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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1352960
審判番号 不服2018-2540  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-22 
確定日 2019-06-28 
事件の表示 特願2014-549552「滞留時間の決定または確認のための窓処理質量分析データの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/098618、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年12月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月16日付けの拒絶理由が通知され、同年11月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成29年3月1日付けの拒絶理由が通知され、同年6月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年10月23日付けで拒絶査定がなされたのに対し、平成30年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものであり、その後、当審において平成30年10月15日付けの拒絶理由が通知され、平成31年1月16日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?16に係る発明は、平成31年1月16日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
質量スペクトル集合から、既知の着目化合物のピークをスコア化するためのシステムであって、前記システムは、
1つ以上の化合物を試料混合物から分離して、分離する試料混合物をイオン化する分離デバイスであって、前記試料混合物は、既知の着目化合物を含む、分離デバイスと、
質量範囲全体に及ぶために、1つ以上の順次質量窓幅を使用して、複数の時間間隔の各時間間隔において、前記分離する試料混合物に1回以上の質量分析走査を行うことにより、各順次質量窓幅に対する1つの質量スペクトルと、前記複数の時間間隔の各時間間隔に対する前記質量範囲全体に対する1つ以上の質量スペクトルと、前記複数の時間間隔に対する質量スペクトル集合とを生成する質量分析計と、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
(a)前記既知の着目化合物の単一の断片イオンを選択することと、
(b)前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対するイオンクロマトグラム(XIC)を形成することであって、前記XICは、前記複数の時間間隔の各時間間隔に対する前記選択された単一の断片イオンの強度を含む、ことと、
(c)固有の質量電荷比(m/z)を有する前記選択された単一の断片イオンに対応する2つ以上のXICピークが前記複数の時間間隔のうちの2つ以上の時間間隔において前記XIC内に見出される場合、前記2つ以上の時間間隔のそれぞれに対して、前記質量スペクトル集合から前記質量範囲全体の質量スペクトルを取得して2つ以上の質量範囲全体質量スペクトルを生成し、前記2つ以上の質量範囲全体質量スペクトルの各質量範囲全体質量スペクトルにおける前記選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすることであって、前記スコアは、それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す、ことと
を行う、システム。」

第3 当審拒絶理由について
平成30年10月15日付けの当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりのものである。なお、当審拒絶理由における「本願発明」とは、本件補正前の独立項である請求項1、10及び11に係る発明をまとめていったものである。
1.(委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由1(委任省令要件)について
(1)本願明細書の記載
本願発明には、「前記2つ以上の質量範囲全体質量スペクトルの各質量範囲全体質量スペクトルにおける前記選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすること」が特定されている。
これに対し、上記「スコア」について、本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当審において付与した。
「【0005】
・・・。種々の基準が、質量範囲全体の質量スペクトルを分析するために使用されることができる。これらの基準に基づいて、各ピークおよび/または時間間隔が、スコア化される。既知の化合物に対する滞留時間は、最高スコアまたは組み合わせられたスコアを伴う、ピークまたは複数のピークから同定される。」
「【0017】
スペクトル集合のピークのスコア化
前述のように、分離システムと連結された質量分析計は、試料から分離する着目化合物を同定および特性評価するために使用される。分離試料は、イオン化され、試料に対する一連の質量スペクトルが、規定された間隔において取得される。クロマトグラフシステムでは、経時的に収集される一連のスペクトルは、例えば、クロマトグラムと呼ばれる。任意の分離デバイスまたはシステムに対して、分離システムのいくつかの間隔にわたって収集される一連のスペクトルは、本明細書では、スペクトル集合と称される。
【0018】
スペクトル集合内で見出されるピークは、試料中の着目化合物を同定または特性評価するために使用される。しかしながら、複合試料では、干渉ピークおよび着目化合物の滞留時間に関する概算または無情報が、着目化合物を同定または特性評価することを困難にし得る。
【0019】
従来の分離連結質量分析システムでは、既知の着目化合物の断片イオンが、分析のために選択される。質量分析走査は、次いで、分離の各間隔において、断片イオンを含む質量範囲に対して行われる。各分光分析走査において見出される断片イオンの強度は、経時的に収集され、例えば、スペクトル集合、すなわち、イオンクロマトグラム(XIC)として分析される。
【0020】
単純試料混合物に対して、例えば、断片イオンを表す単一ピークは、典型的には、既知の化合物の予期される滞留時間において、XIC内で見出される。しかしながら、より複雑な混合物に対しては、断片イオンを表す2つ以上のピークが、着目化合物の予期される滞留時間に加え、スペクトル集合内の1つ以上の付加的時間間隔内で特定される。言い換えると、断片イオンに対するXICは、2つ以上のピークを有し得る。
【0021】
より複雑な混合物中の着目化合物を同定する従来の方法の1つは、既知の化合物の断片イオンの2つ以上がピークを有する、時間間隔を特定するものであった。本方法は、例えば、既知の配列のペプチドが定量化されるとき、プロテオミクスにおいて使用される。
【0022】
典型的複数の反応監視(MRM)方法では、2つ以上のMRM遷移が、監視され、それぞれ、ペプチドの異なる断片に対応する。以前の発見データが利用可能である場合、これらの遷移は、データ内で観察される最大断片に基づく。そうでなければ、これらの遷移は、例えば、予測されるy-イオンに基づく。XICは、これらの2つ以上のMRM遷移に対して分析される。全遷移に対するピークが存在する時間が、着目化合物を特性評価するために使用される。
【0023】
複合試料に対して、特に、予期される滞留時間が、正確に既知ではない場合、スペクトル集合内に曖昧性が存在し得る。例えば、2つ以上の滞留時間または2つ以上のMRM遷移のそれぞれに対してピークが存在する時間間隔が、存在し得る。
【0024】
複合試料によって導入される曖昧性に対処するための付加的情報は、ほとんど利用不可能である。従来の分離連結質量分析システムでは、各時間間隔における各断片イオンに対する各質量分析走査は、典型的には、狭質量窓幅を使用して行われる。その結果、データ取得後に利用可能な各断片イオンに対する特定の時間間隔における質量スペクトルは、ほとんど付加的洞察をもたらす可能性がない。
【0025】
プロテオミクス実施例に戻ると、複合試料は、2つ以上の抽出された親/娘イオンの組み合わせのそれぞれに対してピークが存在する、2つ以上の時間間隔を有し得る。言い換えると、ペプチドを表すピーク群は、2つ以上の時間間隔において見出され得る。種々の実施形態では、2つ以上の時間間隔のそれぞれに対して収集された各質量範囲全体に対する質量スペクトルが、検査される。
【0026】
例えば、予期される質量のうちの1つ以上に対する質量精度が、不良である場合、これは、スペクトル集合内のピークが、予期される着目断片に対応せず、本候補が、排除され得る、または、実際は、そのスコアを減少させ得ることの指標である。本スコア化は、2つ以上の初期の予期される質量だけではなく、ペプチドに対する他の予期される配列イオンにも基づくことができる。多くの場合、スペクトル集合内のピークは、他の化合物の同位体ピーク、または正しくない電荷状態(したがって、また、着目化合物に関係ない)を伴うピークに対応する。従来のMRM方法に対して、本状況を検出方法は存在しないが、窓処理データ取得方法が使用されるとき、本状況は、検出されることができ、対応する候補は、その結果、最も下位にランク付けされ得る。
【0027】
本技法は、可能性の高い配列イオンが、予測され得るが、また、初期断片スペクトルが利用可能であることを前提として、小分子にも非常に適用可能であるため、ペプチドに対して有力である。この場合、可能性として、スペクトルの最大観察断片集合が同定されが、任意の他の有意な観察断片を使用して、スコア化も行われるであろう。そのようなピーク群スコア化の付加的使用の1つは、スペクトル集合内で同定された初期質量に対してだけではなく、また、付加的予期または予測断片も考慮して、最も特異的断片質量または複数の質量を判定することであり得る。これは、「発見」データが、利用不可能であって、したがって、理論的ペプチドY-イオンが使用されるとき、または任意のそのような発見データが取得されるとき、最も有用である。これが、着目ペプチドを含有することが既知である(または、そのように疑われる)試料に対して行われる場合、結果として生じる最適化された断片質量は、他の試料に対する後続処理(すなわち、XIC計算)のために使用されることができる。」
「【0033】
ステップ3では、プロセッサ230は、1つ以上のピークの各ピークをスコア化する。プロセッサ230は、スペクトル集合から、各ピークの各間隔の間の質量範囲全体の質量スペクトルを読み出す。プロセッサ230は、各ピークに対応する質量スペクトル内の質量電荷比ピークの1つ以上のイオン特性の値を、断片イオンに対する1つ以上の既知の値と比較する。最後に、プロセッサ230は、比較の結果を各ピークのスコアの基礎とする。
【0034】
種々の実施形態では、1つ以上のイオン特性として、限定ではないが、電荷状態、等方性状態、質量精度、または既知の化合物の既知の断片化プロファイルと関連付けられ1つ以上の質量差が挙げられる。
【0035】
種々の実施形態では、プロセッサ230はさらに、1つ以上のピークのスコアに基づいて、既知の化合物の分離間隔を同定する。プロセッサ230は、例えば、最高スコアを伴う1つ以上のピークのピークの間隔として、既知の化合物の分離間隔を同定する。分離間隔として、限定ではないが、クロマトグラフシステム内の滞留時間または着目化合物がイオン移動度システムを通して通過するイオン移動度が挙げられ得る。
【0036】
種々の実施形態では、プロセッサ230はさらに、既知の化合物の1つ以上の付加的断片イオンに対して、ステップ1-3を行う。その結果、プロセッサ230は、既知の化合物の2つ以上の断片イオンの各ピークに対して、スコアを生成する。プロセッサ230は、2つ以上の断片イオンの各断片イオンが、スペクトル集合内にピークを有する、2つ以上の異なる間隔を同定する。プロセッサ230は、2つ以上の異なる間隔のそれぞれにおける2つ以上の断片イオンからのピークのスコアを組み合わせ、2つ以上の間隔のそれぞれの間の組み合わせられたスコアを生成する。最後に、プロセッサ230は、既知の化合物に対する分離間隔として、最高スコアを伴う2つ以上の異なる間隔の間隔を同定する。」
「【0042】
ステップ340では、1つ以上のピークの各ピークが、スペクトル集合から、各ピークの各間隔に対する質量範囲全体の質量スペクトルを取得し、各ピークに対応する質量スペクトル内の質量電荷比ピークの1つ以上のイオン特性の値を、断片イオンに対する1つ以上の既知の値と比較し比較の結果を各ピークのスコアの基礎とすることによって、スコア化される。」
「【0046】
分析モジュール420は、既知の化合物の断片イオンを選択する。分析モジュール420は、スペクトル集合内の複数の間隔の1つ以上の異なる間隔において、断片イオンに対して、1つ以上のピークを同定する。最後に、分析モジュール420は、1つ以上のピークの各ピークをスコア化する。各ピークの各間隔の間の質量範囲全体の質量スペクトルは、スペクトル集合から取得される。各ピークに対応する質量スペクトル内の質量電荷比ピークの1つ以上のイオン特性の値は、断片イオンに対する1つ以上の既知の値と比較される。各ピークのスコアは、比較の結果に基づく。」

(2)判断
ア スコアの定義
本願明細書には、スコアについて、「種々の基準」「に基づいて、各ピークおよび/または時間間隔が、スコア化される」、「各ピークに対応する質量スペクトル内の質量電荷比ピークの1つ以上のイオン特性の値を、断片イオンに対する1つ以上の既知の値と比較する。最後に、プロセッサ230は、比較の結果を各ピークのスコアの基礎とする。」、「各ピークに対応する質量スペクトル内の質量電荷比ピークの1つ以上のイオン特性の値を、断片イオンに対する1つ以上の既知の値と比較し比較の結果を各ピークのスコアの基礎とすることによって、スコア化される。」と記載されているものの、「スコア」(値)を求めた実施例が記載されておらず、具体的にどのような定義(計算式等)として表されるものであるのか明かではない。特に、「比較の結果を各ピークのスコアの基礎とする」との記載では、結果を基礎とするだけであり、スコアがどのような定義の値であるのか不明である。

イ スコアを求める必要性(解決しようとする課題)
本願明細書に「分離システムと連結された質量分析計は、試料から分離する」「分離試料は、イオン化され、試料に対する一連の質量スペクトルが、規定された間隔において取得される。」、「質量分析走査は、次いで、分離の各間隔において、断片イオンを含む質量範囲に対して行われる。」と記載されているとおり、クロマトにより経時的に試料を分離し、それら分離されたもの毎に(経時的に)質量分析を行うものであるから、経時的に行った質量スペクトルにおいて、同等な質量電荷比ピークをもつものが現れる場合があるにせよ、その場合においても、クロマトにより経時的に分離され、評価できるものである。してみれば、上記アで説示したとおり、「スコア」の定義は不明であるものの、本願発明のようなスコアを導入することの必要性が不明であり、スコアによりどのような課題が解決できるのか明かではない。

ウ スコアに関するピーク
本願発明は、断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの値と、その単一の断片イオンに対する既知のピークの値とを比較し、比較の結果を、その単一の断片イオンの2つ以上のXICピークの各XICピーク(クロマトのピーク)のスコアの基礎とするものであるが、質量電荷比(m/z)のピークと、滞留時間の違いにより分離するクロマトのピークとは、物理化学的に全く異なるものであり、質量電荷比(m/z)のピークをXICピークのスコアの基礎とできる物理化学的根拠が発明の詳細な説明に記載されていない。

エ スコアの利用
本願明細書に「予期される質量のうちの1つ以上に対する質量精度が、不良である場合、これは、スペクトル集合内のピークが、予期される着目断片に対応せず、本候補が、排除され得る、または、実際は、そのスコアを減少させ得ることの指標である。本スコア化は、2つ以上の初期の予期される質量だけではなく、ペプチドに対する他の予期される配列イオンにも基づくことができる。」、「そのようなピーク群スコア化の付加的使用の1つは、スペクトル集合内で同定された初期質量に対してだけではなく、また、付加的予期または予測断片も考慮して、最も特異的断片質量または複数の質量を判定することであり得る。」、「1つ以上のピークのスコアに基づいて、既知の化合物の分離間隔を同定する。プロセッサ230は、例えば、最高スコアを伴う1つ以上のピークのピークの間隔として、既知の化合物の分離間隔を同定する。」、「既知の化合物に対する分離間隔として、最高スコアを伴う2つ以上の異なる間隔の間隔を同定する。」と記載され、一応、スコアが、質量精度が不良である場合の指標、特異的断片質量または複数の質量の判定、既知の化合物の分離間隔の同定に利用できるようではあるが、これら3つの技術的関係が不明であり、そもそも上記アで説示したとおり「スコア」の定義自体が不明であることもあり、それらの指標、判定、同定が、スコアとどのように関連づけられるのかも不明であるから、本願発明でいうところの「スコア」を求めて、技術的にどのように利用するのか明かではない。

オ スコアの技術的意義のまとめ
上記ア?エで説示したとおり、スコアの定義、ピーク、必要性及び利用等について、本願明細書を参照しても技術的に明かではないことから、発明の詳細な説明の記載によって、スコアの技術的意義を理解することはできない。

カ 意見書における説明
請求人は、平成29年6月9日付け意見書で、以下のような説明をしている。
「<参考図3>

補正後の請求項1に規定されるように、プロセッサは、断片イオンのm/zピークの1つ以上のイオン特性の値と断片イオンに対する既知の値とを比較します。例えば、補正後の請求項2に規定されるように、1つ以上のイオン特性は、<参考図3>に示されるm/zピーク1およびm/zピーク2の質量精度であり得ます。m/zピーク1およびm/zピーク2の質量またはm/zは、m/z比431を有する断片イオンの既知の精確な質量値と比較されます。例えば、m/z比431を有する断片イオンに対する既知の精確な質量またはm/zは、431.0345であり、質量スペクトル1におけるm/zピーク1の測定された質量は、431.0344であり、質量スペクトル2におけるm/zピーク2の測定された質量は、431.128です。
最終的には、プロセッサは、m/zピークと既知のイオン特性の値との比較結果を各XICピークのスコアの基礎とします。例えば、上述した例の質量精度では、m/zピーク1は、m/zピーク2よりもm/z431を有する断片イオンの既知の精確な質量により近い質量を有しています。XICピーク1に与えられるスコア1のスコアは、XICピーク2に与えられるスコアよりも高くなります(以下に示す<参考図4>を参照)。」
当該説明が本願明細書のどこの記載に基づくものか不明であり、本願明細書に基づかない説明により、上記ア?オで指摘した理由1が解消されるものではない。
仮に、上記意見書における説明を参酌しても、XICピーク1、XICピーク2は、クロマトとしてのピークであり、質量分析した際のピーク(m/z)ではないことから、質量分析した際の、質量スペクトル1のm/zが431.0344、質量スペクトル2のm/zが431.128であるとしても、これらの質量スペクトルのm/zの値が、クロマトのピークとしてのXICピークを左右するものではない。参考図3から理解できることは、質量分析した際の質量スペクトルm/zの値が同じようなものでも、クロマトにより別の断片イオンとして区別できるということであり、意見書の上記説明によってスコア化することの技術的意義が理解できるものではない。

(3)小括
よって、発明の詳細な説明は、特にスコアについて、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないことから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。

理由2(明確性)について
(1)上記理由1で述べたとおり、本願明細書を参照しても、「スコア」の技術的意義が不明であるから、本願発明における「前記2つ以上の質量範囲全体質量スペクトルの各質量範囲全体質量スペクトルにおける前記選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすること」が、技術的に何を特定しようとしているのか不明確である。

(2)本願発明の「前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対する抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)を計算すること」と特定されているが、「質量スペクトル集合」とは、各時間間隔ごとにとった質量範囲全体における質量スペクトル(m/z)の集合であるから、質量スペクトル(m/z)からイオンクロマトグラム(XIC)を計算することは、上記理由1の(2)ウで述べたとおり、質量スペクトルのピークとクロマトのピークとは物理化学的に全く異なるものであり、どのような「計算」であるのか技術的に明確なものではない。

(3)小括
よって、本願発明及びそれに従属する請求項の記載は、不明確である。

理由3(実施可能要件)について
(1)上記理由1で述べたとおり、発明の詳細な説明には、スコア(値)を求めた実施例が記載されておらず、具体的にどのような定義(計算式等)として表されるものであるのか明かではないことから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

(2)上記理由2(2)で述べたとおり、本願発明の「前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対する抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)を計算すること」は不明確であり、この点、発明の詳細な説明には、計算した例も記載されておらず、具体的にどのような計算であるのか明かではないことから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

第4 当審の判断
1 理由1(委任省令要件)について
(1)スコアの定義について
ア 本件補正により「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすること」が、「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすることであって、前記スコアは、それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す、こと」(下線部は補正部分である)と補正された。
しかしながら、本願明細書を参照しても、「スコア」(値)を求めた実施例が記載されておらず、具体的にどのような定義(計算式等)として表されるものであるのか明かではないことは先の当審拒絶理由で指摘したとおりであり、「スコア」が「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ものと補正されたが、スコアを求めるための計算式等が明らかになるものでもなく、それがどのような値であるのかも不明であるから、依然としてスコアの定義は不明なままである。

イ そもそも、上記第3の理由1(2)カで摘記した<参考図3>を参照して理解されるとおり、クロマトの滞留時間T1、T2で分離されるXICピーク1、XICピーク2で表される化合物は、それらの化合物を構成するフラグメントイオン(断片イオン)の質量スペクトル1と質量スペクトル2が異なっていることから、異なる化合物を示していることは明かである。また、通常のクロマトグラフィと質量分析を合わせたシステムにおいては、クロマトグラフィにおいて化合物を分離し、その化合物についてフラグメントイオンの質量分析を行いその化合物を決定していることに鑑みても、クロマトの滞留時間T1、T2で分離されるXICピーク1、XICピーク2で表される化合物は異なるものである。
してみれば、フラグメントイオンの質量分析を行うことで化合物が決定できるXICピーク1、XICピーク2で表される異なる化合物に対して、「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ことを行う意義が不明であり、さらに、そのために「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピーク」の「イオン特性の値」と「前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し」、その「比較の結果」を「各XICピークのスコアの基礎とする」との「スコア」(これにより特定されるスコアの定義自体が不明であることは上記アで述べたとおりである)を用いることの技術的意義も不明である。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成31年1月16日に提出の意見書(以下「意見書」という。)において、「スコアの特定のタイプの値は、設計的選択事項にすぎません。また、スコアの値は、そのスコアの値がそのピークが着目化合物をどれくらい正確に表すかを示すものである限り、解決されるべき課題を解決するための重要ではありません。また、どのようにしてこのようなスコアの値を取得するかは、2つ以上の質量範囲全体質量スペクトルの各質量範囲全体質量スペクトルにおける選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較した場合、当業者によって容易に導き出されるものです。」と主張するにとどまり、具体的なスコアの定義については明らかにしてない。

エ 小括
よって、当審拒絶理由の理由1(2)ア「スコアの定義」で指摘した事項について、解消されたとはいえない。

(2)スコアを求める必要性(解決しようとする課題)
ア 上記(1)アで記載したとおり、本件補正により「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすることであって、前記スコアは、それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す、こと」と補正され、「スコア」が「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ものとなったが、上記(1)イで述べたとおり、通常のクロマトグラフィと質量分析を合わせたシステムにおいては、クロマトグラフィにおいて化合物を分離し、その化合物についてフラグメントイオンの質量分析を行いその化合物を決定しているものであり、それは、上記第3の理由1(2)カで摘記した<参考図3>を参照してもいえることである。
してみれば、フラグメントイオンの質量分析を行うことで化合物が決定できるXICピーク1、XICピーク2で表される異なる化合物に対して、「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ことを行う必要はなく、そのために「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピーク」の「イオン特性の値」と「前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し」、その「比較の結果」を「各XICピークのスコアの基礎とする」との「スコア」(これにより特定されるスコアの定義自体が不明であることは上記(1)アで述べたとおりである)を導入する必要も認められない。
したがって、「スコア」が「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ものと特定されたが、「スコア」自体の定義も不明であり、「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」必要性があるとはいえないことから、依然として、「スコア」を求める必要性が不明である。

イ 請求人の主張について
請求人は、意見書で「本願の請求項に係る発明によって解決されるべき課題は、2つ以上のXICピークのうち、着目化合物を最もよく表すXICピークを同定することです。特に、複合混合物において1つ以上のXICピークがある場合には、どのXICピークが着目化合物を正確に表すのかが明確ではありません。本願の請求項に係る発明は、どのXICピークが着目化合物を最もよく表すのかを決定するために「スコア」を用いています。」と説明しているが、XICピーク1、XICピーク2で表される異なる化合物に対して、フラグメントイオンの質量分析を行うことでそれらの化合物を決定できるのであるから、「スコア」により「着目化合物を最もよく表すXICピークを同定する」必要性があるとはいえない。

ウ 小括
よって、当審拒絶理由の理由1(2)イ「スコアを求める必要性(解決しようとする課題)」で指摘した事項について、解消されたとはいえない。

(3)スコアに関するピーク
ア 本願発明は「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピーク」の「イオン特性の値」と「前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し」その「比較の結果」を「各XICピークのスコアの基礎とする」もので、質量電荷比(m/z)のピークによって、滞留時間の違いにより分離するクロマトのピークを評価しているともいえるが、両者は、それらを求める原理が異なり、物理化学的に全く異なるものであるが、質量電荷比(m/z)のピークをXICピークのスコアの基礎とできる物理化学的根拠が依然として不明である。

イ 請求人の主張について
請求人は、意見書で「断片イオンを選択することは、(m/z)軸を、選択された断片イオンに対して特定の(m/z)比に固定することに必然的に対応しています。次に、各XICピーク(固定された(m/z)比において時間軸に沿った複数のピーク)に対して、全質量スペクトル(対応する時間に対する質量スペクトル)が取得され、既知の化合物と比較されます。これに基づいて着目化合物(既知の化合物)を表すための所与の時間における質量スペクトルの正確さが(上記の見解に照らして)決定されることが明らかです。質量スペクトルは、経時的に同定されていますから、質量スペクトルはXICピークに相当し、その結果、そのXICピークは、正確さに基づいてスコア化されることが可能です。」と記載し、その下線部において「質量スペクトルはXICピークに相当」すると説明しているが、「質量スペクトル」と「XICピーク」は、物理化学的に異なり、求める原理が異なるものであるから、「質量スペクトル」が「XICピーク」に相当するとの技術的前提を説明する物理化学的根拠があるとはいえない。

ウ 小括
よって、当審拒絶理由の理由1(2)ウ「スコアに関するピーク」で指摘した事項について、解消されたとはいえない。

(4)スコアの利用
ア 上記(1)アで記載したとおり、本件補正により「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすることであって、前記スコアは、それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す、こと」と補正されたことから、「スコア」は「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す」ことに利用することとなった。
しかしながら、下記3で述べる実施可能要件とも関連するが、本願発明でいうところの「スコア」(スコアの定義自体が不明であることは上記(1)アで述べたとおりである)を求めて、技術的にどのように「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すか」に利用できるのか明かではない。

イ 請求人の主張について
請求人は、意見書で「単純混合物は、予期される滞留時間において単一のXICピークのみを有することが可能です。しかしながら、より複雑な混合物に対しては、異なる時間において1つ以上のXICピークが存在することが可能であり、どの時間が滞留時間であるのかが明確ではありません。従って、スコアに基づいてどのXICピークが着目化合物を最もよく表すかが既知となった後に、滞留時間もまた明確にされることが可能です。」と説明しているが、上記(1)イで述べたとおり、上記第3の理由1(2)カで摘記した<参考図3>を参照するに、クロマトの滞留時間T1、T2で分離されるXICピーク1、XICピーク2で表される化合物は、それらの化合物を構成するフラグメントイオンの質量スペクトル1と質量スペクトル2が異なっていることから異なる化合物を示しているおり、それらは質量分析を行うことによりフラグメントイオンの質量スペクトルが得られ、その質量スペクトルにより化合物が決定できるのであるから、複雑な混合物で異なる時間において1つ以上のXICピークが存在する場合でも、それら各XICピークに対して質量分析を行うことにより、そのXICピークを示した化合物が決定できるのであるから、上記(2)で述べた「スコア」を求める必要性があるとはいえないと同時に、「スコア」を「既知の着目化合物をどれくらい正確に表すか」にどのように利用するのか明かではない。

ウ 小括
よって、当審拒絶理由の理由1(2)エ「スコアの利用」で指摘した事項について、解消されたとはいえない。

(5)平成29年6月9日付け意見書について
上記第3の理由1の(1)で摘記したように、本願明細書は「スコア」の技術上の意義を理解できるように記載されていないことから、上記第3の当審拒絶理由の判断においては、平成29年6月9日付け意見書の説明を参照したのであるが、本来、発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するため必要な事項が記載されなければならず、意見書のみに記載されている事項から本願発明を理解することは適切なことではない。
そうすると、上記第3の理由1の(1)で摘記した意見書の内容は、本願明細書のどこの記載に基づくものか不明であることから、意見書を参照して本願発明を理解すべきではないが、仮に、その内容を参照しても、クロマトの滞留時間T1、T2で分離されるXICピーク1、XICピーク2で表される化合物は、それらの化合物を構成するフラグメントイオンの質量スペクトル1と質量スペクトル2が異なっていることから異なる化合物を示しており、質量スペクトル1と質量スペクトル2において、m/zが431付近のそれぞれのm/zのピークの値を既知のm/zと比較して「スコア」(スコアの定義自体が不明であることは上記(1)アで述べたとおりである)を求めても、それが「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示」していることは理解できない。

(3)まとめ
よって、発明の詳細な説明は、特にスコアについて、当業者が発明の技術上の意義を理解するため必要な事項が記載されているとはいえないことから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(明確性)について
(1)上記1(1)アで記載したとおり、本件補正により「選択された単一の断片イオンの質量電荷比(m/z)ピークの1つ以上のイオン特性の値と、前記選択された単一の断片イオンに対する1つ以上の既知の値とを比較し、前記比較の結果を前記選択された単一の断片イオンの前記2つ以上のXICピークの各XICピークのスコアの基礎とすることであって、前記スコアは、それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示す、こと」(下線部は補正部分である)と補正されたが、上記1で述べたとおり、本願明細書を参照しても、「スコア」の技術的意義が不明であるから、上記事項は、技術的に何を特定しているのか依然として不明確である。

(2)本件補正により「前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対する抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)を計算すること」が「前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対するイオンクロマトグラム(XIC)を形成すること」と補正されたが、「質量スペクトル集合」とは、イオンクロマトグラムの各時間間隔ごと(XICピークの滞留時間ごとに)にとった、質量スペクトルの集合であるから、質量スペクトル(m/z)からイオンクロマトグラム(XIC)を「形成すること」が、上記1(3)で述べたとおり、質量スペクトルのピークとクロマトのピークとは物理化学的に異なるものであり、どのように「形成する」のか技術的に明確とはいえない。

(3)小括
よって、本願発明及びそれに従属する請求項の記載は、依然として不明確であることことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 理由3(実施可能要件)について
(1)上記理由1で述べたとおり、発明の詳細な説明には、スコア(値)を求めた実施例が記載されておらず、具体的にどのような定義(計算式等)として表されるものであるのか明かではないことから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

(2)上記理由2(2)で述べたとおり、本願発明の「前記質量スペクトル集合から、前記選択された単一の断片イオンに対する抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)を形成すること」は不明確であり、この点、発明の詳細な説明には、実施例も記載されておらず、具体的にどのように形成するのか明かではないことから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

(3)請求人の主張について
請求人は、理由3について、意見書で「上述した補正および上述した見解により、発明の詳細な説明は、当業者が補正後の請求項1?16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されやものであるというべきです。」と記載するのみで、具体的に「スコア」を求め、それにより「それぞれのXICピークが前記既知の着目化合物をどれくらい正確に表すかを示」した例等も挙げておらず、意見書を参照しても、上記(1)及び(2)が解消されるものではない。

(4)小括
よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のことから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-04 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2014-549552(P2014-549552)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G01N)
P 1 8・ 537- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 三木 隆
三崎 仁
発明の名称 滞留時間の決定または確認のための窓処理質量分析データの使用  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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