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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L |
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管理番号 | 1352963 |
審判番号 | 不服2018-16997 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-20 |
確定日 | 2019-07-23 |
事件の表示 | 特願2014-136330「液状甘味料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 13085、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成26年7月1日の出願であって、平成30年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書が提出され、同年9月20日付けで拒絶査定がされ、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年9月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 理由1.本願請求項1-9に係る発明は、下記の引用文献1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開2009/133835号 第3 本願発明 本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明である。 「【請求項1】 フラクトオリゴ糖及びクエン酸緩衝剤を含み、 クエン酸緩衝剤濃度が20mM以下であり、 pHが3.5?5.8である、液状甘味料組成物。 【請求項2】 Brixが30?80である、請求項1記載の組成物。 【請求項3】 フラクトオリゴ糖の含有量が10?80重量%である、請求項1又は2記載の組成物。 【請求項4】 クエン酸緩衝剤が、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムである、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項5】 還元糖を更に含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項6】 還元糖が、単糖類及び/又は二糖類である、請求項5記載の組成物。 【請求項7】 フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5?5.8に調整することを含む、液状甘味料組成物の製造方法。 【請求項8】 フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5?5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖の分解抑制方法。 【請求項9】 フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5?5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖水溶液の着色抑制方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。 (1-1)「特許請求の範囲 [請求項1] β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖とともに還元性糖を含有するシラップ状甘味料に乳酸塩を含有させることを特徴とする、β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖とともに還元性糖を含有するシラップ状甘味料の着色抑制方法。 [請求項2] β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖がラクトスクロース、グリコシルスクロース又はフラクトオリゴ糖であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のシラップ状甘味料の着色抑制方法。 ・・・ [請求項4] シラップ状甘味料中の乳酸塩の濃度が0.2mM乃至2mMであることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のシラップ状甘味料の着色抑制方法。」 (1-2)「<実験1:ラクトスクロースとともに還元性糖を含有するシラップ状甘味料の着色抑制に及ぼす各種有機酸塩共存の影響> ラクトスクロース(無水物換算で約70w/w%)とともに、グルコース、フラクトース、ラクトースなどの還元性糖(無水物換算で10w/w%以上)を含有するシラップ状甘味料(商品名『乳果オリゴ700』、固形分濃度約75w/w%、株式会社林原商事販売)に対して、各種有機酸塩として、20mMのアジピン酸アンモニウム水溶液、クエン酸ナトリウム水溶液、コハク酸ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酒石酸ナトリウムカリウム水溶液、乳酸ナトリウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液、フマル酸ナトリウム水溶液、リンゴ酸ナトリウム水溶液を、それぞれ終濃度が1mMとなるよう添加混合した後、常温保存のうち、比較的過酷な条件として40℃で8週間保存試験を行なった。保存開始時、保存3週間後および8週間後にサンプリングを行い、分析に供した。なお、3週間後の時点で着色度が0.1を超えた試料を不適切と判断して除外し、8週間後については、残った試料のみ分析した。また、対照には当該シラップ状甘味料に対して有機酸塩水溶液の代わりに同じ割合で水を添加混合したものを使用した。 測定項目は、pH、ラクトスクロース含量、着色度とした。pHは、pHメーターHM-20E(東亜電波工業製)を用い、シラップ状甘味料の濃度をBrix 30±1%に調整して測定した。有効成分のラクトスクロース含量は、HPLC分析により測定した。HPLCの分析条件を以下に示す。HPLCカラムとしてTSK GEL AMIDE80(東ソー製、内径4.6mm、長さ250mm)を用い、Brix 3±0.2%に調整した試料を10μl注入して、カラム温度35℃で移動相アセトニトリル/水=71/29を流速1.0ml/minで流し、示差屈折計にて検出した。着色度は、分光光度計UV-2400PC(島津製作所製)を用いて、Brix 30±1%に調整した試料の波長420nmおよび720nmの吸光度を測定し、セル長10cmにおける波長420nmと波長720nmとの吸光度差として求めた。 結果を表1に示した。対照の有機酸塩無添加の試料は、経時的に着色度が増加し、また、pHが低下し、それに伴い、主成分のラクトスクロース含量が低減した。有機酸塩を添加した試料のうち、アジピン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、又はフマル酸ナトリウムを添加した試料は、保存3週間後の時点でpHの低下が対照と比較して小さく、ラクトスクロース含量は保存開始時と変化がなかったものの、著しい着色が認められて着色度が0.1を越えて不適切となった。リンゴ酸ナトリウム添加の試料は、保存8週後の時点でラクトスクロース含量は保存開始時と変化がなかったものの、着色度が0.1を越えて不適切となった。一方、乳酸ナトリウム、又は乳酸カルシウム添加の試料は、他の有機酸塩添加の試料とは異なり、保存8週間後においても、ラクトスクロース含量の低減が抑制されるとともにシラップ状甘味料の着色もよく抑制されることが判明し、高品質のシラップ状甘味料が安定に保存できることが判明した。 [表1] 」([0019]-[0022]) 2.引用発明について 引用文献1には、β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖とともに還元性糖を含有するシラップ状甘味料に乳酸塩を含有させることを特徴とする、β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖とともに還元性糖を含有するシラップ状甘味料の着色抑制方法が記載され、β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖としてフラクトオリゴ糖が記載され、乳酸塩の濃度が0.2mM乃至2mMであることが記載されており(1-1)、表1には乳酸塩を添加したシラップ状甘味料のpHが5.38?5.76であることが記載されている(1-2)。 したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フラクトオリゴ糖及び乳酸塩を含み、乳酸塩の濃度が0.2mM乃至2mMであり、pHが5.38?5.76であるシラップ状甘味料。」 第5 理由1に対する判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明における「シラップ状甘味料」は、本願発明1における「液状甘味料組成物」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「フラクトオリゴ糖を含み、 pHが3.5?5.8である、液状甘味料組成物。」 (相違点) 本願発明1は、クエン酸緩衝剤を含み、クエン酸緩衝剤濃度が20mM以下であるのに対し、引用発明は、乳酸塩を含み、乳酸塩の濃度が0.2mM乃至2mMである点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、引用文献1にはβ-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖であるラクトスクロース及びクエン酸ナトリウムを1mMを含むシラップ状甘味料が記載されているが、クエン酸ナトリウムを添加した試料は、著しい着色が認められて着色度が0.1を越えて不適切となったことが、記載されている(第4、1.1-2)。 そうすると、β-フラクトフラノシド結合を有する非還元性オリゴ糖としてフラクトオリゴ糖を含む引用発明においても、乳酸塩をクエン酸ナトリウムに変更すれば、著しい着色が認められることが予測されるといえることから、引用発明において、乳酸塩に代えて、クエン酸ナトリウム等のクエン酸緩衝剤を採用することには動機付けがなく、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。 2.本願発明2-9について 本願発明2-9も、本願発明1の「クエン酸緩衝剤を含み、クエン酸緩衝剤濃度が20mM以下である」との同一の構成を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3.理由1に対するまとめ 以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-10 |
出願番号 | 特願2014-136330(P2014-136330) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A23L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高山 敏充 |
特許庁審判長 |
佐々木 秀次 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 村上 騎見高 |
発明の名称 | 液状甘味料組成物 |
代理人 | 中 正道 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 鎌田 光宜 |