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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1353071
審判番号 不服2017-16278  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-02 
確定日 2019-07-03 
事件の表示 特願2015-248216「サンドウィッチ構成要素」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月25日出願公開、特開2016-153220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月21日(パリ条約による優先権主張 2014年12月22日 欧州特許庁(EP))の出願であって、平成29年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出された。
その後、当審において平成30年9月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成31年1月8日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年1月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものであると認める。
「少なくとも1つのコア層(2)及び少なくとも2つの繊維層(3)を備え、少なくとも1つのマトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも1つの上側面及び/又は下側面に付けられる、サンドウィッチ構成要素(1)であって、
マトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも2つに異なる方式で付けられ、及び/又はマトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも1つの前記上側面及び/又は前記下側面に沿って、前記繊維層(3)のうちの少なくとも1つに異なる方式で付けられることを特徴とする、サンドウィッチ構成要素(1)であって、
マトリックス材(4)が層構造を有する、サンドウィッチ構成要素(1)であり、
前記マトリックス材(4)が異なる量及び/又は異なるタイプのマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられることを特徴とする、サンドウィッチ構成要素(1)。」

第3 当審が通知した拒絶理由
平成30年9月28日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち、引用文献1を主たる引用例とする「2)(新規性)」の理由の概要は、次のとおりのものである。
2)(新規性)本願特許請求の範囲の請求項1、2、3、5-7、12-15、17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-6175号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材であって、
前記外面が成形面となるシート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には、前記加圧及び加熱成形の際に前記発泡性熱硬化性樹脂の浸入を必要とされるレベルに抑制する中間シート材が挟まれて配設されており、該中間シート材による発泡性熱硬化性樹脂の浸入の必要とされるレベルは前記加圧及び加熱成形の際における前記繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量であることを特徴とする積層構造の車両用内装基材。」(【特許請求の範囲】)

(2)「【0001】
本発明は、積層構造の車両用内装基材及びその製造法に関する。詳しくは、シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材に関する。」

(3)「【0005】
・・・ところが、図8(D)に図示されるように、外表面形状が凹凸面形状に形成されるような場合においては、凹凸面110aの角部110bを形成するのに必要な発泡性熱硬化性樹脂132が繊維補強材130に含浸された状態で加熱成形する必要がある。ところが、加圧成形の圧縮力の作用によって、繊維補強材130を通過する発泡性熱硬化性樹脂132が凹凸面110aの角部110bを形成するのに必要な量までハニカム構造体120側に流入した状態で加熱成形されて硬化されると凹凸面110aの角部110bが成形されない欠肉状態で形成されてしまう。
更には、発泡性熱硬化性樹脂132が繊維補強材130を通過してハニカム構造体120側に多く流入した状態で、加熱成形して発泡、硬化されると繊維補強材130内に微小な空洞状(泡状)のボイドが外表面に形成されてしまう。この欠肉及びボイドの発生した成形品は著しく見栄えを損ない、表面品質の低下を招くため、不良品として廃棄されてしまうという問題があった。・・・
【0006】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材において、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することにある。」

(4)「【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、積層構造の車両用内装基材及びその製造法は、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することができる。」

(5)「【0015】
始めに、実施例1の積層構造の車両用内装基材の構成について、図1?図7を用いて説明する。本実施例の積層構造の車両用内装基材10は、車両の内装材として採用されるものであり、・・・サンシェード等がある。この車両用内装基材10は、車両の内装を構成する種々の部位に適用されるものである。
【0016】
図1に図示されるように、実施例1の車両用内装基材10は、複数の素材を積層させて一体的に成形した積層構造として構成されている。図2に図示されるように、この積層構造の車両用内装基材10は、コア材(芯材)として構成されるシート状のハニカム構造体20と、このハニカム構造体20の両面にシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)が配設されている。更に、外面が成形面12aとなるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との間には、更紙40(中間シート材)が挟まれて配設されている。・・・
【0017】
このガラス繊維マット30とハニカム構造体20と更紙40(中間シート材)が積層された内装基材積層配設体12の外面に、発泡性熱硬化性樹脂として選択された発泡性ポリウレタン樹脂32(図5参照)がスプレー等によって塗布され、後述するように、発泡性ポリウレタン樹脂32を加圧、加熱して発泡・硬化(図6参照)させることにより、積層された内装基材積層配設体12の各材料を一体的に接合形成する構成とされている。」

(6)「【0021】
次に更紙40(中間シート材)について説明する。
図2に図示されるように、この更紙40(中間シート材)は、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入(発泡性熱硬化性樹脂がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)を必要とされるレベルに抑制するために、ガラス繊維マット30(繊維補強材)とハニカム構造体20との間に挟まれて配設されるものである。
この更紙40(中間シート材)による発泡性ポリウレタン樹脂32の浸入(発泡性熱硬化性樹脂がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量である。・・・
【0022】
本実施例1においては、中間シート材に適切な材料として、紙が選択されている。一般に紙は、植物の繊維を水中でバラバラにして金網などで薄く抄き上げたものとされている。
ここで本実施例1において選択される紙は、更紙40が選択されている。この更紙は、砕木パルプを主原料とし、化学パルプを配合して作ったものである。この更紙は、化学パルプの比が40%未満の洋紙とされている。・・・
【0023】
ここで、本発明における更紙40(中間シート材)として適用されるものは、加圧成型における圧縮力との関係において、以下の条件で発泡性ポリウレタン樹脂32を通過することが必要とされている。すなわち、プレス成形機50の加圧成型前においては、更紙40(中間シート材)の構成によって発泡性ポリウレタン樹脂32がハニカム構造体20側に流入しないでガラス繊維マット30に滞留された状態とされているが、プレス成形機50の面圧(圧縮力)によってガラス繊維マット30に滞留された発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)のうち、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量だけが更紙40(中間シート材)を通過してハニカム構造体20側に流入する。ここで、本実施例1に適用される更紙においては、秤量10g/m^(2)?100g/m^(2)の範囲が好適である。中間シート材として更紙以外を適用する際は、上記条件に適合する秤量を適宜選択する。」

(7)「【0026】
〔内装基材積層配設体12の外面から発泡性ポリウレタン樹脂32を塗布して含浸させる塗布工程〕
次に、図5に図示されるように、プレス成形に先立って、内装基材積層配設体12の外表面となるガラス繊維マット30に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)が450g/m^(2)(一体成形に必要充分な量)スプレーによって塗布する(成形面12a及び成形面12aと反対側の外面も共に塗布)。ここで、プレス成形機50の加圧成型前においては、更紙の配設される側のガラス繊維マット30は、更紙の構成によって発泡性ポリウレタン樹脂32がハニカム構造体20側に流入しないでガラス繊維マット30に滞留された状態とされている。
【0027】
〔内装基材積層配設体12を加圧及び加熱成形する成形工程〕
図6に図示されるように、この内装基材積層配設体12を、プレス成形機50における下型54の上に載置する。なおプレス成形機50は、内装基材積層配設体12の成形加工に先立って、上型60および下型54をあらかじめ所定温度(摂氏温度60℃?170℃に)に加熱保持しておく。次に、図3及び図6に図示されるように、プレス成形機50の運転を開始し、スライダ58を下降させて上型60と下型54を相対的に近接させ、ハニカム構造体20およびガラス繊維マット30(繊維補強材)並びに更紙40(中間シート材)とからなる内装基材積層配設体12を両金型60、54により挟圧する。そうすると、プレス成形機50の面圧(圧縮力)によってガラス繊維マット30に滞留された発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)のうち、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量だけが更紙を通過してハニカム構造体20側に流入する。そして、ガラス繊維マット30に熱伝導がなされ、ガラス繊維マット30に塗布されている発泡性ポリウレタン樹脂32の発泡を開始させる。上型60および下型54を所定時間に亘り型締めしたまま加圧および加熱保持することで、発泡性ポリウレタン樹脂32は発泡しながらガラス繊維マット30の内部隙間で膨張し、次いで硬化することによりハニカム構造体20とガラス繊維マット30と更紙40(中間シート材)の一体的な接着が達成される。発泡性ポリウレタン樹脂32はガラス繊維マット30に浸透することでガラス繊維の脱落を防ぎ表面が平滑に仕上がると共にガラス繊維特有のチクチクとした不快な肌ざわりがなくなる。
【0028】
図7に図示されるように、発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の硬化が完了し、ガラス繊維マット30(繊維補強材)およびハニカム構造体20が一体的に接着されたタイミングで、上型60を上方へ退避させて内装基材積層配設体12を下型54から脱型する。」

(8)「【0030】
このように、本実施例1の積層構造の車両用内装基材10によれば、外面が成形面となるシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)とシート状のハニカム構造体20との間には、更紙40(中間シート材)が挟まれて配設されている。この更紙は、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入を必要とされるレベルに抑制するものである。この更紙による発泡性ポリウレタン樹脂32の浸入の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量として設定されている。そのため、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合に必要な量だけ発泡性ポリウレタン樹脂32が浸入(発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)することとなるため、外表面形状を形成するのに必要な発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30に含浸された状態で加熱成形することができ、欠肉状態で形成されることを防ぐことができる。また、外表面形状を形成するのに必要な発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30に含浸された状態であるため、加熱成形時にガラス繊維マット30内が空洞状(泡状)となるのを防いで、ボイドの発生を抑制することができる。よって、余分な発泡性ポリウレタン樹脂32を使用することなく、加圧及び加熱成形によりガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材10を提供することができる。なお、成形面として特に表面形状が急に変化する凹凸面形状に形成されるような場合に有効である。更には、この凹凸面の輪郭となる端末部位が角部に形成されるような場合に特に有効である。
【0031】
また、積層構造の車両用内装基材10は、上記した配設工程、塗布工程、成形工程の各工程を経ることで得ることができる。ここで、更紙は、成形工程においてガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量の発泡性ポリウレタン樹脂32を浸入させるものである。この塗布工程によりガラス繊維マット30の外面から塗布した発泡性ポリウレタン樹脂32は、塗布工程においてはガラス繊維マット30に滞留された状態にあるが、成形工程時には加圧成形の圧縮力によって更紙を通過してハニカム構造体20側に流入されて加熱される。これにより、余分な発泡性ポリウレタン樹脂32を使用することなく、加圧及び加熱成形によりガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材10を提供することができる。」

(9)「



(10)「



(11)「



引用文献1の上記記載事項(8)及び(9)、並びに【図5】?【図7】、特に、【0030】の「・・・この更紙は、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入を必要とされるレベルに抑制するものである。この更紙による発泡性ポリウレタン樹脂32の浸入の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量として設定されている。そのため、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合に必要な量だけ発泡性ポリウレタン樹脂32が浸入(発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)することとなるため、外表面形状を形成するのに必要な発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30に含浸された状態で加熱成形することができ、欠肉状態で形成されることを防ぐことができる。・・・」の記載、そして、【図7】における、発泡性熱硬化樹脂32が、ハニカム構造体20の両面のガラス繊維マット(繊維補強材)30の上側において層をそれぞれ形成しており、さらに発泡性熱硬化樹脂32が更紙40の下側においても層を形成していることの図示を踏えると、引用文献1には、加圧及び加熱成形後において、積層構造の車両用内層基材10において「発泡性熱硬化性樹脂32が層構造を有する」点、及び「発泡熱硬化性樹脂32が、ハニカム構造体20の両面の繊維補強材30の上側において層をそれぞれ形成しており、さらに発泡性熱硬化性樹脂32が更紙40の下側においても層を形成している」点が記載されている。

2 引用発明
引用文献1についての上記(1)?(11)の記載事項等を総合すると、引用文献1には、
「シート状のハニカム構造体20の両面にそれぞれシート状の繊維補強材30が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂32を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材30とハニカム構造体20とを前記発泡性熱硬化性樹脂32により接合形成してなり、発泡性熱硬化性樹脂32が、ハニカム構造体20の両面の繊維補強材30の上側において層をそれぞれ形成している、積層構造の車両用内装基材10であって、
前記外面が成形面となるシート状の繊維補強材30とシート状のハニカム構造体20との間には、前記加圧及び加熱成形の際に前記発泡性熱硬化性樹脂32の浸入を必要とされるレベルに抑制する更紙40が挟まれて配設されており、該更紙40による発泡性熱硬化性樹脂32の浸入の必要とされるレベルは前記加圧及び加熱成形の際における前記繊維補強材30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量であり、更紙40の下側において発泡性熱硬化性樹脂32が層を形成しており、
発泡性熱硬化性樹脂32が層構造を有している、
積層構造の車両用内装基材10。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「シート状のハニカム構造体20」は、その形状・構造からみて、本願発明の「コア層(2)」に相当する。

2 引用発明のハニカム構造体20の下方の「シート状の繊維補強材30」及び「更紙40」は、それぞれ、その形状・構造からみて、本願発明の「繊維層(3)」に相当する。

3 引用発明の「発泡性熱硬化性樹脂32」は、その機能からみて、本願発明の「マトリックス材(4)」に相当する。

4 引用発明の「積層構造の車両用内装基材10」は、その構造からみて、本願発明の「サンドウィッチ構成要素(1)」に相当する。

6 引用発明の「シート状のハニカム構造体20の両面にそれぞれシート状の繊維補強材30が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂32を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材30とハニカム構造体20とを前記発泡性熱硬化性樹脂32により接合形成してなり、発泡性熱硬化性樹脂32が、ハニカム構造体20の両面の繊維補強材30の上側において層をそれぞれ形成している、積層構造の車両用内装基材10」は、その形状・構造からみて、本願発明の「少なくとも1つのコア層(2)及び少なくとも2つの繊維層(3)を備え、少なくとも1つのマトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも1つの上側面及び/又は下側面に付けられる、サンドウィッチ構成要素(1)」に相当する。

7 引用発明の「発泡性熱硬化性樹脂32が層構造を有している」は、その形状・構造からみて、本願発明の「マトリックス材(4)が層構造を有する」に相当する。

8 ここで、引用発明が、本願発明の「マトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも2つに異なる方式で付けられ」及び「前記マトリックス材(4)が異なる量及び/又は異なるタイプのマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられる」といえるかどうか検討する。
(1)引用発明の「発泡性熱硬化性樹脂32」により形成された層のうち、「ハニカム構造体20の下方のシート状の繊維補強材30の上側の層」(以下「下方繊維補強材上側層」という。)と「更紙40の下側の層」(以下「更紙下側層」という。)とで、発泡性熱硬化性樹脂32の量について検討する。
ア (「下方繊維補強材上側層」の発泡性熱硬化性樹脂32の量について)
上記「第4 1」の記載事項(7)の「【0026】・・・図5に図示されるように、プレス成形に先立って、内装基材積層配設体12の外表面となるガラス繊維マット30に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)が450g/m^(2)(一体成形に必要充分な量)スプレーによって塗布する(成形面12a及び成形面12aと反対側の外面も共に塗布)。ここで、プレス成形機50の加圧成型前においては、更紙の配設される側のガラス繊維マット30は、更紙の構成によって発泡性ポリウレタン樹脂32がハニカム構造体20側に流入しないでガラス繊維マット30に滞留された状態とされている。・・・」との記載から、プレス成形前、「下方繊維補強材上側層」の発泡性熱硬化性樹脂32の量は、ハニカム構造体の上方側と同量の量(以下「第1の量」という。)であることがわかる。
イ ( 「更紙下側層」の発泡性熱硬化性樹脂32の量について)
上記「第4 1」の記載事項(7)の「・・・【0027】・・・そうすると、プレス成形機50の面圧(圧縮力)によってガラス繊維マット30に滞留された発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)のうち、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量だけが更紙を通過してハニカム構造体20側に流入する。・・・」との記載から、プレス成形後、「更紙下側層」の発泡性熱硬化性樹脂32の量は、繊維強化層30に滞留された発泡性熱硬化性樹脂32(当審注:その量は上記「第1の量」と同量。)のうち、更紙を通過した、繊維強化層30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量に相当する量(以下「第2の量」という。)であることがわかる。
ウ 上記ア及びイより、「第1の量」は「第2の量」より、大きいことは明らかである。そうすると、引用発明の「下方繊維補強材上側層」と「更紙下側層」とのは、発泡性熱硬化性樹脂32の量が異なるといえる。

(2)上記(1)で示したように、引用発明の「下方繊維補強材上側層」と「更紙下側層」とは、発泡性熱硬化性樹脂32の量が異なるから、引用発明も、本願発明の「マトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも2つに異なる方式で付けられ」及び「マトリックス材(4)が異なる量のマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられる」に相当する構成を備えたものであるといえる。

(3)以上のとおりであるから、引用発明の「発泡性熱硬化性樹脂32が、ハニカム構造体20の両面の繊維補強材30の上側において層をそれぞれ形成している」及び「該更紙40による発泡性熱硬化性樹脂32の浸入の必要とされるレベルは前記加圧及び加熱成形の際における前記繊維補強材30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量であり、更紙40の下側において発泡性熱硬化性樹脂32が層を形成しており」は、本願発明の「マトリックス材(4)が、前記繊維層(3)のうちの少なくとも2つに異なる方式で付けられ」及び「前記マトリックス材(4)が異なる量及び/又は異なるタイプのマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられる」に相当する。

9 以上を総合すると、本願発明は、引用発明の発明特定事項を実質上すべて備えており、両者に実質的な差異はない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

10 審判請求人の主張について
審判請求人は、「引用文献1、2(当審注:「引用文献1」は引用文献1)のいずれにおきましても、補正後の本願請求項1の構成につきましては、記載も示唆もされてはおりません。
すなわち、マトリックス材(4)が異なる量及び/又は異なるタイプのマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられることにより、マトリックス材の浸透を調節可能としております。補正後の本願請求項1の構成を有することにより得られる、上記のような優れた効果につきましては、たとえ引用文献1、2を考慮したと致しましても、当業者には想到することはできません。
従いまして補正後の本願請求項1は引用文献1、2に対し新規性を有するだけでなく、進歩性をも有するものと思料致します。」(平成31年1月8日付け意見書3頁4.(2))と主張する。
しかしながら、上記「第5 8」で述べたように、引用発明も、本願発明の「マトリックス材(4)が異なる量及び/又は異なるタイプのマトリックス材(4)として付けられるという点で、前記マトリックス材(4)が異なる方式で付けられる」に相当する構成を備えており、本願発明は、引用発明である。よって、審判請求人の主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-01 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2015-248216(P2015-248216)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
P 1 8・ 113- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飛彈 浩一近野 光知細井 龍史  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 久保 克彦
蓮井 雅之
発明の名称 サンドウィッチ構成要素  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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