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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
管理番号 1352307
異議申立番号 異議2017-700609  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-14 
確定日 2019-05-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6043844号発明「ゲーム制御方法、サーバ装置及びプログラム」の特許異議申立事件についての平成30年6月19日付けの異議の決定に対し,平成31年3月26日,知的財産高等裁判所において当該決定を取り消す旨の判決(平成30年(行ケ)第10109号)が言い渡され,当該判決は確定したので,さらに審理の上,次のとおり決定する。 
結論 特許第6043844号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし6〕,7,8について訂正することを認める。 特許第6043844号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6043844号(請求項の数8。以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成26年2月25日に出願した特願2014-34003号(以下,「原出願」という。)の一部を平成27年8月10日に新たな特許出願(以下,「本件出願」という。)としたものであって,平成28年11月18日に特許権の設定登録がされた。
同年12月14日に本件特許について特許掲載公報の発行がされたところ,平成29年6月14日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)により請求項1ないし8に係る特許について特許異議の申立てがされた。
同特許異議の申立ては,本件特許異議申立事件(異議2017-700609)として審理され,同年9月29日付けで取消理由が通知され(同年10月4日発送),同年12月1日に特許権者より意見書が提出され,平成30年1月11日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ(同年1月15日発送),同年3月16日に特許権者より訂正請求(以下,当該訂正請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされるとともに意見書が提出され,同年5月9日に申立人より意見書が提出され,同年6月19日付けで
「特許第6043844号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?6〕,7,8について訂正することを認める。
特許第6043844号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」
との異議の決定(以下,「一次決定」という。)がされ,その謄本は同年7月3日に送達された。
同年8月2日,特許権者により一次決定の取消しを求める訴え(平成30年(行ケ)第10109号 特許取消決定取消請求事件)が知的高等裁判所に提起され,平成31年3月26日,同裁判所より
「1 特許庁が異議2017-700609号事件について平成30年6月19日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。」
との判決が言渡され,この判決はその後確定した(以下,当該判決を「確定判決」という。)。


第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの対戦条件が異なるように,前記対戦条件を設定するステップ」とあるのを,「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定するステップ」に訂正する。これにより,請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし6についても同様の訂正がなされることになる。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの対戦条件が異なるように,前記対戦条件を設定する手段」とあるのを,「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定する手段」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの対戦条件が異なるように,前記対戦条件を設定する機能」とあるのを,「時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定する機能」に訂正する。

2 訂正の目的,新規事項の追加,及び特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1ないし3は,それぞれ,請求項1ないし6,7及び8に係る発明の「対戦ゲームの対戦条件」が「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」であることを特定するとともに,「対戦条件を設定する」ことが「前記複数の期間の各期間の開始前に」行われることを特定しようとする訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,かかる訂正は,本件特許明細書の「対戦ゲームを制御するためのゲーム制御方法」,「設定された前記対戦条件に基づいて,前記対戦ゲームを進行するステップ」との記載(【0012】)等に基づくものであって,前者の記載によれば対戦ゲームは制御されており,かつ,後者の記載によれば対戦ゲームの進行は対戦条件に基づくから,「対戦ゲームの対戦条件」は「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」であるといえ,また,後者の記載によれば対戦条件の設定は対戦ゲームの進行より前に行われるから,「対戦条件を設定する」ことは「前記複数の期間の各期間の開始前に」行われるといえる。そうすると,訂正事項1ないし3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを総称して「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また,訂正事項1ないし3が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。
したがって,訂正事項1ないし3は,特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。

3 小括
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし6〕,7,8について訂正することを認める。


第3 本件特許の請求項1ないし8に係る発明
前記第2で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下,それぞれを「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明8」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)は,それぞれ,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを制御するためのゲーム制御方法であって,
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定するステップと,
設定された前記対戦条件に基づいて,前記対戦ゲームを進行するステップと,
を含み,
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない,
ゲーム制御方法。
【請求項2】
前記対戦条件には,前記グループにおける構成員の能力値を変更することが含まれる,
請求項1記載のゲーム制御方法。
【請求項3】
前記対戦条件には,前記グループにおける構成員のうち,対戦において発揮できる能力値の低い構成員の能力値を,所定割合で増加させることが含まれる,請求項1記載のゲーム制御方法。
【請求項4】
前記対戦条件を設定するステップは,前記互いに隣接する期間のうち先行する期間における対戦結果に基づいて,前記先行する期間の後の期間の前記対戦条件を設定する,請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゲーム制御方法。
【請求項5】
前記対戦条件には,前記先行する期間における前記対戦結果に基づいて,前記グループの前記構成員に,前記対戦において使用可能なアイテムを設定することが含まれる,請求項4記載のゲーム制御方法。
【請求項6】
前記キャラクタは,それぞれ特定の属性に対応付けられており,
前記対戦条件には,前記属性のうち所定の属性に対応付けられたキャラクタの能力値を変更することが含まれる,請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゲーム制御方法

【請求項7】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを制御するためのサーバ装置であって,
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定する手段と,
設定された対戦条件に基づいて,前記対戦ゲームを進行する手段と,
を備え,
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない,
サーバ装置。
【請求項8】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームをサーバ装置に制御させるためのプログラムであって,
このプログラムは,前記サーバ装置に,
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定する機能と,
設定された対戦条件に基づいて,前記対戦ゲームを進行する機能と,
を実現させ,
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない,
プログラム。」

第4 取消理由通知(決定の予告)により通知された取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の各請求項に係る特許に対して,平成30年1月11日付けの取消理由通知(決定の予告)により通知された取消理由で引用された引用例及び周知例は次の「(1)」に示すとおりであり,当該取消理由の内容は概略次の「(2)」及び「(3)」に示すとおりである。
(1)引用例
甲1:”大海原水上戦-逆襲のファンタジカ 攻略wiki”,[online],掲載日:平成25年10月24日[平成29年5月11日検索],インターネット<URL:http://seesawiki.jp/fantasica/d/%C2%E7%B3%A4%B8%B6%BF%E5%BE%E5%C0%EF>
甲4:”大激突ガーディアンブレイク”,週刊ファミ通2013年2月14日増刊号 ファミ通mobage,株式会社エンターブレイン,平成25年1月10日発行,No.12,p.54-55
甲5:”大激突!ガーディアンブレイク 特性 イベントボーナス:ゲーム攻略情報(GREE・モバゲー・他)”,[online],掲載日:平成24年10月21日[平成29年5月11日検索],インターネット<URL:http://barbarossa7.doorblog.jp/archives/19185151.html>
甲7:特開2006-14956号公報
甲8:”4Gamer.net-「イクシオンサーガ」タクティカル・バトルテストのプレイレポートを掲載。新たに追加されたオンライン対戦”本拠地戦”(Crush or Build)の評価は?”,[online],掲載日:平成24年6月1日[平成29年5月31日検索],インターネット<URL:http://4gamer.net:80/games/136/G013604/20120601030/>(インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(InternetArchiveWaybackMachine)収録,保存日:平成24年6月5日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20120605172904/http://4gamer.net:80/games/136/G013604/20120601030/>)
甲9:”最先端のオンラインアクションRPG C9(Continent of the Ninth)|Pmangオフィシャルサイト|ゲームガイド,[online],掲載日:平成25年9月1日[平成29年5月31日検索],インターネット<URL:http://c9.pmang.jp/game_guides/266>(インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(InternetArchiveWaybackMachine)収録,保存日:平成25年9月1日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20130901235716/http://c9.pmang.jp/game_guides/266>)

(2)取消理由1(新規性欠如)
請求項1,7及び8に係る発明は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,その特許は,特許を受けることができないものに対してされたものである。

(3)取消理由2(進歩性欠如)
請求項1,7及び8に係る発明は,甲1に記載された発明に基づいて,又は,甲1及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項2に係る発明は,甲1に記載された発明並びに甲4及び甲5に示された周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項3に係る発明は,甲1に記載された発明及び甲7ないし甲9に示された周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項4及び5に係る発明は,甲1に記載された発明に基づいて,又は,甲1に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項6に係る発明は,甲1及び甲4に記載された発明に基づいて,又は,甲1及び甲4に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,請求項1ないし8に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

2 引用例の記載及び当該記載から把握される事項
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1は,本件出願の出願時(特許法44条2項の規定により,本件出願は,原出願の出願の時にしたものとみなされる。)より前である平成25年10月24日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該甲1には次の記載がある。(下線は,後述する「甲1発明」の認定に特に関係する箇所を示すために,当合議体が付したものである。)
(ア) 「モバゲー スマートフォン用ソーシャルゲーム『逆襲のファンタジカ』の攻略wikiです。」(1ページ2行)

(イ)「最大7人からなるギルド(チーム)を結成し,期間内に開催されるギルドバトルを戦い抜こう!」(2ページ右上の図内)

(ウ)「バトル本戦期間とは,ギルド同士でバトルを行う期間です。
バトル本戦期間は3つのフェーズに分かれています。
1.マッチングフェーズ
2.バトルフェーズ
3.終了フェーズ
1.マッチングフェーズ
次の対戦相手となるギルドを決定するフェーズです。
マッチングフェーズ中のみ,「魂の注入」ボタンから「水平の魂」を投入することができます。
2.バトルフェーズ
ギルド同士でバトルを行っているフェーズです。
時間内により多くのGP(ギルドポイント)を獲得したギルドの勝利となります。
3.終了フェーズ
バトルフェーズが終了した後のフェーズです。
GP(ギルドポイント)の集計を行い,勝敗判定を決定します。」(27ページ末行ないし28ページ17行)

(エ)「パーティー編成とは,バトルフェーズに参戦させるユニットを編成する場所です。
最大10体まで所持ユニットから選んで参戦させることができます。」(29ページ4ないし7行)

(オ)「バトルフェーズ中の行動は「行動力」を消費して行います。
行動力は一定時間経過で回復をしていきます。
※行動力の回復値は最大行動力が高い程,多くなります。
行動力が足りない場合は,「回復薬」や「海原ドリンク」を使うことで最大値まで回復させることが可能です。
「海原ドリンク」はイベント報酬や期間中限定でプレミアムガチャのおまけで入手することができます。
※回復薬は1バトルごとに決められた個数しか使うことができません。
※海原ドリンクは特に回数制限なく使うことが可能です。
所持している「海原ドリンク」はイベント終了後は使用することができません。」(31ページ16ないし28行)

(カ)「バトルは以下のスケジュールで開催されます。
・・・(中略)・・・
前半戦第1試合目:2013年8月23日 16:00?17:00
前半戦第2試合目:2013年8月23日 21:00?22:00
前半戦第3試合目:2013年8月24日 12:00?13:00
前半戦第4試合目:2013年8月24日 16:00?17:00
前半戦第5試合目:2013年8月24日 21:00?22:00
前半戦第6試合目:2013年8月25日 12:00?13:00
前半戦第7試合目:2013年8月25日 16:00?17:00
前半戦第8試合目:2013年8月25日 21:00?22:00
前半戦第9試合目:2013年8月26日 7:00?8:00
前半戦第10試合目:2013年8月26日 12:00?13:00
後半戦第1試合目:2013年8月26日 21:00?22:00
後半戦第2試合目:2013年8月27日 7:00?8:00
後半戦第3試合目:2013年8月27日 12:00?13:00
後半戦第4試合目:2013年8月27日 21:00?22:00
後半戦第5試合目:2013年8月28日 7:00?8:00
後半戦第6試合目:2013年8月28日 12:00?13:00
後半戦第7試合目:2013年8月28日 21:00?22:00
後半戦第8試合目:2013年8月29日 7:00?8:00
後半戦第9試合目:2013年8月29日 21:00?22:00
後半戦第10試合目:2013年8月30日 7:00?8:00
後半戦第11試合目:2013年8月30日 21:00?22:00
後半戦第12試合目:2013年8月31日 12:00?13:00」(32ページ4ないし28行)

(キ)「・バトル勝利数報酬
ギルドに所属している期間中に,バトルで勝利した回数に応じて報酬が付与されます。
・・・(中略)・・・
※条件を達成したバトル後,プレゼントリストに付与されます。
・22勝
女神の果実 10個
・21勝
プレミアムガチャチケット 3枚
・20勝
★4以上確定ガチャチケット 1枚
・19勝
回復薬 5個
・18勝
時間短縮薬 5個
・17勝
剣の女神アヌ 1枚+
弓の女神ダヌ 1枚+
魔の女神タルトゥ 1枚
・16勝
個人回復薬 3個
・15勝
個人時間短縮薬 3個
・14勝
海原ドリンク 5個
・13勝
女神の果実 3個
・12勝
プレミアムガチャチケット 1枚
・11勝
弓の女神ダヌ 1枚
・10勝
魔の女神タルトゥ 1枚
・9勝
剣の女神アヌ 1枚
・8勝
海原ドリンク 3個
・7勝
水平の魂 10個
・6勝
女神の果実 1個
・5勝
黄金の女神エポナ 1枚
・4勝
海原ドリンク 1個
・3勝
水平の魂 5個
・2勝
500お供P
・1勝
1000勇気P」(33ページ6行ないし34ページ末行)

イ 甲1の記載から把握される発明
(ア) 前記ア(カ)によれば「バトル」は「前半戦第1試合目」から「後半戦第12試合目」までの合計22回のスケジュールで開催される一方,前記ア(キ)には「ギルドに所属している期間中に,バトルで勝利した回数に応じて報酬が付与されます。」と記載されるとともに「22勝」までの報酬が記載されているから,「バトルで勝利した回数」は最大で「22勝」であり,「バトル」は22回行われるものと認められる。そうすると,前記ア(カ)における「前半戦第1試合目」等と前記ア(キ)における「バトル」とは行われる回数がともに22回で一致しているから,前記ア(カ)における「前半戦第1試合目」等はそれぞれが「バトル」であると解するのが自然である。そして,「前半戦第1試合目」と「前半戦第2試合目」のように各「バトル」は隣接していると認められるから,前記ア(ウ)及び(カ)から,「時間の経過に沿って分割された複数のバトル本戦期間にバトルが行われ,各バトル本戦期間は互いに隣接する」といえる。

(イ) 前記ア(キ)から,甲1のゲームにおいてはバトル勝利数報酬が定められるといえ,前記ア(ウ)及び(カ)から,バトルが進行されるといえる。そして,バトル勝利数報酬を定めたり,バトルを進行することはゲームを制御することに他ならないから,甲1には「ゲーム制御方法」が記載されているといえる。

(ウ) 前記ア(キ)には,バトルで勝利した回数に応じて回復薬や海原ドリンク等の異なる報酬が記載されているから,前記ア(キ)においてバトルで勝利した回数に応じて付与される報酬は「回復薬や海原ドリンク等の異なる報酬」であるといえる。

(エ) 以上によれば,甲1には,次の発明が記載されていると認められる。(なお,各本戦期間に行われる各試合を,それぞれ「バトル」と表現した。)

「スマートフォン用ソーシャルゲームであって,
最大7人からなるギルドを結成し,期間内に開催されるギルドバトルを戦い,
バトル本戦期間とは,ギルド同士でバトルを行う期間であり,
バトル本戦期間はマッチングフェーズ,バトルフェーズ,終了フェーズの3つのフェーズに分かれ,
バトルフェーズはギルド同士でバトルを行っているフェーズであり,
バトルフェーズが終了した後の終了フェーズで勝敗判定を決定し,
パーティー編成とは,バトルフェーズに参戦させるユニットを編成する場所であり,
所持ユニットから選んで参戦させることができ,
時間の経過に沿って分割された複数のバトル本戦期間にバトルが行われ,各バトル本戦期間は互いに隣接し,
ギルドに所属している期間中に,バトルで勝利した回数に応じて回復薬や海原ドリンク等の異なる報酬が,条件を達成したバトル後に付与され,
バトルフェーズ中の行動は「行動力」を消費して行い,
行動力が足りない場合は,「回復薬」や「海原ドリンク」を使うことで最大値まで回復させることが可能である
ゲーム制御方法。」(以下「甲1発明」という。)

(2)甲4
ア 甲4の記載
甲4は,本件出願の出願時より前である平成25年1月10日に頒布された刊行物であるところ,当該甲4には次の記載がある。(下線は,後述する「甲4記載事項」の認定に特に関係する箇所を示すために,当合議体が付したものである。)
(ア)「本作品は,gloopsお得意の熱いチームバトルが楽しめる,戦略型バトルゲーム。”ロイヤル”と呼ばれるチームに所属するメンバー”ガーディアン”となり,世界の平定を目指す。チームバトルは攻城戦と呼ばれ,チェスのようなマス目のMAPが戦場となる。」(54ページ右欄1ないし7行)

(イ)「攻城戦は昼12時半と夜9時からの2回開催だが,その参戦人数が多いロイヤルに所属するように心がけるといい。」(54ページ「攻城戦に勝つには仲間との絆と経験が大事になる!」の項の左欄第6?9行)

(ウ)「日ごと週ごとに対象が変更となる”イベントボーナス”というものがあり,これをうまく活用することで簡単に強くなれる。逆にこれに気づかないと,出現する魔獣や同じようなレベルの相手にも苦戦してしまうので,じつはかなり重要な要素。イベントボーナスは,騎士,武器,防具という装備の特性が指定され,その特性と同じ騎士,武器,防具を装備するとステータスがアップするというもの。こまめにチェックして,装備を変更しよう。」(第55ページ「イベントボーナスを利用して強くなれ!」の項の第1?13行)

イ 甲4に記載された技術事項
前記ア(ア)ないし(ウ)からみて,甲4には,次の技術事項が記載されていると認められる。

「チームバトルが楽しめる,戦略型バトルゲームであって,
チームバトルは攻城戦と呼ばれ,チェスのようなマス目のMAPが戦場となり,
攻城戦は昼12時半と夜9時からの2回開催で,
日ごと週ごとに対象が変更となる”イベントボーナス”というものがあり,
イベントボーナスは,騎士,武器,防具という装備の特性が指定され,その特性と同じ騎士,武器,防具を装備するとステータスがアップする
戦略型バトルゲーム。」(以下,「甲4記載事項」という。)

3 取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)についての判断
(1)本件訂正発明1について
確定判決においては,時間の経過に沿って分割された複数の期間を「最小単位期間」といい,隣接する最小単位期間の対戦条件が異なるものとなるように設定することを「本件構成(1)」といった上で,本件訂正発明1に関して次の判示がされた。
「引用発明1(決定注:本決定における甲1発明である。)は本件発明1(決定注:本決定における本件訂正発明1である。)の構成である本件構成(1)を具備しないから,引用発明1は,本件発明1と,少なくとも,この点で相違し,したがって,本件発明1は,引用発明1と同一であるということはできない。
また,本件発明1と引用発明1との相違点である本件構成(1)が技術常識であるとも認められないから,本件発明1は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明し得たということもできない。
さらに,甲4文献には,引用発明4(決定注:本決定における甲4記載事項である。)が記載されているものと認められるが,引用発明4は,イベントボーナスが日ごと又は週ごとに変更するものであり,最小単位期間ごとに変更するものではないから,本件構成(1)を具備しておらず,したがって,引用発明1に引用発明4を適用しても本件発明1には至らない。
したがって,引用発明1及び引用発明4に基づいて本件発明1をすることができたということもできない。」

そして,行政事件訴訟法33条1項の規定により,一次決定を取り消した確定判決で示された知的財産高等裁判所の判断は当審を拘束する。
したがって,本件訂正発明1は,甲1発明と同一であるということはできず,さらに,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たということも,甲1発明及び甲4記載事項に基づいて当業者が容易に発明し得たということもできない。
以上のとおりであるから,取消理由1又は取消理由2により,本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。

(2)本件訂正発明2ないし6について
また,確定判決においては,本件訂正発明2ないし6に関して次の判示がされた。
「引用発明1は,本件構成(1)を備えていない点で,本件発明1とは相違し,また,この相違点を備えた引用発明1を容易に想到することはできないところ,本件発明2?6(決定注:本決定における本件訂正発明2ないし6である。)も,本件発明1を引用するものであるから,引用発明1に基づいて容易に発明することができたということはできない。」

そして,前述したとおり,一次決定を取り消した確定判決で示された知的財産高等裁判所の判断は当審を拘束するから,本件訂正発明2ないし6が,甲1発明,甲4記載事項,4及び甲5に示された周知技術1及び甲7ないし甲9に示された周知技術2に基づいて当業者が容易に発明し得たものということはできない。
したがって,取消理由1又は取消理由2により,本件訂正発明2ないし6に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件訂正発明7及び8について
さらに,確定判決においては,本件訂正発明7及び8に関して次の判示がされた。
「本件発明7及び8(決定注:本決定における本件訂正発明7及び8である。)は,本件発明1の「ゲーム制御方法」に対応する「サーバ装置」及び「プログラム」に関する発明であるところ,本件発明1には,新規性及び進歩性が認められるのであるから,本件発明7,8も,同様に新規性及び進歩性が認められる。」

そして,前述したとおり,一次決定を取り消した確定判決で示された知的財産高等裁判所の判断は当審を拘束するから,本件訂正発明7及び8が,甲1発明と同一であるということはできず,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たということも,甲1発明及び甲4記載事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものということもできない。
したがって,取消理由1又は取消理由2により,本件訂正発明7及び8に係る特許を取り消すことはできない。


第5 取消理由通知(決定の予告)で取り上げなかった特許異議申立ての理由等について
1 申立人の主張の概要
申立人は,異議申立書において,概略次の「(2)」に示す理由(以下,「申立理由1」という。)により本件特許の各請求項に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。当該申立理由1に関して,申立人が提出した証拠は,次の「(1)」に示すとおりである。
また,申立人は,平成30年5月9日に提出された意見書において,申立理由1は本件訂正後の各請求項に係る特許についても成り立ち,さらに,概略次の「(3)」に示す理由(以下,「申立理由2」という。)によっても本件訂正後の各請求項に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。
(1)提出された証拠
甲2:“【独占情報】ついに『ドラリー』がiPhoneに!『ドラゴンリーグX』が9月中旬に配信決定! -ファミ通App”,[online],平成24年8月22日,[平成29年5月11日検索],インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20120827001459/http://app.famitsu.com:80/20120822_84305/>
甲3:“【ドラリ-X部】初心者に捧ぐ!“ドラゴンリーグ”について解説(攻略第4回・バロンマサール篇) -ファミ通App”,[online],平成25年3月25日,[平成29年5月11日検索],インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20130327024836/https://app.famitsu.com/20130325_143480/>
甲6:特開2008-113858号公報
甲4,甲5,甲7ないし甲9は,取消理由1及び2で引用したもの(前記第4 1(1)を参照。)。

(2)申立理由1
本件訂正発明1,7及び8は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明2は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項及び第1周知技術(周知例:甲4,甲5)を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明3は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項及び第2周知技術(周知例:甲6ないし甲9)を適用することによって(請求項2の記載を引用する部分については,さらに前記第1周知技術を適用することによって),当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明4は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項及び甲1に記載された技術事項を適用することによって(請求項2,3の記載を引用する部分については,さらに前記第1,第2周知技術を適用することによって),当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明5は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項及び甲1に記載された技術事項を適用することによって(請求項2,3の記載を間接的に引用する部分については,さらに前記第1,第2周知技術を適用することによって),当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件訂正発明6は,甲2に記載された発明に,甲3に記載された技術事項,甲1に記載された技術事項及び甲4に記載された技術事項を適用することによって(請求項2,3の記載を直接又は間接的に引用する部分については,さらに前記第1,第2周知技術を適用することによって),当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本件訂正発明1ないし8に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由2
本件訂正後の請求項1,7及び8には「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」という発明特定事項が記載されているが,当該発明特定事項の意味するところが当業者であっても理解できないから,当該発明特定事項を具備する本件訂正発明1ないし8は,明確でない。
したがって,本件訂正発明1ないし8に係る特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 提出された証拠の記載及び当該記載から把握される事項
(1)甲2
ア 甲2の記載
甲2は,本件出願の出願時より前である平成24年8月22日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該甲2には次の記載がある。(下線は,後述する「甲2発明」の認定に特に関係する箇所を示すために,当合議体が付したものである。)
(ア) 「アソビズムは,現在GREEで配信中のフィーチャーフォン/Android用アプリ『ドラゴンリーグ』を,iPhoneでは最新作『ドラゴンリーグX』として,単独のネイティブアプリで配信することを決定した。配信予定日は2012年9月中旬で,価格は無料(アプリ内課金有り)。
・・・(中略)・・・
『ドラゴンリーグ』は,全国のユーザーと騎士団を結成し,リーグ戦でほかの騎士団とリアルタイムバトルをくり広げるソーシャルゲーム。」(1ページ中央の図の下1ないし8行)

(イ) 「●『ドラゴンリーグ』からのおもな変更点
・・・(中略)・・・
■リーグ戦
リーグ戦では,おもに“召喚獣”,“乱入攻撃”のふたつの要素と,“言霊攻め”という新機能が取り入れられている。

・服従召喚獣
フィールドで戦ったボスモンスターを倒すことで手に入れられる服従召喚獣を,リーグ戦闘中に呼び出して戦うことができる。服従召喚獣は,呼び出すことでほかのチームメンバーと協力して強化を行うことが可能。・・・(中略)・・・
・乱入攻撃
リーグ戦は基本的に20人のチームメンバーの中から,5人の選ばれたプレイヤー(レギュラー)が参加することになり,残りの15人の外野プレイヤーは“投石”や“応援”でレギュラーを応援することができる。『ドラゴンリーグX』では,この外野プレイヤーのみが行える行動として“乱入攻撃”が追加。外野プレイヤーだったプレイヤーがレギュラーに交じって戦闘に参加することができる。もちろん召喚を行うことも可能。外野プレイヤーの戦闘で活躍できるチャンス!」(2ページ下から2行ないし3ページ12行。図中の四角形の枠及び矢印は申立人が付したものである。)

(ウ) 「■アジト
アジトページでは,同じチームメンバーがリアルタイムで語り合えるので,チャットに近い感覚でコミュニケーションをとることが可能。プレイヤーどうしがリアルタイムで会話を行えるので,会話もはずむこと間違いナシ!

」(3ページ16行ないし同ページ下の図。図中の四角形の枠及び矢印は申立人が付したものである。)

イ 甲2の記載から把握される発明
前記ア(ア)及び(イ)から,甲2に記載された『ドラゴンリーグX』は,全国のユーザーと騎士団を結成し,リーグ戦でほかの騎士団とリアルタイムバトルをくり広げるソーシャルゲームであったフィーチャーフォン/Android用アプリ『ドラゴンリーグ』に,いくつかの変更点を加えたiPhone(Apple社が販売するスマートフォンの商品名である。)用のアプリであること,及び,変更点はあるものの,『ドラゴンリーグX』が,『ドラゴンリーグ』と同様に,全国のユーザーと騎士団を結成し,リーグ戦でほかの騎士団とリアルタイムバトルをくり広げるソーシャルゲームであることを把握できる。しかるに,「全国のユーザーと騎士団を結成」するとは,騎士団が複数のユーザー(すなわちプレイヤー)により構成されることにほかならない。
また,「リーグ戦」というからには,当該リーグ戦が対戦相手を変えた複数の対戦からなることは自明である。
さらに,前記ア(イ)の「■リーグ戦」の欄に掲載された図が,プレイヤーのiPhoneの表示画面に表示される戦闘の様子を示す画像であることが自明であるところ,当該画像には,人などを模した絵柄(以下,便宜上「人型絵柄」という。)が多数描かれている。しかるに,当該画像における「チーム掲示板」の欄で,一体の人型絵柄が「だれか,召喚獣を召喚するぞ!」と発言していることが示されていること,及び,前記ア(ウ)の「■アジト」の欄に掲載された図(プレイヤーのiPhoneの表示画面に表示されるアジトの様子を示す画像であることは自明である。)に,アソビズム騎士団のアジトの画像が示され,当該画像にも,多数の人型絵柄が描かれ,そのうちの2体の人柄絵柄に付された吹き出しの中とチーム掲示板とにそれぞれの人型絵柄の発言が示されており,前記ア(ウ)の「■アジト」の欄に「プレイヤーどうしがリアルタイムで会話を行える」と説明されていることを踏まえると,前記人型絵柄はそれぞれ各プレイヤーによって操作されていると理解される。また,当該各プレイヤーによる人型絵柄の操作がスマートフォンを介して行われることは,技術常識からみて自明である。そうすると,甲2に記載された『ドラゴンリーグX』のリーグ戦の各対戦は,各プレイヤーのスマートフォンの表示画面に,戦闘に参加する各プレイヤーが操作する各人型絵柄が描かれた画像が表示されて進行するといえる。
そして,甲2の記載から,少なくとも複数のスマートフォンを含むシステムによって実行される,『ドラゴンリーグX』のリーグ戦の各対戦を進行する方法についての発明を把握することができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。

「少なくとも複数のスマートフォンを含むシステムによって実行され,複数のプレイヤーにより構成される騎士団同士で戦うリーグ戦の各対戦を進行する方法であって,
各対戦において,各騎士団に属するプレイヤーを,戦闘に参加する5人のレギュラーと戦闘に参加することができる15人の外野プレイヤーとに分け,
各対戦を,リアルタイムバトルの形式で進行するとともに,各プレイヤーのスマートフォンの表示画面に,戦闘に参加する各プレイヤーが操作する各人型絵柄が描かれた画像を表示して進行する,
リーグ戦の各対戦を進行する方法。」(以下,「甲2発明」という。)

(2)甲3
ア 甲3の記載
甲3は,本件出願の出願時より前である平成25年3月25日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該甲3には次の記載がある。(下線は,後述する「甲3記載事項」の認定に特に関係する箇所を示すために,当合議体が付したものである。)
「【ドラリーX部】初心者に捧ぐ!“ドラゴンリーグ”について解説(攻略第4回・バロンマサール篇)
・・・(中略)・・・
●“ドラゴンリーグ”とは最強のチームを決めるリーグ戦!
・・・(中略)・・・『ドラリーX』を始めた初心者向けに,しばらくはひととおりの基本的なことを解説していきます。・・・(中略)・・・今回はいよいよタイトル名にも冠されている本作の中心となる戦い“ドラゴンリーグ”について触れたいと思います。
まず,「ドラゴンリーグとは何か?」という基本から説明していこう。“ドラゴンリーグ”は,開催期間中の10日間全40試合でライバルチームと試合を行い,優勝を目指していくという本作の中でもっともアツい戦いなのだ。では,そんなドラゴンリーグの特徴をまとめてみよう。
・開催期間は月曜日?翌週金曜日までの12日間(うち土日を除く平日10日間の総勝ち点数を競う)
・試合数は1日4試合で,獲得できる勝ち点数が試合ごとに異なる(朝は勝ち点1,昼と夕方は勝ち点2,夜は勝ち点3)
・・・(中略)・・・

」(1ページ1行ないし2ページ中央の図。図中の四角形の枠及び矢印は申立人が付したものである。)

イ 甲3に記載された技術事項
甲3の1ページの「●“ドラゴンリーグ”とは最強のチームを決めるリーグ戦!」の欄の記載から,甲3に記載された「ドラゴンリーグ」が,ライバルチームと全40試合を戦って,獲得した総勝ち点数を競うリーグ戦であることを把握できる。
したがって,前記アで摘記した記載からみて,甲3には次の技術事項が記載されていると認められる。

「ライバルチームと全40試合を戦って,獲得した総勝ち点数を競うリーグ戦であって,
前記試合は1日に4試合が行われ,
各試合で獲得できる勝ち点は,朝に行われる試合では1,昼と夕方に行われる試合では2,夜に行われる試合では3と定められた,
リーグ戦。」(以下,「甲3記載事項」という。)

3 申立理由1についての判断
(1)本件訂正発明1について
ア 甲2発明との対比
(ア) 甲2発明の「プレイヤー」及び「スマートフォン」は,その機能,作用等からみて,本件訂正発明1の「プレイヤ」及び「クライアント装置」にそれぞれ相当する。

(イ) 甲2発明のリーグ戦の各対戦では,各騎士団に属するプレイヤーが,戦闘に参加する5人のレギュラーと戦闘に参加することができる15人の外野プレイヤーとに分けられるのだから,各騎士団において戦闘に参加するプレイヤーはそれぞれ少なくとも5人以上である。また,甲2発明において,リーグ戦の各対戦は,各プレイヤーのスマートフォンの表示画面に,戦闘に参加する各プレイヤーが操作する各人型絵柄が描かれた画像が表示されて進行するのだから,当該各対戦は,各騎士団において戦闘に参加する5人以上のプレイヤーがそれぞれ操作する5体以上の人型絵柄からなるグループ同士で行われるものといえる。しかるに,甲2発明の「人型絵柄」は,その機能,作用等からみて,本件訂正発明1の「キャラクタ」に相当する。
そして,甲2発明の「複数のプレイヤーにより構成される騎士団同士で戦うリーグ戦の各対戦」は,対戦ゲームであるといえる。
さらに,甲2発明の「リーグ戦の各対戦を進行する方法」は,本件訂正発明1の「対戦ゲームを制御するためのゲーム制御方法」と,「対戦ゲームを行う際に実行される方法」である点で共通するといえる。
以上によると,甲2発明は,「各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを行う際に実行される方法であ」る点で,本件訂正発明1と共通する。

(ウ) 甲2発明は,リーグ戦の各対戦をリアルタイムバトルの形式で進行するから,リーグ戦の各対戦を進行するステップを有しているといえる。
したがって,甲2発明は,「対戦ゲームを進行するステップ」を有する点で,本件訂正発明1と共通する。

(エ) 前記(ア)ないし(ウ)に照らせば,本件訂正発明1と甲2発明は,
「各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを行う際に実行される方法であって,
前記対戦ゲームを進行するステップ
を含む,
方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点2:
本件訂正発明1は,対戦ゲームを制御するためのゲーム制御方法であり,時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して,互いに隣接する期間における対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように,前記複数の期間の各期間の開始前に,前記対戦条件を設定するステップを含み,対戦ゲームを進行するステップにおいては,設定された前記対戦条件に基づいて,対戦ゲームを進行し,前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しないのに対して,
甲2発明では,リーグ戦の各対戦における対戦条件は特定されておらず,したがって,本件訂正発明1のような構成のゲーム制御方法であるとはいえない点。

イ 相違点2についての判断
(ア) 申立人は,甲2発明に甲3記載事項を適用して,本件訂正発明1のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
そこで検討すると,甲2発明において,甲3記載事項を適用し,甲2発明のリーグ戦の各対戦を,1日に複数回行うよう構成するとともに,各対戦が実施される時間帯によって,当該対戦で獲得できる勝ち点を異なる値に設定し,リーグ戦を獲得した総勝ち点数を競うゲームとして構成することは,当業者が容易に想到し得たことといえる。
しかしながら,当該構成の変更を行った甲2発明において,各対戦ごとに変更されるのは,獲得できる勝ち点であって,当該勝ち点は,甲2発明のリーグ戦の各対戦の進行に何らかの影響を及ぼすようなパラメータではない。したがって,このような勝ち点に関する決め事や,時間帯によって異なる勝ち点という報酬自体が,本件訂正発明1における「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」に相当するとはいえない。
そうすると,甲2発明に甲3記載事項を適用したとしても,相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項には至らないから,本件訂正発明1が甲2発明及び甲3記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(イ) さらに,申立人が提出したその他の証拠を含め,相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成が本件出願の出願時より前に公知であったことを示す証拠は見当たらない。

エ 以上のとおりであるから,本件訂正発明1に係る特許について,申立理由1は成り立たない。

(2)本件訂正発明2ないし6について
本件訂正後の請求項2ないし6は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明2ないし6は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものに相当する。
そうすると,本件訂正発明1が甲2発明と甲3記載事項又はその他の技術事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明2ないし6も甲2発明と甲3記載事項又はその他の技術事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本件訂正発明2ないし6に係る特許について,申立理由1は成り立たない。

(3)本件訂正発明7及び8について
甲2の記載及び技術常識から,甲2発明の方法を実行するシステムに関する発明及び甲2発明の方法をシステムに制御させるためのプログラムに関する発明を把握することができるところ,本件訂正発明7及び8と前記システムに関する発明及び前記プログラムに関する発明とをそれぞれ対比すると,両者は,少なくとも相違点2と同様の点で相違する。
そして,本件訂正発明7及び8は,それぞれ,本件訂正発明1と同様の理由で,前記システムに関する発明及び前記プログラムに関する発明と甲3記載事項又はその他の技術事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本件訂正発明7及び8に係る特許について,申立理由1は成り立たない。

4 申立理由2についての判断
本件訂正後の請求項1,7及び8には「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」という発明特定事項が記載されている。また,本件訂正後の請求項2ないし6は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものである。
しかるに,「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」なる表現は,日本語としてみれば,平成30年5月9日に提出された意見書において申立人が主張しているように,「対戦条件」が対戦ゲームの進行を制御する手段として機能する等,多義的な解釈が可能な表現であって,その意味するところが明確な表現とは言い難い。
しかしながら,「対戦条件」が対戦ゲームの進行を制御する手段として機能するはずがないことは,技術常識からみて自明である。また,本件訂正後の請求項1,7及び8には「設定された前記対戦条件に基づいて,前記対戦ゲームを進行する」という発明特定事項が記載されている。これらのことに鑑みると,本件訂正後の請求項1ないし8の「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」なる発明特定事項は,「対戦条件」に基づいて対戦ゲームの進行が制御されること,言い換えると,「対戦条件」が対戦ゲームの進行に影響を及ぼす条件であることを特定していると解するのが自然である。
そして,このような解釈は,本件特許明細書の【0043】に記載された「対戦条件とは,グループ対戦において付加的に追加される条件を広く含むものである。詳細は後述するが,例えば,対戦条件には,キャラクタの攻撃力,防御力など,対戦において能力を発揮するパラメータ70(図2参照)を変更するような,キャラクタ個別の能力値を変更することが含まれる。また,対戦条件にはその他にも,キャラクタを操作するプレイヤに報酬を付与することや,分割された時間の前半において対戦結果を集計し後続の時間において反映させるなど,対戦において何らかの条件が付されることが含まれる。」等の記載とも矛盾しない。(なお,当該記載中に,対戦条件の例示として「キャラクタを操作するプレイヤに報酬を付与すること」が挙げられているが,当該例示が「対戦において何らかの条件が付されること」という表現によって限定されていること,すなわち,「対戦において何らかの条件が付される」ような報酬であることを前提とした例示であることは明らかである。このことは,【0055】に,対戦条件となる報酬の付与の具体例として,後半戦で使用可能なカードであって後半戦の時間中に攻撃力が2倍になるというイベントボーナスが与えられたものが記載されている一方,対戦の進行に影響を及ぼさないような報酬を付与することが対戦条件として記載されていないこと等からも明らかである。)
そうすると,「対戦ゲームの進行を制御する対戦条件」という発明特定事項は,技術常識や本件特許明細書の記載等を参酌することで,その意味するところを理解することができるというべきであって,当該発明特定事項を有する本件訂正発明1ないし8が,その特許を取り消さなければならないほど明確でないとすることはできない。
したがって,申立理由2は成り立たない。


第6 むすび
以上のとおり,取消理由通知(決定の予告)に記載した予告理由及び申立人が主張する申立理由によっては,本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを制御するためのゲーム制御方法であって、
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して、互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように、前記複数の期間の各期間の開始前に、前記対戦条件を設定するステップと、
設定された前記対戦条件に基づいて、前記対戦ゲームを進行するステップと、
を含み、
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない、
ゲーム制御方法。
【請求項2】
前記対戦条件には、前記グループにおける構成員の能力値を変更することが含まれる、請求項1記載のゲーム制御方法。
【請求項3】
前記対戦条件には、前記グループにおける構成員のうち、対戦において発揮できる能力値の低い構成員の能力値を、所定割合で増加させることが含まれる、請求項1記載のゲーム制御方法。
【請求項4】
前記対戦条件を設定するステップは、前記互いに隣接する期間のうち先行する期間における対戦結果に基づいて、前記先行する期間の後の期間の前記対戦条件を設定する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゲーム制御方法。
【請求項5】
前記対戦条件には、前記先行する期間における前記対戦結果に基づいて、前記グループの前記構成員に、前記対戦において使用可能なアイテムを設定することが含まれる、請求項4記載のゲーム制御方法。
【請求項6】
前記キャラクタは、それぞれ特定の属性に対応付けられており、
前記対戦条件には、前記属性のうち所定の属性に対応付けられたキャラクタの能力値を変更することが含まれる、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゲーム制御方法。
【請求項7】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームを制御するためのサーバ装置であって、
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して、互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように、前記複数の期間の各期間の開始前に、前記対戦条件を設定する手段と、
設定された対戦条件に基づいて、前記対戦ゲームを進行する手段と、
を備え、
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない、
サーバ装置。
【請求項8】
各プレイヤがクライアント装置を介して操作するキャラクタを構成員とするグループ同士の対戦ゲームをサーバ装置に制御させるためのプログラムであって、
このプログラムは、前記サーバ装置に、
時間の経過に沿って分割された複数の期間のそれぞれに対して、互いに隣接する期間における前記対戦ゲームの進行を制御する対戦条件が異なるように、前記複数の期間の各期間の開始前に、前記対戦条件を設定する機能と、
設定された対戦条件に基づいて、前記対戦ゲームを進行する機能と、
を実現させ、
前記複数の期間の各期間内において前記対戦条件は変化しない、
プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-24 
出願番号 特願2015-158515(P2015-158515)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A63F)
P 1 651・ 121- YAA (A63F)
P 1 651・ 113- YAA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 崇雅  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
清水 康司
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6043844号(P6043844)
権利者 グリー株式会社
発明の名称 ゲーム制御方法、サーバ装置及びプログラム  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 聖二  
代理人 松野 知紘  
代理人 田中 伸次  
代理人 多田 宏文  
代理人 河野 英仁  
代理人 多田 宏文  
代理人 祝谷 和宏  
代理人 祝谷 和宏  
代理人 松野 知紘  

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