• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1353043
審判番号 不服2018-4273  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-29 
確定日 2019-07-25 
事件の表示 特願2013-101333号「畜肉の品質向上方法、並びに、畜肉食品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 57571号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成25年5月13日(優先日、平成24年8月24日)の出願であって、その経緯は、概ね次のとおりである。
平成29年 2月21日付け 拒絶理由通知書
平成29年 4月26日 意見書、手続補正書
平成29年 8月24日付け 拒絶理由通知書
平成29年10月27日 意見書、手続補正書
平成29年12月27日付け 拒絶査定
平成30年 3月29日 拒絶査定不服審判請求、手続補正書
平成31年 2月21日付け 拒絶理由通知書
平成31年 4月25日 意見書、手続補正書

第2 本願発明について
本願の請求項1?5に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成31年4月25日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
加熱調理される前の畜肉を米麹で処理することにより、加熱調理後の畜肉の品質を向上させる畜肉の品質向上方法であって、
前記畜肉を塩漬処理する工程を含まないものであり、
前記加熱調理は、油で揚げること、炒めること、焼くこと、煮ること、茹でること、蒸すこと、又は電子レンジによる加熱であり、
前記米麹は白麹であり、
畜肉の食感改善又は食味改善と、畜肉の不快臭のマスキング又は不快臭の発生抑制と、畜肉の歩留まり向上とを行うものであることを特徴とする畜肉の品質向上方法。
【請求項2】
加熱調理される前の畜肉を、前記米麹に加えて酒粕で処理することを特徴とする請求項1に記載の畜肉の品質向上方法。
【請求項3】
米麹の配合割合が水100重量部に対して乾燥米麹1重量部以上である処理液で、加熱調理される前の畜肉を処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の畜肉の品質向上方法。
【請求項4】
前記処理液は、さらに酒粕を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の畜肉の品質向上方法。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の畜肉の品質向上方法によって、加熱調理される前の畜肉を処理した後、加熱調理することを特徴とする畜肉食品の製造方法。」

第3 原査定の概要
原査定(平成29年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?8に係る発明は、以下の引用文献A?引用文献Jに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
A.特開2008-278882号公報
B.特開2003-52327号公報
C.特開昭56-64742号公報
D.特開2007-174916号公報
E.田代由紀子,夏こそスポーツの後に「甘酒」を!?疲れ知らずのカラダを作る?,毎日キレイ[online],2012年 7月24日,検索日2017.02.17,URL,http://mainichikirei.jp/article/20120724dog00m100045000c.html
F.特開2010-233460号公報
G.吉村美紀他,日本食品科学工学会誌,2011年,Vol.58, No.11,pp.517-524
H.特開2012-55178号公報
I.中村明弘他,J. Brew. Soc. Japan,1990年,Vol.85, No.2,pp.114-119
J.佐藤和夫他,J. Brew. Soc. Japan,1994年,Vol.79, No.7,pp.495-499

第4 当審拒絶理由の概要(平成31年2月21日付け拒絶理由通知書)
1 (新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 (進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1 :引用文献 1
●理由2(進歩性)について
・請求項 2?5 :引用文献 1、2

<引用文献一覧>
1.特開昭63-313541号公報
2.佐藤和夫他,J. Brew. Soc. Japan,1994年,Vol.79, No.7,pp.495-499(周知技術を示す文献)

第5 引用文献、引用発明等
1.当審拒絶理由で引用した引用文献及び引用発明
(1) 引用文献1(特開昭63-313541号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で参考のために付したものである。)。
(1a)「2.特許請求の範囲
塩漬工程に麹を共存させることを特徴とする食肉製品の製造法。」
(1b)「[従来の技術]
ハム、ソーセージ、ベーコン等の食肉加工品は、いずれも畜肉を塩漬処理するか、又は、塩漬処理後に加熱調理して保存性を高めるとともに、風味、色調、保水性、テクスチャー等の品質を向上させたものである。」(公報1ページ左欄)
(1c)「[発明が解決しようとする問題点]
・・・
さらに近年、製造工程の短縮化、製品の大量生産化により、塩漬期間が短くなってきており、ハム等は製品によっては2日位の塩漬によって製品化されるケースが見られる。
このような塩漬期間の短縮化と言う現象は、いわゆる食肉製品の熟成風味あるいはテクスチャーに多大なる影響を与える。塩漬期間中には亜硝酸塩等が重要な働きをすることは言うまでもないが、一方で忘れてはならないファクターとして塩漬中に乳酸菌、その他の有用微生物の増殖による、又は肉自身の持つ種々の酵素などが関与した熟成風味、テクスチャーがある。これらのファクターは十分なる塩漬によって良好なものが得られるが、塩漬期間の短縮化という製造条件では、微生物又は肉自身の酵素の作用は不十分になっていることは言うまでもない。
また一方、近年塩漬液にカゼインナトリウム、卵白、大豆蛋白質、コラーゲン、ホエイ等畜肉以外の異種蛋白質を混合し、これを肉にインジェクションして30?100%の水を抱かせるいわゆる高加水ハムなどの食肉製品が出回っている。
これら製品の多くは塩漬フレーバーも欠如しており、肉のテクスチャーも悪く、色調も好ましくなく、さらに加えて異種蛋白臭も強く本来の品質とはかけ離れた製品となっている。」(公報2ページ左上欄?左下欄)
(1d)「[問題点を解決するための手段]
上記のような、種々の問題点を解決すべく本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、これら食肉製品の製造工程中の塩漬工程に麹を共存させることにより、熟成フレーバーに富み、異種蛋白臭も押えられ、更にテクスチャー、色調等種々の問題点が解決することを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。麹を用いたこれらの効果の発現機作については、その詳細は定かではない。おそらく麹の持っているプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、その他の酵素作用、また、麹の代謝産物の影響により、塩漬時に発育する乳酸菌、その他有用細菌の著しい増殖等が総合的に発現して効果をもたらすものと思われる。
以下本発明の詳細な説明する。
本発明における食肉製品とは、主に豚肉よりなる、ハム類、ベーコン類、ソーセージ類、その他食肉加工品においてその製造工程に塩漬工程が含まれるものであればいずれの製品でもよい。ハム類としては、骨付きハム、ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、ラックスハム、又は畜肉(豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉等)を塩漬し、つなぎを加えたプレスハム、さらに畜肉に家兎肉、家きん肉、魚肉等からなる混合プレスハム等がある。ベーコン類としては、ベーコン、ロースベーコン、ショルダーベーコン、ミドルベーコン、サイドベーコン等がある。ソーセージ類としては、ソーセージ、セミドライソーセージ、ドライソーセージ、ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ、ウィンナーソーセージ、リオナソーセージ、さらに畜肉、家きん肉、家兎肉、魚肉、鯨肉等からなる混合ソーセージ等がある。
本発明に言う麹とは、蒸米、蒸大豆、蒸小麦、炒り小麦、蒸ふすま等それぞれ単独又はこれら混合物に一般に市販されている種麹を加え、所定の条件で製麹したものである。これら種麹としてはアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae )、アスペルギルス タマリ(Aspergillus tamarii )、アスペルギルス サイトイ (Asper gillus saitoi )アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami )、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)等の麹菌を一種又は二種類以上を混合したもの、又はこれらの変異株を一種又は二種類以上を混合したものよりなっている粉末又は顆粒状のものがある。なお、麹の状態においては、出麹直後のもの、乾燥品を問わず、麹としての活性が十分なものであれば使用可能である。
本発明における麹を製するにあたっては原料としては蒸米、蒸大豆、蒸小麦、炒り小麦、蒸ふすま等をそれぞれ単独又は二種以上の混合物を使用できるが、好ましくは蒸米を用いて製麹した、いわゆる、米麹を使用するのが熟成風味、テクスチャーなどに与える効果から見るとよい。
次に食肉製品の塩漬工程に麹を共存させる方法であるが、原料肉に直接に、又は布、ガーゼ、和紙などに麹を入れて間接に接触させればよく、特にその方法については制約されるものではなく、要は塩漬中の原料肉に麹が何らかの手段によって接触されていればよい。
また、麹の接触時間、その他、種々の共存条件については、各食肉製品の塩漬工程の条件に、又は最終製品の求められる品質に依存してそれぞれ工夫されるべきもので、それぞれの製品の塩漬工程に即して実施すればよいがあまり長期間の接触は麹の種類によっては肉の軟化が著しくなり好ましくない。
麹の使用量についても、直接原料に、又は間接に接触させる場合など、その条件によって異なるものでありそれぞれ工夫されるべきものであるが、原料肉に対し少なくとも1%以上であれば効果が期待でき、より良い効果を求むるならば10%以上が望ましい。」(公報2ページ左下欄?3ページ左下欄)
(2) 引用発明
上記(1)の各記載事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる、。
「原料肉である畜肉の塩漬工程に麹を共存させる食肉製品の製造法であって、
原料肉である畜肉を塩漬処理後に加熱調理し、
前記麹は、蒸米、蒸大豆、蒸小麦、炒り小麦、蒸ふすま等それぞれ単独又はこれら混合物に種麹を加え、所定の条件で製麹したものであり、
これら種麹としてはアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae )、アスペルギルス タマリ(Aspergillus tamarii )、アスペルギルス サイトイ (Asper gillus saitoi )アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami )、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)等の麹菌を一種又は二種類以上を混合したもの、又はこれらの変異株を一種又は二種類以上を混合したものよりなっている粉末又は顆粒状のものであり、
原料肉である畜肉の塩漬工程の麹の共存は、原料肉である畜肉に直接に、又は間接に接触させられる、
食肉製品の製造法。」
(3) 引用文献2(佐藤和夫他,J. Brew. Soc. Japan,1994年,Vol.79, No.7,pp.495-499。原査定の拒絶の理由で通知された引用文献Jと同じものである。)には、以下の事項が記載されている
(2a)「5. 粉末酒粕の酵素活性
第4表に粉末酒粕の各種の酵素活性と原料酒粕に対する残存率を示した。これによれば、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、酸性プロテアーゼなどの酵素活性は噴霧乾燥後も半分程度残存していることがわかる。」(498ページ左欄)

2.拒絶査定時に引用されたが、当審拒絶理由においては採用しなかった引用例における記載事項
(1) 引用文献A
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む、食品加工用漬け床。
【請求項2】
前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む、請求項1に記載の食品加工用漬け床。
【請求項3】
魚類の身及び/又は魚類の肝臓をさらに含む、請求項1又は2に記載の食品加工用漬け床。
【請求項4】
食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種をさらに含む、請求項1?3のいずれかに記載の食品加工用漬け床。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる漬け物。
【請求項6】
前記食材が、魚介類、肉類又は野菜類である、請求項5に記載の漬け物。」
「【0018】
前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、漬け床の腐敗の進行を抑制ないしは防止することができる。また、前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、食材の有用成分(例えば、GABA、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等の遊離アミノ酸)の増加を促進することもできる。
【0019】
前記コウジカビとしては、アスペルギルス属及びモナスカス属の少なくとも1種が好ましい。前記麹としては、例えば米麹、麦麹等を用いることができる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。また、前記麹は、胞子の種類によって、黄麹、黒麹、白麹等に分類されるが、本発明においては、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。麹の添加量は、特に制限されないが、一般的には蒸留粕100質量部に対して3?50質量部程度、好ましくは7?50質量部程度、より好ましくは10?20質量部程度である。
【0020】
前記麹として、粉砕された麹を用いてもよい。粉砕された麹を添加することにより、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。また、漬け床から取り出した食品(例えば漬け物)の外観が良好になる。すなわち、未粉砕の麹は、その大きさが、通常、米粒程度であるため、漬け床から取り出したに食品に米粒大の麹が付着し、該食品の外観が悪くなるという問題があるが、予め麹を粉砕しておくことにより、該問題を好適に回避できる。
【0021】
粉砕された麹としては、例えば、粉体状、鱗片状等の麹が挙げられる。前記麹が粉体状である場合、平均粒径は100?1,000μm程度が好ましい。
【0022】
また、前記麹として、麹菌種毎の至適温度で活性化 させた麹を用いてもよい。活性化させた麹を添加することにより、麹菌の持つグルタミン酸脱炭酸酵素が増加又は活性化し、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。麹を活性化させる際の温度は、黄麹菌では20?35℃程度が好ましい。活性化時間は、24?48時間程度が好ましい。」
「【0043】
実施例4
実施例1と同様の方法により漬け床を調製した。食材として鶏肉を用い、実施例1と同様の方法により鶏肉を加工し、漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0044】
実施例5
芋焼酎粕の代わりに麦焼酎粕を用いたほかは、実施例1と同様の方法により漬け床を調製し、シイラを加工し、その切り身を漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕とは異なる麦焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0045】
実施例6
芋焼酎の蒸留粕60質量%、米麹(黒麹)10質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩2質量%、みりん15質量%及び砂糖13質量%を混合し、漬け床とした。そして、実施例1と同様の方法により、シイラを加工し、その切り身を前記漬け床に漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と黒麹のクエン酸に由来するさわやかな風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。」
(2) 引用文献B
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 醤油粕又は酒粕から選ばれる一種以上と、梅酢から抽出した梅塩と、麹とを含む混合物を熟成させてなるみそ状食品。
【請求項2】 請求項1記載のみそ状食品において、麹が、米麹であることを特徴とするみそ状食品。
【請求項3】 請求項1又は2記載のみそ状食品において、梅塩を、混合物全体に対し15?30重量%含むことを特徴とするみそ状食品。
【請求項4】 請求項1?3のいずれか記載のみそ状食品において、醤油粕又は酒粕から選ばれる一種以上を100重量部としたとき、麹が10?60重量部であることを特徴とするみそ状食品。
【請求項5】 請求項1?4のいずれか記載のみそ状食品において、混合物を5?20℃で20?60日間熟成させることを特徴とするみそ状食品。
【請求項6】 請求項1?5のいずれか記載のみそ状食品に、果菜類、根菜類、葉菜類、魚類、貝類、肉類、果実類、キノコ類、又は海藻類を漬けて得られる漬物。」
(3) 引用文献C
「2.特許請求の範囲
米麹、蒸米を主成分とし、これに調味料として塩、砂糖および化学調味料を添加し、更にクロレラ抽出液を加えてなる野菜あるいは魚・肉用の漬物の素。」
(4) 引用文献D
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉に紅麹菌を作用させることにより得られる加熱調理済畜肉加工食品。
【請求項2】
畜肉が加熱処理した畜肉である請求項第1項記載の加熱調理済畜肉加工食品。
【請求項3】
畜肉が非加熱畜肉であり、紅麹菌による作用が紅麹又は紅麹もろみを用いて行われるものである請求項第1項記載の加熱調理済畜肉加工食品。
【請求項4】
加熱調理がレトルト調理である請求項第1項ないし第3項のいずれかの項記載の加熱調理済畜肉加工食品。
【請求項5】
畜肉に紅麹菌を作用させることを特徴とする加熱調理済畜肉加工食品の製造方法。
【請求項6】
畜肉が加熱処理した畜肉である請求項第5項に記載の加熱調理済畜肉加工食品の製造方法。
【請求項7】
畜肉が非加熱畜肉であり、紅麹菌による作用が紅麹又は紅麹もろみを用いて行われるものである請求項5記載の畜肉加工食品の製造方法。
【請求項8】
加熱調理がレトルト調理である請求項第5項ないし第7項のいずれかの項記載の畜肉加工食品の製造方法。」
(5) 引用文献E
「『麹』は糖質を分解する『アミラーゼ』、たんぱく質を分解する『プロテアーゼ』、脂質を分解する『リパーゼ』といった消化酵素を含みます。『プロテアーゼ』『リパーゼ」の働きを利用して、麹に肉や魚を漬けこむと素材が柔らかくなり、うまみやコクが増すため食材の下処理に利用されます。」(2ページ第2段落)
(6) 引用文献F
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とする食材の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有することを特徴とするアルデヒド発生抑制材。」
(7) 引用文献G
「多穀麹(ヤエガキ発酵技研株式会社、姫路)は、大麦・アワ・ヒエ・キビ・タカキビ・紫黒米を原料穀物とし麹菌(Aspergillus oryzae)で製麹したものである.多穀麹は高い酸性プロテアーゼ活性(53800units/g)と中性プロテアーゼ活性(50700units/g)を有する.」(2ページ左欄下2行?右欄4行)
(8) 引用文献H
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹿肉の品質改良方法であって、
(1)鹿肉を多穀麹で処理する工程、および
(2)工程(1)で得られる鹿肉を熟成させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(1)が、前記鹿肉100質量部を前記多穀麹1?5質量部で処理する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鹿肉がミンチ鹿肉である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(1)が、ミンチ鹿肉と多穀麹とを混練する工程である、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの項に記載の方法により得られる鹿肉。」
(9) 引用文献I
「我々は、白麹菌 Aspergillus kawachiiを用い、通常の清酒とほぼ同様の酸度を有しクエン酸が多いという点で有機酸組成に特徴ある清酒醸造を試みた。」(114ページ右欄)

第6 当審拒絶理由における理由における、対比・判断
1. 本願発明1について
引用発明における「加熱調理」、「畜肉」、及び「塩漬処理」・「塩漬工程」は、その意味又は構成から、それぞれ、本願発明1の「加熱調理」、「畜肉」、及び「塩漬処理する工程」に相当する。
引用発明の「前記麹は、蒸米、蒸大豆、蒸小麦、炒り小麦、蒸ふすま等それぞれ単独又はこれら混合物に種麹を加え、所定の条件で製麹したもの」は、本願発明1の「米麹」に相当する。
また、アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami)、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)が白麹であることは、技術常識であるから、引用発明の「これら種麹としてはアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae )、アスペルギルス タマリ(Aspergillus tamarii )、アスペルギルス サイトイ (Asper gillus saitoi )アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami )、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)等の麹菌を一種又は二種類以上を混合したもの、又はこれらの変異株を一種又は二種類以上を混合したものよりなっている粉末又は顆粒状のもの」を用いた「米麹」は、本願発明1の「米麹は白麹であり」に相当する。
そうすると、引用発明の「原料肉である畜肉の塩漬工程に麹を共存させ」て、「原料肉である畜肉を塩漬処理後に加熱調理」することは、本願発明1の「加熱調理される前の畜肉を米麹で処理すること」に相当する。
また、引用発明の「加熱調理」と、本願発明1の「前記加熱調理は、油で揚げること、炒めること、焼くこと、煮ること、茹でること、蒸すこと、又は電子レンジによる加熱であ」ることとは、「加熱調理」との限りで一致する。
本願発明1の「加熱調理後の畜肉」は、食肉製品といいえるのものであるから、引用発明の「食肉製品の製造法」と、本願発明1の「加熱調理後の畜肉の品質を向上させる畜肉の品質向上方法」及び「畜肉の食感改善又は食味改善と、畜肉の不快臭のマスキング又は不快臭の発生抑制と、畜肉の歩留まり向上とを行うものであることを特徴とする畜肉の品質向上方法」とは、「食肉製品の製造法」との限りで一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「加熱調理される前の畜肉を米麹で処理し、加熱調理する、食肉製品の製造法であって、
前記米麹は白麹である、
食肉製品の製造法。」
[相違点1]
食肉製品の製造法について、本願発明1は、「加熱調理後の畜肉の品質を向上させる畜肉の品質向上方法」であって、「畜肉の食感改善又は食味改善と、畜肉の不快臭のマスキング又は不快臭の発生抑制と、畜肉の歩留まり向上とを行うものであること」であるのに対して、引用発明は、「食肉製品の製造法」である点。
[相違点2]
食肉製品の製造法について、本願発明1は、「前記畜肉を塩漬処理する工程を含まないものであり」としているのに対して、引用発明は、「原料肉である畜肉の塩漬工程に麹を共存させる食肉製品の製造法であって、原料肉である畜肉を塩漬処理後に加熱調理し」、「原料肉である畜肉の塩漬工程の麹の共存は、原料肉である畜肉に直接に、又は間接に接触させられる」ものとしていて、畜肉の「塩漬工程」を必須としている点。
[相違点3]
加熱調理について、本願発明1は、「前記加熱調理は、油で揚げること、炒めること、焼くこと、煮ること、茹でること、蒸すこと、又は電子レンジによる加熱であり」と特定されているのに対して、引用発明は、そのような特定は行っていない点。

以下、事案に鑑み、相違点2について、先ず検討する。
[相違点2について]
引用文献1には、「[問題点を解決するための手段]上記のような、種々の問題点を解決すべく本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、これら食肉製品の製造工程中の塩漬工程に麹を共存させることにより、熟成フレーバーに富み、異種蛋白臭も押えられ、更にテクスチャー、色調等種々の問題点が解決することを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。」(上記(1d))、「麹の接触時間、その他、種々の共存条件については、各食肉製品の塩漬工程の条件に、又は最終製品の求められる品質に依存してそれぞれ工夫されるべきもので、それぞれの製品の塩漬工程に即して実施すればよい」(上記(1d))と記載されており、引用発明は、「塩漬工程」を除くことを想定していないものである。
また、引用文献2(引用文献J)、引用文献A?Iを参照しても、引用発明において、塩漬処理することなしに、熟成フレーバーに富み、異種蛋白臭も押えられ、更にテクスチャー、色調等種々の問題点を解決できるとはいえないし、引用発明において、そのような製造法とすることが周知ないし設計事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項を採用することは、当業者であっても容易に想到し得たとすることはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、また、引用発明及び引用文献1、2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
2. 本願発明2?5について
本願の特許請求の範囲における請求項2?5は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2?本願発明5は、本願発明1と同様の理由で、引用文献1に記載された発明とはいえないし、また、引用発明及び引用文献1、2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第7 原査定についての判断
平成31年4月25日提出の手続補正書により補正により、補正後の請求項1?5に係る発明は、「加熱調理される前の畜肉を米麹で処理することにより、加熱調理後の畜肉の品質を向上させる畜肉の品質向上方法であって、前記畜肉を塩漬処理する工程を含まないものであり」及び「前記米麹は白麹であり、畜肉の食感改善又は食味改善と、畜肉の不快臭のマスキング又は不
快臭の発生抑制と、畜肉の歩留まり向上とを行うものであること」という技
術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A?Jには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1?5は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Jに基いて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-10 
出願番号 特願2013-101333(P2013-101333)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 茜伊達 利奈  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
発明の名称 畜肉の品質向上方法、並びに、畜肉食品の製造方法  
代理人 大南 匡史  
代理人 藤田 隆  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ