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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1352953
審判番号 不服2018-9854  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-19 
確定日 2019-07-22 
事件の表示 特願2015-547071「鼻腔内予防接種投薬レジメン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/095866、平成28年 2月 1日国内公表、特表2016-502995、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月17日(パリ条約による優先権主張 2012年12月17日 (DK)デンマーク王国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月6日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年2月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年3月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?14に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.Vaccine,2010,Vol.28, No.39,p.6491-6497
2.特表2009-514840号公報

第3 本願発明
本願請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、平成30年2月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
インフルエンザに対してヒトを免疫化するためのワクチン組成物であって:
(a)非経口投与ワクチン組成物および各容器が鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する1つまたは複数の容器の第1セットを含む、第1ワクチンコンポーネントであって、非経口投与ワクチン組成物および鼻腔内投与ワクチン組成物が不活性化インフルエンザA型、インフルエンザB型の全体またはそれらの一部に由来する1種または複数種の抗原を含有する、第1ワクチンコンポーネント、
(b)各容器が不活性化インフルエンザA型、インフルエンザB型の全体またはそれらの一部に由来する1種または複数種の抗原を含有する鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する1つまたは複数の容器の第2セットを含む、第2ワクチンコンポーネント
を含み、
容器の第1および第2セットの各容器が、5マイクロリットル?400マイクロリットルの総体積のワクチン組成物を含有し、
第1ワクチンコンポーネントがプライムワクチンとして非経口的および鼻腔内的に投与され、第2ワクチンコンポーネントがブーストワクチンとして鼻腔内的に投与される、ワクチン組成物。
【請求項2】
第1ワクチンコンポーネントおよび第2ワクチンコンポーネントが同じ抗原を含有する、請求項1記載のワクチン組成物。
【請求項3】
鼻腔内投与ワクチン組成物がアジュバントを含有する、請求項1または2記載のワクチン組成物。
【請求項4】
鼻腔内投与ワクチン組成物が:
(i)グリセロールと脂肪酸とのモノエステル、
(ii)脂肪酸、
(iii)脂肪酸の組み合わせ、
(iv)それらの混合物
のうちの1つまたは複数を含有する、請求項1?3のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項5】
ワクチン組成物が、5?40 mg/mlの濃度でグリセロールと脂肪酸とのモノエステルを含有する、請求項4記載のワクチン組成物。
【請求項6】
ワクチン組成物が、2?40 mg/mlの総濃度で脂肪酸または脂肪酸の組み合わせを含有する、請求項4または5記載のワクチン組成物。
【請求項7】
鼻腔内投与ワクチン組成物が:
(i)グリセロールと脂肪エステルとのモノエステル、および
(ii)脂肪酸
を含有する、請求項1?6のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項8】
鼻腔内投与ワクチン組成物が:
(i)グリセロールモノオレエート、および
(ii)オレイン酸
を含有する、請求項1?7のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項9】
ワクチン組成物中において、グリセロールモノオレエートの濃度が2.5?20 mg/mlであり、オレイン酸の濃度が2.5?20 mg/mlである、請求項8記載のワクチン組成物。
【請求項10】
鼻腔内投与ワクチン組成物が自己投与によって与えられる、請求項1?9のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項11】
各容器中の鼻腔内投与ワクチン組成物の体積が約50μl?約250μlである、請求項1?10のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項12】
鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する各容器が、予防接種用量の50%または100%を含有する、請求項1?11のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項13】
第1ワクチンコンポーネントに含まれる非経口投与ワクチン組成物および鼻腔内投与ワクチン組成物が同時に投与される、請求項1?12のいずれか一項記載のワクチン組成物。
【請求項14】
第1ワクチンコンポーネントに含まれる非経口投与ワクチン組成物および鼻腔内投与ワクチン組成物が病院への同じ通院時に投与される、請求項1?12のいずれか一項記載のワクチン組成物。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(引用文献1は英語のため、合議体による日本語訳文にて記す。)(下線は合議体による。)。

(1-1)(6491頁表題)
「サブユニットインフルエンザ抗原を含むEurocine^((R))L3アジュバントは鼻腔内ワクチン接種後にマウスにおいて防御免疫を誘導する。」(合議体注:(R)は、丸囲い文字のR。以下、同様。)

(1-2)(6491頁要約)
「鼻腔内(i.n.)投与されたインフルエンザサブユニット抗原を脂質ベースのアジュバント(Eurocine^((R)))と共に投与されたマウスにおける免疫原性および防御効力を皮下(s.c.)免疫のそれらと比較した。インフルエンザ血球凝集抑制(HAI)およびELISA IgG力価は、グループの皮下接種ワクチン接種後のグループとアジュバントによる鼻腔内ワクチン接種後のグループで同様であった。血清中のウイルス特異的IgAレベルは、皮下免疫後よりもアジュバントを用いた鼻腔内ワクチン接種後の方が高かった。ウイルス特異的IgAは、アジュバントを用いて及び用いないで鼻腔内ワクチンを接種した後にのみ、鼻腔洗浄液中で測定可能であった。したがって、内因性の非毒性の脂質アジュバントを用いた鼻腔内ワクチン接種は、同じ抗原を用いた皮下免疫と比較して、同等またはより強い抗体応答を誘導した。マウスモデルにおけるウイルス攻撃に対する防御効果をさらに分析した。 A/ニューカレドニア/20/99株のサブユニット抗原調製物を、異なる組み合わせのアジュバントを用いたNMRIマウスのワクチン接種に使用した。マウスを6.5組織培養感染量(50)の相同ウイルスで鼻腔内投与し、3日後に屠殺した。ウイルスはマウスでは致死的ではないので、剖検で得られた肺組織の定量的リアルタイムPCRによって防御効力を測定した。アジュバントのみで処置したマウスおよびナイーブマウスの群は、明らかに最高の平均ウイルスRNAコピー数(それぞれ19,200および11,000)を有した。すべてのワクチン接種群、特にL3Aを鼻腔内投与したマウス(・・・)は、有意に低いコピー数を示した。我々の調査結果はフェレット、サルとヒトにおける製剤の効果のさらなる調査を促すものである。」

(1-3)(6492頁左欄下から10行?末行)
「2.2.予防接種
2.2.1.3組の実験が報告されている
それぞれA/パナマ/2007/99(H3N2)またはA/ニューカレドニア/20/99(H1N1)株由来の卵増殖一価サブユニットインフルエンザ抗原(・・・)は、マウスの免疫に使用された。各ワクチン接種時に、1.5μgのHAを、イソフルラン(・・・)で麻酔されたマウスの各鼻孔にそれぞれ5μL投与するか、またはPBSで100μLに希釈して皮下投与した。全てのマウスを2週間の間隔で3回免疫した。」

(1-4)(6494頁表4)
「表4
実験No.2 A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)サブユニット抗原による免疫。ELISA IgA ODは、血清希釈度1/100で検出されたものである。鼻汁を1/5希釈で試験した。結果は、個々に分析されたサンプルの中央値と範囲として表される。



Type of vaccination:予防接種の種類
Median and range of influenza virus-specific IgA OD in serum:血清中のインフルエンザウイルス特異的IgA ODの中央値と範囲
Median and range of influenza virus-specific IgA OD in respiratory washings:呼吸器洗浄液中のインフルエンザウイルス特異的IgA ODの中央値と範囲
Median and range of total IgA OD in respiratory washings:呼吸器洗浄液中の総IgA ODの中央値と範囲
Ratio influenza virus-specific/total IgA respiratory washings:呼吸器洗浄液中の、インフルエンザウイルス特異的IgA/総IgA数比

(1-5)(6495頁図1)
「図1(A)10匹のマウスからなる群を、2週間の間隔でA /ニューカレドニア/20/99 H1N1サブユニット抗原で3回鼻腔内に免疫した。 2つの群のマウスは、2つの抗原製剤(それぞれL3AおよびL3B)と組み合わせた抗原を受け、1つの群は抗原のみを受け、そして1つの群はアジュバントのうちの1つのみ(L3B)を受けた。 プールした血清からのHAI力価を示す。(B)10匹のマウスの群を、2週間の間隔でA/ニューカレドニア/20/99 H1N1サブユニット抗原で3回鼻腔内に免疫した。 2つの群のマウスは、2つの抗原製剤(それぞれL3AおよびL3B)と組み合わせた抗原を受け、1つの群は抗原のみを受け、そして1つの群はアジュバントのうちの1つのみ(L3B)を受けた。 3回目の免疫後のプール血清からのIgG OD値を示す。



上記記載事項(1-2)?(1-5)には、マウスの免疫に使用された抗原の由来は「A/ニューカレドニア/2-/99株」であることが記載されており、これはインフルエンザA型のウイルスである。また、上記記載事項(1-3)によると、マウスの免疫に使用された抗原は、「1価サブユニットインフルエンザ抗原」であり、これは1種の抗原であることを意味する。
そうすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「インフルエンザに対してマウスを免疫化するためのワクチン組成物であって、インフルエンザA型に由来する1種の抗原を含有する鼻腔内投与ワクチン組成物をマウスの鼻腔内に2週間の間隔で3回投与して、マウスを免疫化する方法に用いられるワクチン組成物。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。

(2-1)
「【請求項1】
患者をインフルエンザウイルス感染に対して免疫感作するための方法であって、第1のインフルエンザワクチンが、該患者に投与され、次いで第2のインフルエンザワクチンが、該患者に投与され、ここで該第1のワクチンが、粘膜経路によって投与され、かつ該第2のワクチンが、非経口経路によって投与される、方法。」

(2-2)
「【実施例】
【0136】
(本発明を実施するための様式)
三価インフルエンザサブユニットワクチンを、MDCK細胞培養物において増殖させたウイルスから調製した。株は、(i)A/Wyoming H3N2;(ii)A/New Caledonia H1N1;および(iii)B/Jiangsuであった。これらのワクチンを使用して、用量が0日目および28日目に与えられる以下の種々の2用量レジメンによって雌BALB/cマウスを免疫感作した:(a)2×筋肉内注射;(b)2×鼻腔内噴霧;(c)鼻腔内噴霧、その後の筋肉内注射;(d)筋肉内注射、その後の鼻腔内噴霧;(e)2×同時の筋肉内注射および鼻腔内噴霧。第6の群(f)は、単一の同時の筋肉内注射および鼻腔内噴霧を受容した。鼻腔内処方物は、5μgのLT-K63アジュバントを含んだ。1ワクチン用量につき1株あたりのHA用量は、1μgであった。血清サンプル、鼻洗浄液および気管支肺胞洗浄液(BAL)を、42日目に採取し、そして血清IgG(ELISA)、粘膜IgA(ELISA)および赤血球凝集抑制についてアッセイした。
【0137】
総体的に、レジメン(c)(すなわち、鼻腔内投与後の筋肉内注射)は、一貫して最も高い血清HI力価を誘導した。このレジメンは、他の全ての免疫感作の経路よりも10倍以上高いHI力価を誘導し(図1)、そして他の全ての群と比較して統計学的有意性(p<0.002、ステューデントt検定(両側、2つのサンプルが等分散であると仮定する)、95%信頼区間)を達成した。
【0138】
対照的に、逆の2用量(すなわち、レジメン(d))は、最も低い応答を与えた。その次に低いものは、(b)であり、次いで(a)であった。したがって、粘膜用量が最初に投与される別個の粘膜用量および非経口用量を含むレジメンが、最適であると考えられる。同日に2つの用量を与えることよりもむしろ2つの用量を分離することが、より強力な応答を与える。
【0139】
さらなる実験において、筋肉内注射が1/10のHA用量(1株あたり0.1μgのHA)を含む場合、同じ様式の血清HI力価が見られた。しかし、抗原用量(筋肉内用量および鼻腔内用量の両方において1株あたり1μgのHA)が維持された一方で、鼻腔内用量におけるLT-K63の量が10分の1に減らした(0.5μg)場合、その様式は、変化した。レジメン(c)が、依然としてレジメン(d)より優れていた一方で、レジメン(e)は、最良の総合力価を与えた。対照的に、これらの10分の1の減少が両方とも使用された(すなわち、筋肉内注射における0.1μgのHAおよび鼻腔内用量における0.5μgのLT-K63)場合、レジメン(c)は、最良の結果を与えた。したがって、アジュバントが使用される場合、その量は、また投与される抗原の量に対して十分であるべきである。
【0140】
図2に示す通り、抗HA IgG抗体分泌細胞および抗HA IgA抗体分泌細胞は、レジメン(b)の後に頸部リンパ節(CLN)において局所的に検出された。レジメン(c)および(d)は、CLN中のIgG抗体分泌細胞のみを誘導した。予期した通り、レジメン(a)は、CLNにおいていかなるIgG抗体分泌細胞もIgA抗体分泌細胞も誘導しなかった。ELISPOTの結果は、HAによるCLN細胞の一晩の刺激に由来する上清に対するELISAによって確認された。
【0141】
重要なことに、粘膜エフェクター部位(鼻洗浄液中のIgAとして直接測定される)と粘膜感応部位(mucosal inductive site)(CLN)との間の抗体応答に相関関係が、存在した。なぜならば鼻洗浄液における抗HA IgA応答は、図3に見られる通り、レジメン(b)において最も高かった。レジメン(c)は、レジメン(a)、次いでレジメン(d)よりも有意に高い(p<0.02)、鼻洗浄液における2番目に高い抗HA IgA応答を誘導したからである。これらのデータは、レジメン(b)および(c)におけるような最初の粘膜用量が最も高いレベルの抗HA IgG局所(CLN)応答および抗HA IgA局所(CLN)応答ならびに抗HA IgG粘膜(鼻洗浄液)応答および抗HA IgA粘膜(鼻洗浄液)応答を誘導したことを示す。したがって、粘膜免疫感作およびその後の非経口免疫感作は、多くのエフェクター機能を伴う局所IgAを誘導するために有用である。」

(2-3)
「【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】図1は、レジメン(a)?(f)によって免疫感作されたマウスにおける血清HI力価を示す。6個の群の各々において、3つのバーは、左から右に、A/Wyoming;A/New Caledonia;B/Jiangsuである。
【図2】図2は、レジメン(a)?(e)についてのCLN ELISPOTの結果(100万個の細胞あたりの抗体分泌細胞を示す)を示す。白色のバーは、IgAであり、灰色のバーは、IgGである。
【図3】図3は、レジメン(a)?(e)についての鼻洗浄液のIgA価を示す。」

(2-4)




第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ここで、本願発明1の「非経口投与」という用語は、本願明細書の段落【0028】の「用語『非経口投与する』は、非経口経路による投与、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、または皮下投与を指す。」という記載、及び、本願発明1では、第1ワクチンコンポーネントが「非経口投与ワクチン組成物および鼻腔内投与ワクチン組成物」と記載されており、非経口投与ワクチンが鼻腔内投与ワクチンとは異なるものとして記載されていることを考慮すると、「非経口投与」には、「鼻腔内投与」を含まないものと解されるので、以下そのように解釈して検討する。
本願発明1も引用発明も、最初に投与されるプライムワクチンと、その免疫化をより高めるために2回目以降投与されるブーストワクチンを含む組成物に係るものと認められるところ、引用発明において、プライムワクチン及びブーストワクチンとして投与される鼻腔内投与ワクチン組成物は、何らかの1つ又は複数の容器に入っていると解され、その容器のセットはワクチンコンポーネントであるといえる。
そうすると、引用発明において、プライムワクチンとして1回目に投与されるワクチン組成物は、不活性化インフルエンザA型の抗原を含有するワクチン組成物を含有する容器の第1セットを含む第1ワクチンコンポーネントに相当し、また、引用発明において、ブーストワクチンとして2回目及び3回目に投与されるワクチン組成物は、本願発明1の、不活性化インフルエンザA型の抗原を含有する鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する1つまたは複数の容器の第2セットを含む、第2ワクチンコンポーネントを含むものに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明は、次の点で一致し、少なくとも次の点で相違するといえる。
(一致点)
インフルエンザに対して動物を免疫化するためのワクチン組成物であって、不活性化インフルエンザA型の抗原を含有する鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する容器の第1セットを含む、第1ワクチンコンポーネントと、不活性化インフルエンザA型の抗原を含有する鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する1つまたは複数の容器の第2セットを含む、第2ワクチンコンポーネントを含み、第2ワクチンコンポーネントがブーストワクチンとして鼻腔内的に投与される、ワクチン組成物である点。

(相違点1)
本願発明1は、免疫化する対象動物がヒトであるのに対し、引用発明はマウスである点。

(相違点2)
第1ワクチンコンポーネントが、本願発明1は、「非経口投与ワクチン組成物」をさらに含むものであり、第1ワクチンコンポーネントがプライムワクチンとして非経口的および鼻腔内的に投与されるものであるのに対し、引用発明は、鼻腔内投与ワクチン組成物を含有する容器のセットのみを含むものであって、非経口投与ワクチン組成物は含まないものであり、第1ワクチンコンポーネントがプライムワクチンとして鼻腔内的のみにより投与されるものである点。

(相違点3)
セットの各容器が、本願発明1では、「5マイクロリットル?400マイクロリットルの総体積のワクチン組成物を含有」するのに対し、引用発明では、ワクチン組成物の総体積は不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討する。
引用文献2には、(e)として、プライムワクチン及びブーストワクチン共に、筋肉内投与及び鼻腔内投与を行うレジメンが記載されている(上記記載事項(2-2))。
しかしながら、そもそも、引用文献1には、プライムワクチン及びブーストワクチン共に鼻腔内投与を行うレジメンは皮下投与である非経口投与と同等又はより強い抗体応答を誘導する優れたものであることが記載されており(上記記載事項(1-2))、引用発明は、そのような優れたレジメンにわざわざ非経口投与を加える変更をしなければならない課題を有しているとは認められない。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載されたレジメンを適用しようとする動機付けがあるとは認められない。
さらに、引用文献2のレジメン(e)についてみると、図1には、レジメン(e)は赤血球凝集抑制力価を一定程度増加させることは示されているものの、最も優れた赤血球凝集抑制力価を示すのは、(c)の、プライムワクチンとして鼻腔内投与をした後にブーストワクチンとして筋肉内投与を行うレジメンであるから(上記記載事項(2-4))、引用発明において、(c)ではなく、特に(e)のレジメンに着目して、さらにそのプライムワクチンの用法のみを採用しようと当業者は思い至ることはない。
そして、引用文献2のレジメン(c)は、鼻腔内投与の後に筋肉内投与を行うレジメンであり、本願発明1のレジメンとは、プライムワクチン、ブーストワクチンの両方において構成が異なるものであるから、引用発明において、プライムワクチンの用法である鼻腔内投与にさらに、筋肉投与等の非経口投与を付加する動機付けとなるものではない。
また、引用文献2において、IgG分泌細胞の誘導を示した図2、及びIgA抗体の誘導を示した図3をみても、レジメン(e)については何ら結果が記載されていないから、これらの図は、引用発明において、IgG抗体やIgA抗体を誘導することを目的として、レジメン(e)を採用する契機となるものではない(上記記載事項(2-4))。むしろ、図2及び図3からは、レジメン(b)が優れていることが読み取れるが、レジメン(b)は、プライムワクチンとして鼻腔内投与をした後に、ブーストワクチンとして鼻腔内投与を行うレジメンであり、これはまさに引用発明と同じレジメンであって、上記したように引用発明は、レジメンを変更しなければならない課題を有しているとは認められないことを裏付けるものである。
そして、本願発明1は、ブーストワクチンが鼻腔内投与のみであるため自己投与が可能であって、患者のコンプライアンスが改善されている上に、IgG2a抗体及びIgA抗体を誘導するためより広い免疫応答を惹起できるという顕著な効果を奏するものである。

(3)小括
よって、本願発明1は、上記相違点1及び相違点3について判断するまでもなく、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?14について
本願発明2?14は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?14は、当業者が引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-09 
出願番号 特願2015-547071(P2015-547071)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 幸田 俊希安藤 公祐  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 關 政立
冨永 みどり
発明の名称 鼻腔内予防接種投薬レジメン  
代理人 清水 初志  
代理人 川本 和弥  
代理人 山口 裕孝  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 大関 雅人  
代理人 井上 隆一  
代理人 新見 浩一  
代理人 佐藤 利光  
代理人 春名 雅夫  
代理人 刑部 俊  
代理人 小林 智彦  
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