• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352578
審判番号 不服2018-13694  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-15 
確定日 2019-06-13 
事件の表示 特願2014-119695号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月24日出願公開、特開2015-231477号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月10日の出願であって、平成30年3月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年5月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年7月26日付け(発送日:平成30年7月31日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年10月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年10月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技盤上にレールを設置することにより、前記レールで囲まれた遊技域を有する遊技機であって、
前記遊技域のうち、前記レールに誘導される遊技球が通過する領域に設置され、前記遊技球が遊技盤上から乗り上がる遊技球通過部を備え、
前記遊技球通過部が有する辺であって、前記遊技球が前記遊技盤上から前記遊技球通過部上に乗り上げる乗上辺に形成された斜面は、
前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し放物線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進むように構成されたことを特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項1】
遊技盤上にレールを設置することにより、前記レールで囲まれた遊技域を有する遊技機であって、
前記遊技域のうち、前記レールに誘導される遊技球が通過する領域に設置され、前記遊技球が遊技盤上から乗り上がる遊技球通過部を備え、
前記遊技球通過部が有する辺であって、前記遊技球が前記遊技盤上から前記遊技球通過部上に乗り上げる乗上辺に形成された斜面は、
前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し放物線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進み、前記斜面における最も高い位置を通過するように構成されたことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「乗上辺に形成された斜面」に関して、「遊技球が、・・・前記斜面を登る方向に進み、前記斜面における最も高い位置を通過するように構成され」ると限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、本願の出願当初明細書の段落【0030】、【0032】、図1、2に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2013-252272号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、センター役物の外周部には、「台板」と呼ばれる遊技盤への固定構造が設けられている。この台板を貫通するネジ挿通孔にネジを挿通し、挿通したネジの先端部を遊技盤に螺着することにより、センター役物が遊技領域に装着される。
【0005】
ところが、上記したように、センター役物は近年大型化する傾向にあり、これに伴って遊技盤に対する遊技領域の割合は小さくなる傾向にあるため、遊技盤への台板の取り付けが困難になる場合がある。詳述すると、センター役物を遊技盤に強固に固定するためには、台板を大型化し、台板と遊技盤面との接触面積を大きくすることが好ましい。しかし、台板を大型化すると、台板の存在によって遊技領域がより小さくなってしまうため、現状では、台板を小さく形成せざるを得ない。この場合、台板の強度、ひいては、センター役物の固定強度が低下してしまうため、大型化によって重くなったセンター役物を支えるためにも、台板を肉厚に形成するなどして強度を確保する必要がある。
【0006】
しかしながら、台板を肉厚に形成すると、遊技盤面から手前側への台板の突出量が大きくなってしまう。また、特に遊技球を右打ちする場合には、操作ハンドルを右に回すことによって遊技球が高速で打ち出されるため、発射速度が大変速い状態にある。従って、センター役物の上側にある遊技球通過経路の入口部分の台板に対して、遊技領域に発射された遊技球が強い勢いで衝突する可能性があるため、台板が破損したり、遊技球が手前側に跳ね上げられるなどして遊技球の動きに悪影響を及ぼしたりするおそれがある。また、遊技球通過経路を流れる遊技球のスピードが低下するおそれもある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、台板の強度低下を防止しつつ、遊技球の動きに悪影響を与えることを防止できる遊技機を提供することにある。」

(1-b)「【0024】
以下、本発明の遊技機をパチンコ機10に具体化した一実施形態を図面に基づき説明する。
・・・
【0030】
図1,図2等に示されるように、板部材31の遊技盤面13aには、遊技球A1が流下可能な遊技領域32aを区画する円弧状の内レール33a及び外レール33bが敷設されている。内レール33aと外レール33bとの間に生じる発射経路には、操作ハンドル19を操作した際に発射された遊技球A1が通過するようになっている。そして、発射経路を通過した遊技球A1は、発射経路の終端部から遊技領域32aに進入し、遊技領域32a内を流下するようになっている。」

(1-c)「【0037】
さらに、図1,図2,図6?図10に示されるように、遊技領域32aの上部であって、外レール33bと上記したセンター役物50との間の領域には、発射装置によって発射された遊技球A1が通過する遊技球通過経路81の上流部分が構成されている。そして、遊技球通過経路81の下流部分は、第1飾り部材91とセンター役物50との間の領域に構成されている。また、遊技球通過経路81の入口部分は、遊技領域32aに植設された遊技釘35のうち最も上方にある遊技釘35aよりも上方に位置している。一方、遊技球通過経路81の出口部分は、遊技球通過経路81の下流部分の下端部に位置している。よって、本実施形態の遊技球通過経路81では、入口部分が上流となり、出口部分が下流となる。
・・・
【0041】
(3-1)台板60の構成
図1?図10に示されるように、センター役物50の外周部には、遊技盤13への取り付けの際に遊技盤面13aに当接する台板60が形成されている。台板60は、センター役物50の外周部において上側部(遊技球通過経路81の入口部分を含む)や右側部に形成されている。また、台板60は、樹脂材料(例えば、黒色に着色した透光性を有するABS樹脂等)の射出成形によって形成されている。
【0042】
図6?図10等に示されるように、台板60は、台板本体61、第1テーパ部62、第2テーパ部63及び第3テーパ部64を備えている。台板本体61は、裏面61aの外周側が遊技盤面13aに接するとともに、裏面61aの内周側が板部材31の開口部31aを臨むように配置されている。また、台板本体61の前面には、壁部61b(図3?図5参照)が開口部31aを包囲するように突設されている。なお、台板本体61の厚さは、2.0mm以上3.0mm未満(本実施形態では2.0mm)に設定されている。また、台板本体61において第1テーパ部62の近傍には、ネジ挿通孔65(図2,図3,図6?図8参照)が設けられている。なお、ネジ挿通孔65にネジ(図示略)を挿通し、挿通したネジの先端部を板部材31の張出部31b(図8参照)に螺着させる。また、台板本体61に設けられた複数のネジ挿通孔66(図2,図3参照)にネジを挿通し、挿通したネジの先端部を板部材31に螺着させる。その結果、台板60を備えたセンター役物50が遊技盤13に固定される。なお、ネジ挿通孔65,66は、テーパ部62?64ではなく、遊技盤面13aと平行な平面である台板本体61の前面において開口している。
・・・
【0044】
図6,図7,図10に示されるように、第2テーパ部63は、第1テーパ部62よりも遊技球通過経路81の下流側に位置し、遊技盤面13aに対して傾斜する平面である第2傾斜面63aを有している。第2テーパ部63の外周縁は、遊技球通過経路81側に凸となる湾曲形状をなしている。第2テーパ部63を垂直方向に切断したときに現われる斜辺63b(図10参照)の長さは、第1テーパ部62を垂直方向に切断したときに現われる斜辺62bの長さ(2.0mm)よりも長く、5.0mm以上10.0mm以下(本実施形態では5.0mm)に設定されている。また、第2テーパ部63を垂直方向に切断したときに現われる、遊技盤面13aに対して垂直な辺63c(図10参照)の長さ、即ち、第2テーパ部63において最も肉薄な部分の厚さは、本実施形態では0.5mmに設定されている。なお、斜辺63bが現われる第2傾斜面63aと辺63cが現われる先端面との境界部分は、曲面状の面取り部63d(図10参照)を介して接続されている。そして、第2傾斜面63aと遊技盤面13aとの接続部分は、第1傾斜面62aと遊技盤面13aとの接続部分よりも緩やかに連続している。換言すると、遊技盤面13aに対する第2傾斜面63aの傾斜角度θ2(図10参照)は、遊技盤面13aに対する第1傾斜面62aの傾斜角度θ1よりも小さく、1°以上29°以下(本実施形態では17°)に設定されている。」

(1-d)「【0050】
(A-2)図柄変動ゲームの終了後、特定の条件(大当り遊技状態、確率変動状態、変動時間短縮状態など)が付与されると、遊技者は、遊技球A1を第2ルートR2(図2参照)に向けて発射(いわゆる右打ち)する。この場合、遊技者は、操作ハンドル19を右に回すことによって遊技球A1を高速で打ち出されるため、遊技球A1の発射速度が大変速く、威力が強い。よって、発射装置によって発射されて遊技領域32aに進入した遊技球A1は、強い勢いを維持したままセンター役物50の上部中央付近に到達する。そして、遊技球A1は、台板60の第2テーパ部63の第2傾斜面63a上を通過し、遊技球通過経路81内に進入する(図6の矢印F1参照)。」

(1-e)「



(1-f)段落【0037】には、「遊技領域32aの上部であって、外レール33bと上記したセンター役物50との間の領域には、・・・遊技球A1が通過する遊技球通過経路81の上流部分が構成されている。」と記載され、段落【0041】には、「センター役物50の外周部には、遊技盤13への取り付けの際に遊技盤面13aに当接する台板60が形成されている。」と記載されている。
また、図6には、遊技球通過経路81に台板60が設置された点が示されている。
よって、引用例1には、遊技領域32aの上部であって、外レール33bとセンター役物50との間の遊技球A1が通過する遊技球通過経路81には、センター役物の外周部に形成された台板60が遊技盤面13aに当接して設置された点が記載されているといえる。

(1-g)段落【0044】には、「第2テーパ部63は、・・・遊技盤面13aに対して傾斜する平面である第2傾斜面63aを有している。」と記載されている。
また、図6、図10には、台板本体61と第2傾斜面63aとの間に辺が形成され、第2傾斜面63aが遊技球通過経路18内に形成された台板本体61の辺から傾斜していることが示されている。
よって、引用例1には、第2テーパー部63は、遊技球通過経路18内に形成された台板本体61の辺から遊技盤面13aに対して傾斜する第2傾斜面63aを有している点が記載されているといえる。

(1-h)図6には、第2傾斜面63aが、外レール33bに近づくほど幅が狭まり、遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線が外レール33bに対し曲線状に漸次近づく形状に形成されることが示されている。
また、図6において、遊技球A1の矢印F1の経路から、外レール33bに誘導される遊技球A1が、曲線状の第2傾斜面63aを登る方向に進むことが把握できる。さらに、遊技球A1が台板本体61の曲線状の辺を通過するように構成されていることが把握できる。
よって、引用例1には、第2傾斜面63aは、外レール33bに近づくほど幅が狭まり、遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線が外レール33bに対し曲線状に漸次近づく形状に形成され、外レール33bに誘導される遊技球A1が、曲線状の第2傾斜面63aを登る方向に進み、台板本体61の曲線状の辺を通過するように構成された点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-e)の記載事項及び(1-f)?(1-h)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「板部材31の遊技盤面13aに、遊技球A1が流下可能な遊技領域32aを区画する円弧状の外レール33bが敷設されているパチンコ機10であって(段落【0024】、【0030】)、
遊技領域32aの上部であって、外レール33bとセンター役物50との間の遊技球A1が通過する遊技球通過経路81には、センター役物の外周部に形成された台板60が遊技盤面13aに当接して設置され(認定事項(1-f))、
前記台板60は、台板本体61、第1テーパー部62、第2テーパー部63及び第3テーパー部64を備えており(段落【0042】)、第2テーパー部63は、遊技球通過経路18内に形成された台板本体61の辺から遊技盤面13aに対して傾斜する第2傾斜面63aを有しており(認定事項(1-g))、
遊技球A1は、台板60の第2テーパ部63の第2傾斜面63a上を通過して、遊技球通過経路81内に進入し(段落【0050】)、
前記第2傾斜面63aは、外レール33bに近づくほど幅が狭まり、遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線が外レール33bに対し曲線状に漸次近づく形状に形成され、外レール33bに誘導される遊技球A1が、曲線状の第2傾斜面63aを登る方向に進み、台板本体61の曲線状の辺を通過するように構成されたパチンコ機10(認定事項(1-h))。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「外レール33b」、「遊技領域32a」、「パチンコ機10」は、それぞれ、本願補正発明の「レール」、「遊技域」、「遊技機」に相当する。
よって、引用発明の「板部材31の遊技盤面13aに、遊技球A1が流下可能な遊技領域32aを区画する円弧状の外レール33bが敷設されているパチンコ機10」は、本願補正発明の「遊技盤上にレールを設置することにより、前記レールで囲まれた遊技域を有する遊技機」に相当する。

イ 引用発明の「台板60」は、「遊技球A1が通過する遊技球通過経路81に」「設置される」ものである。また、引用発明において「遊技球A1は、台板60の第2テーパ部63の第2傾斜面63a上を通過して、遊技球通過経路81内に進入」するから、引用発明の「台板60」は、遊技球A1が遊技球が乗り上がるものといえる。
したがって、引用発明の「台板60」は、本願補正発明の「遊技球通過部」に相当する。
よって、引用発明の「遊技領域32aの上部であって、外レール33bと上記したセンター役物50との間の遊技球A1が通過する遊技球通過経路81には、センター役物の外周部に形成された台板60が遊技盤面13aに当接して設置され」る点は、本願補正発明の「前記遊技域のうち、前記レールに誘導される遊技球が通過する領域に設置され、前記遊技球が遊技盤上から乗り上がる遊技球通過部を備え」る点に相当する。

ウ 引用発明の「台板60」は「台板本体61」を備えているから、「台板本体61の辺」とは、台板60が有する辺といえる。
また、上記イで検討したとおり、「台板60」は遊技球A1が乗り上がるものであるから、引用発明の「辺」は、本願補正発明の「乗上辺」に相当し、引用発明の「辺から遊技盤面13aに対して傾斜する第2傾斜面63a」は、本願補正発明の「乗上辺に形成された斜面」する。
よって、引用発明の「前記台板60は、台板本体61、第1テーパー部62、第2テーパー部63及び第3テーパー部64を備えており、第2テーパー部63は、遊技球通過経路18内に形成された台板本体61の辺から遊技盤面13aに対して傾斜する第2傾斜面63aを有して」いる点は、本願補正発明の「前記遊技球通過部が有する辺であって、前記遊技球が前記遊技盤上から前記遊技球通過部上に乗り上げる乗上辺に形成された斜面」を備える点に相当する。

エ 引用発明の「遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線」は、本願補正発明の「前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線」に相当する。
よって、引用発明の「前記第2傾斜面63aは、外レール33bに近づくほど幅が狭まり、遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線が外レール33bに対し曲線状に漸次近づく形状に形成され、外レール33bに誘導される遊技球A1が、曲線状の第2傾斜面63aを登る方向に進み、台板本体61の曲線状の辺を通過するように構成された」点と、本願補正発明の「斜面は、」「前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し放物線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進み、前記斜面における最も高い位置を通過するように構成された」点とは、「斜面は、」「前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し曲線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進むように構成された」点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「遊技盤上にレールを設置することにより、前記レールで囲まれた遊技域を有する遊技機であって、
前記遊技域のうち、前記レールに誘導される遊技球が通過する領域に設置され、前記遊技球が遊技盤上から乗り上がる遊技球通過部を備え、
前記遊技球通過部が有する辺であって、前記遊技球が前記遊技盤上から前記遊技球通過部上に乗り上げる乗上辺に形成された斜面は、
前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し曲線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進むように構成された遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
遊技盤の平坦面と斜面との境界を画定する画定線が形成される曲線に関して、本願補正発明は「放物線状」であるのに対し、引用発明は「曲線状」である点。

[相違点2]
斜面に関して、本願補正発明は、遊技球が「前記斜面における最も高い位置を通過する」ように構成されたのに対し、引用発明は、遊技球が「台板本体61の曲線状の辺を通過する」ように構成された点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明において、遊技盤面13aと前記第2傾斜面63aとの境界線(画定線)は外レール33bに対し曲線状に漸次近づく形状に形成されている。
そして、第2傾斜面63a上を遊技球が通過するから、上記境界線も遊技球が通過するものといえ、遊技球の通過する境界線の曲線形状を、どのような曲線とするかは当業者が適宜設定するものである。
また、本願明細書には、境界線を放物線状とすることに関する作用、効果についての記載はないから、本願補正発明において境界線を放物線状とした点に格別な効果は認められない。
よって、引用発明の境界線(画定線)を放物線状に構成し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用発明における「台板本体61」の曲線状の辺は、当該辺から遊技盤面13aに対して傾斜する第2傾斜面63aを有しているから、第2傾斜面63a(斜面)における最も高い位置となるものである。
そうすると、引用発明も遊技球が第2傾斜面63a(斜面)における最も高い位置を通過するように構成されているといえる。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点とはいえない。

ウ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、「引用文献1の図6に記載されているように、「遊技球A1」の進路を表す「矢印F1」及び「矢印F2」は、「傾斜面63a」における最も高い位置を表す線(「傾斜面63a」と「台板本体61」との境界線)よりも遥かに上方にありますので、「遊技球A1」は、「傾斜面63a」における最も高い位置を通過することはありません。」と主張する(審判請求書「(3)本願発明1と引用文献の記載と対比」)。
しかしながら、「遊技球A1」の進路を表す「矢印F1」及び「矢印F2」が、「傾斜面63a」と「台板本体61」との境界線(引用発明における「辺」)よりも遙かに上方にあったとしても、図6を見ると、引用発明における「辺」と外レール33bとの間隔は、遊技球A1の大きさよりも小さくなっており、当該「辺」は、遊技球A1が通過可能な範囲に設けられているから、遊技球A1は「辺」を通過しているといえる。
そして、上記請求人の主張における「通過」が、遊技球が辺に沿って移動することではなく、辺を横切ることのみを意図したものであったとしても、引用発明において、遊技球が「台板本体61の曲線状の辺を通過する」ように構成すると認定しているとおり、少なくとも辺における曲線状の部分は(横切るように)通過するものといえる。
さらに、上記請求人の主張が、(上下方向からみた)遊技球の全体が斜面の最も高い位置を通過するものではないというものであったとしても、引用発明において、台板60の幅や第2傾斜面63aの角度を設定することにより、遊技球の全体が斜面の最も高い位置を通過するように構成することは、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。

また、請求人は、「引用文献1の記載において、「矢印F1」又は「矢印F2」に沿って進んできた「遊技球A1」が「傾斜面63a」と「台板本体61」との境界線を通過すると、「遊技球A1」は、必然的に、同文献の図6において左上から右下に進み、「遊技球通過経路81」内に進入できないことになります。よって、引用文献1記載の発明に対し、「遊技球A1」が「傾斜面63a」における最も高い位置を通過する構成(上記相違点の構成)を適用する動機付けは全く無く、その適用には明白な阻害要因が存在します。」と主張する(審判請求書「(4)本願発明1の進歩性について」)。
しかしながら、上記のとおり、引用発明においては、遊技球が「台板本体61の曲線状の辺を通過する」ように構成すると認定しており(すなわち、遊技球A1が左上から右上に進んだ場合には台板本体61の曲線状の辺を通過する)、当該「曲線状の辺」は最も高い位置となるものであるから、その構成にさらに最も高い位置を通過する構成を適用する必要はない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成30年5月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
遊技盤上にレールを設置することにより、前記レールで囲まれた遊技域を有する遊技機であって、
前記遊技域のうち、前記レールに誘導される遊技球が通過する領域に設置され、前記遊技球が遊技盤上から乗り上がる遊技球通過部を備え、
前記遊技球通過部が有する辺であって、前記遊技球が前記遊技盤上から前記遊技球通過部上に乗り上げる乗上辺に形成された斜面は、
前記レールに近づくほど幅が狭まり、かつ、前記遊技盤の平坦面と前記斜面との境界を画定する画定線が前記レールに対し放物線状に漸次近づく形状に形成され、前記レールに誘導される遊技球が、前記斜面上を、前記斜面を登る方向に進むように構成されたことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、また、この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-252272号公報

3 刊行物
引用例1及びその記載事項、並びに引用発明は、上記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「乗上辺に形成された斜面」に関して、「遊技球が、・・・前記斜面を登る方向に進み、前記斜面における最も高い位置を通過するように構成され」るとの限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-04 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-23 
出願番号 特願2014-119695(P2014-119695)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 平城 俊雅
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ