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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1352759
審判番号 無効2018-800083  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-06-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第5304241号発明「癌の処置用のオメガ-カルボキシアリール置換ジフェニルウレアを含む医薬組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5304241号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成18年 2月22日 国際特許出願(パリ条約に基づく優先権主張 2005年 3月 7日 米国)
平成25年 7月 5日 特許権の設定登録
平成30年 7月 6日付け 審判請求書(請求に係る請求項の数は20)及び甲第1?21号証(枝番号を含む。)の提出
平成30年11月 7日付け 審判事件答弁書提出及び乙第1号証提出
平成30年11月30日付け 1回目の審理事項通知書
平成31年 1月10日付け 1回目の口頭審理陳述要領書及び甲第22?29号証(枝番号を含む。)の提出(請求人)
平成31年 1月10日付け 1回目の口頭審理陳述要領書及び乙第2?5号証の提出(被請求人)
平成31年 1月16日付け 2回目の審理事項通知書
平成31年 2月18日付け 2回目の口頭審理陳述要領書(請求人)
平成31年 2月18日付け 2回目の口頭審理陳述要領書及び乙第6?7号証の提出(被請求人)
平成31年 2月26日 口頭審理
平成31年 3月12日付け 上申書(請求人)
平成31年 3月12日付け 上申書(被請求人)

第2 本件発明
本件特許の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明20」という。)は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
活性物質として、組成物の少なくとも55重量%の分量の4{4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-ウレイド]-フェノキシ}-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミドのp-トルエンスルホン酸塩を含む錠剤である、医薬組成物。
【請求項2】
組成物の少なくとも75重量%の分量の活性物質を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物の3ないし20重量%の分量の充填剤、5ないし12重量%の分量の崩壊剤、0.5ないし8重量%の分量の結合剤、0.2ないし0.8重量%の分量の滑沢剤および0.1ないし2重量%の分量の界面活性剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
組成物の3ないし20重量%の分量の充填剤としての微結晶セルロース、5ないし12重量%の分量の崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウム、0.5ないし8重量%の分量の結合剤としてのヒプロメロース、0.2ないし8重量%の分量の滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム、および0.1ないし2重量%の分量の界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
即時放出錠剤である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
活性物質が微粉化されている、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
微粉化形態が0.5ないし10μmの平均粒径を有する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物の6重量%以下の量の水を含む、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
80Nより高い硬度を示す、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
25mm以下の最長寸法を有する楕円形の錠剤である、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
13mm以下の直径を有する円形錠剤である、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効成分の量が54mgないし1096mgである、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口投与のための、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
1種またはそれ以上の細胞毒と、または、他の抗癌剤または抗癌療法と、または、それらの混合物と組み合わせた、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
活性物質を少なくとも1種の医薬的に許容し得る補助剤と混和する、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項16】
a)活性物質および少なくとも1種の医薬的に許容し得る補助剤を湿式造粒し、
b)顆粒を滑沢剤および場合により1種またはそれ以上のさらなる医薬的に許容し得る補助剤と混和し、
c)混和後の顆粒を単独ユニットに再分割し、
d)そして、段階c)の生成物を、場合により1種またはそれ以上のさらなる医薬的に許容し得る補助剤で被覆する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
段階c)の生成物を、1種またはそれ以上のさらなる医薬的に許容し得る補助剤で被覆する、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
活性物質および少なくとも1種の医薬的に許容し得る補助剤を、造粒せずに混和し、直接打錠する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
活性物質単独または活性物質および少なくとも1種の医薬的に許容し得る補助剤を、乾式造粒法で処理し、次いで打錠する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
癌を含む哺乳動物の過剰増殖障害を処置するための医薬を製造するための、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の医薬組成物の使用。」

第3 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書に請求の趣旨として記載のとおり、「特許第5304241号の請求項1乃至20に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めており、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2の概要、並びに請求人が提出した証拠方法は、審判請求書、1回目及び2回目の口頭審理陳述要領書の記載、並びに口頭審理調書によれば、以下のとおりである。

1 無効理由1
本件発明1?20は、甲第2の1号証に記載された発明及び周知技術ないし技術常識に基づいて当業者が本件特許の出願前に容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由2
本件発明1?20は、甲第2の1号証に記載された発明、甲第3の1号証に記載された発明、及び周知技術ないし技術常識に基づいて当業者が本件特許の出願前に容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

3 請求人が提出した証拠方法
甲第1号証:本件特許公報(特許第5304241号)
甲第2の1号証:国際公開第03/068228号
甲第2の2号証:特表2005-522448号公報
甲第3の1号証:国際公開第03/047523号
甲第3の2号証:特表2005-526008号公報
甲第4号証:Drugs of the Future、2002、27(12)、pp.1141-1147.(抄訳付き)
甲第5号証:Clinical Cancer Research、2004、10、pp.6388s-6392s.(抄訳付き)
甲第6の1号証:国際公開第03/090720号
甲第6の2号証:特表2005-529126号公報
甲第7号証:特開平9-208468号公報
甲第8号証:特公平5-26766号公報
甲第9号証:特開平9-169651号公報
甲第10号証:特開2002-173428号公報
甲第11号証:Ritschel,W.A.他著、「Die Tablette, Handbuch der Entwicklung, Herstellung und Qualitatssicherung」、2. vollst. uberarb. und erw. Aufl.、ECV出版、2002、pp.64、65、514-521.(訳文付き)(下線は当審により施したものであり、ウムラウトを示す。)
甲第12の1号証:請求人社員 神谷歩が平成30年 6月20日に作成した報告書
甲第12の2号証:郷龍一編、「写真でわかる処方薬辞典 最新版」株式会社ナツメ社、2005年 1月 1日、pp.46-47.
甲第13号証:武田研究所報、1993、52、pp.156-162.
甲第14号証:医薬品相互作用研究、1986、10(2)、pp.149-157.
甲第15号証:橋田充編、「経口投与製剤の処方設計」、株式会社薬業時報社、1998、pp.176-191.
甲第16号証:一番ヶ瀬尚他編、「医薬品の開発第12巻「製剤素材[I]」、株式会社廣川書店、1990、pp.18-29、114-115、124-137、154-197.
甲第17号証:塩路雄作著、「固形製剤の製造技術」、普及版、株式会社シーエムシー出版、2003、pp.10、11、20-23、38-45、52、53、72、73、76-81、111-113.
甲第18号証:財団法人日本公定書協会編、「第十五改正日本薬局方」、株式会社じほう、2006、pp.9-17.
甲第19号証:粉体工学会 製剤と粒子設計部会編、「すぐに役立つ粒子設計・加工技術」、株式会社じほう、2003、pp.1-3.
甲第20号証:佐川良寿著、「医薬品製剤技術」、株式会社シーエムシー出版、2002、pp.162-185.
甲第21号証:武田研究所報、1984、43(3/4)、pp.111-115.
甲第22号証:寺田勝英他編、「固体医薬品の物性評価」、株式会社じほう、2003、pp.300-303、316-321、326-329.
甲第23号証:「ユナシン(登録商標)錠375mgの添付文書」、2016年10月改訂(第4版)、ファイザー株式会社
甲第24号証:「オゼックス(登録商標)錠75/オゼックス(登録商標)錠150の添付文書」、2010年8月改訂(第14版)、大正富山医薬品株式会社
甲第25号証:「アイピーディ(登録商標)カプセル50/アイピーディ(登録商標)カプセル100の添付文書」、2009年10月改訂(第9版)、大鵬薬品工業株式会社
甲第26の1号証:再公表特許WO2003/000680(2004年10月 7日発行)、pp.1-39、77、78、107、427-429.
甲第26の2号証:「リクシアナ(登録商標)錠15mg/リクシアナ(登録商標)錠30mg/リクシアナ(登録商標)錠60mgの添付文書」、2018年1月改訂(第6版)、第一三共株式会社
甲第27の1号証:特表2004-502687号公報、pp.1-34.
甲第27の2号証:「タイケルブ(登録商標)錠250mgの添付文書」、2017年5月改訂(第9版)、ノバルティスファーマ株式会社
甲第28号証:粉体工学会・製剤と粒子設計部会編、「粉体の圧縮成形技術」、日刊工業新聞社、1998、pp.118-121.
甲第29号証:粉体工学会 製剤と粒子設計部会編、「すぐに役立つ粒子設計・加工技術」、株式会社じほう、2003、pp.470-473、488、489.

第4 被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書に答弁の趣旨として記載のとおり、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、1回目及び2回目の口頭審理陳述要領書を提出している。
被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

乙第1号証:Fritz Schueckler博士が平成30年10月31日に作成した陳述書(訳文付き)
乙第2号証:Journal of Pharmaceutical Sciences、2011、100(4)、pp.1553-1565.(抄訳付き)
乙第3号証:特表2016-506394号公報
乙第4号証:特開2013-224265号公報
乙第5号証:「医薬品インタビューフォーム イクスタンジ(登録商標)錠40mg/イクスタンジ(登録商標)錠80mg」、2018年2月作成(第1版)、アステラス製薬株式会社、表紙及びpp.1、6.
乙第6号証:YAKUGAKU ZASSHI、2003、123(7)、pp.477-493.
乙第7号証:DuPont社のウェブサイト(https://www.pharma.dupont.com/pharmaceutical-products/avicelr-for-solid-dose-forms.html)、平成31年 1月23日プリントアウト

第5 証拠の記載事項
1 甲号証について
本件特許の優先日である2005年 3月 7日より前に頒布された以下の甲号証(甲第12の1号証を除く。)、及び甲第12の1号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。
なお、甲第2の1号証、甲第3の1号証及び甲第6の1号証は、外国語で記載されているため、訳文に代えて提出された甲第2の2号証、甲第3の1号証及び甲第6の2号証の記載を段落番号を含め摘記する。また、甲第4号証、甲第5号証及び甲第11号証は、当審で翻訳した。

(1)甲第2の1号証
(甲2ア)「【請求項22】
N-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素トシレートを投与することよりなる、VEGF誘発信号形質導入経路によって仲介される病気を処置する方法。」

(甲2イ)「【0011】
本発明は、異常な脈管形成または高透過性プロセスによって特徴付けられる疾病を含む、VEGF誘発信号形質導入経路によって仲介されるヒトまたは他の哺乳類の疾病を処置する方法を提供する。」

(甲2ウ)「【0050】
本発明による化合物は、約0.1ないし約200mg/kg総体重の範囲であり得る経口、静脈、筋肉内、皮下または非経口投与量において患者へ投与することができ、そして追加の脈管形成阻害剤は約0.1ないし約200mg/kg総体重の静脈内、筋肉内、皮下または非経口投与量において投与することができる。」

(甲2エ)「【0061】
本発明の化合物の投与によって処置することができるヒトまたは他の哺乳類の症状は、異常な脈管形成または高透過性プロセスによって特徴付けられる症状である。処置すべき症状は、腫瘍成長;糖尿性網膜症、虚血性網膜静脈塞栓、未熟児および年令関連斑退化の網膜症;リウマチ性関節炎;水疱性類天疱瘡、多形性紅斑、疱疹状皮膚炎を含む皮下水疱形成に関連する水疱性障害、または乾癬を含む。」

(甲2オ)「【0080】
化合物は、経口的、局所的、非経口的、吸入もしくはスプレーにより、経膣的、経直腸的または経皮的に投与単位製剤において投与することができる。注射による投与は、静脈内、筋肉内、皮下および非経口注射、および注入技術の使用を含む。皮膚投与は局所適用および経皮投与を含むことができる。一以上の化合物は一以上の薬学的に許容し得る担体およびもし望むならば他の活性成分と組合せて存在することができる。
【0081】
経口使用を意図する組成物は、薬剤組成物の製造のための当業者に知られた適当な方法に従って調製することができる。そのような組成物は希釈剤、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤よりなる群から選ばれた一以上の剤を服用可能な製剤を調製するために含むことができる。錠剤は錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容し得る補助剤との混合物中の活性成分を含有する。これら補助剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;例えばコーンスターチまたはアルギン酸のような顆粒化および崩壊剤;および例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような結合剤であることができる。錠剤は未被覆か、またはそれらは胃腸管において崩壊および吸収を遅らせ、それにより長期間にわたって持続作用を提供するため公知技術によって被覆されることができる。例えばグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような時間遅延材料を使用することができる。これらの化合物は固形の速放形に調製することもできる。」

(2)甲第3の1号証
(甲3ア)「【0007】
本発明の別の目的は、単独でか、またはCML処置に対するBcr-Ablキナーゼインヒビター、好ましくはイマニティブと組み合わせたRAFインヒビター、好ましくはBay43-9006の記載である。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、単独でか、またはCML処置に対するBcr-Ablキナーゼインヒビター、好ましくはイマニティブと組み合わせたMEKインヒビター、好ましくはCI-1040の記載である。」

(甲3イ)「【0020】
(薬学的組成物および投与の様式)
本発明はまた、単独か、またはイマティニブと組み合わせたRAF-MEK-ERK経路のインヒビターを含む、ヒトへの投与のための薬学的組成物に関する。このような薬学的組成物は、経腸投与(例えば、経鼻投与、口腔内投与、直腸投与または特に経口投与および非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与))のための組成物を含む。この組成物は、それ自体または好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアとともにインヒビターを含む。インヒビターの用量は、処置されるべき疾患、好ましくはCML、より好ましくはイマティニブ耐性CMLならびに患者の年齢、体重および個々の状態ならびに投与の様式に依存する。」

(甲3ウ)「【0021】
本発明はまた、プロセスおよび薬学的組成物の調製において、単独か、またはイマティニブと組み合わせてRAF-MEK-ERK経路のインヒビターの使用に関する。プロテインチロシンキナーゼの阻害に応答する癌を患っているヒトに投与するのに適切である薬学的組成物に優先度が与えられる。癌は、好ましくはCMLであり、さらに好ましくは組成物は、イマティニブ耐性CMLであり、その組成物は、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアと共にプロテインチロシンキナーゼを阻害する際に効果的である量のインヒビターまたはそれらの塩を含み、ここで、塩形成基が存在する。
【0022】
予防または特に、好ましくはCMLおよびより好ましくはイマニティブ耐性CMLの治療的処置のための薬学的組成物にもまた、優先度が与えられる。この組成物は、予防的に、または特に、記載した疾患に対して治療的に効果的である量で活性成分として、インヒビターまたは薬学的に受容可能なそれらの塩を含む。」

(甲3エ)「【0023】
薬学的組成物は、適切なインヒビターの約1%?約95%、単一の投与形態において、好ましくは約20%?約90%の活性成分を含む投与形態、および単一の投与形態ではない、好ましくは約5%?約20%の活性成分を含む投与形態を含む。単位用量形態は、例えば、糖衣錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐剤またはカプセルである。他の投与形態は、例えば、軟膏、クリーム、ペースト、発泡体、点滴剤、スプレー剤、散布剤などである。本発明の薬学的組成物は、例えば、従来の混合、顆粒形成、糖剤形成、溶解または凍結乾燥プロセスによって本質的に知られる様式で調製される。」

(3)甲第4号証
(甲4ア)「Bay-43-9006 腫瘍退縮性 Rafキナーゼ阻害剤
4-[4-[3-[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド]フェノキシ]-N-メチルピリジン-2-カルボキサミド

C_(21)H_(16)ClF_(3)N_(4)O_(3)
分子量:464.8294
CAS:284461-73-0
EN:301618」(第1141頁タイトル?左欄冒頭)

(甲4イ)「<臨床試験>
用量増加フェーズI試験は、Bay-43-9006の経口投与における最大耐量(MTD)、用量制限毒性(DLT)及び薬物動態を確認するために、難治性固形腫瘍(結腸直腸癌、乳癌、腎臓癌、頭頚部癌、メラノーマ、その他)患者を対象に行われた(1日1回50mgを1,5,10,20日又は1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21日又は1週間の服薬休止期間を含む3週間の100,200,300,400,600または800mgを1日2回)。38名の全被験者が評価された。・・・10名の被験者において400mg1日2回投与試験の臨床試験が進行中である。」(第1144頁右欄“Clinical Studies”の第1行?第25行)

(4)甲第5号証
(甲5ア)「BAY43-9006の第I相試験は、1日2回400mgの経口投与が第II相試験での推奨投与量であることを確認した。BAY43-9006を1日2回、400mgで経口投与した第II相試験の結果は、腎細胞癌患者に特に興味深いものであった。」(第6388s頁左欄第8行?第12行)

(5)甲第6の1号証
(甲6ア)「【0001】
本発明は、4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル]-ベンズアミドまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる医薬錠剤(pharmaceutical tablet)に関し、そして以後、本明細書において化合物Iと称する。
【0002】
化合物Iは、式(1)
【化1】

を有する。
【0003】
化合物Iの遊離塩基およびその許容される塩は、欧州特許出願(European Patent application)第0564409号において開示されている。化合物Iのメシル酸塩ならびに化合物Iのメシル酸塩のαおよびβ結晶形は、国際特許出願(International Patent application)第WO 99/03854号において開示されている。
【0004】
典型的には、白血病の処置のために処方される化合物Iのメシル酸塩の1日用量は、高用量であり、例えば成人において400?800mgである。したがって、投与が簡便であり、そして化合物Iの1日用量を提供するのに便利な経口投与形態の必要性が存在する。」

(甲6イ)「【0005】
したがって、本発明は、約30%?80%、たとえば少なくとも約35、40、45、50または55%からたとえば約60、65、70、75または80%、好ましくは55%以上の量で存在する薬理学的有効量の化合物Iまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる高薬物含量(high drug loading)錠剤を提供する。特に、化合物Iの量は、錠剤の総重量に基づく重量の45?80%、たとえば50?70%の間を変動し得る。」

(甲6ウ)「【0023】
本発明者らは、高い破砕性(friability)および低い耐摩耗性のために化合物Iの錠剤の製造の困難に直面した。さらに、賦形剤、たとえば崩壊剤の量の融通性は、生成物の高い薬物含量のために制限されている。したがって、優れた患者簡便性および許容性を有する経口投与のための商品として許容される化合物Iの投与形態に対する必要性が未だに存在する。
【0024】
本発明にしたがって、今回、予期せぬことに、化合物Iを含む安定かつ簡便なガレヌス錠剤が得られ得ることが見いだされた。本出願人は、特に投与に簡便でありかつ安定な錠剤の形態の、医薬上許容される経口固体投与形態が、圧縮法による錠剤の製造により得られ得ることを見いだした。さらに特に、本発明の錠剤は、造粒、好ましくは湿式造粒、続いて圧縮法により製造され得る。化合物I、とりわけそのメシル酸塩は、大きい粒子サイズ(high particle size)を示し、たとえば出発物質である化合物Iの60%が100μmより大きいかそれと等しい粒子サイズを有し、たとえばその粒子の90%が420μmよりも小さいかそれと等しい。湿式造粒法は、通常、100μm未満の粒子サイズの出発物質を用いて行われる。」

(甲6エ)「【0025】
比較的少量の賦形剤でありながら、高い含有量の化合物Iを含有することが本発明の錠剤の特徴である。このことは、物理的に小さい錠剤の製造を可能にする。ある単位用量の賦形剤の総量は、錠剤の総重量に基づいて約70重量%またはそれ以下、さらに特に約50%またはそれ以下であり得る。好ましくは、賦形剤の含有量は、錠剤の総重量に基づく重量の約30?55%、さらに特に35?50%の範囲である。
【0026】
本発明の錠剤は、驚くべきことに、化合物Iの所定の単位用量について、これまで可能であったよりも小さいサイズの化合物Iの投与を提供する。高い薬物含量にもかかわらず、本発明の錠剤は小さく、したがって投与が簡便である。このことは、患者のより良いコンプライアンスをもたらす。」

(甲6オ)「【0061】
実施例1:錠剤製剤(100mg錠)
【表1】

^(1)顆粒の成分、^(2)119.5mgの化合物Iのメシル酸塩は、100mgの化合物Iの遊離塩基に等しい、^(3)微晶性セルロースを、乾燥結合剤として外部相に添加する、^(4)20%過剰量のコーティング分散物が、コーティング工程中のスプレーによる損失を補うために包含されている。
【0062】
100mgの本発明の化合物Iの遊離塩基の錠剤および上記の錠剤を、化合物Iの塩および(1.1)の混合物を湿式造粒すること、^(3)(1.1)、(1.2)、(1.3)および(1.4)と混合すること、圧縮すること、および得られた錠剤を、コーティング混合物(1.5)の水性分散液でコーティングすることにより製造した。」

(6)甲第7号証
(甲7ア)「【0002】
【従来の技術】特開昭62-15547号公報及び特開平1-224318号公報には、それぞれp-クロロ-N-(2-モルホリノエチル)ベンズアミドを50mg及び50、100又は150mg含有する製剤例が記載されている。しかし、該化合物の含量は20?37.5重量%に過ぎず、特に該化合物を150mg含有する錠剤においては総重量が400mgに達する大型錠剤となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】p-クロロ-N-(2-モルホリノエチル)ベンズアミド(以下、モクロベミド又は主薬と称することもある)は、A型モノアミン酸化酵素(MAO-A)を選択的、可逆的に阻害するベンズアミド誘導体であり、抗うつ剤としてヨーロッパ諸国を含む40数カ国で発売されている。しかし、抗うつ剤として有効な治療のためにはかなり高用量を必要とし、必然的に大きな錠剤の形で投与されている。このような投与形態は、患者、特に子供や老人の患者にとっては服用しにくいため、好ましい投与形態とはいいがたい。従って、十分な量の活性成分モクロベミドを含有する小型の錠剤の開発が望まれていた。」

(甲7イ)「【0004】
本発明者らは、モクロベミドの含有量を高め、従来の大型錠と同等の溶出性及び生物学的にも同等の性質を有し、含有成分の安定性も十分保持される小型の錠剤について鋭意研究を行った結果、特定の結合剤と崩壊剤とを組み合わせることにより上記目的に合致する小型錠の処方を見出し、本発明を完成した。」

(甲7ウ)「【0009】
本発明の錠剤は活性成分のモクロベミドを60重量%以上を含有し、好ましくはモクロベミドを60?75重量%を含有する。更に好ましくはモクロベミドを63?71重量%、特に好ましくは65?69重量%を含有する。言い換えれば、本発明の錠剤は40重量%以下の賦形剤を含有し、好ましくは25?40重量%、更に好ましくは29?37重量%、特に好ましくは31?35重量%を含有する。」

(甲7エ)「【0022】
実施例 1?
【表1】
1錠あたり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
成分 重量 重量%
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・モクロベミド(主薬) 150 mg 66.7%
・ヒドロキシプロピルセルロース(結合剤) 7 mg 3.1%
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)22.5 mg 10.0%
・ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤) 2.5 mg 1.1%
・乳糖(増量剤) 42 mg 18.7%
・アエロジル(流動化剤) 1 mg 0.4%
──────────────────────────────────
以上 錠芯 225 mg 100%
──────────────────────────────────
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 4 mg
・酸化チタン 1 mg
・マクロゴール 6000 1 mg
──────────────────────────────────
以上 フィルム層 6 mg
──────────────────────────────────
合計 231 mg
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【0023】
流動層造粒機フローコーターFLO-5(フロイント産業製品)を用いて、モクロベミド3000g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450g、乳糖840g及びアエロジル20gからなる混合物に、ヒドロキシプロピルセルロース140gを2400gの精製水に溶解したものを噴霧乾燥して顆粒を得た。これを整粒機ツインローター(スクリーン;16メッシュ、畑鉄工所製品)にかけて整粒したのち、ステアリン酸マグネシウム50gと混合し、打錠機クリーンプレス18K(Φ9mm,菊水製作所製品)を用いて打錠し、約2万個の錠芯を製した。次いで、400gのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、100gのマクロゴール6000を精製水5000gに溶解し、これに酸化チタン100gを分散させてフィルム液を調製した。引き続き、コーティング機アクアコーター(フロイント産業製品)にモクロベミド錠芯4.5kgを仕込み、フィルム層を錠剤1錠あたり6mgとなるように噴霧し、50℃で16時間乾燥し、モクロベミド150mgを含有するフィルムコーティング錠を得た。」

(甲7オ)「【0033】
以下に、実施例1及び3で得られた錠剤について、硬度試験、崩壊試験及び溶出試験を行った結果を示す。
【0034】
試験例1:硬度試験?
実施例1及び3の錠剤の硬度をシュロイニゲル試験器6D型(Tablet Tester6D, シュロイニゲル社製)を用いて測定した。
【0035】
実施例1及び3の錠剤の硬度は、それぞれ13kg及び8kgであり、いずれも極めて良好な硬さであった。
【0036】
試験例2:崩壊試験?
実施例1及び3の錠剤を用い、日本薬局方(12版)記載の崩壊試験法(試験液精製水1000ml;往復数30往復/分;温度37℃)に準じて行った。
【0037】
実施例1及び3の錠剤の崩壊時間は、それぞれ9?13分及び8?10分であり、いずれも良好な崩壊時間を示した。
【0038】
試験例3:溶出試験?
実施例1及び3の錠剤を用い、日本薬局方(12版)記載のパドル法(試験液精製水900ml;回転数50r.p.m.;温度37℃;150mg及び50mg相当量)に準じて溶出試験を行った。採取液をメンブランフィルター(孔径0.45μm)で濾過し、濾液をUV法で定量した。結果を表6に示す。
【0039】
【表6】(省略)
【0040】
表6から明らかなように、本発明の錠剤は20分後にはほとんど溶出率が100%に達し、良好な溶出性を示した。
【0041】
上記試験から明らかなように、本発明の錠剤は良好な硬さがあり、良好な崩壊性と溶出性を有する製剤特性に優れた錠剤である。
【0042】
また、実施例1及び3の錠剤は、加温及び/又は加湿条件による加速試験(6か月間)において活性成分である主薬は安定であった。
【0043】
比較試験
以下に、本発明の錠剤以外のモクロベミド含有小型錠剤の処方を比較例として挙げ、本発明の錠剤の製剤特性が下記比較例の処方に比べて優れていること示す。
【0044】
比較例1?
崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えない処方
【0045】
【表7】(省略)
【0046】
上記比較例1の処方を用い、実施例1と同様の方法で製造した比較例1の錠剤は、崩壊試験において崩壊時間が約1時間以上であり、錠剤の製剤特性は不十分なものであった。
【0047】
比較例2?
結合剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含量を増やした処方
【0048】
【表8】(省略)
【0049】
上記比較例2の処方を用い、実施例1と同様の方法で製造した比較例2の錠剤は、崩壊試験において崩壊時間が約1時間以上であり、錠剤の製剤特性は不十分なものであった。」(【表6】?【表8】については、実際の記載を省略した。)

(甲7カ)「【0050】
【発明の効果】本発明の錠剤は、モクロベミドの含有量を高め小型にしたにもかかわらず、従来の大型錠と同等の溶出性及び生物学的にも同等の性質を有し、含有成分の安定性も十分保持された小型錠であるので、大型錠では服用しにくい患者にとっても容易に服用することができ、かつ大型錠と同等の薬効が得られる。」

(7)甲第8号証
(甲8ア)「本発明者らは、上記現状に鑑み心不全、狭心症等を始めとする各種心臓疾患に対して優れた改善効果乃至治療効果を奏する新しい薬剤を提供することを目的として鋭意研究を重ねた結果、L-カルニチンの塩化物であるL-塩化カルニチンが、従来知られているDL-カルニチン、その塩、エステル、アシル化物等の他の誘導体とは全く異なつて、之等からは予期できない非常に優れた心臓疾患治療効果を奏し得、しかも該L-塩化カルニチンは、非常に吸湿性が高く、これを高濃度で含有する経口投与用固形剤の形態に調製するのは困難であつたが、特定量の軽質無水ケイ酸の配合によれば、実に70?95重量%もの高率で上記有効成分を含有する所望の固形剤の調製が可能となるという新しい事実を発見した。
本発明は上記知見を基礎として完成されたものであり、その要旨は、L-塩化カルニチン70?95重量%を有効成分として含有し、固形剤100重量部当り2?10重量部の軽質無水ケイ酸を配合されてなる経口投与用固形剤形態を有することを特徴とする心臓疾患治療薬にある。」(第2頁左欄第10行?第30行)

(甲8イ)「殊に本発明者らの研究によれば、上記有効成分とするL-塩化カルニチンは、非常に吸湿性が高く、経口投与用固形剤の形態とするのは困難であつたが、該固剤の成形に当り、軽質無水ケイ酸を固剤100重量部当り約2?10重量部配合する時には、該軽質無水ケイ酸が摩損防止剤として機能し、吸湿性を防止し且つ適度の崩壊性、硬度等を有する所望固剤を容易に提供できることを見い出した。しかも上記軽質無水ケイ酸の利用によれば、固形剤1単位当りの有効成分化合物の配合量を70?90重量%と高めても、所望の固形剤形態は損なわれず、これによって多量投与に適した固形剤が収得でき、非常に有効である。上記軽質無水ケイ酸利用の効果は、後記実施例において詳述する。
特に好ましい錠剤の一処方例を挙げれば次の通りである。
<処方>
成分 配合量(重量%)
L-塩化カルニチン 70?95
低置換度ヒドロキシプロピル
セルロース及び(又は)結晶
セルロース 2.8?38.0
軽質無水ケイ酸 2.0?10.0
ステアリン酸マグネシウム 0.1?1.0
タルク 0.1?1.0」(第3頁右欄第12行?第37行)

(甲8ウ)「実施例1
L-塩化カルニチン 85重量部
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
11 〃
軽質無水ケイ酸 3 〃
ステアリン酸マグネシウム 0.5 〃
タルク 0.5 〃
──────────────────────
100重量部
ステアリン酸マグネシウム及びタルクを除く上記各成分を処方通り秤量し95%エタノール(又はこれにイソプロパノールを添加したもの)40ml(最終混合物200gに対して)に添加してよく練合する。練合されたものをバスケツトスクリーン(径0.5?1.0mm)のバスケツトに通して造粒し、約50℃で1?2時間乾燥後、#12?24(メツシユ)の篩を用いて整粒する。次いでこれにステアリン酸マグネシウム及びタルクを上記処方通り秤量して添加混合する。混合物を打錠し、錠剤とする。
〈錠剤特性試験〉
上記実施例1においてL-塩化カルニチン及び軽質無水ケイ酸の配合量を適宜変化させて下記第2表に示す各錠剤を作成し、之等の重量(mg)、厚さ(mm)、硬度(kg/cm^(2))、摩損度(%)及びキヤツピング率(%)を夫々測定した。結果を下記第2表に併記する。・・・
第 2 表


上記第2表より明らかなように、その吸湿性の高さによつて高含有量の錠剤化が困難であつたL-塩化カルニチンでも、軽質無水ケイ酸の添加によつてその含有率を95%にまで高めることができた。」(第4頁左欄第4行?第5頁左欄第5行)

(8)甲第9号証
(甲9ア)「【0005】ビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬製剤においても、ビタミンB_(1)とビタミンB_(6)の共存は含量低下を生じる。このため、両成分間の接触を避けるため積層錠にしたり、有核錠にするなどの製剤学的工夫により安定化を図る手段が考えられるが、この場合には、製造工程が複雑になったり、錠剤の形状が大きくなることは避けられない。
【0006】
ビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬製剤では、各ビタミンが高単位で配合されており、また承認基準において配合が許容されている多くの成分を添加するため、1錠当たりの薬効成分の配合量が多くなる。しかしながら、配合禁忌成分間の接触を抑えるため、更には配合成分によってはその成型性のため、賦形剤を多量に添加しなければならず、市販品においても素錠中の有効成分濃度は高いものでも60重量%であり、多くはこれより低い有効成分濃度で設計されている。そして、結果的には一回の服用量が多くなり、更には錠剤の形状が大きくなってしまうため、服用に際して患者に多大の負担を強いることとなっていた。
【0007】
配合が許容されているビタミンB_(1)成分としてはビタミン主薬製剤製造(輸入)承認基準には10種以上が収載されているが、それらの中でビスベンチアミンは比較的安定性が高く、吸収も優れていることからビタミンB_(1)成分として推奨される。しかしながら、ビスベンチアミンは成型性に難があるため、製錠には多量の賦形剤の添加が必要とされており、ビスベンチアミン配合の錠剤ではその形状も大きくなってしまい、更に前述したビタミンB_(6)に対して含量低下を惹き起こすなど配合性も悪いことから、ビスベンチアミンを高単位で含有し、形状が小さく、服用数を少なくして服用の負担を減少させたビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬効能の錠剤は市場には供されていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、形状が小さく、ビタミンB_(1)とビタミンB_(6)とが接触することがないために安定性の高いビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬効能のビタミン含有錠剤及びその製造法を提供することにある。」

(甲9イ)「【0009】
【課題を解決するための手段】上述の事情に鑑み、本発明者等は鋭意研究を進めた結果、ビタミンB_(6)を適当な方法で顆粒状とし、これにビタミンB_(1)、ビタミンB_(12)、ビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬効能の基準で配合が許容されている成分及び製錠に必要な添加剤を加えて、製錠することにより、1錠中の全有効成分の含量が65重量%以上であっても安定性の良好なビタミン含有錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ビタミンB_(6)を75?97重量%含む顆粒状造粒物にビタミンB_(1)、ビタミンB_(12)及びビタミンB_(1)B_(6)B_(12)主薬効能の基準で配合が許容されている成分を配合して製錠した錠剤であって、全有効成分の合計含有量が素剤中65?80重量%であるビタミン含有錠剤及びその製造法を提供するものである。

【0020】
【発明の効果】本発明によれば、有効成分を素錠部の65重量%以上の高濃度で配合しても長期間安定な製剤を製造することができる。また、1錠中に有効成分を高単位で配合できるので、1日の服用量が少なく、しかも服用が容易な適度な大きさを有するため服用者の負担を軽減させた製剤を製造することができる。」

(甲9ウ)「【0022】
実施例1
ビスベンチアミン100重量部、シアノコバラミン1.5重量部、ニコチン酸アミド60重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース30重量部、D-マンニトール14.5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース4重量部をVG造粒機(パウレック製、バーチカルグラニュレーター)で混合し、エタノールを加えて練合した後、乾燥し、B_(1)・B_(12)造粒物を製造した。」
【0023】
次に、塩酸ピリドキシン100重量部をVG造粒機に取り、エタノールを造粒液として結晶セルロース6重量部とヒドロキシプロピルセルロース4重量部を加え造粒し、B_(6)造粒物とした。
【0024】
B_(1)・B_(12)造粒物210重量部とB_(6)造粒物110重量部に結晶セルロース59重量部、崩壊剤15重量部、滑沢剤6重量部を加えて混合し、直径8.5mm、1錠200mgになるように製錠した。

【0030】
比較例3
ビスベンチアミン100重量部、シアノコバラミン1.5重量部、ニコチン酸アミド60重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40重量部、D-マンニトール34.5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース4重量部をVG造粒機で混合し、エタノールを加えて練合した後、乾燥させた。その240重量部に実施例1で得たB_(6)造粒物110重量部、結晶セルロース129重量部、崩壊剤15重量部、滑沢剤6重量部を加えて混合し、直径9mm、1錠250mgになるように製錠した。
【0031】
比較例4
ビスベンチアミン100重量部、シアノコバラミン1.5重量部、ニコチン酸アミド60重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40重量部、D-マンニトール34.5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース4重量部をVG造粒機で混合し、エタノールを加えて練合した後、乾燥させた。その240重量部に実施例1で得たB_(6)造粒物110重量部、結晶セルロース162重量部、崩壊剤20重量部、滑沢剤8重量部を加えて混合し、直径8mm、1錠180mgになるように製錠した。
【0032】
試験例1
実施例1?3及び比較例1?4で得た素錠に常法により糖衣を施し、40℃で3か月間保存し、ビスベンチアミン(ビタミンB_(1))、シアノコバラミン(ビタミンB_(12))及び塩酸ピリドキシン(ビタミンB_(6))の安定性を比較した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1より、本発明による実施例1?3は安定性が高く、保存開始時からの含量低下は殆ど見られないか、或いは僅かであった。これに対し有効成分が共存している設計の比較例1においては含量低下が著しく、また実施例1?3と同様に配合禁忌成分が隔離された設計になっている比較例2においても含量低下が見られる。これはB_(6)造粒物の添加剤を増やしたため、その分造粒物混合時に添加する賦形剤の添加量が削減された結果、B_(1)・B_(12)造粒物とB_(6)造粒物の接触機会が増えたことによる低下と考えられる。このことは、本発明においてはB_(6)造粒物におけるビタミンB_(6)の含有量は75重量%以上必要であることを示している。なお、比較例3は配合禁忌成分間の接触機会が減少するので安定性が高くなるが、表2に示すように服用感を満たすものではなかった。
【0035】
試験例2
実施例1、3及び比較例3、4で得た錠剤に糖衣を施したものにつき、10名の被験者に服用してもらい、服用感を調べた。その結果を表2に示す。また、それら糖衣錠の形状と1日服用量を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2からは糖衣錠の形状(直径)が9.6mmのものは服用に抵抗が少ないが、直径が10mmを超えると服用に抵抗を感じる被験者が増え、また比較例4では服用数が3錠で多いと感じる被験者が増えた。比較例3は、試験例1において安定性が高かったものの、服用感には不満が残った。これに対して素錠中の有効成分の含有量を65重量%以上に高めた実施例1及び実施例3は服用数が少なく、服用には適度な大きさを有しているため、服用者の負担を軽減させるものである。」

(9)甲第10号証
(甲10ア)「【0002】
【従来の技術】錠剤に用いられる原薬のほとんどは、錠剤化する際に、各々の原薬物性により、キャッピング、硬度不足等の問題が起こるため、それ自体のみで、あるいは75質量%(以下、単に「%」で示す)を超えるような高含量で錠剤化することは困難であるとされている。実際、世界的に見ても単独の主薬含量が75%を超えるような錠剤を工業化しているものはほとんど無い。
【0003】
このため、1回投与量が多い薬物(例えば、投与量が200mgを超えるような薬物)を錠剤化する場合、1錠当たりの重量の増加により容積的にも大型の錠剤とならざるを得ず、老人や小児が服用する場合は、困難を感じることもしばしばである。」

(甲10イ)「【0004】
ところで、クラリスロマイシンはマクロライド系の抗生物質であるが、成人に対する1回の投与量は200mgであり、クラリスロマイシン200mgを含有した錠剤(以下、適宜「クラリス錠200mg」という。)として処方されている。
【0005】
このクラリスロマイシン錠剤は、その原薬を含む粉体を打錠(圧縮成型)することにより調製されているが、打錠の際に、錠剤の臼からの排出圧力が上昇し、打錠機に負荷がかかるという打錠障害の存在が知られていた。そして、この打錠障害を緩和するためには、必要充分量の賦形剤の配合が必要とされているため、現行クラリス錠200mgは、フィルムコーティングが施される前の状態で、1錠質量320mg、錠径10mm、錠厚5mmほどになっていた。
【0006】
一般的に、服用性がよいと言われる錠剤の大きさの範囲は、円形の錠剤の場合、およそ錠径9mm以下で錠厚5mm以下とされているから、現行のクラリス200mg錠は、服用性が良いと言われる大きさを外れた錠剤といえる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
経口投与用の医薬品は、その薬効が高いことと共に患者にとって服用しやすいことも重要であり、本発明は、クラリスロマイシン錠剤について、その錠剤を小型化し、服用性を向上させることをその課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の高分子化合物とクラリスロマイシンを組み合わせた組成を用いることにより、打錠時の錠剤排出圧力の上昇という打錠障害を緩和できることおよびこの組成により賦形剤の配合量自体をも減らすことができ、結果として、錠剤を小型化できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、クラリスロマイシンと構造上に糖を含む水膨潤性もしくは水粘稠性高分子化合物とを含有し、素錠剤中のクラリスロマイシンの含有量が75%以上であることを特徴とするクラリスロマイシン錠剤を提供するものである。」

(甲10ウ)「【0021】
【実施例】以下に、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0022】
実 施 例 1
下記処方および製法によりクラリスロマイシン錠剤を得た。
( 処 方 )
クラリスロマイシン 1000g
カルボキシメチルスターチナトリウム 70g
ヒドロキシプロピルセルロース 35g
【0023】
( 製 法 )上記成分を秤量後、混合、粉砕し、得られた混合粉末を精製水450gを結合溶剤として湿式造粒した。85℃で45分間乾燥後、ステアリン酸マグネシウム34gを添加して混合した。得られた顆粒を、8.5mm径2段R面の杵を用い、打錠機(VIRG 0519SSIAZ型:(株)菊水製作所製)の回転数を30rpmに設定して500kg/cm^(2)の打錠圧力で60分間の連続打錠を行った。
【0024】
実 施 例 2
下記処方および実施例1と同様の製法によりクラリスロマイシン錠剤を得た。
( 処 方 )
クラリスロマイシン 1000g
カルボキシメチルスターチナトリウム 70g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 35g
【0025】
比 較 例 1
下記処方および製法によりクラリスロマイシン錠剤を得た。
( 処 方 )
クラリスロマイシン 1000g
乳糖 490g
クロスポビドン 80g
ヒドロキシプロピルセルロース 30g
【0026】
( 製 法 )上記成分を秤量後、混合、粉砕し、得られた混合粉末を精製水1000gを結合溶剤として湿式造粒した。85℃で60分間乾燥後、ステアリン酸マグネシウム50gを添加して混合した。8.5mm径の杵では、1錠中に200mgのクラリスロマイシンを含有する錠剤を調製することができないため、10mm径2段R面の杵を使用し、打錠機の回転数を30rpmに設定して700kg/cm^(2)の打錠圧力で60分間の連続打錠を行った。
【0027】
試 験 例 1
実施例1、2および比較例1の打錠時における錠剤排出圧力並びに得られた錠剤の重量、錠剤径、錠剤厚みおよび錠剤硬度を測定した。その結果を表1に示した。また、打錠時のキャッピング等の打錠障害はいずれのロットにも起こらなかった。なお、錠剤物性は、自動錠剤物性測定器(WHT-1:ジャパンマシナリー(株)製)で測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
【発明の効果】本発明により、圧縮成型時の錠剤排出圧力の上昇という打錠障害が軽減され、かつ、小型化されたクラリスロマイシン高含量錠剤を提供することが可能となった。」

(10)甲第11号証
(甲11ア)「・・・経口錠剤の場合、とりわけ胃酸耐性にして、そのまま嚥下させたい場合は、できるだけ小型の錠剤とすることが目指される。表2/1は活性成分量、円形錠剤の一般的な嵩増しの概要と、しかるべきパンチ径、すなわち錠剤直径を示している。」(第64頁右欄下から第12行?第4行)

(甲11イ)「

表2/1 活性成分量に対して定められた一般的な嵩増し量および適正なパンチ径」(第65頁左欄冒頭)

(甲11ウ)「個々の錠剤種類の嵩増しにどの添加剤が候補となるかは、すでに様々な錠剤種類の協議の際に簡単に言及されている。添加剤の最終選定は、理論的な予想で行うのではなく、常に実際の試みに基づいて行う。今は加工特性については数多くの測定方法があるおかげで、特定の錠剤調整において不利な特性をもつ添加剤は容易に識別し、排除し、より良い添加剤で置き換えることができよう。そのような測定方法には個々の工程段階で言及されている。」(第64頁右欄下から第3行?最下行及び第65頁左欄第1行?第11行)

(11)甲第12の1号証
(甲12ア)「本件特許の優先日前である2005年1月1日に発行された『写真でわかる処方薬事典』という書物(甲12の2としてその一部を例示します。)には、その当時に市販されていた内服薬・外用薬・注射薬の一覧が収載されています。
ここに収載された品目のうち、一錠中の有効成分の含有量が250?300mgの錠剤をピックアップし、同書の記載と、当該錠剤にかかる添付文書の記載からそれぞれの錠剤重量とそれに対する有効成分の含有率(重量%)を調べました。
・・・この結果から、本件優先日当時、有効成分量が250?300mgの錠剤31品目中、有効成分含有率が55重量%を超えるものは29品目(93.55%)、55重量%以下のものはわずかに2品目(6.45%)であったことがわかりました。」

2 乙号証の記載
本件特許の優先日である2005年 3月 7日より前に頒布された乙第2号証には、以下の事項が記載されている。
なお、乙第2号証は、外国語で記載されているため、当審で翻訳した。

(1)乙第2号証
(乙2ア)「固体経口剤形の処方には、乏しい粉末流動性、粉末コンパクト性、溶解性、安定性などの薬物物質の様々な物理化学的限界を克服するためにプロセス変数と賦形剤特性との間の相互関係についての良好な理解が必要である。有益な物理化学的特性を有する賦形剤は、薬物物質のあまり望ましくない特性を克服するために使用することができる。このため、従来の乾式または湿式造粒錠剤の典型的な薬物負荷は、通常50%以下であり、50%を超える薬物負荷は、一般に、高薬物負荷と呼ばれる。高薬物負荷、特に75%(w/w)を超えると、不十分な錠剤圧縮特性および工程の頑健性が大きな障害になる傾向がある。」(第1553頁左欄第2行?右欄第5行)

第6 無効理由についての当審の判断
1 無効理由1について
(1)甲2発明
甲第2の1号証には、(甲2ア)にN-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素トシレートを投与することでVEGF誘発信号形質導入経路によって仲介される病気を処置する方法が記載されている。
そして、(甲2オ)には、当該化合物の投与を経口的に行うこと、当該化合物と薬学的に許容し得る担体とを組み合わせること、経口投与を意図する組成物を調製すること、及び錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容し得る補助剤との混合物中の活性成分を含有する錠剤が記載されている。ここで、当該錠剤は、上記経口投与を意図する組成物の例として記載されたものであるから、甲第2の1号証には、(甲2ア)における「投与」を、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容し得る補助剤との混合物中のN-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素トシレートを含有する錠剤である、経口使用を意図する組成物によって行うことが記載されていると認められる。
また、(甲2イ)には、処置されるVEGF誘発信号形質導入経路によって仲介される病気が、異常な脈管形成または高透過性プロセスによって特徴付けられる疾病を含むことが記載され、(甲2エ)には、処置される異常な脈管形成または高透過性プロセスによって特徴付けられる症状として腫瘍成長が記載されている。してみると、甲第2の1号証には、(甲2ア)に記載のVEGF誘発信号形質導入経路によって仲介される病気として、腫瘍成長の病気が記載されていると認められる。
してみると、甲第2の1号証には、
「錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容し得る補助剤との混合物中の活性成分としてN-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素トシレートを含有する錠剤である、腫瘍成長の病気を処置するための経口使用を意図する組成物。」
の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比
本願発明1と甲2発明とを対比する。
まず、甲2発明におけるN-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素と、本件発明1の4{4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-ウレイド]-フェノキシ}-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミドは、その名称から同一の化合物である。また、甲2発明における「トシレート」は、「p-トルエンスルホン酸塩」を意味する用語である。これらのことから、甲2発明における「N-(4-クロロ-3-(トリフロロメチル)フェニル-N’-(4-2-(N-メチルカルバモイル)-4-ピリジルオキシ)フェニル尿素トシレート」は、本件発明1における「4{4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-ウレイド]-フェノキシ}-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミドのp-トルエンスルホン酸塩」(以下、「本件トシレート」という。)に相当する。
また、甲2発明の「組成物」は、「腫瘍成長の処置のため」に用いられるものであるから、本件発明1における「医薬組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、「活性物質として、4{4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-ウレイド]-フェノキシ}-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミドのp-トルエンスルホン酸塩(本件トシレート)を含む錠剤である、医薬組成物。」である点において一致し、前者の医薬組成物が「組成物の少なくとも55重量%の分量」の本件トシレートを含むことが特定された錠剤であるのに対し、後者の組成物は、本件トシレートの分量が具体的に特定されない錠剤である点で相違する。

(3)相違点についての判断
上記相違点について、以下検討する。

ア 甲2発明における活性成分の必要とされる投与量
甲2発明における活性成分の必要な投与量については、(甲2ウ)に「本発明による化合物は、約0.1ないし約200mg/kg総体重の範囲であり得る経口・・・投与量において患者へ投与することができ」と広い数値範囲が示されているところ、(甲4ア)に示される化合物、すなわち甲2発明の活性成分と同じ化合物であるBay-43-9006を、腎臓癌の患者の治療のために経口投与するにあたり、1日投与量が400mgの活性成分を1日2回投与、すなわち1回投与量を200mgとすることは、本件優先日時点において当業者にとって周知技術であったと認められる((甲4イ)及び(甲5ア))。

イ 活性成分の必要とされる投与量が多い錠剤の技術課題(技術課題1)とその解決手法
(ア)a 甲第6の1号証には、白血病の処置のために処方される化合物Iのメシル酸塩の1日用量は高用量(成人では400?800mg)であることから、当該1日用量の投与に都合のよい経口投与形態が必要であることが記載されている(甲6ア)。
b 甲第6の1号証には、化合物Iは砕けやすく摩擦に弱いという性質を有し、化合物Iを高い含量で含む錠剤では賦形剤の配合量も制限されるため、これを錠剤化することは困難であったところ、化合物Iのメシル酸塩が大きな粒子サイズを有することを利用し、これを賦形剤の一部と湿式造粒し、続いて残りの賦形剤を添加して圧縮することにより、化合物Iが高含量であるにもかかわらず、従来よりもサイズが小さく投与に都合のよい錠剤が得られることが見いだされたことが記載されており(甲6イ?エ)、実施例1では、化合物Iのメシル酸塩を61%含有する錠剤が記載されている(甲6オ)。
(イ)a 甲第7号証には、A型モノアミン酸化酵素を選択的、可逆的に阻害し、抗うつ剤として処方されるモクロベミドは、治療のためにかなり高用量を必要とすることから大型の錠剤が使用されているところ、大型の錠剤は子供や老人の患者にとっては服用し難いため、十分な量のモクロベミドを含有し、かつ小型である錠剤の開発が望まれていたことが記載されている(甲7ア)。
b 甲第7号証には、モクロベミドの含有量を高め、従来の大型錠剤と同等の溶出性及び生物学的特性を有し、モクロベミドの安定性も十分保持される小型の錠剤について検討した結果、特定の結合剤と崩壊剤とを組み合わせることにより上記目的を達成する小型の錠剤が見いだされたことが記載されており(甲7イ、ウ及びカ)、実施例1では、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを錠心全体の3.1重量%配合し、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを錠心全体の10.0重量%配合した場合に、良好な硬さ及び崩壊性並びに溶出性を有する、モクロベミドを65%含有する錠剤が記載されている(甲6エ及びオ)。
(ウ) 甲第8号証には、優れた心臓疾患治療効果を有するL-塩化カルニチンは非常に吸湿性が高く、これを高濃度で含有する経口投与用固形剤を調製することは困難であったところ、軽質無水ケイ酸を固形剤100重量部当たり約2?10重量部配合することにより、L-塩化カルニチンを70?95重量%もの高率で含有し、かつ、所望の形態が損なわれることのない固形剤を調製することが可能となるという事実を発見したことが記載されており(甲8ア及びイ)、実施例1には、L-塩化カルニチンを70?95重量%含有し、軽質無水ケイ酸を2?10重量%含有する錠剤が、その硬度、摩損度及びキャッピング率において問題がないことが示されている(甲8ウ)
(エ)a 甲第9号証には、従来のビタミンB_(1)、B_(6)、B_(12)主薬効能のビタミン含有錠剤は、ビタミンB_(1)とビタミンB_(6)の接触による含量低下を防ぐために形状が大きな積層錠や有核錠となっており、また、ビタミンB_(1)として安定性・吸収性に優れたビスベンチアミンを配合した場合、ビスベンチアミンは成型性に難があることから錠剤化には多量の賦形剤が必要なため素錠中の有効成分は多くても60%となり、一回の服用量が多いことから、このような錠剤は服用に際して患者に多大の負担を強いることとなっていたことが記載されており(甲9ア)、甲第9号証には、形状が小さく、服用数を少なくして服用の負担を減少させた、安定性の高いビタミンB_(1)、B_(6)、B_(12)主薬効能のビタミン含有錠剤を提供することが、甲第9号証に記載された発明の解決しようとする課題であることが記載されている(甲9ア)。
b 甲第9号証には、上記aの事情に鑑み研究を進めた結果、ビタミンB_(6)を75%以上含有する顆粒状造粒物を製造し、これにビタミンB_(1)、B_(12)、及び製錠に必要な添加剤を加えて製錠することにより、有効成分を素錠部の65%以上の高濃度で配合しても安定性が良好で、かつ、1錠中に有効成分を高単位で配合できることから1日の服用量が少なく、しかも服用が容易な適度な大きさを有するため服用者の負担を軽減させた錠剤を得ることができたことが記載されており(甲9イ)、実施例1には、服用数が少なく大きさも適度であるため服用者の負担を軽減させる、ビタミン類を65%含有する錠剤が記載されている(甲9ウ)。
(オ)a 甲第10号証には、1回の投与量が多い薬物(例えば、200mgを超えるような薬物)は大型の錠剤とならざるを得ないところ、このような錠剤を老人が服用することは困難であること、マクロライド系抗生物質であるクラリスロマイシンの成人に対する1回の投与量は200mgであるが、クラリスロマイシンを200mg含有する錠剤は、製造時の打錠障害を緩和するために充分な量の賦形剤の配合が必要であったこともあり、服用性が良いといわれる大きさを外れた錠剤であったことが記載されており(甲10ア及びイ)、甲第10号証に記載された発明では、クラリスロマイシンの錠剤を小型化し服用性を向上させることが解決しようとする課題であることが記載されている(甲10イ)。
b 甲第10号証には、クラリスロマイシンの錠剤の小型化という課題を解決するために、糖を含む水膨潤性又は水粘稠性高分子化合物とクラリスロマイシンを組み合わせた組成を用いることにより、打錠障害が緩和でき、かつ賦形剤の配合量も減らすことができ、その結果、素錠剤中のクラリスロマイシンの含有量が75%以上であるにもかかわらず、錠剤を小型化できることを見出したことが記載され(甲10イ)、実施例1及び2には、クラリスロマイシンの含有量が90%であっても、打錠障害がなく、服用性が良いといわれる大きさの範囲内にある錠剤が得られたことが記載されている(甲10ウ)。
(カ)a 前記(ア)a、(イ)a、(エ)a及び(オ)aより、サイズが大きすぎず、かつ、一回に服用する数が少ない錠剤を作製すること、特に所期の効能を発揮するために必要な活性成分の量が多い薬剤においてそのような錠剤を作製することは、本件優先日時点において当業者に周知の技術課題(以下、「「技術課題1」という。)であったと理解できる。
b そして、甲第6の1号証ないし甲第10号証では、前記(ア)b、(イ)b、(ウ)、(エ)b及び(オ)bで述べたように、活性成分の未知の物性を見いだしたり、配合する賦形剤の種類や量について活性成分に応じた創意工夫を行い、また、錠剤の製造工程について活性成分に応じた創意工夫を行うことにより、錠剤に含まれる活性成分の分量を高くする手法で、技術課題1を解決しているものと認められる。

ウ 技術課題1の解決手法に関連する技術常識(技術常識1)
(ア) 甲第10号証には、錠剤に用いられる原薬のほとんどは、原薬の物性により、キャッピング、硬度不足等の問題が起こるため、原薬自体のみでの錠剤化又は原薬の配合量が75%を超える高含量の錠剤化は困難であるとされており、原薬含量が75%を超えるような錠剤を工業化しているものはほとんど無いことが記載されている(甲10ア)。
(イ) 乙第2号証には、薬物負荷が50%を超えるものは高薬物負荷と呼ばれるところ、高薬物負荷、特に75%を超える負荷は、不十分な錠剤圧縮特性及び工程の頑健性が大きな障害になる傾向があることが記載されている(乙2ア)。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)より、錠剤に含まれる活性成分の分量を高めるにあたり、分量が50重量%を超える高負荷錠剤の製造を困難とする障害が危惧されることは、本件優先日時点において当業者に周知の技術常識(以下、「技術常識1」という。)であったと認められる。(以下で用いられる「高負荷」との用語は、特段の説明がない場合、活性成分の分量が50重量%を超えることを意味する。)

エ 甲2発明に基づく「組成物の少なくとも55重量%の分量」で本件トシレートを含む錠剤の容易想到性
1日投与量が400mg、又は1回投与量が200mgを超える活性成分を錠剤とする場合、活性成分の必要とされる投与量が多い錠剤として前記イ(カ)aで述べた技術課題1を当業者であれば認識可能であるところ、前記アのとおり、甲2発明の活性成分である本件トシレートの錠剤に含まれる投与量を、周知技術から400mgの1日投与量、又は200mgの1回投与量とする際にも、当業者は、本願優先日時点において技術課題1を認識し得るといえ、その解決のために、錠剤に含まれる活性成分の分量を高くすることは、当業者であれば検討するところである。
しかしながら、甲2発明について、前記ウ(ウ)で述べた活性成分の分量が50重量%を超えるような錠剤の高負荷化における製造上の障害の危惧についての技術常識1を、当業者であれば本願優先日時点において認識しているから、何らの創意工夫なしに、甲2発明において、本件トシレートの分量を本件発明1に特定される程度(組成物の少なくとも55重量%)にまで大きくしても製造上の障害が生じないことを、当業者が合理的に期待をすることはできなかったというべきであり、請求人の挙げた各甲号証を検討しても、本願優先日時点において当業者が合理的に期待をすることができたとする根拠を見いだすことができない。
そして、前述イ(カ)bのとおり、甲第6の1号証ないし甲第10号証に記載の錠剤では、活性成分に応じた種々の創意工夫により、技術課題1が解決されているものと認められるものの、これら甲号証は、そこに記載された活性成分とは異なる、本件トシレートを含む錠剤についての技術課題1を、これら甲号証に記載される創意工夫により解決し、本件トシレートの含有量を高負荷化できることを開示するものでない。また、請求人の挙げた他の各甲号証を検討しても、本願優先日時点においてどのような創意工夫により、本件トシレートの錠剤に係る高負荷化に伴う障害を解決することができたのかを示すものとは認められない。
してみると、甲2発明において、本件トシレートの分量を本件発明1に特定される程度(組成物の少なくとも55重量%)にまで大きくした錠剤を何らの創意工夫なしに得ることができることを、本願優先日時点において当業者が合理的に期待をすることができたとはいえないし、また、どのような創意工夫により、そのような錠剤を得ることができるのかが本願優先日時点において当業者にとって明らかであったともいえない。
したがって、当業者であっても、甲2発明に基づいて、相違点に係る「組成物の少なくとも55重量%の分量」で本件トシレートを含む錠剤を容易に想到することはできない。

(4)請求人の主張について
ア 甲2発明の錠剤の高負荷化について(甲第6の1号証ないし甲第10号証及び甲第12の1号証に関して)
請求人は、甲第6の1号証においては本件トシレートと同じく抗がん剤であるイマチニブについて、また、甲第7号証ないし甲第10号証においては抗がん剤以外の活性成分について、各々の高負荷錠剤が開示されていること、及び甲第12の1号証に示されるように、本件優先日時点に市場に実際に存在した活性成分250?300mgを含む錠剤31品目のうち、活性成分の分量が55重量%を超えるものが29品目と高い割合であったことから、実際の製品においても高負荷化を検討するだけでなく、適宜工夫をすることで、錠剤に対する活性成分の分量が55重量%を超える高負荷化を実際に実現することも容易であった旨を主張している。
先に、甲第6の1号証ないし甲第10号証の開示するところについて検討するに、前述(3)エのとおり、これら甲号証は、そこに記載された活性成分とは異なる、本件トシレートを含む錠剤についての技術課題1を、これら甲号証に記載の創意工夫により解決し、本件トシレートの含有量を高負荷化できることを開示するものでない。そのため、これら甲号証の開示に接した当業者であっても、活性成分が本件トシレートである甲2発明において、錠剤の高負荷化を容易に実現できることを合理的に期待することができたとはいえない。
次に、甲第12の1号証の(甲12ア)に示される「本件優先日時点に市場に実際に存在した活性成分250?300mgを含む錠剤31品目のうち、活性成分の分量が55重量%を超えるものが29品目と高い割合であった」ことについて検討する。まず、前段落に示したように、活性成分の種類により錠剤の高負荷化の実現性や実現のための創意工夫は異なるものであるから、(甲12ア)に示される特定の種類の活性成分を含む29品目の錠剤の存在に照らしても、これらの活性成分とは異なる本件トシレートである甲2発明においてまで、錠剤の高負荷化を容易に実現できることを当業者が合理的に期待することができたとはいえない。また、上記「高い割合」であることにより、甲2発明の本件トシレートを含む錠剤においても高負荷化を容易に実現できると推認されるかについても検討するに、(甲9ウ)に「錠剤の大きさは素錠1錠当たりの重量が160?220mgとなるようにするのが服用の負担の軽減及び良好な使用感を得る観点から好ましい」とされることからもわかるように、錠剤全体の重量を大きくすることには、服用感などから限界があるから、活性成分を1錠当たり250mg?300mgという高い含有量で含む錠剤には、賦形剤等の添加剤の含有量の制約から、おのずと錠剤の高負荷化に成功した錠剤が高い割合で含まれることとなる。一方で、錠剤の高負荷化に成功しなかった錠剤は、1錠当たりの活性成分の含量が250mg未満となるように複数錠とすることや錠剤以外の剤形を採用することなどによって、「活性成分250?300mgを含む錠剤」には含まれないこととなる。してみると、甲第12の1号証に示される上記「高い割合」は、錠剤の高負荷化の実現性が高いことを示すものでないから、上記「高い割合」であったことによって、甲2発明の本件トシレートを含む錠剤においても高負荷化が容易に実現可能であると推認できるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張には理由がなく、採用することができない。

イ 甲2発明の錠剤の高負荷化について(甲第11号証に関して)
請求人は、(甲11ア)に示される小型の錠剤とする課題に対応した表である(甲11イ)から、「有効成分量(一錠当たり)が250-350mgの錠剤の場合、錠剤の質量が280-400mgと、有効成分量が350-550mgの場合、錠剤の質量は400-650mgとされているから、本件発明程度の含有量の錠剤における総重量に対する有効成分量の割合は最も少ない場合であっても約54%(350/650)であって、通常はそれ以上の含有量となる」とし、このことに照らすと、本件発明1に特定される程度(組成物の少なくとも55重量%)の分量の活性成分を含む経口投与錠剤を設計することは、製剤設計における常識的な設計によるものであり、この程度の高負荷化の実現性についても、適当な製造条件を採用することで容易に実現可能であることが当然の前提である旨を主張している。
上記主張について検討するに、例えば(甲11イ)に示される「有効成分量(一錠当たり)が250-350mgの錠剤の場合、錠剤の質量が280-400mg」のそれぞれの範囲の中心である重量の有効成分(活性成分)量及び錠剤の重量の錠剤、すなわち活性成分の分量が300mg/340mg=約88重量%の錠剤は、技術常識1において、錠剤の高負荷化の障害の傾向があるとされる50重量%を大きく超える活性成分の分量の錠剤であるところ、請求人の挙げた各甲号証を検討しても、上記「活性成分の分量が・・・約88重量%の錠剤」が容易に実現可能であるとする根拠を見いだすことができない。してみると、(甲11ア)及び(甲11イ)は、錠剤の小型化が実現される場合の活性成分の望ましい分量について示しているに過ぎず、そこに示される活性成分の分量の錠剤が容易に実現可能であることを示唆ものでないし、また、そのことを前提としたものでもない。むしろ、(甲11イ)の表における「嵩増し」について示す(甲11ウ)が、嵩増しの際に添加剤の種類の検討が必要になること、及びその検討を「理論的な予想で行うのではなく、常に実際の試みに基づいて行う」としていることを開示していることからは、活性成分を高負荷化した錠剤を設計し、製造することが容易に実現可能でないことが伺われる。
したがって、請求人の上記主張には理由がなく、採用することができない。

(5)被請求人の主張について
被請求人は、審判事件答弁書において、甲第2の1号証から前記1(1)の甲2発明を認定することができず、以下のいずれかのように甲2発明を認定するべきである旨を主張している。
「VEGF誘発信号形質導入経路によって仲介されるヒトまたは他の哺乳類の疾病を処置するための活性物質として、式Iの化合物の非特定形態(遊離塩基、塩、立体異性体及びそのプロドラッグ)を含む錠剤である、医薬組成物」
又は
「ソラフェニブのトシル酸塩を非特定剤形で投与することによりなる、VEGF誘発信号形質導入経路によって仲介される病気を治療する方法」
そこで、甲第2の1号証に記載された発明を、被請求人の主張する上記いずれかの発明として認定した場合について念のため検討するに、これらいずれの場合であっても、本件発明1と甲2発明との相違点が「組成物の少なくとも55重量%の分量」であることに変わりはなく、当該相違点についての判断は、上記(3)に示したとおりであるから、これらの場合であっても、甲第2の1号証に記載された発明に基づいて、当業者が「組成物の少なくとも55重量%の分量」の本件トシレートを含む錠剤を容易に想到するとはいえない。

(6)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び周知技術ないし技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件発明2?20も、本件発明1を直接又は間接的に引用する医薬組成物の発明であるか、本件発明1の医薬組成物の製造方法の発明、又は本件発明1の医薬組成物の使用についての発明であることから、これらの発明は、本件発明1と同様の理由で、甲2発明及び周知技術ないし技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件発明1?20は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、無効理由1は理由がない。

2 無効理由2について
(1)無効理由2の概要
無効理由2は、甲2発明に、甲第3の1号証に記載された「活性物質として、組成物の20?90重量%の分量の本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。」(ここでいう「本件化合物」は、本件明細書の【0002】に記載の式(I)の化合物であり、以下、同様に「本件化合物」は、この化合物を意味する。)の発明を適用し、その分量を55重量%以上とすることは当業者に容易であるというものであるから、甲第3の1号証に記載された発明について検討する。

(2)甲第3の1号証に記載された発明の認定
甲第3の1号証から、「活性物質として、組成物の20?90重量%の分量の本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。」の発明を認定することができるかについて検討する。
(甲3エ)の冒頭の「薬学的組成物は、適切なインヒビターの約1%?約95%、単一の投与形態において、好ましくは約20%?約90%の活性成分を含む投与形態・・・を含む。」との記載における「投与形態」について、それに続く「単位用量形態は、例えば、糖衣錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐剤またはカプセルである。」との記載から、「糖衣錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐剤またはカプセル」の各剤形が「投与形態」の選択肢として認識されたとしても、錠剤における活性成分の分量が50重量%を超えるような高負荷化における製造上の障害についての技術常識1を踏まえると、(甲3エ)の上記記載に接した当業者であっても、約20%?約90%の範囲の全体にわたって活性成分を含む錠剤、特に当該範囲に含まれる50重量%を超える分量の活性成分を含む高負荷錠剤を直ちに認識することができるとはいえない。
そこで、前記1(3)イで検討した甲第6の1号証ないし甲第10号証に示される各錠剤のように、特定の種類の活性成分の錠剤においては、活性成分の分量が50重量%を超えるような高負荷化が可能であったことを前提として、上記(甲3エ)の冒頭の記載における「インヒビター」が特定の種類の活性成分を意味するものと解することで、上記「約20%?約90%の範囲の全体にわたって活性成分を含む錠剤、特に当該範囲に含まれる50重量%を超える分量の活性成分を含む高負荷錠剤」を認識できる可能性についても検討する。上記「インヒビター」には、(甲3ア)及び(甲3イ)から、好ましくはBay43-9006が例示されたRAFインヒビターと、好ましくはCI-1040が例示されたMEKインヒビターの両者が該当する可能性がある。しかしながら、甲第3号証の記載を検討しても、Bay43-9006とCI-1040、又はRAFインヒビターとMEKインヒビターのいずれが、活性成分として錠剤における分量が50重量%を超えるような高負荷化が可能であったかについて何らの記載も示唆もないから、上記「特定の種類の活性成分を意味する」場合の上記「インヒビター」がいずれのインヒビターであるかが不明である。ここで、上記「Bay43-9006が例示されたRAFインヒビター」は、(甲3ウ)の末尾に「組成物は・・・活性成分として、インヒビターまたは薬学的に受容可能なそれらの塩を含む」と記載されることから、Bay43-9006の薬学的に受容可能な塩を含むものであるところ、Bay43-9006は、(甲4ア)のとおり、本件化合物に相当するものである。そうすると、(甲3エ)の上記記載に接した当業者であっても、上記「Bay43-9006が例示されたRAFインヒビター」に含まれるBay43-9006の薬学的に受容可能な塩、すなわち本件化合物の塩を、約20%?約90%の範囲の全体にわたって含む錠剤、特に当該範囲に含まれる50重量%を超える分量で含む高負荷錠剤を認識することはできないというべきである。そして、請求人の挙げた他の甲号証を検討しても、そのことを認識することができるとする根拠を見いだすことができない。
したがって、甲第3の1号証から、「活性物質として、本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。」の発明を認定することができたとしても、「活性物質として、組成物の20?90重量%の分量の本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。」(特に、当該範囲に含まれる50重量%を超える分量の本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。)の発明を認定することができるとはいえない。

(3)小括
したがって、甲第3の1号証から、「活性物質として、組成物の20?90重量%の分量の本件化合物の塩を含む錠剤である、医薬組成物。」の発明が認定することができるとはいえない以上、当該認定を前提とした無効理由2には理由がなく、本件発明1は、甲2発明に、甲3に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件発明2?20も、本件発明1を直接又は間接的に引用する医薬組成物の発明であるか、本件発明1の医薬組成物の製造方法の発明、又は本件発明1の医薬組成物の使用についての発明であることから、本件発明1と同様に、甲2発明に、甲3に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件発明1?20についての特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-24 
結審通知日 2019-04-26 
審決日 2019-05-10 
出願番号 特願2008-500066(P2008-500066)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 長井 啓子
澤田 浩平
登録日 2013-07-05 
登録番号 特許第5304241号(P5304241)
発明の名称 癌の処置用のオメガ-カルボキシアリール置換ジフェニルウレアを含む医薬組成物  
代理人 古城 春実  
代理人 小野 誠  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 風間 凜汰郎  
代理人 ▲崎▼地 康文  
代理人 牧野 知彦  
代理人 坪倉 道明  
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