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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H02G
管理番号 1352344
異議申立番号 異議2019-700216  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-18 
確定日 2019-06-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6391903号発明「電線管、電線管の接続構造、ベルブロック、電線管同士の接続方法、電線管とベルブロックの接続方法、管継手、およびリング部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6391903号の請求項1ないし7、13ないし15、31、34に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6391903号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし35に係る特許についての出願は、平成29年11月15日(優先権主張 平成29年10月24日)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月31日に特許権の設定登録がされ、平成30年9月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、平成31年3月18日に特許異議申立人西田志有子により特許異議の申立てがなされ、令和元年6月3日に特許権者より上申書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1-35の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」-「本件特許発明35」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-35に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
管体の端部近傍の外周部に形成される雄型嵌合部を有する電線管であって、
前記雄型嵌合部は、管軸方向に離間して配置される一対の係止壁と、
前記係止壁間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状のリング部材配置部と、
前記係止壁で挟まれた前記リング部材配置部に配置されるリング部材と、
を具備し、
前記リング部材は、円周方向の一部が開口した略C字状であり、
前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し、
前記第1の爪部は、前記縮径部から管軸方向に略平行に突出してスライドガイドを形成する爪部であり、前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であり、
前記リング部材は、前記第2の爪部の先端と前記スライドガイドの先端がともに、前記管体の基部側に位置するように配置され、前記縮径部が前記管体の先端側に位置するように配置されていて、
前記縮径部と前記スライドガイドの外径は、前記係止壁の外径より小さく、前記第2の爪部の先端の外径は、前記係止壁の外径より大きく形成され、
前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有し、前記リング部材が前記リング部材配置部において、軸方向にスライド可能であることを特徴とする電線管。
【請求項2】
前記リング部材の両端部には、それぞれリング部材接続部が形成され、前記リング部材の両端部が前記リング部材接続部で接続されて、前記リング部材が前記リング部材配置部に環状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電線管。
【請求項3】
前記雄型嵌合部の基部側の前記係止壁よりもさらに基部側に、止水部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の電線管。
【請求項4】
両端に嵌合構造を有する電線管であって、
管体と、
前記管体の一方の端部に形成された雄型嵌合部と、
前記管体の他方の端部に形成され、前記雄型嵌合部と嵌合可能な形状を有する雌型嵌合部と、
を具備し、
前記雄型嵌合部は、前記管体の端部近傍の外周部に形成され、
管軸方向に離間して配置される一対の係止壁と、
前記係止壁間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状のリング部材配置部と、
前記係止壁で挟まれた前記リング部材配置部に配置されるリング部材と、
を具備し、
前記リング部材は、円周方向の一部が開口した略C字状であり、
前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し、
前記第1の爪部は、前記縮径部から管軸方向に略平行に突出してスライドガイドを形成する爪部であり、前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であり、
前記リング部材は、前記第2の爪部の先端と前記スライドガイドの先端がともに、前記管体の基部側に位置するように配置され、前記縮径部が前記管体の先端側に位置するように配置されていて、
前記縮径部と前記スライドガイドの外径は、前記係止壁の外径より小さく、前記第2の爪部の先端の外径は、前記係止壁の外径より大きく形成され、
前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有し、前記リング部材が前記リング部材配置部において、管軸方向にスライド可能であり、
前記雌型嵌合部は、前記管体の内周部に形成され、先端側から、筒状部と、前記筒状部から徐々に縮径する斜面部と、前記斜面部の最小内径部から拡径したリング嵌合部と、を具備することを特徴とする電線管。
【請求項5】
前記雄型嵌合部の基部側の前記係止壁よりもさらに基部側に、止水部材が設けられることを特徴とする請求項4記載の電線管。
【請求項6】
前記雄型嵌合部と前記雌型嵌合部の間において、前記管体の外周面に連続した所定ピッチの螺旋状の波形状が形成されることを特徴とする請求項5に記載の電線管。
【請求項7】
前記雄型嵌合部と前記雌型嵌合部の間において、前記管体の外周面に略正方形状の山部としての大径部位と、円形状の谷部として小径部位が交互に形成されることを特徴とする請求項5に記載の電線管。
【請求項8】
前記管体の管軸方向に対する前記谷部としての小径部位の略中央部に、一対の突起部が形成され、前記管体の管軸方向断面において、前記突起部の間に平坦部が形成されることを特徴とする請求項7記載の電線管。
【請求項9】
前記管体の管軸方向断面において、前記谷部としての小径部位が波形に形成されることを特徴とする請求項7記載の電線管。
【請求項10】
前記リング部材の前記第2の爪部は、管軸方向断面において、前記第2の爪部の先端から前記縮径部に向かって縮径するテーパ部を有し、前記第2の爪部の先端から前記縮径部に向かって肉厚が薄くなるくさび型形状であることを特徴とする請求項4記載の電線管。
【請求項11】
前記リング部材の前記第2の爪部の形状が、内周部が折れ曲がって形成された2段の鋭角のくさび形状であることを特徴とする請求項10に記載の電線管。
【請求項12】
前記リング部材の周方向の両端部には、それぞれリング部材接続部が形成され、前記リング部材の両端部が前記リング部材接続部で接続されて、前記リング部材が前記リング部材配置部に環状に形成されることを特徴とする請求項10記載の電線管。
【請求項13】
前記リング部材は、ABS樹脂、PP樹脂、硬質塩化ビニルまたはこれらのいずれかとPC樹脂の混合樹脂またはポリマーアロイのいずれかであることを特徴とする請求項4記載の電線管。
【請求項14】
前記止水部材は、前記雄型嵌合部の基部側の前記係止壁よりもさらに基部側に形成された止水部材収容部に配置されることを特徴とする請求項5記載の電線管。
【請求項15】
前記止水部材は、ゴム製または水膨張部材のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の電線管。
【請求項16】
請求項4記載の電線管の接続構造であって、
複数の前記電線管を具備し、一の前記電線管の前記雄型嵌合部と、他の前記電線管の前記雌型嵌合部とが嵌合して接続されることを特徴とする電線管の接続構造。
【請求項17】
請求項4記載の電線管の接続構造であって、
ベルブロックを有するハンドホールと、前記電線管を具備し、
前記雌型嵌合部と同一構造を有する前記ベルブロックと、前記電線管の前記雄型嵌合部とが接続されることを特徴とする電線管の接続構造。
【請求項18】
前記ハンドホールは、複数の前記ベルブロックを有し、
前記電線管は、前記ベルブロックの一部またはすべてと接続されることを特徴とする請求項17記載の電線管の接続構造。
【請求項19】
請求項4記載の電線管と接続可能であり、前記雌型嵌合部と同一構造を有することを特徴とするベルブロック。
【請求項20】
請求項10記載の電線管同士を接続する接続方法であって、
前記雄型嵌合部の先端を前記雌型嵌合部に挿入する工程と、
前記雌型嵌合部の前記斜面部に、前記係止壁で挟まれた領域に配置された前記リング部材の外周の前記テーパ部を接触させて、前記リング部材を前記雄型嵌合部の前記リング部材配置部の端部側までスライド移動させて、前記リング部材の前記第2の爪部を、前記リング部材の前記縮径部の内周側と前記雄型嵌合部の前記リング部材配置部との接触部を支点として、前記リング部材の前記第2の爪部を、管軸方向に倒れるように弾性変形させて縮径する工程と、
前記第2の爪部の端部が前記雌型嵌合部の前記斜面部を通り抜けることで、前記第2の爪部が、前記雌型嵌合部の前記斜面部の基部側に形成された前記リング嵌合部に収納される工程を順に行なうことを特徴とする電線管同士の接続方法。
【請求項21】
前記リング部材の周方向の両端部に、それぞれリング部材接続部が形成され、電線管同士を接続する前に、前記リング部材の両端部がリング部材接続部で相互に接続されて、前記リング部材が前記リング部材配置部の周囲を囲むように環状に形成される工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の電線管の接続方法。
【請求項22】
請求項10記載の電線管とベルブロックとの接続方法であって、
前記ベルブロックは、前記電線管の前記雌型嵌合部と同一の構造を有し、
前記雄型嵌合部の先端を前記ベルブロックに挿入する工程と、
前記ベルブロックの前記斜面部に、前記係止壁で挟まれた領域に配置された前記リング部材の外周の前記テーパ部を接触させて、前記リング部材をスライド移動させて、前記リング部材の前記第2の爪部を、前記リング部材の前記縮径部の内周側と前記リング部材配置部との接触部を支点として、管軸方向に倒れるように弾性変形させて縮径する工程と、
前記第2の爪部の端部が前記ベルブロックの前記斜面部を通り抜けることで、前記第2の爪部が、前記ベルブロックの前記斜面部の基部側に形成された前記リング嵌合部に収納される工程を順に行なうことを特徴とする電線管とベルブロックの接続方法。
【請求項23】
前記リング部材の両端部に、それぞれリング部材接続部が形成され、電線管同士を接続する前に、前記リング部材の両端部が前記リング部材接続部で相互に接続されて、前記リング部材が前記リング部材配置部の周囲を囲むように環状に形成される工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の電線管とベルブロックの接続方法。
【請求項24】
請求項4記載の電線管と接続可能であり、少なくとも一方の端部が前記雄型嵌合部と同一構造を有することを特徴とする管継手。
【請求項25】
両方の端部が前記雄型嵌合部と同一構造を有することを特徴とする請求項24記載の管継手。
【請求項26】
一方の端部が前記雄型嵌合部と同一構造を有し、他方の端部がベルマウスであることを特徴とする請求項24記載の管継手。
【請求項27】
一方の端部が前記雄型嵌合部と同一構造を有し、他方の端部が前記雌型嵌合部と同一構造を有することを特徴とする請求項24に記載の管継手。
【請求項28】
請求項4記載の電線管と接続可能であり、少なくとも一方の端部が前記雌型嵌合部と同一構造を有することを特徴とする管継手。
【請求項29】
一方の端部が前記雌型嵌合部と同一構造を有し、他方の端部がベルマウスであることを特徴とする請求項28記載の管継手。
【請求項30】
一方の端部が前記雌型嵌合部と同一構造を有し、他方の端部が前記管体の外表面に連続した螺旋状の波形状を有することを特徴とする請求項28記載の管継手。
【請求項31】
電線管の接続部に用いられるリング部材であって、
前記リング部材は、円周方向の一部が開口した略C字状であり、
前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し、
前記第1の爪部は、前記縮径部から管軸方向に略平行に突出してスライドガイドを形成する爪部であり、
前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であることを特徴とするリング部材。
【請求項32】
前記リング部材の管軸方向断面において、前記第2の爪部の先端から前記縮径部に向かって縮径するテーパ部を有し、前記第2の爪部の先端から前記縮径部に向かって肉厚が薄くなる鋭角のくさび型形状であることを特徴とする請求項31に記載のリング部材。
【請求項33】
前記第2の爪部の爪面の外縁部の厚さに対して、前記外縁部の内部の厚さを薄く形成した薄肉部を設けることを特徴とする請求項31記載のリング部材。
【請求項34】
前記スライドガイドの形状が面状に形成されたものであることを特徴とする請求項31記載のリング部材。
【請求項35】
前記スライドガイドの形状が枠状に形成されたものであることを特徴とする請求項31記載のリング部材。」

第3 申立理由の概要
理由1 特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証-甲第11号証を提出し、請求項1-7、13-15に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。

理由2 特許異議申立人は、主たる証拠として甲第2号証及び従たる証拠として甲第3号証を提出し、請求項31、34に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:意匠登録第1178155号
甲第2号証:意匠登録第1149173号
甲第3号証:特開2000-161563号公報
甲第4号証:特開平9-287685号公報
甲第5号証:特開平9-184581号公報
甲第6号証:特開2007-64267号公報
甲第7号証:実願昭56-183755号(実開昭58-90022号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平2-240494号公報
甲第9号証:特開平8-219333号公報
甲第10号証:特開2011-234520号公報
甲第11号証:特開2009-279907号公報

第4 理由1、2(第29条第2項)について
1 甲第1号証-甲第11号証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「【意匠に係る物品】 ケーブル保護管」


異議申立人は、特許異議申立書において、上記各図面及びそれらを一部拡大した図面に符号を付した、次の[正面図]、[一部拡大正面図]、[A-A線端面図]及び[一部拡大A-A線端面図]を示した。


上記各図面の記載から、「ケーブル保護管」について次のことが見て取れる(符号は、特許異議申立人が付したものである。以下、同様。)。
ア A-A線端面図から、ケーブル保護管の管体の先端側端部1aの外周には、リング部材20が配置された溝10と、その基部側にリング部材30が配置された溝40が形成されている。
イ A-A線端面図から、溝10は、管軸方向に離間して配置される一対の側壁10a、10bと、その間の一対の側壁10a、10b間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状の底部10cとを備えている。
ウ A-A線端面図から、リング部材20は、側壁10a、10bに挟まれた底部10cに配置されている。
エ 正面図、右側面図及びA-A線端面図から、リング部材20は、厚いブロック状の部分20cと爪部20bが円形に配置され、リング部材20の一方の端部側に縮径部20aを有し、厚いブロック状の部分20cの縮径部20aには爪部20bが設けられている。
オ A-A線端面図及び正面図から、爪部20bが、縮径部20aから斜め後方に延び、縮径部20aから爪部20bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される。
カ A-A線端面図及び正面図から、リング部材20は、爪部20bの先端と厚いブロック状の部分20cの先端がともに、ケーブル保護管の管体の基部側に位置するように配置され、縮径部20aがケーブル保護管の管体の先端側に位置するように配置されている。
キ A-A線端面図から、縮径部20aと厚いブロック状の部分20cの外径は、側壁10a、10bの外径より小さく、爪部20bの先端の外径は、側壁10a、10bの外径より大きく形成されている。
ク A-A線端面図及び正面図から、リング部材20と側壁10bの間に隙間cが存在する。

上記の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ケーブル保護管の管体の先端側端部1aの外周には、リング部材20が配置された溝10と、その基部側にリング部材30が配置された溝40が形成されているケーブル保護管であって、
溝10は、管軸方向に離間して配置される一対の側壁10a、10bと、その間の一対の側壁10a、10b間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状の底部10cとを備えており、
リング部材20は、側壁10a、10bに挟まれた底部10cに配置され、
リング部材20は、厚いブロック状の部分20cと爪部20bが円形に配置され、リング部材20の一方の端部側に縮径部20aを有し、厚いブロック状の部分20cの縮径部20aには爪部20bが設けられ、
爪部20bが、縮径部20aから斜め後方に延び、縮径部20aから爪部20bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径され、
リング部材20は、爪部20bの先端と厚いブロック状の部分20cの先端がともに、ケーブル保護管の管体の基部側に位置するように配置され、縮径部20aがケーブル保護管の管体の先端側に位置するように配置され、
縮径部20aと厚いブロック状の部分20cの外径は、側壁10a、10bの外径より小さく、爪部20bの先端の外径は、側壁10a、10bの外径より大きく形成され、
リング部材20と側壁10bの間に隙間cが存在するケーブル保護管。」

(2)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【意匠に係る物品】 ケーブル保護管用係止具」


異議申立人は、特許異議申立書において、上記各図面に符号を付した、次の[正面図]、[平面図](当審注:[背面図]の誤記)及び[平面図]を示した。


上記各図面の記載から、「ケーブル保護管用係止具」について次のことが見て取れる。
ア 使用状態を示す参考図から、ケーブル保護管用係止具はケーブル保護管の先端側端部に装着されている。
イ 正面図から、ケーブル保護管用係止具はリング部材50である。
ウ 正面図及び平面図から、リング部材50は、O字状で、厚いブロック状の部分50cと薄い部分Dが交互に存在し、リング部材50の一方の端部側に縮径部50aを有し、厚いブロック状の部分50cの縮径部50aには爪部50bが設けられている。
エ 平面図及び使用状態を示す参考図から、爪部50bが、縮径部50aから斜め後方に延び、縮径部50aから爪部50bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される。
オ 平面図及び使用状態を示す参考図から、爪部50bは、ケーブル保護管用係止具の係止爪である。

上記の記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ケーブル保護管の先端側端部に装着されるケーブル保護管用係止具であって、
ケーブル保護管用係止具はリング部材50であり、
リング部材50は、O字状で、厚いブロック状の部分50cと薄い部分Dが交互に存在し、リング部材50の一方の端部側に縮径部50aを有し、厚いブロック状の部分50cの縮径部50aには爪部50bが設けられ、
爪部50bが、縮径部50aから斜め後方に延び、縮径部50aから爪部50bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径され、
爪部50bは、ケーブル保護管用係止具の係止爪であるリング部材50。」

(3)甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光ファイバー、通信ケーブル等のケーブル類を保護する保護管等を接続する管接続構造に関するものである。」

「【0003】
【発明が解決しようとする問題点】上記従来の管接続構造では、管の固定がパッキンリング(3) の摩擦力のみに頼っているから固定力が充分でなく、管継手(10)から保護管(1) が抜け易いという問題点があった。」

「【0005】
【実施例】本発明を図1?図8に示す一実施例によって説明すれば、内挿管(1) はケーブル類の保護管であって、該保護管(1) は凸環部(1A)と凹溝部(1B)とが交互に配列されているコルゲート状の可撓管であって、接続端部の凹溝部(1B)にはC状リング(4) が装着され、その内側の凹溝部(1B)にはパッキンリング(3) が装着されている。なお該保護管(1) の端末は凸環部(1A)の中央部から切落としてある。
【0006】該C状リング(4) の詳細は図2?図4に示されるが、該C状リング(4) の外周は保護管(1) の端部側から反対側にかけて高くなるように傾斜している。そして該C状リング(4) は金属やプラスチック等の弾性材料からなり、図5に示すように自由状態でその内径(最大内径)は該保護管(1) の凸環部(1A)の径よりも小さく、凹溝部(1B)内に係止されるように設定されている。」

「【0011】本実施例では管継手が外挿管、保護管が内挿管に相当するが、図9に示すように保護管(1) の一端に該管継手(2) と同様な構成の受口部(7) を成形してもよい。即ち該受口部(7) は先端部にラッパ状ガイド部(8) を有し、根端部にC状リング係止溝(9) を有する。そして他の保護管(1) の接続端部は該受口部(7) 内に挿入され、C状リング(4) によって抜止めされる。」

「【0014】
【作用・効果】内挿管(1) の端部のC状リング装着溝(1B)にC状リング(4) を取付けた状態で外挿管(2) に内挿する。該C状リング(4) は該外挿管(2) のC状リング係止溝(6) の位置で弾性的に拡径して該係止溝(6) に嵌入し、該係止溝(6) によって係止され、該内挿管(1) はこの状態で該C状リング(4) によって外挿管(2) から抜出すことを確実に阻止される。」

(4)甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管継手、特にケーブル保護管などに使用されるプラスチック管の接続に好適な管継手と、その管継手を両端に設けた管継手付き管に関するものである。」

「【0006】本発明の目的は、このような問題点に鑑み、接続の際の挿入力が小さくて済み、しかも接続後の引抜き強度を十分大きくできる管継手と、その管継手を一体に設けた管継手付き管を提供することにある。」

「【0016】〔実施形態2〕実施形態1におけるリング23は、図3(A)のように不連続部23cで単に切り離されているだけあるので、この形態では拡径力が加わればフランジ部23bの内径D1 がいくらでも大きくなる可能性がある。その結果、接続後にかなり強い引抜き力が作用した場合に、リング23が拡径され、突起29が外れて、引き抜けるおそれがある。このようなことをなくし、さらに引抜き強度を高めるためには、リング23の不連続部に、フランジ部23bの内径D1 が前記突起29の頂部を結ぶ包絡円の直径D2 以上に拡径されるのを阻止するストッパーを形成しておくとよい。図6?図8はそれぞれリング23の不連続部23cにストッパーを形成した例である。」

(5)甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管継手、特にケーブル保護管などに使用されるプラスチック管の接続に好適な管継手と、その管継手を両端に設けた管継手付き管に関するものである。」

「【0008】本発明のコルゲート管では、大径部と小径部とを相互に隣接して管体の長手方向に螺旋状に配置しても良く、また、それぞれ独立した環状部として大径部と小径部とを交互に管体の長手方向に配置しても良い。また、コルゲート管の長手方向断面において、大径部の最大径縁部の輪郭は外に凸の湾曲形でも直線状でも良く、小径部の外縁の輪郭は、内方に凹の湾曲形でも直線状でも良い。・・・」

(6)甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、管壁の外周面が凹凸螺旋波形状に形成された2本の螺旋管同士を水密状態で連結するときに使用する雄部材と雌部材の2体からなる雌雄継手体に関するものである。」

(7)甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
「本考案は地中に埋設する電線管等に適する主として熱可塑性樹脂から成る螺旋管に関するものである。」(第1頁第10-11行)

(8)甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
「また、らせん状コルゲート管A_(2)の場合は第7図(ロ)に示すように一端B_(1)内に他端C_(2)をねじ込むように挿入し、接続することが行なわれる。」(第1頁右下欄第13-15行)

(9)甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 管壁(1)が環状または螺旋状の凹凸状に形成され、該凹凸の凸部(2)の断面形状が方形状で凹部(3)の断面形状が円形状に形成されている合成樹脂波形管。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地中に埋設したり地上の建屋内外において、また、橋梁や高架下等において配管したり、光ファイバーケーブルや電力線等を収容保護する単一電線保護管や、例えば4本,6本,9本等任意数の複数本を平行に配管し収束させた多孔管路として使用するのに適した合成樹脂波形管に関するものである。」

「【0003】また、管壁の形状を凹凸波形状とした一般的な合成樹脂波形管は、管壁の凹凸波形を凹部も凸部も共に円形とした円形管が大部分である。特殊な形状のものとしては凹凸部を共に角形にした角形管も一応提案されている。」

(10)甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
5は、例えばブロー成形によって形成した合成樹脂製のケーブル保護管であって、地中へ埋設されてその内部に電線や光ファイバーケーブル等のケーブル類が挿通される。このケーブル保護管5は、図4及び図5に示すように、管径方向の断面が略正方形状の凸部6・・と、管径方向の断面が略円形状の凹部7・・とを管軸方向に交互に有する管壁8を備えている。また、管壁8の一方の端部には、雄型アダプター9が一体的に形成され、他方の端部には、雌型アダプター10が一体的に形成されている。そして、雄型アダプター9を他のケーブル保護管5の雌型アダプター10に内嵌するとともに、雌型アダプター10を別のケーブル保護管5の雄型アダプター9に外嵌することで、ケーブル保護管5・・が継ぎ足し配管されるようになっている。また、このケーブル保護管5の端部すなわち雄型アダプター9が、後述するブロック体20におけるブロック本体21の挿着孔部23に挿着されるようになっている。」

(11)甲第11号証には、以下の事項が記載されている。
「【0025】
管継手3は、電線や光ファイバーケーブルを挿通させる地中埋設型の合成樹脂製のケーブル保護管4、4同士を接続するためのものである。この管継手3は、ブロー成形によって成形されており、雌型接続部としての角筒状部5と、雄型接続部としての円筒状部6とを管軸方向に連続させた構造となっている。・・・」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1を対比する。
(ア)甲第3号証の【0011】及び図9に示されているように、保護管(1) の一端に受口部(7) を成形し、他の保護管(1) の接続端部を該受口部(7) 内に挿入する、保護管の管接続構造が一般的であることを踏まえると、甲第1号証の【正面図】に記載されたケーブル保護管は、ケーブル保護管の先端側端部1aを、基部側端部1bに挿入してケーブル保護管同士を接続することが読み取れるので、引用発明1の「管体の先端側端部1aの外周に」形成される「リング部材20が配置された溝10」は、本件特許発明1の「管体の端部近傍の外周部に形成される雄型嵌合部」に相当する。
そして、本件特許発明1の「電線管」について、明細書に「本発明は、電線を保護するための電線管」(【0001】)と記載されており、引用発明1の「ケーブル保護管」は、ケーブルすなわち電線を収納する管であり「電線管」といえるので、引用発明1の「ケーブル保護管」は、本件特許発明1の「電線管」に相当するものである。
したがって、引用発明の「管体の先端側端部1aの外周には、リング部材20が配置された溝10」「が形成されているケーブル保護管」は、本件特許発明1の「管体の端部近傍の外周部に形成される雄型嵌合部を有する電線管」に相当する。

(イ)引用発明1の「管軸方向に離間して配置される一対の側壁10a、10b」は、本件特許発明1の「管軸方向に離間して配置される一対の係止壁」に相当する。
また、引用発明1の「一対の側壁10a、10b間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状の底部10c」は、本件特許発明1の「前記係止壁間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状のリング部材配置部」に相当する。
そして、引用発明1の「側壁10a、10bに挟まれた底部10cに配置され」る「リング部材20」は、本件特許発明1の「前記係止壁で挟まれた前記リング部材配置部に配置されるリング部材」に相当する。
したがって、引用発明の「リング部材20が配置された溝10」は、本件特許発明1の「管軸方向に離間して配置される一対の係止壁と、前記係止壁間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状のリング部材配置部と、前記係止壁で挟まれた前記リング部材配置部に配置されるリング部材と、を具備」する「前記雄型嵌合部」に相当する。

(ウ)引用発明1の「リング部材20は、」「リング部材20の一方の端部側に縮径部20aを有し」は、本件特許発明1の「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部」「を有し」に相当する。
そして、引用発明1は、「縮径部20a」に、「厚いブロック状の部分20c」と「爪部20b」が設けられているので、引用発明1の「リング部材20は、」「厚いブロック状の部分20cの縮径部20aには爪部20bが設けられ、」と、本件特許発明1の「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し」とは、「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し」の点で共通する。
よって、引用発明1の「リング部材20は、」「リング部材20の一方の端部側に縮径部20aを有し、厚いブロック状の部分20cの縮径部20aには爪部20bが設けられ」と、本件特許発明1の「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し」とは、「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し」の点で共通する。

(エ)上記(ア)で述べたように、甲第1号証の【正面図】に記載されたケーブル保護管は、ケーブル保護管の先端側端部1aを、基部側端部1bに挿入してケーブル保護管同士を接続するのであるから、引用発明1の「爪部20b」は係止爪である。
したがって、引用発明1の「爪部20bが、」「縮径部20aから爪部20bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径され」ることは、本件特許発明1の「前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であ」ることに相当する。

(オ)引用発明1の「リング部材20は、爪部20bの先端と厚いブロック状の部分20cの先端がともに、ケーブル保護管の管体の基部側に位置するように配置され、縮径部20aがケーブル保護管の管体の先端側に位置するように配置され」と、本件特許発明1の「前記リング部材は、前記第2の爪部の先端と前記スライドガイドの先端がともに、前記管体の基部側に位置するように配置され、前記縮径部が前記管体の先端側に位置するように配置されていて」とは、「前記リング部材は、前記第2の爪部の先端と前記第1の部材の先端がともに、前記管体の基部側に位置するように配置され、前記縮径部が前記管体の先端側に位置するように配置されていて」である点で共通する。

(カ)引用発明1の「縮径部20aと厚いブロック状の部分20cの外径は、側壁10a、10bの外径より小さく、爪部20bの先端の外径は、側壁10a、10bの外径より大きく形成され」と、本件特許発明1の「前記縮径部と前記スライドガイドの外径は、前記係止壁の外径より小さく、前記第2の爪部の先端の外径は、前記係止壁の外径より大きく形成され」とは、「前記縮径部と前記第1の部材の外径は、前記係止壁の外径より小さく、前記第2の爪部の先端の外径は、前記係止壁の外径より大きく形成され」る点で共通する。

(キ)引用発明1の「リング部材20と側壁10bの間に隙間cが存在する」と、本件特許発明1の「前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有し、前記リング部材が前記リング部材配置部において、軸方向にスライド可能である」とは、「前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有」する点で共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「管体の端部近傍の外周部に形成される雄型嵌合部を有する電線管であって、
前記雄型嵌合部は、管軸方向に離間して配置される一対の係止壁と、
前記係止壁間を相互に結んで管軸方向に平行に形成される直管状のリング部材配置部と、
前記係止壁で挟まれた前記リング部材配置部に配置されるリング部材と、
を具備し、
前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し、
前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であり、
前記リング部材は、前記第2の爪部の先端と前記第1の部材の先端がともに、前記管体の基部側に位置するように配置され、前記縮径部が前記管体の先端側に位置するように配置されていて、
前記縮径部と前記第1の部材の外径は、前記係止壁の外径より小さく、前記第2の爪部の先端の外径は、前記係止壁の外径より大きく形成され、
前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有する電線管。」

(相違点1)
本件特許発明1は、「前記リング部材は、円周方向の一部が開口した略C字状であ」るのに対して、引用発明1は、「リング部材20は、厚いブロック状の部分20cと爪部20bが円形に配置され」ているが、円周方向の一部が開口した略C字状であるのかどうか不明である点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有」するのに対して、引用発明1は、「リング部材20は、」「厚いブロック状の部分20cの縮径部20aには爪部20bが設けられ」ている点。
(相違点3)
本件特許発明1は、「前記第1の爪部は、前記縮径部から管軸方向に略平行に突出してスライドガイドを形成する爪部であ」るのに対して、引用発明1は、「厚いブロック状の部分20c」にそのような特定がない点。
(相違点4)
本件特許発明1は、「前記リング部材は、少なくとも一方の前記係止壁との間にクリアランスを有し、前記リング部材が前記リング部材配置部において、軸方向にスライド可能である」のに対して、引用発明1は、「リング部材20と側壁10bの間に隙間cが存在する」が、「溝10」において、軸方向にスライド可能であるのか不明である点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。
引用発明1の「厚いブロック状の部分20c」は、その縮径部20aに爪部20bが設けられているが、その他の部分の形状は不明であり、爪部と認定できるものは認められない。また、「厚いブロック状の部分20c」が、仮に爪部であったとしても、「爪部20b」と円周方向にスリットを介して互いに離間して併設していない。
そして、引用発明1において、「厚いブロック状の部分20c」及び「爪部20b」を、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設することの理由はない。
また、甲第2-11号証にも、リング部材の縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部は記載されていない。

したがって、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、引用発明1、甲第2号証-甲第11号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、本件特許発明1は、上記相違点1、3、4について検討するまでもなく、引用発明1、甲第2号証-甲第11号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2、3について
本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、引用発明1、甲第2号証-甲第11号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明4-7、13-15について
本件特許発明4-7、13-15は、本件特許発明1の「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し」に対応する構成を備えるものであるから、上記本件特許発明1と同様の理由により、引用発明1、甲第2号証-甲第11号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明31について
ア 対比
本件特許発明31と引用発明2を対比する。
(ア)甲第3号証の【0011】及び図9に示されているように、保護管(1) の一端に受口部(7) を成形し、他の保護管(1) の接続端部を該受口部(7) 内に挿入する、保護管の管接続構造が一般的であることを踏まえると、甲第2号証の【使用状態を示す参考図】から、ケーブル保護管は、ケーブル保護管用係止具が装着されたケーブル保護管の先端側端部を、基部側端部に挿入してケーブル保護管同士を接続することが読み取れるので、引用発明2の「ケーブル保護管の先端側端部に装着されるケーブル保護管用係止具」は、「ケーブル保護管」の接続部に用いられるものである。
そして、本件特許発明31の「電線管」について、明細書に「本発明は、電線を保護するための電線管」(【0001】)と記載されており、引用発明2の「ケーブル保護管」は、ケーブルすなわち電線を収納する管であり「電線管」といえるので、引用発明2の「ケーブル保護管」は、本件特許発明1の「電線管」に相当するものである。
したがって、引用発明2の「ケーブル保護管の先端側端部に装着されるケーブル保護管用係止具」である「リング部材50」は、本件特許発明31の「電線管の接続部に用いられるリング部材」に相当する。

(イ)引用発明2の「リング部材50は、」「リング部材50の一方の端部側に縮径部50aを有し」は、本件特許発明31の「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部」「を有し」に相当する。
そして、引用発明2は、「縮径部50a」に、「厚いブロック状の部分50c」と「爪部50b」が設けられているので、引用発明2の「リング部材50は、」「厚いブロック状の部分50cと薄い部分Dが交互に存在し、」「厚いブロック状の部分50cの縮径部50aには爪部50bが設けられ、」と、本件特許発明31の「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し」とは、「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し」の点で共通する。
よって、引用発明2の「リング部材50は、」「厚いブロック状の部分50cと薄い部分Dが交互に存在し、リング部材50の一方の端部側に縮径部50aを有し、厚いブロック状の部分50cの縮径部50aには爪部50bが設けられ」と、本件特許発明31の「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有し」とは、「前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し」の点で共通する。

(ウ)引用発明2の「爪部50b」は、「縮径部50aから爪部50bの先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径され」る「係止爪」であることは、本件特許発明31の「前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であること」に相当する。

したがって、本件特許発明31と引用発明2とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「電線管の接続部に用いられるリング部材であって、
前記リング部材は、前記リング部材の一方の端部側の縮径部と、前記縮径部に対して、複数の第1の部材と、複数の第2の爪部を有し、
前記第2の爪部は、前記縮径部から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される係止爪であるリング部材。」

(相違点1)
本件特許発明31は、「前記リング部材は、円周方向の一部が開口した略C字状であ」るのに対して、引用発明2は、「リング部材50は、O字状で」ある点。
(相違点2)
本件特許発明31は、「前記リング部材は、」「前記縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部を有」するのに対して、引用発明2は、「リング部材50は、」「厚いブロック状の部分50cと薄い部分Dが交互に存在し、」「厚いブロック状の部分50cの縮径部50aには爪部50bが設けられ」ている点。
(相違点3)
本件特許発明31は、「前記第1の爪部は、前記縮径部から管軸方向に略平行に突出してスライドガイドを形成する爪部」であるのに対して、引用発明2は、「厚いブロック状の部分50c」は、「薄い部分D」と交互に形成された「リング部材50」の一部である点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。
引用発明2の「厚いブロック状の部分50c」は、「薄い部分D」と交互に形成された「リング部材50」の一部であり、その形状から爪部とはいえない。また、「厚いブロック状の部分50c」が、仮に爪部であったとしても、「爪部50b」と円周方向にスリットを介して互いに離間して併設していない。
そして、引用発明2において、「厚いブロック状の部分50c」及び「爪部50b」を、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設することの理由はない。
また、甲第3号証にも、リング部材の縮径部に対して、円周方向にスリットを介して互いに離間して併設される複数の第1の爪部と、複数の第2の爪部は記載されていない。

したがって、上記相違点2に係る本件特許発明31の構成は、引用発明2、甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、本件特許発明1は、上記相違点1、3について検討するまでもなく、引用発明2、甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明34について
本件特許発明31を引用する本件特許発明34は、本件特許発明31をさらに減縮したものであるから、上記本件特許発明31についての判断と同様の理由により、引用発明2、甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1-7、13-15、31、34に係る特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-7、13-15、31、34に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-7、13-15、31、34に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-13 
出願番号 特願2018-533955(P2018-533955)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 宮本 秀一
須原 宏光
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6391903号(P6391903)
権利者 古河電気工業株式会社
発明の名称 電線管、電線管の接続構造、ベルブロック、電線管同士の接続方法、電線管とベルブロックの接続方法、管継手、およびリング部材  
代理人 井上 誠一  
代理人 櫻井 雄三  

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