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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1352293
異議申立番号 異議2018-700717  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-05 
確定日 2019-05-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6290519号発明「ポリアミド系積層フィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6290519号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?8]、[9?12]について訂正することを認める。 特許第6290519号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 特許第6290519号の請求項2?12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6290519号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成29年6月14日(優先権主張 平成28年6月15日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年2月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月7日に特許掲載公報が発行された。
その後、平成30年9月5日に、請求項1?12に係る特許について、特許異議申立人豊田英徳(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成30年11月15日付けで取消理由が通知され、平成31年1月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成31年1月31日付けで申立人に対し、特許法第120条の5第5項の規定に基づき期間を指定し、本件訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人から当該期間内に意見書は提出されなかった。

2.本件訂正請求についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
ア.請求項1?8に係る訂正について
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である、請求項1に記載のポリアミド系積層フィルム。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たすことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。

(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「ポリアミド系フィルムの平均厚みが16μm以下である、請求項1に記載のポリアミド系積層フィルム。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルムの平均厚みが16μm以下である、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。」
に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。

(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「共重合ポリエステル樹脂層の厚みが0.1?15μmである、請求項1に記載のポリアミド系積層フィルム。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層の厚みが0.1?15μmである、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。」
に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。

(オ)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「ポリアミド系フィルム中に有機滑剤及び無機滑剤の少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のポリアミド系積層フィルム。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルム中に有機滑剤及び無機滑剤の少なくとも1種を含有する、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。

(カ)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「共重合ポリエステル樹脂層が、ガラス転移温度が10℃以下である共重合ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のポリアミド系積層フィルム。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層が、ガラス転移温度が10℃以下である共重合ポリエステル樹脂を含む、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。

(キ)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1?6のいずれかに記載のポリアミド系積層フィルムと金属箔とを含む積層体。」
と記載されているのを、
「請求項2?6のいずれかに記載のポリアミド系積層フィルムと金属箔とを含む積層体。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する)。

イ.請求項9?12に係る訂正について
(ア)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムを製造する方法であって、ポリアミド系フィルムを製造する第1工程とポリアミド系フィルムに共重合ポリエステル樹脂層を積層する第2工程とを含み、
前記第1工程は、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得るシート成形工程、
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程
を含み、
前記延伸工程が逐次二軸延伸であり、
(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程及び
(2-2)70?130℃の温度下で前記第1延伸フィルムをTDに延伸することによって第2延伸フィルムを得る第2延伸工程
を含み、
かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
の両方を満たす、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルムの製造方法。」
と記載されているのを、
「ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムを製造する方法であって、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であるポリアミド系フィルムを製造する第1工程とポリアミド系フィルムに共重合ポリエステル樹脂層を積層する第2工程とを含み、
前記第1工程は、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得るシート成形工程、
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程
を含み、
前記延伸工程が逐次二軸延伸であり、
(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程及び
(2-2)70?130℃の温度下で前記第1延伸フィルムをTDに延伸することによって第2延伸フィルムを得る第2延伸工程
を含み、
かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
の両方を満たし、
(4)第1の延伸工程が2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルムの製造方法。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的に引用する請求項10?12も同様に訂正する)。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1?8について、訂正前の請求項2?8は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1?8に対応する訂正前の請求項1?8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項9?12について、訂正前の請求項10?12は、訂正前の請求項9を引用しているものであって、請求項9の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項9?12に対応する訂正前の請求項9?12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、前記一群の請求項毎に請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.請求項1?8に係る訂正について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項2及び当該請求項2の記載を引用する請求項7、8における「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項2による訂正のうち、請求項1の記載を引用しないものとする訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲においてしたものであることが明らかであり、また、「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の段落[0051]の「本発明フィルムにおける前記4方向の応力は、次のように測定する。・・・フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、フィルムの基準方向(0度方向)を任意で特定し、その基準方向(a)から時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)及び135度方向(d)の各方向を測定方向とし・・・なお、上記の基準方向は、フィルム製造時の延伸工程におけるMDが判明しているときには、MDを基準方向とする。」との記載及び段落[0150]の「ポリアミド系フィルムの5%伸長時及び15%伸長時の4方向の応力は、基準方向(0度方向)をMDとしたうえで・・・」との記載に基づくものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項2による訂正は、請求項2、7及び8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(ウ)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項3及び当該請求項3の記載を引用する請求項7、8における、一軸引張試験による5%伸長時及び15%伸長時の応力の測定方向に関する「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定すると共に「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項3による訂正のうち、請求項1の記載を引用しないものとする訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲においてしたものであることが明らかであり、また、「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の段落[0051]の「本発明フィルムにおける前記4方向の応力は、次のように測定する。・・・フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、フィルムの基準方向(0度方向)を任意で特定し、その基準方向(a)から時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)及び135度方向(d)の各方向を測定方向とし・・・なお、上記の基準方向は、フィルム製造時の延伸工程におけるMDが判明しているときには、MDを基準方向とする。」との記載及び段落[0150]の「ポリアミド系フィルムの5%伸長時及び15%伸長時の4方向の応力は、基準方向(0度方向)をMDとしたうえで・・・」との記載に基づくものであり、「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定する訂正は、願書に添付した明細書の段落[0055]の「・・・本発明フィルムは、厚み精度(厚みの均一性)が非常に高いものであることを示す指標として、後記に示す8方向の厚みに対する標準偏差が0.200以下であることが好ましく・・・」との記載及び段落[0056]の「上記厚み精度の評価方法は、ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、図6に示すように、フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、基準方向(0度方向)を特定した後、中心点Aから基準方向(a)、基準方向に対して時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)、135度方向(d)、180度方向(e)、225度方向(f)、270度方向(g)及び315度方向(h)の8方向へそれぞれ100mmの直線L1?L8の合計8本引く。それぞれの直線上において、中心点から10mm間隔で厚みを、長さゲージ 「HEIDENHAIN‐METRO MT1287」(ハイデンハイン社製)により測定する(10点測定する)。・・・」との記載に基づくものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項3による訂正は、請求項3、7及び8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(エ)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項4及び当該請求項4の記載を引用する請求項7、8における、一軸引張試験による5%伸長時及び15%伸長時の応力の測定方向に関する「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定すると共に「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項4による訂正のうち、請求項1の記載を引用しないものとする訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲においてしたものであることが明らかであり、また、「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0051]及び[0150]の記載に基づくものであり、「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0055]及び[0056]の記載に基づくものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項4による訂正は、請求項4、7及び8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(オ)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項5及び当該請求項5の記載を引用する請求項7、8における、一軸引張試験による5%伸長時及び15%伸長時の応力の測定方向に関する「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定すると共に「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項5による訂正のうち、請求項1の記載を引用しないものとする訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲においてしたものであることが明らかであり、また、「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0051]及び[0150]の記載に基づくものであり、「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0055]及び[0056]の記載に基づくものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項5による訂正は、請求項5、7及び8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(カ)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6の記載が請求項1の記載を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとすること及び訂正前の請求項6及び当該請求項6の記載を引用する請求項7、8における、一軸引張試験による5%伸長時及び15%伸長時の応力の測定方向に関する「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定すると共に「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項6による訂正のうち、請求項1の記載を引用しないものとする訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲においてしたものであることが明らかであり、また、「任意の点から特定の方向」を「MD方向」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0051]及び[0150]の記載に基づくものであり、「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定する訂正は、願書に添付した明細書の上記段落[0055]及び[0056]の記載に基づくものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項6による訂正は、請求項6、7及び8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(キ)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、上記訂正事項1による訂正前の請求項1の削除に伴い、引用する請求項を減らすとともに、引用関係を整合させ明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ.請求項9?12に係る訂正について
(ア)訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項9及び当該請求項9の記載を引用する請求項10?12における「ポリアミド系フィルム」及び「第1延伸工程」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであること及び「第1の延伸工程が2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする」ことを各々限定すると共に、訂正前の請求項9及び当該請求項9の記載を引用する請求項10?12における「第1工程」での「延伸工程」について、訂正前は「未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸する」とされ、「逐次二軸延伸」のみによる工程であるのか、「同時に二軸延伸すること」をも含む工程であるのかが明瞭であるとはいえず、前記請求項における「前記延伸工程が逐次二軸延伸であり」との記載とも整合しないものであったところ、「未延伸シートをMD及びTDに延伸する」とすることにより、「前記延伸工程が逐次二軸延伸であり」との記載と併せて、「第1工程」での「延伸工程」が「逐次二軸延伸」のみによる工程であることが明瞭となったから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項8による訂正のうち、「ポリアミド系フィルム」について、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであることを限定する訂正は、願書に添付した明細書の段落[0055]の「・・・本発明フィルムは、厚み精度(厚みの均一性)が非常に高いものであることを示す指標として、後記に示す8方向の厚みに対する標準偏差が0.200以下であることが好ましく・・・」との記載及び段落[0056]の「上記厚み精度の評価方法は、ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、図6に示すように、フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、基準方向(0度方向)を特定した後、中心点Aから基準方向(a)、基準方向に対して時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)、135度方向(d)、180度方向(e)、225度方向(f)、270度方向(g)及び315度方向(h)の8方向へそれぞれ100mmの直線L1?L8の合計8本引く。それぞれの直線上において、中心点から10mm間隔で厚みを、長さゲージ 「HEIDENHAIN‐METRO MT1287」(ハイデンハイン社製)により測定する(10点測定する)。・・・」との記載に基づくものであり、また、「第1延伸工程」について、「第1の延伸工程が2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする」ことを限定する訂正は、願書に添付した明細書の段落[0162]?[0215]に記載された実施例のうち、実施例12(1段目の延伸倍率が1.2で、2段目の延伸倍率が2.28)、実施例26(1段目の延伸倍率が1.05で、2段目の延伸倍率が2.81)に基づくものであり、さらに、「未延伸シートをMD及びTDに延伸する」とする訂正は、訂正前の「未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸する」との記載から、「同時に二軸延伸する」ことを単に削除するものであるから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲においてしたものである。
そして、訂正事項8による訂正は、請求項9?12に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ゆえに、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?8]、[9?12]について訂正することを認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?12に係る発明(以下、「本件発明1?12」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

[請求項1] (削除)
[請求項2]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たすことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
[請求項3]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルムの平均厚みが16μm以下である、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
[請求項4]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層の厚みが0.1?15μmである、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
[請求項5]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルム中に有機滑剤及び無機滑剤の少なくとも1種を含有する、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
[請求項6]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層が、ガラス転移温度が10℃以下である共重合ポリエステル樹脂を含む、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
[請求項7]請求項2?6のいずれかに記載のポリアミド系積層フィルムと金属箔とを含む積層体。
[請求項8]請求項7に記載の積層体を含む容器。
[請求項9]ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムを製造する方法であって、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であるポリアミド系フィルムを製造する第1工程とポリアミド系フィルムに共重合ポリエステル樹脂層を積層する第2工程とを含み、
前記第1工程は、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得るシート成形工程、
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程
を含み、
前記延伸工程が逐次二軸延伸であり、
(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程及び
(2-2)70?130℃の温度下で前記第1延伸フィルムをTDに延伸することによって第2延伸フィルムを得る第2延伸工程
を含み、
かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
の両方を満たし、
(4)第1の延伸工程が2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルムの製造方法。
[請求項10]第1延伸工程がロールを用いる延伸であり、かつ、第2延伸工程がテンターを用いる延伸である、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。
[請求項11]第2延伸フィルムをさらに180?230℃の温度下で弛緩熱処理を行う、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。
[請求項12]第2工程が、共重合ポリエステル樹脂を含む塗工液をポリアミド系フィルムの少なくとも一方の表面に塗布する工程を含む、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。

(2)取消理由の概要
当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

《理由1》
本件発明1?12は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
《理由2》
本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載は、下記の点で不備があるため、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。


ア.理由1について
《刊行物一覧》
甲1.特開2015-107586号公報
甲2.特開2016-71952号公報
甲3.特開2013-101765号公報
甲4.国際公開第2016/010044号
甲5.湯木和男編“飽和ポリエステル樹脂ハンドブック”、日刊工業新聞社、1989年12月22日、初版1刷発行、p.568
甲6.特開平10-138341号公報
甲7.特開平10-16047号公報

甲1?7は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第7号証であり、甲1?7の各々に記載された発明、事項を甲1発明、甲1記載事項等という。

(ア)本件発明1は、甲1記載事項から把握される甲1発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明2は、甲1発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明3は、甲1発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件発明4は、甲1発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ)本件発明5は、甲1発明、甲2記載事項?甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(カ)本件発明6は、甲1発明、甲2記載事項?甲5記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(キ)本件発明7は、甲1記載事項から把握される甲1発明、甲2記載事項?甲5記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ク)本件発明8は、甲1記載事項から把握される甲1発明、甲2記載事項?甲5記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ケ)本件発明9及び10は、甲2記載事項から把握される甲2発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術並びに甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(コ)本件発明11は、甲2発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術、甲6記載事項並びに甲7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(サ)本件発明12は、甲2発明、甲2記載事項、甲4記載事項及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.理由2について
(ア)請求項1?8について
a.訂正前の請求項1の「任意の点から特定の方向」との記載は、本件特許明細書の段落[0051]の記載を踏まえると、文字どおり任意の点からの特定方向を意味しているとは必ずしもいえず、前記訂正前の請求項1?8の記載では、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号の要件(明確性要件)を満たしていない。
また、本件特許明細書には、MD方向を除く任意の点からの特定方向を0度としたものについても、本件特許明細書の段落[0018]に記載された「厚みの均一性に優れるとともに、前記4方向における物性のバラツキが効果的に抑えられ、金属箔に十分な延展性を付与することができるポリアミド系積層フィルムを提供する」という課題を解決し得ることが実証的に記載されていないし、その様なものを、当業者がその実施をすることができる程度の説明等も記載されていないから、訂正前の請求項1及び同請求項1の記載を引用する請求項2?8の記載は、同法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たしているとはいえない。
b.上記課題の解決に関し、本件特許明細書の段落[0055]の記載を踏まえると、「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ことを発明特定事項としていない訂正前の請求項1及び同請求項1を引用する請求項3?8に係る発明は、上記課題を解決し得ないものをも含むものであるといわざるをえないから、訂正前の請求項1及び同請求項1を引用する請求項3?8の記載は、同法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たしているとはいえない。
(イ)請求項9?12について
a.訂正前の請求項9の「未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程を含み、 前記延伸工程が逐次二軸延伸であり・・・」との記載では、前記「延伸工程」は、「逐次二軸延伸」のみによる工程であるのか、「同時に二軸延伸すること」をも含む工程であるのかが不明であり、特許を受けようとする発明が明確でないから、訂正前の請求項9及び同請求項9の記載を引用する請求項10?12の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件(明確性要件)を満たしていない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、逐次二軸延伸と同時に二軸延伸するものは、記載されていないし、その様なものを、当業者がその実施をすることができる程度の説明等も記載されていないから、訂正前の請求項9及び同請求項9の記載を引用する請求項10?12の記載は、同法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たしておらず、さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、同条第4項第1号の要件(実施可能要件)をも満たしていない。
b.上記課題の解決に関し、本件特許明細書の段落[0055]の記載を踏まえると、「ポリアミドフィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ことを発明特定事項としていない請求項9?12に係る発明は、上記課題を解決し得ないものをも含むものであるといわざるをえないから、請求項9?12の記載は、同法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たしているとはいえない。

(3)判断
事案に鑑み、理由2から判断する。
ア.理由2について
上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、上記(2)イ.で指摘した事項は、以下に示すように、全て解消されたため、理由2については、理由のないものとなった。
(ア)請求項1?8について
a.訂正前の請求項1は削除され、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2において「任意の点から特定の方向」とされていた記載は、訂正後の請求項2?8において「MD方向」と訂正されたため、訂正後の請求項2?8の記載は、特許を受けようとする発明が明確となり、本件特許明細書において、上記課題を解決し得ることが実証的に記載されている範囲のものとなった。
b.訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項3?8において、「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ことが発明特定事項とされたため、訂正後の請求項3?8の記載は、本件特許明細書において、上記課題を解決し得ることが実証的に記載されている範囲のものとなった。
(イ)請求項9?12について
a.訂正前の請求項9において「未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程」とされていた記載は、訂正後の請求項9において「未延伸シートをMD及びTDに延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程」と訂正されたため、訂正後の請求項9の記載及び同請求項9を引用する請求項10?12の記載は、特許を受けようとする発明が明確となり、本件特許明細書に記載され、当業者がその実施をすることができる程度の説明がなされたものとなった。
b.訂正後の請求項9において、「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ことが発明特定事項とされたため、訂正後の請求項9及び同請求項9を引用する請求項10?12の記載は、本件特許明細書において、上記課題を解決し得ることが実証的に記載されている範囲のものとなった。

イ.理由1について
(ア)本件発明2について
甲1記載事項、すなわち、甲1の[請求項1]、[請求項4]?[請求項9]、段落[0001]?[0018]、[0021]、[0022]、[0025]、[0028]、[0041]、[0043]、[0046]、[0050]の[表1]及び[図3]の記載事項、特に、段落[0046]の「〔実施例1〕・・・ナイロン樹脂を原料として、押出機91により270℃で溶融混練した後、溶融物をサーキュラーダイス92からチューブ状のフィルムとして押出し、引き続き水冷リング93でチューブ状の溶融物を水(15℃)で急冷して原反フィルム1を作製した。ここで、ナイロン樹脂として使用したものは、宇部興産(株)製ナイロン6〔UBEナイロン1022FD(商品名)、相対粘度 ηr=3.5〕である。・・・この原反フィルム1を一対のピンチロール11間に挿通した後、中に気体を圧入しながら加熱部12で加熱すると共に、延伸開始点に吹き付けてバブルに膨張させ、下流側の一対のピンチロール14で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行った。この延伸の際の倍率はMD方向で3.0倍、TD方向で3.34倍とした。・・・得られた延伸ナイロンフィルムの弾性率、比例限度における引張応力σ_(2)、応力比A(σ_(1)/σ_(2))、応力比A_(max)と応力比A_(min)との比(A_(max)/A_(min))、破断時におけるひずみε_(2)、および破断時における引張強度σ_(3)を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られた応力-ひずみ曲線を図3に示す。」と記載されていること及び[図3]から、前記延伸ナイロンフィルムは、MD方向、TD方向、45°方向、135°方向について、引張試験におけるひずみ0.05の時の引張応力は略一致しており、前記4方向において、ひずみ0.15の時の引張応力も略一致していることが看取されることを踏まえると、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
《甲1発明》
延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)とアルミニウム層とを積層したもの含む多層フィルムであって、
当該延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)は、
(1’)延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)のMD方向、TD方向、45°方向、135°方向について、引張試験におけるひずみ0.05の時の引張応力は略一致しており、
(2’)前記4方向において、引張試験におけるひずみ0.15の時の引張応力も略一致している、多層フィルム。

本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)」、「多層フィルム」は、各々、本件発明2の「ポリアミド系フィルム」、「積層フィルム」に相当する。
甲1発明において、「延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)のMD方向」は「延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)」の任意の点を起点とする特定方向の一つといえ、また、「TD方向」は、MD方向に対して「90度」の方向であることを踏まえると、甲1発明の「(1’)延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)のMD方向、TD方向、45°方向、135°方向について、引張試験におけるひずみ0.05時の引張応力は略一致しており」、「(2’)前記4方向において、引張試験におけるひずみ0.15時の引張応力も略一致している」は、各々、本件発明2の「(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること」、「(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること」との要件を満たすことが明らかである。

してみると、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも次の相違点で相違する。
《相違点1》
本件発明2における「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」のに対し、甲1発明における「延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)」は、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であるとはされていない点。

上記相違点1について検討する。
甲1の段落[0021]には「本実施形態のONyフィルムにおいては、ひずみが0.5となった際の引張応力σ_(1)と、比例限度における引張応力σ_(2)との比である応力比A(σ_(1)/σ_(2))が、前記4方向についていずれも4以下であることが必要である。・・・弾性率、比例限度における引張応力、応力比をすべて上記範囲とすることにより、スプリングバックを十分に抑制することが可能となる・・・これら4方向におけるそれぞれの応力比Aのうち、最大となる応力比A_(max)と最小となる応力比A_(min)との比(A_(max)/A_(min))が、2以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることが特に好ましい。これにより、冷間成型時にフィルムがバランス良く伸び、均一な厚みの成型品を製造できる。」との記載があるが、「均一な厚み」の具体的な指標に関する記載はなく、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差を0.200μm以下に設定する」ことについては、甲1はおろか甲2?甲7にも記載されておらず、これを示唆する記載もない。
そして、本件発明2は、「(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること」、「(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること」及び上記相違点1に示した「ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」こととが相まって、本件特許明細書の段落[0018]に記載された「厚みの均一性に優れるとともに、前記4方向における物性のバラツキが効果的に抑えられ、金属箔に十分な延展性を付与することができるポリアミド系積層フィルムを提供する」という課題を解決し、段落[0021]及び[0022]に記載された「本発明のポリアミド系積層フィルムにおけるポリアミド系フィルムは、厚みの均一性に優れるとともに、0度方向、45度方向、90度方向及び135度方向からなる4方向における伸長時の応力バランスに優れている。このため、本発明の積層フィルムと金属箔とを積層して得られる積層体は、金属箔が良好な延展性を有するものとなり、冷間成型にて絞り成型(特に深絞り成型又は張り出し成型)を行う際に、金属箔の破断、デラミネーション、ピンホール等が効果的に抑制ないしは防止されており、信頼性の高い高品質の製品(成形体)を得ることが可能となる。」及び「 特に、本発明におけるポリアミド系フィルムは、例えば厚みが16μm以下という極めて薄いものであっても、前記4方向における伸長時応力のバランスに優れるとともに、厚みの均一性に優れている。これにより、このフィルムと金属箔と積層した積層体は、冷間成型にてより高出力で小型化した製品を得ることが可能となり、コスト的にも有利になる。」という格別な効果をを奏するものである。
したがって、例え、甲1発明の多層フィルム(積層フィルム)の厚みのバラツキ、すなわち、厚みの標準偏差をどの程度に設定するかは、当業者がその用途等に応じて適宜決定すべき設計的な事項であるとしても、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向」の厚みの標準偏差について規定することまでは、設計的な事項とまではいえない。
よって、本件発明2は、甲1発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)本件発明3?8について
本件発明3?6は、各々が、本件発明2の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としているものである。
また、本件発明7及び8は、本件発明2?6のいずれかを引用し、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としているものである。
したがって、本件発明3?6は、上記イ.(ア)で示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項?甲5記載事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)本件発明9について
甲2記載事項、すなわち、甲2の[請求項1]、[請求項4]、段落[0012]、[0013]、[0023]、[0025]?[0029]、[0070]?[0079]の記載事項からみて、甲2には以下の甲2発明が記載されているといえる。
《甲2発明》
ナイロン6を主成分とする原料からなる未延伸原反フィルムを、延伸倍率が流れ方向(MD)3.0倍、幅方向(TD)3.3倍の条件でチューブラー法により同時二軸延伸した後、200℃で熱処理することにより製造したナイロンフィルムと、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとを酸変性ポリプロピレンである接着層2を形成する接着剤で接着してなる基材層1と当該基材層1の一方の面に形成された前記接着層2を含む積層体を製造する方法。

本件発明9と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ナイロンフィルム」、「積層体」は、各々、本件発明9の「ポリアミド系フィルム」、「積層フィルム」に相当する。
甲2発明は「ナイロンフィルムと、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとを酸変性ポリプロピレンである接着層2を形成する接着剤で接着してなる基材層1」を含むものであるところ、前記基材層1における、「酸変性ポリプロピレンである接着層2を形成する接着剤」は、ナイロンフィルムの一方の表面上にあることが明らかであるから、甲2発明の「酸変性ポリプロピレンである接着層2を形成する接着剤」と、本件発明9の「共重合ポリエステル樹脂層」とは、「その(ポリアミド系フィルムの)表面の少なくとも一方の表面上にある樹脂層」という限りにおいて一致する。
そして、甲2発明の「ナイロン6を主成分とする原料からなる未延伸原反フィルムを、延伸倍率が流れ方向(MD)3.0倍、幅方向(TD)3.3倍の条件でチューブラー法により同時二軸延伸した後、200℃で熱処理することにより製造した」、「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとを酸変性ポリプロピレンである接着層2を形成する接着剤で接着して」及び「基材層1の一方の面に形成された前記接着層2」は、各々「ポリアミド系フィルムを製造する」工程、「ポリアミド系フィルムに樹脂層を積層する工程」といえるものである。

してみると、本件発明9と甲2発明とは、少なくとも次の相違点で相違する。
《相違点2》
本件発明9は、「第1工程」で製造される「ポリアミド系フィルム」が「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであって、前記「第1工程」に含まれる「延伸工程」が「逐次二軸延伸」であり、「(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程」が、「2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする」ものであるのに対し、甲2発明は、「ナイロンフィルム」の厚みのバラツキの程度が不明であり、その延伸工程が「同時二軸延伸」であって、段階的な延伸方法であるとの規定がない点。

上記相違点2について検討する。
甲2には、厚みの均一性に関する記載はなく、「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差を0.200μm以下に設定する」ことについては、甲2はおろか甲1及び甲3?甲7にも記載されておらず、これを示唆する記載もない。
また、甲2には、「ナイロンフィルム」の製造を「同時二軸延伸」に代えて「逐次二軸延伸」とした上でMD方向の延伸を2段階で延伸する点の記載がなく、これを示唆する記載もない。
さらに、上記の点に関して、甲1及び甲3?甲7には、記載がなく、これを示唆する記載もない。
そして、本件発明9は、上記相違点に示した「「第1工程」で製造される「ポリアミド系フィルム」が「任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である」ものであって、前記「第1工程」に含まれる「延伸工程」が「逐次二軸延伸」であり、「(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程」が、「2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする」ものである」ことにより、本件特許明細書の段落[0018]に記載された上記課題を解決し、段落[0023]に記載された「優れた特性を有するポリアミド系フィルムを効率的にかつ確実に製造することができる。特に、厚みが16μm以下という極めて薄いフィルムであっても、厚みの均一性に優れたフィルムを提供することができる。しかも、比較的低い温度で延伸する場合には、樹脂本来の特性をより効果的に維持できる結果、冷間成型によりいっそう適したフィルム及び積層体を提供することができる。」という格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明9は、甲2記載事項から把握される甲2発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術並びに甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)本件発明10?12について
本件発明10?12は、本件発明9の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としているものであるから、上記(ウ)で示した理由と同様の理由により、甲2発明、甲2記載事項及び甲4記載事項に例示される周知技術、甲6記載事項並びに甲7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ.その他の異議申立ての理由について
(ア)申立人の主張
申立人は、上記取消理由で通知した理由に加え、以下の理由で、本件特許は取り消されるべきである旨を主張している。
a.主張1
本件発明1?12は、所望の課題が解決できない態様「フィルムの平均厚みが2μ未満」を包含しているから、本件発明1?12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

b.主張2
本件発明1?12には、「共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度の上限値及び下限値」が規定されておらず、所望の課題が解決できない態様を包含しているから、本件発明1?12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

c.主張3
本件発明1?12には、「共重合ポリエステル樹脂中の架橋剤の含有量」が規定されておらず、所望の課題が解決できない態様を包含しているから、本件発明1?12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

d.主張4
本件発明1?3及び5?12には、「共重合ポリエステル樹脂層の厚み」が規定されておらず、所望の課題が解決できない態様を包含しているから、本件発明1?12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

e.主張5
本件発明1?12には、「プライマー層、その種類、厚み等」が規定されておらず、所望の課題が解決できない態様を包含しているから、本件発明1?12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

f.主張6
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1?8に含まれる態様である「5%伸長時の応力差15.1MPa未満であり、かつ15%伸長時の応力差が19.8MPa未満であるフィルムや、5%伸長時の応力差17.6MPa未満であり、かつ15%伸長時の応力差が18.5MPa未満であるフィルム」を当業者が製造できるように記載されていないから、本件発明1?8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。

(イ)判断
上記申立人の主張する理由では、以下に示すように、本件特許を取り消すことはできない。
a.主張1について、
主張の根拠とされている本件特許明細書の段落[0060]には「・・・一方、フィルムの厚みの下限は特に限定するものではないが、平均厚みが2μm未満では、金属箔と貼り合わせた際における金属箔への延展性付与が不十分となりやすく、成型性に劣るものとなるおそれがあるため、通常は2μm程度とすれば良い。」と記載されており、この記載は、金属箔への延伸性付与が不十分となる可能性を避けるための望ましい平均厚みの程度を示しているにすぎず、平均厚みが2μm未満では、本件特許明細書の段落[0018]に記載された「厚みの均一性に優れるとともに、前記4方向における物性のバラツキが効果的に抑えられ、金属箔に十分な延展性を付与することができるポリアミド系積層フィルムを提供する」という、本件発明1?12が解決すべき課題が解決できなくなることを、ただちに意味するものではない。
したがって、上記主張1の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

b.主張2について
主張の根拠とされている本件特許明細書の段落[0023]の「さらに、本発明のポリアミド系積層フィルムは、接着剤層として共重合ポリエステル樹脂層を有しているため、金属箔との接着性に優れるとともに、ポリアミド系フィルムが有する金属箔への延展性の付与効果を阻害することがない。このため、本発明のポリアミド系積層フィルムを金属箔と用いることにより、冷間成型性に優れた積層体を得ることが可能となる。」との記載、及び段落[0215]の「また、比較例21のポリアミド系積層フィルムは、共重合ポリエステル樹脂層を有していないものであったため、該ポリアミド系積層フィルムと金属箔を含む積層体は、接着性に劣るものであり、耐水性又は耐アルコール性に劣っていた。」との記載は、いずれも、「共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルム」を発明特定事項としている本件発明1?12が奏する効果についての記載であり、この効果が奏されないことが、本件発明1?12が解決すべき上記課題を解決できないことをただちに意味するものではない。
そして、段落[0067]の「特にガラス転移温度が30℃以下であるものが好ましく、特に10℃以下であるものがより好ましく、さらに-40?10℃であるものが最も好ましい。ガラス転移温度が30℃を超えると、低温での接着性が低くなるおそれがある。低温接着性が低くなると、接着性を高めるために高温での熱処理が必要となる結果、処理工程の簡略化、低コスト化等を図ることが困難となる。一方、ガラス転移温度が-40℃よりも低い場合も、低温での接着性に劣るものとなりやすい。」との記載は、上記効果が奏されるための望ましい、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度の範囲を示しているにすぎない。
したがって、上記主張2の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

c.主張3について
主張の根拠とされている本件特許明細書の段落[0088]には「共重合ポリエステル樹脂中の架橋剤の含有量は0.01?40質量%であることが好ましく、中でも0.1?38質量%であることが好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量%未満であると、上記したような接着性又は耐水性の向上効果が乏しくなる。一方、架橋剤の含有量が40質量%を超えると、樹脂組成物が硬化し、ポリアミド系フィルム又は金属箔の伸びに追従することが困難となりやすく、冷間成型性に劣るものとなりやすい。」と記載されており、この記載は、冷間成型性に劣るものとなる可能性を避けるための望ましい、共重合ポリエステル樹脂中の架橋剤の含有量の程度を示しているにすぎず、架橋剤の含有量が0.01?40質量%でなければ、本件特許明細書の段落[0018]に記載された、本件発明1?12が解決すべき上記課題が解決できなくなることを、ただちに意味するものではない。
したがって、上記主張3の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

d.主張4について
主張の根拠とされている本件特許明細書の段落[0089]には「共重合ポリエステル樹脂層の厚みは、本発明のポリアミド系積層フィルムの用途等に応じて適宜設定できるが、一般的には0.1?15μmであることが好ましく、中でも0.3?12μmであることがより好ましく、さらには0.5?10μmであることが最も好ましい。上記厚みが0.1μm未満の場合、ポリアミド系積層フィルムと他の基材(金属箔等)とを接着する場合の接着性が不十分となりやすい。一方、上記厚みが15μmを超える場合、フィルムに塗布することが困難となったり、ポリアミド系フィルムが有する金属箔への延展性付与効果を阻害するおそれがある。」と記載されており、この記載は、ポリアミド系積層フィルムと他の基材(金属箔等)とを接着する場合の接着性が不十分となる可能性及びポリアミド系フィルムが有する金属箔への延展性付与効果を阻害する可能性を避けるための望ましい、共重合ポリエステル樹脂層の厚みの程度を示しているにすぎず、共重合ポリエステル樹脂層の厚みが0.1?15μmでなければ、本件特許明細書の段落[0018]に記載された、本件発明1?3及び5?12が解決すべき上記課題が解決できなくなることを、ただちに意味するものではない。
したがって、上記主張4の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

e.主張5について
本件特許明細書の段落[0031]には「本発明フィルムは、ポリアミド系フィルム自体のほか、ポリアミド系フィルムにプライマー層を形成したものも包含する。プライマー層を有するポリアミド系フィルムを用いる場合、プライマー層表面に共重合ポリエステル樹脂層を形成して金属箔を貼り合わせると、ポリアミド系フィルムと金属箔との接着性をより高めることができる。これにより、金属箔との接着強力が向上するとともに、金属箔により十分な延展性を付与することができる。このため、ポリアミド系フィルム又は金属箔が破断しにくくなることに加えて、デラミネーション又はピンホールの発生をより効果的に防止することができる。従って、このようなプライマー層を含む場合も、本発明のポリアミド系フィルムに包含される。」と記載されているが、この記載は、ポリアミド系フィルムにプライマー層を形成しないものは、本件特許明細書の段落[0018]に記載された、本件発明1?12が解決すべき上記課題が解決できなくなることを、ただちに意味するものではない。
また、主張の根拠とされている本件特許明細書に記載された実施例1?71の全てがプライマー層を形成した例であることは、プライマー層を形成しないものでは、上記課題を解決できないことを直接的に示すものではないし、甲第9号証(国際公開第2010/110282号)の段落[0089]?[0093]及び[0102]の記載からは、プライマー層を形成する樹脂の種類によって接着性が変わることが推認されるだけであって、ポリアミド系フィルムにプライマー層を形成しないものでは、上記課題が解決できなくなることを、ただちに意味するものではない。
したがって、上記主張5の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

f.主張6について
本件特許明細書には、「ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること」、及び、「前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること」(以下、「特定事項A」という。)を発明特定事項の一部とする本件発明1?8のポリアミド系樹脂フィルムが、本件特許明細書の段落[0018]に記載された上記課題を解決するものであることが、上記特定事項Aを満たしている「ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が15.1MPa(実施例8等)?24.1MPa(実施例9)」、及び、「前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が18.5MPa(実施例10)?30.8MPa(実施例28)」により説明されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、前記特定事項Aを満たす全ての実施例が記載されていなければ、本件発明1?8の実施をすることができないというわけではない。
したがって、上記主張6の理由では、本件特許を取り消すことはできない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明2?12は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
また、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載は、同法第36条第4項第1号並びに同法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしてないとはいえないから、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び取消理由通知には記載しなかった異議の申立ての理由によっては、本件発明2?12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項1は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項1についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項1についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (削除)
【請求項2】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たすことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
【請求項3】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルムの平均厚みが16μm以下である、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
【請求項4】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層の厚みが0.1?15μmである、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
【請求項5】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
ポリアミド系フィルム中に有機滑剤及び無機滑剤の少なくとも1種を含有する、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
【請求項6】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムであって、ポリアミド系フィルムは下記(1)?(3)の特性;
(1)ポリアミド系フィルムにおけるMD方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であること、
(2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であること、及び
(3)ポリアミド系フィルムは、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であること、
をすべて満たし、かつ、
共重合ポリエステル樹脂層が、ガラス転移温度が10℃以下である共重合ポリエスチル樹脂を含む、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルム。
【請求項7】請求項2?6のいずれかに記載のポリアミド系積層フィルムと金属箔とを含む積層体。
【請求項8】請求項7に記載の積層体を含む容器。
【請求項9】ポリアミド系フィルム及びその表面の少なくとも一方の表面上にある共重合ポリエステル樹脂層を含む積層フィルムを製造する方法であって、任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であるポリアミド系フィルムを製造する第1工程とポリアミド系フィルムに共重合ポリエステル樹脂層を積層する第2工程とを含み、
前記第1工程は、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得るシート成形工程、
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに延伸することによって延伸フィルムを得る延伸工程
を含み、
前記延伸工程が逐次二軸延伸であり、
(2-1)50?70℃の温度下で前記未延伸シートをMDに延伸することによって第1延伸フィルムを得る第1延伸工程及び
(2-2)70?130℃の温度下で前記第1延伸フィルムをTDに延伸することによって第2延伸フィルムを得る第2延伸工程
を含み、
かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)の両方を満たし、
(4)第1延伸工程が2段階であり、1段目の延伸倍率を1.05?1.2倍とし、2段目の延伸倍率を2.28?2.81倍とする、
ことを特徴とするポリアミド系積層フィルムの製造方法。
【請求項10】第1延伸工程がロールを用いる延伸であり、かつ、第2延伸工程がテンターを用いる延伸である、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。
【請求項11】第2延伸フィルムをさらに180?230℃の温度下で弛緩熱処理を行う、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。
【請求項12】第2工程が、共重合ポリエステル樹脂を含む塗工液をポリアミド系フィルムの少なくとも一方の表面に塗布する工程を含む、請求項9に記載のポリアミド系積層フィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-25 
出願番号 特願2017-552109(P2017-552109)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩田 行剛  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 佐々木 正章
渡邊 豊英
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6290519号(P6290519)
権利者 ユニチカ株式会社
発明の名称 ポリアミド系積層フィルム及びその製造方法  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  

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