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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1352325
異議申立番号 異議2019-700092  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-07 
確定日 2019-06-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6374279号発明「多数個取り配線基板、配線基板および多数個取り配線基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6374279号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6374279号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成26年9月24日に出願され、平成30年7月27日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年2月7日に特許異議申立人 橋本 清は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許発明
特許第6374279号の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の配線基板領域が配列されているとともに、第1主面および該第1主面と反対側の第2主面を有しており、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を有している母基板と、
前記第1主面に前記配線基板領域の境界に跨って形成された第1孔部と、
該第1孔部の内側面に被着された側面導体とを備えており、
前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっていることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
前記母基板が前記第2主面に第2孔部を有しており、該第2孔部は前記第1孔部と連通しているとともに、前記第2主面側の開口が前記第1主面側の開口よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板。
【請求項3】
前記側面導体は、前記第2主面側の端部において、前記第1主面側の端部よりも厚いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多数個取り配線基板。
【請求項4】
前記母基板の内部に形成された配線導体と、前記母基板の内部に形成された補助導体とを備えており、前記補助導体は、前記側面導体の前記第2主面側の端部および前記配線導体に接続されていることを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の多数個取り配線基板。
【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれかに記載の前記多数個取り配線基板が、前記配線基板領域毎に分割されてなることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
第1主面を有するセラミックグリーンシートを準備して、該セラミックグリーンシートに厚み方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の内側面に金属ペーストを塗布する工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1主面に、前記貫通孔を通過する分割溝をレーザー加工により形成する工程とを備えており、
前記貫通孔を形成する工程において、前記貫通孔の内側面を、前記第1主面と反対側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭めて形成することを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。」

第3 申立理由の概要
1.申立理由1(進歩性)
特許異議申立人は、証拠として、下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、請求項1ないし6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし6に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。

記(証拠一覧)
甲第1号証:特開2006-5035号公報
甲第2号証:特開2003-282795号公報
甲第3号証:特開2001-252784号公報
甲第4号証:特開2008-55466号公報
甲第5号証:特開平5-55402号公報
甲第6号証:特開平5-206592号公報

2.申立理由2(サポート要件)
特許異議申立人は、請求項1ないし5に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1ないし5に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。

3.申立理由3(明確性)
特許異議申立人は、請求項2に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項2に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。

第4 当審の判断
1.申立理由1(進歩性)について
(1)甲第1号証ないし甲第6号証の記載事項等
ア.甲第1号証(特開2006-5035号公報)
甲第1号証には、「電子部品収納用セラミックパッケージ集合体およびセラミックパッケージ」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア)「【0004】
図2(A)にセラミックパッケージの一例について模式図を示すが、電子部品素子接続用ランド3のような導体パターンを持つ基板1に枠体2が接合された形状をしている。このような配線基板あるいはセラミックパッケージは、通常図2(B)に示すような配線基板集合体の形で製作し、これを分割して個々のパッケージにする。このセラミックパッケージおよびその集合体をひっくり返して下面を上に向けて見た場合を図3(A)および(B)に示す。」
(イ)「【0006】
図5に、これのようなパッケージなど配線基板集合体および配線基板の製造工程の例を示す。まず所定の厚さに成形されたグリーンシートに、キャスタレーション4になる貫通孔6を開け、この貫通孔の内壁面にスルーホール印刷法により導体膜となるタングステンなどのペーストを印刷する。次に、この導体膜に接続させて、上面に接続ランドパターンの導体ペーストを印刷する。また積層するシートにより、下面にもマザープリント回路板などに接続するための端子用ランドとしての導体パターンなども印刷される。配線基板が複層の場合は、貫通孔位置は同じにして、異なる導体パターンあるいは上下層接続のためのビアを形成したグリーンシートをそれぞれ作製し、これらを積層する。さらに要すれば枠体も圧着される。
【0007】
積層後、図2(B)または図3(B)に示したように、上下面に貫通孔と直交する位置で分割用の溝7を形成し、一体化焼成をおこなう。 焼成後、表面に露出している回路パターンや貫通孔内壁の導体膜に対し、導電性改善のためのニッケルメッキおよび金メッキが施される。このようにして作製された配線基板集合体を、貫通孔位置にて分割用溝に沿って割れば、図2(A)あるいは図3(A)の配線基板(セラミックパッケージ)ができあがる。それにより、内面に導電体膜が形成された貫通孔6は、パッケージあるいは配線基板の側壁のキャスタレーション4となる。」
(ウ)「


(エ)「



上記(ア)によれば、配線基板は、配線基板集合体を分割して製造される。
また、上記(イ)及び(エ)によれば、前記配線基板集合体には貫通孔6が開けられ、前記貫通孔6の内壁面には導体膜が形成され、さらに、前記配線基板集合体の上下面には前記貫通孔6と直交する位置で分割用の溝7が形成されている。
そして、前記配線基板及び前記配線基板集合体を下面側からみた図である図3(A)及び(B)(上記(ウ)参照。)からは、前記配線基板集合体には、分割後に前記配線基板となる領域が複数配列されていること、前記配線基板集合体の下面に前記貫通孔6及び分割用の溝7が形成されていること、及び、前記貫通孔6は前記分割用の溝7に跨がっていることが見て取れる。

したがって、配線基板に分割する前の配線基板集合体及びその下面の構造に着目して、上記(ア)ないし(エ)の記載事項を総合すると、甲第1号証には次の発明が記載されている。

「分割後に配線基板となる領域が複数配列され、上下面を有し、下面に貫通孔及び分割用の溝が形成された配線基板集合体であって、
前記貫通孔は前記分割用の溝に跨がっており、
前記貫通孔の内壁面には導体膜が形成されている配線基板集合体。」

イ.甲第2号証(特開2003-282795号公報)
甲第2号証には、「配線基板」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子や容量素子等の電子部品を搭載するための配線基板に関し、詳しくは多数個取り基板を焼成した後にいわゆるチョコレートブレークにより個々の基板に分割して得られる配線基板に関する。」
(イ)「【0004】このような配線基板は、近時の電子装置の小型化に伴い、その大きさが数mm角程度の極めて小さなものとなってきており、その製作に際して、焼成後に絶縁基体用の母基板となる広面積のセラミックグリーンシート積層体に複数個分の絶縁基体となる領域を縦横の並びに配列して一体的に形成するとともに、この積層体の上下面に各々の絶縁基体となる領域に区画する分割溝を所定の深さで形成しておき、これを焼成して得た複数個の配線基板の集合体を分割溝に沿って分割(チョコレートブレーク)することによって、多数個を集約的に製作すること(多数個取り)が行なわれている。」
(ウ)「【0031】次に、上述の配線基板4の製造方法の一例について図4(a)乃至(e)に基づいて詳細に説明する。なお、図4(a)乃至(e)において、図1乃至図3と同一部分には同一符号を付している。
(中略)
【0034】次に、図4(b)に示すように、前記複数のセラミックグリーンシート21を、配線基板4の絶縁基体1となる領域に区画し、各区画内に所定の打ち抜き加工を施し、半導体素子3の搭載部1a形成用の開口部23等を設けるとともに、各区画間に跨るようにして貫通孔22を、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工等で形成する。
【0035】次に、図4(c)に示すように、前記セラミックグリーンシート21の表面に外部接続用導体2となる導電ペースト24を所定パターンに印刷塗布し、その後、セラミックグリーンシート21を上下に積層するとともに、この積層体の貫通孔22の内壁面に導電ペースト24を印刷塗布する。」

上記(ア)及び(イ)によれば、複数個の配線基板の集合体を分割溝に沿って分割することによって、多数個の配線基板を集約的に製作することが記載されており、上記(ウ)によればその製造方法の一部として、積層する前の複数のセラミックグリーンシートに、貫通孔22を、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工等で形成する。

したがって、セラミックシートに貫通孔を形成する工程に着目して、上記(ア)及び(イ)の記載事項を総合すると、甲第2号証には次の技術事項が記載されている。

「複数個の配線基板の集合体を製造する際に、積層する前の複数のセラミックグリーンシートに、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工等で貫通孔を形成すること。」

ウ.甲第3号証(特開2001-252784号公報)
甲第3号証には、「レーザ加工装置」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(ア)「【0006】従来のレーザ加工装置では、電子回路基板加工、例えばセラミックグリーンシートの穴明け加工では図1に示すように、レーザ光1によりセラミックグリーンシート2を加工する際、加工穴3がガラス管またはワーク受けピン上に位置するとガラス管やワーク受けピンと接触していることにより、加工下穴の爆発4が発生し穴径、穴形状が不均一になったり、ガラス管やワーク受けピンが加工穴下に存在することから加工残渣が加工穴から除去され難く、かす詰まり5が発生して穴明け不良になる可能性がある。さらに電子回路基板加工時にはレーザ光を集光し、ワーク受けを加工するのに十分なエネルギー密度を有しているため、これらのワーク受けがレーザ光により損傷を受ける可能性があり、これらの取り替えに手間とコストがかかる。」
(イ)「



上記(ア)によれば、図1は、レーザ光1によりセラミックグリーンシート2の穴明け加工をする際の図であり、上記(イ)に示す図1(a)からは、穴の形状が、レーザ光をあてる側の面から反対側の面にかけて内側に狭まっていることが見て取れる。

エ.甲第4号証(特開2008-55466号公報)
甲第4号証には、「スルーホール加工方法、スルーホール加工システムおよびマスク」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(ア)「【0001】
本発明は、パルスレーザーによってスルーホールを加工するスルーホール加工方法、スルーホール加工システム、ならびにそこで用いられるマスクに関するものである。」
(イ)「【0018】
次に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
(本発明の原理-スルーホールにテーパーができる原因-)
パルスレーザービームのレーザーフルーエンス(エネルギー密度)は、図1に示すように、中央部で高く周縁部で低い空間分布、通常は近似的にガウス分布をとる。したがって、Oをビーム中心位置、A_(1),A_(2)をアブレーションフルーエンスの閾値に等しい位置とすると、ほぼOA_(1)=OA_(2)であり、近似的に軸対称性を有している。レーザーフルーエンスが被加工物のアブレーションが生じる閾値以上の中央側では、アブレーションによって穴が掘られてゆくが、フルーエンスは中央部ほど高いので中央側ほど深く掘られる傾向がある。このため穴の壁面は、図2に示すように、傾斜面Wとなる。図2は、穴17が開口した直後の被加工物7を示す断面図である。穴17が、被加工物7の表面から裏面へと貫通した後は、フルーエンスの低いレーザービーム外周端でも、アブレーション閾値以上の部分では、アブレーションされるので、パルスショット数を多くしてゆくと徐々に掘れてゆき、やがてはテーパー角が0°(ストレート)になると考えられる。しかし、実際はそうならず、パルスショット数を増加させてもテーパー角はゼロに近づかずに、一定のテーパー角を維持する。」
(ウ)「



上記(ア)ないし(ウ)によれば、パルスレーザーによってスルーホールを加工することによって、穴の壁面は傾斜面Wとなる。

オ.甲第5号証(特開平5-55402号公報)
甲第5号証には、「セラミック基板の構造およびその製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(ア)「【0003】また、スル-ホ-ルを有する絶縁体層を多層化する場合には、全層共通に、かつ統一して、スル-ホ-ルのポンチ挿入面を、多層セラミック基板の部品搭載面側か、あるいはI/O接合面側に向けて層構成した構造が一般的に用いられる。このようにすれば、最も効率よく、かつ積層ずれ等に対する危険性を最小限に抑えられる。多層セラミック基板は、グリ-ンシ-トを積層して構成されるが、それらのグリ-ンシ-ト上にはスル-ホ-ル用の穴明けが行われる。すなわち、グリ-ンシ-ト穴明けの際には、図4(a)に示すように、スル-ホ-ルの数だけ配置されたポンチ17とダイブッシュ18の間にグリ-ンシ-ト19を配置して、全てのポンチ17を落下させることにより、グリ-ンシ-ト19上に全ての穴が明けられる。その場合、ポンチ17が挿入するポンチ挿入面側の穴径は小さく(穴径は100?120μm)であるのに対して、ダイブッシュ18側であるポンチ突き抜け側の穴径は大きくなる(穴径は120?160μm)。このように、ポンチ挿入側よりポンチ突き抜け側の穴径は20?40μmだけ大きいので、隣接する層が大きい穴径どうしで接触すると、積層ずれ等が生じたときには、隣接層のパタ-ンとショ-トするおそれがある。従って、通常は、図4(b)に示すように、部品搭載面側またはI/O接合面側を同じ向きに配列して、効率よく積層している。この種の構造に関連する文献としては、例えば、特開昭62-158398号公報がある。」
(イ)「



上記(ア)の記載によれば、多層セラミック基板は、グリ-ンシ-トを積層して構成されるが、それらのグリ-ンシ-ト上にはスル-ホ-ル用の穴明けが行われ、ポンチ17を落下させることによりあけられた穴の穴径は、ポンチ挿入面側は小さいのに対して、ポンチ突き抜け側の穴径は大きくなる。
そして、上記(イ)の図4(a)からは、穴の形状が、ポンチ突き抜け側の面からポンチ挿入面にかけて内側に狭まっていることが見て取れる。
さらに、上記(イ)の図4(b)からは、積層されたグリーンシートのそれぞれに上述の形状の穴があけられていることが見て取れる。

カ.甲第6号証(特開平5-206592号公報)
甲第6号証には、「セラミック基板およびセラミック配線板の製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(ア)「【0014】
【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。勿論、この発明は、下記の実施例に限らないことは言うまでもない。
-実施例1-
セラミック基板として、分断用のV溝および(導体回路用)スルホールが設けられているとともに前記V溝が導体回路の端子に近接した箇所が円形の貫通孔で不連続となっているアルミナ基板(縦・横10cm, 厚み0.5mm)を用いた。V溝、スルホール、貫通孔はいずれもレーザ加工で形成されている。」
(イ)「【0018】
【発明の効果】以上に述べたように、この発明のセラミック基板およびこれを用いるセラミック配線板の製造方法の場合、分断用の溝が設けられているためセラミック基板の分断が簡単で多数のセラミック配線板の同時形成に適しており、配線板の製造過程で分断用の溝の内に金属膜やはんだが残存した場合でも、溝の不連続箇所では断線しているため、回路同士の短絡は起こらず、しかも、不連続箇所の形成も簡単でセラミック基板自体の製造は容易であり、したがって、この発明は非常に有用であると言える。」

上記(ア)及び(イ)によれば、セラミック基板に、貫通孔で不連続となっている分断用のV溝がレーザ加工で形成される。

(2)本件特許発明1について
特許異議申立人は、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張するので、当該主張について検討する。
ア.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記(1)アで説示したとおり、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「分割後に配線基板となる領域が複数配列され、上下面を有し、下面に貫通孔及び分割用の溝が形成された配線基板集合体であって、
前記貫通孔は前記分割用の溝に跨がっており、
前記貫通孔の内壁面には導体膜が形成されている配線基板集合体。」

イ.対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「配線基板集合体」は、それを分割することによって複数の配線基板が製造されるから、本件特許発明1の「多数個取り配線基板」に相当する。
(イ)甲1発明における「分割後に配線基板となる領域」は、本件特許発明1における「配線基板領域」に相当する。そうすると、甲1発明における「配線基板集合体」と本件特許発明1の「多数個取り配線基板」は、「複数の配線基板領域が配列されている」点で共通する。
(ウ)甲1発明における「分割用の溝」は、分割前の基板すなわち母基板を、複数の配線基板に分割するために形成されたものであるから、本件特許発明1の「母基板」が有する「分割溝」に相当する。また、上記(ア)で述べたように分割用の溝に沿って分割すると複数の配線基板になるのであるから、甲1発明における「分割用の溝」は、「配線基板領域の境界に沿って」形成されているといえる。
(エ)本件特許発明1においては、分割溝を有している面を「第1主面」と呼んでいるから、甲1発明における「上下面」のうち、分割用の溝が形成された「下面」は本件特許発明1における「第1主面」に相当し、その反対側の面(上面)は、本件特許発明1における「第2主面」に相当する。
したがって、上記(ア)ないし(エ)を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、「複数の配線基板領域が配列されているとともに、第1主面および該第1主面と反対側の第2主面を有しており、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を有している母基板」を備えている点で共通する。
(オ)甲1発明における「貫通孔」及びその内壁面に形成された「導体膜」は、本件特許発明1の「第1孔部」及び「側面導体」にそれぞれ相当する。そして、甲1発明における貫通孔は分割用の溝に跨っており、かつ、上記(ウ)で述べたとおり、甲1発明における分割用の溝は配線基板領域の境界に沿って形成されているから、本件特許発明1と甲1発明は、「前記第1主面に前記配線基板領域の境界に跨って形成された第1孔部と、該第1孔部の内側面に被着された側面導体と」を備えている点で共通する。
ただし、本件特許発明1においては、「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」のに対して、甲1発明においては、そのような特定はなされていない点で相違する。

以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「複数の配線基板領域が配列されているとともに、第1主面および該第1主面と反対側の第2主面を有しており、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を有している母基板と、
前記第1主面に前記配線基板領域の境界に跨って形成された第1孔部と、
該第1孔部の内側面に被着された側面導体とを備えている、
多数個取り配線基板。」

<相違点>
本件特許発明1においては、「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」のに対して、甲1発明においては、そのような特定はなされていない。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
特許異議申立人は、甲第1号証には、貫通孔6の具体的な形成方法は記載されていないが、甲第2号証には、セラミックグリーンシートに対して、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工で貫通孔を形成することが記載されており、かつ、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工で貫通孔を形成すると、特別な加工処理を施さない限り、貫通孔の形状は一方の面側の端部から他方の面側の端部にかけて内側に狭まったものとなることは、例えば甲第3号証ないし甲第5号証に記載されているように周知技術であるから、甲第1号証に記載された発明においても、貫通孔6を甲第2号証に記載のように金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工で形成すれば、貫通孔の形状は一方の面側の端部から他方の面側の端部にかけて内側に狭まったものとなり、その際に、上下面(第1主面及び第2主面)のどちらの側からどちらの側へ狭まるようにするかは設計的事項にすぎない旨を主張する。(特許異議申立書第16頁第29行ないし第19頁第21行)
そこで、甲1発明の貫通孔について、その形成工程に関する甲第1号証の記載について検討すると、上記(1)アの(イ)及び(エ)で摘示した段落【0006】ないし【0007】及び図5の記載によれば、グリーンシートに貫通孔を開けた後に、複数のグリーンシートを積層することによって、焼成前の配線基板集合体を作製している。また、グリーンシートに対する貫通孔の開け方についてまでは記載されていないが、上記(1)イで説示したように、甲第2号証には、積層する前の複数のセラミックグリーンシートに、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工等で貫通孔を形成することが記載されているから、金属ピンを用いた機械的な穴あけ加工や、レーザー加工等で開けることは当業者が適宜なし得ることである。
ただし、グリーンシートに貫通孔を開けるタイミングは、複数のグリーンシートを積層する前であるから、仮に、1つのグリーンシートに開けられた貫通孔の形状が甲第3号証ないし甲第5号証に記載のように一方の面側の端部から他方の面側の端部にかけて内側に狭まったものになったとしても、複数のグリーンシートを積層することによって形成される貫通孔6全体の形状は、上記(1)オ(イ)で摘示した甲第5号証の図4(b)に記載されているような、内側に狭まった同一形状の孔が複数積層された形状になると解され、複数のグリーンシートを積層して作製される配線基板集合体の一方の面側の端部から他方の面側の端部にかけて内側に狭まっている形状にはならないものと認められる。
したがって、甲1発明の貫通孔6を形成する際に、甲第2号証に記載の上記技術事項や甲第3号証ないし甲第5号証に記載の上記技術事項を適用したとしても、上記相違点に係る本件特許発明1の「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」という発明特定事項を導き出すことはできないから、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに、本件特許発明2においては「前記母基板が前記第2主面に第2孔部を有しており、該第2孔部は前記第1孔部と連通しているとともに、前記第2主面側の開口が前記第1主面側の開口よりも大きいこと」という発明特定事項を、本件特許発明3においては「前記側面導体は、前記第2主面側の端部において、前記第1主面側の端部よりも厚いこと」という発明特定事項を、本件特許発明4においては「前記母基板の内部に形成された配線導体と、前記母基板の内部に形成された補助導体とを備えており、前記補助導体は、前記側面導体の前記第2主面側の端部および前記配線導体に接続されていること」という発明特定事項をそれぞれ追加したものであるから、上記(2)で説示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明5は、本件特許発明1ないし4の「多数個取り配線基板が、前記配線基板領域毎に分割されてなる」配線基板の発明であり、当該配線基板の形状には、上記(2)で検討した相違点に係る第1孔部の形状は反映されるから、上記(2)で説示した理由と同様の理由により、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明6について
本件特許発明6は多数個取り配線基板の製造方法の発明であって、「前記貫通孔を形成する工程において、前記貫通孔の内側面を、前記第1主面と反対側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭めて形成すること」という発明特定事項を有するものである。そして、上記(2)で説示したのと同様の理由で、甲第1号証に記載の配線基板集合体の製造工程において、貫通孔6を形成する際に、甲第2号証に記載の上記技術事項や甲第3号証ないし甲第5号証に記載の上記技術事項を適用したとしても、本件特許発明6の上記発明特定事項を導き出すことはできない。また、甲第6号証には、上記(1)カで摘示したように、分断用のV溝のレーザ加工について記載されているだけであるから、甲第6号証に記載の技術事項を勘案しても、本件特許発明6の上記発明特定事項を導き出すことはできない。
したがって、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載の技術事項、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.申立理由2(サポート要件)について
特許異議申立人は、本件特許発明1の「複数の配線基板領域が配列されているとともに、第1主面および該第1主面と反対側の第2主面を有しており、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を有している母基板」という発明特定事項からみて、母基板には既に第1主面に分割溝が形成されているから、本件特許発明1の「多数個取り配線基板」に対して分割溝を形成するためにレーザーが改めて照射されることはないとした上で、本件特許発明1が「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」という発明特定事項を備えていても、レーザーが照射されることはないのであるから、当該発明特定事項は課題解決手段として作用せず、したがって、本件特許発明1には課題解決手段が反映されていないから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている旨を主張する。
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本件特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件に適合するかについて検討すると、解決しようとする課題については、本件特許明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄(段落【0007】)に、「しかし、従来の技術の多数個取り配線基板については、次のような不具合が生じる可能性があった。すなわち、レーザー加工によって母基板の各配線基板領域の境界に分割溝が形成される際に、この貫通孔内の側面導体の一部が切断される可能性がある。この場合、例えば溝を形成した後に電解めっきを施すときに、複数の配線基板領域の少なくとも一部で、配線導体にめっき層が被着されないという問題が生じる可能性があった。」と記載されているから、【発明の効果】の欄(段落【0011】)の記載も勘案すると、本件特許発明1が解決しようとする課題は「レーザー加工によって母基板の各配線基板領域の境界に分割溝が形成される際に、この貫通孔内の側面導体の一部が切断されることを抑制すること」であると認められる。
また、当該課題を解決する手段については、本件特許明細書の【課題を解決するための手段】の欄(段落【0008】)には、「本発明の一つの態様の多数個取り配線基板は、複数の配線基板領域が配列されているとともに、第1主面および該第1主面と反対側の第2主面を有しており、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に沿って分割溝を有している母基板と、前記第1主面に前記配線基板領域の境界に跨って形成された第1孔部と、該第1孔部の内側面に被着された側面導体とを備えており、前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている。」のように、本件特許発明1の発明特定事項が過不足なく記載されている。さらに、段落【0011】、【0034】ないし【0037】には、上記発明特定事項のうち、「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」という構造は、「第1主面側から見たときに、第1孔部内の側面導体が母基板の第1主面側に隠れて見えにくい」構造であるため、「レーザー加工により母基板の各配線基板領域の境界に形成されたキャスタレーションとなる孔部を跨いで分割溝を形成する際に、第1孔部内の側面導体にレーザーが照射され難く側面導体の断線が抑制される。」ということ、すなわち、本件特許発明1の「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」という発明特定事項によって上記課題を解決できることが記載されている。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、当業者であれば、「前記第1孔部のうち少なくとも前記内側面に前記側面導体が被着された部分は、前記第2主面側の端部から前記第1主面側の端部にかけて内側に狭まっている」という発明特定事項によって、「レーザー加工によって母基板の各配線基板領域の境界に分割溝が形成される際に、この貫通孔内の側面導体の一部が切断されることを抑制すること」という課題を解決できると認識できるから、特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するものである。
また、上述したとおり、本件特許発明1が解決しようとする課題は、レーザー加工によって母基板の各配線基板領域の境界に分割溝が形成される際の問題を解決することであり、問題の原因となるレーザーは、分割溝がない状態の母基板に対して分割溝を形成する際に照射されるものである。そうすると、母基板には既に分割溝が形成されているからレーザーが改めて照射されることはないということを前提とする特許異議申立人の上記主張は、本件特許発明1が解決しようとする課題に則した主張ではないから採用することはできない。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。また、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む本件特許発明2ないし5も、本件特許発明1と同様の理由で、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。

3.申立理由3(明確性)について
特許異議申立人は、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載では、第2孔部の大きさが、母基板の第2主面に分割溝を形成する際に第2主面側から照射されるレーザーの太さ(スポット径)よりも大きいのか否かが明確でなく、仮に、第2孔部の大きさが第2主面側から照射されるレーザーの太さ(スポット径)よりも小さい場合、第2孔部の奥側までレーザーを導くことはできないから、本件特許発明2は不明確である旨を主張する。
しかしながら、甲第1号証の各図の記載からみても明らかなように、一般に、キャスタレーション用の孔の大きさよりも分割溝の幅の方が小さいのが普通であり、したがって、分割溝の形成にレーザーを用いるのであれば、レーザーの太さ(スポット径)も前記孔よりも小さくするのが普通であることや、仮にレーザーの太さ(スポット径)が孔の大きさよりも大きいとしても、その孔にレーザーをあてれば、そのレーザーの一部は孔の内部に進入することを勘案すると、請求項2の記載において、第2孔部の大きさと、母基板の第2主面に分割溝を形成する際に第2主面側から照射されるレーザーの太さ(スポット径)の大小関係が特定されていないからといって、本件特許発明2が不明確であるということはできない。
さらに、特許異議申立人は、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載では、第2主面側の開口と第1主面側の開口との間の構成については全く特定されておらず、例えば、第2主面側の開口と第1主面側の開口との間にある中間部分の開口が、第1主面側の開口よりも小さい場合(すなわち、第2孔部の中間部分がくびれたような形状の場合)には、第2孔部の奥側までレーザーを導くことはできないとも主張する。しかしながら、請求項2にも本件特許明細書にも、第2孔部をその中間部分がくびれたような形状とすることは記載も示唆もされておらず、かつ、当該形状は当業者が通常想定し得ない特殊な形状であるから、特許異議申立人が主張するような形状であることを前提に明確性を判断することはそもそも妥当であるとはいえないが、仮に、第2主面側の開口と第1主面側の開口との間にある中間部分の開口が、第1主面側の開口よりも小さく、かつ、レーザーの太さ(スポット径)が孔の中間部分の開口の大きさよりも大きいとしても、当該開口にレーザーをあてれば、そのレーザーの一部は当該中間部分の開口よりも奥に進入するから、第2孔部の中間部分の開口の大きさと、母基板の第2主面に分割溝を形成する際に第2主面側から照射されるレーザーの太さ(スポット径)の大小関係が特定されていないからといって、本件特許発明2が不明確であるということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-05-24 
出願番号 特願2014-193935(P2014-193935)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H05K)
P 1 651・ 537- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ゆずりは 広行  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 國分 直樹
山澤 宏
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6374279号(P6374279)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 多数個取り配線基板、配線基板および多数個取り配線基板の製造方法  
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