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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1352125
審判番号 不服2018-5621  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-23 
確定日 2019-06-25 
事件の表示 特願2016-246916「口座管理システム、口座管理方法および口座管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日出願公開、特開2018-101284、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 5月19日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月31日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月19日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
平成30年 4月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成31年 2月18日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月22日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年1月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(新規性)
本願請求項1-12,14-16に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(進歩性)
本願請求項1-16に係る発明は、下記の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平9-330364号公報
2.特開2004-78493号公報

第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成31年4月22日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
過去のいずれかの所定期間である第1の期間における口座情報である過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の収入額と、現在を含む期間である第2の期間における口座情報である現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の収入額とを取得する、または、前記過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の出金額と、前記現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の出金額とを取得する取得部と、
前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合には、前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額を所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部と、
前記差額を所定の口座へ蓄積する蓄積部と
を有することを特徴とする口座管理システム。」

なお、本願発明2-11の概要は以下のとおりである。

本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明10-11は、それぞれ本願発明1に対応する「方法」及び「プログラム」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付加したものである。

ア.
「【0008】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、各預金者の普通預金口座の不必要残高を自動計算することによって、たとえ常時来店しない預金者に対しても最適な金融商品を勧めることができ、顧客に対するサービスをより一層向上できると共に、預金者にとっても銀行に赴かずに普通預金口座の不必要残高をより有利に運用できる銀行システムを提供することを目的とする。」

イ.
「【0022】
【発明の実施の形態】以下本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態に係わる銀行システムの概略構成を示すブロック図である。大型の情報処理装置で構成され、銀行の本店や支店に配設されたホスト装置1は、例えば公衆電話回線等の通信回線2を介して預金者の各家庭に配設された各預金者端末3に接続されている。預金者端末3は例えば銀行から提供された専用の小型情報端末装置で構成されている。
【0023】ホスト装置1内には、預金情報データベース4、金融商品データベース5、入出金傾向データベース6等が形成されている。さらに、このホスト装置1内には、預金処理部7、不必要残高算出部8、商品選択処理部9、データ送受信部10等が形成されている。
【0024】普通預金データベースとしての預金情報データベース4内は、図3に示すように、該当預金者の普通預金口座に対する入出金情報及び該当口座の残高が時系列的に記憶されている。
【0025】金融商品データベース5内には、図2に示すように、この銀行が預金者に対して提供できる各金融商品に関する情報が記憶されている。具体的には、金融商品コード毎に、金融商品名、預金期間や利率等が記憶されている。
【0026】入出金傾向データベース6内には、図4に示すように、預金者毎に、月毎の入金合計、出金合計、同じく年毎の入金合計、出金合計等が記憶されている。また、同一相手先の月別の入金合計、出金合計,増加率、減少率が記憶され、さらに、同一相手先の年間の入金合計、出金合計等が記憶されている。
【0027】具体的には、該当預金者の預金情報データベース4内の各該当する金額に対して複数月又は複数年に亘る移動平均値で示している。したがって、各月の月末及び年度末に最新のデータ値に更新され、常に最新のデータが記憶されている。例えば、電話料金等は各月毎に大きな偏差がないが、ガス料金等においては、季節により大きく変動する。
【0028】そして、預金処理部7は、銀行に来店した預金者の指示に応じて、預金情報データベース4内の該当預金者の口座に対する現金での入出金処理や、該当預金者の普通預金口座の金額を他人の口座に振替えたり、他の銀行の口座に送金したり、さらに、普通預金口座の金額を定期預金に組込んだり、さらに定期預金を解約して、普通預金口座に入金する等の通常の預金処理を実行する。
【0029】さらに、この預金処理部7は、通信回線2を介して預金者端末3から指示された該当預金者の現金による入出金処理以外の上述した各処理を実施する。前記不必要残高算出部8、商品選択処理部9、データ送受信部10は、図5に示す手順に従って、各預金者の預金者端末3に対する送信データを作成する。
【0030】先ず、不必要残高算出部8は、例えば月末において、各預金者毎の普通預金口座における現在の残高から、該当預金者の入出金傾向データベース6内に記憶されている移動平均の翌月に必要となる出金合計に一定の猶予金額を加算した必要金額を減算した、今月末における不必要残高を算出する。不必要残高算出部8は算出した不必要残高を次の商品選択処理部9へ送出する。なお、必要であれば、例えば来月は必要ないが年末に必要となる等の不必要残高の有効期間も検出する。
【0031】商品選択処理部9は、金融商品データベース5内に記憶されている各金融商品のうちから、該当不必要残高に最適の金融商品を選択する。具体的には、例えば金融商品によっては、最低預入金額や預入期間が存在するので、不必要残高及びこの不必要残高の有効期間も考慮して一つ又は複数の金融商品を選択する。そして、商品選択処理部9は、選択した推奨金融商品、該当金融商品の運用シミュレーションに必要な利率等の情報及び不必要残高(利用可能金額)をデータ送受信部10へ送出する。
【0032】データ送受信部10は、受領した金融商品,該当金融商品の情報及び不必要残高を通信回線2を介して該当預金者の預金者端末3へ送信する。各預金者の家庭に配設された専用の小型情報端末装置で形成された預金者端末3内には、図1に示すように、銀行のホスト装置1との間で各種の情報交換を実施するためのデータ送受信部11、預金者がこのデータ送受信部11を介して銀行のホスト装置1の預金処理部7に対して、自己の普通預金口座に対する現金による入出金処理以外の前述した各種の指示を送出するための操作部12が設けられている。
【0033】さらに、この預金者端末3内には、ホスト装置1から受信した各種情報を記憶するメールデータベース13、シミュレーション処理部14及び表示器15が設けられている。

・・・・・(中略)・・・・・

【0036】預金者は表示器15に表示された自己の普通預金口座の不必要残高及び運用のシュミレーション結果とを比較対照して、銀行が推奨する金融商品に不必要残高を預け入れるか否かを判断する。
【0037】預金者は預け入れると判断した場合は、操作部12及びデータ送受信部11を介して、ホスト装置1の預金処理部7に対して、預金情報データベース4内の自己の普通預金口座の不必要残高に対する金融商品を指定した新規設定又は通過設定の振替を指示する。なお、振替える金額はホスト装置1が算出した不必要残高に制限されるものではなく、自己の責任において任意の金額に設定可能である。
【0038】ホスト装置1の預金処理部7は預金者端末3から通信回線2を介して受信した振替え指示に従って、該当預金者の普通預金口座の指定された金額を指定された金融商品に設定する。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「各預金者の普通預金口座の不必要残高を自動計算することによって、たとえ常時来店しない預金者に対しても最適な金融商品を勧めることができ、預金者にとっても銀行に赴かずに普通預金口座の不必要残高をより有利に運用できる銀行システムであって(【0008】)、
大型の情報処理装置で構成され、銀行の本店や支店に配設されたホスト装置1が、公衆電話回線等の通信回線2を介して預金者の各家庭に配設された各預金者端末3に接続されており(【0022】)、
前記ホスト装置1内には、預金情報データベース4、金融商品データベース5、入出金傾向データベース6、預金処理部7、不必要残高算出部8、商品選択処理部9、データ送受信部10等が形成されており(【0023】)、
普通預金データベースとしての預金情報データベース4内は、該当預金者の普通預金口座に対する入出金情報及び該当口座の残高が時系列的に記憶されており(【0024】)、
前記入出金傾向データベース6内には、預金者毎に、月毎の入金合計、出金合計、同じく年毎の入金合計、出金合計等が記憶されており、また、同一相手先の月別の入金合計、出金合計、増加率、減少率が記憶され、さらに、同一相手先の年間の入金合計、出金合計等が記憶されており(【0026】)、
具体的には、該当預金者の預金情報データベース4内の各該当する金額に対して複数月又は複数年に亘る移動平均値で示されており(【0027】)、
前記預金処理部7は、銀行に来店した預金者の指示に応じて、預金情報データベース4内の該当預金者の口座に対する現金での入出金処理や、普通預金口座の金額を定期預金に組込んだり、さらに定期預金を解約して、普通預金口座に入金する等の通常の預金処理を実行するものであり(【0028】)、
前記不必要残高算出部8は、例えば月末において、各預金者毎の普通預金口座における現在の残高から、該当預金者の入出金傾向データベース6内に記憶されている移動平均の翌月に必要となる出金合計に一定の猶予金額を加算した必要金額を減算した、今月末における不必要残高を算出し、算出した不必要残高を次の商品選択処理部9へ送出するものであり(【0030】)、
前記商品選択処理部9は、金融商品データベース5内に記憶されている各金融商品のうちから、該当不必要残高に最適の金融商品を選択し、選択した推奨金融商品、該当金融商品の運用シミュレーションに必要な利率等の情報及び不必要残高(利用可能金額)をデータ送受信部10へ送出し(【0031】)、
データ送受信部10は、受領した金融商品、該当金融商品の情報及び不必要残高を通信回線2を介して該当預金者の預金者端末3へ送信し(【0032】)、
預金者端末3内には、ホスト装置1から受信した各種情報を記憶するメールデータベース13、シミュレーション処理部14及び表示器15が設けられており(【0033】)、
預金者が表示器15に表示された自己の普通預金口座の不必要残高及び運用のシュミレーション結果とを比較対照して、銀行が推奨する金融商品に不必要残高を預け入れるか否かを判断し(【0036】)、
預金者が預け入れると判断した場合は、操作部12及びデータ送受信部11を介して、ホスト装置1の預金処理部7に対して、預金情報データベース4内の自己の普通預金口座の不必要残高に対する金融商品を指定した新規設定又は通過設定の振替を指示すると(【0037】)、
ホスト装置1の預金処理部7は、預金者端末3から通信回線2を介して受信した振替え指示に従って、該当預金者の普通預金口座の指定された金額を指定された金融商品に設定する(【0038】)
銀行システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【請求項1】及び【請求項2】の記載からみて、当該引用文献2には、「所定期間継続して入金及び出金が行われていない不活動口座を判定し、当該口座が不活動状態であることを口座名義人に通知する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.本願発明1の「取得部」に関して
引用発明の『ホスト装置1』において、『入出金傾向データベース6』には『同一相手先の月別の入金合計、出金合計、増加率、減少率が記憶され』ていることから、引用発明の『入出金傾向データベース6』に記憶された『同一相手先』の『入金合計』及び『出金合計』は、本願発明1の「所定の費目」の「収入額」及び「出金額」に相当する。
そして、引用発明の『入出金傾向データベース6』において、「所定の費目」の「収入額」及び「出金額」は、『月別』に記憶されていることから、引用発明の『入出金傾向データベース6』には、「所定の費目の収入額」として、本願発明1の「過去のいずれかの所定期間である第1の期間における口座情報である過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の収入額」と、「現在を含む期間である第2の期間における口座情報である現在口座情報として前記第2の期間における所定の費目の収入額」が記憶されているといえる。
また、同様に、引用発明の『入出金傾向データベース6』には、「所定の費目の出金額」として、本願発明1の「前記過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の出金額」と、「前記現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の出金額」が記憶されているといえる。
したがって、引用発明の前記『入出金傾向データベース6』を備える『ホスト装置1』は、本願発明1の「収入額」及び「出金額」を「取得」する構成、すなわち、本願発明1の「過去のいずれかの所定期間である第1の期間における口座情報である過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の収入額と、現在を含む期間である第2の期間における口座情報である現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の収入額とを取得する、または、前記過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の出金額と、前記現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の出金額とを取得する取得部」に相当する構成を備えているといえる。

イ.本願発明1の「通知部」に関して
引用発明における『ホスト装置1』の『データ送受信部10』は、『不必要残高』及び『不必要残高に最適の金融商品』を『預金者の預金者端末3』に送信し、当該『預金者端末3』の『表示器3』に表示された『不必要残高』及び『運用のシミュレーション結果』を見た『預金者』は、『銀行が推奨する金融商品に不必要残高を預け入れるか否かを判断』することから、引用発明の『預金者』及び『預金者端末3』は、本願発明1の「ユーザ」及び「ユーザの所有する端末装置」に相当し、引用発明の『預金者』に通知される『不必要残高』及び『不必要残高に最適の金融商品』の情報は、本願発明1の「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」に相当する。
ここで、引用発明では、前記「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」を送信する条件(タイミング)、及び、前記「所定の口座へ蓄積するよう提案」される金額が、本願発明1とは異なるものの、引用発明の『データ送受信部10』は、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」を「ユーザの所有する端末装置」に送信する点において、本願発明1の「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部」に対応する。

ウ.本願発明1の「蓄積部」に関して
引用発明では、ユーザが『ホスト装置1』の『預金処理部7』に対して、不必要残高に対する金融商品の振替を指示すると、当該『預金処理部7』は、『該当預金者の普通預金口座の指定された金額を指定された金融商品に設定する』ことから、引用発明の前記『預金処理部7』が実行する『指定された金額を指定された金融商品に設定する』処理は、本願発明の「所定の口座へ蓄積する」処理に相当する。
ここで、引用発明の『預金処理部7』は、「所定の口座へ蓄積する」金額が本願発明1における金額と異なるものの、所定の金額を「所定の口座へ蓄積する」点において、本願発明1の「所定の口座へ蓄積する蓄積部」に対応する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「過去のいずれかの所定期間である第1の期間における口座情報である過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の収入額と、現在を含む期間である第2の期間における口座情報である現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の収入額とを取得する、または、前記過去口座情報として前記第1の期間における所定の費目の出金額と、前記現在口座情報として前記第2の期間における前記所定の費目の出金額とを取得する取得部と、
所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部と、
所定の口座へ蓄積する蓄積部と
を有することを特徴とする口座管理システム。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1の「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部」が前記提案情報を通知する条件(タイミング)は、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合」であるのに対し、引用発明の通知部は、そのような条件(タイミング)で提案情報を通知するものではない点。

<相違点2>
本願発明1の「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」においてユーザに提案される金額は、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるのに対し、引用発明においてユーザに提案される金額は、『現在の残高から』『移動平均の翌月に必要となる出金合計に一定の猶予金額を加算した必要金額を減算した、今月末における不必要残高』である点。

<相違点3>
本願発明1の蓄積部は、「前記差額」を所定の口座へ蓄積するのに対し、引用発明においてユーザに提案される金額は、上記<相違点2>のとおり「差額」ではないため、引用発明の蓄積部が提案に従って蓄積する金額は「前記差額」ではない点。

(2)相違点についての判断
ア.上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部」が前記提案情報を通知する条件(タイミング)が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合」であるという構成が、上記「第4」の引用文献2にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。

イ.上記相違点2について検討すると、相違点2に係る本願発明1の、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」においてユーザに提案される金額が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるという構成が、上記「第4」の引用文献2にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。

また、仮に、当該相違点2に係る本願発明1の、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」においてユーザに提案される金額が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるという構成が周知技術であるとしても、引用発明は、預金者の不必要残高を自動計算し、不必要残高をより有利に運用できる銀行システムを提供することを目的(課題)とする発明であって、この不必要残高を計算するために、『現在の残高から、該当預金者の入出金傾向データベース6内に記憶されている移動平均の翌月に必要となる出金合計に一定の猶予金額を加算した必要金額を減算した、今月末における不必要残高を算出』するものである。
すなわち、引用発明は、口座情報に基づいて算出すべき金額が、将来における不必要残高という予測金額であるために、『移動平均の翌月に必要となる出金合計』という推定値を用いたり、その推定値に対して更に「一定の猶予金額」という余裕分を加算している。
してみると、相違点2に係る、ユーザに提案される金額が「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるという構成が、周知技術であると仮定しても、引用発明においてユーザに提案される金額として、上記したような推定値や余裕分を利用した金額(将来における不必要残高という予測金額)ではない、単なる「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」を採用する動機付け、すなわち、引用発明に上記仮定した周知技術を組み合わせる動機付けがあるとはいえない。

ウ.上記相違点3について検討すると、相違点3に係る本願発明1の、「蓄積部」が、「前記差額」を所定の口座へ蓄積するという構成が、上記「第4」の引用文献2にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。

エ.上記ア.乃至ウ.のとおり、本願発明1は引用発明と相違し、かつ、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、本願発明1の、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部」が前記提案情報を通知する条件(タイミング)が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合」であるという構成、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」においてユーザに提案される金額が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるという構成、及び、「蓄積部」が、「前記差額」を所定の口座へ蓄積するという構成、と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明10及び11について
本願発明10-11は、それぞれ、本願発明1に対応する「方法」及び「プログラム」の発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に示された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
当審拒絶理由に対する平成31年4月22日の補正により、本願発明1-9は、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報をユーザの所有する端末装置に通知する通知部」が前記提案情報を通知する条件(タイミング)が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合」であるという構成、「所定の口座へ蓄積するよう提案する提案情報」においてユーザに提案される金額が、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額」であるという構成、及び、「蓄積部」が、「前記差額」を所定の口座へ蓄積するという構成」という事項を有するものとなっており、上記「第5」で示したとおり、本願発明1は特許法第29条第1項第3号には該当しない。さらに、本願発明1は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、審判請求時の補正により、本願発明1に対応する「方法」及び「プログラム」の発明である本願発明10-11は、上記事項に対応する構成を有するものとなっており、上記「第5」で示したとおり、本願発明10-11は特許法第29条第1項第3号には該当しない。さらに、本願発明10-11は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では、請求項1,10及び11の「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合には、・・・(中略)・・・前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づく金額を所定の口座へ蓄積するよう提案する」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成31年4月22日の補正において、「前記過去口座情報と、前記現在口座情報との比較結果が所定の条件を満たす場合として、前記第2の期間における前記所定の費目の収入額が前記第1の期間における前記所定の費目の収入額より多い場合、または、前記第2の期間における前記所定の費目の出金額が前記第1の期間における前記所定の費目の出金額より少ない場合には、前記過去口座情報と、前記現在口座情報とに基づき算出された差額を所定の口座へ蓄積するよう提案する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1-11は引用発明と相違し、かつ、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-12 
出願番号 特願2016-246916(P2016-246916)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 113- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
田中 秀樹
発明の名称 口座管理システム、口座管理方法および口座管理プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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