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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1352335
異議申立番号 異議2019-700215  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-19 
確定日 2019-06-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6392933号発明「ティリロサイドを含有する飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6392933号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6392933号の請求項1?3に係る発明についての出願は、平成29年5月12日に出願され平成30年8月31日にその特許権の設定登録がされ、同年9月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?3に係る発明の特許に対し、平成31年3月19日に特許異議申立人田中亜実(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立がされたものである。

第2 本件発明
特許第6392933号の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」と言うこともある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ティリロサイド0.008?1.0mg/100mL、抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下、アスコルビン酸又はその誘導体、及びナトリウムを含有する、緑茶飲料。
【請求項2】
飲料中の抹茶の90%積算粒子径が10?80μmである、請求項1に記載の緑茶飲料。
【請求項3】
アスコルビン酸又はその誘導体の含有量が飲料100mLあたり10?80mg、及び/又はナトリウムの含有量が飲料100mLあたり2?20mgである、請求項1又は2に記載の緑茶飲料。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
1 申立理由の概要
特許異議申立人は、後記2の証拠を提出した上で、以下の申立理由を主張している。
(1)特許法第29条第2項(以下、「理由1」という。)
本件発明1?3は、本件出願日前に頒布された以下の甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)特許法第36条第6項第1号(以下、「理由2」という。)
本件特許の特許請求の範囲の記載に不備があり、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)特許法第36条第4項第1号(以下、「理由3」という。)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 証拠方法
甲第1号証:産経ニュース、「セブンとコカ・コーラ、機能性緑茶のPB 体脂肪減らすローズヒップ成分配合」、2017年5月18日、[平成31年3月18日検索]、インターネット<https://www.sankei.com/economy/print/170518/ecn1705180039-c.html>」
甲第2号証:商品名「一(はじめ)緑茶 一日一本」の消費者庁・機能性表示食品制度届出データベースにおける表示見本、[平成31年3月18日検索]、インターネット<https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=B179%255CB179_hyouji_mihon.pdf>
甲第3号証:特開2014-193183号公報
甲第4号証:特開2009-225728号公報

第4 申立理由についての当審の判断
1 理由1について
(1)各甲号証の記載

ア 甲第1号証
「セブンとコカ・コーラ、機能性緑茶のPB 体脂肪減らすローズヒップ成分配合
日本コカ・コーラとセブン&アイ・ホールディングスは18日、共同企画した機能性表示食品「一(はじめ)緑茶 一日一本」(500ミリリットル、想定税込価格127円)を、今月22日発売すると発表した。・・・成分「ティリロサイド」を抽出し、1本当たり0・1ミリグラム配合。・・・」

イ 甲第2号証
「一(はじめ)緑茶 一日一本」の消費者庁・機能性表示食品制度届出データベースにおける表示見本(2017年3月1日届出)
「品名 緑茶
・・・
原材料名 ・・・ビタミンC
・・・
栄養成分表示(1本(500ml)当たり)・・・食塩相当量0.1g
機能性関与成分・・・ティリロサイド0.1mg」

ウ 甲第3号証
(3a)「【請求項1】
粉砕茶葉、及びグリセロ糖脂質1.0μg/ml以上を含み、かつ680nmにおける吸光度が0.25以下である、茶飲料。」
(3b)「【0014】
また本発明によると、カテキン類等の不快味(例えば、カテキン類の苦味、渋味)がマスキングされた茶飲料を製造することが可能である。」

(2)甲第1号証について
甲第1号証は、公知となった日付が2017年(平成29年)5月18日であり、本件特許出願日である平成29年5月12日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明とはいえず、本件発明の進歩性を判断するにあたり、根拠となる証拠として採用できない。

(3)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、下記のとおり記載されている。
「栄養成分表示(1本(500ml)当たり)・・・食塩相当量0.1g
機能性関与成分・・・ティリロサイド0.1mg」
これを100mlに換算すると、ティリロサイドは0.02mg含まれていることになる。
また、甲第2号証の「品名 緑茶」や「1本(500ml)」の記載から、甲第2号証は、「緑茶飲料」について記載されていることは明らかである。
そうすると、甲第2号証には下記のとおりの発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「ティリロサイド0.02mg/100mL、ビタミンC、及び食塩を含有する、緑茶飲料。」

(4)本件発明1について
本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)対比
甲2発明の「ビタミンC」は本件発明1の「アスコルビン酸」に相当する。
甲2発明の「食塩」は、本件発明1の「ナトリウム」に相当する。
以上から、本件発明1と甲2発明とは
「ティリロサイド0.02mg/100mL、アスコルビン酸、及びナトリウムを含有する、緑茶飲料。」の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点a)本件発明は、「抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下」を含有するのに対し、甲2発明は抹茶を含むことについて特定されていない点。

(イ)判断
甲第3号証には、上記(1)ウ(3a)?(3b)より、粉砕茶葉を含む茶飲料において、カテキン類の不快味(例えば、カテキン類の苦味、渋味)がマスキングされた茶飲料を製造することが可能であることも記載されている。
甲2発明は、緑茶飲料であることから、明記されていなくても、その緑茶飲料の成分の中に、カテキン類を含むものと認められるが、そもそも、甲2発明において、緑茶飲料における不快な味をマスキングしなければならない課題を有しているとは、甲第2号証の全記載を参酌しても、認められない。
そうすると、甲2発明において、カテキン類の不快味を含めた緑茶飲料の不快な味をマスキングするために、甲第3号証を組み合わせる動機付けがあると認められない。
そして、本件発明1は、上記相違点aの構成を採用することによって、ティリロサイドに由来する苦味や収斂味が低減された風味の良い飲料を提供する(本件特許明細書第【0010】)という効果を奏するものである。

(ウ)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において本件発明1は、甲第1号証?甲第3号証に記載された事項に基いて容易である旨主張しているが、上記(2)、(4)で検討したとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(エ)小括
よって、本件発明は甲2発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(5)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、飲料中の抹茶の90%積算粒子径の範囲を特定するものである。
しかし、上記(4)で検討したとおり、本件発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであり、本件発明2は、さらに、飲料中の抹茶の90%積算粒子径の範囲を特定したものである。
以上のことから、本件発明2についても、本件発明1と同様に、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(6)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1及び2を直接引用した発明であり、更に、「アスコルビン酸又はその誘導体の含有量」及び「ナトリウムの含有量」の範囲を特定するものである。
しかし、上記(4)及び(5)で検討したとおり、本件発明1及び2は甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明3についても本件発明1及び2と同様に、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 理由2について
(1)サポート要件の考え方について
特許法第36条第6項第1号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものである。そして、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

以下、この観点に立って検討する。

(2)本件発明の課題
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0007】及び明細書全体の記載からみて、ティリロサイドを含有する飲料であって、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減された飲料の提供と認める。

(3)特許請求の範囲に記載された発明
特許請求の範囲には上記「第2」で示したように本件発明1?3が記載されている。

(4)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。

(4a)「【0007】
本発明は、ティリロサイドを含有する飲料であって、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減された飲料を提供することを目的とする。」
(4b)「【0046】
(実験1:ティリロサイド含有飲料の評価)
ティリロサイドとしてフナコシ製のもの(純度99%)を使用した。飲料の最終形態でのティリロサイド含有量が、0.005mg/100ml及び1.0mg/100mlとなるように、ティリロサイドを水(pH7のイオン交換水)に溶解した。5名のパネラーにより、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味の有無について評価した。評価は、各自が実施し、その後協議して苦味の有無を決定した。結果を表1に示す。ティリロサイドを0.005mg/100ml以上の濃度で含有する試料は、苦味や収斂味を有することが明らかになった。」
(4c)「【0047】
【表1】


(4d)「【0048】
(実験2:茶葉粉末によるティリロサイドの苦味・収斂味低減作用(1))
実験1と同様にして、ティリロサイド含有量が0.03mg/100mlとなる試料を調製した(試料4)。これに表2の値となるように茶葉粉末を適宜添加及び混合して茶葉粉末の濃度の異なる試料を調製した(試料5?11)。なお、茶葉粉末には、抹茶粉末(D90:31μm)を用いた。得られた各試料について、5名のパネラーにより、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味の強さと飲用適性について評価した。評価は、以下の基準に基づいて各自が実施し、その後協議して評価点を決定した。
・5点:ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を感じず、とても飲みやすい
・4点:ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味はほとんどなく、飲用できる
・3点:ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味はあまりなく、飲用できる
・2点:ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を少々感じ、飲みにくい
・1点:ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を強く感じ、とても飲みにくい
【0049】
結果を表2に示す。ティリロサイド含有量が0.03mg/100mlの場合、0.005重量%以上0.5重量%未満の割合で茶葉粉末を含有させることによって、ティリロサイドに由来する苦味や収斂味を効果的に低減することができた。0.5重量%以上の茶葉粉末を含有させると、茶葉粉末に起因する苦味が強く感じられ、また、茶葉に由来する不溶性固形分でざらつきが発生することにより飲用に適さなかった。」
(4e)「【0050】
【表2】


(4f)「【0051】
(実験3:茶葉粉末によるティリロサイドの苦味・収斂味低減作用(2))
実験2の試料5,6,9,10のティリロサイドの含有量を0.008mg/100mlに変えた試料(試料12?15)を調製し、得られた試料について実験2と同様に評価した。結果を表3に示す。ティリロサイドが0.008mg/100mlの場合も、0.005重量%以上0.5重量%未満の茶葉粉末を含有することで、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を効果的に低減することができた。」
(4g)「【0052】
【表3】


(4h)「【0053】
(実験4:茶葉粉末によるティリロサイドの苦味・収斂味低減作用(3))
実験2の試料7,8のティリロサイドの含有量を0.02mg/100ml及び0.05mg/100mlに変えた試料(試料16?19)を調製し、得られた試料について実験2と同様に評価した。結果を表4に示す。ティリロサイドが0.02mg/100ml及び0.05mg/100mlの場合も、0.01重量%及び0.05重量%の茶葉粉末を含有することで、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を感じない、とても飲みやすい飲料となった。」
(4i)「【0054】
【表4】


(4j)「【0055】
(実験5:茶葉粉末によるティリロサイドの苦味・収斂味低減作用(4))
実験2と同様にして、ティリロサイド及び茶葉粉末の含有量が表5の値となるように、ティリロサイド及び茶葉粉末を適宜添加及び混合してティリロサイド及び茶葉粉末含有量の異なる試料を調製した(試料20?25)。得られた試料について、5名のパネラーにより実験2と同様に評価した。
【0056】
結果を表5に示す。表1?5より、ティリロサイド含有量が0.005?1.5mg/100ml、茶葉粉末含有量が0.005重量%以上0.5重量%未満であると、ティリ
ロサイドに由来する苦味及び収斂味が低減され、飲みやすい飲料となることが示唆された。」
(4k)「【0057】
【表5】


(4l)「【0058】
(実験6:ティリロサイド含有茶飲料の評価)
熱水(70?80℃)1000mlに対し10gの緑茶葉を用いて5分間抽出処理を行った後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶抽出液を得た。得られた抽出液を茶固形分(茶葉由来の可溶性固形分)としてBrix0.3となるように水で希釈して緑茶抽出液(非重合カテキン含有量:35mg/100ml、カフェイン含有量:10mg/100ml)を得た。これにティリロサイドを0.02mg/100ml、0.05mg/100ml、1mg/100ml、又は2mg/100mlの濃度となるように添加及び溶解し、アスコルビン酸30mg/100ml及び炭酸水素ナトリウムを混合して、ナトリウム濃度8mg/100ml、pH6.0の茶飲料を製造した。これに茶葉粉末含有量が表6の値となるように、実験2で用いた茶葉粉末を添加及び混合してティリロサイド含有茶飲料を調製した(試料27?30)。実験2と同様にして、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味の強さと飲用適性を評価した。
【0059】
結果を表6に示す。試料26の茶飲料では、ティリロサイドの苦味や収斂味が顕著に知覚されたが、特定量の茶葉粉末を含有させることで、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を効果的に低減することができた。」
(4m)「【0060】
【表6】



(5)判断
ア 判断
本件発明の課題は、上記(2)で述べたように、ティリロサイドを含有する飲料であって、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減された飲料の提供といえる(必要があれば、上記(4a)も参照。)。
上記(4b)、(4c)のとおり、本件発明の実験1においては、水にティリロサイドを含有させたものでティリロサイド由来の苦味及び収斂味の有無を確かめている。この実験では、水に含有させていることから、純粋にティリロサイドの苦味や収斂味を測定できているといえる。
そして、上記(4d)?(4k)のとおり、実験2及び実験2と同様の操作をした実験3?5では、ティリロサイド、茶葉粉末を種々の数値で含有させた飲料について、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味について分析し、本件発明1?3の範囲を満たすものは苦味、収斂味を抑えることができることが確かめられている。
また、(4l)、(4m)のとおり、実験6では、実験2と同様の実験を緑茶飲料で行っており、ティリロサイド0.02mg/100ml、0.05mg/100ml、1mg/100mlに対して茶葉粉末0.01mg/100ml、0.05mg/100ml、0.03mg/100ml加えた緑茶飲料は、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味をなくすことができることが確かめられている。
したがって、本件特許明細書には、ティリロサイド自体の苦味、収斂味が確認できることを示した例、茶葉粉末を含有させることで、ティリロサイドの苦味、収斂味を抑えることができることを確かめた例、緑茶飲料について、種々の配合量でティリロサイドや茶葉を用いることで、ティリロサイドの苦味、収斂味を抑えることができることを確かめた例が記載されているといえる。
上記のとおりであるから、ティリロサイド0.008?1.0mg/100mL、抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下で含む緑茶飲料によって、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味を低減された飲料の提供がなされたと当業者は理解できる。

イ 特許異議申立人の主張と検討について
(ア)特許異議申立人は、申立書の第8頁?第10頁の(イ)の項において、茶の品種は多数存在し、同じ品種でも産地、栽培法等で茶葉に含まれる成分が変動する。そして、茶葉の抽出液を得るにも条件によって含まれる成分が変動するが、本件発明の実施例には、緑茶飲料は実験6のみに記載されているところ、茶葉について、品種、産地、栽培法、摘採の時期、荒茶の製造工程(蒸熱やもみ作業)は記載されていないし、また茶葉粉末の粒子径について実験2でD90が31μmのものが記載されているのみである一方で、本件特許の審査過程において、作用機序が不明なことも指摘されているから、本件発明は、作用機序も分からないことから考えて、配合成分や粒径が異なるもので効果を確認するべきといえるが、緑茶飲料に含まれる成分、含有量が不明なもので、抹茶の粒度が1点のみで実施されているもので、本件発明全ての範囲にわたって効果を奏するとはいえないと主張している。

しかしながら、茶の品種、産地、栽培法、荒茶の製造法や茶葉の抽出液を得るときの抽出条件により、カテキン、カフェイン、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、香気成分等の配合は変動するが、緑茶が有する成分による苦味や収斂味は、緑茶の抽出時の水の量で調製できることは、技術常識であり、緑茶として飲みやすいといえる範囲のものは技術常識から適宜調製可能である。そして、本件発明は、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味を低減された飲料の提供であり、抹茶がティリロサイドに起因する苦味や収斂味の低減作用を有することは上記アで示したとおり理解できるから、緑茶中の成分全てが分析されたものでなくとも、適宜調製された緑茶に対して、ティリロサイド0.008?1.0mg/100mL、抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下含まれるものは、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減されることはないとまではいえない。

(イ)特許異議申立人は、申立書の第10頁?第11頁の(ウ)の項において、実験6には、非重合カテキン含有量が35mg/100ml、カフェイン含有量が10mg/100mlと記載されており、緑茶飲料中の非重合カテキンとカフェインの含有量は苦味に影響を与えるところ(本件特許明細書段落【0033】)、非重合カテキンとカフェインの含有量について特定のない緑茶飲料の全ての範囲に亘って、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味を低減できることは本件特許明細書には記載されていないし、甲第4号証には、非重合カテキンの中でもガレート体は苦味が強いことが記載されているが、本件発明にはガレート体の含有量どころか非重合カテキンとカフェインの含有量さえ規定されておらず、特にガレート体を多く含有するような場合にも本件発明が効果を奏することができるかについて不明であるから、緑茶に関する実験例が1つだけで、本件発明において、非重合カテキンとカフェインの含有量範囲の全てに亘って効果を奏することができるとはいえないと主張している。

しかしながら、上記(ア)で述べた技術常識と同様に、カフェインやカテキン類の緑茶中の含有量について、緑茶の抽出時の水の量で調製できることは、技術常識であり、緑茶として飲みやすいといえる範囲のものは技術常識から適宜調製されるものである。そして、本件発明は、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味を低減された飲料の提供といえ、抹茶がティリロサイドに起因する苦味や収斂味の低減作用を有することは上記アで示したとおり理解できるから、緑茶中の成分全てが分析されたものでなくとも、適宜調製された緑茶に対して、ティリロサイド0.008?1.0mg/100mL、抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下含まれるものは、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減されることはないとまではいえない。

(ウ)特許異議申立人は、申立書の第11頁?第13頁の(エ)の項において、本件特許明細書段落【0033】には、「非重合カテキンやカフェインの含有量が多すぎると、飲料の苦味が強くなり、ティリロサイドの苦味や収斂味を低減できたとしても飲用し難いものとなる」旨記載されていることに鑑みると、本件特許明細書段落【0048】の実施例に記載された「飲みやすい」「飲みにくい」とはティリロサイドに由来する苦味及び収斂味によるものであるのか、あるいはティリロサイド以外の非重合カテキンやカフェインに由来する苦味や渋味によるものであるのかが不明である上に、本件特許明細書段落【0049】には「0.5重量%以上の茶葉粉末を含有させると、茶葉粉末に起因する苦味が強く感じられ、また、茶葉に由来する不溶性固形分でざらつきが発生することにより飲用に適さなかった」と記載することに鑑みると、「飲みやすい」「飲みにくい」の区別には抹茶も影響すると理解されるから、ティリロサイドに注目したものか、ティリロサイド、非重合カテキン、カフェイン、抹茶等の苦味を呈する由来物質を区別することなく、飲料としての飲用性を評価したものであるのかが理解できず、「飲みやすい」「飲みにくい」について、何に着目して、どのような基準で判断するかが明確に定義されなければ、例え専門パネルでも一貫した評価はできず、本件発明において、課題が解決できたと評価することができないと主張している。

しかしながら、上記(ア)と同様に、カフェインやカテキン類の緑茶中の含有量について、緑茶の抽出時の水の量で調製できることは、技術常識であり、緑茶として飲みやすいといえる範囲のものは適宜調製可能である。
また、(4b)?(4m)のとおり、実施例には、水にティリロサイドのみが含まれる場合、水にティリロサイドと茶葉粉末が含まれる場合、緑茶の抽出液にティリロサイドと茶葉粉末が含まれる場合について専門のパネルが評価をしており、専門のパネルであれば、それらの実験を通して、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味の評価を行えると理解するのが自然である。
そして、本件発明の課題は、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味を低減された飲料の提供といえ、緑茶中の非重合カテキンやカフェインが分析されたものでなくとも、適宜調製された緑茶に対して、ティリロサイド0.008?1.0mg/100mL、抹茶0.005重量%以上0.1重量%以下含まれるものは、ティリロサイドに起因する苦味や収斂味が低減されることはないとまではいえない。

3 理由3について
(1)実施可能要件の考え方について
特許法第36条第4項第1号は、いわゆる実施可能要件を規定したものであって、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることを要する。そして、本件発明は上記第2に示したとおり「緑茶飲料。」であって、物の発明であるところ、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について実施をすることができるとは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用することができることであると解される。

(2)判断
本件特許明細書には、上記(4b)?(4m)で摘記したとおり、緑茶飲料について具体的な説明がなされている。特に、(4l)、(4m)のとおり、実験6では、ティリロサイド0.02mg/100ml、0.05mg/100ml、1mg/100mlに対して茶葉粉末0.01mg/100ml、0.05mg/100ml、0.03mg/100ml加えた緑茶飲料において、ティリロサイドに由来する苦味及び収斂味を抑えたことが記載されている。
そうすると、本件発明1?3については、当業者であれば実施ができる程度に発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているということができる。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件特許1?3を取消すことができない。
また、他に本件特許1?3を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-07 
出願番号 特願2017-95568(P2017-95568)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 神野 将志
冨永 みどり
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6392933号(P6392933)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 ティリロサイドを含有する飲料  
代理人 小野 新次郎  
代理人 武田 健志  
代理人 中村 充利  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
代理人 宮前 徹  
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