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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A24D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A24D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A24D
管理番号 1352345
異議申立番号 異議2019-700241  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-27 
確定日 2019-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6408987号発明「唇側端部空洞を有する喫煙物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6408987号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6408987号の請求項1ないし11に係る特許(以下「請求項1に係る特許」ないし「請求項11に係る特許」という。)についての出願(以下「本件出願」という。)は、2013年(平成25年)7月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年(平成24年)8月6日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年9月28日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年3月27日に浜俊彦(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1ないし11の特許に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
タバコロッドと、
前記タバコロッドに接続され、
外側シェルと添加剤を含有する内側コアとを各々が含む1つ又はそれよりも多くの破壊可能なカプセルを含む第1のフィルタセグメント、
前記第1のフィルタセグメントの下流にあってフィルタの唇側端部に空洞を形成し、該第1のフィルタセグメントの下流端とフィルタの該唇側端部との間に位置決めされた中空管セグメント、及び
前記第1のフィルタセグメント及び前記中空管セグメントを取り囲むプラグラップ、
を含むフィルタと、
を含み、
前記プラグラップは、平方メートルあたり90グラム未満の坪量を有し、
前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されており、
前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有することを特徴とする喫煙物品。
【請求項2】
前記フィルタの50%変形後の前記中空管セグメントの楕円率が、25%未満であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記中空管セグメントの楕円率が、前記1つ又はそれよりも多くのカプセルの粉砕強度に対応する力が前記第1のフィルタセグメントに印加されるカプセル粉砕試験後に25%未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
タバコロッドと、
前記タバコロッドに接続されたフィルタと、を備え、
前記フィルタは、
第1のフィルタセグメント、及び
前記第1のフィルタセグメントの下流にあってフィルタの唇側端部に空洞を形成し、該第1のフィルタセグメントの下流端とフィルタの該唇側端部との間に位置決めされた中空管セグメント、
を含み、
前記フィルタの50%変形後の前記中空管セグメントの楕円率は25%未満であり、
前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されており、
前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有することを特徴とする喫煙物品。
【請求項5】
前記中空管セグメントは、複数の螺旋状に巻き付けた紙層から形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記フィルタの50%変形後の前記中空管セグメントの楕円率と該フィルタの変形前の該中空管セグメントの楕円率との間の差が、25%未満であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項7】
喫煙物品が喫煙試験を受けた後に行われる前記フィルタの50%変形後の前記中空管セグメントの楕円率が、35%未満であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記中空管セグメントは、その内面上にコーティング層を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記フィルタの圧縮強度が、50%圧縮時に少なくとも20ニュートンであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記中空管セグメントは、前記第1のフィルタセグメントの下流端から少なくとも2mm延びることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記第1のフィルタセグメントと前記タバコロッドの間のロッド端部セグメントを更に含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の喫煙物品。」

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(以下「甲1」ないし「甲13」という。)を提出し、次の異議理由1ないし4を主張している。

甲1:特表2004-516814号公報
甲2:特開平8-322538号公報
甲3:英国特許出願公開第2210546号明細書
甲4:特表2013-524026号公報(なお、同公報の公表日は平成25年6月17日であり、本件出願の優先日後であるが、同公報のファミリーである国際公開第2011/120687号は本件出願の優先日前に公開されたものである。)
甲5:特公平7-83701号公報
甲6:特表2008-539717号公報
甲7:特表2007-520204号公報
甲8:米国特許出願公開第2010/0108085号明細書
甲9:国際公開第00/60962号
甲10:英国特許出願公開第2159386号明細書
甲11:英国特許出願公開第781654号明細書
甲12:特表2010-520763号公報
甲13:特表2009-531052号公報

1 異議理由1(特許法第29条第2項)
本件発明1ないし11は、甲1ないし13に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 異議理由2(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4及び本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件発明4及び本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

3 異議理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件発明1ないし11は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

4 異議理由4(特許法第36条第6項第2号)
本件発明2及び4並びに本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明は、明確でないから、本件発明2及び4並びに本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 甲1ないし13の記載等
(1)甲1の記載等
(ア)甲1には、「リセスフィルターを含む喫煙可能物品」に関して、図面とともに次の記載がある。(下線は理解の一助のために当審にて付したものである。以下同様。)
「【0001】
本出願はリセスフィルター(recess filter)、これらのリセスフィルターの幾つかで構成された棒、及びかかるリセスフィルターを備えた喫煙可能物品、特に紙巻きたばこまたは小型葉巻きたばこに関する。」
「【0008】
第三の現在の方法はそれ自体空気透過性の中空部壁を用いることである。この場合、通気性を作るために中空部壁を穿孔する必要がもはやない。しかし、これらの空気透過性中空部壁材料は非常に高価であり、湿気、例えば喫煙流からまたは喫煙者の唇から来る湿気の影響のために、安定性が顕著に低下し、使用時に中空部が望ましくない様式で押しつぶされまたは完全につぶれるという不利がある。」
「【0015】
全ての標準的フィルター材料、例えば詰め綿、紙、クレープ紙、セルロース、アセテート繊維、プラスチック繊維(例えばポリプロピレンから作られた)のような繊維状材料、または酢酸セルロース、またはシリカゲル調合品、含水複ケイ酸塩、活性粘土、または活性炭のような粒状材料がフィルター素子のために用いられることができ、それらの全てが任意的に香味料を含むことができる。」
「【0017】
例えば、中空部壁のための材料は、紙、カードボード、または好ましくは生物分解性のプラスチックであることさえできる。中空部壁は喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さでなければならない。例えば、>80g/m^(2)、特に90-120g/m^(2)、及び特に好ましくは略110g/m^(2)の基本重量と、>80μm、特に100-140μm、及び特に好ましくは略125μmの厚さとを持つ紙が用いられることができる。この種の紙は通常の成分(例えばクラフトパルプ(略87.5重量%)、無機充填物(略5重量%)、でんぷん(略0.5重量%)、及び水分(略7重量%))から構成されることができる。
【0018】
安定性の理由のため、喫煙可能物品またはリセスフィルターの中空部は最大で10mm長であるべきで、好ましくはほんの6mm長またはそれより短いことさえある。好ましくは、一般的に20mmから40mm、特に25mmから31.5mmのリセスフィルターの全長を持つ場合中空部は4から6mm長である。」
「【0030】
図1は部分的に描かれたたばこ棒12と取り巻き紙巻きたばこ紙14を持つ紙巻きたばこ10を示す。リセスフィルター20もまた示されており、それはカバー紙16によりたばこ棒12に取り付けられている。リセスフィルター20はアセテートから作られた単一のフィルター素子22のみを持ち、それは空気透過性フィルターラップ28内に包まれている。連結ラップ34がフィルター素子22を空気不透過性中空部壁32に取り付け、中空部壁32は次に中空部26を取り巻く。紙巻きたばこ10が用いられるとき、空気は側方から空気透過性カバー紙16、空気透過性連結ラップ34、及び空気透過性フィルターラップ28を通してフィルター20中に移動することができ、従って大きな変動なしに必要な通気度を提供することができる。
【0031】
図2はリセスフィルター紙巻きたばこ10の代替実施例を示す。今一度、たばこ棒12が示され、それは紙巻きたばこ紙14内に包まれ、リセスフィルター20にカバー紙16により取り付けられている。ここではリセスフィルター20は二つのフィルター素子、すなわち第一フィルター素子22と第二フィルター素子24を持つ。第一フィルター素子22は空気不透過性フィルターラップ28内に包まれ、第二フィルター素子24はしかし空気透過性フィルターラップ30内に包まれている。二つのフィルター素子22と24は次に連結ラップ34により空気不透過性中空部壁32に取り付けられ、中空部壁32は中空部26を取り巻く。紙巻きたばこ10が吸われるとき、通気空気が第二フィルター素子24中にのみ移動できる。なぜなら、フィルターラップ28と中空部壁32の不透過性のために周辺空気は側方から第一フィルター素子22中に及び中空部26中に移動できないからである。当然に代替例として、逆の変更例がまた選択されることができ、すなわちフィルター素子24が空気不透過性フィルターラップ30を持ち、一方フィルター素子22が空気透過性フィルターラップ28を持つことができる。別の代替例はフィルターラップ28と30の両者が空気透過性であることである。
【0032】
最後に、図3はリセスフィルター紙巻きたばこ10の別の実施例を示す。たばこ棒12、紙巻きたばこ紙14、リセスフィルター20、連結ラップ34、及びカバー紙16に加えて、この実施例はまた二つのフィルター素子、すなわち第一フィルター素子22と第二フィルター素子24を持つ。第一フィルター素子22のフィルターラップ28は空気透過性または空気不透過性であることができる。これは重要ではない。なぜならこの実施例では第一フィルター素子22と中空部26の両者を取り巻く空気不透過性中空部壁32が周辺空気が側方から第一フィルター素子22中に移動するのを妨げるからである。第二フィルター素子24のフィルターラップ30は従って高度の透過性を持ち、従って紙巻きたばこ10が喫煙されるとき第二フィルター素子24が十分な通気を提供する。示された実施例に代えて、中空部壁32が第一フィルター素子22を完全に取り巻かないでそれを部分的にのみ取り巻くことができる。
【0033】
図4から6はリセスフィルター紙巻きたばこの製造可能性を示す。まず図4はリセスフィルター棒40を製造するための第一可能性を示す。その目的のために、第一段階で完成リセスフィルターの第一(口端部)フィルター素子22の長さの2倍でありラップ紙29(同様にラップ紙28の長さの2倍の)により取り巻かれた第一フィルタープラグ23が機械内で空気不透過性中空部壁38内に連続的に包まれる。図4の第一段階で左端に、ひもの一端が示されており、それは正しい長さのフィルタープラグ22を持つ。工程の次段階で(図4には図示せず)、フィルタープラグ23は中間でそれぞれ切断される。このようにして作られた素子はラップ紙31を持ち第二フィルター素子24の長さの2倍である第二フィルタープラグ25により機械内で連結ラップ36内に次に包まれることにより互いに取り付けられる。従って互いに取り付けられたリセスフィルターのひもが作られる。このひもは第二フィルター素子24を持つ左端で始まり、第一フィルター素子22に続き、中空部壁33(完成リセスフィルター紙巻きたばこ10の中空部26及び中空部壁32の長さの2倍の)を持つ中空部27に続き、第一フィルター素子22に続き、第二フィルタープラグ25に続く等である。酢酸セルロースから作られた第一フィルター素子22と活性炭粒を持つ酢酸セルロースから作られた第二フィルター素子24とを持つリセスフィルター棒40は次いで一つおきのフィルタープラグ25の中間でひもを切断することにより作られる。」




(イ)上記(ア)の記載から、甲1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 甲1に記載された技術は、リセスフィルターを備えた喫煙可能物品、特に紙巻きたばこまたは小型葉巻きたばこに関するものである(【0001】)。
b 紙巻きたばこ10は、たばこ棒12と、たばこ棒12に取り付けられたリセスフィルター20とを備える(【0030】)。
c リセスフィルター20は、フィルター素子22を有し、フィルター素子22は連結ラップ34により中空部壁32に取り付けられる(【0030】)。
d 中空部壁32は、フィルター素子22よりも口端部側にあってリセスフィルター20の口端部に中空部26を形成し、フィルター素子22の口端部側とリセスフィルター20の口端部との間に配置される(【0030】、図1)
e 連結ラップ34は、フィルター素子22と中空部壁32を取り囲む(【0030】、図1)
f 中空部壁は喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さであり、例えば、>80μm、特に100-140μmである(【0017】)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「たばこ棒12と、たばこ棒12に取り付けられたリセスフィルター20とを備える紙巻きたばこ10であって、
リセスフィルター20は、フィルター素子22を有し、フィルター素子22は連結ラップ34により中空部壁32に取り付けられ、
中空部壁32は、フィルター素子22よりも口端部側にあってリセスフィルター20の口端部に中空部26を形成し、フィルター素子22の口端部側とリセスフィルター20の口端部との間に配置され、
連結ラップ34は、フィルター素子22と中空部壁32を取り囲み、
中空部壁は、喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さであり、例えば、>80μm、特に100-140μmである紙巻きたばこ10。」

なお、甲1に「>80μm」の記載があることのみをもって、中空部壁を150μm?500μmとする発明が記載されているとまで認めることはできない。

(2)甲2に記載された技術
甲2には、段落【0043】及び【0044】等の記載から、「香料を封入したカプセルからなる香気発生体をフィルタの空間に収容し、該香気発生体を指で押し潰すことで吸入煙に香気を付加する技術。」が記載されているものと認められる。

(3)甲3に記載された技術
甲3には、第6ページ26行ないし第8ページ第2行等の記載から、「マウスピースを製造するにあたって、螺旋状の紙カードの周囲に、接着剤を塗布したチッピング紙を配置する技術。」が記載されているものと認められる。

(4)甲4に記載された技術
甲4(及び甲4のファミリーである国際公開第2011/120687号)には、段落【0007】等の記載から、「タバコ巻紙を10g/m^(2)から60g/m^(2)の坪量とする技術。」が記載されているものと認められる。

(5)甲5に記載された技術
甲5には、第2ページ右欄第23ないし29行等の記載から、「煙草の香料を封入した粒子を煙草の中ではなく煙草用フィルターの中に収納し、喫煙時に前記粒子を破壊して香料を揮散させる技術。」が記載されているものと認められる。

(6)甲6に記載された技術
甲6には、段落【0041】等の記載から、「シガレットの喫煙中にタバコ煙の特性を変更するための流体材料である添加物を収容したカプセルを、第1の吸収性部材と第2の吸収性部材との間に設け、該カプセルを圧搾することにより流体材料の少なくとも一部分を放出する技術。」が記載されているものと認められる。

(7)甲7に記載された技術
甲7には、段落【0027】等の記載から、「フィルタ素子の空洞内に、風味剤を有する破壊可能なカプセルを配置し、該カプセルを破壊することで風味剤を放出する技術。」が記載されているものと認められる。

(8)甲8に記載された技術
甲8には、段落【0013】等の記載から、「タバコのプラグラップを50g/m^(2)より小さい坪量とする技術。」が記載されているものと認められる。

(9)甲9に記載された技術
甲9には、第2ページ第16ないし28行等の記載から、「フィルタが内側紙、中間紙及び外側紙とを含み、内側紙を中間紙の底部に糊付けし、中間紙を外側紙の底部に糊付けする技術。」が記載されているものと認められる。

(10)甲10に記載された技術
甲10には、第2ページ左欄第26ないし48行等の記載から、「タバコのチューブを製造するにあたって、内側層を螺旋状に巻き、外側層を内側層の周囲に巻き、接着剤を外側層によって覆われる内側層の表面に塗布する技術。」が記載されているものと認められる。

(11)甲11に記載された技術
甲11には、第2ページ右欄第112ないし119行等の記載から、「ラッパーの一端の周囲に硬い紙を巻くことによりマウスピースを提供する技術。」が記載されているものと認められる。

(12)甲12に記載された技術
甲12には、段落【0033】等の記載から、「フィルタの全長に延びるとともに自立するのに十分な強度である螺旋状の巻線形紙管により、フィルタ内のキャビティを定める技術。」が記載されているものと認められる。

(13)甲13に記載された技術
甲13には、段落【0014】等の記載から、「フィルタの全長だけ延びかつ自立するだけ十分に強力であり、しかもオンラインレーザ穿孔に対応するだけ十分に薄い空洞を、螺旋状の捩れた紙の管によって形成する技術。」が記載されているものと認められる。

2 異議理由1について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明における「たばこ棒12」、「リセスフィルター20」、「紙巻きたばこ10」、「フィルター素子22」、「連結ラップ32」及び「中空部壁32」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、それぞれ本件発明1における「タバコロッド」、「フィルタ」、「喫煙物品」、「第1のフィルタセグメント」、「プラグラップ」及び「中空間セグメント」に相当する。
甲1発明における「リセスフィルター20」が「たばこ棒12に取り付けられ(る)」態様は、本件発明1における「フィルタ」が「タバコロッドに接続され(る)」態様と一致する。
甲1発明における「中空部壁32」が「フィルター素子22よりも口端部側にあってリセスフィルター20の口端部に中空部26を形成し、フィルター素子22の口端部側とリセスフィルター20の口端部との間に配置される」態様は、本件発明1における「中空間セグメント」が「前記第1のフィルタセグメントの下流にあってフィルタの唇側端部に空洞を形成し、該第1のフィルタセグメントの下流端とフィルタの該唇側端部との間に位置決めされ(る)」態様と一致する。
甲1発明における「連結ラップ34」が「フィルター素子22と中空部壁32を取り囲(む)」態様は、請求項1に係る「プラグラップ」が「前記第1のフィルタセグメント及び前記中空管セグメントを取り囲む」態様と一致する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「タバコロッドと、
前記タバコロッドに接続され、
第1のフィルタセグメント、
前記第1のフィルタセグメントの下流にあってフィルタの唇側端部に空洞を形成し、該第1のフィルタセグメントの下流端とフィルタの該唇側端部との間に位置決めされた中空管セグメント、及び
前記第1のフィルタセグメント及び前記中空管セグメントを取り囲むプラグラップ、
を含むフィルタと、
を含む、喫煙物品。」

[相違点1]
本件発明1においては、「第1のフィルタセグメント」が「外側シェルと添加剤を含有する内側コアとを各々が含む1つ又はそれよりも多くの破壊可能なカプセルを含む」のに対して、甲1発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下「相違点1」という。)。

[相違点2]
本件発明1においては、「前記プラグラップは、平方メートルあたり90グラム未満の坪量を有」するのに対して、甲1発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下「相違点2」という。)。

[相違点3]
本件発明1においては、「前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されて」いるのに対して、甲1発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下「相違点3」という。)。

[相違点4]
本件発明1においては、「前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有する」のに対して、甲1発明においては、「中空部壁は、喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さであり、例えば、>80μm、特に100-140μmである」点(以下「相違点4」という。)。

事案に鑑み、まず相違点3及び4について検討する。
甲1発明においては、「中空部壁は、喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さであり、例えば、>80μm、特に100-140μmである」としており、甲1には、中空部壁を150μmから500μmとすることについての記載はない。甲1には、中空部壁を喫煙時の安定性を確保するに十分な厚さとするという技術思想が記載されているといえるが、具体的な数値として140μmより大きいものが記載されておらず、「特に好ましくは略125μm」と記載されていることからすれば、喫煙時の安定性を確保する上では、140μmあれば十分であると解することが自然であって、例え「>80μm」と記載されていても、150μm以上とすることが示唆されているとはいえない。
また、甲1には、破壊可能なカプセルをフィルタに設けることについての記載はないから、カプセルを破壊する際の圧力に耐え得る程度に、中空部壁の安定性を高めることとする動機付けは存在しない。
破壊可能なカプセルをフィルタに設けることは、上記甲2及び5ないし7に記載された技術等から周知技術であるといえるが、仮に甲1発明において当該周知技術を採用することでフィルター素子(第1のフィルタセグメント)に破壊可能なカプセルを配置することが容易であるとしても、中空部壁(中空管セグメント)は、該カプセルが配置されるフィルター素子よりも下流側に配置されるものであるから、中空部壁の安定性を高める必要性があることが自明であるとまではいえない。
さらに、仮に、タバコにおける中空部を構成する部分を、複数の重なり合う紙層から形成するとともに該複数の紙層を接着剤の中間層によって互いに接着することが、上記甲3、9及び10に記載された技術等から周知技術であるとしても、甲1発明における中空部壁に対して当該周知技術を採用することの動機付けが見当たらず、また、甲1発明においては、中空部壁の厚さを140μmまでの値とすることで中空部壁の安定性が確保されると解されることからすれば、中空部壁の安定性の確保という課題が上記周知技術を採用することの動機付けとなるとまではいえない。
また、本件発明1における「前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されており」、「前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有する」という事項は、上記甲4、8及び11乃至13に記載された技術を参酌しても、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、甲1発明及び甲2ないし13に記載された技術に基いて上記相違点3及び4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

そうすると、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし13に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明4について
本件発明4は、「前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されており」、「前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有する」という、上記相違点3及び4に係る本件発明1の発明特定事項に対応する事項を含むものである。
上記相違点3及び4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、上記のとおり、当業者が容易になし得たことではないから、本件発明4における「前記中空管セグメントは、複数の重なり合う紙層から形成され、該中空管セグメントの隣接する複数の紙層は、接着剤の中間層によって互いに接着されており」、「前記中空管セグメントは、150マイクロメートルから500マイクロメートルの壁厚みを有する」という事項とすることも、同様に、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明4は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし13に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2、3及び5ないし11について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2、3及び5ないし11は、請求項1又は4の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1又は4の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件発明2、3及び5ないし11は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件発明2、3及び5ないし11は、本件発明1又は4と同様の理由により、甲1発明及び甲2ないし13に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 異議理由2について
特許異議申立人は、本件発明4及び本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明は、第1のフィルタセグメント及び中空管セグメントを取り囲むプラグラップを備えておらず、発明の詳細な説明には、プラグラップを使用することなく第1のフィルタセグメントと中空管セグメントとを結合することが記載されていないから、発明の詳細な説明が本件発明4及び本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張する。
しかし、本件発明4及び本件発明5ないし11のうち本件発明4を引用する発明において、第1のフィルタセグメント及び中空管セグメントを取り囲むプラグラップを備えることが特定されていないとしても、第1のフィルタセグメントと中空管セグメントとを結合する何らかの手段があることは明らかであり、プラグラップ以外の巻紙その他の手段によっても第1のフィルタセグメントと中空管セグメントとの結合が可能であることは自明であるといえるから、上記主張には理由がない。

4 異議理由3について
特許異議申立人は、本件特許の明細書の段落【0022】には、「壁厚みは、約500マイクロメートル未満であることが好ましく、」と記載されており、中空管セグメントの厚みの上限値は、500マイクロメートルを含まないことが記載されているから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものでなく、同様に、本件発明2ないし11も発明の詳細な説明に記載されたものではないと主張する。
しかし、段落【0022】における上記記載は、「約」500マイクロメートルと記載されており、500マイクロメートルの前後の値も含める意図があることは明らかであり、「未満」との記載があることによって、500マイクロメートルを除外するものであるとまではいえない。
よって、上記主張には理由がない。

5 異議理由4について
特許異議申立人は、本件発明2及び4において、フィルタの50%変形後の中空管セグメントの楕円率が25%未満であることを特定しているが、この楕円率が喫煙前のものか喫煙後のものかを特定しておらず、本件特許の明細書の段落【0017】の記載によれば、喫煙前の喫煙物品と喫煙後の喫煙物品とで楕円率が異なることが示唆されているから、楕円率が喫煙前のものであるか喫煙後のものであるかを特定しない本件発明2、4及び本件発明4を引用する本件発明5ないし11は不明確であると主張する。
しかし、本件発明2、4及び本件発明4を引用する本件発明5ないし11は、楕円率が喫煙前のものであるか喫煙後のものであるかを特定していないのであるから、喫煙前後を問わず、楕円率が所定の条件を満たす喫煙物品を特定していることは明らかである。
よって、上記主張には理由がない。

第5 むすび
特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-06-12 
出願番号 特願2015-525806(P2015-525806)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A24D)
P 1 651・ 537- Y (A24D)
P 1 651・ 121- Y (A24D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩瀬 昌治木戸 優華宮崎 賢司  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 紀本 孝
大屋 静男
登録日 2018-09-28 
登録番号 特許第6408987号(P6408987)
権利者 フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
発明の名称 唇側端部空洞を有する喫煙物品  
代理人 那須 威夫  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 近藤 直樹  
代理人 須田 洋之  
代理人 豊島 匠二  
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