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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23C
管理番号 1352957
審判番号 不服2018-9770  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-17 
確定日 2019-07-19 
事件の表示 特願2017-155483「切削インサート及び切削工具」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019-34353、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成29年8月10日の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年11月 9日付け:拒絶理由通知
平成30年 1月12日 :意見書の提出
同 年 4月12日付け:拒絶査定
同 年 7月17日 :審判請求

第2.原査定の概要
原査定(平成30年4月12日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-193049号公報

第3.本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本願発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の角部を有し、互いに対向する2つの端面と、
前記2つの端面の間に延在する周側面と、
前記2つの端面の少なくとも一方と前記周側面との間の交差稜線に形成された切れ刃と、を備え、
前記切れ刃は、第1の角部に形成された第1のコーナー刃と、前記第1の角部に隣り合う第2の角部に形成された第2のコーナー刃と、その第1のコーナー刃と第2のコーナー刃との間に配置され、互いに接続された主切れ刃及び底刃と、を少なくとも有し、
端面側から見て、前記底刃は外側に凸の円弧状に形成され、前記底刃の幅は、前記第1のコーナー刃の外側端と前記第2のコーナー刃の外側端を結ぶ方向の切削インサートの幅の15%以上50%以下であり、前記底刃の円弧半径は、前記切削インサートの幅の1/3以上1/1以下である、切削インサート。
【請求項2】
周側面側から見て、前記底刃は、切削インサートの幅方向の中心を通りその幅方向に垂直の方向に延びる中心線を跨いでおり、前記底刃の主切れ刃側の第1の端が、前記底刃の主切れ刃と反対側の第2の端より高い位置にある、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
周側面側から見て、前記底刃は、上に凸の第1の曲線と下に凸の第2の曲線とを含んで構成され、前記第1の曲線は前記主切れ刃に接続され、前記底刃の両端を結んだ直線と切削インサートの前記中心線に直交する線とがなす角度が0°より大きく20°より小さい、請求項2に記載の切削インサート
【請求項4】
前記底刃は、前記第1の曲線と、前記第2の曲線と、前記第1の曲線と前記第2の曲線の間に設けられ、前記第1の曲線と前記第2の曲線に連続的に接続された直線と、を有する、請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記切れ刃は、前記底刃と前記第2のコーナー刃との間に副切れ刃を有する、請求項1?4のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項6】
前記端面から見て、前記第1のコーナー刃の外側端と前記底刃の円弧状の最も外側に突出した点を結んだ線と、前記第2のコーナー刃の外側端と前記底刃の円弧状の最も外側に突出した点を結んだ線とがなす角度が150°以下である、請求項1?5のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項7】
工具本体と、
前記工具本体の先端部に装着される、請求項1?6のいずれかに記載の切削インサートと、を備え、
前記切削インサートは、工具本体の回転軸周りに端面を回転方向に向けて装着される、切削工具。
【請求項8】
前記切削インサートは、工具本体の先端部側から見て、前記切削インサートの底刃の両端を結んだ線が、前記切削インサートの底刃と主切れ刃との接点と切削工具の回転軸とを結んだ線に対して、回転方向に-10°以上6°以下の範囲の角度になるように装着される、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記角度範囲が、-10°以上2°以下である、請求項8に記載の切削工具。」

第4.引用文献1の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載事項
平成29年11月9日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面(特に【図1】ないし【図5】を参照。)とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。

(1) 「【0016】
そこで、本発明は、フライス加工を行うための刃先交換式回転切削工具に着脱自在に装着する切削インサートについて、第2副切れ刃を用いた傾斜切削加工時には、高送りの加工条件を設定することが可能となり、また、切屑排出性を改善することができる切削インサート、及びこの切削インサートを装着した刃先交換式回転切削工具を提供することにある。
さらに、本発明は、加工面の表面粗さを改善するとともに、被削材の傾斜切削加工を高送りで実施しても好適な加工面の面粗さを得ることができる切削インサート、及びこの切削インサートを装着した刃先交換式回転切削工具を提供することにある。」

(2)「【0031】
(切削インサートの基本的な構成)
以下、本発明の切削インサートの基本的な構成を、図1から図5に基づいて説明する。図1は本発明の切削インサートの一実施形態について、その表面部の斜め上方から見た斜視図、図2は図1に示す切削インサート1の上面部の構成を示す平面図、図3は図1に示す切削インサート1について、長辺方向の交差稜線部に隣接する長辺方向側面部の方向から見た側面図、図4は同じく図1に示す切削インサート1について、短辺方向側面部の方向から見た正面図、図5は図2に示す切れ刃部について、その構成を説明するために図2の所定の箇所を拡大して示した部分拡大図である。なお、本発明の切削インサートは、いわゆる、ネガティブ型切削インサートの構成を備えている。
【0032】
図1(図2)に示すように、切削インサート1は平面視において短辺と長辺を有する略四角形形状をなし、その厚さ方向の形状は平板状をなしている。切削インサート1の基本的な構成は、表面部2と、表面部2と対向する位置に形成された裏面部3と、これら表面部2と裏面部3に接続されて側面を形成する2つの長辺方向側面部4、4と、同じく2つの短辺方向側面部5、5と、表面部2の中央部から裏面部3の中央部まで貫通する、切削インサート1を固定するための固定用ネジ挿通穴6(以下、単に「ネジ挿通穴6」と記載する)を備えている。
長辺方向側面部4、4は、表面部2と裏面部3の長辺の稜線部に沿って形成されている。一方、短辺方向側面部5、5は、表面部2と裏面部3の短辺の稜線部に沿って形成されている。また、表面部2と裏面部3の形状は同じ形状をなしているとともに、2つの長辺方向側面部4、4、及び短辺方向側面部5、5は、表面部2及び裏面部3に対して垂直になるように形成されている。
【0033】
なお、図2に示す1点鎖線で示す直線Aは、切削インサート1の平面図において、ネジ挿通穴6の中心線P1を通って2つの短辺方向側面部5、5間の幅(W)を2等分する直線である。また、1点鎖線で示す直線Bは、ネジ挿通穴6の中心線P1を通って直線Aと直交する直線である。
【0034】
図1(図2)に示すように、略四角形形状をなす表面部2の短辺と長辺が交差する4つの角部には円弧形状をなす第1のコーナー部7、7、及び第2のコーナー部8、8が形成されている。同様に、裏面部3の4つの角部にも円弧形状をなす第1のコーナー部7、7、及び第2のコーナー部8、8が形成されている。そして、表面部2または裏面部3の平面視において、これら一対の第1のコーナー部7、7、及び一対の第2のコーナー部8、8は、ネジ挿通穴6の中心線P1を通る対角線に対してそれぞれ対向する位置に、同じ形状をなすように形成されている。
さらに、図1、図3及び図4に示すように、表面部2に形成されている第1のコーナー部7、7に対向する裏面部3の位置には第2のコーナー部8、8が形成されている。同様に、表面部2に形成されている第2のコーナー部8、8に対向する裏面部3の位置には第1のコーナー部7、7が形成されている。
【0035】
本発明の切削インサート1においては、表面部2と短辺方向側面部5及び長辺方向側面部4とが交差する箇所となる交差稜線部9、及び裏面部3と短辺方向側面部5及び長辺方向側面部4とが交差する箇所となる交差稜線部9であって、以下に説明する箇所に切れ刃が形成されている。
表面部2においては図2に示すように、4つのコーナー部となる、第1のコーナー部7、7、及び第2のコーナー部8、8のうち、ネジ挿通穴6の中心線P1に対して対角線上に配置されている一対の第1のコーナー部7、7の円弧形状をなす交差稜線部9cには第1のコーナー刃11a、11aが、同じく他の一対の第2のコーナー部8、8の円弧形状をなす交差稜線部9dには第2のコーナー刃11b、11b刃が形成されている。切削インサート1の裏面部3にも上記と同様に、一対の第1のコーナー刃11a、11aと、一対の第2のコーナー刃11b、11bが形成されている。
なお、本発明に係る切削インサート1は、ネガティブ型の切削インサートの構成を備えているので、上記第2のコーナー刃11b、11bは切れ刃として使用されないので、必ずしも切れ刃を形成する必要はない。従って、以下の説明において、上記した第2のコーナー刃11b、11bのことを、第2のコーナー稜線部11b、11bと記載する。
【0036】
さらに、本発明の切削インサート1においては、第1のコーナー刃11aの一方の端部(図2に示す端部(s1))、すなわち、短辺方向側面部5側の交差稜線部9b上の(s1)から、複数の切れ刃が順次、第2のコーナー稜線部11bの方向に向けて形成されている。
これらの切れ刃は、図2に示すように、主切れ刃12、第1副切れ刃13、及び第2副切れ刃14が、順次、この順序の配置で一つに繋がった(連なった)状態で形成されている。以下の説明において、これら第1のコーナー刃11a、主切れ刃12、第1副切れ刃13、及び第2副切れ刃14は、一つの切れ刃として繋がっているので、これら切れ刃を総称して、「切れ刃部10」と記載する場合がある。また、以下の説明において、上記(s1)を「コーナー刃11aの一方の端部(s1)」と記載する場合がある。
【0037】
平面視で略四角形の形状をなす切削インサート1は、前記したようにネガティブ型インサートの構成を備えているので、表面部2及び裏面部3はそれぞれ2つの切れ刃部10を備えており、かつ、表面部2の切れ刃部10と裏面部3の切れ刃部10は、図1に示すように、表裏の対向する交差稜線部9bにそれぞれ形成されている。
【0038】
以下、切れ刃部10を構成する各切れ刃が備えている基本的な構成について説明する。図2に示すように、第1のコーナー刃11aは所定の半径を有する円弧形状をなしている。第1のコーナー刃11aの一方の端部(s1)には、直線形状をなす主切れ刃12が繋がっている。直線形状をなす主切れ刃12は、前記した直線Bに対して所定の角度をもって傾斜するように形成されている。
【0039】
主切れ刃12の他方の端部(s2)には、半径Rを有する円弧形状をなす第1副切れ刃13が繋がっている。円弧形状をなす第1副切れ刃13は、図5に拡大して示しているように、その円弧形状の向きは切削インサート1の外側方向に向けて凸状をなすように形成されている。さらに、第1副切れ刃13の円弧形状は、主切れ刃12との繋ぎ部(主切れ刃12の他方の端部(s2))から離間するに従って、漸次、直線状の主切れ刃12の延長線(D)に対して挿通穴6方向に向けて後退するように形成されている。図5に示す符号「L1」は、円弧形状をなす第1副切れ刃13の弦の長さ、すなわち、端部(s2)と端部(s3)間の距離である。
なお、切削インサート1を刃先交換式回転切削工具30(図9参照)に装着したときには、刃先交換式回転切削工具30の回転中心軸O方向の最下点は、円弧形状をなす第1副切れ刃13上の所定の位置に存在するように、切削インサート1は刃先交換式回転切削工具30に装着される。」

(3)「【0054】
(第2の特徴)
さらに、本発明の切削インサートは次の特徴を備えている。図3(図4)に示すように、表面部2と裏面部3において、一つの連続した切れ刃を構成している切れ刃部10、すなわち、コーナー刃11a、主切れ刃12、第1副切れ刃13、及び第2副切れ刃14は、第1のコーナー刃11aの中央部(C)から第2副切れ刃上の所定の位置(Q)まで、連続的に下り傾斜するように形成している。切れ刃部10を上記したように下り傾斜させている構成について詳細に説明すると次のようになる。
【0055】
すなわち、図4に示すように、切削インサート1を厚さ(T)方向に二等分する平面(N)に対して、切れ刃部10を構成する各切れ刃上の任意の箇所からこの平面(N)までの距離(t1)は、コーナー刃11の中央部(C)が最大の値となり、中央部(C)から第2副切れ刃14上の所定の位置(Q)までは連続的に緩やかに減少するように切れ刃部10の各切れ刃を形成することが好ましい。また、第2副切れ刃14上の所定の位置(Q)から第2のコーナー部8の第2のコーナー稜線部11bの端部(s4)までは、上記した距離(t1)は減少させることなく一定の値にすることが好ましい。
なお、以下の説明において、上記した第2副切れ刃14上の所定の位置(Q)のことを「変曲点Q」と記載する。」

(4)「【0066】
さらに、本発明の切削インサート1は、次の特徴を備えているようにすることが望ましい。この特徴は、切削インサート1の短辺方向側面部5の幅寸法をW(図2参照)とし、前記した半径Rの円弧形状をなす第1副切れ刃13の弦の長さをL1(図5参照)としたときに、このL1の値は、
L1=α×W、但し、αは、0.15≦α≦0.35、
の関係を満たすように第1副切れ刃13を構成することにある。なお、第1副切れ刃13の弦の長さ(L1)とは、図5に示す第1副切れ刃13の一方の端部(s2)と他方の端部(s3)とを結んだ直線距離を示す。」

(5) 「【0068】
(刃先交換式回転切削工具)
続いて、上記した切削インサート1を工具本体に着脱可能に装着した本発明の刃先交換式回転切削工具の一例を、図8及び図9に基づいて説明する。なお、図8は本発明の一実施形態を示す刃先交換式回転切削工具30の工具本体31の斜視図を示し、工具本体31に設けたインサート取付座32に切削インサートを装着していない状態を示している。図9は図8に示すインサート取付座32に、前記した本発明に係る切削インサート1を装着した状態を示す斜視図である。図8及び図9に示す符号「O」は、刃先交換式回転切削工具30(工具本体31)の回転中心軸である。被削材の切削加工を行うときには、刃先交換式回転切削工具30は図9に示すF方向に回転する。
【0069】
図8(図9)に示す工具本体31は、4つのインサート取付座32を備えた例を示している。これらのインサート取付座32は、図8に示すように、着座面33と、短辺側拘束壁34と、長辺側拘束壁35と、着座面33の中央部に形成されたネジ穴36を備えている。着座面33は、切削インサート1をインサート取付座32に装着するときに、切削インサート1の表面部2または裏面部3を密着させるための座面である。」

2.引用文献1に記載された技術的事項
これらの記載から、引用文献1には、以下の(1)ないし(3)の技術的事項が記載されているということができる。
(1)切れ刃部10は、第1のコーナー刃11a、主切れ刃12、第1副切れ刃13、及び第2副切れ刃14からなること(段落【0054】)。
(2)交差稜線部9に第1のコーナー刃11a及び第2のコーナー刃11bが形成されていること(段落【0035】)。
(3)第1副切れ刃13は半径Rの円弧形状をなし、切削インサート1の短辺方向側面部5の幅寸法をW、第1副切れ刃13の弦の長さをL1(図5参照)としたときに、このL1の値は、L1=α×W、但し、αは、0.15≦α≦0.35であること(段落【0066】)。

3.引用発明
上記1.の記載事項、及び2.の技術的事項を整理すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「第1のコーナー部7及び第2のコーナー部8を有し、表面部2及び裏面部3と、
前記表面部2及び裏面部3の間に延在する短辺方向側面部5及び長辺方向側面部4と、
前記表面部2及び裏面部3の少なくとも一方と前記短辺方向側面部5及び長辺方向側面部4との間の交差稜線部9に形成された切れ刃部10及び第2のコーナー刃11bと、を備え、
前記切れ刃部10及び第2のコーナー刃11bは、第1のコーナー部7に形成された第1のコーナー刃11aと、前記第1のコーナー部7に隣り合う第2のコーナー部8に形成された第2のコーナー刃11bと、その第1のコーナー刃11aと第2のコーナー刃11bとの間に配置され、互いに接続された主切れ刃12及び第1副切れ刃13と、を少なくとも有し、
表面部2側から見て、前記第1副切れ刃13は外側に凸の半径Rの円弧状に形成され、前記第1副切れ刃13の弦の長さL1は、切削インサート1の短辺方向側面部5の幅寸法Wの15%以上35%以下である、切削インサート1。」 (以下「引用発明」という。)

第5.対比及び判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「第1のコーナー部7」は、その構造及び機能からみて、本願発明1の「第1の角部」に相当し、以下、同様に、「第2のコーナー部8」は「第2の角部」に、「表面部2及び裏面部3」は「互いに対向する2つの端面」に、「短辺方向側面部5及び長辺方向側面部4」は[周側面」に、「交差稜線部9」は「交差稜線」に、「切れ刃部10及び第2のコーナー刃11b」は「切れ刃」に、「第1のコーナー刃11a」は「第1のコーナー刃」に、「第2のコーナー刃11b」は「第2のコーナー刃」に、「主切れ刃12」は「主切れ刃」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「第1副切れ刃13」は、その構造及び機能からみて、本願発明1の「底刃」に相当し、引用発明の「第1副切れ刃13の弦の長さL1」は、本願発明1の「底刃の幅」に相当する。
さらに、引用発明の「切削インサート1」は、本願発明1の「切削インサート」に相当し、引用発明の「切削インサート1の短辺方向側面部5の幅寸法W」は、本願発明1の「第1のコーナー刃の外側端と前記第2のコーナー刃の外側端を結ぶ方向の切削インサートの幅]に相当する。
また、引用発明の「第1副切れ刃13の弦の長さL1は、切削インサート1の短辺方向側面部5の幅寸法Wの15%以上35%以下」は、本願発明1の「底刃の幅は、前記第1のコーナー刃の外側端端と前記第2のコーナー刃の外側端を結ぶ方向の切削インサートの幅の15%以上50%以下」に包含される。

よって、本願発明1と引用発明は、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「複数の角部を有し、互いに対向する2つの端面と、
前記2つの端面の間に延在する周側面と、
前記2つの端面の少なくとも一方と前記周側面との間の交差稜線に形成された切れ刃と、を備え、
前記切れ刃は、第1の角部に形成された第1のコーナー刃と、前記第1の角部に隣り合う第2の角部に形成された第2のコーナー刃と、その第1のコーナー刃と第2のコーナー刃との間に配置され、互いに接続された主切れ刃及び底刃と、を少なくとも有し、
端面側から見て、前記底刃は外側に凸の円弧状に形成され、前記底刃の幅は、前記第1のコーナー刃の外側端と前記第2のコーナー刃の外側端を結ぶ方向の切削インサートの幅の15%以上50%以下である、切削インサート。」

<相違点>
本願発明1は、「前記底刃の円弧半径は、前記切削インサートの幅の1/3以上1/1以下である」の対し、引用発明では、第1副切れ刃13(本願発明1の「底刃」に相当。)は、半径Rの円弧を有するが、第1副切れ刃13の円弧半径Rと切削インサート1の幅との関係が明らかでない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1は、その発明特定事項で「前記底刃の円弧半径は、前記切削インサートの幅の1/3以上1/1以下である」としており、本願明細書の段落【0038】によれば,このように底刃53の円弧半径を設定することにより、円弧が緩やかになり、底刃53の強度が向上し、切削時の切れ刃13の欠損を抑制するという効果を奏するものである。
これに対して、引用発明は、第1副切れ刃13の円弧半径Rに関し、その段落【0039】に「半径Rを有する円弧形状」と記載されるに留まり、また、引用文献1の【図5】に第1副切れ刃13の円弧半径Rが図示されているものの、この第1副切れ刃13の円弧半径Rと、切削インサート1の短辺方向側面部の幅寸法Wとの関係は不明であり、さらに、第1副切れ刃13の円弧半径Rの数値範囲を、切削インサート1の短辺方向側面部の幅寸法Wを基準とした上限値及び下限値により設定するか否かも不明である。
そうすると、引用文献1には、第1副切れ刃13の円弧半径を、切削インサート1の幅の1/3以上1/1以下とすることは記載も示唆もなく、円弧を緩やかにすることにより、切削時の切れ刃の欠損を抑制するというものではないから、第1副切れ刃13の円弧半径を、切削インサート1の幅の1/3以上1/1以下とすることが、当業者が容易に想到できる事項とはいえない。

(3)小活
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は,本願発明1を直接的または間接的に引用するものであって,本願発明1の発明特定事項を有するから,上記1.(2)に示す理由と同様の理由により,本願発明2ないし9は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-09 
出願番号 特願2017-155483(P2017-155483)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B23C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中川 康文  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 青木 良憲
中川 隆司
発明の名称 切削インサート及び切削工具  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
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