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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1353021
審判番号 不服2018-10442  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-01 
確定日 2019-07-04 
事件の表示 特願2017-163808「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 39637〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月28日の特許出願であって、平成30年4月13日に手続補正書(自発)が提出され、平成30年4月24日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年6月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年8月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明は、平成30年6月6日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路を備えるとともに、
室内機の内部に設置され、所定のイオン、ラジカル、及びオゾンのうち少なくとも一つである除菌物質を生成する除菌物質生成部と、
少なくとも前記圧縮機、前記膨張弁、及び前記除菌物質生成部を制御する制御部と、を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であり、
前記制御部は、前記室内熱交換器を前記蒸発器として機能させて当該室内熱交換器を凍結させ、前記室内熱交換器の凍結後に当該室内熱交換器の解凍及び乾燥を順次に行った後、室内ファンを停止させた状態で前記除菌物質生成部によって除菌物質を生成し、前記室内機の内部に除菌物質を放出させ、
前記制御部は、前記室内熱交換器の乾燥において、少なくとも暖房運転を実行し、
前記除菌物質生成部は、前記室内機の空気吹出口の付近に設置されること
を特徴とする空気調和機。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2?5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2010-14288号公報
引用文献2.特開2012-189300号公報
引用文献3.特開2015-187543号公報
引用文献4.特開2002-286240号公報
引用文献5.国際公開第2012/035757号

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載事項
「【請求項1】
室内の空気を吸い込む吸込口と吸い込まれた前記空気を室内に吹き出す吹出口が本体ケースに形成され、前記吸込口と前記吹出口を連通する送風路内に室内熱交換器と室内送風機とが配置された室内機と、室外送風機と圧縮機と室外熱交換器と電動膨張弁が配置された室外機と、を有する空気調和機であって、
前記室内熱交換器は、親水性プレコートフィンで構成し、前記フィンの少なくも一部を着霜させる着霜運転を行い、その後除霜運転により除霜水を発生させて前記室内熱交換器の前記フィン表面に付着した汚れを除去する手段を備えたことを特徴とする空気調和機。」
「【0015】
室内機1側には、室内制御部50、リモートコントローラ70との送受信部51、室内吸込み空気と室内熱交換器の各温度センサTS、吹出口のルーバー22,23及び左右風向を設定するためのルーバー(図示せず)を夫々駆動するためのモータ52,53,54、室内送風機19のファンモータ55、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17B、除湿用絞り弁5を備えている。除湿用絞り弁5は、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bの間に配置されている。室内制御部50は、各温度センサTSの検出する温度信号を受ける。室内制御部50は、各ルーバー駆動用のモータ52、53,54とファンモータ55の動作を制御し、除湿用絞り弁5の絞り制御を行う。
【0016】
室外機30側には、室外制御部60、圧縮機31、四方切換弁32、室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61を備えており、インバータ回路61は商用交流電源62に電気的に接続されている。室外制御部60は、電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61、四方切換弁32等の動作を制御する。室外熱交換器33は、前側熱交換器部17Aに対して電動膨張弁34と冷媒配管6により接続されている。後側熱交換器部17Bは、圧縮機31と四方切換弁32と冷媒配管6を介して室外熱交換器33に接続されている。」
「【0019】
室内機本体11内に収容されている冷凍サイクル回路の構成部品は、すでに図1を参照して説明したように、室内熱交換器17である。
【0020】
室外機30内には、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35等の冷凍サイクル回路の構成部品が配置されている。室内熱交換器17、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、電動膨張弁34は、冷媒配管6を介して接続されており、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。
【0021】
図3と図4に示すように、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bは、それぞれ多数の親水性プレコートフィンFを有しており、これらの親水性プレコートフィンFは所定間隔をおいて、図3の紙面垂直方向Xに沿って平行に配列されている。多数の親水性プレコートフィンFは、結露水による洗浄効果により耐汚染性を維持している親水性プレコートフィン材である。」
「【0041】
親水性プレコートフィンFに付着した塵埃等の汚れを、除霜水を用いて除去する作業は、冷房運転サイクル時あるいは再熱除湿運転サイクル時により行うが、具体的には次のようにして行う。
【0042】
(1.冷房運転サイクル時おける親水性プレコートフィンFの汚れ除去)
室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜する作業は、冷房運転サイクル時において行い、図5(A)に示すように可動パネル12は、全閉状態あるいは半開状態とする。可動パネル12のより好ましい状態は、全閉状態である。これにより、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜させるにあたり、室内の空気との熱交換量を減らして、着霜を促進する効果が得られる。
【0043】
しかも、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜する際には、図6(C)に示すように、上下風向用のルーバー22,23の角度は、図6(A)に示す通常の冷房運転サイクル時、通常の除湿運転サイクル時、そして図6(B)に示す暖房運転サイクル時より小さく設定される。すなわち、図6(C)に示すようにルーバー22,23は上向きにする。これにより、ルーバー22,23の開く角度を小さくすることで、着霜時において室内の空気との熱交換量を低減できる。しかも、ルーバー22,23の開く角度を小さくすることで、吹出口21から冷気が吹き出さないので、ユーザに対して不快感を与えない。
【0044】
そして、親水性プレコートフィンFを着霜後、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを除霜する際には、送風運転もしくは暖房運転サイクル時に親水性プレコートフィンFを加熱して除霜を行う。除霜時には、ルーバー22,23の開く角度を小さくしているので、吹出口21から空気が吹き出さないので、ユーザに対して不快感を与えなうようにすることができる。
【0045】
このようにして、冷房運転サイクル時において、各親水性プレコートフィンFの任意の一部、特に先端部(端面)に対して着霜と除霜をおこなうことができ、室内熱交換器のフィン表面全体に付着した水を流下させることにより、室内熱交換器に付着した汚れを効率良く確実に除去できる。」
「【0055】
図8において、除湿運転をする際に、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに対して着霜させる場合に、外気温が高い時には室内熱交換器17の温度TCは比較的高いために、室内熱交換器17の温度TCを低下させるには、外気温に応じて、図3に示す室外機の室外送風機35の回転数および電動膨張弁(PMW)34の開度を、図8に示すように制御する。すなわち、外気温度が高くなるにつれて、図3に示す室外機30の室外送風機35のファン回転数を上げ、電動膨張弁34の開度を小さくする。これにより、室内熱交換器17の温度TCは低下させて、室内熱交換器17を凍結させて親水性プレコートフィンFに対して着霜させることができる。
【0056】
このように、室内熱交換器17の温度TCは低下させて室内熱交換器17を凍結させて親水性プレコートフィンFに対して着霜させる時には、着霜を促進するために、そして吹き出し空気温度の低下によりユーザに対する快適性を損なわないようにするために、図1に示す室内機1の室内送風機19のファン回転数を、通常の運転時のファン回転数よりも低くするか、または停止させてもよい。これにより、室内熱交換器17の前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bに対して効率良く着霜させることができ、親水性プレコートフィンFの汚れを効率的に除去できる。
【0057】
また、上述したように、凍結させた室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFを除霜するには、送風運転もしくは暖房運転で行うことで、親水性プレコートフィンFを加熱して霜を効率良く溶かすことができる。」
「【0068】
また、室内機の吸込口と室内熱交換器の間の通風路に室内機内を通過する空気の加湿手段を有する空気調和機の場合には、室内熱交換器17の着霜運転を行う際には、加湿手段を動作させることで、室内機の近傍の湿度を上げて室内熱交換器17の着霜作業を促進することができる。
【0069】
さらに、加湿手段を有する空気調和機の場合には、暖房運転時の室外熱交換器33の除霜時には加湿手段の加湿機能をオンする。室外熱交換器33の除霜時には室内熱交換器17の温度は-10℃以下となるが、この室内熱交換器17の近傍の湿度は低いために、室内熱交換器17では着霜には至らないことが多い。そのため、暖房運転時の室外熱交換器33の除霜時には加湿手段をオンすることで、室内熱交換器17の近傍の湿度を高めて室内熱交換器17の着霜を促進する。室外熱交換器33の除霜終了後は暖房運転になるので、室内熱交換器17に付着した霜は、別途の特殊な手段を用意することなく、除霜することができる。」
「【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の空気調和機の室内機の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の空気調和機の制御ブロック例を示す図である。
【図3】図1に示す空気調和機の全体構成と、冷凍サイクル回路、および空気調和機の冷媒パス(冷媒流路)の構成例を示す側面図である。」
「【図6】空気吹出し口の上下風向ルーバーの状態を示す図である。」

「図1


「図2


「図3


「図6



(2) 引用発明
したがって、上記の記載事項及び各図に記載の記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「室外機30側には、室外制御部60、圧縮機31、四方切換弁32、室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61を備えており、インバータ回路61は商用交流電源62に電気的に接続され、室外制御部60は、電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61、四方切換弁32等の動作を制御し、
室内機1側には、室内制御部50、リモートコントローラ70との送受信部51、室内吸込み空気と室内熱交換器の各温度センサTS、吹出口のルーバー22、23及び左右風向を設定するためのルーバーを夫々駆動するためのモータ52、53、54、室内送風機19のファンモータ55、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17B、除湿用絞り弁5を備え、除湿用絞り弁5は、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bの間に配置され、室内制御部50は、各温度センサTSの検出する温度信号を受け、各ルーバー駆動用のモータ52、53、54とファンモータ55の動作の制御、除湿用絞り弁5の絞り制御を行う空気調和機であって、
空気調和機は、室内熱交換器17の温度TCを低下させて、室内熱交換器17を凍結させて親水性プレコートフィンFに対して着霜させる時には、着霜を促進するために、そして吹き出し空気温度の低下によりユーザに対する快適性を損なわないようにするために、室内機1の室内送風機19のファン回転数を、通常の運転時のファン回転数よりも低くするか、または停止させ、凍結させた室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFを除霜するには、送風運転もしくは暖房運転で行うことで、親水性プレコートフィンFを加熱して霜を効率良く溶かす、
空気調和機。」

2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載事項
「【背景技術】
【0002】
・・・
しかし、冷房運転や除湿運転を行うことで、空気調和機の室内機内部が結露してしまい、室内機内部に水分が残留してしまう場合がある。そして、残留した水分により、室内機内部にカビや細菌類などが、発生・繁殖してしまう恐れがある。室内機内部に、カビや細菌類などが、発生・繁殖すると、空気調和機を使用する際にユーザーに異臭による不快感を与えたり、カビの胞子やカビ・細菌類の死骸などのアレルゲン物質を室内に放出することによる健康被害を与えたりしてしまう。」(当審注:「・・・」は、省略を意味する。以下同様である。)
「【0006】
特許文献1に記載のような従来の空気調和機の場合は、室内機内部に残留する水分の乾燥を暖房運転のみで行うと、暖房運転によって室内温度や室内湿度が上昇して、室内環境が悪化するため、ユーザーに不快感を与えるという課題があった。一方、室内機内部に残留する水分の乾燥を送風運転のみで行うと、室内機内部を十分に乾燥させるために運転時間が非常に長くなる。運転時間が長い分、騒音が発生する時間が長くなるので、ユーザーに不快感を与えてしまうという課題があった。
また、ユーザーが、室内温度や室内湿度を高くしたくない、或いは騒音を発生させたくない時には、乾燥運転を行わない設定をする場合がある。しかし、この場合には、そもそも室内機内部の乾燥を行えなくなってしまうという課題があった。」
「【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、乾燥運転を行うことで室内機内部に残留する水分を乾燥させるとともに、その乾燥運転によってユーザーの快適性が損なわれてしまうことを抑制する空気調和機を提供することを目的としている。」
「【0055】
[空気調和機102の変形例2]
また、図4のステップST5に図示されるように、暖房運転を含まない乾燥運転を実施した場合には、図4のステップST4に図示される暖房運転を含む乾燥運転を実施した場合に比べて乾燥運転の運転時間を長くとらないと、室内機100内部に残留する水分を乾燥させることができない。
そこで、室内機100には、カビや細菌類の発生・繁殖を抑制する効果のあるオゾン発生器などが設けられていてもよい。暖房運転を含まない乾燥運転だけでなく、このオゾン発生器を併用することによって、室内機100内部に残留する水分中に、カビや細菌類が発生・繁殖してしまうことを抑制することができる。
また、乾燥運転の時間を短縮する設定をするとともに乾燥運転終了後にオゾン発生器を運転させるようにするとよい。これにより、予め定められた乾燥運転の時間を短縮することができるので、騒音が発生する時間が短くなり、ユーザーの快適性が損なわれてしまうことを抑制することができる。また、水分が残留しても、オゾン発生器によってカビや細菌類が発生・繁殖してしまうことが抑制される。」
(2) 上記記載事項を総合すると、引用文献2には、以下の技術的事項(以下、それぞれ、「引用文献2記載の技術的事項1」、「引用文献2記載の技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2記載の技術的事項1>
「室内機内部に水分が残留してしまう場合、残留した水分により、室内機内部にカビや細菌類などが、発生・繁殖してしまう恐れがあること。」
<引用文献2記載の技術的事項2>
「オゾン発生器を併用することによって、室内機内部に残留する水分中に、カビや細菌類が発生・繁殖してしまうことを抑制することができること。」
3 引用文献5について
(1) 引用文献5の記載事項
「従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、十分な量のオゾンを拡散させて殺菌することにより雑菌やかびの繁殖を十分に防止することが可能なオゾン・イオン発生装置およびそれを備える空気調和機を提供することにある。」([0008])
「オゾン・イオン発生装置は、放電によって空気中の酸素分子を酸化してオゾン分子(O3)としオゾンを発生させると同時に、放電によってプラスイオンやマイナスイオンを発生させ空気中にイオン風として放出させる構成とすることで、発生させたオゾンをイオン風により拡散させ、本体内部全体に充満させることができる。」([0015])
「第3の発明は、第2の発明において、本体の上部に吸込口、下部に吹出口を設けるとともに、オゾン・イオン発生装置は吹出口近傍に設けて、イオン風が上向きに流れるように配置した、空気調和機である。
その際、イオン風が上向きに流れるように配置することにより吹出口から上部方向にオゾンが拡散され、空気より高比重のオゾンをエアフィルタ近傍まで充満させることが可能となる。従い、エアフィルタを含めた室内ユニット内部の殺菌を効果的に行うことができる。」([0021]?[0022])
「本実施の形態1では、オゾン・イオン発生装置8は、吹出口3下側に配置されている。オゾン・イオン発生装置8は本体1において、例えば吸込口2や送風ファン5近傍のどこに設置しても同様の殺菌効果を得ることが可能であるが、空気調和機の送風性能を低下させないためには、オゾン・イオン発生装置8を吹出口3近傍に設けることが望ましい。この構成にすることにより、送風ファン5との距離を長く取ることができ、送風性能の低下を抑制することができる。
なお、オゾン・イオン発生装置8は吹出口3下側の中央もしくは左右どちらかの端部等、吹出口3下部のどこに設置してもよく、本実施の形態1により、特に設置場所を限定するものではない。オゾン・イオン発生装置8を吹出口3下側に設置し、オゾン・イオン発生装置8の放電電極を吹出口3側に配置し対向電極を本体の背面側に配置する。このような構成にすることにより、イオン風は本体1内側に向かって流れ、イオン風と同時に発生させたオゾンがイオン風の気流で本体1内側に向かって拡散され、送風ファン5、熱交換器6、エアフィルタ4の順にオゾンが流れ充満されていく。従い、本体1内全体にオゾンを充満させることが可能となる。
また、オゾン・イオン発生装置8をイオン風の流れが上向き(エアフィルタ4側)になるように配置することにより、オゾン・イオン発生装置8を吹出口3に設置した場合でも、オゾンはイオン風により上部方向に拡散され、空気より高比重のオゾンをエアフィルタ4近傍まで充満させることが可能となる。従い、エアフィルタ4を含めた本体1内部の殺菌を効果的に行うことができる。」([0064]?[0066])
「次に、内部クリーン運転機能について説明する。これは、通常運転の完了後、通常運転と塵捕集運転機能の併用運転後、または、塵捕集運転機能の単独運転後に、運転を行う。運転は、オゾン・イオン発生装置108を作動させることによって行われるが、オゾン・イオン発生装置108から発生するオゾンが、オゾン・イオン発生装置108から吹出口側風路212を通り、吸込口2側へとイオン風が吹くことにより、オゾンが室内ユニット210内部に拡散する。すなわち、送風ファン5を動作させなくても拡散させることができ、ファン駆動音なく内部クリーン運転を行うことができる。」([0099])
(2) 上記記載事項を総合すると、引用文献5には、以下の技術的事項(以下それぞれ「引用文献5記載の技術的事項1」、「引用文献5記載の技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献5記載の技術的事項1>
「空気調和機の本体の上部に吸込口、下部に吹出口を設けるとともに、オゾン・イオン発生装置は吹出口近傍に設けて、イオン風が上向きに流れるように配置し、イオン風が上向きに流れるように配置することにより吹出口から上部方向にオゾンが拡散され、空気より高比重のオゾンをエアフィルタ近傍まで充満させることが可能となること。」
<引用文献5記載の技術的事項2>
「オゾン・イオン発生装置108を作動させることによって、オゾン・イオン発生装置108から発生するオゾンが、オゾン・イオン発生装置108から吹出口側風路212を通り、吸込口2側へとイオン風が吹くことにより、オゾンが室内ユニット210内部に拡散する、すなわち、送風ファン5を動作させなくても拡散させることができ、ファン駆動音なく内部クリーン運転を行うことができること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「圧縮機31」、「室外熱交換器33」、「室内熱交換器17」、「冷媒膨張手段である電動膨張弁34」、「室外制御部60」及び「室内制御部50」、「室内機1」、「吹出口」、「室内送風機19」、「暖房運転」及び「空気調和機」は、それぞれ前者の「圧縮機」、「室外熱交換器」、「室内熱交換器」、「膨張弁」、「制御部」、「室内機」、「空気吹出口」、「室内ファン」、「暖房運転」及び「空気調和機」に相当する。
また、引用発明の「空気調和機は、室内熱交換器17の温度TCを低下させて、室内熱交換器17を凍結させて親水性プレコートフィンFに対して着霜させる時に」は、引用発明の「前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17B」及び「室内熱交換器17」が蒸発器として作用し、「室外熱交換器」が凝縮器として作用することは、明らかであるから、引用発明は、本願発明の「凝縮器」及び「蒸発器」を備えているものといえる。また、この時、引用発明は、本願発明の「前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であ」る態様に相当する。
さらに、引用発明は、「室外機30側には、室外制御部60、圧縮機31、四方切換弁32、室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61を備えており」、「室内機1側には」、「室内熱交換器」を備え、これらが、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路をなすことは明らかであり、本願発明の「圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路を備える」ものといえる。
引用発明において、「室外制御部60」が「電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61、四方切換弁32等の動作を制御し」、「室内制御部50」が「各温度センサTSの検出する温度信号を受け、各ルーバー駆動用のモータ52、53、54とファンモータ55の動作の制御、除湿用絞り弁5の絞り制御を行う」ものであり、図2の制御ブロック図で「室外制御部60」が「インバータ61」を介して、「圧縮機31」に接続していることを踏まえると、引用発明の「室外制御部60」と、本願発明の「少なくとも前記圧縮機、前記膨張弁、及び前記除菌物質生成部を制御する制御部」とは、「少なくとも前記圧縮機、前記膨張弁を制御する制御部」である限りで一致する。
引用発明の「室内制御部60」又は「室外制御部50」が、「室内熱交換器17の温度TCを低下させて、室内熱交換器17を凍結させて親水性プレコートフィンFに対して着霜させる時には、着霜を促進するために、そして吹き出し空気温度の低下によりユーザに対する快適性を損なわないようにするために、室内機1の室内送風機19のファン回転数を、通常の運転時のファン回転数よりも低くするか、または停止させ」る制御を行うことは明らかであり、その態様は、本願発明の「前記制御部は、前記室内熱交換器を前記蒸発器として機能させて当該室内熱交換器を凍結させ」る態様に相当する。
引用発明の「凍結させた室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFを除霜するには、送風運転もしくは暖房運転で行うことで、親水性プレコートフィンFを加熱して霜を効率良く溶かす」ことと、本願発明の「前記室内熱交換器の凍結後に当該室内熱交換器の解凍及び乾燥を順次に行」うこととは、「前記室内熱交換器の凍結後に当該室内熱交換器の解凍を行」う限りで一致する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路を備えるとともに、
少なくとも前記圧縮機、前記膨張弁を制御する制御部と、を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であり、
前記制御部は、前記室内熱交換器を前記蒸発器として機能させて当該室内熱交換器を凍結させ、前記室内熱交換器の凍結後に当該室内熱交換器の解凍行う、
空気調和機。」
<相違点1>
空気調和機について、本願発明は、「室内機の内部に設置され、所定のイオン、ラジカル、及びオゾンのうち少なくとも一つである除菌物質を生成する除菌物質生成部」を備え、さらに、「前記除菌物質生成部は、前記室内機の空気吹出口の付近に設置され」ていて、「制御部」が「除菌物質生成部を制御」するのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。
<相違点2>
室内熱交換器の解凍後の動作に関し、本願発明は、「解凍及び乾燥を順次に行った後、室内ファンを停止させた状態で前記除菌物質生成部によって除菌物質を生成し、前記室内機の内部に除菌物質を放出させ」ていて、「前記室内熱交換器の乾燥において、少なくとも暖房運転を実行し」ているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

第6 判断
1 相違点1について
引用文献2記載の技術的事項1を踏まえると、引用発明において、凍結させた室内熱交換器を解凍させた後、残留した水分があるとカビや細菌類などが発生・繁殖する恐れがあることが理解できる。さらに、引用文献2記載の技術的事項2を踏まえると、室内機内部に残留する水分中に、カビや細菌類が発生・繁殖してしまうことを、オゾン発生器により抑制できることも示唆されている。
そうすると、引用発明において、カビや細菌類の発生・繁殖を抑制するべく、オゾン発生器を設けることは、当業者が適宜なし得たことである。また、オゾン発生器を設ける位置も、室内機における配置スペース、風路抵抗など考慮して、その設置にあたり当業者が適宜なし得る設計事項であり、引用文献5には、オゾン・イオン発生装置を吹出口に設けることも記載されている(上記第4の3参照。)。
そして、オゾン発生器は、本願発明の「所定のイオン、ラジカル、及びオゾンのうち少なくとも一つである除菌物質を生成する除菌物質生成部」といいえるものであり、その制御を、引用発明の「制御部」がなし得ることも、当業者が当然に想起し得たことである。
そうすると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
引用発明は、「凍結させた室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFを除霜するには、送風運転もしくは暖房運転で行うことで、親水性プレコートフィンFを加熱して霜を効率良く溶かす」ものであるから、引用文献2記載の技術的事項1の残留した水分があるとカビや細菌類などが発生・繁殖する恐れがあることからすると、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFにおいて、暖房運転で解凍した後の残留した水分をさらに暖房運転で乾燥することも、引用発明において当業者にとって、困難なことではない。加えて、オゾンやイオン発生装置で除菌を行うに際して、室内機内部を乾燥させてから行う態様は、本願出願前に周知の事項でもある(例えば、特開2016-118371号公報【0028】、特開2007-205617号公報【0042】、特開2008-45798号公報【0025】、特開2003-106602号公報【0007】等参照。)
さらに、引用発明において、オゾン発生器を設けることは、相違点1で検討したように当業者が容易に想到し得たところ、これを作動させる際に、室内送風機を運転しながら行うか、停止させて行うかは、当業者が適宜選択できることであるし、引用文献5記載の技術的事項2にも、室内送風機(送風ファン5)を動作させないでオゾン・イオン発生装置を作動させる態様が示唆されている。
以上のとおりであるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 効果について
そして、本願発明の効果(「室内熱交換器を清潔な状態にする空気調和機を提供」(【0007】))に関して、上記相違点1及び2を併せてみても、当業者が予測し得た範囲のものである。
4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次のとおり主張している。
「一方、室内熱交換器を凍結させると、次のような特有の課題が生じます。すなわち、室内熱交換器の凍結に伴う冷熱は下に流れるため、室内機の内部において、特に室内熱交換器よりも下側の部分が湿った状態になりやすく、その部分で局所的に雑菌が繁殖しやすくなります。
また、制御部が、『前記室内熱交換器の乾燥において、少なくとも暖房運転を実行』しても(請求項1:第6段落)、暖房運転に伴う温熱が下には伝わりにくいため、室内機の内部において、特に室内熱交換器よりも下側が乾きにくいという課題が残ります。
つまり、室内熱交換器の凍結・解凍・乾燥を順次に行うと、この室内熱交換器は清潔で乾いた状態になる一方、室内熱交換器の凍結に伴う影響で、室内機の下部が湿った状態になり、ここで雑菌が局所的に繁殖しやすくなります。」(「3.本願発明が特許されるべき理由 3-1.請求項1[3]」の項参照。)
しかしながら、当該課題について、本願明細書には記載されておらず、明細書の記載に基づかないものであるし、またそうでないとしても、上記引用文献5記載の技術的事項1によると、空気調和機の室内ユニット内にオゾンを充満させることが記載されていて、室内機の内部の下部においてもオゾンが存在するといえるから、当該課題を解決し得ることは、引用発明及び引用文献2、5に基づいて当業者が予測できたことである。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2、5記載の事項及び本願出願前に周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2017-163808(P2017-163808)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 松下 聡
山崎 勝司
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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