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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1352851
審判番号 不服2018-12564  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-20 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2015-174903号「後席用サイドエアバッグ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開,特開2017- 47861号,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年9月4日の出願であって,平成29年11月22日付けで拒絶理由が通知され,平成30年2月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年6月25日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1)本願の請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献1,2に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2)本願の請求項3,4に係る発明は,以下の引用文献1-3に基いて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2006-88774号公報
2.特開2008-80988号公報
3.米国特許第8662531号明細書

第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年9月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「後席のシートバックの車両幅方向外側に配置されたサイドガーニッシュ内に設けられ,車両平面視で車両幅方向に延在された底壁と,該底壁の車両幅方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁が他方の前記側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成されたケースと,
前記ケースに収納され,衝突時に乗員の側部で展開されるサイドエアバッグと,該サイドエアバッグへガスを供給すると共に車両幅方向に突設されたスタッドボルトを備え,該スタッドボルトを介して一方の前記側壁又は他方の前記側壁に締結されたインフレータとを含んで構成されたエアバッグモジュールと,
を有し,
前記ケースは,車両幅方向内側の前記側壁が車両幅方向外側の前記側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成され,
前記インフレータは,車両幅方向外側に突設された前記スタッドボルトを介して車両幅方向外側の前記側壁に締結され,
車両平面視で一対の前記側壁における前端同士を結ぶ線分の長さを開口長とし,
車両平面視で前記エアバッグモジュールにおける車両後端側かつ車両幅方向一端側の角部と車両前端側かつ車両幅方向他端側の角部とを結ぶ対角線の長さを対角長としたときに,前記開口長の方が前記対角長よりも長く形成されている後席用サイドエアバッグ装置。」

第4 引用文献,引用発明等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき,エアバッグが後部座席の搭乗者の側方にて展開膨張されるようにした後席用サイドエアバッグ装置に関するものである。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで,後席用サイドエアバッグ装置は,ボディサイド部と後部座席との間の狭い開口スペースを通じて,エアバックをその収納空間から展開膨張させなければならない。加えて,ボディサイド部と後部座席との間には,収納空間に収納されたエアバッグを隠すべくカバーが設けられており,エアバックを展開膨張させるにはカバーの一部を破断する等しなければならない。ところが,例えば乗用車等の車両においては,ボディサイド部から後部座席までの距離が,運転席,助手席等といった前部座席のそれに比べて非常に短くなっている。そのため,車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,同ボディサイド部の一部を構成するドアトリムが車室内へ極僅かな時間で侵入してしまう。こうしたことから,後席用サイドエアバッグ装置においては,搭乗者に対する保護性能をより高くする上で,ドアトリムが車室内に進入してきたとしてもエアバッグを確実に展開膨張させることが強く要求されている。
【0004】
本発明は,このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは,車両に加えられた衝撃によりボディサイド部が車室内に侵入する場合であっても,エアバッグを確実に展開膨張させることの可能な後席用サイドエアバッグ装置を提供することにある。」
・「【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,車両に加えられた衝撃によりボディサイド部が車室内に侵入する場合であっても,エアバッグを確実に展開膨張させることの可能な後席用サイドエアバッグ装置を実現することができる。」
・「【0016】
以下,本発明の後席用サイドエアバッグ装置を乗用車の車室内に搭載されるものとして具体化した一実施形態について図1?図9に基づいて説明する。なお,本実施形態の記載において,車両の進行方向を前方として説明する。また,特に説明がない限り,以下の記載における上下方向及び左右方向は,車両進行方向における上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0017】
図1に示されるように,車室内に配置された後部座席1は腰掛け部1aと背もたれ部1bとを備えている。そして,後部座席1の背もたれ部1bの両側部と,車両のボディサイド部の一部を構成するドアトリム3との間には,後席用サイドエアバッグ装置10がそれぞれ1つずつ配置されている。
【0018】
図2?図4に示されるように,後席用サイドエアバッグ装置10は,カバー20と,カバー20の裏面側に装着されたケース30と,押え部材50とを備え,これらを一体に組付けることにより形成されている。カバー20は,後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3との間に嵌め込まれている。ケース30は,カバー20の内面(裏面)に装着されている。また,同装置10は,ガス発生源であるインフレータ11と,エアバッグ12とを備えている。インフレータ11は,エアバッグ12の内部に挿入されている。エアバッグ12は,インフレータ11を内装した状態で所定の形状に折り畳まれてケース30内に収納されている。なお,インフレータ11は略筒状をなすリテーナ13に挿通された状態でエアバッグ12に内装されており,インフレータ11及びエアバッグ12はリテーナ13を介してケース30に支持固定されている。リテーナ13は,その内側から挿入された2個の固定ネジ13aが,ケース30の外側からナット13bにより締め付けられることで,同ケース30に固定されている。
【0019】
カバー20は,全体として略長板状をなし上下方向に延びるように形成されている。カバー20の裏面側には,ケース30を装着するための装着部21が設けられている。この装着部21はカバー20の裏面に立設された4つの壁22?25からなり,それら壁22?25により包囲された空間が,ケース30の一部が嵌め込まれる嵌込部26として構成されている。この嵌込部26にケース30が嵌め込まれることによって,同ケース30は,装着部21にてカバー20と接触した状態で同カバー20の裏面側に装着される。このため,装着部21の壁22?25は,ケース30の外面にカバー20を接触させる接触部として機能する。」
・「【0024】
次に,ケース30の構成について,図7及び図8を用いて説明する。
図7に示されるように,ケース30は略直方体状の箱体として形成されている。ケース30は,金属の板材をプレスにより打ち抜いたものを,所定の形状に折り曲げることにより形成されている。こうして形成されたケース30は,1つの底壁31と,壁部としての4つの側壁32?35とから構成されており,それらによって囲まれた空間がインフレータ11とエアバッグ12とを収納する収納部36とされている。このため,ケース30においては,底壁31と反対側が開口部30aとなっている。ケース30は,前記カバー20の装着部21に装着された状態で,前記開口部30aをエアバッグ12が展開膨張する方向(車両前方)に向けて配置される。
【0025】
ケース30は,後部座席1側の壁部である第1側壁32に複数の脆弱部40と,ドアトリム3側の壁部である第2側壁33に補強部としての剛性部45とを備えて構成されている。ケース30は,第1側壁32と,この第1側壁32と対向配置される第2側壁33とでそれらの強度差が大きくなるように形成されている。つまり,ケース30は,その内側から強い力が作用した場合に,第1側壁32が第2側壁33よりも大きく変形するようになっている。」
・「【0030】
更に,ケース30には,後席用サイドエアバッグ装置10を車両のボディに固定するためのブラケット48a,48bが設けられている。ブラケット48aは,ケース30の底壁31上端部から車両後方に向かって斜めに延びるように形成されている。また,ブラケット48bは,ケース30の側壁35から下方に垂直に延びるように形成されている。上記のように構成された後席用サイドエアバッグ装置10は,ケース30に設けられた2つのブラケット48a,48bが車両のボディに固定されることで所定位置に取付けられている。
【0031】
続いて,後席用サイドエアバッグ装置10の動作態様について図9を用いて説明する。
図9(a)に示されるように,車両のボディに衝撃が加えられる前の状態では,エアバッグ12はケース30内にて所定の形状に折り畳まれた状態で収納されている。
【0032】
車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,図示しない衝撃センサが衝撃を感知することで,インフレータ11のガス噴射口からエアバッグ12内にガスが噴出される。そして,エアバッグ12の内部にガスが充填され,同エアバッグ12はケース30内にて膨張される。こうしてエアバッグ12が膨張するに伴い,カバー20及びケース30にはそれぞれ内側からエアバッグ12の膨張により強い力が付与される。
【0033】
このとき,図9(b)に示されるように,ケース30は,脆弱部40を備えた第1側壁32がケース30の外側,即ち後部座席1の中央に向かって膨らむように変形する。一方,剛性部45を備えた第2側壁33はその形状をほとんど変形させることなく,元の形状がそのまま維持される。こうしたケース30の変形による応力は,壁22,押え部材50等を介して第1薄肉部27aに伝達され,カバー20の後部座席1側の角部に応力が集中し,同角部に強い引張り力が生じるようになる。そのため,同角部に沿って延設された第1薄肉部27aに強い引張り力が生じ,その引張り力により同第1薄肉部27aが速やかに破断される。こうして,第1薄肉部27aが破断開始位置となり,同第1薄肉部27aの破断に続いて,第2薄肉部27bが破断される。
【0034】
一方,剛性部45を備えた第2側壁33がその形状をほとんど変形させないことから,ヒンジ部28は,壁23,押え部材50等を介して第2側壁33に支持される。このため,前記ヒンジ部28は,変形による歪み等の影響を受けにくく,その形状を保持する。従って,第1及び第2薄肉部27a,27bが破断されて形成された扉29は,ヒンジ部28を支点としてケース30の外方(車両前方)へ円滑且つ迅速に開く。そして,図9(c)に示されるように,扉29が開くことによって形成された開口Pを通じて,エアバッグ12がケース30から車室内に展開膨張される。このとき,エアバッグ12は最初に破断された第1薄肉部27a,即ち後部座席1側から展開膨張するようになる。」
・「【0049】
・本実施形態において,後席用サイドエアバッグ装置10は,後部座席1とドアトリム3との間に配置することに限らず,例えば後部座席1の背もたれ部1bにおいて,ドアトリム3側の側縁となるシートサイド部に内装したり等してもよい。なお,後席用サイドエアバッグ装置10をシートサイド部に内装した場合,当該後部座席1のシート表皮が本発明のカバーに該当することとなる。
【0050】
・本実施形態において,後席用サイドエアバッグ装置10の取付け位置等に応じてケース30やカバー20等を任意の形状に変更してもよい。また,カバー20に設けられた破断予定部27についても任意の形状に変更してもよい。」

・段落【0018】の「後席用サイドエアバッグ装置10は,カバー20と,カバー20の裏面側に装着されたケース30と,押え部材50とを備え,これらを一体に組付けることにより形成されている。カバー20は,後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3との間に嵌め込まれている。ケース30は,カバー20の内面(裏面)に装着されている。」という記載事項からみて,「後席用サイドエアバッグ装置10は,後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3の間に嵌め込まれたカバー20と,カバー20の内面に装着されたケース30と,押え部材50とを備え,これらを一体に組み付けることにより形成されていること」が理解できる。
・段落【0024】の「ケース30は,1つの底壁31と,壁部としての4つの側壁32?35とから構成されており,それらによって囲まれた空間がインフレータ11とエアバッグ12とを収納する収納部36とされている。このため,ケース30においては,底壁31と反対側が開口部30aとなっている。ケース30は,前記カバー20の装着部21に装着された状態で,前記開口部30aをエアバッグ12が展開膨張する方向(車両前方)に向けて配置される。」の記載事項と,図7の図示内容を考慮して,図4の図示内容に着目すると,「車両平面視で車両幅方向に延在された底壁31と,該底壁31の車両方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁32,33とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁32と他方の前記側壁33の長さがほぼ等しく形成されたケース」が理解できる。
・段落【0018】の「インフレータ11及びエアバッグ12はリテーナ13を介してケース30に支持固定されている。リテーナ13は,その内側から挿入された2個の固定ネジ13aが,ケース30の外側からナット13bにより締め付けられることで,同ケース30に固定されている。」の記載事項と,図4の図示内容からみて,「車両前後方向に突設された固定ネジ13aを備え,固定ネジ13aとリテーナ13を介してケース30の底壁31に固定されたインフレータ11」が理解できる。
さらに,段落【0018】の「また,同装置10は,ガス発生源であるインフレータ11と,エアバッグ12とを備えている。」の記載事項,段落【0031】の「エアバッグ12はケース30内にて所定の形状に折り畳まれた状態で収納されている。」の記載事項 ,段落【0032】の「車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,図示しない衝撃センサが衝撃を感知することで,インフレータ11のガス噴射口からエアバッグ12内にガスが噴出される。」及び,段落【0034】の「エアバッグ12がケース30から車室内に展開膨張される。」の記載事項を併せて考慮すると,「ケース30内に収納され,車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,衝撃センサが衝撃を感知することで,ケース30から車室内に展開膨張されるエアバッグ12と,該エアバッグ12内へガスを噴出すると共に車両前後方向に突設された固定ネジ13aを備え,固定ネジ13aとリテーナ13を介してケース30の底壁31に固定されたインフレータ11とを含んで構成された,エアバッグ12,固定ネジ13aを備えたインフレータ11」が理解できる。

これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「後部座席1の背もたれ部1bの両側部と,車両のボディサイド部の一部を構成するドアトリム3との間に,それぞれ1つずつ配置された後席用サイドエアバッグ装置10と,
後席用サイドエアバッグ装置10は,後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3の間に嵌め込まれたカバー20と,カバー20の内面に装着されたケース30と,押え部材50とを備え,これらを一体に組み付けることにより形成されており,
車両平面視で車両幅方向に延在された底壁31と,該底壁31の車両方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁32,33とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁32と他方の前記側壁33の長さがほぼ等しく形成されたケースと,
前記ケース30内に収納され,車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,衝撃センサが衝撃を感知することで,前記ケース30から車室内に展開膨張されるエアバッグ12と,該エアバッグ12内へガスを噴出すると共に車両前後方向に突設された固定ネジ13aを備え,固定ネジ13aとリテーナ13を介してケース30の前記底壁31に固定されたインフレータ11とを含んで構成された,エアバッグ12,固定ネジ13aを備えたインフレータ11と,
を有した,後席用サイドエアバッグ装置10。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,シートバックにサイドエアバッグモジュールを収容した車両用側突乗員保護装置に関する。」
・「【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用側突乗員保護装置によれば,シートフレームに固定されるブラケットが設けられており,ブラケットがサイドエアバッグモジュールよりも車両左右方向外側で車両前後方向に延びる延び部を備えており,延び部の車両前方側端部がシートバックの車両左右方向外側のサイドサポートの車両前方側端の近傍に位置しているため,サイドエアバッグ展開初期にブラケットでサイドエアバッグを車両左右方向外側(ドア側)から支持できる。乗員とブラケットとの間の隙間は乗員とドアとの間の隙間よりも小さいため,従来に比べて早期にサイドエアバッグの拘束力をあげることができる。
また,ブラケットがシートフレームに固定されるため,シートフレームが侵入してきたドアによって押されてドアから遠ざかる方向に動いたとき,ブラケットもシートフレームと共にドアから遠ざかる方向に動く。そのため,シートフレームのドアから遠ざかる方向への移動を利用して乗員をドアから遠ざけることができる。」
・「【0012】
〔実施例1〕
まず,本発明実施例1の構成を,図1?図8を参照して,説明する。
本発明実施例1の保護装置10は,シートバック20にサイドエアバッグモジュール30を収容した,保護装置である。
保護装置10は,図2に示すように,シートバック20と,サイドエアバッグモジュール30と,ブラケット40と,を有する。
【0013】
シートバック20は,図1に示すように,乗員の背もたれとして利用される。シートバック20は,乗員が着座するシートクッション(フレームのみ符号51で図示)の車両後方側端部に配置され,シートクッションに対して車両前後方向に倒し・起立可能とされている。シートバック20の上部には,乗員の頭部を支持する図示略のヘッドレストが配置される。
シートバック20は,図2に示すように,サイドサポート21と,シートフレーム22と,表皮23と,パッド24と,を備える。
【0014】
サイドサポート21は,シートバック20の車両左右方向両側部に位置し,前端がシートバック20の車両左右方向の中央部20aよりも車両前方に膨らんでいる(隆起している)部分である。サイドサポート21は,乗員の肩部の少なくとも一部を側方からカバーしている。
【0015】
シートフレーム22は,シートバック20の内部に配置される。シートフレーム22は,パイプ材等からなる。シートフレーム22の周囲には,ウレタンフォーム等のパッド24が配設されている。
【0016】
表皮23は,パッド24の外側に配置される。表皮23は,内側表皮23aと外側表皮23bとを備える。内側表皮23aと外側表皮23bとは,図7に示すように,サイドサポート21の車両前方側端部で図示略の糸で互いに縫製されている。
【0017】
サイドエアバッグモジュール30は,左右のサイドサポート21のうち車両左右方向外側(ドア側)のサイドサポート21aに収容される。サイドエアバッグモジュール30は,シートフレーム22に,たとえばボルト30aを用いて,取付けられる。サイドエアバッグモジュール30は,インフレータ31と,格納時に折り畳まれた状態にありインフレータ31から噴出されたガスによって展開するサイドエアバッグ32と,を備えている。サイドエアバッグ32は,少なくとも乗員の肩部(肩甲骨)の全部を含む範囲で展開可能とされている。
【0018】
ブラケット40は,たとえば金属製である。ブラケット40は,サイドサポート21a内に配置される。ブラケット40は,シートフレーム22に固定される。ブラケット40は,図1,図4,図5に示すように,プレート構造であってもよく,図6に示すように,軽量化を図るためにパイプ構造(骨格構造)であってもよい。」
・「【0021】
ブラケット40は,サイドエアバッグモジュール30よりも車両左右方向外側で車両前後方向に延びる延び部41を備える。
【0022】
延び部41の車両前方側端部41aは,サイドエアバッグ32が展開していないとき,図7に示すように,サイドサポート21aの車両前方側端の近傍に位置している。ここで,サイドサポート21aの車両前方側端の近傍とは,たとえばサイドサポート21aの車両前方側1/10の範囲内である。延び部41の車両前方側端部41aは,表皮23に接触していてもよく,非接触であってもよい。
延び部41の上下方向位置は,図1に示すように,乗員の肩部の少なくとも一部をカバーできる位置とされている。
【0023】
延び部41の車両前方側端部41aがサイドサポート21aの車両前方側端の近傍に位置しているおり(延び部41がサイドサポート21aの車両前方側端の近傍まで延びており),延び部41の上下方向位置が乗員の肩部の少なくとも一部をカバーできる位置とされているため,延び部41は,乗員の肩部の少なくとも一部(肩甲骨の少なくとも一部)を車両左右方向外側からカバーできる。なお,延び部41が乗員のサイズによらず乗員の肩部の少なくとも一部をカバーできるようにするため,延び部41は,米国の規定のAF05(American Femaleを100人並べたときの小柄な方から5番目)からAM95(American Maleを100人並べたときの小柄な方から95番目)までに対応できるようにされていることが望ましい。
【0024】
延び部41は,図2,図3に示すように,サイドサポート21a内で,車両前方かつ車両左右方向外側に(ドア(ドアトリム)50に向けて斜め前方に)直線状または略直線状に車両前後方向に延びていてもよく,図7に示すように,外側表皮23bに沿って車両前後方向に延びていてもよい。
以上の構成は,本発明実施例1だけでなく,本発明の他の実施例にも適用される。
【0025】
本発明実施例1は,さらに,つぎの特有な構成を有する。
ブラケット40は,図4,図5に示すように,シートフレーム22に固定されるボックス部42を備えている。ブラケット40は,シートフレーム22とは別体に形成されている。ブラケット40は,ボックス部42でシートフレーム22に固定される。
【0026】
ボックス部42は,延び部41と一体成形されている。ボックス部42は,サイドエアバッグモジュール30が配置される収容部42aを備える。収容部42aは,車両前方のみに向って開口している。収容部42aを構成する壁の一部である上下壁42b,42cは,車両左右方向に延びている。
【0027】
ここで,本発明実施例1の保護装置10の作用を説明する。
シートフレーム22に固定されるブラケット40が設けられており,ブラケット40がサイドエアバッグモジュール30よりも車両左右方向外側で車両前後方向に延びる延び部41を備えており,延び部41の車両前方側端部41aがサイドサポート21aの車両前方側端の近傍に位置しているため,サイドエアバッグ32の展開初期にブラケット40でサイドエアバッグ32を車両左右方向外側から支持できる(図2参照)。乗員とブラケット40との間の隙間は乗員とドア50との間の隙間よりも小さいため,従来に比べて早期にサイドエアバッグ32の拘束力をあげることができる(図8のα)。
【0028】
(i)従来に比べて早期にサイドエアバッグ32の拘束力をあげることができるため,従来よりも早期から,乗員がサイドエアバッグ32によって車両左右方向中央側に押される。その結果,ドア50が従来と同じところまで車両左右方向中央側に侵入してきたとき,乗員は従来よりもドア50から遠ざかった位置に位置する(図8のβ1)。また,(ii)ブラケット40がシートフレーム22に固定されるため,シートフレーム22が侵入してきたドア50によって押されてドア50から遠ざかる方向に動いたとき,ブラケット40もシートフレーム22と共にドア50から遠ざかる方向に動く(図3参照)。そのため,シートフレーム22のドア50から遠ざかる方向への移動を利用して乗員をドア50から遠ざけることができる(図8のβ2)。
上記(i),(ii)より,ブラケット40を設けることで,従来より,乗員を侵入してくるドア50から遠ざけることができる(図8のβ1+β2)。」
・「【0031】
図7に示すように,ブラケット40が外側表皮23bに沿って車両前後方向に延びている場合,通常使用時に(側突が発生していないときに),シートバック20に寄りかかっている乗員がブラケット40に当り違和感(ゴツゴツ感)を感じてしまうことを防止できる。」
・「【0033】
本発明実施例1は,さらに,つぎの特有な作用を有する。
ブラケット40のボックス部42の上下壁42b,42cが車両左右方向に延びているため,ドア50が侵入してきた場合であっても,ドア50とシートフレーム22との間で上下壁42a,42bが突っ張り,サイドエアバッグモジュール30の空間を確保することができる。そのため,ドア50の侵入が早い場合であっても,サイドエアバッグモジュール30がドア50とシートフレーム22とで挟まれることを防止でき,確実にサイドエアバッグ32を展開させることができる。」
・「【0035】
〔実施例2〕(図9?図11)
つぎに,本発明実施例2に特有な構成を説明する。
ブラケット40は,シートフレーム22に一体成形されている。すなわち,シートフレーム22の一部が,サイドサポート21の車両前方側端近傍まで延びて設けられており,その一部がブラケット40になっている。」

・図7からみて,ブラケット40の一方の車両幅方向外側の側壁である延び部41が他方の車両幅方向内側の側壁よりも車両前後方向に長く形成されたこと,及び,車両幅方向内側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向内側の側壁に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30が理解できる。

・図10からみて,車両幅方向外側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向外側のブラケット40に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30が理解できる。

そうすると,引用文献2には,実施例1の特に図7の図示内容に着目すると,以下の事項(以下,「事項1」という。)が記載されているといえる。
「シートバック20の車両左右方向外側に位置するサイドサポート21aにエアバッグモジュール30を収容した車両用側突乗員保護装置に関し,
サイドエアバッグモジュール30は,インフレータ31と格納時に折り畳まれた状態にありインフレータ31から噴出されたガスにより展開するサイドエアバッグ32とを備え,
シートフレーム22に固定されるブラケット40が設けられ,ブラケット40の一方の車両幅方向外側の側壁である延び部41が他方の車両幅方向内側の側壁よりも車両方向方向に長く形成されており,
車両幅方向内側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向内側の側壁に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30と,
ブラケット40は,サイドエアバッグモジュール30よりも車両左右方向外側で車両前後方向に延びる延び部41と,
を有する車両用側突用乗員保護装置。」

また,引用文献2には,実施例2の図10に着目すると,以下の事項(以下,「事項2」という。)が記載されているといえる。
「シートバック20の車両左右方向外側に位置するサイドサポート21aにエアバッグモジュール30を収容した車両用側突乗員保護装置に関し,
サイドエアバッグモジュール30は,インフレータ31と格納時に折り畳まれた状態にありインフレータ31から噴出されたガスにより展開するサイドエアバッグ32とを備え,
シートフレーム22に一体成形されたブラケット40と,
車両幅方向外側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向外側のブラケット40に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30と,
を有する車両用側突用乗員保護装置。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている({}内に当審による仮訳を付記した。)。
・「Also, as illustrated, the air bag assembly 20 is located at an outboard lateral side or extremity of the seat to provide protection against adjacent vehicle structure,」(第3欄54行?57行)
{また,図示のように,エアバッグアセンブリ20は,隣接する車両構造体に対する保護を提供するために座席の外側側面又は端部に配置されるが,}
・「In the illustrated embodiment, the air bag module 20 is mounted to the side portion 52 of the seat frame 26 via any suitable manner, such as by the bolt 55 shown in the illustrated embodiment.」(第4欄39行?42行)
{図示された実施形態において,エアバッグモジュール20は,例えば,図示された実施形態に見られるボルト55のような何らかの適切な手段によってシートフレーム26の側部52に取り付けられる。}

・図2からみて,車両幅方向外側に突設されたボルト55が理解できる。

そうすると,引用文献3には,以下の事項が記載されているといえる。
「エアバッグアセンブリ20は,隣接する車両構造体に対する保護を提供するために座席の外側側面又は端部に配置され,車両幅方向外側に突設されたボルト55のような何らかの適切な手段によってシートフレーム26の側部52に取り付けられたエアバッグモジュール20。」

第5 対比・判断
1.対比
本願発明と,引用発明とを対比する。
後者の「後部座席1」は前者の「後席」に相当し,以下同様に,「背もたれ部1b」は「シートバック」に,「カバー20」は「サイドガーニッシュ」に「車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合」は「側突時」に,「後席用サイドエアバッグ装置10」を構成する「エアバッグ12」は「サイドエアバッグ」に,「エアバッグ12,固定ネジ13aを備えたインフレータ11」は「エアバッグモジュール」に,「後席用サイドエアバッグ装置10」は「後席用サイドエアバッグ装置」に,それぞれ相当する。
後者の「後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3の間」は前者の「後席のシートバックの車両幅方向外側」に相当するから,後者の「後部座席1の背もたれ部1bの両側部と,車両のボディサイド部の一部を構成するドアトリム3との間に,それぞれ1つずつ配置された後席用サイドエアバッグ装置10と,後席用サイドエアバッグ装置10は,後部座席1の背もたれ部1bとドアトリム3の間に嵌め込まれたカバー20と,カバー20の内面に装着されたケース30と,押え部材50とを備え,これらを一体に組み付けることにより形成されており,車両平面視で車両幅方向に延在された底壁31と,該底壁31の車両方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁32,33とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁32と他方の前記側壁33の長さがほぼ等しく形成されたケースと」と,前者の「後席のシートバックの車両幅方向外側に配置されたサイドガーニッシュ内に設けられ,車両平面視で車両幅方向に延在された底壁と,該底壁の車両幅方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁が他方の前記側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成されたケースと」とは,「後席のシートバックの車両幅方向外側に配置されたサイドガーニッシュ内に設けられ,車両平面視で車両幅方向に延在された底壁と,該底壁の車両方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁と他方の前記側壁が形成されたケースと」において共通する。
後者の「前記ケース30内に収納され,車両のボディサイド部に側方から衝撃が加えられた場合,衝撃センサが衝撃を感知することで,前記ケース30から車室内に展開膨張されるエアバッグ12と,該エアバッグ12内へガスを噴出すると共に車両前後方向に突設された固定ネジ13aを備え,固定ネジ13aとリテーナ13を介してケース30の前記底壁31に固定されたインフレータ11とを含んで構成された,エアバッグ12,固定ネジ13aを備えたインフレータ11と」と前者の「前記ケースに収納され,衝突時に乗員の側部で展開されるサイドエアバッグと,該サイドエアバッグへガスを供給すると共に車両幅方向に突設されたスタッドボルトを備え,該スタッドボルトを介して一方の前記側壁又は他方の前記側壁に締結されたインフレータとを含んで構成されたエアバッグモジュールと」とは,「前記ケースに収納され,衝突時に乗員の側部で展開されるサイドエアバッグと,該サイドエアバッグへガスを供給すると共に突設されたボルトを備え,該ボルトを介してケースに締結されたインフレータとを含んで構成されたエアバッグモジュールと」において共通する。
そうすると,両者は,
「後席のシートバックの車両幅方向外側に配置されたサイドガーニッシュ内に設けられ,車両平面視で車両幅方向に延在された底壁と,該底壁の車両方向両端部から車両前方へ延出された一対の側壁とを含んで構成されると共に,一方の前記側壁と他方の前記側壁が形成されたケースと,
前記ケースに収納され,衝突時に乗員の側部で展開されるサイドエアバッグと,該サイドエアバッグへガスを供給すると共に突設されたボルトを備え,該ボルトを介してケースに締結されたインフレータとを含んで構成されたエアバッグモジュールと,
を有する後席用サイドエアバッグ装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
ケースが,本願発明では,「一方の前記側壁が他方の前記側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成され」ており,「車両幅方向内側の前記側壁が車両幅方向外側の前記側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成されている」のに対して,引用発明では,「一方の側壁32と他方の側壁33の長さがほぼ等しく形成され」ている点。
<相違点2>
突設されたボルトを備え,該ボルトを介してケースに締結されたインフレータに関して,本願発明では,「車両幅方向に突設されたスタッドボルトを備え,該スタッドボルトを介して一方の前記側壁又は他方の前記側壁に締結されたインフレータ」であり,「車両幅方向外側に突設された前記スタッドボルトを介して車両幅方向外側の前記側壁に締結され」たインフレータであるのに対して,引用発明では,「車両前後方向に突設された固定ネジ13aを備え,固定ネジ13aとリテーナ13を介してケース30の前記底壁31に固定されたインフレータ11」である点。
<相違点3>
本願発明では,「車両平面視で一対の前記側壁における前端同士を結ぶ線分の長さを開口長とし,車両平面視で前記エアバッグモジュールにおける車両後端側かつ車両幅方向一端側の角部と車両前端側かつ車両幅方向他端側の角部とを結ぶ対角線の長さを対角長としたときに,前記開口長の方が前記対角長よりも長く形成されている」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。

2.相違点についての判断
事案に鑑み,相違点1,2について検討する。
引用文献2には,「第4 (2)」で述べたとおり,上記以下の事項1が記載されているといえる(括弧内には,対応する本願発明の発明特定事項を付記した。)。
「シートバック20の車両左右方向外側に位置するサイドサポート21aにエアバッグモジュール30を収容した車両用側突乗員保護装置(サイドエアバッグ装置)に関し,
サイドエアバッグモジュール30は,インフレータ31と格納時に折り畳まれた状態にありインフレータ31から噴出されたガスにより展開するサイドエアバッグ32とを備え,
シートフレーム22に固定されるブラケット40(ケース)が設けられ,ブラケット40(ケース)の一方の車両幅方向外側の側壁である延び部41が他方の車両幅方向内側の側壁よりも車両方向方向に長く形成されて(一方の側壁が他方の側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成され,車両幅方向内側の側壁が車両幅方向外側の側壁よりも車両前後方向の長さが短く形成されて)おり,
車両幅方向内側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向内側の側壁に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30と(一方の側壁又は他方の側壁に締結されたインフレータとを含んで構成されたエアバッグモジュールと),
ブラケット40(ケース)は,サイドエアバッグモジュール30よりも車両左右方向外側で車両前後方向に延びる延び部41(車両幅方向外側の側壁)と,
を有する車両用側突用乗員保護装置(サイドエアバッグ装置)。」
また,引用文献2には,「第4 (2)」で述べたとおり,以下の事項2が記載されているといえる。
「シートバック20の車両左右方向外側に位置するサイドサポート21aにエアバッグモジュール30を収容した車両用側突乗員保護装置(サイドエアバッグ装置)に関し,
サイドエアバッグモジュール30は,インフレータ31と格納時に折り畳まれた状態にありインフレータ31から噴出されたガスにより展開するサイドエアバッグ32とを備え,
シートフレーム22に一体成形されたブラケット40(ケース)と,
車両幅方向外側に突設されたボルト30aを備え,該ボルト30aを介して車両幅方向外側のブラケット40(ケース)に締結された,インフレータ31とサイドエアバッグ32からなるサイドエアバッグモジュール30と,
を有する車両用側突用乗員保護装置(サイドエアバッグ装置)。」
引用文献2に記載された事項1及び事項2は,シートバックにサイドエアバッグモジュールを収容したものであって,シートフレームにブラケットが固定されることにより,段落【0006】記載の発明の効果を奏し,段落【0027】,【0028】記載の保護装置の作用を奏するものである。
そうすると,シートバックにサイドエアバッグモジュールを収容したものであって,シートフレームにブラケットが固定されることは,引用文献2に記載された事項にとって必須の構成要件であるから,引用発明のサイドガーニッシュ(カバー20)内のサイドエアバッグに適用する際に,引用文献2に記載された事項1及び事項2のシートバックに収容されたサイドエアバッグモジュール及びブラケットをシートバックから取り出してシートバックの外部にあるサードガーニッシュ内に適用することには,阻害理由があるといわざるを得ず,引用発明に引用文献2に記載された事項1,2を適用することはできない。
仮に,引用発明に引用文献2に記載された事項1及び事項2を適用しても,事項1では,インフレータを含むエアバッグモジュールが,ボルト30aを介して車両幅方向内側の側壁に締結されるものであり,事項2では,インフレータを含むエアバッグモジュールが,ボルト30aを介して車両幅方向外側のケースに締結されるものの,車両幅方向内側の側壁を備えるものではないため,引用文献2に記載された事項1及び事項2では,
「インフレータが,スタッドボルトを介して,車両幅方向内側の側壁よりも車両前後方向に長く形成された車両幅方向外側の側壁に締結され」る構成にはならない。
つまり,引用文献2に記載された事項1及び事項2は,相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるものではないため,引用発明に引用文献2に記載された事項1及び事項2を組み合わせても,本願発明の構成にはならない。
さらに,引用文献3に記載された事項の適用を検討しても,引用文献3に記載された事項は,エアバッグモジュール20が車両幅方向外側に突設されたボルト55のような何らかの適切な手段によってシートフレーム26の側部52に取り付けられたものではあるが,シートフレーム26には,車両幅方向内側と外側の両方に側壁がなく,車両幅方向内側の側壁よりも車両前後方向に長く形成された車両幅方向外側の側壁を有するものではないから,引用発明に引用文献3に記載された事項を適用しても,本願発明の構成にはならない。
さらに,仮に,引用発明に引用文献2に記載された事項1及び引用文献3に記載された事項を併せて適用できたとしても,引用文献2に記載された事項1では,インフレータ11を含むサイドエアバッグモジュール30を車両幅方向内側の側壁に締結するボルト30aは,シートバック20の内部のシートフレーム22にパッド24に埋設されて配設されているから,当該ボルト30aには側突時に乗員が衝突することはなく,側突時における乗員の保護のためにボルト30aを車両幅方向外側の側壁に締結するという動機付けが生じないから,引用発明に引用文献2に記載された事項1を適用した上で,さらに,引用文献3に記載された事項を適用できるものではない。
そして,相違点1,2に係る本願発明の構成により,本願発明は,側突時における乗員の保護性能を向上させることができるという格別の作用効果を奏するものである。
したがって,相違点3について検討するまでもなく,本願発明は,引用発明,引用文献2に記載された事項1,事項2,及び引用文献3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-01 
出願番号 特願2015-174903(P2015-174903)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
藤井 昇
発明の名称 後席用サイドエアバッグ装置  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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