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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1352192
審判番号 不服2018-8759  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-26 
確定日 2019-06-06 
事件の表示 特願2014- 46744「導電性接着剤組成物、接続体、太陽電池モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-168803〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月10日を出願日とする特許出願であって、平成29年11月1日付けの拒絶理由通知に対し、平成30年1月5日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年3月19日付けの拒絶査定に対し、同年6月26日付けで審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成30年1月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、熱カチオン重合開始剤と、を含有し、
導電性接着剤組成物中における前記導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が、前記導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で5/95?50/50である、導電性接着剤組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は「この出願については、平成29年11月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
そして、平成29年11月1日付け拒絶理由通知書には、理由2として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由が示されるとともに、
その「記」には「●理由2(進歩性)について・請求項1、4、6-10・引用文献等3、1…・請求項2・引用文献等3、1…・請求項3・引用文献等3、1…・請求項5・引用文献等3、1…・請求項11-12・引用文献等3、1」との指摘がなされている。
また、原査定の備考欄には「●理由2(特許法第29条第2項)について・請求項 1-11・引用文献等 3、1…文献3に記載された発明と、文献1に記載された発明とは、はんだを導電性の表面に有する導電性粒子と、エポキシ樹脂とを含有する導電性接着剤という点で共通する技術分野に属し、電極等を接続した際の導通性を確保すること、そのために導電性粒子表面の酸化膜を低減することは、両者の共通する技術課題であるから、文献3に記載された発明において、十分な導通性が確保できるよう、エポキシ樹脂の硬化剤として、文献1に記載の熱カチオン発生剤を使用することは、当業者が容易なし得ることであるといえ、それによって奏される効果も、文献1の記載等から当業者が十分に予測できることであるといえる。」等の指摘がなされている。

第4 当審の判断
1.引用文献及びその記載事項
(1)引用文献3
原査定において引用文献3として引用された国際公開第2011/046176号には、次の記載がある。

摘記3a:請求項1
「[請求項1]金属を含む導電性粒子と、
熱硬化性樹脂と、
フラックス活性剤と、を含有する導電性接着剤であって、
前記導電性粒子の融点が220℃以下であり、
太陽電池セルに接続された電極と配線部材を前記電極に電気的に接続するとともに接着するために用いられる、導電性接着剤。」

摘記3b:段落0006?0007
「[0006]しかしながら、金属粒子を含む従来の導電性接着剤を用いて製造された太陽電池は、信頼性の点で必ずしも十分でないことが明らかとなった。具体的には、高温高湿環境下に太陽電池が暴露されたときに、その特性が著しく低下してしまうという問題があった。
[0007]そこで、本発明は、上記従来技術が有する課題に鑑み、Sn-Ag-Cuはんだよりも低温での接続が可能でありながら、太陽電池の電極に配線部材を接着するために用いられたときに太陽電池の特性が高温高湿試験後にも十分に維持される導電性接着剤を提供することを主な目的とする。更に、本発明は、高温高湿試験後にも十分な特性を維持可能な太陽電池及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。」

摘記3c:段落0049
「[0049]熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、導電性接着剤はエポキシ樹脂の硬化剤を更に含有することが好適であり、それに加えて硬化性を向上させるための硬化促進剤を含有することがより好適である。」

摘記3d:段落0089?0092及び0095
「[0089]1.実施例1?8、参考例1?4
1-1.液状導電性接着剤の作製及びその評価
下記の材料を用いて、液状導電性接着剤を調整した。
(熱硬化性樹脂)
YDF-170(東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量=170)…
(硬化促進剤)
2PZ-CN(四国化成社製、イミダゾール化合物の商品名)
(フラックス活性剤)
BHBA:2,2-ビスヒドロキシメチルブタン酸…
(導電性粒子)…
Sn42-Bi57-Ag1(はんだ)粒子:融点139℃、平均粒径20μm…
[0090]実施例1
YDF-170と、2PZ-CNと、BHPAとを混合し、混合物を3本ロールに3回通して、接着剤成分を調製した。この接着剤成分30質量部に対して、Sn42-Bi58粒子を加えて混合した。さらにそれらの混合物を3本ロールに3回通した後、真空撹拌らいかい器を用いて500Pa以下で10分間脱泡処理を行って、導電性接着剤を得た。
[0091]実施例2?7、参考例1?4
表1及び表2に示す各材料を表に示す配合割合で用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例2?7、参考例1?4の導電性接着剤を得た。表1、2に示した材料の詳細は以下の通りである。表1、2中の各材料の配合割合の単位は質量部である。
[0092][表1]

…[0095]タブ線付き太陽電池セルのIV曲線を、ソーラシミュレータ(ワコム電創社製、商品名:WXS-155S-10、AM:1.5G)を用いて測定した。次いで、太陽電池セルを85℃、85%RHの高温高湿雰囲気下で240時間静置した後、同様にIV曲線を測定した。それぞれのIV曲線から太陽電池特性を示す曲線因子(fill factor、以下「F.F」と略す。)をそれぞれ導出し、高温高湿雰囲気下に静置する前のF.F(0h)と高温高湿条件下に静置した後のF.F(240h)の変化率[=(F.F(240h)/F.F(0h))×100]をΔF.Fとし、これを評価指標として用いた。一般に、ΔF.Fの値が95%以上であると接続信頼性が良好であると判断される。評価結果を表1、2に示す。」

(2)引用文献1
原査定において引用文献1として引用された国際公開第2013/125517号には、次の記載がある。

摘記1a:請求項11及び12
「[請求項11]請求項1?8のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
[請求項12]異方性導電材料であり、異方性導電材料100重量%中、前記導電性粒子の含有量が1重量%以上、50重量%以下である、請求項11に記載の導電材料。」

摘記1b:段落0010及び0018
「[0010]下記の特許文献4には、脂肪酸及びジカルボン酸の少なくとも一方を表面に化学結合させて被覆したはんだ粉が開示されている。また、特許文献4には、上記はんだ粉と、樹脂と、硬化剤とを含む導電性接着剤(異方性導電材料)が開示されている。…
[0018]本発明の目的は、電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合に、得られた接続構造体における接続抵抗を低くし、かつボイドの発生を抑制することができる導電性粒子及び導電性粒子の製造方法、並びに該導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。」

摘記1c:段落0118、0122?0123及び0127?0128
「[0118]上記導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。…
[0122]上記導電材料は、熱硬化剤を含む。該熱硬化剤は、上記加熱により硬化可能な硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を使用可能である。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
[0123]上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、熱カチオン発生剤、酸無水物及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。…
[0127]上記熱カチオン発生剤としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
[0128]はんだ表面又は電極表面に形成された酸化膜を除去し、上下電極との金属接合を形成しやすくし、接続信頼性をより一層高める観点からは、上記熱硬化剤は、熱カチオン発生剤を含むことが好ましい。」

摘記1d:段落0160?0162、0168?0169及び0185
「[0160]実施例、比較例及び参考例では、以下の材料を用いた。
[0161](バインダー樹脂)
熱硬化性化合物1(ビスフェノールA型エポキシ化合物、三菱化学社製「YL980」)
熱硬化性化合物2(エポキシ樹脂、DIC社製「EXA-4850-150」)
熱硬化剤A(イミダゾール化合物、四国化成工業社製「2P-4MZ」)
熱カチオン発生剤1(下記式(11)で表される化合物、加熱によりリン原子を含む無機酸イオンを放出する化合物)

[0168](導電性粒子)
導電性粒子(樹脂コアはんだ被覆粒子…)…銅層の表面に厚み2μmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている処理前導電性粒子…を作製した。
[0169]次に、得られた処理前導電性粒子と、グルタル酸…とを、触媒…を用いて、…攪拌することにより、はんだの表面にカルボキシル基を含む基が共有結合している導電性粒子を得た。この導電性粒子を導電性微粒子1と呼ぶ。…
[0185][表1]



2.引用文献3に記載された発明
摘記3aの「[請求項1]金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、フラックス活性剤と、を含有する導電性接着剤であって、前記導電性粒子の融点が220℃以下であり、太陽電池セルに接続された電極と配線部材を前記電極に電気的に接続するとともに接着するために用いられる、導電性接着剤。」との記載、並びに
摘記3dの「熱硬化性樹脂…YDF-170(…ビスフェノールF型エポキシ樹脂の商品名…)…硬化促進剤…2PZ-CN(…イミダゾール化合物の商品名)…フラックス活性剤…BHBA:2,2-ビスヒドロキシメチルブタン酸…導電性粒子…Sn42-Bi57-Ag1(はんだ)粒子:融点139℃…実施例2…の導電性接着剤を得た。…各材料の配合割合の単位は質量部である。…ΔF.Fの値が95%以上であると接続信頼性が良好であると判断される。評価結果を表1、2に示す。」との記載、及び「表1」の「実施例2」の記載からみて、引用文献3には、
「金属を含む導電性粒子(融点139℃のはんだ粒子)70質量部と、熱硬化性樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)25.2質量部と、硬化促進剤(イミダゾール化合物)1.3質量部と、フラックス活性剤(2,2-ビスヒドロキシメチルブタン酸)3.5質量部と、からなる導電性接着剤であって、前記導電性粒子の融点が220℃以下であり、太陽電池セルに接続された電極と配線部材を前記電極に電気的に接続するとともに接着するために用いられる導電性接着剤。」についての発明(以下「引3発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
本願発明と引3発明とを対比する。
引3発明の「金属を含む導電性粒子(融点139℃のはんだ粒子)」及び「熱硬化性樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)」は、本願発明の「融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子」及び「熱硬化性樹脂」に相当する。
引3発明の「金属を含む導電性粒子…70質量部と、熱硬化性樹脂…25.2質量部と、硬化促進剤…1.3質量部と、フラックス活性剤…3.5質量部と、からなる導電性接着剤」は、その組成が、導電性接着剤中における導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が、導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で30/70となるから、本願発明の「導電性接着剤組成物中における前記導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が、前記導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で5/95?50/50である、導電性接着剤組成物」に相当する。
してみると、本願発明と引3発明は、両者とも「融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、を含有し、導電性接着剤組成物中における前記導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が、前記導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で5/95?50/50である、導電性接着剤組成物。」である点で一致し、次の〔相違点〕において相違する。

〔相違点〕導電性接着剤組成物の組成に、本願発明は「熱カチオン重合開始剤」が含まれるのに対して、引3発明は「熱カチオン重合開始剤」が含まれない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
引3発明は、摘記3bの記載にあるように「金属粒子を含む従来の導電性接着剤」を用いて製造された太陽電池が「信頼性の点で必ずしも十分でない」ことを課題とした発明であって、摘記3dの記載にあるように「高温高湿雰囲気下」で長時間静置した後の「接続信頼性が良好」であることを目指した発明であるといえる。
そして、引用文献1には、その摘記1bの記載にあるように「はんだ粉と、樹脂と、硬化剤とを含む導電性接着剤(異方性導電材料)」などの先行技術の問題点を解決するための発明が記載されており、
その摘記1cの記載にあるように「硬化性化合物」を加熱により硬化させる「熱硬化剤」として「イミダゾール硬化剤」や「熱カチオン発生剤」が例示されるとともに、その「熱カチオン発生剤」としては「スルホニウム系カチオン硬化剤」などが例示され、その「はんだ表面又は電極表面に形成された酸化膜を除去し、上下電極との金属接合を形成しやすくし、接続信頼性をより一層高める」という観点から「熱カチオン発生剤」を含ませることが好ましいという作用機序についての説明までもが記載されており、
その摘記1dの記載にあるように、式(11)のスルホニウム塩(熱カチオン発生剤)2重量部を、エポキシ樹脂(熱硬化性化合物)と樹脂コアはんだ被覆粒子(導電性粒子)とを含む導電材料に用いた「実施例4」の具体例の導通試験A及びB並びにボイドの有無A及びBの評価が何れも「○○」となり、当該スルホニウム塩2重量部の代わりに熱硬化剤A(商品名:「2P-4MZ」のイミダゾール化合物)5重量部を用いた以外は全く同じ組成にある「実施例1」の具体例よりも優れた評価が得られたことが記載されているので、
本願出願時の技術水準において、低融点の金属を含む導電性粒子と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む導電性接着剤(異方性導電材料)の技術分野において、硬化剤としてスルホニウム塩系の「熱カチオン発生剤」を用いることにより、接続信頼性が非常に高められるという構成及び効果は、普通に知られていたものと認められる。
なお、引用文献1(摘記1c)の「熱硬化剤」としての「熱カチオン発生剤」は「加熱により硬化可能な硬化性化合物を硬化させる」という機能を奏する「剤」であって、加熱により硬化性化合物の重合(硬化)を開始させるための剤であるといえるから、引用文献1に記載された「熱硬化剤」としての「熱カチオン発生剤」と、本願発明の「熱カチオン重合開始剤」とは、表現上の差異があるものの、加熱により硬化を開始させるための剤として機能的に区別できないから、引用文献1の「熱硬化剤」としての「熱カチオン発生剤」は、本願発明の「熱カチオン重合開始剤」に該当するものと認められる。
してみると、引3発明と引用文献1に記載された発明とは、金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)とを含む導電性接着剤という点で技術分野が共通するとともに、導電性接着剤の接続信頼性を良好にするという点で技術課題が共通するから、引3発明に引用文献1に記載された技術を組み合わせることには動機付けがあるといえ、
しかも、引用文献1には、その実施例1(熱硬化剤A=イミダゾール化合物)のものに比して、実施例4(熱カチオン発生剤1=スルホニウム塩系の加熱により無機酸イオンを放出する化合物)の方が、接続信頼性の点で優れた評価が得られることが記載されているから、引3発明の「硬化促進剤(イミダゾール化合物)」に代えて、引用文献1に記載されたスルホニウム塩系の熱カチオン発生剤(=熱カチオン重合開始剤)を用いることは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
なお、引用文献1の実施例1及び4では、熱硬化性樹脂100重量部に対して、実施例1では熱硬化剤A(イミダゾール化合物)5重量部を配合し、実施例4では熱カチオン発生剤1(スルホニウム塩系の化合物)2重量部を配合しているところ、引3発明の熱硬化性樹脂25.2質量部に対し「硬化促進剤(イミダゾール化合物1.3質量部」配合したものを、引用文献1に記載される熱硬化性樹脂に対する配合比で「熱カチオン発生剤」に置き換えたとしても、本願発明の「導電性接着剤組成物中における前記導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が、前記導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で5/95?50/50」という配合比の範囲から逸脱せず、新たな相違点が生じることはない。

さらに、本願発明の効果について検討するに、本願明細書の段落0059には「本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、加熱により酸等を発生して重合を開始する(C)熱カチオン重合開始剤を含有する。(C)熱カチオン重合開始剤は、カチオン重合開始剤の中でも、加熱プロセス適用性及び熱硬化性に優れている。(C)熱カチオン重合開始剤は、(B)熱硬化性樹脂の重合を促進して充分な接続強度を与える効果に加え、(C)熱カチオン重合開始剤から発生する遊離酸が導電性粒子及び接続部の表面酸化膜を除去することにより導電性粒子の溶融及び凝集が促進されると共に接続部に対する充分な濡れ性が発現することによって導通パスを形成する効果を有する。」との記載があるところ、
引用文献1の段落0128(摘記1c)には「熱硬化剤」としての「熱カチオン発生剤」を用いることにより「はんだ表面又は電極表面に形成された酸化膜を除去」して「上下電極との金属接合を形成しやすく」し、その「接続信頼性をより一層高める」ことができるという作用機序と効果の説明が記載されているので、本願発明に格別予想外の効果があるとは認められない。

したがって、本願発明は、引3発明及び引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.審判請求人の主張について
(1)文献3における熱カチオン重合開始剤の示唆
審判請求書の第5頁において、審判請求人は「(b3)文献3には、導電性粒子の含有量が導電性粒子以外の成分の含有量に対して多い導電性接着剤が示されているものの(段落[0092]以降の各実施例及び参考例)、熱カチオン重合開始剤について記載も示唆もありません。」と主張している。
しかしながら、例えば、特開2012-22795号公報(参考例A)の段落0076の「低温…でも十分な硬化性を示すカチオン系硬化剤(D)を使用することにより、イミダゾール系硬化剤を使用した場合よりもエポキシ樹脂(C)の重合度が上がり」との記載、特開2012-178342号公報(参考例B)の段落0100の「導電性粒子の導電性の表面が低融点金属層である場合、カチオン硬化剤を用いることが好ましい」との記載、及び特開2006-77258号公報(参考例C)の段落0013の「硬化剤4は…熱重合開始剤と呼ばれ…カチオン型のオニウム塩系も極めて速硬化性が得られることから、同様に好ましく適用できる。」との記載にあるように、金属を含む導電性粒子を含有する導電性接着剤の分野において「熱カチオン重合開始剤」は周知慣用の「硬化剤」として普通に知られている。
このため、引用文献3の段落0049(摘記3c)の「導電性接着剤はエポキシ樹脂の硬化剤を更に含有することが好適であり」との記載に接した当業者にしてみれば、その「硬化剤」の範囲に「熱カチオン重合開始剤」が含まれると認識されるので、引用文献3に「熱カチオン重合開始剤」についての示唆が全くないとはいえない。このため、上記主張は採用できない。

(2)文献1の導電性粒子が含有量が少ないこと
審判請求書の第5?6頁において、審判請求人は「(b4)すなわち、文献1では、異方性導電材料を用いて接続構造体を得るに際して異方性導電材料の問題点を解決することが目的とされており…接続されてはならない隣接する電極間の短絡を抑制する観点から、導電材料中における導電性粒子の含有量を少なく留めることが通常であり、隣接する電極間の短絡を許容してまで、導電性粒子の含有量が導電性粒子以外の成分の含有量に対して多い態様において文献1の技術を適用することは当業者といえども困難です。」と主張している。
しかしながら、引用文献1の段落0146及び0150の「上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。…上記導電性粒子及び上記導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。」との記載にあるように、引用文献1に記載の技術は「様々な接続対象部材」を「接着」するために使用できる「導電材料」に関するものであって、好ましい一例の異方性導電材料の問題点のみを解決することを目的とするものではない。
そして、スルホニウム塩系の熱カチオン発生剤が、接続対象となる金属部材の表面に形成された酸化膜を除去することにより、導電材料の接続信頼性をより一層高められるという作用機序については、引用文献1の段落0128(摘記1c)の記載や参考例Aの段落0076の記載などにあるように普通に知られているところ、このような作用機序を発揮させるに当たって、導電材料中における導電性粒子の含有量の程度が大きく影響するとは解し得ないから、引3発明に引用文献1記載の技術を適用することが、当業者にとって困難であるとはいえない。このため、上記主張は採用できない。

(3)文献3と文献1の課題の共通性について
審判請求書の第6頁において、審判請求人は「(b5)また、文献3では、高温高湿試験後における太陽電池特性を十分に維持することが課題とされております(段落[0007])。一方、文献1では、異方性導電材料の硬化物におけるボイドの発生を抑制することが課題とされているに過ぎず(段落[0018])、高温高湿試験後における太陽電池特性について何ら認識がなく、高温高湿試験後における太陽電池特性に関する課題の解決手段を与えることが意図されておりません。そのため、このような事情が存在するにも関わらず引用発明3の設計変更に際して文献1を参酌し得るとする上記認定は、本願発明を参酌した上での事後的分析に基づくもの」にすぎないと主張している。
しかしながら、引用文献1記載の技術は「様々な接続対象部材」を接着するための「導電材料」に関するものであるから、引3発明の「太陽電池セルに接続された電極と配線部材を前記電極に電気的に接続するとともに接着するために用いられる導電性接着剤」を除外するものではなく、引3発明と引用文献1記載の技術は、両者とも、低融点の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性エポキシ樹脂と、熱硬化剤とを含む導電性接着剤という点で、同じ技術分野に属するものである。
そして、引3発明と引用文献1記載の技術は、両者とも「導電性接着剤の接続信頼性を良好にする」という共通する技術課題を有しているという点において、両者の組み合わせに強い動機付けがあるといえるので、これが事後的分析に基づくものとはいえない。このため、上記主張は採用できない。

(4)本願発明の構成を採用することの困難性について
審判請求書の第7頁において、審判請求人は「(b6)…文献3、1に基づき、低温短時間接続において良好な接続強度が得ると共に、1500時間もの長時間における高温高湿試験において良好な接続信頼性が得る観点から「融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、熱カチオン重合開始剤と、を含有する導電性接着剤組成物において、導電性接着剤組成物中における導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で5/95?50/50である」構成を採用することは当業者といえども困難です。」と主張している。
しかしながら、引用文献3には、240時間もの長時間における高温高湿試験において良好な接続信頼性が得る観点から「融点が139℃の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、フラックス活性剤と、を含有する導電性接着剤組成物において、導電性接着剤組成物中における導電性粒子以外の成分の含有量の配合比が導電性粒子の含有量に対して固形分比(質量比)で30/70である」構成の技術が記載されており、引用文献1には、導電材料の接続信頼性をより一層高める観点から「熱硬化剤」として「熱カチオン発生剤」を含むことが好ましいとする技術が記載されているから、引用文献3と引用文献1に基づき本願発明の構成を導き出すことが当業者にとって困難であるとはいえない。このため、上記主張は採用できない。

(5)本願発明の効果について
審判請求書の第8頁において、審判請求人は「(b8)…本願発明の効果は、1500時間もの長時間における高温高湿試験後の太陽電池特性について何ら認識がなく、「導電性粒子と導電性粒子以外の成分との配合比と、1500時間もの長時間における高温高湿試験における接続信頼性との関係」について何ら認識のない文献3、1に基づき当業者が容易に予期し得るものではありません。」と主張している。
しかしながら、引用文献3記載の発明は、その段落0095(摘記3d)の記載にあるように、240時間もの長時間における高温高湿試験における接続信頼性が「良好」と判断されるものであるから、その長時間の程度が240時間か1500時間かの定量的な違いはあるとしても、本願発明に定性的に予想外の効果があるとはいえず、引用文献1には、熱硬化剤として「熱カチオン発生剤」を用いることによって導電材料の接続信頼性がより一層高められることが記載されているので、上記「240時間」よりも更に長時間の接続信頼性が得られるであろうことが容易に期待できるといえる。
加えて、本願明細書の実施例で実際に効果が確認されているのは、あくまで特定の「熱カチオン重合開始剤」と「熱硬化性樹脂」との組み合わせを特定の配合比で用いた場合のものでしかないので、例えば、その「熱硬化性樹脂」の種類が「エポキシ樹脂」以外の場合であっても優れた効果を奏し得るとはいえず、本願発明の広範な範囲のもの全てが、1500時間もの長時間における高温高湿試験後の太陽電池特性の効果を奏し得るとはいえない。
このため、上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引3発明及び引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、原査定に誤りはなく、その余の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-19 
結審通知日 2019-03-26 
審決日 2019-04-09 
出願番号 特願2014-46744(P2014-46744)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 貴浩  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 木村 敏康
川端 修
発明の名称 導電性接着剤組成物、接続体、太陽電池モジュール及びその製造方法  
代理人 阿部 寛  
代理人 古下 智也  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
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