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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B62D
管理番号 1352517
審判番号 訂正2019-390048  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2019-04-16 
確定日 2019-06-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4524899号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4524899号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第4524899号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成12年10月6日に特許出願され、平成22年6月11日にその特許権の設定登録がされ、そして、平成31年4月16日付けで本件訂正審判の請求がなされたものである。


第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4524899号の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。


第3 本件訂正内容

本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線部分が訂正箇所である。

1 訂正事項1

本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。さらに、図面を併せたものを「本件明細書等」という。)【0026】に、

「同図中の実線は、この際(大作動荷重時)の試験結果を示している」と記載されているのを、

「同図中の実線は、この際(大作動荷重時)の移動ストロークを示している」に訂正する。


2 訂正事項2

本件明細書【0030】に、

「図13中の破線はこの際(小作動荷重時)の試験結果を示しており」と記載されているのを、

「図13中の破線はこの際(小作動荷重時)の移動ストロークを示しており」に訂正する。


第4 当審の判断

1 訂正事項1について

(1)訂正の目的の適否について

訂正前の本件明細書等には、「この際(大作動荷重時)の試験結果」に関し、「試験」において用いられるステアリングコラムの形式(形態)や、荷重の大きさ、荷重をかけるための具体的方法等の条件が記載されていないので該「試験」の具体的内容が明らかでないことに加え、図13中の実線が「試験結果」による作動荷重と移動ストロークの関係を示しているものか明らかでなかったものを、訂正後に「同図中の実線は、この際(大作動荷重時)の移動ストローク」と訂正し、図13の内容を説明している記載に改めるものであるから、訂正事項1の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。


(2)新規事項の追加の有無について

本件明細書の段落【0026】には「大作動荷重時(比較的大きな衝突エネルギの吸収が実現される時)」における図13中の実線に関して、「その結果、エネルギ吸収プレート61は左右4箇所で両しごきピン113,115に順次巻き回されるかたちでしごかれ、比較的大きな衝突エネルギの吸収が実現される。図13はステアリングコラム21の移動ストロークと作動荷重との関係を示すグラフであり、同図中の実線はこの際(大作動荷重時)・・・」と記載されている。

また、本件明細書の段落【0030】には「小作動荷重時(衝突エネルギの吸収量が小さくなる時)」における図13中の破線に関して、「その結果、エネルギ吸収プレート61は左右2箇所の固定側しごきピン113だけにしごかれることになり、衝突エネルギの吸収量が小さくなると共に、運転者が小柄な女性等であっても、ステアリングコラム21の前進が円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなるのである。図13中の破線はこの際(小作動荷重時)・・・、小作動荷重が大作動荷重に対して有意に小さくなることが判る。」と記載されている。

さらに、図13には、横軸を「移動ストローク」を示すものと記載されている。

ここで、本件明細書の段落【0026】の「図13はステアリングコラム21の移動ストロークと作動荷重との関係を示すグラフであり」との記載及び図13の横軸を示す「移動ストローク」との記載を踏まえると、図13には、縦軸上の各作動荷重に対して移動ストロークが実線及び破線でプロットされたグラフが示されているといえる。また、図13には、横軸上で同一の移動ストロークでは縦軸上の作動荷重に関して、破線のほうが実線より小さいことも示されている。

そうすると、本件明細書の段落【0026】に記載された「同図中の実線」は、「この際(大作動荷重時)」の「移動ストローク」を示しているといえる。

したがって、訂正事項1の訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。


(3)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項を導入するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。


2 訂正事項2について

(1)訂正の目的の適否について

上記1(1)で検討したのと同様に、訂正前の本件明細書等には、「この際(小作動荷重時)の試験結果」に関し、該「試験」の具体的内容が明らかでないことに加え、図13中の破線が「試験結果」による作動荷重と移動ストロークの関係を示しているものか明らかでなかったものを、訂正後に「図13中の破線はこの際(小作動荷重時)の移動ストローク」と訂正し、図13の内容を説明している記載に改めるものであるから、訂正事項2の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加の有無について

上記1(2)における検討を踏まえると、本件明細書の段落【0030】に記載された「同図中の破線」は、「この際(小作動荷重時)」の「移動ストローク」を示しているといえる。
したがって、訂正事項2の訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。


(3)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項を導入するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。


第5 むすび

以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第6項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
衝撃吸収式ステアリングコラム装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギを吸収する衝突エネルギ吸収手段と、
前記衝突エネルギ吸収手段による前記二次衝突エネルギの吸収量を変化させるエネルギ吸収量調整手段と
を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、
前記エネルギ吸収量調整手段は、電磁アクチュエータを駆動源とし、当該電磁アクチュエータは、プランジャと、二次衝突エネルギーが異なる第1運転条件と第2運転条件でそれぞれ作動して前記プランジャを第1所定の位置または第2所定の位置に移動させる第1電磁石と第2電磁石とからなり、
前記プランジャは永久磁石により前記第1所定の位置または前記第2所定の位置で吸着・保持され、
前記エネルギ吸収量調整手段は前記プランジャが前記第1所定の位置をとる時と前記第2所定の位置をとる時とで前記二次衝突エネルギの吸収量を変化させることを特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記衝突エネルギ吸収手段が、前記ステアリングコラムと車体側ブラケットとの間に設けられ、当該ステアリングコラムの移動に伴って金属板または金属線を素材とするエネルギ吸収部材を塑性変形させる第1および第2のしごき手段から成り、
前記エネルギ吸収量調整手段は前記プランジャが前記第2所定の位置をとる時前記第2のしごき手段を非作動にすることを特徴とする、請求項1に記載の衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記第1および第2のしごき手段はそれぞれ金属棒または金属球であり、前記エネルギ吸収量調整手段が当該しごき手段による前記エネルギ吸収部材の塑性変形部位と塑性変形量との少なくとも一方を変化させることを特徴とする、請求項2に記載の衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作動荷重可変型の衝突エネルギ吸収手段を有する衝撃吸収式ステアリングコラム装置に係り、詳しくは、電磁アクチュエータの構造簡素化等を実現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が他の自動車や建造物等に衝突した場合、運転者が慣性でステアリングホイールに二次衝突することがある。近年の乗用車等では、このような場合における運転者の受傷を防止するべく、衝撃吸収式ステアリングシャフトや衝撃吸収式ステアリングコラム装置が広く採用されている。衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、運転者が二次衝突した際にステアリングコラムがステアリングシャフトと共に脱落するもので、通常はステアリングシャフトと伴に前進し、その際に衝突エネルギの吸収が行われる。
【0003】
衝突エネルギの吸収方式としては、ステアリングコラムの一部に形成されたメッシュ部を圧縮座屈変形させるメッシュ式や、アウタコラムとインナコラムとの間に介装させた金属球によりアウタコラムの内周面やインナコラムの外周面に塑性溝を形成させるボール式等が従来より知られているが、近年では特開平7-329796号公報等に記載されたしごき式も広く採用されている。しごき式の衝突エネルギ吸収機構は、例えば、帯形状の鋼板からなるエネルギ吸収部材の一端を車体側ブラケットに固着させると共に、ステアリングコラム側にエネルギ吸収部材に形成された屈曲部に嵌入する鋼棒等のしごき手段を設け、ステアリングコラムが前方に移動する際にしごき手段によりエネルギ吸収部材をしごき変形させる構成を採っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したしごき式の衝突エネルギ吸収機構を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、所定の作動荷重が作用した場合に衝突エネルギ吸収手段が作動してステアリングコラムが前進するが、このことに起因して次のような問題が生じていた。通常、衝突エネルギ吸収手段の作動荷重は、標準的な体重の運転者が所定の速度でステアリングホイールに二次衝突した際の運動エネルギを基に設定される。しかしながら、運転者が小柄な女性等である場合にはその運動エネルギが当然に小さくなるため、このような運転者が同一速度でステアリングホイールに衝突してもしごき手段によるエネルギ吸収部材のしごき変形が行われない。その結果、ステアリングコラム(すなわち、ステアリングホイール)が前進しないことより衝突エネルギの吸収が全く行われず、衝撃吸収式ステアリングコラム装置は所期の作用を果たすことができなくなり、運転者が胸部や頭部に大きな衝撃を受けることがあった。
【0005】
そこで、独国特許DE19542491C1号や国際公開公報WO98/22325号等には、この問題を解決するための装置として、運転条件に応じてコラプス荷重の切換えを行う衝撃吸収式ステアリングコラム装置が記載されている。これらの装置は、種々の運転情報を検出した電子制御手段がエネルギ吸収手段の作動形態を切換えるもので、切換用の駆動源に電磁アクチュエータが用いられている。電磁アクチュエータは、電磁石(ソレノイド)により磁力吸引することにより、作動鉄芯(プランジャ)を一方の位置(以下、第1位置)から他方の位置(以下、第2位置)に移動させるもので、ソレノイドに通電されない状態では復帰スプリングの付勢力によりプランジャは第1位置に保持される。
【0006】
ところで、上述した電磁アクチュエータでは、プランジャの保持に復帰スプリングを用いる都合上、以下に述べるようにいくつかの問題が生じていた。例えば、プランジャを第2位置に長時間保持する際にはソレノイドに通電され続けることになるため、電力消費量が増大する他、コイルの発熱によりソレノイドの吸引性能が徐々に劣化する虞もある。また、復帰スプリングのばね力は自動車走行時の加減速や振動によるプランジャの移動(誤作動)を阻止する強さが求められるが、これによりソレノイドに磁力吸引力の大きい大型のものが必要となり、装置の大型化が避けられなくなる。また、プランジャを第2位置に保持しているときにソレノイドへの通電が断たれると、復帰スプリングのばね力によりプランジャが第1位置に復帰してしまうため、衝突時における電流供給の停止を避けるべく、フェイルセーフ用の予備電源や電気回路を設けることが望ましいが、システムが複雑になると共に装置コストも大幅に上昇する。
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、電磁アクチュエータの構造簡素化等を実現した作動荷重可変型の衝突エネルギ吸収手段を有する衝撃吸収式ステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1の発明では、上記課題を解決するべく、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギを吸収する衝突エネルギ吸収手段と、
前記衝突エネルギ吸収手段による前記二次衝突エネルギの吸収量を変化させるエネルギ吸収量調整手段と
を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、
前記エネルギ吸収量調整手段は、電磁アクチュエータを駆動源とし、当該電磁アクチュエータは、プランジャと、二次衝突エネルギーが異なる第1運転条件と第2運転条件でそれぞれ作動して前記プランジャを第1所定の位置または第2所定の位置に移動させる第1電磁石と第2電磁石とからなり、
前記プランジャは永久磁石により前記第1所定の位置または前記第2所定の位置で吸着・保持され、
前記エネルギ吸収量調整手段は前記プランジャが前記第1所定の位置をとる時と前記第2所定の位置をとる時とで前記二次衝突エネルギの吸収量を変化させることを特徴とするものを提案する。
【0009】
また、請求項2の発明では、請求項1の衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、前記衝突エネルギ吸収手段が、前記ステアリングコラムと車体側ブラケットとの間に設けられ、当該ステアリングコラムの移動に伴って金属板または金属線を素材とするエネルギ吸収部材を塑性変形させる第1および第2のしごき手段から成り、前記エネルギ吸収量調整手段は前記プランジャが前記第2所定の位置をとる時前記第2のしごき手段を非作動にする。
【0010】
請求項2の発明では、例えば、運転者の体重が大きい場合にはエネルギ吸収部材の塑性変形量を大きくすることで作動荷重を増大させる一方、運転者の体重が小さい場合にはエネルギ吸収部材の塑性変形量を小さくすることで作動荷重を減少させ、ステアリングコラムの前進が適切に行われるようにする。
【0011】
また、請求項3の発明では、請求項2の衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、前記第1および第2のしごき手段はそれぞれ金属棒または金属球であり、前記エネルギ吸収量調整手段が当該第1および第2のしごき手段による前記エネルギ吸収部材の塑性変形部位と塑性変形量との少なくとも一方を変化させるものを提案する。
【0012】
請求項3の発明では、例えば、エネルギ吸収部材の第1および第2のしごき手段として4本の鋼棒を用い、運転者の体重が大きい場合には4本の鋼棒を全て用いる一方、運転者の体重が小さい場合には2本の鋼棒を退避位置に移動させたり、2本の鋼棒のエネルギ吸収部材に対するしごき深さを増減させる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明を適用したチルトステアリング装置の車室側部分を示す側面図であり、同図中の符号1は衝撃吸収式ステアリングコラム装置を示している。衝撃吸収式ステアリングコラム装置1は、上下2箇所で車体側メンバ3に装着されており、軸受5,7によりアッパステアリングシャフト(以下、単にステアリングシャフトと記す)9を回動自在に支持している。ステアリングシャフト9には、その上端にステアリングホイール11が取り付けられる一方、下端にはユニバーサルジョイント13を介してロアステアリングシャフト15が連結されている。図中、17はステアリングコラム1の上部を覆うコラムカバーであり、19は車室とエンジンルームとを区画するダッシュボードである。
【0014】
このステアリング装置では、運転者がステアリングホイール11を回転させると、ステアリングシャフト9およびロアステアリングシャフト15を介して、その回転力が図示しないステアリングギヤに伝達される。ステアリングギヤ内には、回転入力を直線運動に変換するラックアンドピニオン機構等が内蔵されており、タイロッド等を介して車輪の舵角が変動して操舵が行われる。尚、ステアリングギヤには、ラックアンドピニオン式の他、ボールスクリュー式やウォームローラ式等、種々の形式が公知である。
【0015】
図2は、実施形態に係る衝撃吸収式ステアリングコラム装置を示す側面図であり、図3は同装置を示す平面図(図2中のA矢視図)であり、図4は図2中の拡大B-B断面図であり、図5は図2中の拡大C-C断面図であり、図6は図2中の拡大D-D断面図である。これらの図に示したように、ステアリングコラム21は、鋼管製のコラムチューブ23の略中央部に鋼板製のアッパディスタンスブラケット(以下、アッパブラケットと略称する)25を溶接接合し、同前部(図2,図3中の左方)にこれも鋼板製のロアディスタンスブラケット(以下、ロアブラケットと略称する)27を溶接接合することにより製作されている。
【0016】
アッパブラケット25は、車体側メンバ3に固着された鋼板溶接構造品のチルトブラケット31に挟持されており、チルトブラケット31を貫通するチルトボルト33とナット35とにより所定の締結力で挟圧・固定されている。アッパブラケット25には後方に開口する略U字形状の切欠き37が形成されており、チルトボルト33はこの切欠き37の前端側に嵌挿されている。図4,図6において符号41,43で示した部材は公知のチルトカムであり、ステアリングコラム21の所定角度での固定に供される。また、符号45で示した部材はチルトカム41を回転駆動するチルトレバーであり、符号47で示した部材はチルトボルト33の頭部とチルトレバー45との間に介装されたスラスト軸受である。
【0017】
一方、ロアブラケット27は、車体側メンバ3に固着された鋳造品のピボットブラケット51に挟持されており、ピボットブラケット51を貫通するピボットボルト53とナット55とにより固定されている。ピボットブラケット51には前方に開口する略U字形状の切欠き57が形成されており、ピボットボルト53はこの切欠き57の後端側に嵌挿されている。尚、ステアリングコラム21は、ピボットボルト53を軸に揺動可能となっており、チルトレバー45を操作することにより運転者は所定の範囲でステアリングホイール11の上下位置を調整することができる。
【0018】
本実施形態の場合、衝突エネルギ吸収手段は、チルトボルト33に保持されたエネルギ吸収プレート61と、ステアリングコラム21に固着された可変しごき装置63とから構成されている。エネルギ吸収プレート61は、前方に開いた略U字形状の鋼板であり、後端部近傍をチルトボルト33が貫通している。
【0019】
一方、可変しごき装置63は、図6,図7(図6中のE-E断面図),図8(図6中のF-F断面図)に示したように、コラムチューブ23に溶接された鋼板プレス成形品のベースプレート65と、ベースプレート65にボルト締めされたハウジング67と、ハウジング67内に摺動自在に保持されたスライドブロック69と、ハウジング67に保持されてECU(電子制御装置)70に駆動制御される電磁アクチュエータ(以下、ソレノイドと記す)71等から構成されている。尚、ECU70には、シートポジションセンサ73の他、体重センサ74、車速センサ75、乗員位置センサ76、シートベルト着用センサ77等、少なくとも一つのセンサが接続されている。
【0020】
ソレノイド71は、鋼板プレス成形品のヨーク81と、ヨーク81内を前後摺動自在に保持されたプランジャ(可動鉄芯)83と、プランジャ83を囲繞するかたちで前後に配置された第1および第2コイル85,87と、両コイル85,87の間に介装された永久磁石89と、ヨーク81の前後内端面に加締・固定された第1および第2固定鉄芯91,93とから構成されている。プランジャ83は、その先端に形成されたロッド部95がスライドブロック69に螺合・連結されており、スライドブロック69と一体に前後進する。尚、第1固定鉄芯91には、ロッド部95が挿通される貫通孔97が形成されている。図6中、98,99で示した部材はスライドブロック69に貼着された緩衝材であり、スライドブロック69のハウジング67やソレノイド71との衝突音を抑制する。
【0021】
ハウジング67には、スライドブロック69の両側面に隣接して、左右一対のガイドプレート101,103が保持されており、前述したエネルギ吸収プレート61はこれらガイドプレート101,103とスライドブロック69との間に嵌挿されている。両ガイドプレート101,103は、略中央部と後部との内側にそれぞれU字状凹部105,107を有しており、これらU字状凹部105,107にエネルギ吸収プレート61に形成された前後のU字曲げ部109,111が嵌入している。
【0022】
エネルギ吸収プレート61には、前部U字曲げ部109に固定側しごきピン113が嵌入する一方、後部U字曲げ部111に移動側しごきピン115が嵌入している。ハウジング67には移動側しごきピン115を保持する左右一対の長孔121,123が形成されており、これら長孔121,123内を移動側しごきピン115が左右方向に所定量移動可能となっている。
【0023】
以下、第1実施形態の作用を説明する。
自動車が走行を開始すると、ECU70は、前述した各種センサ73?77の検出信号に基づき、所定の制御インターバルで衝突エネルギ吸収手段の目標作動荷重の算出を繰り返し行う。例えば、運転者の体重が比較的大きい場合、あるいは運転者の体重が比較的小さくても車速が大きい場合、衝突時における運転者の運動エネルギが大きくなるため、目標作動荷重も大きくなる。すると、ECU70は、ソレノイド71の第2コイル87に励磁電流を所定時間出力し、図9に示したように、プランジャ83を後方に磁力吸引させる。
【0024】
これにより、プランジャ83に連結されたスライドブロック69も後方に移動し、その後部側面が移動側しごきピン115の内側に位置することによって移動側しごきピン115の内側への移動を規制することになる。この際、プランジャ83は第2固定鉄芯93の端面に当接するが、第2固定鉄芯93がヨーク81を介して永久磁石89に連結されているため、プランジャ83は所定の吸着力をもって第2固定鉄芯93に磁力吸着されることになる。尚、スライドブロック69には、車両走行中の振動や衝突時の衝撃が加わることが避けられないが、プランジャ83の第2固定鉄芯93に対する吸着力は十分に大きいため、スライドブロック69の不用意な移動は生じない。
【0025】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、運転者は慣性によってステアリングホイール11に二次衝突し、その衝撃によって、図10,図11(図10中のG矢視図)に示したように、アッパブラケット25がチルトブラケット31から前方に離脱する一方、ロアブラケット27がピボットブラケット51から前方に離脱し、ステアリングコラム21が脱落して前進を始める。そして、ステアリングコラム21の前進に伴って、図12に示したように、車体メンバ3側のチルトボルト33に保持されたエネルギ吸収プレート61に対して、ステアリングコラム21側の可変しごき装置63が前進する。
【0026】
すると、エネルギ吸収プレート61では、U字状凹部105と固定側しごきピン113との間に嵌入した前部U字曲げ部109と、U字状凹部107と移動側しごきピン115との間に嵌入した後部U字曲げ部111とが前進することになる。その結果、エネルギ吸収プレート61は左右4箇所で両しごきピン113,115に順次巻き回されるかたちでしごかれ、比較的大きな衝突エネルギの吸収が実現される。図13はステアリングコラム21の移動ストロークと作動荷重との関係を示すグラフであり、同図中の実線はこの際(大作動荷重時)の移動ストロークを示している。
【0027】
一方、運転者が比較的体重の小さい小柄な女性等の場合、衝突時における運転者の運動エネルギが比較的小さくなるため、ECU70により算出された目標作動荷重も小さくなる。すると、ECU70は、ソレノイド71の第1コイル85に励磁電流を所定時間出力し、図14に示したように、プランジャ83を前方に磁力吸引させる。
【0028】
これにより、プランジャ83に連結されたスライドブロック69も前方に移動し、その後部側面が移動側しごきピン115の内側から退避することになり、移動側しごきピン115は長孔121,123内を自由に移動可能となる。この際、プランジャ83は第1固定鉄芯91の端面に当接するが、第1固定鉄芯91も第2固定鉄芯93と同様にヨーク81を介して永久磁石89に連結されているため、プランジャ83は所定の吸着力をもって第1固定鉄芯91に磁力吸着されることになる。
【0029】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、上述した場合と同様のプロセスにより、ステアリングコラム21が脱落して前進し、エネルギ吸収プレート61に対して可変しごき装置63が前進する。ところが、この場合には移動側しごきピン115がスライドブロック69により拘束されていないため、図15に示したように、エネルギ吸収プレート61の後部U字曲げ部111は、U字状凹部107から前進・離脱する際に移動側しごきピン115を内側に押圧して移動させ、しかる後に消失する。
【0030】
その結果、エネルギ吸収プレート61は左右2箇所の固定側しごきピン113だけにしごかれることになり、衝突エネルギの吸収量が小さくなると共に、運転者が小柄な女性等であっても、ステアリングコラム21の前進が円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなるのである。図13中の破線はこの際(小作動荷重時)の移動ストロークを示しており、小作動荷重が大作動荷重に対して有意に小さくなることが判る。
【0031】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、エネルギ吸収部材として鋼板を用い、しごき部材としてピンを用いたが、エネルギ吸収部材に鋼線等を用いてもよいし、しごき部材として鋼球等を用いるようにしてもよい。また、上記実施形態では、ヨークを介して第1,第2固定鉄芯を単一の永久磁石に連結する構成を採ったが、プランジャを前後の位置でそれぞれ保持する2個の永久磁石を用いるようにしてもよい。また、上記実施形態とは逆に、エネルギ吸収プレートをステアリングコラム側に固定し、可変しごき装置を車体側に固定するようにしてもよい。その他、ステアリングコラム装置およびエネルギ吸収量調整手段の具体的構成やしごき手段の素材や形状等についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る衝撃吸収式ステアリングコラム装置によれば、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギを吸収する衝突エネルギ吸収手段と、前記衝突エネルギ吸収手段による前記二次衝突エネルギの吸収量を変化させるエネルギ吸収量調整手段とを備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、前記エネルギ吸収量調整手段が電磁アクチュエータを駆動源とすると共に、当該電磁アクチュエータのプランジャが永久磁石により所定の位置で吸着・保持されるものとしたため、電磁アクチュエータへの通電をプランジャの駆動時のみとすることが可能となってコイルの発熱防止や電力消費の低減が実現される他、車両走行中の振動や衝突時の衝撃によってプランジャが不用意に移動することがなくなり、更に復帰スプリングやフェイルセーフ機構等が不要になって構造の簡素化や低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るステアリング装置の車室側部分を示す側面図である。
【図2】実施形態に係る衝撃吸収式ステアリングコラム装置を示す側面図である。
【図3】同装置を示す平面図(図2中のA矢視図)である。
【図4】図2中の拡大B-B断面図である。
【図5】図2中の拡大C-C断面図である。
【図6】図2中の拡大D-D断面図である。
【図7】図6中のE-E断面図である。
【図8】図6中のF-F断面図である。
【図9】実施形態の作用を示す説明図である。
【図10】ステアリングコラムが脱落する状態を示した側面図である。
【図11】図10中のG矢視図である。
【図12】実施形態の作用を示す説明図である。
【図13】ステアリングコラムの移動量と作動荷重との関係を示すグラフである。
【図14】実施形態の作用を示す説明図である。
【図15】実施形態の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1‥‥衝撃吸収式ステアリングコラム装置
3‥‥車体側メンバ
9‥‥アッパステアリングシャフト
11‥‥ステアリングホイール
21‥‥ステアリングコラム
23‥‥コラムチューブ
25‥‥アッパディスタンスブラケット
27‥‥ロアディスタンスブラケット
31‥‥チルトブラケット
33‥‥チルトボルト
51‥‥ピボットブラケット
53‥‥ピボットボルト
61‥‥エネルギ吸収プレート
63‥‥可変しごき装置
67‥‥ハウジング
69‥‥スライドブロック
70‥‥ECU
71‥‥電磁アクチュエータ
81‥‥ヨーク
83‥‥プランジャ
85‥‥第1コイル
87‥‥第2コイル
89‥‥永久磁石
91‥‥第1固定鉄芯
93‥‥第2固定鉄芯
95‥‥ロッド部
101,103‥‥ガイドプレート
105,107‥‥U字状凹部
109,111‥‥U字曲げ部
113‥‥固定側しごきピン
115‥‥移動側しごきピン
121,123‥‥長孔
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-05-20 
結審通知日 2019-05-23 
審決日 2019-06-04 
出願番号 特願2000-307709(P2000-307709)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 智洋  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
岡▲さき▼ 潤
登録日 2010-06-11 
登録番号 特許第4524899号(P4524899)
発明の名称 衝撃吸収式ステアリングコラム装置  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  
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