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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352801
審判番号 不服2018-14309  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-29 
確定日 2019-06-20 
事件の表示 特願2016-161393号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018- 27265号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月19日の出願であって、平成29年5月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月15日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月31日付け(送達日:同年8月7日)で、同年3月15日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
発射手段により発射されて遊技領域に入った遊技球が前記遊技領域内の左側又は右側の第1流下経路と右側又は左側の第2流下経路との何れかを流下するように構成され、
前記第1流下経路を流下してきた遊技球を前記第2流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能な第1始動手段と、
前記第1始動手段による遊技球の検出に基づいて第1図柄を変動表示可能な第1図柄表示手段と、
第2始動手段による遊技球の検出に基づいて第2図柄を変動表示可能な第2図柄表示手段と、
前記第1図柄の変動と同調して画像表示手段に第1演出図柄を変動表示可能な第1演出図柄表示手段と、
前記第2図柄の変動と同調して前記画像表示手段に第2演出図柄を変動表示可能な第2演出図柄表示手段と、
前記第2流下経路を流下してきた遊技球の方が前記第1流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置され且つ遊技球が入球可能な開状態と該開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態とに変化可能な特定入球手段と、
前記特定入球手段に入球した遊技球を特定領域とそれ以外の領域とに振り分ける振り分け手段と、
前記第1図柄の変動後の停止図柄が第1所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第1所定利益状態を発生させる第1所定利益状態発生手段と、
前記第2図柄の変動後の停止図柄が第2所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第2所定利益状態を発生させる第2所定利益状態発生手段と、
前記特定入球手段に入球した遊技球が前記特定領域に案内された場合に特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段と、
前記第1所定利益状態と前記第2所定利益状態とを含む特定遊技期間中である旨の特定報知を実行可能な特定報知手段とを備えた
遊技機において、
前記第1所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値よりも前記第2所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値の方が大きく、
前記第1所定利益状態中よりも前記第2所定利益状態中の方が、作動する前記特定報知手段の数が多く、
前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段が前記開状態となる期間が終了するまでは、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示しない
ことを特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項1】
A 発射手段により発射されて遊技領域に入った遊技球が前記遊技領域内の左側又は右側の第1流下経路と右側又は左側の第2流下経路との何れかを流下するように構成され、
B 前記第1流下経路を流下してきた遊技球を前記第2流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能な第1始動手段と、
C 前記第1始動手段による遊技球の検出に基づいて第1図柄を変動表示可能な第1図柄表示手段と、
D 第2始動手段による遊技球の検出に基づいて第2図柄を変動表示可能な第2図柄表示手段と、
E 前記第1図柄の変動と同調して画像表示手段に第1演出図柄を変動表示可能な第1演出図柄表示手段と、
F 前記第2図柄の変動と同調して前記画像表示手段に第2演出図柄を変動表示可能な第2演出図柄表示手段と、
G 前記第2流下経路を流下してきた遊技球の方が前記第1流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置され且つ遊技球が入球可能な開状態と該開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態とに変化可能な特定入球手段と、
H 前記特定入球手段に入球した遊技球を特定領域とそれ以外の領域とに振り分ける振り分け手段と、
I 前記第1図柄の変動後の停止図柄が第1所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第1所定利益状態を発生させる第1所定利益状態発生手段と、
J 前記第2図柄の変動後の停止図柄が第2所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第2所定利益状態を発生させる第2所定利益状態発生手段と、
K 前記特定入球手段に入球した遊技球が前記特定領域に案内された場合に特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段と、
L 前記第1所定利益状態と前記第2所定利益状態とを含む特定遊技期間中である旨の特定報知を実行可能な特定報知手段とを備えた
M 遊技機において、
N 前記第1所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値よりも前記第2所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値の方が大きく、
O 前記第1所定利益状態中よりも前記第2所定利益状態中の方が、作動する前記特定報知手段の数が多く、
P 前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示せず且つ前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない
M ことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Pに分説した。)。

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1所定利益状態」に関して、「前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示せず且つ前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における段落【0099】?【0102】、図21等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特許第5927456号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような2種遊技を実行可能な遊技機において、第1始動口への入球に基づいて第1特別遊技を行うか否かの抽選も行い、その抽選に基づいて実行される第1特別遊技では、特定領域への通過が不可能な非通過開放パターンと、特定領域への通過が可能な通過開放パターンとのいずれかにて大入賞口(特別入賞口)が開放される構成とすることが考えられる。しかしながらこのように構成した場合に、どちらの開放パターンかに関係なく、第1特別遊技の実行中に大々的な右打ち報知を行うと、次のような問題が生じる。
【0008】
すなわち、どちらの開放パターンの第1特別遊技においても右打ち報知を大々的に行うと、非通過開放パターンである場合でも第2特別遊技の獲得に対する期待感を遊技者に抱かせてしまう。その結果、第2特別遊技を獲得できないことに遊技者が苛立ち、遊技意欲を低下させてしまうおそれがある。
【0009】
また、逆にどちらの開放パターンの第1特別遊技においても右打ち報知を大々的に行わないと、通過開放パターンの場合に特定領域の通過の機会を遊技者が逃してしまうおそれが生じる。すなわち、遊技者の利益を損なわせるおそれが生じる。さらには、右打ち報知を大々的に行わないこととした場合でも、実際には第1特別遊技中は右打ちすることで大入賞口(特別入賞口)に入賞する可能性が生じている。そのため、これを全く遊技者に示さないこととすると、遊技者の利益を不当に損なわせているとの印象をもたれるおそれもある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。すなわちその課題とするところは、遊技の進行状況に合った打ち方を適正に示しつつも、遊技者の実益にも見合っている打込報知を行うことを目的とする。」

(1-b)「【0026】
また遊技領域3の中央付近には、液晶表示装置である画像表示装置(演出手段)7が設けられている。画像表示装置7の表示画面7aには、後述の第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示(可変表示)に同期した演出図柄(装飾図柄)8L,8C,8Rの変動表示を行う演出図柄表示領域がある。演出図柄表示領域は、例えば「左」「中」「右」の3つの図柄表示エリアからなる。左の図柄表示エリアには左演出図柄8Lが表示され、中の図柄表示エリアには中演出図柄8Cが表示され、右の図柄表示エリアには右演出図柄8Rが表示される。演出図柄はそれぞれ、例えば「1」?「9」までの数字をあらわした複数の図柄からなる。画像表示装置7は、左、中、右の演出図柄の組み合わせによって、後述の第1特別図柄表示器41aおよび第2特別図柄表示器41b(図3(A)参照)にて表示される第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示の結果(つまりは大当たり抽選の結果)を、わかりやすく表示する。」

(1-c)「【0031】
遊技領域3における画像表示装置7の下方には、遊技球の入球し易さが常に変わらない第1始動口(第1始動入賞口、第1入球口、固定入球口)20を備える固定入賞装置19が設けられている。第1始動口20への遊技球の入賞は、第1特別図柄の抽選(大当たり抽選、すなわち大当たり乱数等の取得と判定)の契機となっている。
・・・
【0034】
また、遊技領域3における第1始動口20の下方には、第1大入賞口(他の特別入賞口に相当)30を備えた第1大入賞装置(第1特別可変入賞装置、他の特別入賞手段)31が設けられている。第1大入賞装置31は、開状態と閉状態とをとる開閉部材(他の特別入賞口開閉部材に相当)32を備え、開閉部材32の作動により第1大入賞口30を開閉するものである。開閉部材32は、第1大入賞口ソレノイド33(図4参照)により駆動される。第1大入賞口30は、開閉部材32が開いているとき(つまり開状態のとき)だけ遊技球が入球可能となる。
【0035】
また、遊技領域3における第1大入賞口30の右方には、第2大入賞口(特別入賞口に相当)35を備えた第2大入賞装置(第2特別可変入賞装置、特別入賞手段)36が設けられている。第2大入賞装置36は、開状態と閉状態とをとる開閉部材(特別入賞口開閉部材に相当)37を備え、開閉部材37の作動により第2大入賞口35を開閉するものである。開閉部材37は、前後に進退する進退式のものであり、第2大入賞口ソレノイド38(図4参照)により駆動される。第2大入賞口35は、開閉部材37が開いているとき(つまり開状態のとき)だけ遊技球が入球可能となる。
【0036】
より詳細には、図2に示すように、第2大入賞装置36の内部には、第2大入賞口35を通過した遊技球が通過可能な特定領域(V領域)39および非特定領域70が形成されている。なお、第2大入賞装置36において、特定領域39および非特定領域70の上流には、第2大入賞口35への遊技球の入賞を検知する第2大入賞口センサ35aが配されている。また、特定領域39には、特定領域39への遊技球の通過を検知する特定領域センサ39aが配されている。また、非特定領域70には、非特定領域70への遊技球の通過を検知する非特定領域センサ70aが配されている。また、第2大入賞装置36は、第2大入賞口35を通過した遊技球を特定領域39または非特定領域70のいずれかに振り分ける振分部材71と、振分部材71を駆動する振分部材ソレノイド73とを備えている。なお、振分部材71は、振分部材ソレノイド73の通電時には、遊技球を特定領域39に振り分ける第1の状態(通過許容状態)をとり、振分部材ソレノイド73の非通電時には、遊技球を非特定領域70に振り分ける第2の状態(通過阻止状態)をとる。」

(1-d)「【0042】
このように各種の入賞口等が配されている遊技領域3には、左右方向の中央より左側の左遊技領域(第1遊技領域)3Aと、右側の右遊技領域(第2遊技領域)3Bとがある。左遊技領域3Aを遊技球が流下するように遊技球を発射する打方を、左打ちという。一方、右遊技領域3Bを遊技球が流下するように遊技球を発射する打方を、右打ちという。本形態のパチンコ遊技機1では、左打ちにて遊技したときに遊技球が流下する流路を、第1流路R1といい、右打ちにて遊技したときに遊技球が流下する流路を、第2流路R2という。
【0043】
第1流路R1上には、第1始動口20と、第1大入賞装置31と、アウト口9とが設けられている。遊技者は第1流路R1を流下するように遊技球を打ち込むことで、第1始動口20への入賞を狙う。
【0044】
一方、第2流路R2上には、ゲート28と、電チュー22と、第2大入賞装置36と、第1大入賞装置31と、アウト口9とが設けられている。遊技者は第2流路R2を流下するように遊技球を打ち込むことで、ゲート28への通過、電チュー22に係る第2始動口21、第1大入賞口30、又は第2大入賞口35への入賞を狙う。第2流路R2を転動した遊技球が第1始動口20へ入賞することはない。」

(1-e)「【0049】
第1特別図柄の可変表示は、第1始動口20への遊技球の入賞を契機として行われる。第2特別図柄の可変表示は、第2始動口21への遊技球の入賞を契機として行われる。なお以下の説明では、第1特別図柄および第2特別図柄を総称して特別図柄ということがある。また、第1特別図柄表示器41aおよび第2特別図柄表示器41bを総称して特別図柄表示器41ということがある。また、第1特図保留表示器43aおよび第2特図保留表示器43bを総称して特図保留表示器43ということがある。
【0050】
特別図柄表示器41では、特別図柄(識別情報)を可変表示(変動表示)したあと停止表示することにより、第1始動口20又は第2始動口21への入賞に基づく抽選(特別図柄抽選、大当たり抽選)の結果を報知する。停止表示される特別図柄(停止図柄、可変表示の表示結果として導出表示される特別図柄)は、特別図柄抽選によって複数種類の特別図柄の中から選択された一つの特別図柄である。停止図柄が予め定めた大当たり停止態様の特別図柄(大当たり図柄)である場合には、停止表示された大当たり図柄の種類(つまり当選した大当たりの種類)に応じた開放パターンにて第1大入賞口30を開放させる大当たり遊技(第2特別遊技)が行われる。また、停止図柄が予め定めた小当たり停止態様の特別図柄(小当たり図柄)である場合には、停止表示された小当たり図柄の種類(つまり当選した小当たりの種類)に応じた開放パターンにて第2大入賞口35を開放させる小当たり遊技(第1特別遊技)が行われる。なお、第1特別遊技又は第2特別遊技における大入賞口(第1大入賞口30及び第2大入賞口35)の開放パターンについては後述する。
・・・
【0060】
次に、図3(B)に示す第2の表示器類46について説明する。第2の表示器類46には、右打ちランプ47が含まれている。右打ちランプ47は、第1の表示器類40の右打ち表示器45(図3(A)参照)と同様、右打ちを行った方が高い出玉率で遊技を進行することが可能であることを示すためのものである。また第2の表示器類46には、第1特別図柄の可変表示中か否かを示す特1変動ランプ48a、第2特別図柄の可変表示中か否かを示す特2変動ランプ48b、第1特図保留の記憶数を示す特1保留ランプ49a、および第2特図保留の記憶数を示す特2保留ランプ49bが含まれている。」

(1-f)「【0083】
一方特別図柄抽選の結果、小当たりに当選すると、第2大入賞口35を1回開放させる小当たり遊技が実行される。小当たり遊技によって開放された第2大入賞口35へ遊技球が入賞し、その遊技球が第2大入賞装置36内の特定領域39を通過した場合には、大当たり当選となり、続けて15Rにわたって第1大入賞口30を開放させる大当たり遊技(2種大当たり)が実行される。この大当たり遊技(特定領域39への通過を契機とする大当たり遊技)が実行された場合には、小当たり遊技としての第2大入賞口35の開放が1R目に相当することになる。従ってこのときの総ラウンド数は16Rとなる。なお、大当たり遊技や小当たり遊技を特別遊技と称することもある。また、特別遊技においては1ラウンド中に複数回大入賞口を開放させるラウンドがあってもよい。
【0084】
より詳細には本形態では、図6に示すように、小当たりの種別として「16R時短小当たりA」、「16R時短小当たりB」、「16R時短小当たりC」、及び「16R通常小当たり」とがある。各種別の小当たりは、小当たり遊技を行って、その小当たり遊技において特定領域39への遊技球の通過があれば大当たり遊技(2種大当たり遊技)を行うものである。小当たり遊技において特定領域39への遊技球の通過がなければ、大当たり遊技は実行されない。「16R時短小当たりA」は、特定領域39への通過(V通過やV入賞ともいう)が実質的に不可能な小当たりである。これに対して、「16R時短小当たりB」、「16R時短小当たりC」、及び「16R通常小当たり」は、V通過が必ず可能な小当たりである。小当たり遊技の実行中にV通過可能か否かは、振分部材71の作動パターンおよび開閉部材37の開放パターンによって決まる。この点については後に詳述する。
・・・
【0088】
また、「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりB」は第1特別図柄の抽選でのみ当選する可能性がある。これに対して「16R時短小当たりC」及び「16R通常小当たり」は第2特別図柄の抽選でのみ当選する可能性がある。なお、第1特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりA」に当選した場合には、第1特別図柄表示器41aに「特図1_時短有り小当たり図柄1」が停止表示される。また、第1特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりB」に当選した場合には、第1特別図柄表示器41aに「特図1_時短有り小当たり図柄2」が停止表示される。また、第2特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりC」に当選した場合には、第2特別図柄表示器41bに「特図2_時短有り小当たり図柄3」が停止表示される。また、第2特別図柄の抽選によって「16R通常小当たり」に当選した場合には、第2特別図柄表示器41bに「特図2_時短無し小当たり図柄」が停止表示される。なお、「16R時短小当たりA」、「16R時短小当たりB」、及び「16R時短小当たりC」は「特典付き小当たり」に相当し、「16R通常小当たり」は「特典なし小当たり」に相当する。また、「16R時短小当たりB」は「第1当たり」に相当し、「16R時短小当たりA」は「第2当たり」に相当する。」

(1-g)「【0122】
[特別動作処理]遊技制御用マイコン81は、普通動作処理(S105)に次いで、図15に示す特別動作処理(S106)を行う。特別動作処理(S106)では、特別図柄表示器41および大入賞口装置(第1大入賞装置31および第2大入賞装置36)に関する処理を5つの段階に分け、それらの各段階に「特別動作ステータス1,2,3,4,5」を割り当てている。そして、「特別動作ステータス」が「1」である場合には(S901でYES)、特別図柄待機処理(S902)を行い、「特別動作ステータス」が「2」である場合には(S901でNO、S903でYES)、特別図柄変動中処理(S904)を行い、「特別動作ステータス」が「3」である場合には(S901,S903で共にNO、S905でYES)、特別図柄確定処理(S906)を行い、「特別動作ステータス」が「4」である場合には(S901,S903,S905で共にNO、S907でYES)、大当たり遊技としての特別電動役物処理1(S908)を行い、「特別動作ステータス」が「5」である場合には(S901,S903,S905,S907の全てがNO)、小当たり遊技としての特別電動役物処理2(S909)を行う。なお特別動作ステータスは、初期設定では「1」である。
・・・
【0146】
一方、ステップS1603において大当たりフラグがONでなければ(S1603でNO)、続いて小当たりフラグがONであるか否かを判定する(S1611)。小当たりフラグがONであれば(S1611でYES)、特別動作ステータスを「5」にセットする(S1612)。なお小当たりフラグがONである場合には、時短フラグがONであってもOFFにはしない。
【0147】
次いで遊技制御用マイコン81は、右打ちの報知をサブ制御基板90に行わせるための右打ち指定コマンドを所定の出力バッファにセットするとともに、右打ち表示器45を点灯させる(S1613)。このようにするのは、小当たり遊技の実行により第2流路R2上に設けられた第2大入賞口35が開放されるからである。その後、遊技制御用マイコン81は、小当たり遊技を開始するべく、小当たりのオープニングコマンドをセットして(S1614)、小当たり遊技のオープニングを開始する(S1615)。
【0148】
ステップS1613に続いて、遊技制御用マイコン81は、当選した小当たりの種類に応じた開放パターン(詳しくは図6を参照)をセットする(S1616)。なおこのときに、大入賞口開放カウンタの値を、当選した小当たりの種類に応じた値にセットする。その後遊技制御用マイコン81は、振分部材作動フラグをONにして(S1617)、本処理を終える。振分部材作動フラグは、振分部材71を作動させる期間であることを示すフラグである。つまり本形態では、振分部材71の作動は小当たり遊技のオープニングとともに開始される。なお、振分部材の作動パターンについては後に詳述する。」

(1-h)「【0172】
一方ステップS2313においてVフラグがONであれば(S2313でYES)、2種大当たり遊技を実行するため、遊技制御用マイコン81は、VフラグをOFFするとともに(S2319)、大当たりフラグをONして(S2320)、特別動作ステータスを「4」にセットする(S2321)。続いて、時短フラグがONであれば(S2322でYES)時短フラグをOFFする(S2323)。そして、大当たりのオープニングコマンドをセットするとともに(S2324)、大当たりのオープニングを開始する(S2325)。これにより、第2大入賞口35を短時間にわたって開放する小当たり遊技から2種大当たり遊技に移行する。
・・・
【0197】
乱数シード更新処理(S4005)が終了すると、コマンド送信処理を実行する(S4006)。コマンド送信処理では、サブ制御基板90のRAM94内の出力バッファに格納されている各種のコマンドを、画像制御基板100に送信する。コマンドを受信した画像制御基板100は、コマンドに従い画像表示装置7を用いて各種の演出(演出図柄変動演出や、大当たり遊技に伴うオープニング演出、ラウンド演出(開放遊技演出)、エンディング演出や、小当たり演出等)を実行する。なお、画像制御基板100による各種の演出の実行に伴ってサブ制御基板90は、音声制御基板106を介してスピーカ67から音声を出力したり、ランプ制御基板107を介して盤ランプ5や枠ランプ66、第2の表示器類46を発光させたり、装飾可動体15を駆動させたりする。演出制御用マイコン91は続いて、割り込みを許可する(S4007)。以降、ステップS4004?S4007をループさせる。割り込み許可中においては、受信割り込み処理(S4008)、1msタイマ割り込み処理(S4009)、および10msタイマ割り込み処理(S4010)の実行が可能となる。」

(1-i)「【0216】
続いて、演出制御用マイコン91は、主制御基板80から右打ち指定コマンドを受信したか否か判定し(S4424)、受信していなければステップS4427に進む。これに対して受信していれば、右打ちランプ47(図3(B)参照)を点灯させるための右打ちランプ点灯データをセットする(S4425)。ステップS4425でセットされた右打ちランプ点灯データに基づいて上述のランプデータ出力処理(図31のステップS4202)が実行されると、右打ちランプ47は点灯する。
【0217】
続いて演出制御用マイコン91は、右矢印画像表示処理(S4426)を行う。右矢印画像表示処理(S4426)では、所定の右矢印画像RI(例えば図47(a)参照)を表示画面7aに表示するための右矢印画像表示コマンドを、RAM94の出力バッファにセットする。但し、特1小当たり(特1V非通過小当たり及び特1V通過小当たり)の小当たり遊技の開始時であれば、右矢印画像表示コマンドをセットしない。特1V非通過小当たりの当選時には右矢印画像RIの表示を行わず、特1V通過小当たりの当選時には、後述する右打ち画像表示処理(S4306,図41)にて、右矢印画像RIを含む所定の右打ち画像(図51(b)のRI及びNI)を表示するからである。
【0218】
ステップS4426でセットされた右矢印画像表示コマンドがコマンド送信処理(S4006)により画像制御基板100に送信されると、画像制御基板100のCPU102は、右向きの矢印と「右打ち」の文字からなる右矢印画像RIを、画像表示装置7の表示画面7aに表示する。本形態では、原則として、右矢印画像RIの表示は、右打ち指定コマンドの受信時に開始され、左打ち指定コマンドの受信時に終了する。つまり、大当たり遊技中や特図2の抽選に基づく小当たり遊技中、時短状態且つ高ベース状態(特典遊技状態)中、第2特図保留がある状態で通常遊技状態に制御されたときには、右矢印画像RIが表示されることとなる。なお本形態では、大当たり遊技中であってもエンディング中は表示しないようにしている。」

(1-j)「【0272】
ここで、特1V通過小当たり(16R時短小当たりB)への当選時における右打ち報知と、特1V非通過小当たり(16R時短小当たりA)への当選時における右打ち報知とを、図52に基づいて説明する。図52では、(a)から(d)が特1V非通過小当たりへの当選時のタイミングチャートとなっており、(e)から(h)が特1V通過小当たりへの当選時のタイミングチャートとなっている。図52中の(a)及び(e)は、第2大入賞口35の開放タイミングを示しており、(b)及び(f)は、小当たり演出を示しており、(c)及び(g)は、右打ちランプ47(図3(B)参照)の点灯タイミングを示しており、(d)及び(h)は、右打ち画像(図51(b)のRI及びNI)の表示タイミングを示している。
・・・
【0276】
次に、特1V非通過小当たり又は特1V通過小当たりへの当選時における右打ち報知について説明する。図52の(c)及び(g)に示すように、どちらの小当たり当選時においても、右打ちランプ47は小当たり遊技のオープニングの開始時から点灯される。なお、右打ちランプ47の点灯は、小当たり遊技のオープニングの開始時に主制御基板80から送信される右打ち指定コマンドに基づいて行われる(図33のステップS4425参照)。但し、右打ちランプ47は、表示画面7aに比して著しく小さい。そのため、この右打ちランプ47の点灯による右打ち報知(第1打込報知)は、遊技者が気付き難い右打ち報知である。
【0277】
これに対して、右打ち画像(図51(b)のRI及びNI)の表示は、図52の(d)及び(h)に示すように、特1V非通過小当たり当選時には行われることがなく、特1V通過小当たり当選時には小当たり遊技のオープニングの開始から4000ms経過後に行われる。この4000msという時間は、両小当たり演出(特1V非通過小当たり用演出と特1V通過小当たり用演出)における共通演出の演出尺と同じである(図52(b)及び(f)参照)。つまり本形態では、特1V通過小当たり当選時には図51(b)に示すように、Vチャンス報知演出の実行開始とともに、右打ち画像(右矢印画像RI及びV打込指示画像NI)が表示されるようになっている(図52(f)及び(h)参照)。この右打ち画像の表示は、表示画面7a上で比較的大きく行われる。そのため、この右打ち画像の表示による右打ち報知(第2打込報知)は、遊技者が容易に認識できる右打ち報知である。このように本形態によれば、特1V通過小当たり当選時には右打ち画像の表示により遊技者に対してV入賞を促す一方で、特1V非通過小当たり時には右打ち画像を表示しないことにより、遊技者が無駄に(V入賞が不可能なのに)右打ちをしないようにしている。」

(1-k)「



(1-l)段落【0216】には「右打ち指定コマンドを受信したか否か判定し(S4424)、・・・受信していれば、右打ちランプ47(図3(B)参照)を点灯させる」と記載されている。
そして、「右打ち指定コマンド」について、段落【0146】、【0147】には、「小当たりフラグがONであれば(S1611でYES)、特別動作ステータスを「5」にセットする(S1612)。・・・右打ち指定コマンドを所定の出力バッファにセットする」と記載されているから、小当たりである「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の場合には小当たりフラグがONとなり、右打ち指定コマンドがセットされるといえる。
また、段落【0060】には、「第2の表示器類46には、右打ちランプ47が含まれている。」と記載されている。そして、図1には、右打ちランプ47を含む第2の表示器類46は、画像表示装置7の近傍にあることが示されている。
さらに、段落【0276】には、「どちらの小当たり当選時においても、右打ちランプ47は小当たり遊技のオープニングの開始時から点灯される。」と記載されている。
よって、引用例1には、「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では画像表示装置7の近傍の右打ちランプ47がオープニングの開始時から点灯されている点が記載されているといえる。

(1-m)段落【0217】には、「右矢印画像表示処理(S4426)では、所定の右矢印画像RI(例えば図47(a)参照)を表示画面7aに表示するための右矢印画像表示コマンドを、RAM94の出力バッファにセットする。・・・特1V非通過小当たりの当選時には右矢印画像RIの表示を行わず」と記載され、段落【0272】には、特1V非通過小当たりは「16R時短小当たりA」であることが記載されている。
また、段落【0218】には、「右矢印画像RIの表示は、右打ち指定コマンドの受信時に開始され、左打ち指定コマンドの受信時に終了する。特図2の抽選に基づく小当たり遊技中、・・・右矢印画像RIが表示されることとなる。」と記載され、段落【0088】には、第2特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりC」に当選することが記載されている。
よって、引用例1には、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行うが、「16R時短小当たりA」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行わない点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-k)の記載事項及び(1-l)?(1-m)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 左遊技領域3Aを遊技球が流下するように遊技球を発射する左打ちにて遊技したときに遊技球が流下する第1流路R1と、右遊技領域3Bを遊技球が流下するように遊技球を発射する右打ちにて遊技したときに遊技球が流下する第2流路R2とを有し(段落【0042】)、
b 第1流路R1上には、第1始動口20が設けられ、遊技者は第1流路R1を流下するように遊技球を打ち込むことで、第1始動口20への入賞を狙い(段落【0043】)、第2流路R2上には、電チュー22と、第2大入賞口35が設けられ、遊技者は第2流路R2を流下するように遊技球を打ち込むことで、電チュー22に係る第2始動口21、第2大入賞口35への入賞を狙い、第2流路R2を転動した遊技球が第1始動口20へ入賞することはなく(段落【0044】、【0147】)、
c 第1特別図柄を可変表示したあと停止表示することにより、第1始動口20への入賞に基づく抽選の結果を報知する第1特別図柄表示器41aと(段落【0049】、【0050】)、
d 第2特別図柄を可変表示したあと停止表示することにより、第2始動口21への入賞に基づく抽選の結果を報知する第2特別図柄表示器41bと(段落【0049】、【0050】)、
e 第1特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示を実行する画像表示装置7と(段落【0026】、【0197】)、
f 第2特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示を実行する画像表示装置7と(段落【0026】、【0197】)、
g 遊技領域3における画像表示装置7の下方に設けられた第1大入賞口30の右方に配置され、開閉部材37により開状態と閉状態とをとる第2大入賞口35と(段落【0031】、【0034】、【0035】)、
h 第2大入賞口35を通過した遊技球を特定領域39または非特定領域70のいずれかに振り分ける振分部材71と(段落【0036】)、
i 第1特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりA」に当選した場合には、第1特別図柄表示器41aに「特図1_時短有り小当たり図柄1」を停止表示し、第2大入賞口35を1回開放する小当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81と(段落【0083】、【0088】、【0148】)、
j 第2特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりC」に当選した場合には、第2特別図柄表示器41bに「特図2_時短有り小当たり図柄3」を停止表示し、第2大入賞口35を1回開放する小当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81と(段落【0083】、【0088】、【0148】)、
k 小当たり遊技によって開放された第2大入賞口35へ遊技球が入賞し、その遊技球が特定領域39を通過した場合には、大当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81と(段落【0083】、【0172】)、
l 小当たり遊技のオープニングの開始時に主制御基板80から送信される右打ち指定コマンドに基づいて点灯する右打ちランプ47及び「右打ち」の文字からなる右矢印画像RIを表示する画像表示装置7とを備えた(段落【0216】?【0218】、【0276】)、
m パチンコ遊技機1において(段落【0042】)、
n 「16R時短小当たりA」は、特定領域39への通過が実質的に不可能な小当たりであり、「16R時短小当たりC」は、特定領域39への通過が必ず可能な小当たりであり(段落【0084】)、
o、p 「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では画像表示装置7の近傍の右打ちランプ47がオープニングの開始時から点灯され(認定事項(1-l))、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行うが、「16R時短小当たりA」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行わない(認定事項(1-m))
m パチンコ遊技機1。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2016-137162号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0034】
また遊技領域3の中央付近には、液晶表示装置である画像表示装置7が設けられている。画像表示装置7の表示画面7aには、後述の第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示(可変表示)に同期した演出図柄(装飾図柄)8L,8C,8Rの変動表示を行う演出図柄表示領域がある。演出図柄表示領域は、例えば「左」「中」「右」の3つの図柄表示エリアからなる。左の図柄表示エリアには左演出図柄8Lが表示され、中の図柄表示エリアには中演出図柄8Cが表示され、右の図柄表示エリアには右演出図柄8Rが表示される。演出図柄はそれぞれ、例えば「1」?「9」までの数字をあらわした複数の図柄からなる。画像表示装置7は、左、中、右の演出図柄の組み合わせによって、後述の第1特別図柄表示器41aおよび第2特別図柄表示器41b(図3参照)にて表示される第1特別図柄および第2特別図柄の変動表示の結果(つまりは大当たり抽選の結果)を、わかりやすく表示する。
・・・
【0088】
3.大当たり等の説明
本形態のパチンコ遊技機1では、大当たり抽選(特別図柄抽選)の結果として、「大当たり」、「小当たり」、「はずれ」がある。詳細には、第1特別図柄の抽選の結果としては、「大当たり」、「小当たり」、「はずれ」があり、第2特別図柄の抽選の結果としては、「大当たり」、「小当たり」がある。すなわち、第2特別図柄の抽選で「はずれ」となることはない。「大当たり」のときには、特別図柄表示器41に「大当たり図柄」が停止表示される。「小当たり」のときには、特別図柄表示器41に「小当たり図柄」が停止表示される。「はずれ」のときには、特別図柄表示器41に「ハズレ図柄」が停止表示される。」
・・・
【0094】
一方特別図柄抽選の結果、小当たりに当選すると、第2大入賞口35を1回開放させる小当たり遊技が実行される。小当たり遊技によって開放された第2大入賞口35へ遊技球が入賞し、その遊技球が第2大入賞装置36内の特定領域39を通過した場合には、大当たり当選となり、続けて15Rにわたって第1大入賞口30を開放させる大当たり遊技(2種大当たり遊技)が実行される。この2種大当たり遊技が実行された場合には、小当たり遊技としての第2大入賞口35の開放が1R目に相当することになる。従ってこのときの総ラウンド数は16Rとなる。なお、大当たり遊技や小当たり遊技を特別遊技と称することもある。また、特別遊技においては1ラウンド中に複数回大入賞口を開放させるラウンドがあってもよい。
【0095】
より詳細には本形態では、図9に示すように、小当たりの種別として「16R時短小当たりA」、「16R時短小当たりB」、「16R時短小当たりC」、及び「16R通常小当たり」とがある。各種別の小当たりは、小当たり遊技を行って、その小当たり遊技において特定領域39への遊技球の通過があれば大当たり遊技(2種大当たり遊技)を行うものである。小当たり遊技において特定領域39への遊技球の通過がなければ、大当たり遊技は実行されない。「16R時短小当たりA」は、特定領域39への通過(V通過ともいう)が実質的に不可能な小当たりである。これに対して、「16R時短小当たりB」、「16R時短小当たりC」、及び「16R通常小当たり」は、右打ちにて遊技をしていればV通過が必ず可能な小当たりである。小当たり遊技の実行中にV通過可能か否かは、振分部材71の作動パターンおよび開閉部材37の開放パターンによって決まる。この点については後に詳述する。」

(2-b)「【0325】
[特殊V非通過小当たり演出選択処理]S5113で行う特殊V非通過小当たり演出選択処理と、S5213で行う特殊V非通過小当たり演出選択処理とは、処理の流れが同じであるため図48に基づいてまとめて説明する。図48に示す特殊V非通過小当たり演出選択処理(S5113,S5213)は、特1V非通過小当たりの当選に基づく小当たり遊技中に小当たり時先読み保留演出又はゾーン移行演出のどちらも行わないと判定した場合に、特殊ハズレ演出を行うか否かを選択する処理である。特殊ハズレ演出とは、特1V非通過小当たり又は特1V通過小当たりのどちらに当選したのか分からない導入画像を表示した後、特1V非通過小当たりに当選したこと(遊技球を特定領域39へ通過させる状況にならないこと)を遊技者に意識させる特殊ハズレ画像を表示する演出である。この導入画像及び特殊ハズレ画像の種別については、後述する。
【0326】
図48に示すように、演出制御用マイコン91はまず、特殊ハズレ演出乱数を取得する(S5401)。すなわち、特殊ハズレ演出乱数に係る乱数カウンタが示す乱数値を、RAM94の所定の記憶領域に記憶する。続いて演出制御用マイコン91は、取得した特殊ハズレ演出乱数を、図58(b)に示す特殊ハズレ演出乱数テーブルを用いて判定する(S5402)。この判定により、特殊ハズレ演出を実行するか否かを決定する。
【0327】
本形態では、上述したように導入画像を経て特殊ハズレ画像を表示する特殊ハズレ演出として、図58(b)に示すように、第1特殊ハズレ演出と第2特殊ハズレ演出と第3特殊ハズレ演出とがある。第1特殊ハズレ演出では、キャラクタ及び「押して!」の文字が示されたボタンの導入画像6F(図64(b)参照)が表示された後、爆発したボタンの特殊ハズレ画像6H(図64(e)参照)が表示される。」

(2-c)「



(2-d)図64(b)、(e)には、小当たり遊技中の特殊ハズレ演出において、画面表示装置7の表示画面7aには、演出図柄(装飾図柄)を表示しない点が示されている。

上記(2-a)?(2-k)の記載事項及び(2-l)?(2-m)の認定事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。

「特別図柄抽選の結果、小当たりに当選すると、第2大入賞口35を1回開放させる小当たり遊技が実行され、小当たり遊技によって開放された第2大入賞口35へ遊技球が入賞し、その遊技球が第2大入賞装置36内の特定領域39を通過した場合には、大当たり当選となるパチンコ遊技機1において(段落【0088】、【0094】)、
小当たりの種別として、特定領域39への通過(V通過ともいう)が実質的に不可能な小当たりと、V通過が必ず可能な小当たりとがあり(段落【0095】)、
V非通過小当たりに当選に基づく小当たり遊技中に、遊技球を特定領域39へ通過させる状況にならないことを遊技者に意識させる特殊ハズレ画像を表示する演出を実行するとともに、画面表示装置7の表示画面7aには、演出図柄(装飾図柄)を表示しないパチンコ遊技機1(段落【0034】、【0325】、認定事項(2-d))。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の見出しの(a)?(p)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明においては「左遊技領域3Aを遊技球が流下するように遊技球を発射する」から、遊技球の発射手段を有していることは明らかである。
そして、引用発明の「第1流路R1」、「第2流路R2」は、それぞれ、本願補正発明の「第1流下経路」、「第2流下経路」に相当する。
よって、引用発明の「左遊技領域3Aを遊技球が流下するように遊技球を発射する左打ちにて遊技したときに遊技球が流下する第1流路R1と、右遊技領域3Bを遊技球が流下するように遊技球を発射する右打ちにて遊技したときに遊技球が流下する第2流路R2とを有」する点は、本願補正発明の「発射手段により発射されて遊技領域に入った遊技球が前記遊技領域内の左側又は右側の第1流下経路と右側又は左側の第2流下経路との何れかを流下するように構成され」る点に相当する。

(b)引用発明の「第1始動口20」は、本願補正発明の「第1始動手段」に相当する。
そして、引用発明の「第1始動口20」は、第1流路R1上に設けられており、第2流路R2を転動した遊技球が第1始動口20へ入賞することはないから、当該「第1始動口20」においては、第1流路R1を流下したきた遊技球は、第2流路R2を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能といえる。
よって、引用発明の「第1流路R1上には、第1始動口20が設けられ、遊技者は第1流路R1を流下するように遊技球を打ち込むことで、第1始動口20への入賞を狙い、第2流路R2上には、電チュー22と、第2大入賞口35が設けられ、遊技者は第2流路R2を流下するように遊技球を打ち込むことで、電チュー22に係る第2始動口21、第2大入賞口35への入賞を狙い、第2流路R2を転動した遊技球が第1始動口20へ入賞することはな」い点は、本願補正発明の「前記第1流下経路を流下してきた遊技球を前記第2流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能な第1始動手段」を備える点に相当する。

(c)引用発明の「第1特別図柄」は、本願補正発明の「第1図柄」に相当する。
また、引用発明において、第1始動口20へ入賞した場合には、遊技球の検出に基づいて抽選を行い、抽選の結果を報知することは自明な事項である。
よって、引用発明の「第1特別図柄を可変表示したあと停止表示することにより、第1始動口20への入賞に基づく抽選の結果を報知する第1特別図柄表示器41a」は、本願補正発明の「前記第1始動手段による遊技球の検出に基づいて第1図柄を変動表示可能な第1図柄表示手段」に相当する。

(d)引用発明の「第2特別図柄」は、本願補正発明の「第2図柄」に相当する。
また、引用発明において、第2始動口21へ入賞した場合には、遊技球の検出に基づいて抽選を行い、抽選の結果を報知することは自明な事項である。
よって、引用発明の「第2特別図柄を可変表示したあと停止表示することにより、第2始動口21への入賞に基づく抽選の結果を報知する第2特別図柄表示器41b」は、本願補正発明の「第2始動手段による遊技球の検出に基づいて第2図柄を変動表示可能な第2図柄表示手段」に相当する。

(e)引用発明の「画像表示装置7」は、本願補正発明の「画像表示手段」に相当する。
また、引用発明の「第1特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示」は、本願補正発明の「第1図柄の変動と同調」した「第1演出図柄」の「変動表示」に相当する。
よって、引用発明の「第1特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示を実行する画像表示装置7」は、本願補正発明の「前記第1図柄の変動と同調して画像表示手段に第1演出図柄を変動表示可能な第1演出図柄表示手段」に相当する。

(f)引用発明の「第2特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示」は、本願補正発明の「第2図柄の変動と同調」した「第2演出図柄」の「変動表示」に相当する。
よって、引用発明の「第2特別図柄の変動表示に同期した演出図柄8L,8C,8Rの変動表示を実行する画像表示装置7」は、本願補正発明の「前記第2図柄の変動と同調して前記画像表示手段に第2演出図柄を変動表示可能な第2演出図柄表示手段」に相当する。

(g)引用発明の構成a、bから、「第2大入賞口35」は、右打ちにて遊技したときに遊技球が流下する第2流路R2上に設けられている。
さらに、引用発明の「第2大入賞口35」は、遊技領域3の右方に配置されているから、第2流路R2(第2流下経路)を流下してきた遊技球の方が、第1流路R1(第1流下流路)を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置されているといえる。
また、引用発明の開閉部材37による「開状態」とは、遊技球が入球可能な開状態であり、「閉状態」とは、開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態であることは明らかである。
よって、引用発明の「遊技領域3における画像表示装置7の下方に設けられた第1大入賞口30の右方に配置され、開閉部材37により開状態と閉状態とをとる第2大入賞口35」は、本願補正発明の「前記第2流下経路を流下してきた遊技球の方が前記第1流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置され且つ遊技球が入球可能な開状態と該開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態とに変化可能な特定入球手段」に相当する。

(h)引用発明の「第2大入賞口35」、「特定領域39」、「非特定領域70」は、それぞれ、本願補正発明の「特定入球手段」、「特定領域」、「それ以外の領域」に相当する。
よって、引用発明の「第2大入賞口35を通過した遊技球を特定領域39または非特定領域70のいずれかに振り分ける振分部材71」は、本願補正発明の「前記特定入球手段に入球した遊技球を特定領域とそれ以外の領域とに振り分ける振り分け手段」に相当する。

(i)引用発明の「16R時短小当たりA」、「特図1_時短有り小当たり図柄1」、「遊技制御用マイコン81」は、それぞれ、本願補正発明の「第1所定利益状態」、「第1所定態様」、「第1所定利益状態発生手段」に相当する。
よって、引用発明の「第1特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりA」に当選した場合には、第1特別図柄表示器41aに「特図1_時短有り小当たり図柄1」を停止表示し、第2第入賞口35を1回開放する小当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「前記第1図柄の変動後の停止図柄が第1所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第1所定利益状態を発生させる第1所定利益状態発生手段」に相当する。

(j)引用発明の「16R時短小当たりC」、「特図2_時短有り小当たり図柄3」、「遊技制御用マイコン81」は、それぞれ、本願補正発明の「第2所定利益状態」、「第2所定態様」、「第2所定利益状態発生手段」に相当する。
よって、引用発明の「第2特別図柄の抽選によって「16R時短小当たりC」に当選した場合には、第2特別図柄表示器41bに「特図2_時短有り小当たり図柄3」を停止表示し、第2第入賞口35を1回開放する小当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「前記第2図柄の変動後の停止図柄が第2所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第2所定利益状態を発生させる第2所定利益状態発生手段」に相当する。

(k)引用発明の「大当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段」に相当する。
よって、引用発明の「小当たり遊技によって開放された第2大入賞口35へ遊技球が入賞し、その遊技球が特定領域39を通過した場合には、大当たり遊技を実行する遊技制御用マイコン81」は、本願補正発明の「前記特定入球手段に入球した遊技球が前記特定領域に案内された場合に特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段」に相当する。

(l)上記(1-l)で検討したとおり、小当たりである「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の場合には小当たりフラグがONとなり、右打ち指定コマンドがセットされるから、引用発明の「小当たり遊技のオープニングの開始時」とは、「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の小当たり遊技中であることは明らかである。
そして、引用発明の「右打ちランプ47」及び「右矢印画像RIを表示する画像表示装置7」は、本願補正発明の「特定報知手段」に相当する。
よって、引用発明の「小当たり遊技のオープニングの開始時に主制御基板80から送信される右打ち指定コマンドに基づいて点灯する右打ちランプ47及び「右打ち」の文字からなる右矢印画像RIを表示する画像表示装置7」は、本願補正発明の「第1所定利益状態と前記第2所定利益状態とを含む特定遊技期間中である旨の特定報知を実行可能な特定報知手段」に相当する。

(m)引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

(n)引用発明の構成kによれば、遊技球が特定領域39を通過した場合には、大当たり遊技が実行されるから、特定領域39への通過が実質的に不可能な「16R時短小当たりA」(第1所定利益状態)よりも特定領域39への通過が必ず可能な「16R時短小当たりC」(第2所定利益状態)の方が遊技者が得られる利益の期待値が大きいといえる。
よって、引用発明の「「16R時短小当たりA」は、特定領域39への通過が実質的に不可能な小当たりであり、「16R時短小当たりC」は、特定領域39への通過が必ず可能な小当たりであ」る点は、本願補正発明の「前記第1所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値よりも前記第2所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値の方が大き」い点に相当する。

(o)引用発明の「16R時短小当たりA」の小当たり遊技(第1所定利益状態中)では、右打ちランプ47が点灯し、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技(第2所定利益状態中)では、右打ちランプ47が点灯するとともに右矢印画像RIの表示を行うから、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技(第2所定利益状態中)の方が特定報知手段の数が多いといえる。
よって、引用発明の「「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では画像表示装置7の近傍の右打ちランプ47がオープニングの開始時から点灯され、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行うが、「16R時短小当たりA」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行わない」点は、本願補正発明の「前記第1所定利益状態中よりも前記第2所定利益状態中の方が、作動する前記特定報知手段の数が多」い点に相当する。

(p)引用発明の「16R時短小当たりA」の小当たり遊技(第1所定利益状態中)で右打ちランプ47が点灯するから、右打ちランプ47の点灯は、小当たり遊技の開始から第2第入賞口35(特定入球手段)の開放期間が終了する小当たり遊技の終了までであることは明らかである。
また、引用発明の「「16R時短小当たりA」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行わない」点は、本願補正発明の「第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない」点に相当する。
よって、引用発明の「「16R時短小当たりA」及び「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では画像表示装置7の近傍の右打ちランプ47がオープニングの開始時から点灯され、「16R時短小当たりC」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行うが、「16R時短小当たりA」の小当たり遊技では右矢印画像RIの表示を行わない」点と、本願補正発明の「前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示せず且つ前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない」点とは、「前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない」点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 発射手段により発射されて遊技領域に入った遊技球が前記遊技領域内の左側又は右側の第1流下経路と右側又は左側の第2流下経路との何れかを流下するように構成され、
B 前記第1流下経路を流下してきた遊技球を前記第2流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能な第1始動手段と、
C 前記第1始動手段による遊技球の検出に基づいて第1図柄を変動表示可能な第1図柄表示手段と、
D 第2始動手段による遊技球の検出に基づいて第2図柄を変動表示可能な第2図柄表示手段と、
E 前記第1図柄の変動と同調して画像表示手段に第1演出図柄を変動表示可能な第1演出図柄表示手段と、
F 前記第2図柄の変動と同調して前記画像表示手段に第2演出図柄を変動表示可能な第2演出図柄表示手段と、
G 前記第2流下経路を流下してきた遊技球の方が前記第1流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置され且つ遊技球が入球可能な開状態と該開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態とに変化可能な特定入球手段と、
H 前記特定入球手段に入球した遊技球を特定領域とそれ以外の領域とに振り分ける振り分け手段と、
I 前記第1図柄の変動後の停止図柄が第1所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第1所定利益状態を発生させる第1所定利益状態発生手段と、
J 前記第2図柄の変動後の停止図柄が第2所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第2所定利益状態を発生させる第2所定利益状態発生手段と、
K 前記特定入球手段に入球した遊技球が前記特定領域に案内された場合に特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段と、
L 前記第1所定利益状態と前記第2所定利益状態とを含む特定遊技期間中である旨の特定報知を実行可能な特定報知手段とを備えた
M 遊技機において、
N 前記第1所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値よりも前記第2所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値の方が大きく、
O 前記第1所定利益状態中よりも前記第2所定利益状態中の方が、作動する前記特定報知手段の数が多く、
P’ 前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示せず且つ前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない
M ことを特徴とする遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
第1所定利益状態が開始してから少なくとも特定入球手段の開放期間が終了するまでは、本願補正発明では、「前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示しない」のに対し、引用発明では、そのように特定されていない点(構成P)。

(4)判断
ア 上記相違点について検討する。
引用例2記載の事項には、「V非通過小当たりに当選に基づく小当たり遊技中に、遊技球を特定領域39へ通過させる状況にならないことを遊技者に意識させる特殊ハズレ画像を表示する演出を実行するとともに、画面表示装置7の表示画面7aには、演出図柄(装飾図柄)を表示しないパチンコ遊技機1。」が開示されている。
上記引用例2記載の事項の小当たり遊技においては、第2大入賞口35を1回開放させるから、「小当たり遊技中」とは、小当たり遊技が開始されてから第2大入賞口35(特定入球手段)の開放期間が終了するまでといえる。
また、引用例2記載の事項においては、画面表示装置7の表示画面7aには、演出図柄(装飾図柄)を表示しないから、変動停止後の演出図柄(装飾図柄)も表示しないといえる。
したがって、引用例2記載の事項は、本願補正発明の「第1所定利益状態が開始してから少なくとも特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示しない」点に対応する構成を含むものである。
そして、引用発明と引用例2記載の事項とは、小当たり遊技中に大入賞口へ遊技球が入球し、その遊技球が特定領域を通過した場合には、大当たりとなる遊技機である点で共通するとともに、特定領域への通過が実質的に不可能な小当たりの小当たり遊技中に特定領域への通過が可能である状態であることを示唆する表示を行わない遊技機である点においても共通する。
よって、引用発明における特定領域への通過が実質的に不可能な「16R時短小当たりA」の小当たり遊技の演出に引用例2記載の事項を適用し、画像表示手段は変動停止後の演出図柄を表示しないようにし、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び引用例2記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「a)本願発明では、上記(3)Pに示すように、第1所定利益状態が開始してから少なくとも特定入球手段の開放期間が終了するまでは、画像表示手段の近傍で少なくとも1つの特定報知手段により特定報知を行うものの、画像表示手段には変動停止後の第1演出図柄を表示せず且つ第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わないように構成されております。これにより、遊技中の遊技者による注目度が最も高い画像表示手段からは第1所定利益状態中であるという情報は得られないため、第2所定利益状態中よりも第1所定利益状態中における特定報知手段の作動数を少なくしている(上記(3)O)ことと相俟って遊技者を不利益に誘導することを極力防止することができるという格別の効果を奏するものです。
b)これに対し、引用文献1,2には、第1所定利益状態が開始してから少なくとも特定入球手段の開放期間が終了するまでは、画像表示手段には第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わないようにする点(上記(3)P)については開示も示唆もされておりません。」と主張する(審判請求書(3)ニ)理由2(特許法第29条第2項)について)。
しかしながら、上記(3)(p)で検討したとおり、引用発明においては、「16R時短小当たりA」の小当たり遊技(の開始から終了まで)では右矢印画像RIの表示を行わないから、引用発明には本願補正発明の「第1所定利益状態が開始してから少なくとも特定入球手段の開放期間が終了するまでは、画像表示手段には第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わないようにする」点が開示されているといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年8月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
発射手段により発射されて遊技領域に入った遊技球が前記遊技領域内の左側又は右側の第1流下経路と右側又は左側の第2流下経路との何れかを流下するように構成され、
前記第1流下経路を流下してきた遊技球を前記第2流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で検出可能な第1始動手段と、
前記第1始動手段による遊技球の検出に基づいて第1図柄を変動表示可能な第1図柄表示手段と、
第2始動手段による遊技球の検出に基づいて第2図柄を変動表示可能な第2図柄表示手段と、
前記第1図柄の変動と同調して画像表示手段に第1演出図柄を変動表示可能な第1演出図柄表示手段と、
前記第2図柄の変動と同調して前記画像表示手段に第2演出図柄を変動表示可能な第2演出図柄表示手段と、
前記第2流下経路を流下してきた遊技球の方が前記第1流下経路を流下してきた遊技球よりも高い確率で入球可能に配置され且つ遊技球が入球可能な開状態と該開状態よりも入球困難又は入球不可能な閉状態とに変化可能な特定入球手段と、
前記特定入球手段に入球した遊技球を特定領域とそれ以外の領域とに振り分ける振り分け手段と、
前記第1図柄の変動後の停止図柄が第1所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第1所定利益状態を発生させる第1所定利益状態発生手段と、
前記第2図柄の変動後の停止図柄が第2所定態様となった場合に前記特定入球手段が前記開状態となる第2所定利益状態を発生させる第2所定利益状態発生手段と、
前記特定入球手段に入球した遊技球が前記特定領域に案内された場合に特定利益状態を発生させる特定利益状態発生手段と、
前記第1所定利益状態と前記第2所定利益状態とを含む特定遊技期間中である旨の特定報知を実行可能な特定報知手段とを備えた
遊技機において、
前記第1所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値よりも前記第2所定利益状態の発生に基づいて遊技者が得られる利益の期待値の方が大きく、
前記第1所定利益状態中よりも前記第2所定利益状態中の方が、作動する前記特定報知手段の数が多く、
前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段が前記開状態となる期間が終了するまでは、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示しない
ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

引用文献1:特許第5927456号公報
引用文献2:特開2016-137162号公報

3 刊行物
引用例1、2及びその記載事項、並びに引用発明及び引用例2記載の事項は、上記「第2 3(1)(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「第1所定利益状態」に関して、「前記第1所定利益状態が開始してから少なくとも前記特定入球手段の開放期間が終了するまでは、前記画像表示手段の近傍で少なくとも1つの前記特定報知手段により前記特定報知を行うものの、前記画像表示手段には変動停止後の前記第1演出図柄を表示せず且つ前記第1所定利益状態中であることを示唆する表示を行わない」との特定事項のうち下線部の限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3(4)、(5)」に記載したとおり、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-19 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2016-161393(P2016-161393)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一松平 佳巳河本 明彦土屋 保光  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 松川 直樹
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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