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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1352341
異議申立番号 異議2019-700236  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-26 
確定日 2019-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6394018号発明「光導波路および電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6394018号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6394018号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成26年3月20日に出願され、平成30年9月7日にその特許権の設定登録がされ、平成30年9月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1ないし11に係る特許に対し、平成31年3月26日に特許異議申立人松本聡子は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6394018号の請求項1ないし11に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
コア部が形成されているコア層と、前記コア層の一方の面に積層されている第1クラッド層と、前記コア層の他方の面に積層されている第2クラッド層と、前記第2クラッド層および前記コア層をそれぞれ貫通し前記第1クラッド層に至る空洞部と、を有する光導波路であって、
前記空洞部の内壁面の一部は、前記コア層と前記第1クラッド層との界面を含む平面に対して傾斜しつつ交差する傾斜面で構成されており、
前記傾斜面は、前記平面に対して30?60°の角度で交差しており、
前記平面において、前記傾斜面とそれに連続する前記内壁面の他部との接続部の最小曲率半径が1?500μmであることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記空洞部は、前記コア部または前記コア部の長手方向の延長線上に設けられており、
前記傾斜面が前記コア部の光軸またはその延長線を横切るよう構成されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記第2クラッド層のうちの前記コア層とは反対側の面における前記空洞部において、前記傾斜面とそれに連続する前記内壁面の他部との接続部の最小曲率半径が1?500μmである請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記第2クラッド層と前記コア層との界面における前記空洞部において、前記傾斜面とそれに連続する前記内壁面の他部との接続部の最小曲率半径が1?500μmである請求項1?3のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記第2クラッド層の前記コア層とは反対側の面に積層されている第2カバー層を有する請求項1?4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記空洞部の内壁面は、前記平面に対して鋭角側の角度が60?90°で交差する直立面を含んでいる請求項1?5のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項7】
前記第1クラッド層の前記コア層とは反対側の面に積層されている第1カバー層を有し、
前記空洞部は、さらに前記第1クラッド層を貫通し、前記第1カバー層に至っている請求項1?6のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項8】
前記空洞部の内壁面は、2つの前記傾斜面と、2つの前記直立面と、を含んでおり、前記空洞部は、その内壁面が前記平面によって切断されたときの断面において、前記傾斜面同士および前記直立面同士がそれぞれ対向しているよう構成されている請求項6または7に記載の光導波路。
【請求項9】
前記直立面は、光導波路の長手方向に湾曲している請求項6?8のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項10】
前記空洞部の内壁面は、前記平面との間の角度であって前記空洞部側とは反対側における角度が鋭角になるよう構成されている請求項1?5のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。」

第3 申立理由の概要
1 申立理由その1
本件請求項1ないし8、請求項10及び請求項11に係る発明は、当業者が特開2001-154044号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び特開2005-148129号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 申立理由その2
本件請求項9に係る特許は、その請求項9に記載された「直立面」は、本件特許明細書の記載からして、「開口部175における形状」と「開口部17における形状」の2つがあり、その対応関係が不明瞭であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 引用文献の記載
(1)引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある。
なお、下線は、当審で付した。以下同じ。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の上面に、該上面に対して略垂直な外側面を有するシロキサン系ポリマ製のクラッド部と該クラッド部中のシロキサン系ポリマ製のコア部とを具備する3次元導波路形状の光導波路が形成されて成る光導波路基板において、前記クラッド部は、前記外側面と前記コア部との間で20μm以上の幅を有するとともに、前記外側面の各角部を20μm以上の曲率半径を有するものとしてあることを特徴とする光導波路基板。」

(イ)【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のようなシロキサン系ポリマから成る光導波路に対しては、支持基板が単結晶シリコン・石英ガラス・セラミックスが一般的であるが、これらはいずれもシロキサン系ポリマと比較して熱膨張係数が小さいものである。また、光部品の実装にはAu-Sn半田が一般的に用いられるが、実装時にはその融点である約280 ℃よりも約50℃高い330 ℃程度まで光導波路基板が加熱されるため、この実装時の熱処理に伴って上記の熱膨張係数の差から基板と光導波路との間に熱応力が増大することとなり、特に基板上に略垂直に形成される光導波路層の外側面の四隅の角部や、光電子混在基板に光部品等の素子を実装するために光導波路層に設ける開口部の四隅における外側面の角部等には、角部の先端部分に熱応力が集中することとなって、この部分から光導波路層の剥がれまたは光導波路層のクラックが発生しやすいという問題点があった。
【0008】本発明は上記従来技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、基板上に形成されたシロキサン系ポリマから成る光導波路に対する外側面の角部への応力集中を緩和し、光導波路層の膜剥がれまたはクラックが発生しにくい構造を持つ、高信頼性の光導波路基板を提供することにある。」

(ウ)「【0012】図1は本発明の光導波路基板の実施の形態の一例を示す斜視図であり、図2(a)はその平面図、(b)はその断面図である。これらの図において、支持基板としての基板1上に、シロキサン系ポリマから成り互いに屈折率の異なるクラッド部2とこのクラッド部2中に形成されたコア部3とを具備する光導波路4が形成されており、このコア部3中を光信号が伝送される。また、この光導波路4にはそのコア部3の途中に、光信号の入出力を行ない、これを制御するための光電子素子等(図示せず)を実装するための開口部5を設けている。なお、図1においてはクラッド部2の一部を透視した状態で、その部分の基板1およびコア部3を破線で示している。これらにより、本発明の光導波路基板6が構成される。
【0013】そして、本発明の光導波路基板6においては、クラッド部2は、その基板1の上面に対して略垂直な外側面を有しており、コア部3とこれを取り囲む外側面との間で20μm以上の幅を有するものとするとともに、外側面の各角部、すなわちこの例では外周側の外側面の各角部2aおよび開口部5側の外側面の各角部2bを、いずれも20μm以上の曲率半径を有する円弧状としてあることが特徴である。これにより、従来のように各角部が略直角であった場合にはそこへの応力の集中が著しかったものが、その応力を分散させて緩和させることができ、クラッド部2の各角部2a・2bからの剥がれやクラックの発生を有効に防止することができる。」

(エ)「【0023】このようなクラッド部2の角部が直角である場合の角部の先端への応力の集中は、クラッド部2の膜の平面において角部を構成する一辺の側でその辺と直角の方向に伸びようとする力が発生し、もう一方の辺の側でも同様の力が発生して、その2つの力が角部の頂点にかかることによって発生するものである。なお、このような角部への応力集中は、外側面において先端が外側に向いている前記のクラッド部2の角部2aのような部分では、角部2aが圧縮される力が作用するため剥がれが発生しやすくなる傾向がある。一方、外側面において開口部5の開口角部に当たる角部2bのような部分では、角部2bにおいて引っ張られる力が作用するため、クラックが発生し、その後クラック発生部分から剥がれが発生しやすくなる傾向がある。」

(オ)「【0030】
【実施例】以下、本発明の光導波路基板について具体例を説明する。
【0031】まず、アルミナ支持基板上にシロキサン系ポリマ溶液を塗布し、85℃/30分および270 ℃/30分の熱処理を行ない、厚さ15μmのクラッド層(屈折率1.4405、λ=1.3 μm)を形成した。
【0032】
……
【0037】続いて、開口部の加工の際にコア部加工と同様にマスクとなる厚さ0.5 μmのアルミニウム膜をスパッタリング法により形成し、開口部のレジストパターンをフォトリソグラフィ手法により形成した。そして、シロキサン系ポリマから成るクラッド部の角部となる箇所にはそれぞれ円弧となる形状を設け、その曲率半径を30μm・25μm・20μm・15μm・10μm・5μm・直角と変えたものを作製した。なお、開口部の開口サイズは1000μm×300 μmとした。」

(カ)「【符号の説明】
1・・・基板
2・・・クラッド部
2a、2b・・・角部
3・・・コア部
4・・・光導波路
5・・・開口部
6・・・光導波路基板 」

(キ)図1は、以下のものである。


イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記ア(ア)の記載からして、引用文献1には、
「基板の上面に、該上面に対して略垂直な外側面を有するシロキサン系ポリマ製のクラッド部と該クラッド部中のシロキサン系ポリマ製のコア部とを具備する3次元導波路形状の光導波路が形成されて成る光導波路基板であって、
前記外側面の各角部の曲率半径を20μm以上とした、光導波路基板。」が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(イ)ないし(カ)の記載及び図1からして、以下のことが理解できる。
a 上記(ア)の「基板」は、
具体的には、アルミナ支持基板(実施例)であり、シロキサン系ポリマと比較して、その熱膨張係数が小さいこと。

b 上記(ア)の「光導波路基板」には、コア部の途中に、コア部及びクラッド部を貫通して支持基板の上面にいたる、光電子素子を半田により実装するための略矩形の開口部を設けてもよいこと。

c 上記(ア)の「(基板の)上面に対して略垂直な外側面」とは、図1に示された例では、
「(クラッド部の)外周側の外側面の各角部2a」に加えて「開口部5の外側面の各角部2b」があること。
また、「開口部5の外側面の各角部2b」の曲率半径は、具体的には、「30μm(実施例)」であってもよいこと。

(ウ)上記(ア)及び(イ)からして、引用文献1には、図1に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「アルミナ支持基板の上面に、該上面に対して略垂直な外周側の外側面を有するシロキサン系ポリマ製のクラッド部と該クラッド部中のシロキサン系ポリマ製のコア部とを具備する3次元導波路形状の光導波路が形成されて成る光導波路基板であって、
前記コア部の途中に、前記コア部及び前記クラッド部を貫通して前記支持基板の上面にいたる略垂直な外側面を有し、光電子素子を半田により実装するための略矩形の開口部が形成されており、
前記略矩形の開口部の外側面の各角部2bの曲率半径を30μmとした、光導波路基板。」

(2)引用文献2
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【背景技術】
【0002】
光電変換素子等の光伝送素子と電子回路素子とをパッケージ化することによりマルチチップモジュールとなる光伝送素子パッケージ(“OE-MCM”とも呼ばれる)は、光伝送素子、光結合素子、光実装基板、発光用ドライバ電子回路素子、受光用増幅電子回路素子、論理電子回路素子、さらにはこれら全体を封止するパッケージ、端子、MCM基板等から構成される。
【0003】
特許文献1には、従来の光伝送素子パッケージの構成例が掲載されている図10は、特許文献1に記載された従来の光伝送素子パッケージの構成例を概略的に示す断面図である。図10に示すように、光伝送素子パッケージ100は、その光電変換面を光配線基板101に対向させて配置されている。光配線基板101は、プリント基板102上の光伝送素子パッケージ100側に多層構成の光導波路103を表面実装しており、この光導波路103により複数の光伝送素子パッケージ100間を光学的に接続することを可能としている。このような光伝送素子パッケージ100は、LSIチップ104と光伝送素子である面型光素子アレイ105とを透明樹脂106によってパッケージして作製されている。また、光伝送素子パッケージ100の透明樹脂106の表面及び光配線基板101には、マイクロレンズ107が配設されており、平行光束により空間光伝播を行っている。
【0004】
面型光素子アレイ106の電極は光配線基板101側とは反対側に配置されており、LSIチップ104自体をインタポーザ基板として用いてこれに接合されている。LSIチップ104は、フラットリード109を有する金属108にダイボンドされ、かつ、フラットリード109にもワイヤボンドされている。このフラットリード109は、プリント基板102と接合されている。
【0005】
光伝送素子パッケージ100内に配設された面型光素子アレイ106(ここでは、発光素子)から出射された光ビームは、光伝送素子パッケージ100下面のマイクロレンズ107によってコリメートされ、プリント基板102に対して垂直方向に伝播し、光導波路103の上面に形成されたマイクロレンズ107によって光導波路103に集光される。光導波路103の端面には、空気界面による全反射ミラー110が形成されており、集光ビームは全反射ミラー110において90度の光路変換がなされた後、光導波路103の各コアに導光される。
【0006】
このようにプリント基板102上の多層構成からなる光導波路103が、空気界面による全反射ミラー110により面型光素子アレイ106からのプリント基板102に垂直な伝播光をプリント基板102に平行な伝播光に偏向することにより、面型光素子アレイ106からの光を高効率で光導波路103に結合することができる。また、同様に光導波路103からのプリント基板102に平行な方向の伝播光を、光導波路103端部の空気界面による全反射ミラー110により、プリント基板102に垂直な伝播光に偏向して、高効率に光信号を電気信号に変換する面型光素子アレイ106(ここでは、受光素子)に結合することができる。」

(イ)図10は、以下のものである。


イ 引用文献2に記載された技術事項
上記アの記載を総合すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

「基板上に設けられて光信号を伝達する多層構成の光導波路の端面に空気界面による全反射ミラーを形成することにより、全反射ミラーにおいて90度の光路変換を行うこと。」

第4 当審の判断
1 申立理由その2について
まず、事案に鑑みて、記載不備(サポート要件)から検討する。
(1)本件請求項9の記載は、「前記直立面は、光導波路の長手方向に湾曲している請求項6?8のいずれか1項に記載の光導波路。」とあるように、請求項6ないし8のいずれか1項の記載を引用するものである。
そして、その請求項6ないし8の記載からして、「前記直立面」とは、請求項1に記載された「空洞部」を構成する面の一部であると理解できる。
ここで、「空洞部」とは、凹部であって、底部と、その底部から立ち上がる複数の面(傾斜面や垂直面など)で構成されるものと解されるから、「前記直立面」とは、空洞部の底部から立ち上がる直立面であると認められる。

(2)そこで、上記解釈に基づき、本件請求項9に係る発明のサポート要件につき判断する。
ア 本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0036】
一方、凹部170の内側面のうち、コア部14の光軸、すなわち長手方向とほぼ平行な2つの面は、それぞれクラッド層11の下面に対して垂直であるという関係を有する直立面173、174である。この直立面173、174は、コア層13とクラッド層11との界面を含む平面を平面視したとき、図2に示すようにわずかに湾曲して見えるよう構成されている。
【0037】
このような2つの傾斜面171、172と2つの直立面173、174とにより、凹部170の内側面が構成されている。」

「【0055】
また、上述した開口部175や開口部177のみならず、例えばクラッド層12とコア層13との界面における凹部170の開口部や、凹部170の底部においても、それぞれ、傾斜面171に対応する直線線分と直立面173に対応する弧との接続部の最小曲率半径は、1?500μm程度であるのが好ましく、3?400μm程度であるのがより好ましく、5?350μm程度であるのがさらに好ましく、10?100μm程度であるのがさらにより好ましく、20?40μm程度であるのが最も好ましい。これにより、光導波路1において、応力集中に伴う不具合の発生をより確実に抑制することができる。」

「【0062】
第1実施形態では直立面173、174が、コア層13とクラッド層11との界面を含む平面に対して直交している。しかしながら、基準面と直立面173、174とがなす角度(鋭角側)は、これに限定されず、それぞれ好ましくは60?90°程度とされ、より好ましくは70?90°程度とされ、さらに好ましくは80?90°程度とされる。…。」

「【0064】
また、開口部177や開口部175における直立面173、174の形状は、すなわち前述した弧173b、174bや直立面上端173a、174aの形状が全体的に湾曲形状になっている。このような形状をなす直立面173、174は、応力の集中を特に緩和することができる。その結果、開口部177における接続部178や開口部175における接続部176が前述したような曲線になっていることと相まって、凹部170近傍における不具合の発生をより確実に抑制することができる。」

イ 上記記載からして、
「直立面」とは、傾斜面とともに、凹部(空洞部)の内側面を構成する面であって、平面視形状で湾曲するとともに、平面(基準面)とのなす角度(鋭角側)が60?90°であってもよいことが理解できる。
さらに、【0055】及び【0064】の記載からして、「直立面」は、
凹部(空洞部)の底部から、開口部177の位置を経由して、(凹部の開放端である)開口部175まで連続する面であると解される。

(3)記載不備(サポート要件)について
上記(1)の解釈は、本件特許明細書の記載に沿うものであるから、本件請求項9の記載は、サポート要件を充足していると認められる。

(4)以上のことから、本件請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(5)特許異議申立人は、請求項9に記載された「直立面」と 本件特許明細書に記載された用語とが不統一である旨を主張する(特許異議申立書第18ないし19頁)が、「直立面」は、凹部(空洞部)の底部から、(凹部の開放端である)開口部175まで直立する面として認識できる、つまり、「開口部175における形状」と「開口部177における形状」の両者を含むものとして把握できることから、用語が不統一であるとはいえない。

(6)申立理由その2についてのまとめ
申立理由その2によっては、本件請求項9に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由その1について
(1)本件請求項1に係る発明について
ア 対比
(ア)本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致する。

<一致点>
「コア部が形成されているコア層と、前記コア層の一方の面に積層されている第1クラッド層と、前記コア層の他方の面に積層されている第2クラッド層と、前記第2クラッド層および前記コア層をそれぞれ貫通し前記第1クラッド層に至る空洞部と、を有する光導波路であって、
前記空洞部の内壁面の一部は、前記コア層と前記第1クラッド層との界面を含む平面に対して交差する面で構成されており、
前記面は、前記平面に対して所定の角度で交差しており、
前記平面において、前記面とそれに連続する前記内壁面の他部との接続部の最小曲率半径が1?500μmである、光導波路。」

(イ) 一方、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点>
交差する面及び所定の角度に関して、
本件発明1は、「平面に対して傾斜しつつ交差する傾斜面」であって、「前記平面に対して30?60°の角度で交差している」のに対して、
引用発明は、平面に対して傾斜していない点。

イ 判断
(ア)引用発明の「光導波路基板」においては、「光電子素子」は、開口部に半田により実装されるから、信号光の光路変換を行う必要がない。

(イ)また、引用文献1の【0007】における「……光部品の実装にはAu-Sn半田が一般的に用いられるが、実装時にはその融点である約280 ℃よりも約50℃高い330 ℃程度まで光導波路基板が加熱されるため、この実装時の熱処理に伴って上記の熱膨張係数の差から基板と光導波路との間に熱応力が増大することとなり……角部の先端部分に熱応力が集中することとなって、この部分から光導波路層の剥がれまたは光導波路層のクラックが発生しやすいという問題点があった。」との記載からして、引用発明においては、「光電子素子」を「アルミナ支持基板」上に実装することを前提にしており、開口部以外に実装する動機が生じるものでもない。

(ウ)そうすると、引用文献2に、「基板上に設けられて光信号を伝達する多層構成の光導波路の端面に空気界面による全反射ミラーを形成することにより、全反射ミラーにおいて90度の光路変換を行うこと。」との技術事項が記載されているとしても、引用発明とその技術事項を組合わせる動機がない。

(エ)よって、本件発明1は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(オ)特許異議申立人は、引用文献1と引用文献2の組合わせについて、光素子の配置場所が異なるものの、技術分野が同一であるから、引用文献1に全反射ミラーを適用することは、当業者であれば、至極当然になし得ることある旨を主張する(特許異議申立書第11ないし12頁)。
しかしながら、引用発明は、「(開口部内の)アルミナ支持基板」上に光電子素子を半田接続した際の、熱膨張係数の差による、「アルミナ支持基板」と「クラッド部」との剥離を防止するものであるから、光電子素子を「アルミナ支持基板」以外に配置することは、想定されていない。
また、引用文献2には、傾斜面における、コア部とクラッド部との剥離を防止し得ることは記載されておらず、本件発明1の効果は予測し得るものではない。
よって、上記主張には理由がない。

(2)本件請求項2ないし8、10及び11に係る発明について
本件請求項2ないし8、10及び11に係る発明(以下、「本件発明2ないし本件発明8、本件発明10及び本件発明11」という。)は、本件発明1に対して、さらに、技術的事項を追加したものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし本件発明8、本件発明10及び本件発明11は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由その1についてのまとめ
申立理由その1によっては、本件発明1ないし本件発明8、本件発明10及び本件発明11に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし本件発明11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし本件発明11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-11 
出願番号 特願2014-57783(P2014-57783)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02B)
P 1 651・ 537- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 貴一  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 山村 浩
星野 浩一
登録日 2018-09-07 
登録番号 特許第6394018号(P6394018)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 光導波路および電子機器  
代理人 朝比 一夫  
代理人 増田 達哉  
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