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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1351871
審判番号 不服2018-8481  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-20 
確定日 2019-06-11 
事件の表示 特願2015-215011号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年5月18日出願公開、特開2017-80326号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年10月30日の出願であって、平成29年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月13日付け(発送日:同年3月20日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成31年2月6日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年3月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、同引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2012-200575号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、次の引用文献1?2及び周知の技術事項(次の引用文献3?5)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-200575号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2015-77166号公報(当審において新たに引用した文献 )
3.特開2003-340038号公報(当審において新たに引用した文 献)
4.特開2014-87492号公報(当審において新たに引用した文献 )
5.特開2014-236814号公報(当審において新たに引用した文 献)

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年4月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ、本願発明は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 変動表示に対応する所定表示を表示可能な所定表示手段と、
C 前記所定表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段とを備え、
D 前記所定表示の表示態様は、前記有利状態に制御される期待度を示唆する特別態様を含み、
E 前記特定演出として、前記所定表示の表示態様の変化および前記有利状態に制御される期待度を示唆表示により示唆するとともに、演出の実行期間に関する特定表示を表示し、
前記特定表示が特定態様となったことに基づいて、前記所定表示の表示態様を前記示唆表示により示唆された前記有利状態に制御される期待度に基づく前記特別態様に変化させる演出を実行可能であり、
F 前記演出実行手段は、
F1 前記有利状態に制御される期待度の高い特別予告演出を実行可能であり、
F2 前記特別予告演出の実行までに前記特定演出を実行する場合と、前記特別予告演出の実行以後に前記特定演出を実行する場合とで、前記特定表示を表示する期間を異ならせることが可能であり、
F3 前記特定表示が表示されてから当該特定表示が前記特定態様となるまでの間に、前記特定表示の演出態様を変化させることが可能であり、
G 前記特定表示で表示する期間に応じて、前記有利状態に制御される割合が異なる、遊技機。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成31年2月6日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射手段によって発射された遊技球が流下する遊技領域と、
前記遊技領域に設けられた始動領域と、
前記始動領域への遊技球の進入を条件として、遊技者に付与する遊技利益を決定するための遊技利益決定用乱数、および、前記遊技者に付与される遊技利益を報知する変動演出の態様を決定するための変動演出用乱数を取得するとともに、これら取得した乱数を保留として記憶部に記憶する保留記憶手段と、
始動条件の成立により、前記保留記憶手段によって記憶部に記憶された遊技利益決定用乱数を読み出して前記遊技利益を決定する遊技利益決定手段と、
前記遊技利益決定手段によって前記遊技利益が決定されたとき、当該遊技利益決定手段の決定結果、および、当該遊技利益決定手段の決定の際に読み出された遊技利益決定用乱数とともに記憶部に記憶された変動演出用乱数に基づいて、前記変動演出の態様を決定する変動演出決定手段と、
前記変動演出決定手段の決定にしたがって前記変動演出を実行することにより、遊技者に付与される遊技利益を報知する変動演出実行手段と、
前記遊技利益決定手段によって所定の遊技利益を付与する決定結果が導出されるとともに、前記変動演出実行手段によって前記遊技利益が付与されることの報知がなされた場合に、当該遊技利益を付与する遊技利益付与手段と、
前記記憶部に保留が記憶されてから、当該保留に基づいて前記変動演出決定手段が変動演出の態様を決定するまでの間に、少なくとも当該保留として記憶された遊技利益決定用乱数および前記変動演出用乱数のいずれか一方または双方に基づいて、前記遊技利益および変動演出の態様の少なくともいずれかに係る事前判定情報を導出する事前判定手段と、
前記記憶部に記憶された保留の全部もしくは一部を対象として実行される演出であって、当該対象となる対象保留の事前判定情報に基づいて実行態様が決定される保留示唆演出の実行可否を判定する保留示唆演出実行判定手段と、
前記保留示唆演出実行判定手段によって前記保留示唆演出を実行する判定結果が導出された場合に、当該保留示唆演出の対象保留における変動演出のうち少なくとも最後の変動演出が実行されるまでの時間よりも短い時間を、前記保留示唆演出の開始時間として設定する開始時間設定手段と、
前記保留示唆演出を実行する判定結果が導出されてから、前記開始時間設定手段によって設定された開始時間が経過するまでの時間を計時可能な計時手段と、
前記開始時間設定手段によって設定された開始時間を前記計時手段が計時した場合に、前記保留示唆演出を開始する保留示唆演出実行手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域に設けられた始動領域に遊技球が進入したことを条件として、遊技者に遊技利益が付与される遊技機に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の遊技機によれば、保留示唆演出が実行された場合には遊技者に期待感が付与されるが、保留示唆演出が行われなかった場合には、始動口に遊技球が入球して保留が記憶された時点で、当該保留についての期待感がもてなくなってしまう。その結果、遊技進行中の多くの時間において演出効果が低下してしまい、遊技の興趣が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、保留示唆演出によって高い演出効果をもたらすことが可能な遊技機の提供を目的とする。」

ウ 「【0043】
副制御基板200は、主に遊技中や待機中等の各演出を制御する。この副制御基板200は、サブCPU200a、サブROM200b、サブRAM200cを備えており、主制御基板100に対して、当該主制御基板100から副制御基板200への一方向に通信可能に接続されている。サブCPU200aは、主制御基板100から送信されたコマンドやタイマからの入力信号等に基づいて、サブROM200bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、演出を実行するためのコマンドを、画像制御基板210または電飾制御基板220に送信する。このとき、サブRAM200cは、サブCPU200aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。」

エ 「【0232】
上記のように、大当たりの抽選結果は、さまざまな変動演出によって遊技者に報知されることとなるが、本実施形態においては、上記の変動演出に加えて保留示唆演出を実行することにより、記憶部に記憶された保留についての期待感を遊技者に付与することとしている。以下では、第1保留についてのみ保留示唆演出が実行されることとし、保留示唆演出が実行される場合の実行態様について詳細に説明する。
【0233】
図34は、保留示唆演出の一例を説明する図である。図示のように、演出表示部50aの下部には、第1保留数(X1)を示す保留表示領域が設けられており、この保留表示領域に、現在留保されている保留数と同数の保留表示画像45を表示することで、第1保留数(X1)を遊技者に報知することとしている。
・・・
【0238】
すると、図34(b)に示すように、保留表示画像45dが保留表示領域内に表示され、第1保留数(X1)が「4」になったことが遊技者に報知されるが、このとき、同時に、保留表示画像45a、45b、45c、45dの表示態様が「爆弾」に変化する。この「爆弾」の保留表示態様は、保留示唆演出を実行する決定がなされた場合に表示される前兆保留表示態様であり、これから保留示唆演出が行われることを示すものである。
【0239】
本実施形態においては、保留示唆演出を実行する決定がなされた場合に、当該決定がなされた時点で留保されている全ての保留が、保留示唆演出を実行する対象保留となる。そして、保留示唆演出を実行する決定がなされた場合には、同時に、保留示唆演出を開始するまでの時間が決定されることとなるが、この時間は、対象保留ごとに決定され、その時間が各保留表示画像45の下部に表示されることとなる。
【0240】
この保留示唆演出の開始までの時間は、図34(c)に示すように、時間の経過に伴ってカウントダウン表示され、表示時間が「0」になると、当該対象保留の保留表示画像が変化して、保留示唆演出が実行されることとなる。
【0241】
保留示唆演出は、対象保留の特別図柄(大当たりの抽選結果)に係る事前判定情報や、第1および第2変動パターン事前判定情報に基づいて、保留表示画像45の表示態様を変化させる演出である。つまり、保留示唆演出によって表示される保留表示画像45の態様には、それぞれ大当たりの期待度が対応付けられており、保留示唆演出が実行されたときに表示される保留表示画像45によって、遊技者に対象保留の期待度が報知されることとなる。
・・・
【0244】
このように、本実施形態においては、通常、各第1保留が白色の「○」である通常保留表示態様で表示されて、第1保留数(X1)が遊技者に報知される。そして、第1保留が留保されるたびに、保留示唆演出を実行するか否かが決定され、保留示唆演出を実行する決定がなされた場合には、大当たりの期待度が高い保留が含まれているか否かに拘わらず、その時点で表示されている全ての保留表示画像45が、前兆保留表示態様である「爆弾」に変化する。また、このとき、同時に、保留示唆演出の実行対象である対象保留ごとに、保留示唆演出が開始されるまでの時間が決定され、その時間が対象保留ごとにカウントダウン表示される。そして、表示時間が「0」になったところで、保留表示画像45の表示態様が決定され、当該決定された態様で保留表示画像45が表示されることにより、保留示唆演出が行われることとなる。
・・・
【0251】
なお、図中、表示態様「白」は、保留表示画像45を白色で表示することを示し、表示態様「青」は、保留表示画像45を青色で表示することを示し、表示態様「黄」は、保留表示画像45を黄色で表示することを示し、表示態様「赤」は、保留表示画像45を赤色で表示することを示し、表示態様「キャラクター」は、保留表示画像45をキャラクターで表示することを示している。
【0252】
また、特別図柄種別に係る事前判定情報がハズレ図柄であった場合と大当たり図柄であった場合とで、各表示態様が決定される確率を図示のように設定したので、大当たりの期待度は、「白」→「青」→「黄」→「赤」→「キャラクター」の順で高くなる。」

オ 「【0287】
(ステップS1300)
次に、サブCPU200aは、保留表示画像45の表示制御ならびに保留示唆演出を実行するために要する種々の処理を行う。」

カ 引用発明
上記ア?オの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本願発明の構成A?Eに対応させて付与した。)。
「a 変動演出実行手段により変動演出を実行し、遊技利益付与手段により遊技利益を付与し、サブCPU200aを備える遊技機(【請求項1】、【0043】)であって、
b サブCPU200aは、演出表示部50aの下部に設けられている保留表示領域に保留表示画像45を表示する、表示制御を実行し(【0233】、【0287】)、
c サブCPU200aは、保留表示画像45の表示態様を変化させる演出である保留示唆演出を実行する決定がなされた場合に、その時点で表示されている全ての保留表示画像45について、対象保留ごとに保留示唆演出が開始されるまでの時間をカウントダウン表示するとともに、保留示唆演出が行われるまでの間、保留表示画像を前兆保留表示態様である「爆弾」で表示する表示制御を実行し(【0238】、【0239】、【0241】、【0244】、【0308】)、
d 保留表示画像45の表示態様には、「白」、「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」が含まれ、大当たりの期待度は、「白」→「青」→「黄」→「赤」→「キャラクター」の順で高くなり(【0251】、【0252】)、
e 前兆保留表示態様は、これから保留示唆演出が行われることを示し(【0238】)、
時間の経過に伴ってカウントダウン表示される保留示唆演出の開始までの時間が「0」になると、当該対象保留の保留表示画像が変化して、保留示唆演出が実行される(【0240】)
遊技機。」

2.引用文献2について
同じく、平成31年2月6日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に関し、特に、所定の遊技を行なうことが可能な遊技機に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した特許文献1のように、カウントされる値を報知する演出を実行し、カウントされた値がゼロになった時点で可動体を動作させる演出を実行する場合には、遊技者がカウントされる値の報知に注目していると、可動体の動作を見逃す可能性があり、効果的な演出を行なえないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、カウントされる値を報知する演出の実行後にその後の演出を適切なタイミングで実行する遊技機を提供することである。」

ウ 「【0226】
本実施の形態においては、演出図柄の変動表示中にサブ表示装置152を用いたカウントダウン演出が実行される場合がある。さらに、カウントダウン演出において、サブ表示装置152において「5」から「0」までのカウントダウンによりカウント表示される値が「0」となった時点以降に複数種類の演出のうちのいずれか一つがカウントダウン後演出として実行される。
【0227】
本実施の形態において、カウントダウン後演出は、たとえば、ステップアップ予告を行なうステップアップ予告演出と、保留表示を変化させる保留表示変化演出と、可動体を落下させる可動体落下演出とのうちのいずれかの演出である。」

エ 「【0308】
(14) 前述の実施の形態では、カウントダウン演出におけるカウントダウンの期間(第1特定値から第2特定値までカウントされる期間)は、所定の期間であるとして説明したが、たとえば、カウントダウンの期間として複数の期間が設定されていてもよい。すなわち、カウントダウンの期間によって大当りの期待度を異ならせたり、実行される予告の選択割合を異ならせたりしてもよい。」

オ 刊行物発明
上記ア?エの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「カウントダウン演出において、カウントダウンによりカウント表示される値が「0」となった時点以降に、保留表示を変化させる保留表示変化演出であるカウントダウン後演出を実行し(【0226】?【0227】)、
カウントダウン演出におけるカウントダウンの期間として複数の期間を設定し、カウントダウンの期間によって大当りの期待度を異ならせる(【0308】)
遊技機(【0001】)。」

3.引用文献3?5について
引用文献3?5には、後述する(第6 2 ア)、「遊技の興趣を向上させるために、所定表示の表示態様の変化および有利状態に制御される期待度を示唆表示により示唆するとともに、示唆表示により示唆された有利状態に制御される期待度に基づき、所定表示の表示態様を特別態様に変化させる演出を行う」という周知の技術事項について記載されている。

第6 対比・判断
1 対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Eと引用発明の構成a?eについて、それぞれ(a)?(e)の見出しを付して行った。)。
(a)引用発明における「変動演出」、「遊技利益を付与」することは、それぞれ、本願発明における「変動表示」、「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」なことに相当する。
したがって、引用発明における構成aの「変動演出実行手段により変動演出を実行し、遊技利益付与手段により遊技利益を付与」する「遊技機」は、本願発明における構成Aの「変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)本願発明における「変動表示に対応する所定表示」とは、本願明細書の【0221】に「本実施の形態で実行される特定演出について説明する。特定演出は、変動表示に対応する所定表示が実行されるときに、当該所定表示の表示態様を変化させる演出である。変動表示に対応する所定表示とは、たとえば、後述する保留表示Hやアクティブ表示AHのことである。」と定義されているように、例えば、「保留表示H」や、「アクティブ表示AH」のことである。
そうすると、引用発明における「保留表示画像45」は、本願発明における「変動表示に対応する所定表示」に相当する。
したがって、引用発明における構成bの「演出表示部50aの下部に設けられている保留表示領域に保留表示画像45を表示する、表示制御を実行」する「サブCPU200a」は、本願発明における構成Bの「変動表示に対応する所定表示を表示可能な所定表示手段」としての機能を有する。

(c)上記(b)より、引用発明における「保留表示画像45」は、本願発明における「変動表示に対応する所定表示」に相当することから、引用発明における「保留示唆演出が開始されるまでの時間」の「カウントダウン表示」、及び、「保留表示画像を前兆保留表示態様である「爆弾」」の「表示」を行う「保留表示画像45の表示態様を変化させる演出である保留示唆演出」は、本願発明における構成Cの「所定表示の表示態様を変化させる特定演出」に相当する。
したがって、引用発明における構成cの「保留表示画像45の表示態様を変化させる演出である保留示唆演出を実行する決定がなされた場合に、その時点で表示されている全ての保留表示画像45について、対象保留ごとに保留示唆演出が開始されるまでの時間をカウントダウン表示するとともに、保留示唆演出が行われるまでの間、保留表示画像を前兆保留表示態様である「爆弾」で表示する表示制御を実行」する「サブCPU200a」は、本願発明における構成Cの「所定表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段」としての機能を有する。

(d)引用発明における「保留表示画像45の表示態様」である「「白」、「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」は、「大当たりの期待度」の大小を示すものであるから、引用発明における「保留表示画像45の表示態様」のうち、「白」から変化する「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」は、本願発明における「有利状態に制御される期待度を示唆する特別態様」に相当する。
したがって、引用発明における構成dの「保留表示画像45の表示態様には、「白」、「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」が含まれ、大当たりの期待度は、「白」→「青」→「黄」→「赤」→「キャラクター」の順で高くな」ることは、本願発明における「所定表示の表示態様は、有利状態に制御される期待度を示唆する特別態様を含」むことに相当する。

(e)上記(c)より、引用発明における「保留示唆演出が開始されるまでの時間」の「カウントダウン表示」、及び、「保留表示画像を前兆保留表示態様である「爆弾」」の「表示」よりなる「保留示唆演出」は、本願発明における「特定演出」に相当する。
そして、引用発明における「これから保留示唆演出が行われることを示」すことは、構成c?dより、「保留示唆演出」が「保留表示画像45の表示態様」を「白」から、「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」等へ「変化させる演出である」ことから、本願発明における「所定表示の表示態様の変化」「を示唆表示により示唆する」ことに相当する。
したがって、引用発明における「これから保留示唆演出が行われることを示」す「前兆保留表示態様」を表示する演出と、本願発明における「所定表示の表示態様の変化および有利状態に制御される期待度を示唆表示により示唆する」「特定演出」とは、「所定表示の表示態様の変化」「を示唆表示により示唆する」「特定演出」であることで共通する。
また、引用発明における「時間の経過に伴ってカウントダウン表示される保留示唆演出の開始までの時間」は、保留示唆演出の実行が開始されるまでの時間を表すものであるから、本願発明における「演出の実行期間に関する特定表示」に相当する。
そうすると、引用発明における「時間の経過に伴ってカウントダウン表示される保留示唆演出の開始までの時間が「0」になる」ことは、本願発明における「特定表示が特定態様となったこと」に相当する。
さらに、引用発明における「当該対象保留の保留表示画像が変化して、保留示唆演出が実行され」ることと、本願発明における「所定表示の表示態様を示唆表示により示唆された有利状態に制御される期待度に基づく特別態様に変化させる演出を実行可能であ」ることとは、「所定表示の表示態様を」「特別態様に変化させる演出を実行可能であ」ることで共通する。
よって、引用発明における構成eと、本願発明における構成Eとは、「特定演出として、所定表示の表示態様の変化を示唆表示により示唆するとともに、演出の実行期間に関する特定表示を表示し、特定表示が特定態様となったことに基づいて、所定表示の表示態様を特別態様に変化させる演出を実行可能であ」ることで共通する。

上記(a)?(e)より、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 変動表示に対応する所定表示を表示可能な所定表示手段と、
C 前記所定表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段とを備え、
D 前記所定表示の表示態様は、前記有利状態に制御される期待度を示唆する特別態様を含み、
E’前記特定演出として、前記所定表示の表示態様の変化を示唆表示により示唆するとともに、演出の実行期間に関する特定表示を表示し、前記特定表示が特定態様となったことに基づいて、前記所定表示の表示態様を特別態様に変化させる演出を実行可能である
遊技機。」

[相違点1](構成E)
「所定表示の表示態様の変化を示唆表示により示唆する」「特定演出」に関して、
本願発明は、示唆表示により、所定表示の表示態様の変化および有利状態に制御される期待度を示唆するのに対して、
引用発明は、「前兆保留表示態様」(「示唆表示」)により、「これから保留示唆演出が行われることを示」す(「所定表示の表示態様の変化を示唆する」)ことが、本願発明のように有利状態に制御される期待度を示唆するものではない点で相違する。

[相違点2](構成E)
「特定表示が特定態様となったことに基づいて」「実行可能」な「所定表示の表示態様を特別態様に変化させる演出」に関して、
本願発明は、「特別態様」が「示唆表示により示唆された有利状態に制御される期待度に基づく特別態様」であるのに対して、
引用発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点3](構成F)
本願発明は、演出実行手段は、有利状態に制御される期待度の高い特別予告演出を実行可能であり、特別予告演出の実行までに特定演出を実行する場合と、特別予告演出の実行以後に特定演出を実行する場合とで、特定表示を表示する期間を異ならせることが可能であり、特定表示が表示されてから当該特定表示が特定態様となるまでの間に、特定表示の演出態様を変化させることが可能であるのに対して、
引用発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点4](構成G)
本願発明は、特定表示で表示する期間に応じて、有利状態に制御される割合が異なるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

2 相違点についての判断
ア 相違点1?2(構成E)について
上記相違点1?2は、「特定演出」についての関連する技術であるのでまとめて検討する。
遊技機の技術分野において、遊技の興趣を向上させるために、所定表示の表示態様の変化および有利状態に制御される期待度を示唆表示により示唆するとともに、示唆表示により示唆された有利状態に制御される期待度に基づき、所定表示の表示態様を特別態様に変化させる演出を行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(引用文献3の【0004】?【0006】、【0090】?【0107】、【図7】?【図8】には、リーチの発生によって、予告報知ゲームの実行指令を受けたときに実行される予告報知ゲームにおいて、演出キャラクタとしてのキャラクタ50が、信頼度に応じて出現するアイテム60A?Cをかぶって出現し、全ての図柄が仮停止状態となった後に、アイテム60A?Cのいずれかをかぶったキャラクタ50(本件補正発明の「示唆表示」に相当する。)が、始動記憶(本件補正発明の「所定表示」に相当する。)へ向かってアイテム60A?Cを投げ、投げられたアイテム60A?Cが始動記憶に載る(アイテム60A?Cが載った始動記憶が、本件補正発明の「特別態様」に相当する。)ことが可能な予告報知ゲーム(本件補正発明の「特定演出」に相当する。)が実行される遊技機について記載されている。
また、引用文献4の【0007】?【0008】、【0224】?【0233】、【0257】、【図27】、【図31】)には、
・リーチ前、あるいは、リーチ後に、保留ボックス9Fの近傍に表示される所定のキャラクタ画像9a(本件補正発明の「示唆表示」に相当する。)が動くことによって、保留ボックス9Fの内部の保留表示の態様(本件補正発明における「所定表示」に相当する。)を変化させる(変化した保留表示態様が本件補正発明の「特別態様」に相当)こと、
・キャラクタ画像として、複数種類のキャラクタ画像から選択して使用すること、この場合、大当りになる場合に、はずれになる場合に比べて、特定のキャラクタ画像を高い割合で選択すること、
・保留表示の期待度は、「青」<「黄」<「赤」であることが記載されている。
さらに、引用文献5の【0004】?【0005】、【0186】、【図19】には、先読み予告表示態様に変化した後の保留画像の色を、保留画像変化示唆演出における、大当り信頼度を示すキャラ画像のアイテム(星)の色に応じて変化させることが記載されている。
以下「周知の技術事項」という。)。

ここで、引用発明と上記周知の技術事項とは、所定表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段を備える遊技機である点で共通し、遊技の興趣を向上させるという共通の課題を解決するものである。
したがって、引用発明における「保留示唆演出」(「特定演出」)に上記周知の技術事項1を適用して、「保留示唆演出」により、所定表示の表示態様の変化を示唆すると共に、有利状態に制御される期待度を示唆すると共に、「保留表示画像45」(「所定表示」)の表示態様を、「前兆保留表示態様」(「示唆表示」)により示唆された有利状態に制御される期待度に基づく「青」、「黄」、「赤」、「キャラクター」(「特別態様」)に変化させる演出を実行可能にして、上記相違点1?2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点4(構成G)について
引用文献2に記載された技術事項における「カウントダウン演出」は、本願発明における「特定表示」に相当する。
したがって、引用文献2に記載された技術事項における「カウントダウン演出におけるカウントダウンの期間として複数の期間を設定し、カウントダウンの期間によって大当りの期待度を異ならせる」ことは、本願発明における構成Gの「特定表示で表示する期間に応じて、有利状態に制御される割合が異なる」ことに相当する。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術事項とは、カウントダウン表示の実行後に、保留表示の内容を変化させる遊技機である点で共通するものである。
したがって、引用発明における「カウントダウン表示」に引用文献2に記載された技術事項における「カウントダウン演出」を適用して、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点3(構成F)について
相違点3に係る本願発明における構成F?F3の「特定表示」に関する構成は、引用文献1?5に記載されておらず、本願出願前における周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、引用文献3?5に記載された周知の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明は、構成F2を備えることにより、平成31年4月11日付け意見書の「(4) 刊行物との対比」に記載された「特定演出と特別予告演出とのバランスを調整することができ」るという効果を奏し、構成F3を備えることにより、上記意見書の「(4) 刊行物との対比」に記載された「特定表示が特定態様となるまでの間に特定表示の演出態様をも変化させることで、特定表示で表示する期間だけでなく、その演出態様にも遊技者の注目を集めることができ、多彩なバリエーションで特定表示を行うことができるという」効果を奏するものである。

第7 原査定についての判断
平成31年4月11日付けの補正により、補正後の請求項1は、構成F?F3という技術的事項を有するものとなった。当該「特定表示」に関する構成F?F3は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2015-215011(P2015-215011)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 知  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 長崎 洋一
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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