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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1352949
審判番号 不服2018-13457  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-09 
確定日 2019-07-19 
事件の表示 特願2017-100338号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開、特開2018-192142号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月19日の出願であって、平成30年6月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月13日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月3日に意見書が提出されたところ、同年9月11日付け(送達日:同年9月18日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年9月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2016-202302号公報
2.特開2017-79971号公報


第3 本願発明1、2
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年7月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である(当審で分説のため、記号AからJを付した。)。

「【請求項1】
A 判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定にて所定の結果が得られたことに基づいて遊技者に特典を付与しうる特典付与手段と、
C 演出受付が許容される受付演出を発生させる受付演出実行手段と
を備え、
D 前記受付演出として、少なくとも第1の受付演出、第2の受付演出、及び第3の受付演出が用意されており、
E 前記第1の受付演出、前記第2の受付演出、及び前記第3の受付演出のうち、前記第2の受付演出及び前記第3の受付演出では、それら受付演出に関連してBGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうるようになっており、
F 前記第1の受付演出は、
BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうるものであり、当該第1の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
G-1 前記第2の受付演出は、
前記抑制受付演出として実行されるものであるにもかかわらず演出受付が許容される時点ではBGMが非抑制態様で可聴出力されており、且つ演出受付されたことに基づいてBGMを第1抑制態様にするものであり、当該第2の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
H 前記第3の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが前記第1抑制態様よりも抑制度合いの高い第2抑制態様で可聴出力される状態または可聴出力されない状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第3の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
I 前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出では、前記受付許容音として同じ種別の受付許容音が可聴出力されうるようになっており、前記第3の受付演出では、前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出のいずれにおいても用いられない種別の受付許容音が可聴出力されうる
J ことを特徴とする遊技機。

【請求項2】
A 判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定にて所定の結果が得られたことに基づいて遊技者に特典を付与しうる特典付与手段と、
C 演出受付が許容される受付演出を発生させる受付演出実行手段と
を備え、
D 前記受付演出として、少なくとも第1の受付演出、第2の受付演出、及び第3の受付演出が用意されており、
E 前記第1の受付演出、前記第2の受付演出、及び前記第3の受付演出のうち、前記第2の受付演出及び前記第3の受付演出では、それら受付演出に関連してBGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうるようになっており、
F 前記第1の受付演出は、
BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうるものであり、当該第1の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
G-2 前記第2の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが第1抑制態様で可聴出力される状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第2の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
H 前記第3の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが前記第1抑制態様よりも抑制度合いの高い第2抑制態様で可聴出力される状態または可聴出力されない状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第3の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており、
I 前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出では、前記受付許容音として同じ種別の受付許容音が可聴出力されうるようになっており、前記第3の受付演出では、前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出のいずれにおいても用いられない種別の受付許容音が可聴出力されうる
J ことを特徴とする遊技機。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0026】
・・・さらに、図1には示していないが、遊技機1にはスピーカーからなる音声出力装置34(図4参照)が設けられており、上記の各演出装置に加えて、BGM(バックグランドミュージック)、SE(サウンドエフェクト)等を出力し、サウンドによる演出も行うようにしている。」

イ 「【0016】
上記第1始動口13および第2始動口14には、遊技球の入球を検出する第1始動口検出スイッチ13a(図4参照)および第2始動口検出スイッチ14aがそれぞれ設けられており、これら検出スイッチが遊技球の入球を検出すると、後述する大当たり遊技を実行する権利獲得の抽選(以下、「大当たりの抽選」という)が行われる。・・・
【0023】
上記画像表示装置31は、遊技が行われていない待機中に画像を表示したり、遊技の進行に応じた画像を表示したりする。なかでも、第1始動口13または第2始動口14に遊技球が入球したときには、抽選結果を遊技者に報知する演出図柄35が変動表示される。
演出図柄35というのは、例えば第1図柄(左図柄)、第2図柄(右図柄)、第3図柄(中図柄)という3つの図柄(数字)をそれぞれスクロール表示するとともに、所定時間経過後に当該スクロールを停止させて、特定の図柄(数字)を配列表示するものである。・・・
【0027】
遊技領域10aの左側下方には、後述する第1特別図柄表示装置20、第2特別図柄表示装置21、・・・等の表示領域27が設けられている。
【0028】
上記第1特別図柄表示装置20は、第1始動口13に遊技球が入球したことを契機として行われた大当たりの抽選結果を報知するものであり、複数のLEDで構成されている。つまり、大当たりの抽選結果に対応する特別図柄が複数設けられており、この第1特別図柄表示装置20に大当たりの抽選結果に対応する特別図柄(点灯態様)を表示することによって、抽選結果を遊技者に報知するようにしている。このようにして表示される特別図柄はすぐに表示されるわけではなく、所定時間変動表示(点滅)された後に、停止表示されるようにしている。
【0029】
・・・第2特別図柄表示装置21は、第2始動口14に遊技球が入球したことを契機として行われた大当たりの抽選結果を報知するためのもので、その表示態様は、上記第1特別図柄表示装置20における特別図柄の表示態様と同一である。」

ウ 「【0035】
<遊技制御装置の構成>
次に、図4を用いて、本実施形態の遊技機1において遊技の進行を制御する遊技制御装置について説明する。
この図4において、主制御基板110は遊技の基本動作を制御する。この主制御基板110は、メインCPU111、メインROM112、メインRAM113から構成されるワンチップマイコン114と、主制御用の入力ポートと出力ポート(図示せず)とを少なくとも備えている。・・・
【0038】
主制御基板110のメインROM112には、後述する遊技制御用のプログラムや各種の遊技に必要なデータ、テーブルが記憶されている。
・・・
【0082】
なお、後述するように、特別図柄の種類(停止図柄データ)によって、大当たり終了後の遊技状態(図9参照)、大当たり態様(図10参照)が決定されることから、特別図柄の種類が大当たり遊技終了後の遊技状態と大当たり態様を決定するものといえる。
・・・
【0094】
<特別電動役物作動態様決定テーブル>
図10は、大入賞口の開閉条件を決定する特別電動役物作動態様決定テーブルの一例を示した図である。
図10に示す特別電動役物作動態様決定テーブルを参照して、特別図柄の種類(停止図柄データ)に基づいて、大入賞口の作動態様、すなわちラウンド遊技回数(R)および大入賞口の開放態様を決定する大入賞口開放態様決定テーブルが決定される。・・・」

エ 「【0226】
<特別図柄記憶判定処理>
図26は、主制御基板による特別図柄記憶判定処理を説明するフローチャートである。・・・
【0232】
ステップS208において、メインCPU111は、変動パターン決定処理を行う。
変動パターン決定処理は、まずメインRAM113の遊技状態記憶領域を参照して、現在の遊技状態に基づく変動パターン決定テーブルを決定する。具体的には、高確率遊技状態である場合には図14に示す高確率遊技状態用の変動パターン決定テーブルを決定し、低確率遊技状態である場合に特定期間回数(T)=0のときには、図13に示す通常遊技状態(低確率遊技状態用)の変動パターン決定テーブルを決定し、低確率遊技状態である場合に特定期間回数(T)>0のときには、図15に示す小当たり後の特定遊技期間用(低確率遊技状態用)の変動パターン決定テーブルを決定する。
その後、特別図柄判定用乱数値、大当たり図柄用乱数値、リーチ判定用乱数値および変動パターン用乱数値を参照し、決定した変動パターン決定テーブルに基づいて、変動パターンを決定する。」

オ 「【0112】
具体的には、変動パターン決定テーブルによって、特別図柄表示装置の種別、特別図柄判定用乱数値(大当たりの当選または落選)、大当たり図柄用乱数値(大当たり図柄)、時短遊技状態の有無、特別図柄保留数、リーチ判定用乱数値および変動パターン用乱数値に基づき、変動パターンが決定される。
変動パターンは、特別図柄の変動開始時に決定され、決定された変動パターンに基づいて変動パターン指定コマンドが生成される。この変動パターン指定コマンドは、出力制御処理において主制御基板110から演出制御基板120へと送信される。
【0113】
なお、本実施形態の遊技機1では、大当たりまたは小当たりのときには必ずリーチを行うように構成しているため、・・・
【0375】
<変動演出パターン決定処理>
図42は、演出制御基板による変動演出パターン決定処理を説明するフローチャートである。
図42に示す変動演出パターン決定処理は、演出制御基板120の受信バッファに、主制御基板110から送信された変動パターン指定コマンドが格納されると、サブCPU121が実行する。この変動演出パターン決定処理は、特別図柄の変動表示中に、画像表示装置31をはじめとする種々の演出用の装置をどのように制御するかを示す変動演出パターンを決定するものである。・・・
・・・
【0376】
次に、ステップS803において、サブCPU121は、上記ステップS802でセットされた変動演出パターン決定テーブルと、上記ステップS801で取得された演出用乱数値に基づいて、1の変動演出パターンを決定する。・・・
次に、ステップS804において、サブCPU121は、上記ステップS803で決定した変動演出パターン(及び、予告演出の有無、種類)を画像制御基板150およびランプ制御基板140に伝送すべく、演出パターン指定コマンドを伝送データ格納領域にセットする。なお、演出パターン指定コマンドが画像制御基板150およびランプ制御基板140に送信されると、演出パターン指定コマンドに基づいて画像表示装置31、演出用役物装置32、演出用照明装置33および音声出力装置34が制御される。」

カ 「【0544】
まず、当落分岐演出について簡単に説明する。
図63は、本実施形態に係る遊技機で行われる当落分岐演出を説明する図(その1)である。
ここでは、例えば、当該変動が図36、図37の変動演出パターン決定テーブルに示すリーチB(リーチB1あるいはB2)を伴う大当たりに当選していた場合を例に説明する。
リーチA(リーチA1、A2)では、当落分岐演出が行われないものとする。
画像表示装置31において停止態様(a)にあった演出図柄35が、特別図柄の変動開始とともに変動表示(b)される。
所定時間が経過後、演出図柄35は、左右図柄が揃った状態で停止し且つ中図柄が変動を継続するリーチ状態(c)となる。
その後リーチ演出(d)が行われ、演出ボタン8を用いた当落分岐演出が行われる。
【0545】
当落分岐演出では、演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに((e)→(f))、時間インジケータ38が減っていく。
時間切れとなる前に演出ボタン8を遊技者が操作すると、大当たり判定結果を示唆するカットイン画像などが表示され(g)、最終的に、大当たり態様あるいはハズレ態様で演出図柄35が停止表示される(h)。
・・・
【0547】
図63、図64に示すような当落分岐演出を伴うリーチ演出において、本実施形態の遊技機では、当落分岐演出中(e、f)に特定の演出音(例えばBGM)を流さないようにしている。
ボタン演出(当落分岐演出)は、遊技者にとって大きな関心事項である変動結果の帰結を、ボタン操作に続くカットイン画像などで示唆するものであるが、その間のBGMを無音とすることで、遊技者に緊張感を与え、遊技の興趣を高めることが出来る。
【0548】
図65は、本実施形態の当落分岐演出における音声出力態様を示すタイミング図(その1)である。
括弧内の番号は、演出音の音番号を示している。
タイミングt1における変動開始とともに、ホストCPU151は、音声制御回路300を制御して非リーチ中BGM(13)の出力を開始し、それに、BGM(13)とは異なる音声チャンネルを用いて演出図柄35の変動音や停止音(52)等を重ねて再生出力する。
リーチ演出を開始するタイミングt2となると、ホストCPU151は、音声制御回路300を制御して(演出音停止コマンド)、非リーチ中BGM(13)を停止し、同じ音声チャンネル、あるいは他の音声チャンネルを用いてリーチ中BGM(14)を再生出力する。
所定期間経過後、ボタン演出(当落分岐演出)を行うタイミングt3となると、ホストCPU151は、音声制御回路300を制御して(演出音一時停止コマンド)、リーチ中BGM(14)を一時停止させる。
【0549】
・・・その後、演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作されると、ホストCPU151は、他の音声チャンネルを制御して(演出音出力コマンド)、ボタン押下音(31)を再生出力するとともに、停止していたBGMの出力を同音声チャンネルで再開するように音声制御回路300を制御する(演出音出力コマンド)。
演出ボタン8の操作が、一時停止したBGMの復帰条件となっている。
演出ボタン8の操作によって復帰条件の満足されるまで、リーチ中BGMが停止される、と考えても良い。
遊技の進行に伴って特定の音声(リーチ中BGM)が出力されている場合に、所定の復帰条件(ボタン操作)が成立するまで、リーチ中BGMの出力を停止する。・・・」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「a、b 第1始動口13又は第2始動口14に遊技球が入球したことを契機として大当たりの抽選を行い、前記大当たりの抽選の抽選結果に対応する特別図柄を第1特別図柄表示装置20又は第2特別図柄表示装置21にて表示することで大当たりの抽選結果を報知し、特別図柄の種類に基づいて、ラウンド遊技回数および大入賞口の開放態様という大入賞口の作動態様を決定する主制御基板110
を備え(【0023】、【0028】、【0029】、【0035】、【0038】、【0082】、【0094】)、

c、e、h 第1特別図柄表示装置20又は第2特別図柄表示装置21における特別図柄の変動表示中に、画像表示装置31において抽選結果を遊技者に報知する演出図柄35が変動表示され、画像表示装置31における演出図柄35の変動表示では、大当たりのときに必ずリーチを行うように構成されており(【0023】、【0028】、【0029】、【0113】、【0375】)、
主制御基板110は、変動パターン決定テーブルを用いて、特別図柄の変動開始時に特別図柄の変動パターンを決定し、決定された変動パターンに基づいて変動パターン指定コマンドが生成され、当該変動パターン指定コマンドは、主制御基板110から演出制御基板120へと送信され(【0112】、【0226】、【0232】)、
演出制御基板120の受信バッファに、主制御基板110から送信された変動パターン指定コマンドが格納されると、サブCPU121が、特別図柄の変動表示中に抽選結果を遊技者に報知する演出図柄35が変動表示される画像表示装置31をはじめとする種々の演出用の装置をどのように制御するかを示す変動演出パターンを決定する変動演出パターン決定処理を実行し、サブCPU121は、決定した変動演出パターン及び、予告演出の有無、種類を指定する演出パターン指定コマンドを画像制御基板150およびランプ制御基板140に送信し、送信された演出パターン指定コマンドに基づいて画像制御基板150およびランプ制御基板140は、画像表示装置31、演出用役物装置32、演出用照明装置33および音声出力装置34の制御を行い(【0375】、【0376】)、
リーチB(リーチB1あるいはB2)を伴う大当たりに当選している場合、リーチ演出中に演出ボタン8を用いた当落分岐演出が行われ、当落分岐演出では、画像表示装置31において、演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減っていき、時間切れとなる前に演出ボタン8を遊技者が操作すると、大当たり判定結果を示唆するカットイン画像などが表示されるとともに、当落分岐演出中にBGMを流さないように、リーチ演出が開始された所定期間経過後、当落分岐演出を行うタイミングt3となると、リーチ中BGM14を一時停止させるとともに、演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作されると、他の音声チャンネルを制御して、ボタン押下音31を再生出力するとともに、停止していたBGMの出力を同音声チャンネルで再開するように制御する(【0026】、【0544】-【0549】)、

j 遊技機1(【0026】)。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本実施例のパチンコ機GMを示す斜視図である。・・・
【0034】
また、中央開口HOには、大型の液晶カラーディスプレイ(LCD)で構成された表示装置DSが配置されている。表示装置DSは、大当り状態に係わる特定図柄を変動表示すると共に背景画像や各種のキャラクタなどをアニメーション的に表示する装置である。この表示装置DSは、中央部に特別図柄表示部Da?Dcと右上部に普通図柄表示部19とを有している。そして、特別図柄表示部Da?Dcでは、大当り状態の招来を期待させるリーチ演出が実行されることがあり、特別図柄表示部Da?Dc及びその周りでは、適宜な予告演出などが実行される。」

「【0311】
次に、本実施例では、効果音チャンネルSE、高度演出チャンネルPAN、及び、バーチャルチャンネルVSについては、配置チャンネルを可変設定するのに対して、チャンスボタンの操作有効音や、遊技球の入賞音について、専用のフレーズ再生チャンネルを使用する意義について説明する。図21は、入賞音や操作有効音を、適宜に消音させるマスク処理を示すタイムチャートである。
・・・
【0318】
続いて、フレーズ再生チャンネルCH27で再生される操作有効音について説明する。ボタン操作の操作有効音は、所定タイミングで、ボタン演出用のメインシナリオ1(表2)が、シナリオ進行テーブルINFO_TBLの進行管理チャンネルMCHmに登録されたことに基づいて放音可能となる(図14(d)参照)。・・・
【0320】
特に限定されないが、メインシナリオ1は、2つのメインシナリオ1?2で構成されている。具体的には、表2に示す通り、表示装置にボタン画像が出現することに対応して発生する効果音1「ピューン!!」を特定するサブシナリオ1と、その後の操作有効期間を示して繰り返される効果音2「ピコン、ピコン、ピコン、・・・」を特定するサブシナリオ2とで構成されている。なお、効果音2は、ループ指定されることで無限ループ状に繰り返される。」

「【0325】
ところで、上記の実施例に追加して、予告演出について、画像演出や役物演出と連動した音声演出を実行するのも好適である。図22は、このような予告演出を例示する図面であり、背景画像の前面側に描かれる予告画像の数や種類、及び、背景画像の前面側で可動する役物と、BGM音の音量とを関連させる実施例を示している。
【0326】
この実施例では、予告演出の信頼度は、背景画像の残余面積や、役物の出現の有無や可動の有無に対応している。具体的には、(1)予告演出画像が大型化して、背景画像面積が少ないほど、また(2)役物が目立つほど、信頼度が高まるよう構成され、信頼度の高さに対応して、BGM音を小音化することで予告演出の価値をアピールしている。なお、信頼度とは、大当り抽選の抽選結果が当選状態である可能性を意味する。【0327】
図22は、具体的な演出内容の一例を概略的に図示したものであり、背景画像と共に、背景画像に重ねて表示される予告演出を示している。なお、縦方向は、信頼度の違いを示しており、信頼度の低い予告演出1から、高信頼度の予告演出9が順番に縦方向に図示されている。また、横方向は、予告演出の発展型を示しており、もし予告演出が右側に移行すれば、その分だけ信頼度が向上するようになっている。
・・・
【0329】
また、予告演出2では、準備OK状態(STEP1)から始まり、STEP1からSTEP2に発展すると、女子高生が振り向き(STEP2)、更にSTEP3に発展すると、もう一人の女子高生と出会う予告演出となっている。本実施例の予告演出は、発展を重ねるたびに信頼度が上昇するが、その分だけ背景画像の面積が減ることに対応して、BGM音の音量を抑制している。
・・・
【0332】
次に、予告演出3では、四隅から中央のキャラクタにフラッシュが放たれるが、背景画像が殆ど隠れるので、予告演出2よりBGM音の音量が低く制御される。・・・」

したがって、上記引用文献2には、特別図柄表示部Da?Dcでは、大当り状態の招来を期待させるリーチ演出が実行されることがあるとともに、特別図柄表示部Da?Dc及びその周りでは、適宜な予告演出が実行され、予告演出は、画像演出や役物演出と連動した音声演出を実行するものであり、
チャンスボタンの操作有効音として、表示装置にボタン画像が出現することに対応して発生する効果音1「ピューン!!」、及び、その後の操作有効期間を示して繰り返される効果音2「ピコン、ピコン、ピコン、・・・」が放音可能であり、
予告演出の信頼度は、予告演出画像が大型化して、背景画像面積が少ないほど信頼度が高まる一方、信頼度の高さに対応してBGM音を小音化するよう構成され、準備OK状態(STEP1)から始まり、STEP1からSTEP2に発展すると、女子高生が振り向き(STEP2)、更にSTEP3に発展すると、もう一人の女子高生と出会う予告演出となっている予告演出2よりも、四隅から中央のキャラクタにフラッシュが放たれ背景画像が殆ど隠れる予告演出3の方が、信頼度が高くBGM音の音量が低く制御されるパチンコ機GM、という技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献2に記載の技術」という。)。


第5 対比・判断
1.本願発明2について
(1)対比
第2 原査定の概要
原査定(平成30年9月11日付け拒絶査定)は、上記第2に記載のとおり、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものであるから、まず、本願発明2について検討を行う。

本願発明2と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 発明特定事項Aについて
引用発明の「主制御基板110」は、「第1始動口13又は第2始動口14に遊技球が入球したことを契機として大当たりの抽選を行」うことから、引用発明の「大当たりの抽選を行」うことは、本願発明2の「判定を行う」ことに相当し、同様に、引用発明の「主制御基板110」は、本願発明2の「判定手段」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明2の発明特定事項Aに相当する構成を備えるといえる。

イ 発明特定事項Bについて
引用発明の「主制御基板110」は、本願発明2の「特典付与手段」に相当する。
引用発明の「特別図柄」は、「前記大当たりの抽選の抽選結果に対応する特別図柄を・・・表示することで大当たりの抽選結果を報知」するものであって、「特別図柄の種類に基づいて、ラウンド遊技回数および大入賞口の開放態様という大入賞口の作動態様を決定する」から、引用発明において、「前記大当たりの抽選の抽選結果」と「特別図柄の種類に基づいて」決定される「ラウンド遊技回数および大入賞口の開放態様という大入賞口の作動態様」とは対応しているものと認められる。そして、引用発明が、「大入賞口の作動態様を決定する」ことは、「遊技者に特典を付与しうる」ことにほかならないから、引用発明は、本願発明2の発明特定事項Bに相当する構成を備えるといえる。

ウ 発明特定事項Cについて
引用発明は、「リーチB(リーチB1あるいはB2)を伴う大当たりに当選している場合、リーチ演出中に演出ボタン8を用いた当落分岐演出が行われ、当落分岐演出では、画像表示装置31において、演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減っていき、・・・当落分岐演出中にBGMを流さないように、リーチ演出が開始された所定期間経過後、当落分岐演出を行うタイミングt3となると、リーチ中BGM14を一時停止させる・・・ように制御する」 から、引用発明の「演出ボタン8を操作する」ことは、本願発明2の「演出受付」に相当し、同様に、引用発明の「画像表示装置31において」「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」くこと、及び、「当落分岐演出中にBGMを流さないように」「当落分岐演出を行うタイミングt3となると、リーチ中BGM14を一時停止させる」「ように制御する」ことは、本願発明2の「演出受付が許容される受付演出」に相当する。
また、引用発明の「当落分岐演出」は、「リーチ演出中」に行われる「予告演出」であって、「画像表示装置31において」「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」く演出を含むことから、その制御は、「サブCPU121が、特別図柄の変動表示中に抽選結果を遊技者に報知する演出図柄35が変動表示される画像表示装置31をはじめとする種々の演出用の装置をどのように制御するかを示す変動演出パターンを決定する変動演出パターン決定処理を実行し、サブCPU121は、決定した変動演出パターン及び、予告演出の有無、種類を指定する演出パターン指定コマンドを画像制御基板150およびランプ制御基板140に送信し、送信された演出パターン指定コマンドに基づいて画像制御基板150およびランプ制御基板140は、画像表示装置31、演出用役物装置32、演出用照明装置33および音声出力装置34の制御を行」うことで実行されているものといえる。したがって、引用発明の「画像制御基板150およびランプ制御基板140」は、本願発明2の「受付演出実行手段」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明2の発明特定事項Cに相当する構成を備えるといえる。

エ 発明特定事項Eについて
引用発明は、「当落分岐演出中にBGMを流さない」ようにしており、「リーチ演出が開始された所定期間経過後、当落分岐演出を行うタイミングt3となると、リーチ中BGM14を一時停止させるとともに、演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作されると、他の音声チャンネルを制御して、ボタン押下音31を再生出力するとともに、停止していたBGMの出力を同音声チャンネルで再開するように制御する」から、リーチ演出中にBGMを流さない期間は、「当落分岐演出を行うタイミングt3」から「演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作される」までの期間である。
そして、引用発明の「当落分岐演出」において、「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」くという本願発明2の「演出受付が許容される受付演出」に相当する演出が実行されるので(上記ウ参照)、引用発明の「当落分岐演出」中に「BGMを流さない」こと、又は、「リーチ中BGM14を一時停止させる」ことは、本願発明2の「BGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出」を実行することに相当するから、引用発明は、「受付演出に関連してBGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうる」という点で、本願発明2の発明特定事項Eと共通する。

オ 発明特定事項Hについて
上記エのとおり、引用発明において、リーチ演出中にBGMを流さない期間は、「当落分岐演出を行うタイミングt3」から「演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作される」までの期間であるから、引用発明は、本願発明2の「非抑制態様で可聴出力されているBGMが」「可聴出力されない状態になってから演出受付が許容されうるもの」に相当する構成を備えるといえる。
また、上記ウのとおり、引用発明の「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」くことは、本願発明2の「演出受付が許容される受付演出」に相当するから、引用発明は、「当該第3の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆するようになって」いるという点で、本願発明2の発明特定事項Hと共通する。

カ 発明特定事項Jについて
引用発明の「遊技機1」は、本願発明2の「遊技機」に相当する。

(2)一致点・相違点
上記(1)アないしカより、本願発明2と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「A 判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定にて所定の結果が得られたことに基づいて遊技者に特典を付与しうる特典付与手段と、
C 演出受付が許容される受付演出を発生させる受付演出実行手段と
を備え、
E’ 受付演出に関連してBGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうるようになっており、
H’ 前記第3の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが可聴出力されない状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第3の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆するようになっている、
J ことを特徴とする遊技機。」

(相違点)
ア 相違点1(発明特定事項D)
本願発明2は、「前記受付演出として、少なくとも第1の受付演出、第2の受付演出、及び第3の受付演出が用意されて」いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点2(発明特定事項E)
本願発明2は、「前記第1の受付演出、前記第2の受付演出、及び前記第3の受付演出のうち、前記第2の受付演出及び前記第3の受付演出では、それら受付演出に関連してBGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうるようになって」いるのに対し、引用発明は、「当落分岐演出」中に、「BGMを流さない」こと、又は、「リーチ中BGM14を一時停止させる」ことはあるものの、上記アで相違点1として挙げたとおり、引用発明は、 「第1の受付演出」、「第2の受付演出」及び「第3の受付演出」が用意されるものではなく、かつ、それら3つの受付演出のうち、特定の受付演出(「前記第2の受付演出及び前記第3の受付演出」)に関連して「BGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出として実行されうるようになって」いるものではない点。

ウ 相違点3(発明特定事項F)
本願発明2は、「前記第1の受付演出は、
BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうるものであり、当該第1の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになって」いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

エ 相違点4(発明特定事項G-2)
本願発明2は、「前記第2の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが第1抑制態様で可聴出力される状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第2の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになって」いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

オ 相違点5(発明特定事項H)
本願発明2は、「前記第3の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが前記第1抑制態様よりも抑制度合いの高い第2抑制態様で可聴出力される状態または可聴出力されない状態になってから演出受付が許容されうるものであり、当該第3の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになって」いるのに対し、引用発明において、リーチ演出中にBGMを流さない期間は、「当落分岐演出を行うタイミングt3」から「演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作される」までの期間であって、当該期間に、「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」く演出を行うものであるが、「第3の受付演出」において、「受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになって」いるという構成を備えるものではない点。

カ 相違点6(発明特定事項I)
本願発明2は、「前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出では、前記受付許容音として同じ種別の受付許容音が可聴出力されうるようになっており、前記第3の受付演出では、前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出のいずれにおいても用いられない種別の受付許容音が可聴出力されうる」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(3)相違点についての判断
当審が認定した引用発明は、「当落分岐演出中にBGMを流さないように、リーチ演出が開始された所定期間経過後、当落分岐演出を行うタイミングt3となると、リーチ中BGM14を一時停止させるとともに、演出ボタン8の操作有効期間(タイミングt3からタイミングt5)内のタイミングt4で、遊技者によって演出ボタン8が操作されると、他の音声チャンネルを制御して、ボタン押下音31を再生出力するとともに、停止していたBGMの出力を同音声チャンネルで再開するように制御する」こと、すなわち、演出ボタン8の操作有効期間に、「特定の音声」であるリーチ中BGM14を一時停止させることを要点のひとつとしている。
そこで、演出ボタン8の操作有効期間にリーチ中BGM14を一時停止させる引用発明を出発点として、相違点3(「BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうる」「第1の受付演出」(発明特定事項F) )及び相違点4(「非抑制態様で可聴出力されているBGMが第1抑制態様で可聴出力される状態になってから演出受付が許容されうる」「第2の受付演出」(発明特定事項G-2))に相当する構成を採用することが当業者が容易に想到し得るかどうかについてまず検討する。
次に、引用文献2に記載の技術は、「チャンスボタンの操作有効音として、表示装置にボタン画像が出現することに対応して発生する効果音1「ピューン!!」、及び、その後の操作有効期間を示して繰り返される効果音2「ピコン、ピコン、ピコン、・・・」が放音可能」としているから、本願発明2の「受付許容音」に関わる相違点である相違点5(発明特定事項H)乃至相違点6(発明特定事項I)について検討する。

ア 相違点3(発明特定事項F)及び相違点4(発明特定事項G-2)について(本願発明2における「第1の受付演出」及び「第2の受付演出」について)
引用文献2に記載の技術は、「予告演出の信頼度は、予告演出画像が大型化して、背景画像面積が少ないほど信頼度が高まる一方、信頼度の高さに対応してBGM音を小音化するよう構成され、準備OK状態(STEP1)から始まり、STEP1からSTEP2に発展すると、女子高生が振り向き(STEP2)、更にSTEP3に発展すると、もう一人の女子高生と出会う予告演出となっている予告演出2よりも、四隅から中央のキャラクタにフラッシュが放たれ背景画像が殆ど隠れる予告演出3の方が、信頼度が高くBGM音の音量が低く制御される」ものであるから、「予告演出の信頼度」の高さに対応して、「BGM音を小音化する」程度が複数の段階で設けられる技術が示されているといえる。
そうすると、引用文献2記載の技術において、「予告演出の信頼度」が低く、「BGM音を小音化する」程度が小さい音量は、本願発明2のBGMが「第1抑制態様で可聴出力される状態」(発明特定事項G-2)に相当し、引用文献2記載の技術において、「予告演出の信頼度」が高く、「BGM音を小音化する」程度が大きい音量は、本願発明2のBGMが「前記第1抑制態様よりも抑制度合いの高い第2抑制態様で可聴出力される状態」(発明特定事項H)に相当する。
ここで、上記のように、引用発明は、演出ボタン8の操作有効期間に、「特定の音声」であるリーチ中BGM14を一時停止させることを要点のひとつとしている。
さらに、引用文献1には、リーチ中BGM14を一時停止させることについて、
「【0547】
図63、図64に示すような当落分岐演出を伴うリーチ演出において、本実施形態の遊技機では、当落分岐演出中(e、f)に特定の演出音(例えばBGM)を流さないようにしている。
ボタン演出(当落分岐演出)は、遊技者にとって大きな関心事項である変動結果の帰結を、ボタン操作に続くカットイン画像などで示唆するものであるが、その間のBGMを無音とすることで、遊技者に緊張感を与え、遊技の興趣を高めることが出来る。」と記載されることから、引用発明は、演出ボタン8の操作有効期間に、リーチ中BGM14を一時停止させて無音とすることにより、「遊技者に緊張感を与え、遊技の興趣を高める」ことを意図しているといえる。
それゆえ、当該演出ボタン8の操作有効期間に「リーチ中BGM14を一時停止させ」ている引用発明に対し、引用文献2に記載の技術を適用して、 「予告演出の信頼度」が低く、「BGM音を小音化する」程度が小さい音量(本願発明2のBGMが「第1抑制態様で可聴出力される状態」(発明特定事項G-2)に相当。)のBGMを流すことは、引用発明が意図するところのBGMを無音の状態とすることに反することとなるので、引用発明に引用文献2記載の技術を適用することを阻害する事情があるといわざるをえない。
ましてや、引用発明の当該演出ボタン8の操作有効期間が、「BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうる」ようにすること(発明特定事項F)、すなわち、演出ボタンの操作有効期間が通常の音量のBGMが流れている状態で開始されるようにすることは、それ自体がパチンコ遊技機の分野における周知技術であるとしても、当該演出ボタン8の操作有効期間に「リーチ中BGM14を一時停止させ」ている引用発明に対し、あえて、引用発明が機能しなくなる周知技術を適用することを当業者は通常考えないので、その適用を阻害する事情があるといえる。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載の技術から、相違点3に係る本願発明2の「前記第1の受付演出は、
BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうるものであ」る(発明特定事項F)という構成、及び、相違点4に係る本願発明2の「前記第2の受付演出は、
非抑制態様で可聴出力されているBGMが第1抑制態様で可聴出力される状態になってから演出受付が許容されうるものであ」る(発明特定事項G-2)という構成を容易に想到することはできない。

イ 相違点5(発明特定事項H)及び相違点6(発明特定事項I)について(本願発明2の「受付許容音」について)
引用文献2に記載の技術の「表示装置にボタン画像が出現することに対応して発生する効果音1「ピューン!!」」が「放音可能」であることは、本願発明2の「演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうる」ことに相当し、同様に、引用文献2に記載の技術の「操作有効期間を示して繰り返される効果音2「ピコン、ピコン、ピコン、・・・」」が「放音可能」であることは、本願発明2の「演出受付が許容される状態になったこと」「を示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうる」ことに相当する。
引用発明は、上記のとおり、演出ボタン8の操作有効期間に、「特定の音声」であるリーチ中BGM14を一時停止させることを要点のひとつとしているが、当該演出ボタン8の操作有効期間に、BGM以外の音声まで無音の状態とすることを意図しているとまではいえない。したがって、「当落分岐演出」中に、「リーチ中BGM14を一時停止させる」演出(本願発明2の「第3の受付演出」及び「BGMが非抑制態様で可聴出力されなくなる抑制受付演出」に相当。)を実行する引用発明において、「演出ボタン8を操作する旨遊技者に指示する演出ボタン画像、時間インジケータ38が表示され、時間の経過とともに時間インジケータ38が減ってい」くという演出(引用発明の発明特定事項c)を実行する際、引用文献2に記載の技術を適用することによって、上記相違点5に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
しかし、相違点6(発明特定事項I)について、上記アで検討したとおり、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載の技術から、「受付演出」中に、「リーチ中BGM14を一時停止させる」演出(本願発明2の「第3の受付演出」に相当。)のほかに、リーチ中BGMの音量を通常のものとする「第1の受付演出」(発明特定事項F)、及び、リーチ中BGMの音量をやや抑える「第2の受付演出」(発明特定事項G)を備えるようにすることを容易に想到することができないから、BGMの音量が異なる3つの種類の「第1の受付演出」、「第2の受付演出」及び「第3の受付演出」を用意するという本願発明2の前提を欠いている。そのうえ、「受付演出」中に、音量が異なるBGMが可聴出力されている場合(「第1の受付演出」及び「第2の受付演出」)とBGMが可聴出力されていない場合(「第3の受付演出」)とで、「可聴出力」される「受付許容音」の「種別」を異ならせることは、引用文献1及び引用文献2のいずれにも記載も示唆もなく、本願発明2の、「前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出では、前記受付許容音として同じ種別の受付許容音が可聴出力されうるようになっており、前記第3の受付演出では、前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出のいずれにおいても用いられない種別の受付許容音が可聴出力されうる」(発明特定事項I)という構成は、引用発明及び引用文献2に記載の技術から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、上記相違点6に係る本願発明2の構成を、当業者が容易に想到することはできない。

(4)本願発明2についての結論
上記(3)ア、イより、少なくとも、相違点3(発明特定事項F)、相違点4(発明特定事項G-2)、相違点6(発明特定事項I)に係る本願発明2の構成は、引用発明及び引用文献2に記載の技術から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明1について
本願発明1は、本願発明2と比べると、発明特定事項G-2に替えて発明特定事項G-1を有しているほか、その余の発明特定事項は一致している。
ここで、本願発明1は、本願発明2の「前記第1の受付演出は、
BGMが非抑制態様で可聴出力されているなかで発生されうるものであり、当該第1の受付演出では、演出受付が許容される状態になったこと、または演出受付が許容される状態になることを示唆する受付許容音が非抑制態様で可聴出力されうるようになっており」(発明特定事項F)、
及び、
「前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出では、前記受付許容音として同じ種別の受付許容音が可聴出力されうるようになっており、前記第3の受付演出では、前記第1の受付演出及び前記第2の受付演出のいずれにおいても用いられない種別の受付許容音が可聴出力されうる」(発明特定事項I)という同一の構成を備えるものである。そして、当該同一の構成である発明特定事項F及び発明特定事項Iを含む本願発明2が、引用発明及び引用文献2に記載の技術から当業者が容易に想到し得るものとはいえないことは、上記1.(4)に示したとおりであるから、本願発明2と同様に、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-09 
出願番号 特願2017-100338(P2017-100338)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 安久 司郎
▲吉▼川 康史
発明の名称 遊技機  
代理人 小原 崇広  

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