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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1352286
異議申立番号 異議2018-700641  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-02 
確定日 2019-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6277335号発明「マスターバッチ、樹脂成形材料、成形体及びこれらの製造方法、マスターバッチの評価方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6277335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?13]、14について訂正することを認める。 特許第6277335号の請求項2ないし14に係る特許を維持する。 特許第6277335号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6277335号(設定登録時の請求項の数は14。以下、「本件特許」という。)は、国際出願日である2016年(平成28年)12月20日(優先権主張 2016年1月27日)にされたとみなされる特願2017-561995号に係るものであって、平成30年1月19日に設定登録され、特許掲載公報が同年2月7日に発行された。 その後、本件特許に対して3件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
平成30年8月2日 :特許異議申立人加藤加津子(以下、単に「申立
人1」という。)による請求項1?14に係る特
許に対する特許異議の申立て
平成30年8月6日 :特許異議申立人松山徳子(以下、単に「申立人
3」という。)による請求項1?14に係る特許
に対する特許異議の申立て
平成30年8月7日 :特許異議申立人中野和子(以下、単に「申立人
2」という。)による請求項1?14に係る特許
に対する特許異議の申立て
平成30年10月19日付け:取消理由通知書(上記の3事件を併合)
平成30年12月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求書
(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本
件訂正請求」という。)の提出
平成31年1月25日 :申立人3による意見書の提出
平成31年2月7日 :申立人1による意見書の提出
平成31年2月12日 :申立人2による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし8である。ここで、訂正事項1ないし7は、訂正前の請求項1?13という一群の請求項について訂正するものであり、訂正事項8は、訂正前の独立請求項である請求項14について訂正するものである。なお、下線については訂正箇所に合議体が付したものである。

ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「請求項1に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、マスターバッチ。」
とあるのを
「黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、以下の条件を満たすマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、漆黒成形体を得るためのマスターバッチ。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
に訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし13についても同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載のマスターバッチにおいて、」
とあるのを
「請求項2に記載のマスターバッチにおいて、」
に訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし13についても同様に訂正する。

エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1乃至5いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、」
とあるのを
「請求項2乃至5いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、」
に訂正する。
請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7ないし13についても同様に訂正する。

オ 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1乃至6いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、」
とあるのを
「請求項2乃至6いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、」
に訂正する。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8ないし13についても同様に訂正する。

カ 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を含む、樹脂成形材料。」
とあるのを
「請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を含む、樹脂成形材料。」
に訂正する。
請求項10の記載を直接引用する請求項11及び13についても同様に訂正する。

キ 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。」
とあるのを
「請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。」
に訂正する。

ク 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に
「黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、以下の条件を満たすか否かによって評価するマスターバッチの評価方法。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
とあるのを
「黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含み、以下の条件を満たすか否かによって評価する、漆黒成形体を得るためのマスターバッチの評価方法。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項2では、マスターバッチの用途について具体的に特定されていなかったところ、訂正後の請求項2において、「漆黒成形体を得るためのマスターバッチ」との記載により、訂正後の請求項2に係る発明の用途を具体的に特定し、更に限定するための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

イ そして、当該訂正事項2のうちの独立形式請求項に改める訂正は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、「漆黒成形体を得るためのマスターバッチ」との記載により限定する訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0010】等の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3) 訂正事項3?7について
ア 訂正事項3?7は、訂正前の請求項3、6、7、10及び12が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、請求項1を引用しないものとする訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものといえる。

イ そして、当該訂正事項3?7は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ よって、訂正事項3?7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(4) 訂正事項8について
ア 訂正事項8は、訂正前の請求項14における「黒色顔料」について具体的に特定されていなかったところ、[カーボンブラックを含む」との記載により、訂正後の黒色顔料を具体的に特定し、更に限定する訂正と、訂正前の請求項14では、マスターバッチの用途について具体的に特定されていなかったところ、訂正後の請求項14において、「漆黒成形体を得るためのマスターバッチ」との記載により、訂正後の請求項14に係る発明の用途を具体的に特定し、更に限定するための訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

イ そして、当該訂正事項8のうちの「カーボンブラックを含む」との記載により限定する訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0031】等の記載から、新規事項の追加に該当せず、「漆黒成形体を得るためのマスターバッチ」との記載により限定する訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0010】等の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、これらは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?13]、14について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)は、平成30年12月28日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、以下の条件を満たすマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、漆黒成形体を得るためのマスターバッチ。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))
【請求項3】
請求項2に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料の平均一次粒径が、5nm?1μmである、マスターバッチ。
【請求項4】
請求項2に記載のマスターバッチにおいて、
前記カーボンブラックの比表面積が、10?400m^(2)/gである、マスターバッチ。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料がカーボンブラックのみからなる、マスターバッチ。
【請求項6】
請求項2乃至5いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料以外の他の顔料を含む、マスターバッチ。
【請求項7】
請求項2乃至6いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記マスターバッチ用熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の中から選ばれる少なくとも1種を含む、マスターバッチ。
【請求項8】
請求項7に記載のマスターバッチにおいて、
前記マスターバッチ用熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、またはポリエチレンのいずれかを含む、マスターバッチ。
【請求項9】
請求項6に記載のマスターバッチにおいて、
前記他の顔料が、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、多環式顔料、群青、コバルト、弁柄、酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、およびクロムチタンイエローのなかから選ばれる1種または2種以上を含む、マスターバッチ。
【請求項10】
請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を含む、樹脂成形材料。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂成形材料を含む成形体。
【請求項12】
請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂成形材料を射出成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項14】
黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含み、以下の条件を満たすか否かによって評価する、漆黒成形体を得るためのマスターバッチの評価方法。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」

第4 申立人1ないし3の主張に係る申立理由の概要

1 申立人1は、下記(1)を提示すると共に、異議申立理由として、概略、下記(2)?(7)の申立理由を主張している。
(1) 証拠方法
甲1-1: 特開2000-1597号公報
甲1-2: 特開2013-209494号公報
甲1-3: 特開2011-144271号公報
甲1-4: 特開2009-197211号公報
甲1-5: 特開2013-221131号公報
甲1-6: 国際公開第2013/031399号
甲1-7: 国際公開第2006/101063号
甲1-8: 三菱ケミカル「三菱カーボンブラック:物理化学特性表」
http://www.carbonblack.jp/product/list2_01.html
甲1-9: 有限会社長峰金属工業所「鏡面加工」
http://www.nagamine-kinnzoku.com/category/1313580.html
なお、表記については、概ね特許異議申立書の記載に従った。

(2) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、甲1-1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるか、甲1-1に記載された発明に、甲1-3ないし甲1-7に記載された周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-1」という。)。

(3) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、甲1-2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるか、甲1-2に記載された発明に、甲1-3ないし甲1-7に記載された周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-2」という。)。

(4) 本件特許の請求項14に係る発明は、甲1-2に記載された発明に、甲1-3ないし甲1-7に記載された周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項14に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-3」という。)。

(5) 本件特許の請求項1及び14で特定する4つのパラメータについて、発明の詳細な説明には、何をどのようにすれば満たすようにできるのかについて具体的な説明はなく、実施例1?12、比較例1?12は記載されてはいても、実施例以外の顔料では、なにをどのように配合すれば本件特許の請求項1及び14のパラメータを満たすものとできるかわからず、当業者においても過度の試行錯誤を要するものといえるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-4」という。)。

(6) 本件発明の課題である「統一された漆黒」が達成されたか否かに関し、発明の詳細な説明には、外観を目視で観察して1?4の4段階評価で評価し、実施例は1?3,比較例は4であることが示されているが、この漆黒の評価基準が不明であるから、当業者といえども、評点「1?3」と評点「4」の差異を認識できないから、本件発明に規定される3つのパラメータが所定の数値範囲にあることにより、統一された漆黒が得られることが裏付けられているとは理解できない。よって、発明の詳細な説明の記載からは、本件発明の課題が解決できると認識できないから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-5」という。)。

(7) 本件特許の請求項1及び14の「式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す」における「垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°」とする構成は、何を基準として各角度を定めるのか不明であって明確でないから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由1-6」という。)。

2 申立人2は、下記(1)を提示すると共に、異議申立理由として、概略、下記(2)?(6)の申立理由を主張している。
(1) 証拠方法
甲2-1: 特開2016-23222号公報
甲2-2: 玉垣庸一、湊幸衛、宮崎紀朗、「コンピュータによる塗装面の質感表現-コンピュータグラフィックスと測色(1)-」デザイン学研究、No.59、1987、45?50ページ
甲2-3: 特開平5-98198号公報
甲2-4: 「色彩のあれこれ Color_Research_Lab.」と題するホームページの内容
(http://www.geocities.jp/s_inoue777view/index.html)
甲2-5: 三菱ケミカル「三菱カーボンブラック:物理化学特性表」
(http://www.carbonblack.jp/product/list2-01.html)

(2) 本件発明1は、統一された漆黒を得ることができるマスターバッチを提供することを課題とし、特定の4つのパラメータの数値範囲を特定しているが、発明の詳細な説明をみても、これらのパラメータの数値範囲の根拠及び「統一された漆黒」であるかどうかの評価基準が不明であって、明細書の記載をみても「統一された漆黒」であることを客観的に判断できないから、当業者は、これらのパラメータが数値範囲を満たすことで上記課題が解決されると認識できないから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由2-1」という。)。

(3) 本件発明1は、統一された漆黒を得ることができるマスターバッチを提供することを課題とし、特定の4つのパラメータの数値範囲を特定しているが、当該パラメータにおいて明度(L^(*))が特定されていないため、これらのパラメータを満足したとしても漆黒とならないものが包含され、これらのパラメータの数値範囲を満足したとしても、前記課題が解決されないものを包含しているから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由2-2」という。)。

(4) 本件発明の課題である「統一された漆黒」が達成されたか否かに関し、発明の詳細な説明には、外観を目視で観察して1?4の4段階評価で評価し、実施例は1?3,比較例は4であることが示されているが、この漆黒の評価基準が不明であって、当業者といえども、本件の課題が達成された漆黒を得ることができないから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由2-3」という。)。

(5) 本件特許の請求項1及び14で特定する4つのパラメータについて、発明の詳細な説明には、段落【0021】の記載があるが、具体的な組み合わせについては実施例として記載されているのみであり、顔料を変更している実施例及び比較例を検討してもどのように顔料を調整すれば4つのパラメータを満足するかわからないから、実施例以外の顔料では、なにをどのように配合すれば本件特許の請求項1及び14のパラメータを満たすものとできるかわからず、当業者においても過度の試行錯誤を要するものといえるから、本件特許の請求項1及び14並びに請求項1を引用する請求項2ないし13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由2-4」という。)。

(6) 本件特許の請求項1ないし9は、甲2-1の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、この出願の時において、その出願人が同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由2-5」という。)。

3 申立人3は、下記(1)を提示すると共に、異議申立理由として、概略、下記(2)?(8)の申立理由を主張している。
(1) 証拠方法
甲3-1: (財)日本色彩研究所、「カラーマッチングの基礎と応用」、日刊工業新聞社、1991年11月30日、初版1刷、26?27ページ、46?61ページ、奥付
甲3-2: 平成28年(行ケ)第10147号 審決取消請求事件(判決日:平成29年6月8日)判決文
甲3-3: 特開2016-23222号公報
甲3-4: 特開2005-36186号公報
甲3-5: 三菱ケミカルのホームページの「三菱カーボンブラック:物理化学特性表」
(URL:http://www.carbonblack.jp/product/list2_01.html)

(2) 本件発明1における式(1)?(4)の意義は、Dを4.3未満とするために、「a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)」の各数値の差を小さくすること、及び「b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)」の各数値の差を小さくすることと解釈することができる。そうすると、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明においての実施例に記載されるいくつかのマスターバッチが式(1)?(4)を満たすことを除いては、マスターバッチの組成をどのようなものとすれば、式(1)?(4)を満たすか不明で、具体的には、所定の条件下、「a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)」が50付近の値となり、「b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)」が50付近となる樹脂プレートとなるマスターバッチは製造できない。
そうすると、本件特許の請求項1ないし9に係る発明及び本件発明1のマスターバッチを用いた発明である本件発明10?13は、明細書の教示と出願時の技術常識とに基づいて、当業者が発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかが理解できないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-1」という。)。

(3) 本件発明1ないし9は、統一された漆黒を得ることができるマスターバッチを提供することを課題とし、特定の4つのパラメータの数値範囲を特定しているが、当該パラメータにおいて明度(L^(*))が特定されていないため、これらのパラメータを満足したとしても漆黒とならないものが包含され、これらのパラメータの数値範囲を満足したとしても、前記課題が解決されないものを包含しており、本件発明1のマスターバッチを用いた発明である本件発明10?13、並びに、マスターバッチの評価方法の発明である本件発明14についても同様である。そうすると、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-2」という。)。

(4) 本件発明1ないし9は、統一された漆黒を得ることができるマスターバッチを提供することを課題とし、特定の4つのパラメータの数値範囲を特定しているが、当該パラメータにおける式(1)?(4)を満たすことは、樹脂プレートの色が漆黒に近いことを示す十分条件ではなく、マスターバッチが着色する色は黒に限定されていない。そうすると、これらのパラメータを満足したとしても漆黒とならないものが包含され、これらのパラメータの数値範囲を満足したとしても、前記課題が解決されないものを包含しており、本件発明1のマスターバッチを用いた発明である本件発明10?13、並びに、マスターバッチの評価方法の発明である本件発明14についても同様である。そうすると、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-3」という。)。

(5) 本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段である、黒色顔料に加え、他の色の顔料とが併用されている点が本件発明1において構成要件として特定されていない。そうすると、本件発明1は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないといえるから、発明の詳細な説明の記載を超えて特許を請求するものである。本件発明1を引用する本件発明2?5、7及び8並びにこれらのマスターバッチを用いた発明である本件発明10?13についても同様である。よって、本件特許の請求項1ないし5、7及び8並びに10ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-4」という。)。

(6) 本件発明の課題である「統一された漆黒」が達成されたか否かに関し、発明の詳細な説明の「統一された漆黒」の評価結果から直ちに、所定の条件下、式(1)?(4)を満たすことと、高い水準での統一された漆黒を得ることができるという効果との関係の技術的な意味を当業者が理解できないし、この漆黒の評価基準が不明であって、当業者といえども、発明の詳細な説明の記載からは、実施例で記載のマスターバッチが、実際に高い水準での統一された漆黒を得ることができるものとは理解できないから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-5」という。)。

(7) 本件特許の請求項1ないし14における特定の4つのパラメータ(式(1)?(4))の記載は、機能、特性等によって特定されている事項といえるが、これらの特定で技術的に十分特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を参酌しても、請求項の記載に基づいて、的確に新規性及び進歩性の判断ができないから、本件特許の請求項1ないし14の記載は明確でなく、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満足しない特許出願に対してされたものであって、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-6」という。)。

(8) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、甲3-3に記載された発明に、甲3-4に記載された周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである(以下、「申立理由3-7」という。)。

第4 取消理由の概要

平成30年10月19日付けで通知した取消理由は、
「【理由1】 本件特許の請求項1?14についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
【理由2】 本件特許の請求項1?14についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」
であって、その概要は、以下のとおりである。

1 発明の詳細な説明の記載において、「統一感のある漆黒調」であることを確認する評価手段が、本件特許明細書の段落【0061】に記載の1?4段階の評価であって、当業者が、評価の1?3と4との差異がどのようなものか認識できると判断できる具体的な証拠や当業者の技術常識があるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できないから、サポート要件を満足していない(以下、「取消理由1-1」という。)。なお、上記取消理由1-1は、申立人1の申立理由1-5、申立人2の申立理由2-1、申立人3の申立理由3-5と同旨である。
2 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、請求項1の式(1)?(4)が満たされることが示されているのは、実施例で示された特定の顔料の特定の配合量のマスターバッチのみであるから、それ以外の任意の顔料をそれ以外の任意の配合量で組み合わせた場合を包含する本件発明1は、サポート要件を満足していない(以下、「取消理由1-2」という。)。なお、上記取消理由1-2は、申立人3の申立理由3-4と同旨である。
3 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、明度(L^(*))について特定していないから、漆黒以外のものが含まれ、サポート要件を満足していないという理由(以下、取消理由1-3)という。)なお、上記取消理由1-3は、申立人2の申立理由2-2、申立人3の申立理由3-2と同旨である。
4 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、請求項1の式(1)?(4)は、色差を表現する式として十分な式ではなく、当該条件を満足しても漆黒にならないものが含まれ、本件発明の解決しようとする課題を解決できない黒色以外のマスターバッチをも含むものとなっているから、サポート要件を満足していない(以下、「取消理由1-4」という。)。なお、上記取消理由1-4は、申立人3の申立理由3-3と同旨である。
5 本件特許の請求項14に係る発明は、請求項14の式(1)?(4)は、当該条件を満足しても漆黒にならないものが含まれることは明らかで、漆黒が得られることが評価できないものを含むから、本件発明14は、発明の詳細な説明の記載を超えており、サポート要件を満足していない(以下、「取消理由1-5」という。)。なお、上記取消理由1-5は、申立人3の申立理由3-5と同旨である。
6 黒色顔料と組み合わせる他の顔料の種類と量が、実施例で使用された特定の顔料以外については、何をどのように配合すれば本件発明を実施できるのか当業者はわからず、本件発明のマスターバッチを得るには、当業者といえども過度の試行錯誤を要するものであるから、実施可能要件を満たしていない(以下、「取消理由2-1」という。)。なお、上記取消理由2-1は、申立人1の申立理由1-4、申立人2の申立理由2-4、申立人3の申立理由3-1と同旨である。
7 「統一感のある漆黒調」であることを確認する評価手段が、本件特許明細書の段落【0061】に記載の1?4段階の評価であって、当業者が、評価の1?3と4との差異がどのようなものか認識できると判断できる具体的な証拠や当業者の技術常識があるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載から、実施例の樹脂プレートが「統一感のある漆黒調」のものが得られていることが認識できない。したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に、明確かつ十分に記載されているとはいえない(以下、「取消理由2-2」という。)。
なお、上記取消理由2-2は、申立人2の申立理由2-3と同旨である。

第5 合議体の判断

当合議体は、以下述べるように、上記取消理由1及び2には理由はないと判断する。

1 取消理由1(サポート要件)について

(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日知財高裁特別部判決参照。)。

(2) 検討
そこで、検討する。

ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ、樹脂成形材料、成形体及びこれらの製造方法、マスターバッチの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着色された樹脂成形体を得る方法として、予め顔料を樹脂中に分散させたマスターバッチと、着色させたい樹脂成形体の材料となる樹脂と、を混ぜ合わせた後、成形加工することが行われている。このようなマスターバッチは、着色させたい顔料、及び樹脂成形体の材料となる樹脂と同種または異種の樹脂を、必要に応じて加えられる各種添加剤と共に、混練することにより製造されている。
・・・
【0004】
一方で、立体加工が施された樹脂成形体においては、使用者が観察する角度の違いによって光の反射が変化し、使用者が感じられる色味、印象、美感等が異なる現象が生じ、これにより外観上の品質イメージが低下し、統一感が損なわれることがあった。このような現象の原因の一つとして、ブロンズ現象が知られている。
【0005】
ブロンズ現象を評価する方法としては、例えば、特許文献2には、多角度分光測色計を用い、最も赤色波長領域の反射率が高い受光角度において、ベースラインの550nmとピークトップの650nmの反射強度比を求め、当該反射強度比が小さいほどブロンズ現象の低減が可能であることが開示されている。
また、特許文献3には、三次元変角分光測色システムを用いて、記録画像に対して45°方向からの光を照射し、逆方向の45°の位置で受光することにとって正反射光の彩度を算出し、正反射光の彩度が小さいほどブロンズが目立ちにくいことが開示されている。また、当該文献において、ブロンズ色の彩度はC^(*)=√(a^(*)^2+b^(*)^2)とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-209494号公報
【特許文献2】特開2011-144271号公報
【特許文献3】特開2013-252698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は、使用者の美的感覚の向上に伴い、より高い水準での統一感が求められている。なかでも、立体加工が施された黒色の樹脂成形体においては、使用者が観察する角度の違いに加え、樹脂成形体の凹凸などによっても光の反射が変化する結果、使用者が感じられる色味、印象、美感等が異なることがあるため、より統一感のある漆黒調が求められている。
そのため、ブロンズ現象を抑制するだけでは、使用者が要求するより高い水準での、統一された漆黒を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、マスターバッチにおいて、特定の条件を満たすことが、上記課題を解決する設計指針として有効であるという知見を得た。
すなわち、本発明者は、使用者が感じられる色味、印象、美感等が異なる原因として、固定した樹脂成形体に光を照射したときに、光源の位置の変化により受光される光のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が異なることに着目した。そして、特定の条件下におけるa^(*)値、b^(*)値の変動について新たな設計指針を立て、かかるa^(*)値、b^(*)値が一定の条件を満たすことによって、使用者が樹脂成形体をどの角度から観察しても、色味、印象、美感等の違いを感じにくくなる結果、高い水準での統一された漆黒を得ることができることを初めて見出し、本発明を完成した。」

・「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い水準での、統一された漆黒を得ることができるマスターバッチ、成形材料及び成形体が提供される。」

・「【発明を実施するための形態】
・・・
【0014】
図1は、本実施形態に係る多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を模式的に示した図である。図1に示すように、マルチアングル測色計100は、光源210,220,230,240と、受光部300を備え、異なる4方向から対象物にそれぞれ照射し、1方向で受光する多方向照明一方向受光式を採用している。法線n(垂線)を45°、受光部を90°としたとき、光源210は20°、光源220は45°、光源230は75°、光源240は110°にそれぞれ位置する。
【0015】
各光源210,220,230,240から順番に樹脂プレートPに向かって出射された光は、それぞれ、樹脂プレートPの表面で反射し、当該反射した光のうち、対法線角45°に平行な光が、受光部300で受光され、L^(*)a^(*)b^(*)表色系における色が判定される(法線を45°とした場合は、受光部300の位置は90°となる)。
【0016】
多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計としては、例えば、「CE-741GL」(Macbeth社製)を用いることができる。
【0017】
・樹脂プレート
樹脂プレートは、マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により作成される。
【0018】
樹脂プレートは、平面を有するものであり、厚み2?3mmが好ましい。
・・・
【0020】
ここで、特許文献2,3に開示されるような、従来のブロンズ現象の評価方法では、一方向から光を照射したときに受光される光を評価するものであるため、立体的な樹脂成形体を評価するには充分に適していなかった。また、特許文献2に開示される技術では、赤色波長の反射率に着目し、反射強度比が小さいものほどブロンズ現象が小さいと評価するものであった。すなわち、一方向の光に対する赤みのみを評価するものであるため、高水準での統一された漆黒が得られるものではなかった。
これに対し、本実施形態におけるマスターバッチが満たす条件は、光源の位置を多段階的に変化させることにより、使用者が樹脂成形体を実際に使用する状況を再現するものである。くわえて、本実施形態におけるマスターバッチが満たす条件は、光源の位置の違いによるa^(*)値、b^(*)値の変動距離に着目するものであるため、単にΔa^(*)値、Δb^(*)値に着目するよりもさらに成形体における色味、印象、美感等の違いを低減でき、高水準での統一された漆黒を得ることができる。
【0021】
式中、Dは、a^(*)値、b^(*)値の光源の位置の違いによる変動を距離として算出したときの総和である。すなわち、使用者が樹脂成形体を観察する位置が変化した場合や光源の位置が変化した場合等、光源と使用者とがあらゆる方向であっても、統一された漆黒を有する成形体が得られる。
【0022】
Dは、4.3未満であり、より統一された漆黒を得る観点から、2.5未満であることがより好ましく、1.8未満であることがさらに好ましい。
【0023】
上記a^(*)値の最大値と最小値の差Δa^(*)が、2.5未満であり、2.3以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましい。これにより、一層、統一された漆黒が得られる。
【0024】
上記a^(*)値は、-15?15の範囲内であることが好ましい。
【0025】
上記b^(*)値の最大値と最小値の差Δb^(*)が、3.6未満であり、3.4以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。これにより、一層、統一された漆黒が得られる。
【0026】
上記b^(*)値は、-15?15の範囲内であることが好ましい。
【0027】
当該樹脂プレートのL^(*)値は、35以下であることが好ましい。これにより深みのある黒色が得られる。なお、当該樹脂プレートのL*値は、積分球方式の分光光度計を用いて測定される。
【0028】
樹脂プレートの表面は、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型の表面が転写されている。金型の研磨方法は、公知の方法を用いればよい。」

・「【0029】
樹脂プレートの表面のa^(*)値、b^(*)値が、式(1)?(4)を満たすために、本発明者は、従来とは異なる製法上の工夫をすることを見出した。具体的には、次の条件を適切に組み合わせ、調整することが重要となる。
(i)マスターバッチ用熱可塑性樹脂と黒色顔料との組み合わせ
(ii)黒色顔料の選択
(iii)マスターバッチの製造方法
(iv)黒色顔料と他の顔料との組み合わせ 」

・「【0045】
・マスターバッチの製造方法
本実施形態におけるマスターバッチは、以下のようにして製造される。
まず、例えば、バンバリミキサー、ニーダー、二軸押出機等といった通常の混練機を用い、黒色顔料、マスターバッチ用熱可塑性樹脂及びその他必要に応じた添加剤を混練し、マスターバッチ用樹脂に高濃度に黒色顔料を練り込む。この際、黒色顔料の一次平均粒子径、比表面積及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂との配合量等に合わせて、成形温度、時間、押出機回転数等を設定することにより、上記の特定の条件を満たすよう制御することができる。好ましくは、成型温度を50?200℃、押出機回転数200?300rpm、より好ましくは、成型温度を50?160℃、押出機回転数200?300rpmとすることができる。
つぎに、黒色顔料及びマスターバッチ用樹脂の混合物を混練機のダイスより吐出することによってマスターバッチが得られる。
【0046】
本実施形態のマスターバッチによれば、上記特定の条件を満たすことにより、統一された漆黒を得ることができる。くわえて、従来技術では、特に光源が太陽光の場合において、色味、質感、印象、美感などの微妙な変化が感じられる傾向にあったが、本実施形態のマスターバッチによればこれを低減できる。また、上記特定の条件という指標は、黒色顔料の一次平均粒子径、比表面積及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂との配合量等に合わせて、温度、時間、混練速度等を設定したり、黒色顔料と他の顔料との組み合わせにより、調整されるものである。そのため、特定の顔料を用いることなく、顔料選択の幅を広げることができる。
【0047】
また、統一された漆黒とは、本実施形態のマスターバッチを用いて作製された樹脂成形体において、使用者が観察する角度の違いや樹脂成形体の凹凸などによって光の反射が変化した場合においても、使用者が視覚を通じて感じられる色味、質感、印象、美感などのムラが低減され、高尚な黒色が感じられるものを意図する。また、統一された漆黒とは、光の反射を低減させ、黒色による落ち着きのある印象を与えるものを含むものである。」

・「【0048】
・マスターバッチの評価方法
黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、以下の条件を満たすか否かによってマスターバッチを評価する。
(条件)
・・・
【0049】
上記特定の条件を満たすか否かによって、統一された漆黒が得られるか否かを評価することができる。すなわち、マスターバッチを用いて評価を行うことができるため、樹脂成形材料、成形体を実際に製造しなくても、統一された漆黒が得られるか否か事前に判断することができる。」

・「【0050】
・樹脂成形材料
樹脂成形材料は、上述したマスターバッチと、希釈用樹脂と、を含む。
また、樹脂成形材料の製造方法は、上述したマスターバッチと、希釈用樹脂と、必要に応じた添加剤とともに、混合する工程を含む。混合方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0051】
希釈用樹脂は、成形体の材料となる主原料であり、マスターバッチを希釈するための樹脂として用いられる。希釈用樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0052】
・成形体
成形体は、上述した樹脂成形材料を含む。
また、成形体の製造方法は、上記樹脂成形材料を、必要に応じた添加剤とともに、射出成形する工程を含む。射出成形は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0053】
本実施形態の成形体は、高い水準での統一された漆黒が得られるものである。外観が重視され、様々な形状に加工される電子・電気・OA機器、家具、及び雑貨類、自動車内装部品等の分野で使用することができる。中でも、統一された漆黒が求められる用途において好適である。
【0054】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、上記の条件を満たすマスターバッチを、希釈用樹脂とともに用いて樹脂成形材料を製造するために使用することもできる。」

・「【実施例】
【0055】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0056】
(顔料)
実施例及び比較例で使用した顔料は、以下の通りである。
・Black7(製品名:BP880:製造元Cabot社)、一次平均粒子径16nm、比表面積220m^(2)/g
・Green7(製品名 Heliogen Green K8730:製造元 BASF社)
・Green50(製品名 42-633A:製造元 東罐マテリアル・テクノロジー株式会社)
・Blue15:1(製品名 Lionol Blue SL:製造元 トーヨーカラー株式会社)
・Blue29(製品名 群青 D-981:製造元 第一化成工業株式会社)
・Red122(製品名 Cinquasia Pink K4430FP:製造元 BASF社)
・Red101(製品名 Bayferrox 130M:製造元 LANXESS社)
・Yellow138(製品名 PAイエロー890D:製造元 BASF社)
・Brown24(製品名 42-134A:製造元 東罐マテリアル・テクノロジー株式会社)
【0057】
(マスターバッチの作成)
・実施例1?12、比較例1?12
マスターバッチ中の全顔料濃度が、表1に示す濃度となるように、全顔料と、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)(ウルトゼックス 30501J、株式会社プライムポリマー製)とを、二軸押出機を用いて、成型温度を50?160℃、押出機回転数200rpmで混練し、得られた混練物をダイスより吐出することによってマスターバッチを得た。
全顔料の組成は、表2?7に示すものとした。
・比較例13,14
上記実施例7,12について、それぞれ成型温度を50?230℃にした以外は、同様にして、マスターバッチを得た。
【0058】
(樹脂プレートの作成)
まず、得られたマスターバッチ3重量部に対し、ポリプロピレン100重量部(ノバテックPP BC03B、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)、日本ポリプロ株式会社製)を連続二軸押出機にて混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成した。
作成した樹脂プレートは、大きさ:80×50mm、厚み2mmであった。
【0059】
(測定)
樹脂プレートについて、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計(「CE-741GL」(Macbeth社製))を用いて、垂線を45°、受光部を90°、光源を20°、45°、75°、110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を測定した。
また、測定されたa^(*)値の最大値と最小値の差をΔa^(*)、測定されたb^(*)値の最大値と最小値の差Δb^(*)とした。
結果を表2?7に示す。
【0060】
(Dの算出)
Dは次式(1)に当てはめ、算出した。結果を表2?7に示す。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。)
【0061】
(評価)
評価は、以下のようにして行った。
晴天の屋外にて、午前10時から午後2時までの自然光(太陽光)の下、図2(a)?(d)に示すように、樹脂プレートPに対し法線n(垂線)を45°、観察者を90°とし、樹脂プレートPが観察者の影にならないよう位置を定め、樹脂プレートPの角度を、20°、45°、75°、及び110°に変化させて、樹脂プレートPの外観を目視で観察した。観察した結果、樹脂プレートPの統一された漆黒について、1?4の4段階で評価した。数値が低いほど、統一された漆黒が得られたことを表す。結果を表9に示す。
【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】



イ 上記の発明の詳細な説明の記載、特に段落【0001】ないし【0007】によると、本件発明2ないし13の解決しようとする課題は、「より統一感のある漆黒調」を得ることであって、本件発明14の解決しようとする課題は、そのようなマスターバッチの評価方法を提供することである(以下、総称して、「発明の課題」という。)。

ウ そして、発明の詳細な説明の一般記載である段落【0008】、【0010】、【0014】ないし【0029】において、式(1)?(4)を満たすことで、光源の位置を多段階的に変化させることにより、使用者が樹脂成形体を実際に使用する状況を再現するものであって、光源の位置の違いによるa^(*)値、b^(*)値の変動距離に着目するものであるため、単にΔa^(*)値、Δb^(*)値に着目するよりもさらに成形体における色味、印象、美感等の違いを低減でき、高水準での統一された漆黒を得ることができる旨記載されている。
確かに、式(1)?(4)のみの条件を満たすのみでは漆黒とならない場合も包含しているが、本件発明2及び14は、「漆黒成形体を得るためのマスターバッチ」に特定されているから、そのようなものは、本件発明2及び14には包含されないものである。
そして、発明の詳細な説明の具体的な実施例の記載である段落【0056】?【0070】においては、本件発明2の式(1)?(4)を満たすマスターバッチでは、統一された漆黒の程度の指標が1?3であるのに対して、式(1)?(4)を満足しないマスターバッチでは、統一された漆黒の程度の指標が4となっていて、当該指標は、数値が低いほど統一された漆黒が得られたものとされている。
ここで、漆黒についての具体的な判定基準については、「樹脂プレートPの外観を目視で観察した。観察した結果、樹脂プレートPの統一された漆黒について、1?4の4段階で評価した」(段落【0061】)とあるのみであって、客観的な指標は示されていないが、「漆黒」に関しての当業者の技術常識である、L^(*)a^(*)b^(*)座標系等の数値で漆黒を示す基準が確立されていないこと、及び、漆黒の判断は色彩に関する専門家の評価に頼っているものであること、を勘案すれば、当業者は、評価が1?3の実施例の本件発明1の式(1)?(4)を満たすマスターバッチでは、統一された漆黒が得られていると理解する。

そうすると、発明の詳細な説明の記載により、本件発明2及び14が発明の課題を解決できると当業者は認識することができるといえる。

エ したがって、本件発明2及び14に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。本件発明3ないし13についても同様である。

よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するから、上記取消理由1(取消理由1-1ないし1-5)には、理由がない。

2 取消理由2(実施可能要件)について

(1) 実施可能要件の判断基準
物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産及び使用をすることができる程度の記載を要する。
また、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用及びその方法により生産された物の使用をすることができる程度の記載を要する。
さらに、方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載を要する。

(2) 検討
そこで、検討する。

上記1(2)によると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明2の発明特定事項である式(1)?(4)を満足するマスターバッチを得るための条件について、「樹脂プレートの表面のa^(*)値、b^(*)値が、式(1)?(4)を満たすために、本発明者は、従来とは異なる製法上の工夫をすることを見出した。具体的には、次の条件を適切に組み合わせ、調整することが重要となる。(i)マスターバッチ用熱可塑性樹脂と黒色顔料との組み合わせ(ii)黒色顔料の選択(iii)マスターバッチの製造方法(iv)黒色顔料と他の顔料との組み合わせ」(段落【0029】)及び「上記特定の条件という指標は、黒色顔料の一次平均粒子径、比表面積及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂との配合量等に合わせて、温度、時間、混練速度等を設定したり、黒色顔料と他の顔料との組み合わせにより、調整されるものである。そのため、特定の顔料を用いることなく、顔料選択の幅を広げることができる。」(段落【0047】)が記載されており、具体的な実施例1ないし12も記載されている。そして、実施例以外についても、実施例のものから、当業者は式(1)?(4)を満たす配合を過度の試行錯誤なく実施できるといえる。
したがって、本件発明2について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産することができる及び生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。また、本件発明3ないし11についても同様である。
さらに、本件発明12の「樹脂成形材料の製造方法」の発明及び本件発明13の「成形体の製造方法」の発明についても同様に、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造する方法及びその方法により生産された物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
加えて、本件発明14の「評価方法」の発明についても同様に、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があるといえる。

よって、上記取消理由2には、理由がない。

第6 取消理由に採用しなかった申立人1の申立理由について

1 申立理由1-1(請求項2?13:甲1-1に基づく新規性進歩性)について
(1) 甲1-1に記載された発明
甲1-1の特許請求の範囲の請求項1?3、段落【0001】、【0005】、【0007】、【0009】、【0011】、【0017】、【0018】、【0027】、【0028】、【0034】、【0036】、【0037】、【0047】の記載から、甲1-1には、申立人1が異議申立書の第13?14頁に記載されているとおりの、以下の発明が記載されているといえる。

「カーボンブラック、並びに、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン-αオレフィンブロック共重合体を含む、マスターバッチ。」(以下、「甲1-1-1発明」という。)

「甲1-1-1発明のマスターバッチと、メルトフローレート(230℃、2.16Kgf)が10?200g/10分であるポリプロピレンと、を含む、樹脂成形材料。」(以下、「甲1-1-2発明」という。)

「甲1-1-2発明の樹脂成形材料を含む、成形体。」(以下、「甲1-1-3発明」という。)

「甲1-1-1発明のマスターバッチと、メルトフローレート(230℃、2.16Kgf)が10?200g/10分であるポリプロピレンと、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。」(以下、「甲1-1-4発明」という。)

「甲1-1-2発明の樹脂成形材料を射出成形する工程を含む、成形体の製造方法。」(以下、「甲1-1-5発明」という。)

(2) 本件発明2と甲1-1-1発明との対比・判断
甲1-1-1発明の「プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン-αオレフィンブロック共重合体」は、本件発明2の「マスターバッチ用熱可塑性樹脂」に相当することは明らかである。
そうすると、本件発明2と甲1-1-1発明とは、

「黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、マスターバッチ。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
マスターバッチについて、本件発明2は、「以下の条件を満たす」として「(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
と特定するのに対して、甲1-1-1発明では、この点を特定しない点。

<相違点2>
マスターバッチについて、本件発明2は、「漆黒成形体を得るための」と特定されているのに対し、甲1-1-1発明は、この点を特定しない点。

事案に鑑み、まず、相違点1について検討する。
甲1-1-1発明においては、マスターバッチに配合される顔料については、カーボンブラックしか特定されていないし、甲1における一般記載において、顔料としてカーボンブラックに併用して、その他の顔料が使用可能であること(甲1-1の段落【0027】)、併用する顔料として、特にフタロシアニン系顔料が好適である旨の記載(甲1-1の段落【0028】)があるのみである。
一方で、本件特許明細書の実施例及び比較例の記載(段落【0055】から【0070】)をみれば、カーボンブラック以外の顔料組成が異なることで、D値、Δa^(*)、Δb^(*)の値が変化することがわかる。
そうすると、甲1-1-1発明において、カーボンブラック以外にどのような顔料を含有するのかは特定されていないから、甲1-1-1発明のマスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したときのD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明2で特定する数値範囲となる蓋然性が高いとはいえない。
よって、相違点1は、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明2は、相違点2について検討するまでもなく、甲1-1に記載された発明ということはできない。

そして、申立人1?3の提示するいずれの証拠にも、マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したときのD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明2で特定する数値範囲となる点について記載されていない。
そうすると、甲1-1-1発明において、相違点1を満たすものとすることは、当業者において想到容易でない。
さらに、本件発明2のマスターバッチは、相違点1を満足することで統一された漆黒を得ることができるという効果が奏されるところ、当該効果は、申立人の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。
以上のことから、本件発明2は、相違点2について検討するまでもなく、甲1-1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 本件発明3ないし13と甲1-1-1発明、甲1-1-2発明、甲1-1-3発明、甲1-1-4発明及び甲1-1-5発明との対比・判断
本件発明3ないし13と、それぞれの発明と対応する甲1-1-1発明、甲1-1-2発明、甲1-1-3発明、甲1-1-4発明及び甲1-1-5発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)における相違点1で実質的に相違するから、本件発明3ないし13は、甲1-1に記載された発明ということはできない。
また、上記(2)と同様に、相違点1は当業者において想到容易でないから、本件発明3ないし13は、甲1-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) まとめ
以上のことから、申立人1の申立理由1-1によっては、本件特許の請求項2ないし13に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由1-2(請求項2?13:甲1-2に基づく新規性進歩性)について
(1) 甲1-2に記載された発明
甲1-2の特許請求の範囲の請求項1、段落【0002】、【0003】、【0006】、【0007】、【0013】、【0020】、【0021】、【0026】、【0032】、【0058】、【0060】、【0061】、【0063】、【0065】、【0072】、【0074】、【0076】、【0088】、【0092】の記載から、甲1-2には、以下の発明が記載されているといえる。

「カーボンナノチューブ及びカーボンブラックとプロピレン樹脂とを含む、漆黒の色調を示す成形体用のマスターバッチ。」(以下、「甲1-2-1発明」という。)

「甲1-2-1発明のマスターバッチと、ポリオレフィン樹脂と、を含む、樹脂成形材料。」(以下、「甲1-2-2発明」という。)

「甲1-2-2発明の樹脂成形材料を含む、成形体。」(以下、「甲1-2-3発明」という。)

「甲1-2-1発明のマスターバッチと、ポリオレフィン樹脂と、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。」(以下、「甲1-2-4発明」という。)

「甲1-2-2発明の樹脂成形材料を射出成形する工程を含む、成形体の製造方法。」(以下、「甲1-2-5発明」という。)

(2) 本件発明2と甲1-2-1発明との対比・判断
甲1-2-1発明の「プロピレン樹脂」は、本件発明2の「マスターバッチ用熱可塑性樹脂」に相当することは明らかである。
甲1-2-1発明の「漆黒の色調を示す成形体用の」は、本件発明2の「漆黒成形体を得るための」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲1-2-1発明とは、

「黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、漆黒成形体を得るためのマスターバッチ。」

の点で一致し、上記1(2)と同様の以下の点で相違する。

<相違点1’>
マスターバッチについて、本件発明2は、「以下の条件を満たす」として「(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
と特定するのに対して、甲1-2-1発明では、この点を特定しない点。

相違点1’について検討する。
甲1-2-1発明においては、漆黒の成形体を得るために、マスターバッチに配合される顔料としてカーボンナノチューブを使用することに特徴を有するものであって、カーボンブラックを併用することができるものである。
そこで、甲1-2-1発明のマスターバッチについての相違点1’に係る(条件)を満足するかどうかを検討すると、本件特許明細書の段落【0055】から【0070】をみれば、漆黒の成形体を得るために同じカーボンブラックを含むものであっても、カーボンブラック以外の顔料組成が異なることで、D値、Δa^(*)、Δb^(*)の値が変化することがわかる。
そうすると、甲1-2-1発明において、甲1-2-1発明のマスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したときのD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明2で特定する数値範囲となる蓋然性が高いとはいえない。
よって、相違点1’は、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明2は、甲1-2に記載された発明ということはできない。

そして、申立人1?3の提示するいずれの証拠にも、マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したときのD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明2で特定する数値範囲となる点について記載されていない。
そうすると、甲1-2-1発明において、相違点1’を満たすものとすることは、当業者において想到容易でない。
さらに、本件発明2のマスターバッチは、相違点1’を満足することで統一された漆黒を得ることができるという効果が奏されるところ、当該効果は、申立人の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。
以上のことから、本件発明2は、甲1-2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 本件発明3ないし13と甲1-2-1発明、甲1-2-2発明、甲1-2-3発明、甲1-2-4発明及び甲1-2-5発明との対比・判断
本件発明3ないし13と、それぞれの発明と対応する甲1-2-1発明、甲1-2-2発明、甲1-2-3発明、甲1-2-4発明及び甲1-2-5発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)における相違点1’で実質的に相違するから、本件発明3ないし13は、甲1-2に記載された発明ということはできない。
また、上記(2)と同様に、相違点1’は当業者において想到容易でないから、本件発明3ないし13は、甲1-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) まとめ
以上のことから、申立人1の申立理由1-2によっては、本件特許の請求項2ないし13に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由1-3(請求項14:甲1-2に基づく新規性進歩性)について
(1) 甲1-2に記載された発明
甲1-2の特許請求の範囲の請求項1、段落【0002】、【0003】、【0006】、【0007】、【0013】、【0020】、【0021】、【0026】、【0032】、【0058】、【0060】、【0061】、【0063】、【0065】、【0072】、【0074】、【0076】、【0088】、【0092】の記載から、甲1-2には、以下の発明が記載されているといえる。

「黒色顔料と、ポリオレフィン樹脂と、を含む漆黒の色調を示す成形体用のマスターバッチの評価方法であって、
以下の条件を満たすか否かによって評価するマスターバッチの評価方法。
(条件)前記マスターバッチ2?20重量部に対し、ポリオレフィン樹脂100重量部を混練し、射出成形により成形体を作成したとき、
前記樹脂プレートの表面L^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるL^(*)値、a^(*)値、b^(*)値がそれぞれ特定値未満であること。」(以下、「甲1-2-6発明」という。)

(2) 本件発明14と甲1-2-6発明との対比・判断
甲1-2-6発明の「プロピレン樹脂」は、本件発明14の「マスターバッチ用熱可塑性樹脂」に相当することは明らかである。
甲1-2-6発明の「漆黒の色調を示す成形体用の」は、本件発明14の「漆黒成形体を得るための」に相当する。
そうすると、本件発明14と甲1-2-6発明とは、

「黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含み、以下の条件を満たすか否かによって評価する、漆黒成形体を得るためのマスターバッチの評価方法。」

の点で一致し、上記2(2)と同様の以下の点で相違する。

<相違点1’’>
評価指標として、本件発明14は、「以下の条件を満たす」として「(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
と特定するのに対して、甲1-2-6発明では、「(条件)
前記マスターバッチ2?20重量部に対し、ポリオレフィン樹脂100重量部を混練し、射出成形により成形体を作成したとき、
前記樹脂プレートの表面L^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるL^(*)値、a^(*)値、b^(*)値がそれぞれ特定値未満であること」である点。

相違点1’’について検討する。
甲1-2-6発明における評価指標と本件発明14の評価指標が異なることは明らかであるから、相違点1’’は、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明14は、甲1-2に記載された発明ということはできない。

そして、申立人1?3の提示するいずれの証拠にも、マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したときのD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明14で特定する数値範囲となるかどうかを評価指標とする点について記載されていない。
そうすると、甲1-2-6発明において、相違点1’’を満たすものとすることは、当業者において想到容易でない。
さらに、本件発明14の評価方法は、相違点1’’を満足することで統一された漆黒を得ることができるという効果が奏されるところ、当該効果は、申立人1の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。
以上のことから、本件発明14は、甲1-2-6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人1の申立理由1-3によっては、本件特許の請求項14に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由1-6(請求項2?14:明確性)について

申立人1は、請求項2及び請求項14の「式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す」における「垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°」とする構成は、何を基準として各角度を定めるのか不明である旨主張するが、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計においての垂線を45°、受光部を90°、移動する光源を20°、45°、75°、及び110°としているものであることは請求項2及び14の記載自体から明らかである。
よって、申立人1の申立理由1-6によっては、本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

第7 取消理由に採用しなかった申立人2の申立理由について

1 申立理由2-5(請求項2?9:甲2-1に基づく拡大先願)について
(1) 甲2-1に記載された発明
甲2-1の出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1、4及び5、明細書の段落【0008】、【0016】、【0024】、【0041】、【0043】、【0046】、【0047】、【表1】の記載から、甲2-1には、実施例1として記載されている塩素化銅フタロシアニン顔料組成物を用いたブロンズ評価のための組成物として、以下の発明が記載されているといえる。

「塩素化銅フタロシアニン(平均塩素置換基数0.5)18.5部、フタルイミドメチル銅フタロシアニン1.5部を45℃、95%硫酸(和光純薬社製、試薬一級)180部に溶解させ、エジェクター(樹脂製アスピレータ)で吸引しながら温湯と混合させて硫酸スラリーを得、この硫酸スラリーを70℃、1時間熟成させて濾過、その後中性になるまで水洗を繰り返し、その後、キシレンを乳化剤でエマルジョン化した溶液を顔料スラリーに加え、キシレン留去後、濾過、水洗、乾燥して得た乾燥物を粉砕し、得られた塩素化銅フタロシアニン顔料組成物1.25部、カーボンブラック(三菱化学社製#44)1.25部、ステアリン酸マグネシウム(堺化学社製)1.25部、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックBC3)500部を均一になるように混合させた樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を220℃で射出成型し、プラスチック成形物の変角分光光度計(X-Lite社製、MA98)でLab値測定したところ、45度の入射光に対する-15度、15度、25度、45度、75度、110度のa値が、それぞれ0.24、0.38、1.31、0.85、0.47、0.24である、樹脂組成物。」(以下、「甲2-1先願発明」という。)

(2) 本件発明2と甲2-1先願発明との対比・判断
甲2-1先願発明の「ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックBC3)」は、本件発明2の「マスターバッチ用熱可塑性樹脂」と、「熱可塑性樹脂」という限りにおいて相当する。
甲2-1先願発明の「樹脂組成物」は、樹脂組成物である限りにおいて、本件発明2の「マスターバッチ」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲2-1先願発明とは、

「黒色顔料、及び熱可塑性樹脂を含み、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、樹脂組成物。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
樹脂組成物に関し、本件発明2は、「マスターバッチ」と特定するのに対し、甲2-1先願発明は、この点を特定しない点。

<相違点3>
マスターバッチ(樹脂組成物)について、本件発明2は、「以下の条件を満たす」として「(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b_(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))」
と特定するのに対して、甲2-1先願発明では、「220℃で射出成形した、プラスチック成形物の変角分光光度計(X-Lite社製、MA98)でLab値測定したところ、45度の入射光に対する-15度、15度、25度、45度、75度、110度のa値が、それぞれ0.24、0.38、1.31、0.85、0.47、0.24である」点。

以下、相違点について検討する。
相違点2について
「マスターバッチ」とは、プラスチックに高濃度の着色剤を分散させ、プラスチックの成型時に規定の倍率で希釈する樹脂用着色剤を意味するから、甲2-1先願発明の樹脂組成物とは、同一ということはできない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点である。

相違点3について
甲2-1先願発明でLabを測定している成形品の金型は、「粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型」かどうか不明であるから、本件発明2における表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系と同じ測定条件となるか不明である。
そして、甲2-1先願発明では、b^(*)値は不明であって、D値についても不明である。確かに、甲2-1先願発明の樹脂組成物の成形品はブロンズ消失したものであるが、本件発明2が「ブロンズ現象を抑制するだけでは使用者が要求するより高水準での、統一された漆黒を得ることができなかった」(段落【0007】)ことを発明が解決しようとする課題としていることから、ブロンズ消失していたとしても、相違点3に係るD値、Δa^(*)値、Δb^(*)値が、本件発明2で特定する数値範囲となるとはいえない。
そうすると、相違点3は実質的な相違点である。

してみれば、本件発明2は、甲2-1先願発明とは同一ではない。
よって、本件発明2は、甲2-1に記載された発明と同一ではない。

(3) 本件発明3ないし9と甲2-1先願発明との対比・判断
本件発明3ないし9と、甲2-1先願発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)における相違点2及び3で実質的に相違するから、本件発明3ないし9は、甲2-1に記載された発明ということはできない。
よって、本件発明3ないし9は、甲2-1に記載された発明と同一ではない。

(4) まとめ
以上のことから、申立人2の申立理由2-5によっては、本件特許の請求項2ないし9に係る特許を取り消すことはできない。

第8 取消理由に採用しなかった申立人3の申立理由について

1 申立理由3-6(請求項2?14:明確性)について
申立人3は、本件特許の請求項2及び14における特定の4つのパラメータ(式(1)?(4))の記載は、機能、特性等によって特定されている事項といえるが、これらの特定で技術的に十分特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を参酌しても、請求項の記載に基づいて、的確に新規性及び進歩性の判断ができないから、本件特許の請求項2及び14の記載は明確でない旨主張する。
しかし、本件特許の請求項2及び14における特定の4つのパラメータ(式(1)?(4))は明確であって、当該式を満足するかどうかで新規性及び進歩性の判断を行うことができるものであるから、不明確とはいえない。
よって、申立人3の申立理由3-6によっては、本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由3-7(請求項2?14:進歩性)について
申立人3は、本件特許の請求項2?14に係る発明は、甲3-3に記載された発明に、甲3-4に記載された周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張するが、甲3-3の公知日は、平成28年2月8日であって、本件特許の優先日である平成28年1月27日の後である。そして、優先権主張が認められない理由もないから、当該甲3-3は、特許法第29条第2項の根拠となる文献とは認められない。
そうすると、申立人3の申立理由3-7によっては、本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

3 平成31年1月25日付け意見書において主張する取消理由(請求項2?14:明確性、以後、「申立理由3-8」という。)
申立人3は、請求項2及び14における「漆黒成形体」の「漆黒」が、どのような範囲の色であるか明確でない旨主張する。
しかし、「漆黒」とは「漆のように黒くて光沢のあること。また、その色。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であって、日本語として明確である。
また、当業者において、L^(*)a^(*)b^(*)座標系等における数値で「漆黒」を示す基準が確立されていないこと、及び、漆黒の判断は色彩に関する専門家の評価に頼っているものであることを踏まえると、「漆黒」の色の範囲が明らかでないことを理由として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、申立人3の申立理由3-8によっては、本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

第9 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項2ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、請求項1は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に係る特許に対して、特許異議申立人らがした特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
黒色顔料、及びマスターバッチ用熱可塑性樹脂を含み、以下の条件を満たすマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料が、カーボンブラックを含む、黒色のマスターバッチ。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b^(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))
【請求項3】
請求項2に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料の平均一次粒径が、5nm?1μmである、マスターバッチ。
【請求項4】
請求項2に記載のマスターバッチにおいて、
前記カーボンブラックの比表面積が、10?400m^(2)/gである、マスターバッチ。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料がカーボンブラックのみからなる、マスターバッチ。
【請求項6】
請求項2乃至5いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記黒色顔料以外の他の顔料を含む、マスターバッチ。
【請求項7】
請求項2乃至6いずれか一項に記載のマスターバッチにおいて、
前記マスターバッチ用熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の中から選ばれる少なくとも1種を含む、マスターバッチ。
【請求項8】
請求項7に記載のマスターバッチにおいて、
前記マスターバッチ用熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、またはポリエチレンのいずれかを含む、マスターバッチ。
【請求項9】
請求項6に記載のマスターバッチにおいて、
前記他の顔料が、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、多環式顔料、群青、コバルト、弁柄、酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、およびクロムチタンイエローのなかから選ばれる1種または2種以上を含む、マスターバッチ。
【請求項10】
請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を含む、樹脂成形材料。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂成形材料を含む成形体。
【請求項12】
請求項2乃至9いずれか一項に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂と、を混合する工程を含む、樹脂成形材料の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂成形材料を射出成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項14】
黒色顔料と、マスターバッチ用熱可塑性樹脂と、を含むマスターバッチの評価方法であって、前記黒色顔料が、カーボンブラックを含み、以下の条件を満たすか否かによって評価する、黒色のマスターバッチの評価方法。
(条件)
前記マスターバッチ3重量部に対し、メルトフローレート30g/10min(JIS K7210:1999)、密度0.9g/cm^(3)(JIS K7112:1999)であるポリプロピレン100重量部を混練し、粒度#800(JIS R 6001:1998)の研磨布紙で研磨した金型を用い、射出成形により樹脂プレートを作成したとき、
前記樹脂プレートの表面のL^(*)a^(*)b^(*)表色系におけるa^(*)値、b^(*)値が、次式(1)?(4)を満たす。
D=[(a^(*)値_(20)-a^(*)値_(45))^(2)+(b^(*)値_(20)-b^(*)値_(45))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(45)-a^(*)値_(75))^(2)+(b^(*)値_(45)-b^(*)値_(75))^(2)]^(1/2)+[(a^(*)値_(75)-a^(*)値_(110))^(2)+(b^(*)値_(75)-b^(*)値_(110))^(2)]^(1/2) (1)
D<4.3 (2)
Δa^(*)<2.5 (3)
Δb^(*)<3.6 (4)
(式中、a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)、b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、及びb^(*)値_(110)は、多方向照明一方向受光式のマルチアングル測色計を用いて、垂線を45°、受光部を90°とし、光源を20°、45°、75°、及び110°としたときのそれぞれのa^(*)値、b^(*)値を示す。
Δa^(*)=(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最大値)-(a^(*)値_(20)、a^(*)値_(45)、a^(*)値_(75)、a^(*)値_(110)のうちの最小値)
Δb^(*)=(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最大値)-(b^(*)値_(20)、b^(*)値_(45)、b^(*)値_(75)、b^(*)値_(110)のうちの最小値))
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-16 
出願番号 特願2017-561995(P2017-561995)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
植前 充司
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6277335号(P6277335)
権利者 東京インキ株式会社
発明の名称 マスターバッチ、樹脂成形材料、成形体及びこれらの製造方法、マスターバッチの評価方法  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  
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