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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1352195
審判番号 不服2018-10790  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2019-06-06 
事件の表示 特願2013-175467「有機層含有全固体型太陽電池及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 46424〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 2月22日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月21日付け:拒絶理由通知書
平成30年 1月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月27日付け:拒絶査定(原査定、同年5月8日送達)
平成30年 8月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 9月20日 :審判請求書の手続補正書の提出

第2 平成30年8月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「 【請求項1】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンに30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(2)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンに30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(2)該n型シリコンの水素プラズマ処理を施した表面上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンにフッ酸処理又はRCA洗浄する工程、
(2)該n型シリコンを真空中で700℃まで熱処理する工程、
(3)該n型シリコンに30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(4)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンにフッ酸処理又はRCA洗浄する工程、
(2)該n型シリコンを真空中で700℃まで1分?1時間熱処理する工程、
(3)該n型シリコンに30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(4)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記p型有機半導体高分子がポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネートである、請求項1?4のいずれかに記載の全固体型太陽電池の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、平成30年1月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンに10?300秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(2)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンに10?300秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(2)該n型シリコンの水素プラズマ処理を施した表面上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンにフッ酸処理又はRCA洗浄する工程、
(2)該n型シリコンを真空中で700℃まで熱処理する工程、
(3)該n型シリコンに10?300秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(4)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコンにフッ酸処理又はRCA洗浄する工程、
(2)該n型シリコンを真空中で700℃まで1分?1時間熱処理する工程、
(3)該n型シリコンに10?300秒の水素プラズマ処理を行う工程、及び
(4)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記p型有機半導体高分子がポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネートである、請求項1?4のいずれかに記載の全固体型太陽電池の製造方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1ないし4に記載された発明を特定するために必要な事項である「水素プラズマ処理を行う工程」について、「10?300秒」を「30?60秒」と限定するものであって、本件補正前の請求項1ないし4に記載された発明と本件補正後の請求項1ないし4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、「小野正浩、外6名,結晶Si/PEDOT:PSS:GOヘテロ接合太陽電池,第59回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,応用物理学会,2012年 2月29日,12-438」(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「今回これらの課題に対してc-Si(100)(1-3Ω・cm)と導電性PEDOT:PSSまたはPEDOT:PSS:GOのヘテロ接合太陽電池を検討した結果を報告する。」(9-11行目)

「GOはHummerds法で作成した1-3μmの薄片を水素終端結晶Si(100)上に酸化グラフェン(GO)または導電性PEDOT:PSSを塗布し、その後上部電極にAg、下部電極にAlを設けることで素子を作製した。」(12-14行目)

(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「水素終端結晶Si(100)上に導電性PEDOT:PSSを塗布し、その後上部電極にAg、下部電極にAlを設けることで素子を作製したヘテロ接合太陽電池の作製方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「水素終端結晶Si(100)」は、本件補正発明の「シリコン」に、引用発明の「導電性PEDOT:PSS」は、本件補正発明の「有機半導体高分子」に、引用発明の「ヘテロ接合太陽電池の作製方法」は、本件補正発明の「全固体型太陽電池の製造方法」に、それぞれ相当する。

(イ)PEDOT:PSSは、p型有機半導体高分子の一つであることは一般に知られており、水素終端結晶Si(100)上に導電性PEDOT:PSSを塗布し、その後上部電極にAg、下部電極にAlを設けることで素子を作製したヘテロ接合太陽電池であることから、当該水素終端結晶Si(100)は、n型である。そうすると、引用発明の「導電性PEDOT:PSS」は、本件補正発明の「p型有機半導体高分子」に、引用発明の「水素終端結晶Si(100)」は、本件補正発明の「n型シリコン」に、引用発明の「水素終端結晶Si(100)上に導電性PEDOT:PSSを塗布し」た工程は、本件補正発明の「該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程」に、それぞれ相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「p型半導体層及びn型シリコンを備える全固体型太陽電池の製造方法であって、
(1)n型シリコン、及び
(2)該n型シリコン上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、全固体型太陽電池の製造方法。」

【相違点】
n型シリコンに、本件補正発明では「30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程」を含んでいるのに対し、引用発明では「30?60秒の水素プラズマ処理を行う工程」を含んでいるのか明らかでない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 太陽電池に関する技術おいて、シリコンの水素終端を行うためにシリコンに水素プラズマ処理を行う技術は、本願出願前に周知技術(例えば、特開平11-40501号公報(【0001】、【0027】、【0065】)、原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2012/043124号([0003]、[0052])、原査定の拒絶の理由で引用された特表2013-502736号公報(【0001】、【0028】、【0029】)を参照されたい。)である。

イ 引用発明の「水素終端結晶Si(100)」は、結晶Si(100)に対して、何らかの水素終端処理を行って製造されたものであることは、明らかである。
そして、太陽電池の製造技術の分野においても、上記周知技術が広く用いられていることを踏まえると、結晶Si(100)に水素終端処理を行う技術として、上記周知技術を採用することは、当業者であれば容易になし得たものである。

また、「30?60秒」との水素プラズマ処理を行う時間についても、特開平11-40501号公報(【0065】、上記周知技術に例示した文献)、国際公開第2012/043124号([0052]、上記周知技術に例示した文献)、特表2013-502736号公報(【0029】、上記周知技術に例示した文献)、特開2005-197576号公報(【0036】)に見られるように水素プラズマ処理において一般的な範囲のものであって、当業者が適宜選択し得るものである。

ウ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない(下記(5)ウも参照されたい。)。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
ア 本件請求人は、平成30年9月20日付けで提出された審判請求書の手続補正書において、
「本願発明は、30?60秒の水素プラズマ処理により特に優れた光電変換効率が得られることが理解できます。つまり、本願発明で開示しているのは『水素プラズマ処理すれば無条件に性能が向上する』のではなく、『特定の条件下で水素プラズマ処理するからこそ性能が向上する、他の条件ではかえって性能が低下することもあり得る』ということであります。 」、
「引用文献1は結晶Siを水素終端することが目的なのではなく、素子性能を向上させることが目的です。そうすると、引用文献2及び3を参酌しても、水素プラズマ処理による水素終端処理を施すことにより素子性能にどのような影響を及ぼすかは理解できないので組み合わせることには無理があります。」、
「引用文献1では、PEDOT:PSS素子性能(7%)と記載されているように、水素終端結晶Si(100)を用いて酸化グラフェンを添加していない場合における変換効率は7%(引用文献1の図1から判断すればJscは約22mA/cm2、Vocは約0.5V)であったことが理解できます。上記のグラフを考慮すれば、変換効率を7%とするには、長時間の水素プラズマ処理を行う必要があることが理解できます。しかも、本願比較例1によれば、水素プラズマ処理をしない場合の変換効率は8.28%です。」、
「審査官殿は、PEDOT:PSSの塗布量等によって変換効率は変化し得るため、引用文献1のデータと本願発明の比較例1(水素終端していないもの)とを単純比較できないと指摘されています。しかしながら、審査官殿が指摘されている、本願比較例1と引用文献1のデータとを単純比較できないことについては、前回主張しようとしたことはあくまで、引用文献1における水素終端処理は素子性能を向上させたものではない(あるいは向上させたものかどうかわからない)ことにあり、仮に単純比較できないとしても、引用文献1における水素終端処理は素子性能を向上させたものではない(あるいは向上させたものかどうかわからない)ことにあり、仮に単純比較できないとしても、引用文献1における水素終端処理は素子性能を向上させるかどうか理解できないことに変わりはないものであります。このため、単純比較できないとの指摘のみでは、本願発明のように30?60秒の水素プラズマ処理を行うことで光電変換効率を著しく向上させることができることは容易であることを示す根拠にはなり得ないと確信いたします。本願発明のように30?60秒の水素プラズマ処理を行うことで光電変換効率を著しく向上させることができることは容易であることを示す根拠にはなり得ないと確信いたします。」と本件補正発明の進歩性に関し、主張している。

イ 実施例1では「n型単結晶シリコン基板(結晶面(100)、厚さ300±25μm、抵抗率1?5Ω・cm)をCs_(2)CO_(3)溶液でリンスし、続けてAl蒸着を室温で行うことにより、Csが表面に拡散し、下部電極であるAl(Cs_(2)CO_(3)) (厚み0.1μm)を蒸着した。下部電極の反対側のシリコン面を、5重量%フッ酸に30分浸漬し蒸留水で洗浄した。洗浄後、真空中で80℃/分の昇温速度で700℃まで昇温後、1時間アニーリングしたものを室温まで放冷し、アルゴンプラズマ用チャンバーに移した。チャンバー内の水素流量100sccm、基板温度200℃、RF電力5W、反応圧力200mTorr、電極間距離40mm、処理時間40秒にセットし、フッ酸処理したシリコン面に対してプラズマ水素処理を行った。」、実施例2では「上記実施例1において、プラズマ水素処理の処理時間を30秒に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製した。」、実施例3では「上記実施例1において、プラズマ水素処理の処理時間を60秒に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製した。」、 比較例1では「上記実施例1において、プラズマ水素処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製した。」と本願明細書に記載されている。

ウ 上記主張について以下検討する。
まず、シリコンの水素プラズマ処理は、水素プラズマ処理を行う時間だけでなく、水素プラズマ処理を行う各種条件(本願の実施例において、水素プラズマ処理も、秒数だけでなく、水素流量、基板温度、RF電力、反応圧力、電極間距離等の各種条件を設定している。)によっても、処理後のシリコンの状態が異なることは明らかである。また、水素プラズマ処理を行う時間以外の水素プラズマ処理を行う各種条件を変更した実施例、比較例は本願の明細書に記載されておらず、そうすると、水素プラズマ処理を行う時間以外の水素プラズマ処理を行う各種条件を変更した場合に、30?60秒の水素プラズマ処理が効果が著しいとまでいえない。そうすると、水素プラズマ処理を行う時間しか特定していない場合に、効果が著しいものとまではいえない。

また、n型単結晶シリコン基板を、30?60秒の水素プラズマ処理を行うことのみで、光電変換効率を著しく向上させているわけではなく、5重量%フッ酸に30分浸漬したり、真空中で700℃まで昇温後、1時間アニーリングしたりして、光電変換効率を向上させていることが、本願の実施例から把握できる。

上記のように、n型単結晶シリコン基板を、30?60秒の水素プラズマ処理を行う条件だけでは、効果が著しいものかは本願明細書や実施例において把握できないし、太陽電池においてシリコンの水素終端処理を行うことで光変換効率を向上させることは技術常識(必要ならば、特表2013-530514号公報(【0003】、【0004】)、特開2006-73897号公報(【0001】)を参照されたい。)であり、水素プラズマ処理は、長時間行うと、水素終端よりも欠陥発生効果のほうが顕著になることも技術常識(必要ならば、特開2002-237600号公報(【0036】)、特開2002-237599号公報(【0006】)を参照されたい。)であることから、n型単結晶シリコン基板の水素プラズマ処理を行う場合に、プラズマ状態にする各種条件とともに適切な時間の範囲を規定することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

なお、引用文献1において水素終端処理は素子性能を向上させたものではないとの記載はなく、引用文献1において水素終端と記載されていることから、わざわざ水素終端を少なくするような長時間の水素プラズマ処理を行うことはしないと考えるのが自然である。そして、請求人は本願の比較例1の水素プラズマ処理をしない場合の光電変換効率より、引用文献1の光電変換効率が低いことを述べているが、このことは、本願の比較例1の水素プラズマ処理以外の実施例1と同様な処理(5重量%フッ酸に30分浸漬、真空中で700℃まで昇温後、1時間アニーリング等)でも、ある程度の光電変換効率が高くなることを示しているとも考えられ、水素終端処理により素子性能を向上させていないことにはならない。

そうすると、本件補正後の請求項1の記載以外に各種条件を設定(5重量%フッ酸に30分浸漬、真空中で700℃まで昇温後、1時間アニーリング、下部電極の反対側のフッ酸処理したシリコン面に対してプラズマ水素処理、RF電力等)した本願の実施例の光電変換効率とならないとしても、引用文献1においてもシリコンの水素終端処理を行えば光電変換効率がある程度向上しているものと考えるのが自然である。

してみれば、請求人の上記主張は、本件補正後の請求項1の記載に基づかないものであるといわざるを得ないから、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:小野正浩、外6名,結晶Si/PEDOT:PSS:GOヘテロ接合太陽電池,第59回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,応用物理学会,2012年 2月29日,12-438
引用文献2:国際公開第2012/043124号
引用文献3:特表2013-502736号公報
引用文献4:特開2004-241482号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「水素プラズマ処理を行う工程」について、「30?60秒」の限定事項を「10?300秒」にしたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-20 
結審通知日 2019-03-26 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2013-175467(P2013-175467)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 幹島田 英昭森江 健蔵佐竹 政彦嵯峨根 多美  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 有機層含有全固体型太陽電池及びその製造方法  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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