラケットが「ダストブーツを保持する位置」を、スプリングシートのスプリング座面の位置と併せて、あるいはそれとは別に、変更し、自由に設定できる(明細書段落【0005】、【0027】?【0029】参照。)という作用効果を奏すると認められる。
したがって、本願発明1は、引用発明、上記周知技術及び引用文献4?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、上記周知技術及び引用文献2?6に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
(なお、請求項2に「個別に塗装した後に」「カラーに圧入される」との記載があるが、ショックアブソーバの構造を表す記載として不明確性は認められない。)
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2014-21159(P2014-21159)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 禎恒  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 ショックアブソーバ  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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