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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1352326
異議申立番号 異議2019-700210  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-18 
確定日 2019-06-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6392913号発明「研磨組成物およびアミノシランを用いて処理された研削剤粒子の使用方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6392913号の請求項6ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6392913号の請求項1?10に係る特許についての出願は,2008年9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年9月21日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2010-525838号の一部を平成26年11月6日に新たな特許出願とした特願2014-226224号の一部を平成29年2月2日に新たな特許出願としたものであって,平成30年8月31日にその特許権の設定登録がされ,平成30年9月19日に特許掲載公報が発行された。その後,請求項6?10に係る特許に対し,平成31年3月18日に特許異議申立人 冨永道治は,特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6392913号の請求項6?10の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項6?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項6】
基材を化学的機械的に研磨する方法であって,
(i)(a)液体キャリアーと,
(b)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって,利用可能なシラノールの表面被覆率が4%?50%であるようにアミノシラン化合物を用いて処理された表面を有する湿式プロセスシリカ粒子を含む,研削剤と,
(c)2?4のpHと,
を含む化学的機械的研磨組成物と,基材とを接触させる工程,
(ii)該基材に対して該研磨組成物を動かす工程,ならびに,
(iii)該基材を磨くために,該基材の少なくとも一部分を摩耗させる工程であって,該基材が酸化ケイ素の少なくとも1つの層または窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含み,そして該酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも一部分が該基材を磨くために該基材から除去される工程,
を含んで成り,そして
該処理されたシリカ粒子が15mV?40mVのゼータ電位を有する,方法。
【請求項7】
該利用可能なシラノールの表面被覆率が4%?30%である,請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該アミノシラン化合物がプロピル含有アミノシラン化合物を含む,請求項6に記載の方法。
【請求項9】
該プロピル含有アミノシラン化合物がトリアルコキシシラン化合物をさらに含む,請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該アミノシラン化合物が,アミノプロピルトリアルコキシシラン,ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン,ジエチルアミノメチルトリアルコキシシラン,(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリアルコキシシラン,3-(N-スチリルメチル)-2-アミノエチルアミノプロピルトリアルコキシシラン,(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン,トリアルコキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド,N-(トリアルコキシシリルエチル)ベンジル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド,ビス(メチルジアルコキシシリルプロピル)-N-メチルアミン,ビス(トリアルコキシシリルプロピル)尿素,ビス(3-(トリアルコキシシリル)プロピル)-エチレンジアミン,およびビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される,請求項6に記載の方法。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人 冨永道治は,主たる証拠として特開2005-162533号公報(以下「文献1」という。),及び従たる証拠として特開2006-196508号公報(以下「文献2」という。),特表2004-502824号公報(以下「文献3」という。),特開平08-045934号公報(以下「文献4」という。),本件特許の審査過程において平成30年4月20日付けで提出された意見書(以下「文献5」という。),及び「スラグウールによる超微粒シリカの分離-界面特性を利用した超微粒子希薄懸濁液迅速固液分離(第1報)-」,資材と資源,1999年発行,115巻,1号,p.17-23,写し」(以下「文献6」という。)を提出し,請求項6?10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項6?10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 文献の記載
(1)文献1には,以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
加水分解可能なケイ素化合物を加水分解・縮合して得られたコロイダルシリカを,変性剤で変性することを特徴とする変性コロイダルシリカの製造方法。
【請求項2】
触媒と水の存在下,有機溶媒中において加水分解可能なケイ素化合物を加水分解・縮合してコロイダルシリカを製造し,次いで,溶媒の一部又は全量を水で置換した後,該コロイダルシリカを変性剤で変性することを特徴とする変性コロイダルシリカの製造方法。
【請求項3】
前記変性コロイダルシリカ中の金属不純物の含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変性コロイダルシリカの製造方法。
【請求項4】
前記変性剤がシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の変性コロイダルシリカの製造方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が親水性有機溶媒で希釈されていることを特徴とする請求項4に記載の変性コロイダルシリカの製造方法。
【請求項6】
前記コロイダルシリカを変性剤で変性する際に,有機溶媒が1重量%以上残存していることを特徴とする請求項2に記載の変性コロイダルシリカの製造方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は変性コロイダルシリカの製造方法に関し,その目的は酸性の分散媒であってもコロイダルシリカの凝集やゲル化を起こすことがなく,長期間安定分散可能であり,しかも金属不純物の含有量が極めて少なく,高純度である変性コロイダルシリカの製造方法を提供することにある。」

「【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子を水に分散させたコロイダルシリカは,紙,繊維,鉄鋼などの分野で物性改良剤として用いられたり,半導体ウェハーの研磨剤として使用されたりしている。
コロイダルシリカは酸性条件下では,コロイダルシリカどうしが凝集してしまい,安定性に劣るといった問題が存在しており,幅広いpH領域で安定性に優れたコロイダルシリカが求められている。」

「【0018】
コロイダルシリカの変性剤は,特に限定されないが,一般式2(化2)で示されるカチオン性基を有するシランカップリング剤などを例示することができる。」

「【0025】
上記一般式2で表される化合物の具体例としては,例えば,アミノプロピルトリメトキシシラン,(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,アミノプロピルジメチルエトキシシラン,アミノプロピルメチルジエトキシシラン,アミノブチルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0026】
シランカップリング剤でコロイダルシリカを変性するには,コロイダルシリカにシランカップリング剤を加えて,所要温度で所要時間反応させればよい。
尚,カチオン性基を有するシランカップリング剤は親水性有機溶媒で希釈してコロイダルシリカに加えることが好ましい。カチオン性基を有するシランカップリング剤を親水性有機溶媒で希釈することによって,凝集物の生成を抑制することができる。
シランカップリング剤を親水性有機溶媒で希釈する場合,シランカップリング剤1重量部当り,5?50重量部,好ましくは10?20重量部の親水性有機溶媒に希釈すれば良い。
親水性有機溶媒としては,特に限定されないが,メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等の低級アルコールなどを例示することができ,特に反応溶媒の後処理などの観点から,原料化合物のアルキル基(R)と同様のアルキル基を有するアルコールを使用することが好ましい。
【0027】
シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが,コロイダルシリカに対して,0.01?3.0重量%,好ましくは0.1?1.0重量%程度である。0.01重量%未満であると,コロイダルシリカの変性の程度が低くなり,長期間安定分散可能な変性コロイダルシリカを得ることができない場合がある。3.0重量%を超えると,二次粒径の増大,凝集物の生成,ゲル化などといった問題が起こる場合がある。
【0028】
シランカップリング剤でコロイダルシリカを変性する際の処理温度は特に限定されず,室温からコロイダルシリカを分散する分散媒の沸点程度の温度であれば良く,具体的には0?100℃,好ましくは室温?90℃程度とされる。0℃未満の場合,コロイダルシリカの分散媒によっては凝固することがある場合があり,またシランカップリング剤の反応性が低下して十分変性することができないことがある。100℃を超える場合,分散媒によっては分散媒の沸点を超える場合がある。
【0029】
上記の方法に従って製造された変性コロイダルシリカの分散媒が水以外の溶媒を含む場合は,変性コロイダルシリカの長期保存安定性を高めるために,必要に応じて,反応溶媒を主とする分散媒を水で置換することができる。
反応溶媒を主とする分散媒を水で置換する方法は特に限定されず,例えば,変性コロイダルシリカを加熱しながら水を一定量ずつ滴下する方法を例示することができる。
また,変性コロイダルシリカを沈殿・分離,遠心分離等により反応溶媒を主とする分散媒と分離した後に,水に再分散させる方法を例示することができる。
【0030】
本発明に係る変性コロイダルシリカは,コロイダルシリカの表面が変性剤によって変性されているので,酸性の分散媒であっても,コロイダルシリカが凝集やゲル化を起こすことがなく,長期間安定分散可能である。しかも,本発明に係る変性コロイダルシリカは,ナトリウム,カリウム,鉄,カルシウム,マグネシウム,チタン,ニッケル,クロム,銅等の金属不純物の含有量が,10ppm以下と極めて少なく高純度である。
本発明に係る変性コロイダルシリカの粒子径は1000nm以下,好ましくは5?500nm,より好ましくは10?300nmである。
【0031】
本発明に係る変性コロイダルシリカは,幅広いpH領域において長期間の分散安定性に優れる。コロイダルシリカの安定性は,コロイダルシリカのゼータ電位を測定することで評価することができる。ゼータ電位とは,互いに接している固体と液体とが相対運動を行なったときの両者の界面に生じる電位差のことであり,ゼータ電位の絶対値が増加すれば,粒子間の反発が強く粒子の安定性は高くなり,ゼータ電位の絶対値がゼロに近づくほど,粒子は凝集しやすくなる。
特に本発明に係る変性コロイダルシリカは酸性領域において高い安定性を有する。変性剤としてカチオン性基を有するシランカップリング剤を用いた場合,分散媒がpH1?5のときのゼータ電位は正電位であり,分散媒が酸性であっても高い分散安定性を有する。また分散媒がpH5?7のときにゼータ電位が0となる等電位点を有する。分散媒がpH7以上であるとゼータ電位は負電位である。
【0032】
本発明に係る変性コロイダルシリカは,研磨剤,紙のコーティング剤などの様々な用途に使用することができるが,広いpH範囲で長期間安定分散可能であり,しかもナトリウムなどの金属不純物の含有量が10ppm以下と高純度であるので,特に半導体ウェハーの化学機械研磨の研磨剤として好適に用いることができる。」

「【実施例1】
【0034】
純水787.9g,26%アンモニア水786.0g,メタノール12924gの混合液に,テトラメトキシシラン1522.2gとメタノール413.0gの混合液を,液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下して,加水分解したシリカゾル分散液を得た。
このゾルを常圧下にて,2900mLまで加熱濃縮を行った。この濃縮液をさらに,常圧下,加熱蒸留しつつ,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達し,且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了して,高純度シリカゾルを得た。
高純度シリカゾル540gに,メタノール19.0gと3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.0gの混合液を,液温を保ちつつ10分かけて滴下した後,常圧下,2時間還流を行った。その後,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了して,実施例1のアミノ変性シリカゾルを得た。」

「【実施例4】
【0037】
純水787.9g,26%アンモニア水786.0g,メタノール12924gの混合液に,テトラメトキシシラン1522.2gとメタノール413.0gの混合液を,液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下して,加水分解したシリカゾル分散液を得た。
このゾルを常圧下にて,2900mLまで加熱濃縮を行った。この濃縮液をさらに,常圧下,加熱蒸留しつつ,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達し,且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了して,高純度シリカゾルを得た。
高純度シリカゾル540gに,メタノール57.0gと3-アミノプロピルトリメトキシシラン3.0gの混合液を,液温を保ちつつ10分かけて滴下した後,常圧下,2時間還流を行った。その後,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了して,実施例4のアミノ変性シリカゾルを得た。」

「【0042】
(試験例1;粒子径の測定)
実施例1?4及び比較例1?3のコロイダルシリカ中の微粒子の一次粒子径及び二次粒子径を測定した。一次粒子径は散乱強度から換算して粒子径を算出した。二次粒子径(ELS値)はクエン酸希釈法によって測定した。
粒子径は,試料調製直後と1ヶ月経過した後に測定した。また前記コロイダルシリカの分散媒をpH4.5に調整した直後と調整から数日経過した後にも二次粒子径を測定した。
結果を表1及び2に記載する。
【0043】
(試験例2;外観の観察)
実施例1?4及び比較例1?3のコロイダルシリカの外観を観察した。
概観の観察は,試料調製直後と1ヶ月経過した後に行なった。また前記コロイダルシリカの分散媒をpH4.5に調整した直後と調整から数日経過した後にも外観を観察した。
結果を表1及び2に記載する。
【0044】
(試験例3;粘度測定)
実施例1?4及び比較例1?3のコロイダルシリカの粘度を,キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定した。
粘度は,試料調製直後と1ヶ月経過した後に測定した。また前記コロイダルシリカの分散媒をpH4.5に調整した直後と調整から数日経過した後にも粘度測定を行った。
結果を表1及び2に記載する。
【0045】
尚,実施例1?5の変性コロイダルシリカでは,ナトリウムを主とする金属不純物の含有量は10ppm以下であり,非常に高純度であった。一方,変性剤としてアルミン酸ナトリウムを用いた比較例3の変性コロイダルシリカでは,ナトリウムを主とする金属不純物は約3000ppm含まれており,純度は非常に低かった。
【0046】
【表1】



「【0048】
(試験例4;ゼータ電位の測定)
実施例1,5及び比較例1,3のコロイダルシリカのゼータ電位をELS-8000(大塚電子社製)を用いて動的光散乱ドップラー法にて測定した。
結果を図1に記載する。
尚,図1中,(A)は実施例1のゼータ電位,(B)は実施例5のゼータ電位,(C)は比較例1のゼータ電位,(D)は比較例3のゼータ電位である。
【0049】
図1に示されるように,変性剤としてカチオン性基を有するシランカップリング剤を使用した実施例1及び5の試料では,pH1?5の酸性領域のゼータ電位は正電位であった。ゼータ電位が0となる等電位点はpH5?7に存在しており,pH7以上では,ゼータ電位は負電位であった。
変性剤としてアルミン酸アルカリを使用した比較例3では,pH1?14において,ゼータ電位は負電位であった。pH1?14において,ゼータ電位が0となる等電位点は存在していなかった。
【0050】
また,変性剤で変性処理する際,コロイダルシリカの分散媒を水で置換した実施例1の試料と,変性剤で変性処理する際,コロイダルシリカの分散媒を水で置換しなかった実施例5の試料では,水で置換した実施例1の試料の方が実施例5の試料に比べてゼータ電位の絶対値が大きくなり,分散安定性がより高くなることが分かる。」

上記の記載から,文献1には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
ア シリカ微粒子を水に分散させたコロイダルシリカは,紙,繊維,鉄鋼などの分野で物性改良剤として用いられたり,半導体ウェハーの研磨剤として使用されたりしているが,コロイダルシリカは酸性条件下では,コロイダルシリカどうしが凝集してしまい,安定性に劣るといった問題が存在しており,幅広いpH領域で安定性に優れたコロイダルシリカが求められていること。(【0002】)

イ 加水分解可能なケイ素化合物を加水分解・縮合して得られたコロイダルシリカを,変性剤としてシランカップリング剤を使用して変性して製造した変性コロイダルシリカは,コロイダルシリカの表面が変性剤によって変性されているので,酸性の分散媒であっても,コロイダルシリカが凝集やゲル化を起こすことがなく,長期間安定分散可能であること。(【請求項1】,【請求項4】,【0030】)

ウ コロイダルシリカの変性剤は,特に限定されないが,例えば,アミノプロピルトリメトキシシラン,(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,アミノプロピルジメチルエトキシシラン,アミノプロピルメチルジエトキシシラン,アミノブチルトリエトキシシラン等を例示することができること。(【0018】,【0025】)

エ シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが,コロイダルシリカに対して,0.01?3.0重量%,好ましくは0.1?1.0重量%程度である。0.01重量%未満であると,コロイダルシリカの変性の程度が低くなり,長期間安定分散可能な変性コロイダルシリカを得ることができない場合がある。3.0重量%を超えると,二次粒径の増大,凝集物の生成,ゲル化などといった問題が起こる場合があること。(【0027】)

オ 加水分解可能なケイ素化合物を加水分解・縮合して得られたコロイダルシリカを,変性剤としてシランカップリング剤を使用して変性して製造した変性コロイダルシリカは,広いpH範囲で長期間安定分散可能であり,しかもナトリウムなどの金属不純物の含有量が10ppm以下と高純度であるので,特に半導体ウェハーの化学機械研磨の研磨剤として好適に用いることができること。(【請求項1】,【請求項4】,【0032】)

カ 実施例4として,純水787.9g,26%アンモニア水786.0g,メタノール12924gの混合液に,テトラメトキシシラン1522.2gとメタノール413.0gの混合液を,液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下して,加水分解して得たシリカゾル分散液を,常圧下にて,2900mLまで加熱濃縮を行い,この濃縮液をさらに,常圧下,加熱蒸留しつつ,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達し,且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了して高純度シリカゾルを製造し,
その後,前記高純度シリカゾル540gに,メタノール57.0gと3-アミノプロピルトリメトキシシラン3.0gの混合液を,液温を保ちつつ10分かけて滴下した後,常圧下,2時間還流を行い,その後,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了してアミノ変性シリカを得る方法が示されていること。(【0037】)

キ 実施例1?4のコロイダルシリカ中の微粒子の一次粒子径及び二次粒子径を測定したところ,実施例1?3の二次粒径が,それぞれ,39.1,36.2,35.2nmであることが示されているのに対して,実施例4の粒径は,一次粒径,二次粒径のいずれの測定結果も記載されていないこと。(【0042】,【表1】)

ク 実施例1?4のコロイダルシリカの外観の観察を,試料調製直後に行なったところ,実施例1?3の外観は,「透明性」を示したのに対して,実施例4の外観は,「ゲル化」していることが観察されたこと。(【0043】,【表1】)

そうすると,文献1には,「実施例4」として,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「純水787.9g,26%アンモニア水786.0g,メタノール12924gの混合液に,テトラメトキシシラン1522.2gとメタノール413.0gの混合液を,液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下して,加水分解して得たシリカゾル分散液を,常圧下にて,2900mLまで加熱濃縮を行い,この濃縮液をさらに,常圧下,加熱蒸留しつつ,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達し,且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了して高純度シリカゾルを製造し,
その後,前記高純度シリカゾル540gに,メタノール57.0gと3-アミノプロピルトリメトキシシラン3.0gの混合液を,液温を保ちつつ10分かけて滴下した後,常圧下,2時間還流を行い,その後,容量を一定に保ちつつ純水を滴下し,塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了してアミノ変性シリカを得る方法であって,
前記アミノ変性シリカは,コロイダルシリカの外観の観察を,試料調製直後に行なったところ,ゲル化していることが観察されるものである方法。」

(2)文献2には,以下の事項が記載されている。
「【請求項3】
研磨する膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押し当て加圧し,請求項1?2に記載の半導体金属膜用CMP研磨液を研磨膜と研磨布との間に供給しながら,基板と研磨定盤を動かして研磨する膜を研磨する基板の研磨方法。」

「【0013】
更に本発明を詳しく説明する。
本発明で,削りとられる金属膜は,TaNまたはTaおよびこれらを積層した金属層を有する堆積膜からなる金属膜,並びにその下地のSiO_(2)である。
【0014】
本発明において,研磨液で用いる砥粒としては,電気泳動法により測定したゼータ電位が5mV以上であるシリカ粒子である。研磨液中での分散安定性が良く,CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数が少ない点で,コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカはシリコンアルコキシドの加水分解又は珪酸ナトリウムのイオン交換により製造できる。」

「【0016】
本発明において,砥粒のゼータ電位を調整するために,シランカップリング剤を用いることができる。本発明において研磨液に用いるシランカップリング剤に制限はないが,アミノ基を含むN-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン,N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン,γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。シランカップリング剤の配合量は,砥粒のゼータ電位を5mV以上にするのであれば,特に制限はない。また,砥粒のゼータ電位を調整するものとしては,シランカップリング剤に限定するものではない。」

「【0027】
基体の研磨は,研磨定盤の研磨布上に本発明に係る研磨液を供給しながら,金属堆積膜を有する基体(基板)を研磨布に押圧した状態で,研磨定盤と基体との相対的位置を動かすことによって行うことができる。」

(3)文献3には,以下の事項が記載されている。
「【0010】
1つの実施形態において,本発明は,溶解状態の少なくとも1種のシラン化合物及び少なくとも1種の研磨材を含有する化学機械研磨溶液を含む。」

「【0014】
本発明のさまざまな好ましい実施形態の詳細について記述する前に,本明細書で使用される用語のいくつかを定義する。「研磨組成物」という語は,研磨材を含有しない組成物又は溶液を意味する。研磨組成物は,基材を研磨するため,研磨材を伴う又は伴わない研磨パッドと組合わせることができる。代替的には,研磨組成物は,粒状研磨材と組合せて研磨(CMP)用「スラリー」を形成することができる。研磨組成物及びスラリーは,半導体薄膜,集積回路薄膜,及びCMPプロセスが有用である他の何らかの薄膜及び表面を含み得る(ただしこれらに制限されるわけではない)多層金属化層に関する構造物を研磨するために有用である。
【0015】
本明細書で使用されている「基材構造物」という語は,バイア及び銅相互接続ラインといったような電子基材の構造物,及び誘電体層,低k材料層,接着層,金属層などといったような構造物上又は構造物内に堆積した材料の層を意味する。本発明の組成物は,材料層を除去するべく基材を研磨するため,及び露出された基材の構造物を研磨するための両方にとって有用である。
【0016】
本発明の研磨組成物及びスラリーは,溶解状態の少なくとも1種のシラン化合物を含有している。本発明の研磨組成物において有用であるシラン化合物の一般的分類には,アミノシラン,ウレイドシラン,アルコキシシラン,アルキルシラン,メルカプトシラン,チオシアナトシラン,ビニルシラン,メタクリルシラン,シアノシラン,官能化アルキルシランといった官能化シラン,ジシラン,トリシラン及びそれらの組合せが含まれる。」

「【0031】
本発明の研磨組成物及びスラリーのpHは,約2.0?約12.0,好ましくは約5.0?約9.0の範囲内に維持することが望ましい。本発明の組成物及びスラリーのpHは,任意の既知の酸,塩基又はアミンを用いて調整することができる。しかしながら,水酸化アンモニウム及びアミン又は硝酸,リン酸,硫酸又は有機酸といったような金属イオンを含まない酸又は塩基の使用が,本発明のCMPスラリー内への望ましくない金属成分の導入を回避するために好ましい。」

「【0037】
本発明の研磨組成物は,いかなるタイプの基材構造物の研磨にも使用できる。本発明の研磨組成物は,望ましい誘電体層研磨速度を示しながら,銅層といったような金属層に対して望ましい低い欠陥率を示すことから,金属構造物を研磨するために使用されることが好ましい。本発明の組成物によって研磨されうる絶縁体材料,金属,及び酸化物の例としては,制限的な意味なく,銅,銅合金,タンタル,窒化タンタル,タンタル合金,タングステン,窒化タングステン,タングステン合金,アルミニウム,アルミニウム合金,チタン,チタン合金,シリカ,ドープガラス,無機重合体並びにそれらのあらゆる組合せが含まれる。」

「【0047】
研磨の結果は,銅除去速度が溶解状態のシランの存在で増大することを示している。これらの結果は同様に,少量のシラン溶液が,基材の平坦化の尺度であるウェハ不均一性の劣化なく,銅除去速度を改善することをも例示している。実験2?6の結果は,選択されて研磨組成物に導入されたシランが誘電体層研磨速度を増大するということを示している。また,実験7?9の結果は,シランを研磨組成物内に導入して,誘電体層(酸化物)研磨速度を低減させられることを示している。」

(4)文献4には,以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 段差状の金属配線層表面を有する半導体基体を保持して,該基体の段差状の金属配線層表面側に研磨プレートを接触させて,スラリーを供給しながら研磨を行う半導体装置の製造方法において,
表面処理された研磨粒子を含むスラリーを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 研磨粒子表面に塩基性層を形成したスラリーを用いることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】 研磨粒子表面の表面処理剤として少なくとも1つ以上のアミノ基を含有する有機シリコン化合物を用いたことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】 溶液処理方法を用いて研磨粒子の表面処理をして得られるスラリーを用いることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】金属配線層の研磨では通常化学的研磨効果を発揮させるために,比較的酸性領域での研磨を行う必要がある。しかし,物理的研磨効果を発揮させるために添加したシリコン酸化物微粒子は酸性溶液中では粒子の分散が不十分であり凝集体を形成することが知られているが,シリコン酸化物微粒子は酸性酸化物であり,シリコン酸化物微粒子が酸性溶液中では十分分散しないで,凝集体を形成する傾向がある。このことは,例えば,雑誌「表面」vol.23 No.5(1985)に詳細に記載されている。そのため配線層の研磨時にシリコン酸化物粒子の凝集体により配線層および層間絶縁膜にいわゆるスクラッチと呼ばれる傷が発生することが懸念されている。これに対して酸性溶液中での分散性を向上させるために表面が塩基性の酸化物を用いることにより溶液中での凝集を低減して分散性を向上させる方法が考案されている。しかし,表面が塩基性の酸化物はアルミナ等をはじめ表面硬度が高いため,これも配線層および層間絶縁膜にいわゆるスクラッチと呼ばれる傷が発生することがある。」

「【0008】
【作用】半導体装置の製造時における金属配線層の段差状表面の研磨用のスラリー成分として用いる酸化物微粒子の分散性は微粒子表面の性質と分散する溶液の性質に大きく依存し,金属配線層表面の研磨に用いられる酸性溶液中では表面硬度の比較的低いシリコン酸化膜では分散性が低く,凝集してしまう。しかし,本発明の研磨粒子の表面処理により該粒子表面を塩基性にすることで表面電位が負に帯電し,酸性溶液中での粒子間反発力が増大し,シリコン酸化物の分散性が良好になる。このため,酸性溶液中での分散性は高くなり,金属配線層および層間絶縁膜表面のスクラッチの発生を抑制できる。
【0009】
【実施例】以下に本発明の具体的な実施例について説明する。ここで実際の半導体基体の表面の研磨工程の説明に先立ち,まず本発明を実施するために使用した研磨装置の構成例を図1を参照しながら説明する。なお,ここで上記研磨装置として,枚葉式の研磨装置を採り上げるが,ウェーハ載置の構成や使用方法の工夫については,特に限定されるものではない。ウェーハ25は保持試料台回転軸27を有するウェーハ保持試料台(キャリアー)26に真空チャック方式により固定される。一方,研磨プレート(プラテン)23上にはパッド28が固定されており,スラリー導入管21からスラリー22がパッド28に向けて供給される。ウェーハ25とパッド28とは互いに対向して向かい合わせになるように配置され,それぞれウェーハ保持試料台回転軸27と研磨プレート回転軸24とを備えている。ポリッシュ処理中は上部のウェーハ保持試料台回転軸27および下部の研磨プレート回転軸24を回転することにより,ウェーハ25面内のポリッシュの均一性を確保している。なお,研磨時のウェーハ25の押しつけ圧力については,ウェーハ保持試料台(キャリアー)26に加える力を制御することにより行う。」

「【0013】次に,半導体集積回路を製造の際に,段差を有する基体上に配線層を形成して半導体装置を得る手順を説明する。本実施例は層間絶縁膜に形成した接続孔にタングステン(W)による金属配線層を形成する例である。図3(a)に示すようにシリコンなどからなる半導体基板41上に酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜42および配線層を形成した後,レジストプロセスを用いてエッチングにより配線層43を形成したウェーハを用意した。その後,図3(b)に示すように層間絶縁膜44を常法により形成した。次に,図3(c)に示すように層間絶縁膜44を常法の研磨方法により加工した後,レジストプロセスを用いてエッチングにより接続孔を形成した。そして,図3(d)に示すように金属配線層45を形成した後,図3(e)に示すように以下の条件で研磨を行い接続孔の埋め込みを行った。なお,このとき用いたシリコン酸化物研磨粒子は前述の溶液反応法により表面処理剤としてγ-アミノプロプルトリエトキシシランを用いて処理したものを用いた。
【0014】金属配線層45のWの研磨条件は以下の条件で行った。
Wの研磨条件
研磨プレート23の回転数 37rpm
ウェーハ保持台26の回転数 17rpm
研磨圧力 5.5×10^(3)Pa
スラリー流量 225ml/min
スラリー成分 表面処理研磨粒子
K_(3)[Fe(CN)_(6)]+KH_(2)PO_(4)水溶液
pH=5.0
研磨終了後,水洗することによりスラリーを除去し,W金属配線層45の研磨工程は終了する。次いで層間絶縁膜42を常法により形成することにより層間絶縁膜42の平坦化が完了する。耐スクラッチ性を評価した結果,未処理の場合にはW金属配線層45の表面および層間絶縁膜44面にスクラッチが観測されたが,表面処理を行った場合にはスクラッチは観測されなかった。」

「【0017】上記各実施例では表面処理剤としては,γ-アミノプロピルトリエトキシシランおよびN-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いたが,少なくとも1つ以上のアミノ基を含有しているものを用いれば適宜変更可能である。例えば,4-アミノブチルジメチルメトキシシラン(NH_(2)C_(4)H_(8)Si(CH_(3))OCH_(3)),アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン(NH_(2)C_(2)H_(4)NHCH_(2)-C_(6)H_(4)-C_(2)H_(4)Si(OCH_(3))_(3)),N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(NH_(2)C_(2)H_(4)NHC_(3)H_(6)Si(CH_(3))_(2)OCH_(3))などが考えられる。
【0018】
【発明の効果】半導体装置の製造時における金属配線層の段差状表面の研磨性が向上し,金属配線層表面および層間絶縁膜表面でのスクラッチの発生を抑制することができる。」

(5)文献5には,以下の事項が記載されている。
「[3.2]引用文献1について
引用文献1は,本願発明に係る,1wt%のシリカ粒子当たり150ppm?500ppmのアミノシラン化合物または4%?50%のシラノールの表面被覆率,および4?8のpH,15mV?40mVのゼータ電位かつ基材が酸化ケイ素の少なくとも1つの層または窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含むこと,を有さない点で相違する。

まず,本願発明に係る,1wt%のシリカ粒子当たり150ppmから500ppmのアミノシラン化合物について説明する。
引用文献1は,1522.2gのテトラメトキシシランから2900mLのシリカゾルを得,このゾル540gに1.0gの3-アミノプロピルトリメトキシシランを処理したこと(実施例1)を記載する。このシラン化合物がすべてシリカになったと仮定して,このシラン化合物の分子量およびシリカの比重2.2(g/cm^(3))から計算すると2900mLのシリカゾルは3228gのシリカを含み,シリカゾル540gではシリカを100.5g含むため,1wt%のシリカ当たりのアミノシラン化合物=99.5(ppm)となる。
同様にアミノシラン化合物をそれぞれ0.5g,0.25g,3g,1g用いて処理した実施例2?5では,1wt%のシリカ当たりのアミノシラン化合物(ppm)は,それぞれ49.7(実施例2),24.8(実施例3),298(実施例4),99.5(実施例5)となる。
そうすると,実施例1?3,5はいずれも本願発明に係る150?500(ppm)の範囲外である。

次に本願発明に係るゼータ電位について見てみると,引用文献1の実施例においてゼータ電位を測定したのは,シラン量がいずれも99.5(ppm)と本願発明の範囲外である実施例1,5のみである(段落[0048](試験例4:ゼータ電位の測定)および図1)。
そして引用文献1は,基材について酸化ケイ素または窒化ケイ素について記載も示唆もしていない。

以上から,引用文献1は,本願発明に係る,1wt%のシリカ粒子当たり150ppm?500ppmのアミノシラン化合物,2?8のpH,15mV?40mVのゼータ電位,かつ基材が酸化ケイ素の少なくとも1つの層または窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含むことを記載も示唆もしていない。

次に本願発明に係る,4%?50%のシラノールの表面被覆率について説明する。
上記で説明したように,引用文献1の実施例1?5では,3-アミノプロピルトリメトキシシランを,1wt%のシリカ当たりのアミノシラン化合物(ppm)で,それぞれ99.5(実施例1),49.7(実施例2),24.8(実施例3),298(実施例4),99.5(実施例5)用いている。

一方本願明細書中表8の研磨組成物では,アミノプロピルトリエトキシシランを用いており,シリカ1wt%当たりこのアミノシラン化合物が150(ppm)の場合に表面被覆率は5%(表8,研磨組成物8A)である。そして引用文献1のアミノシラン化合物と本願明細書中の化合物とにおいて,あくまで生成する被覆が類似するとの前提で計算すると,引用文献1の実施例1?3,5はいずれも本願発明の範囲外と判断される。
そして上記でも述べたように,引用文献1でゼータ電位を測定しているのは,範囲外の実施例1,5のみであり,引用文献1は基材について酸化ケイ素または窒化ケイ素について記載も示唆もしていない。

以上から,引用文献1は,本願発明に係る,4%?50%のシラノールの表面被覆率,2?4のpH,15mV?40mVのゼータ電位かつ基材が酸化ケイ素の少なくとも1つの層または窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含むことを記載も示唆もしていない。

そして下記で説明するように,本願発明は,上記特徴により非常に優れた効果を奏するものである。」

(6)文献6には,以下の事項が記載されている。
「2・1 実験試料
2・1・1 コロイドシリカ PNOC Energy Development Corporation (Philippine)より取り寄せた地熱水サンプルを用いた。SiO_(2)以外に Cl,K,Ca,Fe等を溶解して含んでいるため,塩酸で試料の精製を行った。シリカ懸濁液500mlに対し12N塩酸を200ml加え室温で3日間ほど静置し,上澄み液を除去する操作を3回繰り返し行った。このときシリカの変質(溶解や冷却に伴う粒子の成長)を避けるためにシリカ懸濁液の加熱は行わなかった。その後上澄み液の電気伝導率が1[μS/cm]以下になるまで水洗と遠心分離を繰り返し行った。このシリカ濃縮波はストック液として保存して適宜希釈して実験に使用した。洗浄後のシリカはXRF分析から98.7wt%(as SiO_(2))の純度を有しており,XRD分析により非晶質であることが確認された。またシリカの平均粒径は電気泳動光散乱光度計(大塚電子 ELS-800)の粒径解析から200[nm]であった。」

「3・1・2 共存電解質(KNO_(3))濃度変化の影響 サスペンションをpH5で一定にし,共存電解質KNO_(3)濃度を変化させたときのシリカとスラグのゼータ電位測定結果をFig.4に示す。ゼータ電位の絶対値はKNO_(3)濃度の上昇に伴い低下する傾向にあった。」

5 当審の判断
(1)請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明とを対比すると,引用発明の「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」が,本件発明の「アミノシラン化合物」に相当することから,両発明は,「アミノシラン化合物を用いて処理された表面を有する湿式プロセスシリカ粒子を含む方法」の点で一致するものの,両者は以下の点で相違する。

・相違点1
本件発明の「湿式プロセスシリカ粒子」が,「該液体キャリアー中に懸濁された」ものであるのに対して,引用発明のコロイダルシリカは,試料調製直後に行なった観察において「ゲル化」している点。

・相違点2
本件発明の「湿式プロセスシリカ粒子」が,「利用可能なシラノールの表面被覆率が4%?50%である」のに対して,引用発明においては,そのような構成が特定されていない点。

・相違点3
本件発明は「アミノシラン化合物を用いて処理された表面を有する湿式プロセスシリカ粒子」を用いて,「(a)液体キャリアーと,(c)2?4のpHと,を含む化学的機械的研磨組成物」を作製し,「化学的機械的研磨組成物と,基材とを接触させる工程,(ii)該基材に対して該研磨組成物を動かす工程,ならびに,(iii)該基材を磨くために,該基材の少なくとも一部分を摩耗させる工程であって,該基材が酸化ケイ素の少なくとも1つの層または窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含み,そして該酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも一部分が該基材を磨くために該基材から除去される工程,を含んで成り,そして該処理されたシリカ粒子が15mV?40mVのゼータ電位を有する,方法。」であるのに対して,引用発明は,そのような構成が特定されていない点。

以下,上記相違点について検討する。
・相違点1について
「ゲル」とは,「コロイド溶液が流動性を失い,多少の弾性と固さをもってゼリー状に固化したもの。寒天・ゼラチン・豆腐・こんにゃく・シリカゲルなどの類。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という状態である。
そして,引用発明において,「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」の量を変更することなく,引用発明の「ゲル化」した外観を,本件発明で特定する,湿式プロセスシリカ粒子が,液体キャリアー中に「懸濁」したものとすること,すなわち,顕微鏡で見える程度の大きさの微粒子が液体中に分散したものとすることが容易であったとは,文献1?6のいずれの記載事項及び技術常識に基づいても容易であったとは認められない。
したがって,引用発明において,相違点1について,本件発明の構成を採用することを当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

・相違点2について
文献2?6のいずれにも,「湿式プロセスシリカ粒子」を,「利用可能なシラノールの表面被覆率が4%?50%である」ものとした構成は記載されていない。

一方,異議申立人は,異議申立書において,以下のように主張する。
「甲第1号証には,実施例4のシリカ粒子の表面被覆率及びゼータ電位は記載されていない。そこで,甲第5号証を検討すると,摘示(5-a)及び(5-b)に示されているように,『1wt%のシリカ当たりのアミノシラン化合物(ppm)は,』『298(実施例4)』『となる。』と記載されている。したがって,実施例4のアミノシラン処理濃度は298ppmである。
さらに摘示(5-b)には,本件特許明細書中の表8中の研磨組成物8Aについて,アミノシラン処理濃度が150ppmであり表面被覆率が5%であることを根拠として,甲第1号証の実施例1?3,5はいずれも本件特許発明の範囲外と判断されることが記載されている。摘示(5-b)には,実施例1?3,5のアミノシラン処理濃度が24.8?99.5ppmと記載されていることから,上記研磨組成物8Aのアミノシラン処理濃度である150ppmより低いアミノシラン処理濃度では表面被覆率が5%に満たないことがその判断から示唆される。
他方,実施例4については範囲外との判断がなされていないこと,実施例4のアミノシラン処理濃度が298ppmと算出されていること,本件特許明細書中の表8中の研磨組成物8Cのアミノシラン処理濃度が298ppmと非常に近い300ppmであり,その表面被覆率が10%であることから,実施例4のシリカ粒子の表面被覆率は約10%(C.)と解される。
以上のことから,甲第1号証には実施例4として,『化学的機械的に研磨する方法』(A.)において研削剤(C.)として好適に用いられる,『利用可能なシラノールの表面被覆率が10%であるようにアミノシラン化合物を用いて処理された表面を有する湿式プロセスシリカ粒子を含むコロイダルシリカ』(甲1発明)が記載されている。」

しかしながら,文献5に,「一方本願明細書中表8の研磨組成物では,アミノプロピルトリエトキシシランを用いており,シリカ1wt%当たりこのアミノシラン化合物が150(ppm)の場合に表面被覆率は5%(表8,研磨組成物8A)である。そして引用文献1のアミノシラン化合物と本願明細書中の化合物とにおいて,あくまで生成する被覆が類似するとの前提で計算する」と記載されているように,文献5における説明は,本願明細書中表8の研磨組成物で用いられている「アミノプロピルトリエトキシシラン」と,引用発明で用いられている「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」とにおいて,生成する被覆の態様が類似することを前提としたものであるところ,文献1?6のいずれにも,本願明細書中表8の研磨組成物で用いられている「アミノプロピルトリエトキシシラン」と,引用発明で用いられている「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」とにおいて,生成する被覆が類似することは記載されておらず,また,本願明細書中表8の研磨組成物で用いられている「アミノプロピルトリエトキシシラン」と,引用発明で用いられている「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」とにおいて,生成する被覆の態様が類似することが技術常識に照らして明らかであるとも認めることはできない。
さらに,利用可能なシラノールの表面被覆率の値は,シリカゾルに混合されるアミノシラン化合物の量の違いだけではなく,製造されたアミノ変性シリカの外観が,コロイド状であるか,ゲル化しているかの違い,シリカの粒径,処理の温度・時間等の条件,アミノシラン化合物以外に混合される材料の種類・量等の種々の条件の違いによって異なるものと認められる。
すなわち,甲第5号証において「実施例4のアミノシラン処理濃度が298ppmと算出されていること」のみを前提とした「甲第1号証には実施例4として,『化学的機械的に研磨する方法』(A.)において研削剤(C.)として好適に用いられる,『利用可能なシラノールの表面被覆率が10%であるようにアミノシラン化合物を用いて処理された表面を有する湿式プロセスシリカ粒子を含むコロイダルシリカ』(甲1発明)が記載されている。」との異議申立人の主張は,その主張の前提が適切ではなく採用することができない。
したがって,引用発明において,相違点2について,本件発明の構成を採用することが容易であったとは認められない。

・相違点3について
外観が「ゲル化」の材料を,化学的機械的研磨組成物として使用することは,文献1?6のいずれにも記載されておらず,技術常識であるとも認められない。
したがって,試料調製直後に観察される外観が,ゲル化している,引用発明に係るアミノ変性シリカを,化学的機械的研磨組成物として使用して,引用発明において,相違点3について,本件発明の構成を採用することを当業者が容易になし得たことは認められない。

よって,本件発明は,上記文献1に記載された発明及び文献2?6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

(2)請求項7?10に係る発明について
請求項7?10に係る発明は,請求項6に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。
よって,上記(1)に示した理由と同様の理由により,請求項7?10に係る発明は,上記文献1に記載された発明及び文献2?6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

以上のとおり,請求項6?10に係る発明は,文献1に記載された発明及び文献2?6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項6?10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項6?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-05-28 
出願番号 特願2017-17502(P2017-17502)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中田 剛史山口 祐一郎  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 加藤 浩一
飯田 清司
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6392913号(P6392913)
権利者 キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
発明の名称 研磨組成物およびアミノシランを用いて処理された研削剤粒子の使用方法  
代理人 胡田 尚則  
代理人 出野 知  
代理人 小林 直樹  
代理人 木村 健治  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 青木 篤  
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