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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1352575 |
審判番号 | 不服2018-8830 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-27 |
確定日 | 2019-06-13 |
事件の表示 | 特願2015-508169「血液状態評価装置、血液状態評価システム、血液状態評価方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/156370〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)2月18日(優先権主張 平成25年3月29日)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月15日付けで手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年6月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年6月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明について、平成29年12月4日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「 【請求項1】 2以上の周波数又は周波数帯域における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する評価部 を少なくとも備え、 前記電気特性は、インピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量から選択される少なくとも1種の値である、 血液状態評価装置。」 を、 「 【請求項1】 少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する評価部 を少なくとも備え、 前記電気特性は、インピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量から選択される少なくとも1種の値であり、 前記2つ以上の異なる周波数は、3MHz以上30MHz以下の周波数と100kHz以上3MHz未満の周波数を有する、 血液状態評価装置。」 と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「血液の電気特性の経時変化データ」に係る「2以上の周波数」について、「少なくとも2つ以上の異なる周波数」であって、「3MHz以上30MHz以下の周波数と100kHz以上3MHz未満の周波数を有する」との限定を付加することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とする補正を含んでいる。 2 独立特許要件についての検討 (1)そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 (2)引用文献の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2012-194087号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。 (引1-ア)「【技術分野】 【0001】 本技術は、血液凝固系解析方法および血液凝固系解析装置に関する。より詳しくは、血液の凝固過程で測定される複素誘電率スペクトルに基づいて血液の凝固能に関する情報を取得する血液凝固系解析方法に関する。」 (引1-イ)「【0015】 1.血液凝固系解析方法 (1)測定手順 測定手順では、血液に電圧を印加するための電極を備えた容器内に解析対象とする血液(以下、「サンプル血」と称する)を保持し、電極に交番電流を印加して、サンプル血の複素誘電率を測定する。 【0016】 本手順では、サンプル血について、血小板を活性化あるいは不活化する物質を添加した条件と添加していない条件で測定を行う。血小板を活性化する物質(以下、「血小板活性化剤」と称する)には、アデノシン二リン酸(Adenosine diphosphate:ADP)やコラーゲン、アラキドン酸、エピネフリン、リストセチン、トロンボキサンA_(2)(TXA_(2))、アドレナリンなどを用いることができる。また、血小板を不活化する物質(以下、「血小板不活化剤」と称する)には、アセチルサリチル酸、GPIIb/IIIa阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、チエノピリジン誘導体、プロスタグランジン製剤などを用いることができる。以下、血小板活性化剤および血小板不活化剤を総称して「血小板活性化剤等」という。 【0017】 測定結果は、周波数および時間、誘電率を各座標軸とする三次元の複素誘電率スペクトル(図1)、あるいは周波数および時間、誘電率から選択される2つを各座標軸とする二次元の複素誘電率スペクトル(図2)として得ることができる。図中Z軸は、各時間および各周波数における複素誘電率の実数部を示している。 【0018】 図2は、図1に示す三次元スペクトルを周波数760kHzで切り出した二次元スペクトルに対応する。図2中符号(A)は赤血球の連銭形成に伴うピークであり、(B)は血液凝固過程に伴うピークである。 【0019】 本発明者らは、上記特許文献1において、血液の誘電率の時間的変化が血液の凝固過程を反映することを明らかにしている。従って、本手順で得られる複素誘電率スペクトルは血液の凝固能を定量的に表す指標となるものであり、その変化に基づけば凝固時間、凝固速度、凝固強度などの血液の凝固能に関する情報を得ることが可能である。 【0020】 なお、本手順に先立って、サンプル血の採取手順が行われる場合がある。採取手順では、血液凝固系の解析対象とする被検者から通常の方法に従って採血を行う。 【0021】 (2)解析手順 解析手順では、測定手順で測定されたサンプル血の複素誘電率スペクトルに基づいて、サンプル血の凝固能に関する情報を取得する。具体的には、まず、血小板活性化剤等を添加したサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルと添加していないサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルとを比較する。そして、血小板活性化剤等の添加により生じた複素誘電率スペクトルの変化に基づいて、サンプル血の凝固能に関する情報を取得する。 【0022】 血小板活性化剤等を添加していないサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルは、複数の要因が関与する血液の凝固能を総合的に反映していると考えられる。すなわち、複素誘電率スペクトルには、血小板の凝固能による血液凝固、血漿や血球成分の凝固作用による血液凝固、測定中に起こり得る血沈の影響による血液凝固が総合的に反映されている。本技術に係る血液凝固系解析方法では、血小板活性化剤等を用いることにより、これらの要因の中から特に血小板の凝固能に関する情報を切り分けて取得することが可能とされている。以下、血小板活性化剤を用いる場合と血小板不活化剤を用いる場合とに分けて、解析手順の具体的な内容を説明する。 【0023】 (2-1)血小板活性化剤を用いる場合 血液に血小板活性化剤を添加すると、血小板の活性化によって血液凝固反応が加速し、血液凝固時間が短縮する。このため、血小板活性化剤を添加した血液の複素誘電率スペクトルでは、添加していない血液の複素誘電率スペクトルに比べて、血液凝固に伴うスペクトルピークpが出現するまでの時間(血液凝固時間)tが短縮する(図3参照)。図中、符号p_(0)およびt_(0)は血小板活性化剤を添加しない場合のスペクトルピークと血液凝固時間を、符号p_(1)およびt_(1)は血小板活性化剤を添加した場合のスペクトルピークと血液凝固時間を示す。 【0024】 従って、この血液凝固時間tの短縮幅△t(t_(0)-t_(1))に基づけば、サンプル血中に不活性な状態で含まれていた血小板の凝固能の程度についての情報を得ることができる。すなわち、サンプル血中に含まれる不活性な血小板の凝固能が高い場合、血小板活性化剤により血小板を活性化したサンプル血では血液凝固反応が大幅に加速し、血液凝固時間も大きく短縮する。一方、サンプル血中に含まれる不活性な血小板の凝固能が低い場合、血小板活性化剤により血小板を活性化しても血液凝固反応の反応速度がほとんど変化しないため、血液凝固時間の短縮もみられない。 【0025】 正常な凝固能を有することが予め分かっている血液を用いて、基準となる血液凝固時間の短縮幅△t_(s)(基準値)を設定しておけば、サンプル血の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きいか小さいかによって血小板の凝固能の良否を判定できる。すなわち、サンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きい場合には血小板の凝固能は高いと評価でき、逆に小さい場合には血小板の凝固能が低いと評価できる。 【0026】 血小板機能異常症や血小板減少症の患者や、アセチルサリチル酸などの抗血小板凝集薬やワルファリンやヘパリン、活性化血液凝固第X因子(Factor Xa)阻害剤などの抗凝固薬の服用者では血小板の凝固能(止血能力)が低下し出血リスクが高まる。このため、これらの患者等では血小板の凝固能を適時に評価しながら疾患管理や投薬管理を行う必要がある。 【0027】 本技術に係る血液凝固系解析方法では、上述のように血小板活性化剤の添加による複素誘電率スペクトルの変化(具体的には、血液凝固時間の短縮幅△t)に基づき、血小板の凝固能を簡便に評価できる。このため、本技術に係る血液凝固系解析方法は、血小板機能異常症や血小板減少症の患者の血小板機能の評価のために有用である。また、本技術に係る血液凝固系解析方法を用いて、抗血小板凝集薬あるいは抗凝固薬の服用者の血小板機能を評価すれば、過剰投薬による凝固能の過度な減少や、投薬量不足による凝固能の亢進状態の持続などを把握するなどの薬効評価も可能となる。」 (引1-ウ)「【0030】 (2-2)血小板不活化剤を用いる場合 血液に血小板不活化剤を添加すると、血液中に含まれる活性化した血小板による血液凝固作用が抑制され、凝固反応速度が低下し、血液凝固時間が延長する。このため、血小板不活化剤を添加した血液の複素誘電率スペクトルでは、添加していない血液の複素誘電率スペクトルに比べて、血液凝固に伴うスペクトルピークpが出現するまでの時間(血液凝固時間)tが遅延する(図6参照)。図中、符号p_(0)およびt_(0)は血小板不活化剤を添加しない場合のスペクトルピークと血液凝固時間を、符号p_(2)およびt_(2)は血小板不活化剤を添加した場合のスペクトルピークと血液凝固時間を示す。 【0031】 従って、この血液凝固時間tの遅延幅△t(t_(2)-t_(0))に基づけば、サンプル血中に活性な状態で含まれていた血小板の凝固能の程度についての情報を得ることができる。すなわち、血小板不活化剤の添加により血液凝固時間が大きく遅延した場合、サンプル血中の血小板の凝固能が高く、サンプル血中に多量の活性化した血小板が含まれているといえる。一方、血小板不活化剤を添加しても血液凝固時間がほとんど変化しない場合、サンプル血中の血小板の凝固能が低く、サンプル血中に活性化した血小板がほとんど含まれていないといえる。 【0032】 正常な凝固能を有することが予め分かっている血液を用いて、基準となる血液凝固時間の短縮幅(当審注:血小板不括化剤を用いる場合に関する段落【0030】ないし【0033】の他の箇所の記載では、Δtを遅延幅と表記していることから、「短縮幅」は「遅延幅」の誤記と認める。)△t_(s)(基準値)を設定しておけば、サンプル血の血液凝固時間の遅延幅△tが△ts(基準値)よりも大きいか小さいかによって血小板の凝固能の良否を判定できる。すなわち、サンプル血中の血液凝固時間の遅延幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きい場合には血小板の凝固能は高いと評価でき、逆に小さい場合には血小板の凝固能が低いと評価できる。 【0033】 本技術に係る血液凝固系解析方法では、このように血小板不活化剤の添加による複素誘電率スペクトルの変化(具体的には、血液凝固時間の遅延幅△t)に基づき、血小板の凝固能を簡便に評価できる。このため、本技術に係る血液凝固系解析方法は、血栓症のリスクを有する糖尿病などの患者や妊婦などの健常者の血小板機能を評価して、本来活性化されるべきでない血小板がどの程度活性化されているのかを調べるために有用である。」 (引1-エ)「【0035】 2.血液凝固系解析装置 (1)装置の全体構成 図7に、本技術に係る血液凝固系解析装置の概略構成を示す。 【0036】 血液凝固系解析装置は、血液を保持するサンプルカートリッジ2と、サンプルカートリッジ2に保持された血液に電圧を印加する一対の電極11,12と、電極11,12に交流電圧を印加する電源3と、血液の誘電率を測定する測定部41と、を備える。測定部41は、測定部41からの測定結果の出力を受けて血液の凝固能を判定する解析部42とともに、信号処理部4を構成している。 【0037】 サンプルカートリッジ2には、保持された血液に血小板活性化剤等を添加するための薬剤導入口を設けてもよい。血液は、予め血小板活性化剤等と混合した後にサンプルカートリッジ2に収容してもよい。 【0038】 電源3は、測定を開始すべき命令を受けた時点または電源が投入された時点を開始時点として電圧を印加する。具体的には、電源3は、設定される測定間隔ごとに、電極11,12に対して所定の周波数の交流電圧を印加する。 【0039】 測定部41は、測定を開始すべき命令を受けた時点または電源が投入された時点を開始時点として複素誘電率およびその周波数分散などを測定する。具体的には、例えば誘電率が測定される場合、測定部41は、電極11,12間における電流またはインピーダンスを所定周期で測定し、測定値から誘電率を導出する。誘電率の導出には、電流またはインピーダンスと誘電率との関係を示す既知の関数や関係式が用いられる。 【0040】 解析部42には、測定部41から導出された誘電率を示すデータ(以下、「誘電率データ」とも称する)が測定間隔ごとに与えられる。解析部42は、測定部41から与えられる誘電率データを受けて血液の凝固能判定等を開始する。解析部42は、凝固能判定等の結果および誘電率データの一方または双方を通知する。この通知は、例えば、グラフ化してモニタに表示あるいは所定の媒体に印刷することにより行われる。 【0041】 (2)解析部 次に、解析部42による血液の凝固能の判定ステップの具体例を説明する。 【0042】 解析部42は、測定部41から出力される誘電率データに基づいて、血小板活性化剤等を添加したサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルと添加していないサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルとの比較処理を行い、スペクトルパターンの相違に基づいてサンプル血の凝固能を判定する。 【0043】 まず、解析部42は、血小板活性化剤等を添加したサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルと添加していないサンプル血で測定された複素誘電率スペクトルのスペクトルパターンを比較する。スペクトルパターンの比較は比較対象とする複素誘電率スペクトルから抽出した特徴量に基づいて行うことができ、この特徴量の違いからスペクトルパターンの相違を検出できる。特徴量には、例えば、血液凝固に伴うスペクトルピークが出現するまでの時間(血液凝固時間)が用いられる。 【0044】 この場合、解析部42は、血小板活性化剤等を添加したサンプル血の血液凝固時間の短縮幅(あるいは遅延幅)△tが基準値(△t_(s))よりも大きいか小さいかによって血小板の凝固能の良否を判定する。すなわち、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きい場合には血小板の凝固能は高いと判定し、逆に小さい場合には血小板の凝固能が低いと判定する。また、あるいは、血小板不活化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の遅延幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きい場合には血小板の凝固能は高いと判定し、逆に小さい場合には血小板の凝固能が低いと判定する。 【0045】 [凝固能の亢進] 解析部42は、血小板活性化剤等を添加していないサンプル血の血液凝固時間tが基準値(t_(s))よりも短い場合、血液凝固能が高いと判定し、結果を通知する。この結果は、血栓症のリスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。 【0046】 この場合、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きいときには、解析部42は、血小板の凝固能が高いと判定し、血液凝固能の亢進が血小板の凝固能の異常な上昇によるものであると判定する。この判定結果は、血小板機能の異常による血栓症リスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。 【0047】 他方、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも小さいときには、解析部42は、血小板の凝固能は低いと判定し、血液凝固能の亢進が血小板機能とは無関係に生じているものであると判定する。この判定結果は、血小板機能以外の異常による血栓症リスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。 【0048】 [凝固能の低下] 一方、解析部42は、血小板活性化剤等を添加していないサンプル血の血液凝固時間tが基準値(t_(s))よりも長い場合、解析部42は、血液凝固能が低いと判定し、結果を通知する。この結果は、出血傾向のリスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。 【0049】 この場合、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも小さいときには、解析部42は、血小板の凝固能が低いと判定し、血液凝固能の低下が血小板の凝固能の異常な低下によるものであると判定する。この判定結果は、血小板機能の異常による出血傾向リスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。 【0050】 他方、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きいときには、解析部42は、血小板の凝固能は高いと判定し、血液凝固能の低下が血小板機能とは無関係に生じているものであると判定する。この判定結果は、血小板機能以外の異常による出血傾向リスクとしてモニタや所定の媒体に表示され得る。」 (引1-オ)「【実施例】 【0054】 <試験例1> 1.血小板活性化剤を用いた血液凝固系解析方法 健常者および血小板減少症の患者のサンプル血を用いて、血小板活性化剤の添加が及ぼす血液の凝固能への影響を検討した。 【0055】 (1)材料と方法 (1-1)採血およびサンプル調製 クエン酸ナトリウムを抗凝固剤として処理した真空採血管を用いて、健常者および血小板減少症の患者(血液1μL中の血小板数1.2×10^(4)個)から採血を行い、全血サンプルとした。 また、全血サンプルから血球および血小板を分離し、血小板除去血漿を調製した。サンプル血を500G、5分の条件で遠心分離し、血球と多血小板血漿(PRP)とに分離した。血漿を2000G、30分の条件で遠心分離し、血小板を沈降させて、血小板除去血漿(PPP)を得た。 【0056】 (1-2)誘電測定 37℃に保温したサンプル血に0.25M塩化カルシウム水溶液を添加(血液1mLあたり85μL)し、血液凝固反応を開始させた。血小板活性化剤(ADP)は、塩化カルシウム水溶液に混合して添加した(血液1mLあたり10μM)。血液凝固反応開始直後、インピーダンスアナライザー(アジレント社、4294A)を用いて、温度37℃、周波数域40Hz?110MHz、測定時間間隔1分の条件で60分間測定を行った。 【0057】 (1-3)レオメーターによる測定 自由減衰振動型のレオメーターを用いて測定した。粘弾性の変化を観測することで凝固時間を求め、誘電測定による結果と比較した。 【0058】 (2)結果 図8にADPを添加していない健常者のサンプル血の誘電応答結果を、図9にADPを添加した健常者のサンプル血の誘電応答結果を示す。図中Z軸は、各時刻および各周波数における複素誘電率の実数部を、時刻ゼロ(測定開始直後)での各周波数における複素誘電率の実数部で除算し、規格化して表示している。図8と図9を比較すると、ADPの添加によって誘電応答の三次元パターンが明らかに変化しているのが分かる。 【0059】 図10に、周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化を示す。符号(-)はADPを添加していないサンプル血の誘電応答、符号(+)はADPを添加したサンプル血の誘電応答を示す。ADPを添加した場合、血液凝固に対応する誘電率のステップ状変化は、ADPを添加しない場合に比較して、短時間側にシフトしていることが分かる。このようなADP添加による凝固時間の短縮は、複数の健常者のサンプル血で共通して観測された。ADP添加時の凝固時間の平均値は17分、非添加時の凝固時間の平均値は31分であった。 【0060】 図11に、血小板減少症患者のサンプル血の周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化を示す。符号(-)はADPを添加していないサンプル血の誘電応答、符号(+)はADPを添加したサンプル血の誘電応答を示す。ADP添加によって凝固時間の短縮がみられるものの、凝固時間は38分であり、健常者の凝固時間の平均値17分と比べて明らかに長いことが分かった。これはサンプル血中の血小板数が少ないために、ADPによる血液凝固反応の促進が限定的であったためと考えられる。」 (引1-カ)【図1】 「 」 (引1-キ)【図2】 「 」 (引1-ク)【図3】 「 」 (引1-ケ)【図6】 「 」 (引1-コ)【図7】 「 」 (引1-サ)【図8】 「 」 (引1-シ)【図9】 「 」 (引1-ス)【図10】 「 」 (引1-セ)【図11】 「 」 イ 引用文献1に記載された発明の認定 (ア)(引1-イ)に記載された「血液凝固系解析方法」は、(引1-エ)に記載された「血液凝固系解析装置」を用いて行うことができるものと認められるところ、(引1-イ)の段落【0017】に「測定結果は、周波数および時間、誘電率を各座標軸とする三次元の複素誘電率スペクトル(図1)、あるいは周波数および時間、誘電率から選択される2つを各座標軸とする二次元の複素誘電率スペクトル(図2)として得ることができる。」、(引1-エ)の段落【0039】に「測定部41は、測定を開始すべき命令を受けた時点または電源が投入された時点を開始時点として複素誘電率およびその周波数分散などを測定する。」とそれぞれ記載されていることから、測定部41は、複数の周波数における複素誘電率を測定し、測定結果として周波数、時間及び誘電率を各座標軸とする三次元の複素誘電率スペクトルを得ることができるものであると認められる。 そして、(引1-オ)に記載された実施例において、段落【0056】に「インピーダンスアナライザー(アジレント社、4294A)を用いて、温度37℃、周波数域40Hz?110MHz、測定時間間隔1分の条件で60分間測定を行った。」と記載されていることから、測定部41は周波数域40Hz?110MHzでの測定を行うインピーダンスアナライザーを包含しているものと認められる。 (イ)また、(引1-エ)の段落【0043】に「特徴量には、例えば、血液凝固に伴うスペクトルピークが出現するまでの時間(血液凝固時間)が用いられる。」と記載されているところ、(引1-イ)の段落【0018】に「図2は、図1に示す三次元スペクトルを周波数760kHzで切り出した二次元スペクトルに対応する。図2中符号(A)は赤血球の連銭形成に伴うピークであり、(B)は血液凝固過程に伴うピークである。」と記載されていることから、段落【0043】に記載された「血液凝固に伴うスペクトルピークが出現するまでの時間(血液凝固時間)」は、段落【0018】に記載されているように、「三次元スペクトルを周波数760kHzで切り出した二次元スペクトル」から求めるものと認められる。 (ウ)そうすると、(引1-ア)ないし(引1-セ)の記載から、引用文献1には、 「 血液を保持するサンプルカートリッジ2と、サンプルカートリッジ2に保持された血液に電圧を印加する一対の電極11,12と、電極11,12に交流電圧を印加する電源3と、血液の誘電率を測定する測定部41と、測定部41からの測定結果の出力を受けて血液の凝固能を判定する解析部42と、を備える血液凝固系解析装置であって、 測定部41は、解析部42とともに、信号処理部4を構成しており、 測定部41は、周波数域40Hz?110MHzで電極11,12間におけるインピーダンスを所定周期で測定するインピーダンスアナライザーを包含しており、測定値から誘電率を導出し、測定結果として周波数、時間及び誘電率を各座標軸とする三次元の複素誘電率スペクトルを得ることができ、三次元複素誘電率スペクトルを周波数760kHzで切り出した二次元複素誘電率スペクトルを得ることができ、 解析部42は、測定部41から与えられる誘電率データを受けて血液の凝固能判定等を開始し、凝固能判定等の結果及び誘電率データの一方又は双方を、グラフ化してモニタに表示あるいは所定の媒体に印刷することにより通知するものであり、 解析部42による血液の凝固能の判定ステップは、二次元複素誘電率スペクトルにおいて血液凝固に伴うスペクトルピークが出現するまでの時間(血液凝固時間)を特徴量とし、 (A) 血小板活性化剤等を添加していないサンプル血の血液凝固時間tが基準値(t_(s))よりも短い場合、血液凝固能が高いと判定し、 (A-1) 血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きいときには、血小板の凝固能が高いと判定し、血液凝固能の亢進が血小板の凝固能の異常な上昇によるものであると判定し、この判定結果を、血小板機能の異常による血栓症リスクとしてモニタや所定の媒体に表示し、 (A-2) 他方、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも小さいときには、血小板の凝固能は低いと判定し、血液凝固能の亢進が血小板機能とは無関係に生じているものであると判定し、この判定結果を、血小板機能以外の異常による血栓症リスクとしてモニタや所定の媒体に表示し、 (B) 血小板活性化剤等を添加していないサンプル血の血液凝固時間tが基準値(t_(s))よりも長い場合、血液凝固能が低いと判定し、 (B-1) 血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも小さいときには、血小板の凝固能が低いと判定し、血液凝固能の低下が血小板の凝固能の異常な低下によるものであると判定し、この判定結果を、血小板機能の異常による出血傾向リスクとしてモニタや所定の媒体に表示し、 (B-2) 他方、血小板活性化剤を添加したサンプル血中の血液凝固時間の短縮幅△tが△t_(s)(基準値)よりも大きいときには、血小板の凝固能は高いと判定し、血液凝固能の低下が血小板機能とは無関係に生じているものであると判定し、この判定結果を、血小板機能以外の異常による出血傾向リスクとしてモニタや所定の媒体に表示する、 血液凝固系解析装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)本願補正発明と引用発明との対比 ア (ア)引用発明の「血液」の「誘電率」は、本願補正発明の「血液の電気特性」に相当する。 (イ)引用発明の「血液の凝固能を判定する」ことは、「判定ステップ」において「血液凝固に伴うスペクトルピークが出現するまでの時間(血液凝固時間)を特徴量」としている。 他方、本願の発明の詳細な説明の段落【0027】の「評価部3は、前述した測定部2により測定された電気特性のうち、2以上の周波数又は2以上の周波数帯域における経時変化データに基づいて血液の状態を評価する。ここで、評価対象とする血液の状態としては、例えば血液の凝固状態、凝集状態、沈降状態及び血餅縮退状態が挙げられる。」との記載から、本願補正発明の「血液の状態を評価する」ことは、「血液の凝固状態」を評価することを含んでいる。 そうすると、引用発明の「血液の凝固能を判定する」ことは、本願補正発明の「血液の状態を評価する」ことに相当する。 (ウ) a 引用発明における「周波数域40Hz?110MHz」での「インピーダンス」の「測定」は、「周波数域40Hz?110MHz」において多数の周波数に対して行うものと認められることから、得られる「三次元複素誘電率スペクトル」は、複数の周波数における二次元複素誘電率スペクトルの集合であるといえる。 ここで、特定の周波数における「二次元複素誘電率スペクトル」は、特定の周波数における複素誘電率の時間変化を表すものである。 b 引用発明の「解析部42」が「判定ステップ」で用いる「二次元複素誘電率スペクトル」は、「周波数域40Hz?110MHz」での測定で得られた「周波数、時間及び誘電率を各座標軸とする三次元の複素誘電率スペクトル」から「周波数760kHzで切り出した」ものである。 そして、引用発明において「周波数域40Hz?110MHzで」の測定により得られた複数の周波数における二次元複素誘電率スペクトルの集合であるといえる「三次元の複素誘電率スペクトル」から「周波数760kHzで切り出した二次元複素誘電率スペクトル」を使用して「血液の凝固能を判定する」ことは、複数の周波数における二次元複素誘電率スペクトルの集合の中から特定の二次元複素誘電率スペクトルを選択して血液の凝固能を判定することであるから、本願補正発明における「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する」ことに含まれる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明において「周波数域40Hz?110MHzで」の測定により得られた複数の周波数における二次元複素誘電率スペクトルの集合であるといえる「三次元の複素誘電率スペクトル」から「周波数760kHzで切り出した二次元複素誘電率スペクトル」を使用して「血液の凝固能を判定する解析部42」「を備える」ことは、本願補正発明の「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する評価部を少なくとも備え」ることに相当する。 イ 本願補正発明の「前記電気特性は、インピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量から選択される少なくとも1種の値であり」は、「前記電気特性は、誘電率の値であり」を包含しているから、引用発明において「誘電率」を用いていることは、本願補正発明の「前記電気特性は、インピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量から選択される少なくとも1種の値であ」ることに相当する。 ウ 引用発明における「周波数域40Hz?110MHzで」の測定が、3MHz未満の周波数における測定及び3MHz以上の周波数における測定の双方を行うものであることは明らかであるから、引用発明の測定が「周波数域40Hz?110MHz」で行われることは、本願補正発明の「前記2つ以上の異なる周波数は、3MHz以上30MHz以下の周波数と100kHz以上3MHz未満の周波数を有する」ことに相当する。 エ 上記ア(イ)を踏まえると、引用発明の「血液凝固系解析装置」は、本願補正発明の「血液状態評価装置」に相当する。 オ 以上のとおりであるから、本願補正発明と引用発明との間に相違点は存在しない。 よって、本願補正発明は、引用発明である。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)上記(3)の対比では、本願補正発明の「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する」ことは、「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データ」のうちの1つを使用して「前記血液の状態を評価する」ことを包含するものとして対比を行ったが、以下、これに加えて、本願補正発明の「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する」ことは、「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データ」を使用して「前記血液の状態を評価する」ことを包含するものとした場合について、検討する。 ア 本願補正発明と引用発明とは、 「 ある周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する評価部 を少なくとも備え、 前記電気特性は、インピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量から選択される少なくとも1種の値であり、 前記ある周波数は、100kHz以上3MHz未満の周波数を有する、 血液状態評価装置。」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 血液の状態を評価する評価部が血液の状態を評価する際に使用する、ある周波数における血液の電気特性の経時変化データが、本願補正発明においては、「3MHz以上30MHz以下の周波数と100kHz以上3MHz未満の周波数を有する」「少なくとも2つ以上の異なる周波数」におけるものであるのに対し、引用発明においては、「周波数760kHz」のもののみであり、3MHz以上30MHz以下の周波数におけるデータを使用していない点。 イ 上記相違点1について検討する。 (引1-オ)の段落【0058】ないし【0060】には、周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化から求めたADP(血小板活性化剤)添加時の凝固時間は、血小板減少症患者の場合、健常者に比べて明らかに長いこと、そして、その原因は、サンプル血中の血小板数が少ないために、ADPによる血液凝固反応の促進が限定的であったためと考えられる旨の記載がある。 (引1-オ)の上記記載は、周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化から求めたADP(血小板活性化剤)添加時の凝固時間が、血小板数を評価するための指標となることを示唆するものといえる。 ここで、(引1-オ)の「周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化」は、本願補正発明の「3MHz以上30MHz以下の周波数」「における血液の電気特性の経時変化データ」に相当する。 そして、医学病理試験において、複数の試験項目に関する試験結果を用いて総合的な判定を行うことが有意義であることは、本願の優先権主張日当時における技術常識であり、血小板機能の異常を含む血液の凝固能を判定する引用発明において、血小板数の評価もできるようにすることには、十分な動機付けがあるといえる。 そうすると、周波数760kHzで切り出した二次元複素誘電率スペクトルを用いて、血小板機能の異常を含む血液の凝固能を判定する引用発明において、解析部42を、周波数10.7MHzにおける複素誘電率の時間変化から求めたADP(血小板活性化剤)添加時の凝固時間から、血小板数を評価することもできるようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得ることである。 ウ 本願補正発明の奏する作用効果 本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。 エ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「(2)補正後の発明の特許性について」において、「引用文献1には、本開示に係る血液状態評価装置のように、少なくとも、高周波数帯域の周波数に基づくデータと、これよりも低い周波数帯域の周波数に基づくデータと、を組み合わせて血液の状態を評価する点については、記載も示唆すらもされていません。」「本開示に係る血液状態評価装置においては、少なくとも2つ以上の異なる周波数である、高周波数帯域(3MHz以上30MHz以下)の周波数と、これよりも低い周波数帯域(100kHz以上3MHz未満)の周波数と、を用い、これらから得られるデータに基づいて血液の状態を評価するため、血栓症のリスクをより簡便かつ精度よく評価することが可能となるという優れた効果が奏されます」と主張する。 しかしながら、本願補正発明の「少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データに基づいて前記血液の状態を評価する」により、少なくとも2つ以上の異なる周波数における血液の電気特性の経時変化データを組み合わせて前記血液の状態を評価することが特定されているとは認められない(下線は当審において付加した。)。 さらに、本願補正発明においては、「血栓症のリスク」を評価することも特定されていない。 そうすると、請求人の上記主張は、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づいたものではないから、採用することができない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年6月27日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年12月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に記載のとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 (新規性)この出願の請求項1、7-9、11-12に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (進歩性)この出願の請求項1-12に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2012-194087号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本願補正発明から、「血液の電気特性の経時変化データ」に係る「少なくとも2以上の周波数」について、「異なる」ものであるとともに「3MHz以上30MHz以下の周波数と100kHz以上3MHz未満の周波数を有する」という限定事項を削除するとともに、「2以上の」「周波数帯域における血液の電気特性の経時変化データ」という選択肢を付加したものである。 そうすると、本願発明の一方の選択肢に係る発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明であり、また、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明であり、また、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-04-04 |
結審通知日 | 2019-04-09 |
審決日 | 2019-04-22 |
出願番号 | 特願2015-508169(P2015-508169) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N) P 1 8・ 575- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小澤 瞬 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 血液状態評価装置、血液状態評価システム、血液状態評価方法及びプログラム |
代理人 | 渡邊 薫 |