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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1353024
審判番号 不服2018-14120  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-24 
確定日 2019-07-04 
事件の表示 特願2016-57479号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月28日出願公開、特開2017-169697号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成28年3月22日の出願であって、平成30年1月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月9日付け(発送日:同年8月21日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年10月24日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)補正の内容
本件補正により、平成30年3月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「所定の遊技を行う遊技機において、
検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段と、
検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段と、
画像を表示可能な表示手段とを備え、
前記第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記第1検知手段または前記第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成された
ことを特徴とする遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(平成30年10月24日付け)における
「所定の遊技を行う遊技機において、
検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段と、
検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段と、
画像を表示可能な表示手段とを備え、
前記第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記第1検知手段または前記第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
前記第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第1エラーが検知され得ず、前記第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第2エラーが検知され得ないようになっており、前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されると共に、
音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段を備え、
報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記表示手段が、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行すると共に、前記エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず前記優先順位の高い方のエラーの発生を報知する一方、前記優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知するよう構成された
ことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1について、
発明を特定するために必要な事項である「前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に」おける「表示手段での」エラー表示に関し、「前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成された」とあったものを「前記第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第1エラーが検知され得ず、前記第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第2エラーが検知され得ないようになっており、前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成される」と限定し、
また、「音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段を備え」ることを限定し、
さらに、「報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記表示手段が、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行すると共に、前記エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず前記優先順位の高い方のエラーの発生を報知する一方、前記優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知するよう構成された」ことを限定するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、本願明細書の【0124】、【0137】、【0151】?【0152】、【0155】、【0161】、【0168】?【0169】等の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

2 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Hは、分説するため審決にて付した。)。
「A 所定の遊技を行う遊技機において、
B 検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段と、
C 検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段と、
D 画像を表示可能な表示手段とを備え、
E 前記第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記第1検知手段または前記第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
F 前記第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第1エラーが検知され得ず、前記第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第2エラーが検知され得ないようになっており、前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されると共に、
G 音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段を備え、
H 報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記表示手段が、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行すると共に、前記エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず前記優先順位の高い方のエラーの発生を報知する一方、前記優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知するよう構成された
ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1
原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-90820号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 記載事項
(ア)「【0038】
次に、図3を参照して、本実施形態のパチンコ遊技機の遊技盤について説明する。
・・・
【0041】
遊技盤4の中央部には開口が形成され、この開口内に液晶表示装置36の表示画面が配置される。液晶表示装置36は、種々の数字、キャラクタ等が描かれた図柄や背景画像、リーチ等の各種演出を遊技に応じて表示する表示器である。液晶表示装置36は、本発明の「図柄表示手段」に相当する。」

(イ)「【0060】
主制御基板24は、その内部に、主制御基板側CPU241と、ROM242と、RAM243を備えている。主制御基板側CPU241は、いわゆるプロセッサ部であり、大当りを発生させるか否かの抽選処理、決定された変動パターンや停止図柄の情報から制御コマンドを作成し、演出制御基板25に送信する等の処理を行う。なお、CPU241は、本発明の「抽選手段」、「特別遊技制御手段」、「遊技状態制御手段」に相当する。」

(ウ)「【0062】
主制御基板24には、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c、始動ゲート通過センサ40c、一般入賞口センサ42c、特定領域センサ56c、磁気センサ50、電波センサ51、振動センサ52が接続され、各検知信号を受信可能となっている。
【0063】
磁気センサ50は、パチンコ遊技機1に磁石等を近づけた場合に、異常を検知するセンサである。また、電波センサ51は、パチンコ遊技機1に対し強い電波が発せられた場合に異常を検知するセンサであり、振動センサ52は、パチンコ遊技機1に対し強い振動が与えられた場合に異常を検知するセンサである。」

(エ)「【0077】
次に、図5A、5Bを参照して、パチンコ遊技機の確変移行判定部を含む入賞装置について説明する。確変移行判定部は、第2大入賞装置39bや普通図柄用始動ゲート40bを含む入賞装置49内にあり、確変移行の権利取得に関する判定を行う。」

(オ)「【0144】
次に、図7を参照して、特別ラウンド表示とV入賞表示について説明する。
【0145】
図7(a)の「特別ラウンド表示(遊技指示演出)」は、特別ラウンド(第6ラウンド)において、遊技球がV入賞する前の様子を示している。液晶表示装置36の表示領域上部にある表示領域60では、複数の「右打ち→」の文字が右方向にスクロールしている。特別遊技中は、遊技者が右打ちを行う必要があるので、これを指示する表示となっている。
【0146】
表示領域左上の表示領域63には、現在の大当りラウンド数が表示されるが、ここでは、「Round06」となる。一方、表示領域右上の表示領域64、65には、それぞれ獲得玉数(「00520玉」)と連荘回数(「01回目」)が表示される。
・・・
【0153】
これは、非確変図柄当りでのV入賞が不正により発生した可能性があることによる。このとき、図7(d)に示すような「V入賞表示(警告表示)」を出現させるようにしてもよい。ここでは、表示領域67に「Warning!!」の文字が表示された態様となっているが、異常の内容が明確である場合には、「エラー16」のように具体的に表示してもよい。」

(カ)「【0175】
次に説明する(2)?(6)のエラーは、確変移行判定部54に関するものであり、優先順位の高いエラーとして定義されている。ここで、優先順位とは、パチンコ遊技機1に複数のエラーが同時に発生した場合に、報知が優先される順位である。
【0176】
(2)大入賞口2排出過多異常(エラー8)
「RAMクリア」の次に優先順位が高いエラーとして、「大入賞口2排出過多異常」がある。大入賞口2排出過多異常とは、アタッカ2の排出数が入賞数より多い場合(排出数>入賞数)に報知されるエラーである。これは、不正行為により特定領域センサ56cをオンした可能性があるため、エラーとして報知することとしている。
【0177】
大入賞口2排出過多異常の報知としては、枠装飾LED8の点灯がある。さらに、液晶表示装置36には「エラー8。大入賞口2排出過多異常。係員をお呼び下さい。」等の表示がなされ、スピーカ7からは固有の不正入賞音が発せられる。盤面装飾LED35が点灯している場合には消灯し、異常情報は外部端子を経由してホールコンピュータに送信される。
【0178】
大入賞口2排出過多異常の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信された排出過多異常検知コマンドを受信したときに開始し、電源断するまで継続して行われる。例えば、特別遊技中に電源断すると、排出過多異常フラグがクリアされるので、遊技者は、電源復帰後に特別遊技の続きを行うことができる。
【0179】
(3)大入賞口2排出異常(エラー9)
次に優先順位が高いエラーとして、「大入賞口2排出異常」がある。大入賞口2排出異常とは、残存球排出時間経過時にアタッカ2の入賞数が排出数より多い場合(入賞数>排出数)に報知されるエラーである。入賞数が排出数より多い場合、入賞装置49の内部で遊技球が詰まっている可能性があるため、エラーとして報知することとしている。
【0180】
大入賞口2排出異常の報知としては、液晶表示装置36に「エラー9。大入賞口2排出異常。係員をお呼び下さい。」等の表示がなされる。なお、スピーカ7等による報知は、大入賞口2排出過多異常の場合と同じであるので、詳細は省略する。
【0181】
大入賞口2排出異常の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される排出異常検知コマンドを受信したときに開始し、入球数と排出数が一致するか電源断するまで継続して行われる。例えば、電源断により、排出異常フラグがクリアされた場合にも入球数と排出数が一致するので、遊技者は、電源復帰後に特別遊技の続きを行うことができる。
【0182】
(4)磁気異常(強)(エラー16)
次に優先順位が高いエラーとして、「磁気異常(強)」がある。磁気異常とは、パチンコ遊技機1に磁石等を近づけた場合に、磁気センサ50により検知されるエラーであるが、特に、特別ラウンド中(第6ラウンドのアタッカ2開放中及び残存球排出時間中)に検知されたエラーが該当する。磁石等を近づけることによりパチンコ遊技機1の電子機器を誤動作させる、または盤面上を流下する遊技球を何れかの入賞口に誘導する等の不正が行われることがある。このため、磁気を検知した場合にエラーとして報知することとしている。
【0183】
磁気異常の報知としては、液晶表示装置36に「エラー16。磁気センサエラー。係員をお呼び下さい。」等の表示がなされ、スピーカ7からは固有の磁気検知警告音が発せられる。その他の報知については、大入賞口2排出過多異常の場合と同じであるので、詳細は省略する。
【0184】
磁気異常の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される磁気検知コマンドを受信したときに開始し、電源断するまで継続して行われる。
【0185】
(5)電波異常(強)(エラー17)
次に優先順位が高いエラーとして、「電波異常(強)」がある。電波異常とは、パチンコ遊技機1に対し電波が発せられた場合に、電波センサ51により検知されるエラーであるが、特に、特別ラウンド中に検知されたエラーが該当する。パチンコ遊技機1の外部から強い電波を発してパチンコ遊技機1内部のセンサを誤動作させる等の不正が行われることがある。このため、電波を検知した場合にエラーとして報知することとしている。
【0186】
電波異常の報知としては、液晶表示装置36に「エラー17。電波センサエラー。係員をお呼び下さい。」等の表示がなされ、スピーカ7からは固有の電波検知警告音が発せられる。その他の報知については、大入賞口2排出過多異常の場合と同じであるので、詳細は省略する。
【0187】
電波異常の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される電波検知コマンドを受信したときに開始し、電源断するまで継続して行われる。」

(キ)「【0218】
(17)断線(エラー4)
次に優先順位が高いエラーとして、「断線」がある。断線とは、基板同士又は基板と各種センサを接続する配線(ハーネス)が断線したときに検知されるエラーである。例えば、始動入賞口センサ38cの配線が断線している場合、始動入賞信号の送信ができなくなるため、エラーとして報知することとしている。
【0219】
断線の報知としては、液晶表示装置36に「断線しています。」等の表示がなされるのみである。断線の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される補給切れ検知コマンドを受信した後に開始する。また、この報知は、ハーネスを交換する等して要因が解除されるまで、すなわち、演出制御基板25が解除コマンドを受信するまで継続して行われる。」

(ク)「【0347】
ステップS194では、主制御手段は、入賞数と排出数からエラーをセットする。具体的には、入賞数より排出数の方が多い場合、エラー8をセットする。エラー8とは、大入賞口2排出過多異常である(図9参照)。また、排出数より入賞数の方が多い場合、エラー9をセットする。なお、入賞数と排出数が一致する場合は、正常な状態であるので、エラーをセットしない。その後、排出確認処理を終了する。」

イ 認定事項
(ケ)刊行物1には、【0041】に「液晶表示装置36は、・・・各種演出を遊技に応じて表示する表示器である。」と記載され、
【0145】に「液晶表示装置36の表示領域上部にある表示領域60では、複数の「右打ち→」の文字が右方向にスクロールしている。」と記載され、
【0146】に「表示領域左上の表示領域63には、現在の大当りラウンド数が表示される・・・表示領域右上の表示領域64、65には、それぞれ獲得玉数(「00520玉」)と連荘回数(「01回目」)が表示される。」と記載され、
【0153】に「表示領域67に「Warning!!」の文字が表示された態様となっているが、異常の内容が明確である場合には、「エラー16」のように具体的に表示してもよい。」と記載されている。
また、特別ラウンド表示とV入賞表示の具体例を示す【図7】(d)に、液晶表示装置36には、上部にある表示領域60、左上の表示領域63、及び、右上の表示領域64、65における所定の表示と並行して、表示領域67に所定の表示を行うことが図示されている。
【図7】


したがって、刊行物1には、各種演出を遊技に応じて表示する表示器である液晶表示装置36に、上部にある表示領域60、左上の表示領域63、右上の表示領域64、65、及び、表示領域67に所定の表示を並行して行うことが示されているものと認められる。

(コ)刊行物1には、【0218】に「断線(エラー4)・・・基板と各種センサを接続する配線(ハーネス)が断線したときに検知されるエラーである。」と記載され、「各種センサ」の例として「始動入賞口センサ38c」が例示されている。
そして、【0062】の「主制御基板24には、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c、始動ゲート通過センサ40c、一般入賞口センサ42c、特定領域センサ56c、磁気センサ50、電波センサ51、振動センサ52が接続され、各検知信号を受信可能となっている。」との記載によると、「主制御基板24」には、「始動入賞口センサ38c」以外にも、「磁気センサ50」、「電波センサ51」が接続されるものである。
そうすると、刊行物1には、【0218】に記載されている「断線」として、「主制御基板24」と「始動入賞口センサ38c」との間で発生する断線以外にも、「主制御基板24」と「大入賞口センサ39c」との間で発生する断線、「主制御基板24」と「磁気センサ50」との間で発生する断線、及び、「主制御基板24」と「電波センサ51」との間で発生する断線もあることが示されている。
したがって、刊行物1には、「主制御基板24と各種センサ、例えば、磁気センサ50、電波センサ51を接続する配線(ハーネス)の何れかが断線したときに断線が検知される」ことが示されていると認められる。

(サ)エラーの種類を説明する図である【図9】には、「大入賞口2排出過多異常(エラー8)の優先順位は「2」であり、大入賞口2排出異常(エラー9)の優先順位は「3」であり、磁気異常(強)(エラー16)の優先順位は「4」であり、電波異常(強)(エラー17)の優先順位は「5」であり、断線(エラー4)の優先順位は「17」である」ことが示されていると認められる。
【図9】


ウ 刊行物発明
上記アの記載事項、上記イの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?hは、本件補正発明の構成A?Hに対応させて付与した。)。
「a 開閉扉が後方に退避しているとき、遊技球が内部に入球可能となる第2大入賞装置39bを備えるパチンコ遊技機1(【0077】、【0079】)において、
b パチンコ遊技機に磁石等を近づけられ、電子機器を誤動作させる、または盤面上を流下する遊技球を何れかの入賞口に誘導する等の不正が行われたことを検知する磁気センサ50(【0063】、【0182】)と、
c パチンコ遊技機1に対し強い電波が発せられ、内部のセンサを誤動作させる等の不正が行われたことを検知する電波センサ51(【0063】、【0185】)と、
d 上部にある表示領域60、左上の表示領域63、右上の表示領域64、65、及び、表示領域67に所定の表示を並行して行い、各種演出を遊技に応じて表示する表示器である液晶表示装置36(認定事項(ケ))と、
e 主制御基板24から送信される磁気検知コマンドを受信したときに、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー16。磁気センサエラー。」等を表示し、スピーカ7から固有の磁気検知警告音が発せられることによって磁気異常(強)(エラー16)を報知し(【0153】、【0182】?【0184】)、強い電波を検知した場合に、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー17。電波センサエラー。」等を表示し、スピーカ7から固有の電波検知警告音を発することによって電波異常(強)(エラー17)を報知する演出制御基板25(【0063】、【0153】、【0185】?【0187】)を備え、
そして、演出制御基板25は、主制御基板24から送信された排出過多異常検知コマンドを受信したときに、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー8。大入賞口2排出過多異常。」等を表示し、スピーカ7から固有の不正入賞音を発することによって大入賞口2排出過多異常を報知し(【0153】、【0176】?【0178】)、主制御基板24から送信される排出異常検知コマンドを受信したときに、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー9。大入賞口2排出異常。」等を表示し、スピーカ7から固有の不正入賞音を発することによって大入賞口2排出異常を報知し(【0153】、【0179】?【0181】)、
また、演出制御基板25は、主制御基板24と各種センサ、例えば、磁気センサ50、電波センサ51を接続する配線(ハーネス)の何れかが断線したことが検知されたことを示すコマンドが主制御基板24から送信されると、液晶表示装置36の表示領域67に「断線しています。」等を表示することによって、断線(エラー4)の報知を行い(【0062】、【0153】、【0218】?【0219】、認定事項(コ))、
f、h 演出制御基板25は、複数のエラーが同時に発生した場合に、優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され(【0175】、【0178】、【0181】、【0184】、【0187】)、
大入賞口2排出過多異常(エラー8)の優先順位は「2」であり、大入賞口2排出異常(エラー9)の優先順位は「3」であり、磁気異常(強)(エラー16)の優先順位は「4」であり、電波異常(強)(エラー17)の優先順位は「5」であり、断線(エラー4)の優先順位は「17」であって(認定事項(サ))、
エラーのうち、大入賞口2排出過多異常(エラー8)、大入賞口2排出異常(エラー9)、磁気異常(強)(エラー16)、及び、電波異常(強)(エラー17)は、確変移行判定部54に関するものであり、優先順位の高いエラーとして定義され(【0175】?【0176】、【0179】)、
g 演出制御基板25は、スピーカ7、枠装飾LED8によっても異常の報知を行う(【0177】?【0178】、【0180】?【0181】、【0183】?【0184】、【0186】?【0187】)
パチンコ遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Hと刊行物発明の構成a?hについて、それぞれ(a)?(h)の見出しを付して行った。)。
(a)
刊行物発明における「開閉扉が後方に退避しているとき、遊技球が内部に入球可能となる第2大入賞装置39bを備える」ことは、本件補正発明における「所定の遊技を行う」ことが可能なことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明における構成Aの「遊技機」に相当する。

(b)刊行物発明における「磁気センサ50」は、「パチンコ遊技機に磁石等」が「近づけられ」る「不正が行われ」たことを検知するものであって、磁石等の接近による信号の変化等を検知し、検知信号を出力するものであることは明らかである。
したがって、刊行物発明における構成bの「磁気センサ50」は、本件補正発明における構成Bの「検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段」に相当する。

(c)
刊行物発明における「電波センサ51」は、「パチンコ遊技機1に対し強い電波が発せられ」る「不正が行われ」たことを検知するものであって、強い電波による信号の変化等を検知し、検知信号を出力するものであることは明らかである。
したがって、刊行物発明における構成cの「電波センサ51」は、本件補正発明における構成Cの「検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段」に相当する。

(d)
刊行物発明における構成dの「各種演出を遊技に応じて表示する表示器である液晶表示装置36」は、演出等に係る画像を表示するものであるから、本件補正発明における構成Dの「画像を表示可能な表示手段」に相当する。

(e)
刊行物発明における「演出制御基板25」が、「主制御基板24から送信される磁気検知コマンドを受信」した場合は、「磁気異常(強)(エラー16)」が発生した場合であるから、刊行物発明における「演出制御基板25」が、「主制御基板24から送信される磁気検知コマンドを受信」した場合は、本件補正発明における「第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合」に相当する。
そして、刊行物発明における「「エラー16。磁気センサエラー。」等の表示」は、本件補正発明における「第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示」に相当する。
したがって、刊行物発明における「演出制御基板25は、主制御基板24から送信される磁気検知コマンドを受信したときに、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー16。磁気センサエラー。」等を表示し、スピーカ7から固有の磁気検知警告音を発することによって磁気異常(強)(エラー16)を報知」することは、本件補正発明における「第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を表示手段において実行」することに相当する。

次に、刊行物発明における「演出制御基板25」が、「強い電波を検知した場合」は、電波異常(強)が発生した場合であるから、刊行物発明における「演出制御基板25」が、「強い電波を検知した場合」は、本件補正発明における「第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合」に相当する。
そして、刊行物発明における「「エラー17。電波センサエラー。」等の表示」は、本件補正発明における「第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示」に相当する。
したがって、刊行物発明における「演出制御基板25は」「強い電波を検知した場合に、枠装飾LED8を点灯し、液晶表示装置36の表示領域67に「エラー17。電波センサエラー。」等を表示し、スピーカ7から固有の電波検知警告音を発することによって電波異常(強)(エラー17)を報知」することは、本件補正発明における「第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を表示手段において実行」することに相当する。

その次に、刊行物発明における「主制御基板24と各種センサ、例えば、磁気センサ50、電波センサ51を接続する配線(ハーネス)の何れかが断線したことが検知された」場合は、「主制御基板24」が、「磁気センサ50、電波センサ51」の何れかからの信号を受信できない場合であるから、本件補正発明における「第1検知手段または第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合」を含むものである。
そして、刊行物発明における「「断線しています。」等を表示することによって、断線(エラー4)の報知を行」うことは、本件補正発明における「第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示」を行うことに相当する。
したがって、刊行物発明における「演出制御基板25は、主制御基板24と各種センサ、例えば、磁気センサ50、電波センサ51を接続する配線(ハーネス)の何れかが断線したことが検知されたことを示すコマンドが主制御基板24から送信されると、液晶表示装置36に「断線しています。」等を表示することによって、断線(エラー4)の報知を行」うことは、本件補正発明における「第1検知手段または第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行する」ことに相当する。

よって、刊行物発明における構成eは、本件補正発明における構成Eに相当する。

(f)
刊行物発明において、構成eの「主制御基板24と各種センサ」としての「磁気センサ50」とを「接続する配線(ハーネス)」が「断線した」場合、「主制御基板24」が「磁気センサ50」からの信号を検知できないことは明らかである。
同様に、刊行物発明において、構成eの「主制御基板24と各種センサ」としての「電波センサ51」とを「接続する配線(ハーネス)」が「断線した」場合、「主制御基板24」が「電波センサ51」からの信号を検知できないことは明らかである。
したがって、刊行物発明は、本件補正発明における「第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーの発生中は第1エラーが検知され得ず、第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーの発生中は第2エラーが検知され得ないようになって」いることに相当する構成を備えるものである。

また、刊行物発明は、構成f、hより、「複数のエラーが同時に発生」し得るものであって、構成eから導かれる「主制御基板24」が「磁気センサ50」からの信号を検知できない「断線(エラー4)」が発生し、「液晶表示装置36の表示領域67に「断線しています。」等の表示がなされ」ている場合に、「断線(エラー4)」に加え、「電波異常(強)(エラー17)」が発生し得るものである。
同様に、刊行物発明において、構成eから導かれる「主制御基板24」が「電波センサ51」からの信号を検知できない「断線(エラー4)」が発生し、「液晶表示装置36の表示領域67に「断線しています。」等の表示がなされ」ている場合に、「断線(エラー4)」に加え、「磁気異常(強)(エラー16)」が発生し得るものである。
したがって、刊行物発明は、本件補正発明における「前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合」に相当する構成を備えるものである。
そして、刊行物発明において、「複数のエラーが同時に発生した場合」、「優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され」るものであるから、発生した複数のエラーのうち、優先順位の高いエラーに関するエラー報知がなされるものである。
ゆえに、刊行物発明における「複数のエラーが同時に発生した場合に、優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され」ることと、本件補正発明における「第1検知手段および第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて第3エラーが検知された場合における表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生して第1検知手段および第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、実行中の第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する第1エラー表示または第2エラー表示を、表示手段において実行中の第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成される」こととは、「第1検知手段および第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて第3エラーが検知された場合における表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生して第1検知手段および第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、少なくとも、何れかのエラーの「文字画像を少なくとも含むエラー表示」を行うよう構成される」ことで共通する。

よって、刊行物発明における構成f、hと本件補正発明における構成Fとは、「第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーの発生中は第1エラーが検知され得ず、第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーの発生中は第2エラーが検知され得ないようになっており、第1検知手段および第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて第3エラーが検知された場合における表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生して第1検知手段および第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、少なくとも、何れかのエラーの「文字画像を少なくとも含むエラー表示を行うよう構成される」ことで共通する。

(g)
刊行物発明における構成gの「スピーカ7、枠装飾LED8によっても異常の報知を行」う「演出制御基板25」は、本件補正発明における構成Gの「音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段」に相当する。

(h)
刊行物発明において、大入賞口2排出過多異常(エラー8)、大入賞口2排出異常(エラー9)、磁気異常(強)(エラー16)、複数のエラーが同時に発生し、及び、電波異常(強)(エラー17)は、報知される優先順位の異なるエラーである。
そして、刊行物発明において、上記4つのエラー(エラー8?9、17?18)のエラー報知は、構成eによると、液晶表示装置36と、枠装飾LED8及びスピーカ7との両方を用いて行われるものである。
また、刊行物発明は、「複数のエラーが同時に発生し」得るものである。ここで、刊行物発明における「複数のエラー」は、エラーの種類毎に異なる原因により発生するものであるから、当業者における技術常識を考慮すると、各エラーは、異なるタイミングにより発生し得るものである。
そうすると、刊行物発明における、報知される優先順位の異なる上記の4つのエラー(大入賞口2排出過多異常(エラー8)、大入賞口2排出異常(エラー9)、磁気異常(強)(エラー16)、及び、電波異常(強)(エラー17))は、異なるタイミングで発生し得るものであるといえる。
したがって、刊行物発明における「大入賞口2排出過多異常(エラー8)、大入賞口2排出異常(エラー9)、磁気異常(強)(エラー16)、複数のエラーが同時に発生し、及び、電波異常(強)(エラー17)」の4つのエラーと、本件補正発明における「重複して発生している状態において、表示手段が、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行する」「報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラー」とは、「重複して発生している状態において、表示手段が、少なくとも、優先順位の高いエラーに対応するエラー表示を実行する」「報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラー」である点で共通する。

また、刊行物発明は、「複数のエラーが同時に発生した場合に、優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され」るものであり、このことは、液晶表示装置36を用いて行われるエラー報知のみならず、枠装飾LED8及びスピーカ7を用いて行われるエラー報知についても当てはまるものである。
したがって、刊行物発明における「液晶表示装置36、枠装飾LED8及びスピーカ7を用いて行われるエラー報知」と、本件補正発明における「エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず優先順位の高い方のエラーの発生を報知する一方、優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知する」こととは、「エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず優先順位の高い方のエラーの発生を報知する」ことで共通する。

よって、刊行物発明における構成f、hと、本件補正発明における構成Hとは、「報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、表示手段が、少なくとも、優先順位の高いエラーに対応するエラー表示を実行する」ことで共通する。

上記(a)?(h)より、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 所定の遊技を行う遊技機において、
B 検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段と、
C 検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段と、
D 画像を表示可能な表示手段とを備え、
E 前記第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記第1検知手段または前記第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
F’前記第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第1エラーが検知され得ず、前記第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第2エラーが検知され得ないようになっており、前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、少なくとも、何れかのエラーの「文字画像を少なくとも含むエラー表示」を行うよう構成されると共に、
G 音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段を備え、
H’報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記表示手段が、少なくとも、優先順位の高いエラーに対応するエラー表示を実行すると共に、前記エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず前記優先順位の高い方のエラーの発生を報知するよう構成された
ことを特徴とする遊技機。」

[相違点1](構成F)
第1検知手段および第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて第3エラーが検知された場合における表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生して第1検知手段および第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、
本件補正発明は、実行中の第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する第1エラー表示または第2エラー表示を、表示手段において実行中の第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されるのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点2](構成H)
報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態における表示手段におけるエラー表示に関して、
本件補正発明は、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行するのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点3](構成H)
本件補正発明は、優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に表示手段およびエラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知するのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えていない点。

(4)当審の判断
ア 相違点1?2(構成F、H)について
上記相違点1?2について検討する。
相違点1?2は、複数のエラーが発生している場合における表示手段におけるエラー報知に関する技術である点で共通しているのでまとめて検討する。
刊行物発明は、液晶表示装置36の表示領域67にエラー表示を行うことに並行して、複数の表示領域(60、63?65)に所定の表示を行う(構成d、e)ものである。
そして、遊技機の技術分野において、複数のエラーが同時に発生している場合、現在発生しているエラーの全ての種類を遊技者に認識し易くするために、発生している異なる種類のエラー表示を、文字画像が重ならない表示位置においてそれぞれ行うことは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2015-139591号公報の【0227】?【0229】、【図23】(D)には、複数種類の異常を個々に認識させやすく、かつ、遊技の進行も把握させやすくするために、同時期に発生した複数の異常報知画像を画像表示装置5の可変表示中演出の飾り図柄とは異なる位置に、互いに識別可能に表示することが示され、
また、原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された特開2016-30211号公報の【0391】、【図37】(e)’に、装飾図柄表示装置208の異なる表示領域に、先に検知された磁界検知エラーコマンドに基づく磁界検知エラーの報知と、後に検知された磁気(磁石)検知エラーコマンドに基づく磁気検知エラーの報知とを合わせて行うことが示され、
さらに、特開2010-179142号公報の【0074】に「エラーメッセージは、エラーコマンドごとに、それぞれ図柄表示部104における異なる位置に表示される。これによって、複数のエラーが同時に発生した場合にも、発生したエラーの内容を図柄表示部104を介して報知することができる。」ことが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)
そして、刊行物発明は、「複数のエラーが同時に発生」し得るものである。
そうすると、刊行物発明と上記周知の技術事項1とは、複数のエラーが同時に発生し得る遊技機である点で共通する。
したがって、刊行物発明における複数のエラーが同時期に発生している場合に、エラー表示及び所定の表示を並行して行う技術に、上記周知の技術事項1を適用して、現在発生している全てのエラーを遊技者に認識させるために、表示領域67を複数設け、優先順位の低いエラーを含む複数のエラーを液晶表示装置36の当該複数の表示領域に並行して表示させ、上記相違点1?2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

イ 相違点3(構成H)について
遊技機の技術分野において、不正による被害の深刻性等に応じて、エラーを報知する優先順位を決定する際に、同じ優先順位に異なる複数のエラーを設定すると共に、同時期に複数のエラーが発生したときに、優先順位を比較し、優先順位の高いエラーについての異常の報知を優先して行うものにおいて、優先順位が同じ場合についての報知内容を決定し、エラーが発生したことの報知を少なくとも、音声または発光によって行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2014-230794号公報には、【0421】に「「大入賞口異常入賞」、「大入賞口排出異常」、「始動入賞口異常入賞」、「始動入賞口排出異常」、「磁気異常」、「電波異常」、「皿満タン」、「球切れ」、「払出制御基板通信異常」、「カードユニット未接続」、「カードユニット通信異常」、および、「遊技枠開放」の異常の報知の優先順位は、それぞれ、2,1,2,1,3,3,6,6,5,5,5,4である。このように、不正行為による被害の深刻性に応じて、不正行為に起因する可能性のある異常に対して、優先順位が予め定められる。」と記載され、また、異常の報知を音声またはランプ表示により行うことや(【0364】?【0371】)、異常入賞1報知指定コマンドまたは始動異常入賞1報知指定コマンドを受信した場合、受信した異常と報知中の異常との優先順位を比較し、優先順位の高い異常の報知を優先して行うものにおいて、報知中の異常と優先順位が同じ場合についての報知内容を決定すること(【0438】?【0446】)が記載されている。
また、上記特開2010-179142号公報には、エラー報知を音声やLEDの点灯あるいは点滅により行うこと(【0086】)や、エラー報知の実行中に新たなエラーコマンドを受信した場合、両者の優先順位を比較し、優先順位の高い異常の報知を優先して行うものにおいて、報知中の異常と優先順位が同じ場合についての報知内容を決定すること(【0010】?【0011】)が記載され、
さらに、上記特開2016-30211号公報の【0343】に「磁気検知エラーは、他のエラー(例えば、磁界(電波)検知エラー、スイッチ未接続エラー(主制御部が制御する装置のコネクタ抜けや断線に関するエラー)、衝撃異常エラー、払出制御通信エラー、スイッチレベル異常エラー、入賞率異常エラー…、扉開放エラー、上皿満タンエラー)よりも優先度が高いエラーであってもよいが、優先度が同じであってもよい。」と記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。

また、エラー報知一般の技術分野において、同時期に複数のエラーが発生した場合に、後から発生した異常の種類を発生時点で認識できるように、優先順位にかかわらず、先のエラー報知に優先して、後から発生した最新のエラー報知を行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、上記特開2016-30211号公報の【0393】に「優先度に関係なく先にまたは後に発生したエラーの音声を出力してもよい。」と記載され、
特開2014-223146号公報の【0326】に「(5)上記実施の形態では、異常を即時報知が必要なものと後報知をするものとに大別した上で、後者については不正等の危険度に高低の差を設定して、危険度の高い異常が優先して報知されるように報知実行の際の優先レベルに差を設定したが、必ずしもこれに限定されるものではない。報知実行の際に最新の異常に対応する報知がなされる構成とすることも可能である。」と記載され、
国際公開第2011/52391号公報の【0149】に「以上のように、超音波出力装置4のGUI制御部57は、異なる医療用デバイス、即ち、ハンドピース2a及び2bで同時に異常が発生した場合、優先度に拘わらず、後から発生した異常のエラー表示画面を表示部60に表示するようにした。この結果、ユーザは、異なる医療用デバイスで発生した異常を容易に認識することができる。」と記載されている。以下「周知の技術事項3」という。)。

ここで、刊行物発明は、「エラーのうち、大入賞口2排出過多異常(エラー8)、大入賞口2排出異常(エラー9)、磁気異常(強)(エラー16)、及び、電波異常(強)(エラー17)は、確変移行判定部54に関するものであり、優先順位の高いエラーとして定義」(構成f、h)するものであるが、エラーを報知する優先順位は、エラー発生箇所や、不正に伴うエラーの深刻性や、エラーの緊急性等に基づいて当業者が適宜設定するものであって、複数種類のエラーを同じ報知順位に設定することを妨げるものではない。
また、刊行物発明において、「スピーカ7、枠装飾LED8」をエラーの報知手段として用いた場合、これらの手段が、表示装置と違って、複数種類の情報を同時に区別可能に報知することが困難なものであることは当業者にとって自明である。

したがって、刊行物発明に上記周知の技術事項2を適用して、不正に伴うエラーの深刻性や、エラー発生箇所や、エラーの緊急性等に基づいて、エラーを報知する優先順位を設定するに際し、優先順位の高いエラーのうち、関連性の深い大入賞口2排出過多異常(エラー8)と大入賞口2排出異常(エラー9)を同じ優先順位に設定し、磁気異常(強)(エラー16)と電波異常(強)(エラー17)を、大入賞口2排出過多異常(エラー8)と大入賞口2排出異常(エラー9)とは別の同じ優先順位に設定し、同時期に複数のエラーが発生したときに、優先順位を比較し、優先順位の高いエラーについての異常の報知を優先して行うと共に、優先順位が同じ場合についての報知内容を決定し、エラーが発生したことの報知を少なくとも、音声または発光によって行うことは、当業者が必要に応じて適宜設定し得たものである。
ところで、同時期に複数のエラーが発生したときに、優先順位を比較し、優先順位が同じ場合の報知内容を決定する方法について、次の2通りが考えられる。
ア:先に報知中のエラー報知の終了後に、後から発生したエラーの報知を行う方法。
イ:先に報知中のエラーの報知に優先して、後から発生したエラーの報知を行う方法(上記周知の技術事項3)。
ここで、アの場合、先のエラー報知が途切れることなく行われることから、報知の継続性が保たれるというメリットがあり、後者の場合、新しく発生したエラーを常に発生時点で認識できるというメリットがあるものと認められる。
そして、刊行物発明に上記周知の技術事項2を適用するに際して、上記アの方法、若しくは上記イの方法のうち、いずれの方法を採用するのかは、当業者がそれぞれのメリットを考慮して適宜決定し得たものである。
よって、刊行物発明に上記周知の技術事項2を適用するに際して、同時期に複数のエラーが発生したときに、優先順位を比較し、優先順位が同じ場合、上記イの方法:先に報知中のエラーの報知に優先して、後から発生したエラーの報知を行う方法(上記周知の技術事項3)を採用して、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

ウ 請求人の審判請求書における主張について
請求人は、平成30年10月24日付け審判請求書において、本件補正発明は、引用文献に対して次の点で有利な効果を奏する旨主張する。
(ア)「第1検知手段から信号を受信できない第3エラーの発生時には第1エラーが発生し得ず、第2検知手段から信号を受信できない第3エラーの発生時には第2エラーが発生し得ない。このような第3エラーの発生に対応する第3エラー表示中に、第3エラー表示と同時に第1または第2エラーに対応するエラー表示を実行し得るから、第3エラー表示中には、意図的に第1エラーまたは第2エラーを発生させようと試みることで、その発生させようと試みたエラーに対応するエラー表示が表示されるか否かにより、実際にそのエラーが発生したかを認識でき、対応する検知手段に不具合がないか否かを判断し得る。すなわち、第3エラーの発生源を特定することができ、適切に対応できる。」(〔3〕 本願発明の説明の (A)欄を参照。)
(イ)「全てのエラーについて報知の優先順位を異ならせるのではなく、報知の優先順位が同じ複数のエラーを存在させることで、複数のエラーが重複する場合において、基本的には報知の優先順位が高い順にエラーの発生が認識し易くなるよう各エラー報知の態様を相違させるようにしつつ、例えばエラーの重要度に差がない各エラーについて、優先順位を同じにして、発生タイミングが新しい方のエラーの発生が認識し易くなるよう各エラー報知の態様を相違させることができる。」(〔3〕 本願発明の説明の (A)欄を参照。)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
まず、請求人の上記主張(ア)について検討する。
刊行物発明は、上記(3)対比(f)において、検討したように、「主制御基板24」が「磁気センサ50」からの信号を検知できない「断線(エラー4)」が発生し、「液晶表示装置36の表示領域67に「断線しています。」等の表示がなされ」ている場合に、「断線(エラー4)」に加え、「電波異常(強)(エラー17)」が発生し得るものである。
そして、刊行物発明において、断線が「主制御基板24」と「磁気センサ50」との間で発生している場合、「磁気異常(強)(エラー16)」が発生してもエラー報知を行うことはできないが、断線の生じていない「電波センサ51」により「電波異常(強)(エラー17)」の発生を検知した場合、「電波異常(強)(エラー17)」が発生したことを報知可能であることは明らかである。
同様に、刊行物発明において、断線が「主制御基板24」と「電波センサ51」との間で発生している場合、「電波異常(強)(エラー17)」が発生してもエラー報知を行うことはできないが、断線の生じていない「磁気センサ50」により「磁気異常(強)(エラー16)」の発生を検知した場合、「磁気異常(強)(エラー16)」が発生したことを報知可能であることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張(ア)は妥当でない。

次に、請求人の上記主張(イ)について検討する。
上記イにおいて検討したように、刊行物発明において、構成fの「複数のエラーが同時に発生した場合」には、エラーの報知中に同じ種類のエラーが続けて発生する場合も含まれ、この場合、優先順位の同じエラーが発生したとみなすこともできるものである。
一方、本件補正発明は、「優先順位が同じであ」るのが、同じエラーが続けて発生した場合であるのか、同じ優先順位に複数のエラーを設定し、優先順位の同じ異なる種類のエラーが続けて発生した場合であるのか特定するものではない。
仮に、本件補正発明の「優先順位が同じであ」るのが、後者の場合に限定されると解しても、上記イにおいて検討したように、刊行物発明及び上記周知の技術事項2?3に基づいて当業者が容易になしえたものである。
したがって、請求人の上記主張(イ)は妥当でない。

よって、請求人の上記主張(ア)?(イ)を採用することはできない。

エ 小括
本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項1?3に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
よって、上記ア?ウにおいて検討したとおり、本件補正発明は、刊行物発明と上記周知の技術事項1?3に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年3月16日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。記号A?F1は、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。
「A 所定の遊技を行う遊技機において、
B 検知状態の変化に基づいて第1検知信号を出力可能な第1検知手段と、
C 検知状態の変化に基づいて第2検知信号を出力可能な第2検知手段と、
D 画像を表示可能な表示手段とを備え、
E 前記第1検知手段の第1検知信号に基づいて検知される第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記第2検知手段の第2検知信号に基づいて検知される第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記第1検知手段または前記第2検知手段からの信号を受信できないことに基づいて検知される第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
F1 前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成された
ことを特徴とする遊技機。」

2 拒絶の理由(平成30年1月12日付け)
原査定の請求項1に係る拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


〈引用文献等一覧〉
刊行物1:特開2014-90820号公報

3 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由において提示された、刊行物1である特開2014-90820号公報(前記「第2 2(2)刊行物1」における「刊行物1」に対応する。)の記載事項及び刊行物発明の認定については、前記「第2 2(2)刊行物1」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明の「前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に」おける「表示手段での」エラー表示に関して、「前記第1検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第1エラーが検知され得ず、前記第2検知手段から信号を受信できないことに基づいて検知される前記第3エラーの発生中は前記第2エラーが検知され得ないようになっており、前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち一方からの信号が受信できないことに基づいて前記第3エラーが検知された場合における前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生して前記第1検知手段および前記第2検知手段のうち他方によって検知された場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成される」とあったものを「前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成された」とその限定を省き、
「音声または発光によってエラーの発生を報知するエラー報知手段を備え」ることの限定を省き、
「報知の優先順位が異なり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記表示手段が、各エラーに対応するエラー表示を同時に実行すると共に、前記エラー報知手段が、後に発生したエラーであるか否かに関わらず前記優先順位の高い方のエラーの発生を報知する一方、前記優先順位が同じであり、かつ、他のエラーと重複せず発生した際に前記表示手段および前記エラー報知手段の両方で報知される複数のエラーが、重複して発生している状態において、前記エラー報知手段が、後に発生した方のエラーの発生を報知するよう構成された」ことの限定を省くものである。

そうすると、本願発明と刊行物発明とは、次の相違点4において相違し、その余の点で一致するものである。

[相違点4](構成F1)
本願発明は、実行中の第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する第1エラー表示または第2エラー表示を、表示手段において実行中の第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されるのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

そこで、上記相違点4について検討する。
本願発明と刊行物発明との相違点4については、本件補正発明と刊行物発明との相違点1についての上記検討内容(前記「第2 2(4)当審の判断 ア」)と同様の理由により、刊行物発明及び上記周知の技術事項1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2016-57479(P2016-57479)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 長崎 洋一
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 山本 喜幾  
代理人 山田 健司  

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