• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
審判 全部申し立て 特29条の2  C09K
管理番号 1352288
異議申立番号 異議2018-700332  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-23 
確定日 2019-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6217729号発明「HFCとHFOとを含有する組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6217729号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6217729号の請求項1及び3に係る特許を維持する。 特許第6217729号の請求項2及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6217729号の請求項1?4に係る特許(以下、各請求項に係る特許を項番号に合わせて「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、平成27年6月1日(優先権主張 平成26年9月25日)に出願された特願2015-111628号の一部を、同年10月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ、同年10月25日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許1?4に対して、平成30年4月23日に特許異議申立人である佐藤日出子により特許異議の申立てがなされ、同年6月22日付けで当審より取消理由が通知され、同年8月27日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、同年10月1日に特許異議申立人より意見書が提出され、さらに平成30年12月5日付けで当審より取消理由が通知され、平成31年1月15日に特許権者より意見書及び訂正請求書(当該訂正請求によってなされた訂正を以下「本件訂正」という。)が提出されたものである。
なお、平成30年8月27日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、本件訂正に対して特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかった。

第2 本件訂正の適否についての判断

1 本件訂正の内容(訂正事項)
本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?4について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「HFCとHFOとを含有する組成物であって、
1)HFCとしてHFC-32、
2)HFOとしてHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分としてHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも一種を含有し、
4)前記HFCと前記HFOとの総量が、前記HFC、前記HFO及び前記第三成分の合計量を100質量%として95質量%以上である、
ことを特徴とする組成物。」
とあるのを、
「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、
1)HFCがHFC-32、
2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり、
4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、
5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である、
ことを特徴とする冷媒混合物。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3についても同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「更に冷凍機油を含有し、前記冷凍機油の含有量が組成物中10?50質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。」
とあるのを、
「請求項1に記載の冷媒混合物と冷凍機油とを含有する冷媒組成物であって、前記冷凍機油の含有量が前記冷媒組成物中10?50質量%である、冷媒組成物。」
に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「HFCとHFOとを含有する組成物」を「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物」として、組成物の構成成分及び用途を限定し、また、「1)HFCとしてHFC-32、2)HFOとしてHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、3)第三成分としてHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも一種を含有し」としていたものを、「1)HFCがHFC-32、2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり」として、各構成成分の範ちゅう(種類)について限定するものである。
さらに、訂正事項1は、各構成成分の配合割合についても、「4)前記HFCと前記HFOとの総量が、前記HFC、前記HFO及び前記第三成分の合計量を100質量%として95質量%以上である」としていたものを、「4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」として限定するものである。
このように訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された組成物の構成成分及び用途、並びに、当該構成成分の範ちゅう(種類)及び配合割合を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
なお、訂正事項1は、上記構成成分の範ちゅうの明瞭化を図るものと捉えて、その目的を、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明と解することもできる。
イ 新規事項の有無
上記のとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された組成物の構成成分及び用途、並びに、当該構成成分の範ちゅう(種類)及び配合割合を限定するものであるところ、当該限定は、本件特許明細書の【0023】?【0027】に記載された実施形態2の組成物に関する記載事項、及び、【0052】?【0057】に記載された実施例2(実施形態2の冷媒組成物)に関する記載事項に基づくものであり、特に【0054】【表4】に記載された、HFC-32(69.5重量%)、HFO-1234yf(30重量%)、HCC-40(0.25質量%)、HCFC-22(0.2質量%)及び3,3,3-トリフルオロプロピン(0.05質量%)から構成される冷媒組成物(【0005】の記載からみて冷媒混合物と同意と解される。)からみて、当業者によって、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」(本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであると認められる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものということができるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮(又は明瞭でない記載の釈明)を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(2) 訂正事項2、4について
訂正事項2、4は、訂正前の請求項2、4を削除するものであるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正事項2による請求項2の削除に伴い、請求項2の引用をやめ(引用請求項の一部の削除。請求項2をいまだ引用しているという不明瞭な状態の解消とも解することができる。)、併せて、「組成物」を「冷媒組成物」に限定するものである(この点も、訂正事項1に係る「冷媒混合物」という用語との異同を明瞭化したものということができる。)。
したがって、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮ないし同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、あるいは、訂正事項1及び訂正事項2に伴ってなされた請求項3の記載の明瞭化にすぎないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。

3 小括
前記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?4について訂正を求めるものであり、その訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。

第3 本件特許請求の範囲の記載

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、
1)HFCがHFC-32、
2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり、
4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、
5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である、
ことを特徴とする冷媒混合物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の冷媒混合物と冷凍機油とを含有する冷媒組成物であって、前記冷凍機油の含有量が前記冷媒組成物中10?50質量%である、冷媒組成物。
【請求項4】
(削除)」

第4 平成30年6月22日付け及び同年12月5日付けで通知した取消理由についての判断

1 標記取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?4に係る本件特許に対して通知した標記取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1) (明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号に該当)。
(2) (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号に該当)。
(3) (新規性)本件発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。
(4) (進歩性)本件発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。
(5) (拡大先願)本件発明1?3は、本件特許の優先日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その優先日後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許1?3は、特許法第29条の2の規定(同法第184条の13参照)に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。

2 取消理由(1)(明確性要件)について
取消理由(1)において指摘した明確性要件違反は、要するに、本件訂正前の請求項に係る組成物は、その構成成分の範ちゅうが不明瞭であるというものである(例えば、「HFC」は「HFC-32」のみから構成されるものであるのかなど)。
しかしながら、本件訂正後の請求項に係る組成物は、例えば、請求項1において、「HFC」が「HFC-32」である点が特定されるなど、その構成成分の範ちゅうは明確に把握できるものとなっており、上記の不明瞭な点は解消されているということができる。
したがって、本件訂正後の本件特許に、取消理由(1)は存しない。

3 取消理由(2)(サポート要件)について
取消理由(2)において指摘したサポート要件違反は、要するに、本件訂正前の請求項に係る組成物は、その構成成分の範ちゅうが不明瞭であることも相まって、例えば、特定のHFC、HFO以外のものが大半を占める態様など、多様な組成物を包含するものと解し得るところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、実際に、本件発明の課題(潤滑性能の向上)が解決できることが検証されている具体例は、実施例2に係る特定の態様しかなく、また、上記の多様な組成物の全般にわたって、本件発明の課題を解決することができることを類推するに足りる根拠(作用機序に関する説明や技術常識)も見当たらないから、上記本件訂正前の請求項に係る組成物の範囲(特許請求の範囲)は、発明の詳細な説明の記載から当業者が課題解決できると認識できる範囲(上記実施例2に記載された特定の態様か、これに類似する場合)に対して、広範にすぎるというものである。
しかしながら、本件訂正により、請求項に係る組成物は、その構成成分やそれらの配合割合が十分特定され、さらに、発明の詳細な説明に記載された上記実施例2、すなわち、HFC-32(69.5重量%)、HFO-1234yf(30重量%)、HCC-40(0.25質量%)、HCFC-22(0.2質量%)及び3,3,3-トリフルオロプロピン(0.05質量%)から構成される冷媒組成物、に対応する範囲に限定されたということができる。
そうすると、本件訂正後の請求項に係る組成物の範囲、すなわち、特許請求の範囲は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌して、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識できる範囲、すなわち、上記実施例2に記載された特定の態様か、これに類似する場合に対して、もはや広範にすぎるものではなくなったと解するのが相当である。
したがって、本件特許に、取消理由(2)は存しない。

4 取消理由(3)、(4)(新規性進歩性)について
(1) 証拠一覧
取消理由(3)、(4)において採用した、特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである(以下、甲第1号証などを単に「甲1」という。)。
・主引用例とした刊行物
甲1:特表2013-529703号公報
・周知技術に関する文献
甲2:国際公開第2014/102479号
(訳文として特表2016-505685号公報参照)
甲3:特開2014-114214号公報
甲4:国際公開第2013/154059号
甲5:特開2010-37343号公報
甲6:特表2013-544896号公報
甲7:特表2013-529717号公報
(2) 甲1の記載事項
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロメタンと、ペンタフルオロエタンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、熱伝達組成物。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍、空調、ヒートポンプシステム及び他の熱伝達利用分野において使用するための、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む熱伝達組成物に関する。発明的な熱伝達組成物は、優れた能力及び性能を提供する一方で、低い地球温暖化ポテンシャルを有することができる。
【背景技術】
【0002】
規制上の継続的な圧力に伴って、オゾン層破壊ポテンシャル及び地球温暖化ポテンシャルがより低い冷媒、熱伝達流体、発泡剤、溶媒及びエアロゾルのための環境的により持続可能な代替品を特定する必要性が高まってきている。これらの利用分野のために広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)とヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊性物質であり、モントリオール議定書のガイドラインにしたがって廃止されつつある。ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、多くの利用分野におけるCFC及びHCFCの主要な代替品である。これはオゾン層に「優しい」ものとみなされているが、それでも一般に高い地球温暖化ポテンシャルを有する。」
・「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、低いGWPのみならず能力と性能の間の予想外に優れた平衡を有する熱伝達組成物が発見された。好ましくは、本発明の熱伝達組成物は低い可燃性を有し、より好ましくは本発明の熱伝達組成物は不燃性であり、さらに一層好ましくは、本発明の熱伝達組成物は不燃性でかつさまざまな漏洩シナリオの後でも不燃性であり続け、さらに一層好ましくは、ASHRAE SSPC34にしたがった不燃性を有する。本発明の別の実施形態は、R-422Dなどの少量の炭化水素を取込んだものを含め、熱伝達装置内においてHFC冷媒に比べ改善された油の戻り特性を有する冷媒組成物である。いかなる形であれ本発明の範囲を限定することは意図されていないものの、本発明の熱伝達組成物は、新規の冷凍、空調、ヒートポンプ又は他の熱伝達装置において有用である。別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-407A、R-417A、R-422D他を含む(ただしこれらに限定されない)既存の装置内の冷媒のためのレトロフィットとして有用である。」
・「【発明を実施するための形態】
【0012】
規制上の継続的な圧力に伴って、オゾン層破壊ポテンシャル及び地球温暖化ポテンシャルがより低い冷媒、熱伝達流体、発泡剤、溶媒及びエアロゾルのための環境的により持続可能な代替品を特定する必要性が高まってきている。これらの利用分野のために広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)とヒドロクロロフルオロカーボン(HCF
C)は、オゾン層破壊性物質であり、モントリオール議定書のガイドラインにしたがって廃止されつつある。ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、多くの利用分野におけるCFC及びHCFCの主要な代替品であるが;これはオゾン層に「優しい」ものとみなされているものの、それでも一般に高い地球温暖化ポテンシャルを有する。オゾン層破壊物質又は高地球温暖化物質の代替品となるものとして特定された1つの新しい部類の化合物は、ハロゲン化オレフィン、例えばヒドロフルオロオレフィン(HFO)そしてヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)である。
【0013】
本発明の熱伝達組成物は、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)で構成されている。
【0014】
本発明の一実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、約1重量%?97重量%のR-32、約1重量%?97重量%のR-125、約1重量%?97重量%のR-1234yf、そして約1重量%?97重量%のR-134aで構成されている。本発明の別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、重量ベースで約10%?35%のR-32、約10%?35%のR-125、約10%?60%のR-1234yf及び約10%?60%のR-134aを含む。本発明の別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、重量ベースで約15%?30%のR-32、約15%?30%のR-125、約15%?40%のR-1234yf及び約15%?40%のR-134aを含む。」
・「【0019】
本発明の熱伝達組成物は、既存の冷媒、特により高いオゾン層破壊ポテンシャル(ODP)又はより高い地球温暖化ポテンシャル(GWP)を有する冷媒の代替品として使用することができる。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-134aの代替品として使用でき、好ましくはここで本発明の熱伝達組成物は、約20wt%未満のR-32、より好ましくは約15wt%未満のR-32、より好ましくは約10%未満のR-32そしてさらに一層好ましくは約2wt%?10wt%のR-32と;約20wt%未満のR-125、より好ましくは約15wt%未満のR-125、より好ましくは約10%未満のR-125、そしてさらに一層好ましくは約2wt%?10wt%のR-125とを含む。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物はR-410Aの代替品として使用でき、好ましくはここで、本発明の熱伝達組成物は、約40wt%超のR-32、より好ましくは約50wt%超のR-32、より好ましくは約60%超のR-32そしてさらに一層好ましくは、約80wt%超のR-32を含む。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物はR-22又はR-404Aの代替品として使用でき、好ましくはここで本発明の熱伝達組成物は、約10wt%?50wt%のR-32、より好ましくは約10wt%?30wt%のR-32を含む。」
・「【0026】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22及びR-404Aの代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表1に示されている。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22の代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表2に示されている。
【0029】
【表2-1】

【0030】
【表2-2】

【0031】
【表2-3】

【0032】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-134aの代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表3に示されている。
【0033】
【表3】

【0034】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-410Aの代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表4に示されている。
【0035】
【表4】


・「【0043】
本発明の熱伝達組成物は、潤滑油と組合せて使用されてよい。例示的潤滑油には、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン及びその混合物が含まれる。本発明の潤滑油は、極低粘度のものから高粘度のものまであり、好ましくは100°Fで15?800cSt、そしてより好ましくは20?100cStの粘度を有する。本発明において使用される典型的な冷凍用潤滑油は、100°Fで15、32、68及び100cStの粘度を有していた。」
・「【0053】
冷媒/潤滑剤混合物の熱安定性/化学安定性は、ANSI/ASHRAE規格97-2007(ASHRAE97)などの当業者にとって公知のさまざまな試験を用いて評価可能である。このような試験において、任意には触媒又は水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含めた他の材料の存在下で、冷媒と潤滑剤の混合物が、典型的には高温で規定のエージング期間中、エージングされる。エージングの後、混合物は、混合物の分解又は劣化があった場合それを評価するために分析される。試験のための典型的組成は、冷媒/潤滑剤の50/50wt/wt混合物であるが、他の組成を用いることも可能である。典型的には、エージング条件は約140℃?200℃で1?30日間であるが、175℃で14日間のエージングが非常に典型的である。」
・「【0055】
冷媒/潤滑剤の組合せの安定性に対する水の効果は、非常に乾燥している(水10ppm未満)から非常に湿っている(水10000ppm超)の範囲内のさまざまな水分レベルでエージング試験を実施することにより評価可能である。酸化安定性は、空気の存在下又は不在下のいずれかでエージング試験を実施することによって評価可能である。本発明の熱伝達組成物は、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、炭水化物、ヒドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、プロピレン及びその混合物などの他の冷媒と組合せて使用されてよい。」
・「【0057】
例示的ヒドロフルオロオレフィン(HFO)としては、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、特にE-異性体、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1255ye)、特にZ-異性体、E-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン(E-HFO-1336mzz)、Z-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン(Z-HFO-1336mzz)、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン(HFO-1438mzz)及びその混合物が含まれる。好ましいヒドロフルオロオレフィンとしては3,3,3-トリフルオルプロペン(HFO-1234zf)、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びその混合物が含まれる。」
・「【0060】
例示的ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)としては、クロロ-ジフルオロメタン(HCFC-22)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)及び1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)が含まれる。
【0061】
例示的クロロフルオロカーボン(CFC)としては、トリクロロフルオロメタン(R-11)、ジクロロジフルオロメタン(R-12)、1,1,2-トリフルオロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-114)、クロロ-ペンタフルオロエタン(R-115)及びその混合物が含まれる。」
(3) 甲1発明
甲1の【特許請求の範囲】の【請求項1】には、次の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)
「ジフルオロメタンと、ペンタフルオロエタンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、熱伝達組成物。」
(4) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ジフルオロメタン」及び「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」は、それぞれ本件発明1における「HFC-32」及び「HFO-1234yf」に相当するものであり、また、甲1の【0010】などの記載からみて、甲1発明の熱伝達組成物が、冷媒組成物(冷媒混合物)を予定することは明らかであるから、両者は、「HFCとHFOとを含有する冷媒混合物であって、HFCとしてHFC-32、HFOとしてHFO-1234yfを含有するもの」である点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点1(構成成分について):
構成成分について、本件発明1の冷媒混合物は、
「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、
1)HFCがHFC-32、
2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピン」
であると特定しているのに対して、
甲1発明は、「ジフルオロメタンと、ペンタフルオロエタンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」の四成分を構成成分とするものであり、本件発明1においては構成成分とはなっていない「ペンタフルオロエタン」及び「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を必須成分としている上、本件発明1の第三成分に対応する成分を含有していない点。
・相違点2(各構成成分の配合割合について):
各構成成分の配合割合について、本件発明1の冷媒混合物は、
「4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、
5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」
と特定しているのに対して、
甲1発明は、各構成成分の配合割合について特定していない点。
イ 相違点1(構成成分について)の検討
甲1には、甲1発明において必須成分となっている「ペンタフルオロエタン」及び「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を、任意成分とする動機付けは存在しない。また、周知文献として採用した甲2?7には、HFO-1234yfを製造する際に含有される不純物についての記載は認められるものの、当該動機付けとなるような記載は見当たらない。
したがって、甲1発明の「ペンタフルオロエタン」及び「1,1,1,2-テトラフルオロエタン」を任意成分として、上記相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明1は、当該相違点1に係る構成及び上記相違点2に係る構成を備えることにより、本件特許明細書の【0015】などに記載された「潤滑性能の向上」という甲1発明などからは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。
ウ 小括
以上のとおり、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明(甲1発明)であるとはいえないし、当該相違点1に係る本件発明1の構成、なかでも、構成成分であるHFC及びHFOに関する構成がそもそも容易想到の事項でない以上、上記した第三成分の有無や、各構成成分の配合割合に係る相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものでもない。
(5) 本件発明3について
本件発明3に係る冷媒組成物は、本件発明1に係る冷媒混合物を含有するものであるから、上記相違点1は、本件発明3と甲1発明の対比においても生じる実質的な相違点である。そして、当該相違点が容易想到の事項でないことは上記のとおりである。
したがって、本件発明3も、甲1に記載された発明(甲1発明)であるとも、甲1発明から容易想到の事項であるともいえない。
(6) 小括
以上のとおり、本件特許に、取消理由(3)、(4)は存しない。

5 取消理由(5)(拡大先願)について
(1) 証拠(先願)
標記取消理由において採用した、特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
・先願(甲8に係る出願)
外国語特許出願:PCT/US2014/065610
(国際公開第2015/077134号)
パテントファミリー:特願2016-555452号
(特表2017-503907号公報)
以下、当該外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面を「甲8明細書等」という。また、当該「甲8明細書等」に記載された事項については、便宜上、パテントファミリーである特願2016-555452号の公表公報(特表2017-503907号公報)を訳文として使用し、該当箇所についても、当該公表公報(訳文)の該当箇所をそのまま示すこととする。
(2) 甲8明細書等の記載事項
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、および1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、熱伝達組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項12】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、およびそれらの混合物から選択される冷媒をさらに含む、請求項1に記載の熱伝達組成物。」
・「【0001】
本発明は、冷凍、空調、ヒートポンプシステム、冷却器、および他の熱伝達利用分野において使用するための、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、および1,1,2,2-テトラフルオロエタンを含む熱伝達組成物に関する。発明的な熱伝達組成物は、優れた能力および性能を提供する一方で、低い地球温暖化ポテンシャルを有することができる。」
・「【0011】
本発明においては、低いGWPのみならず能力と性能の間の予想外に優れた平衡を有する熱伝達組成物が発見された。好ましくは、本発明の熱伝達組成物は低い可燃性を有し、より好ましくは本発明の熱伝達組成物は不燃性であり、さらに一層好ましくは、本発明の熱伝達組成物は不燃性でかつさまざまな漏洩シナリオの後でも不燃性であり続け、さらに一層好ましくは、ASHRAE SSPC34にしたがった不燃性を有する。本発明の別の実施形態は、R-422Dなどの少量の炭化水素を取込んだものを含め、熱伝達装置内においてHFC冷媒に比べ改善された油の戻り特性を有する冷媒組成物である。いかなる形であれ本発明の範囲を限定することは意図されていないものの、本発明の熱伝達組成物は、新規の冷凍、空調、ヒートポンプ、冷却器、または他の熱伝達装置において有用である。別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-507、R-407A、R-407F、R-417A、R-422D他を含む(ただしこれらに限定されない)既存の装置内の冷媒のためのレトロフィットとして有用である。」
・「【0022】
本発明の熱伝達組成物は、例えば以下の冷媒(これらの限定される訳ではない)と組み合わせて使用してもよい:ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、炭化水素、ヒドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、プロピレンおよびそれらの混合物。
・・・(中略)・・・
【0027】
ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の例としては、以下のものが挙げられる:クロロ-ジフルオロメタン(HCFC-22)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)および1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)。
【0028】
クロロフルオロカーボン(CFC)の例としては、以下のものが挙げられる:トリクロロフルオロメタン(R-11)、ジクロロジフルオロメタン(R-12)、1,1,2-トリフルオロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-114)、クロロ-ペンタフルオロエタン(R-115)およびそれらの混合物。」
・「【0035】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22、R-407C、R-404A、および/またはR-507の代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の例が表1に示されている。組成における少しの変動、例えば±2重量%以内、好ましくは±1重量%以内(これらの数値に限定される訳ではない)の組成の変動は本発明の範囲内であると考えるべきであるということは理解されたい。
【0036】
【表1】


・「【0041】
本発明の一実施形態は、冷凍、空調、冷却器、またはヒートポンプシステムにおいて使用される場合、類似の利用分野において使用されるHFCまたはHCFC系冷媒に比べて類似またはそれ以上の能力、性能またはその両方を提供する熱伝達組成物である。」
・「【0042】
本発明の一実施形態は、R-22またはR-407Cの代替品とするために使用される熱伝達組成物であり、それらの熱伝達組成物は、R-22またはR-407Cを用いて設置されるか、それらを含む既存の装置を手直しするために使用することもできるし、それらの熱伝達組成物はさらに、R-22またはR-407Cのために設計された新規な設備においても使用することができる。」
・「【0048】
本発明の一実施形態において、冷凍、空調、冷却、またはヒートポンプシステムにおいて使用した場合、本発明の熱伝達組成物の質量流量が、R-22の質量流量の20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、さらに一層好ましくは5%、そしてさらに一層好ましくは2%以内である。本発明の一実施形態において、冷凍、空調、冷却、またはヒートポンプシステムにおいて使用した場合、本発明の熱伝達組成物の能力は、R-22の能力の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに一層好ましくは95%以上、そしてさらに一層好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態において、冷凍、空調、冷却、またはヒートポンプシステムにおいて使用した場合、本発明の熱伝達組成物を使用したシステムの効率は、R-22を使用したシステムの効率の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに一層好ましくは95%以上、そしてさらに一層好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態において、冷凍、空調、冷却、またはヒートポンプシステムにおいて使用した場合、本発明の熱伝達組成物のCOPは、R-22のCOPの80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに一層好ましくは95%以上、そしてさらに一層好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態において、冷凍、空調、冷却、またはヒートポンプシステムにおいて使用した場合、本発明の圧縮機吐出温度は、R-22の圧縮機吐出温度よりも、60゜Fを超えない程度で高く、好ましくは50゜F以下で高く、より好ましくは40゜Fを超えない程度で高く、さらに一層好ましくは30゜Fを超えて高いが、本発明の別の好ましい実施形態においては、そのシステムが液噴射(liquid injection)を使用している。」
・「【0062】
冷媒/潤滑剤混合物の熱安定性/化学安定性は、ANSI/ASHRAE規格97-2007(ASHRAE97)などの当業者にとって公知のさまざまな試験を用いて評価可能である。このような試験において、任意には触媒または水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含めた他の材料の存在下で、冷媒と潤滑剤の混合物が、典型的には高温で規定のエージング期間中、エージングされる。エージングの後、混合物は、混合物の分解または劣化があった場合それを評価するために分析される。試験のための典型的組成は、冷媒/潤滑剤の50/50 wt/wt混合物であるが、他の組成を用いることも可能である。典型的には、エージング条件は約140℃?200℃で1?30日間であるが、175℃で14日間のエージングが非常に典型的である。」
(3) 甲8発明
「甲8明細書等」には、訳文の【特許請求の範囲】の、【請求項1】及びこれを引用する【請求項12】の記載からみて、次の発明が記載されているといえる(以下、まとめて「甲8発明」という。)。
・「ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、および1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、熱伝達組成物。」
・「ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタンおよび1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含み、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、およびそれらの混合物から選択される冷媒をさらに含む、熱伝達組成物。」
(4) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明における「ジフルオロメタン」、「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン」及び「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」は、それぞれ本件発明1における「HFC-32」、「HFO-1234ze」及び「HFO-1234yf」に相当するものであり、また、「甲8明細書等」の訳文の【0011】などの記載からみて、甲8発明の熱伝達組成物が、冷媒組成物(冷媒混合物)を予定することは明らかであるから、両者は、「HFCとHFOとを含有する冷媒混合物であって、HFCとしてHFC-32、HFOとしてHFO-1234ze、又はHFO-1234ze及びHFO-1234yfを含有するもの」である点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点3(構成成分について):
構成成分について、本件発明1の冷媒混合物は、
「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、
1)HFCがHFC-32、
2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピン」
であると特定しているのに対して、
甲8発明は、本件発明1において構成成分とはなっていない「ペンタフルオロエタン」及び「1,1,2,2-テトラフルオロエタン」を必須成分としている上、本件発明1の第三成分に対応する成分を含有していない点。
・相違点4(各構成成分の配合割合について):
各構成成分の配合割合について、本件発明1の冷媒混合物は、
「4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、
5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」
と特定しているのに対して、
甲8発明は、各構成成分の配合割合について特定していない点。
イ 相違点3(構成成分について)の検討
「甲8明細書等」には、甲8発明において必須成分となっている「ペンタフルオロエタン」及び「1,1,2,2-テトラフルオロエタン」を、任意成分とすることについては何ら記載されていない。また、当該必須成分を任意成分とすることが、課題解決のための具体化手段における微差であると解するに足りる証拠は見当たらない。
したがって、上記第三成分の有無や、各構成成分の配合割合に係る相違点4について判断するまでもなく、本件発明1は、甲8発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。
(5) 本件発明3について
本件発明3に係る冷媒組成物は、本件発明1に係る冷媒混合物を含有するものであるから、上記相違点3は、本件発明3と甲8発明の対比においても生じるものである。そして、当該相違点が実質的なものであり、課題解決のための具体化手段における微差程度のものでもないことは、上記のとおりである。
したがって、本件発明3も、甲8発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。
(6) 小括
以上のとおり、本件特許に、取消理由(5)は存しない。

6 まとめ
以上の検討のとおり、平成30年6月22日付け及び同年12月5日付けで通知した取消理由は、いずれも理由がない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断

上記第4で検討した取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件に関するものであり、これらの理由は、次の2点に起因するものである。
・本件特許明細書に記載された「摩耗試験」及び「焼き付け試験」の内容が明確でない点。
・本件発明は、第三成分の含有量の下限値についての規定がない点。
しかしながら、特許権者が平成30年8月27日に提出した意見書に添付された乙第4号証(山口英宏ら著「代替冷媒環境下におけるコンプレッサ材の摩擦摩耗特性に及ぼす冷凍機油添加剤の影響」、日本冷凍空調学会論文集、Trans.of the JSRAE、Vol.16、No.3(1999)、pp.229?238)のFig.3に記載された高圧冷媒雰囲気摩擦摩耗試験器などを参酌すると、冷媒(冷凍機油)に関する試験を熟知する当業者であれば、本件特許明細書に記載された「摩耗試験」及び「焼き付け試験」を理解し、これを行うことは可能であると解するのが妥当であるから、これらの試験内容の不明確さに起因する実施可能要件違反及びサポート要件違反を認めることはできない。
また、第三成分の含有量の下限値についての規定がないことのみによって、ただちに、本件発明の内容が明確でなくなるわけではないから、明確性要件違反についても認められない。
したがって、当該特許異議申立理由に理由があるとはいえない。

第6 結び

以上のとおりであるから、本件特許1、3は、特許法第29条又は第29条の2の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえず、同法第113条第2号又は第4号に該当するとは認められないから、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。
また、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項2、4は削除されたので、本件特許2、4に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないため、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、
1)HFCがHFC-32、
2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、
3)第三成分がHCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり、
4)前記HFC-32と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99.5質量%以上であり、
5)前記HFC-32、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCC-40、HCFC-22及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCC-40の含有量が0.25質量%以下、前記HCFC-22の含有量が0.2質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である、
ことを特徴とする冷媒混合物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の冷媒混合物と冷凍機油とを含有する冷媒組成物であって、前記冷凍機油の含有量が前記冷媒組成物中10?50質量%である、冷媒組成物。
【請求項4】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-12 
出願番号 特願2015-209234(P2015-209234)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C09K)
P 1 651・ 121- YAA (C09K)
P 1 651・ 113- YAA (C09K)
P 1 651・ 16- YAA (C09K)
P 1 651・ 537- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 蔵野 雅昭
日比野 隆治
登録日 2017-10-06 
登録番号 特許第6217729号(P6217729)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 HFCとHFOとを含有する組成物  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ