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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1353090
審判番号 不服2018-121  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-05 
確定日 2019-07-02 
事件の表示 特願2015-515572「物理層制御フレームの短縮」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/182812、平成27年 7月 6日国内公表、特表2015-519029〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)6月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年6月5日 フランス)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年2月5日 手続補正書の提出
平成29年3月17日付け 拒絶理由通知書
平成29年6月2日 意見書,及び手続補正書の提出
平成29年10月25日付け 拒絶査定
平成30年1月5日 拒絶査定不服審判の請求,及び手続補正書の提出


第2 平成30年1月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月5日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
(1)本件補正前の,平成29年6月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4は次のとおりである。

「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置であって,前記制御フレームは,物理層に関する情報を転送することを目的とするヘッダフィールドを含み,
前記物理層に関する前記ヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニットであって,前記MAC層のヘッダは前記制御フレームに挿入されない,挿入のためのユニットと,
前記物理層に関する変調技術を使用して前記ヘッダフィールドを変調するための変調器と
を含むことを特徴とする装置。」


(2)本件補正により,特許請求の範囲の請求項4は次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置であって,前記制御フレームは,物理層に関する情報を転送することを目的とするヘッダフィールドを含み,
前記物理層に関する前記ヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニットであって,前記MAC層のヘッダは前記制御フレームに挿入されない,挿入のためのユニットと,
前記物理層に関する変調技術を使用して前記ヘッダフィールドを変調するための変調器と
を含み,
前記MAC層のヘッダに関する前記挿入された情報は,前記受信エンティティに関する1つの識別子を少なくとも含み,
前記受信エンティティによって,前記受信エンティティの識別子と,前記受信エンティティに関する1つの識別子との間の対応が検出されない場合,前記受信エンティティによって受信される前記MAC層のヘッダに関する情報は前記受信エンティティのMAC層に送信されない,ことを特徴とする装置。」


2 補正の適否
本件補正のうち請求項4についての補正が,特許法第17条の2第5項1号(請求項の削除),3号(誤記の訂正),4号(明りょうでない記載の釈明)に規定される事項を目的とするものでないことは明らかである。
そこで,本件補正のうち請求項4についての補正が,特許法第17条の2第5項2号に規定される事項である,特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするもの(以下,「請求項の限定的減縮」という。)であるか否かについて検討する。
本件補正のうち請求項4についての補正は,「前記受信エンティティによって,前記受信エンティティの識別子と,前記受信エンティティに関する1つの識別子との間の対応が検出されない場合,前記受信エンティティによって受信される前記MAC層のヘッダに関する情報は前記受信エンティティのMAC層に送信されない」との事項を追加することを含むものである。
しかしながら,本件補正前の請求項4に係る発明は「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置」であって,受信エンティティそのものは,前記「装置」に含まれていない。
一方,本件補正により追加された前記事項は,「受信エンティティ」をその処理により特定するものであるから,形式的には本件補正は請求項の減縮に該当するものの,補正前の前記「装置」を限定するものではなく,さらに「受信エンティティ」の処理という新たな技術的概念を追加するものである。してみれば,本件補正は,限定的減縮を目的とするものではない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。


3 独立特許要件
上記2のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが,更に進めて,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして,本件補正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。


(1)本願補正発明
本願の請求項に係る発明は,平成30年1月5日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項4に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,その請求項4に記載された事項により特定される上記1(2)に記載のとおりのものと認める。


(2)引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,特表2009-508451号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

ア 「【0008】
[発明の簡単な要約]
本発明の実施例に従った無線ネットワークにおいては、高速度制御メッセージングフレームが制御情報を信号化するために使用される。高速制御メッセージング(FCM;fast control messaging)フレームは、PLCP ヘッダのなかにMACレイヤ制御ビットを含み、PSDUに対する必要性を不要にする。」

イ 「【0013】
[本発明の詳細な記述]
従来のあるいは新規な無線ネットワークとともに使用することのできる改善されたメーッセージングアプローチがここに記述され,ここで局はここに記述される新規な高速制御メッセージングを理解する(即ち,適切に処理する)能力を持つかもしれないしあるいは持たないかもしれない。この開示は無線ネットワーク局の実施例(たとえば,クライアントデバイス,アクセスポイント)を記述する。特定の実施例において,無線ネットワークは,802,11x(x=a,b,e,g,nなど)無線ネットワークにおいて,または他の同様の動作を有する無線ネットワークにおいてノードとして動作する複数のデバイスを含む。802,11xは,802,11a,802,11b,802,11n等のような,しかしこれらに限定されない,任意の適用可能な802,11フーマットを基準とすることが理解されるであろう。」

ウ 「【0014】
新しい高速制御メッセージ機構においては,修正されたPPDUフレームはPLCPプリアングルおよびPLCPヘッダを,図2に示されたようにPSUDを必要とすることなしに,含むことが可能である。PLCPヘッダは,PPDUがPSDUを有するレガシーフォーマット(legacy format)であるか,またはPSDUを有することを必要としない"高速制御メッセージングフォーマット“のフレーム(”FCMフレーム”)フォーマットかどうかを決定するために,受信機がPHY処理において使用可能なインジケーション(indication)を含む。受信機のMACレイヤに伝送されることを必要とする情報は,ヘッダの一部として送信することができ,そして受信機のPHYレイヤ論理によって取り出され,そしてMACレイヤに送られる。」

エ 「【0015】
典型的な無線ネットワークにおいては、複数の局は無線ネットワークのために定義されそして期待されるプロトコルを使用して通信している。各局は無線ネットワークの論理的ノード(logical node)であるかもしれず、そしてデータ処理および無線伝送/受信等のためにハードウエアにより実行されるかもしれない。例えば、局はラップトップ、セル電話、ハンドヘルド計算機等の計算デバイスの中に形成された、無線ネットワークカードあるいは回路であるかもしれず、または局は無線アクセスゾーン(802.11 BSSクラウド(cloud)のような)を形成するスペースに搭載されそして無線ネットワークをルータを経由して有線ネットワークに結合するルータのようなアクセスポイントであるかもしれない。局デバイスはこのようにして電源、配線されたデータ入力/出力、データを処理するための論理(多分ネットワークレイヤ方式を使用し、ここで1つのレイヤに関する論理は、多かれ少なかれより高いおよび/あるいはより低いレイヤから分離され、そして各レイヤの論理はデータをそのレイヤに関する形式で処理し)、変調器/復調器、信号処理ハードウエア/ソフトウエア/ファームウエア、RF信号発生器、RF信号受信機およびデジタイザ、アンテナおよび他の典型的無線ネットワーキング、デバイス、モジュールカード、回路あるいは装置の事例を有することができるであろう。」




カ 「【0023】
FCM PLCPのMAC制御ビットフィールドは,受信機のMACレイヤ論理上を通過することが可能であり,ここでこのフィールドの制御ビットの処理はさらなる処理のために受信機のMACレイヤに提示可能であるようにフォーマットされるかもしれない。」




ク 「【0027】
[インプリシットアドレシング(Implicit Addressing)を有する高速制御メッセージング]
もし局(station STA)がFCMフレームによってアドレスされる場合、利用可能な限定された情報ビットのセットのみを有するために、制御ビット内にフルMACアドレスを含むことは不可能かもしれない。代わりのアドレス方式がこの制限をカバーするために使用されることが可能である。例えば、6バイトSTAアドレスのかわりに、1バイトまたは2バイトAIDs(組み合わせ識別子;Association Identifier)が使用されることが可能である。若干の実施例においては、アクセスポイント(AP;access point)はそのAPに関連する各局に提供するかもしれず、AIDそしてMACアドレスのマッピングテーブルはそのAPのベーシックサービスセット(BSS;basic service set)についてアドレスするかもしれない。例えば、256よりも少ない関連する局を有するネットワークは1バイトAIDsを使用することができ、そして各局に関し特有の”ローカル アドレス(local address)”をさらに有するので、このことは容易に実行可能であろう。
【0028】
(中略)
このように、ひとつの局がフレームを目的地局のアドレス(MAC,AID,等)を使用する目的地局に送信し、そしてその1つの局はACKを期待している局のみであり、そしてフレームがSIFS(Short Interframe Space)時間内で送信されることを開始する場合、1つの局はACTの送信者は目的地局であると推論する。この推定は予期されていた特定のACKを受信する1つの局に従うであろう。これは潜在的に含まれたアドレシング機構の形式であろう。」

ケ 「【0029】
[MAC制御ビットフィールドに関して事例となる構造]
図4はMAC制御情報を符号化するために使用されることが可能な一般的構造の概要をあたえるものである。“制御ID”フィールドは制御命令の種類を示すことが可能であり、そして"制御パラメータ“フィールドはこの命令に対応するパラメータを示すことが可能である。」

コ 「【0030】
[使用する場合の例;高められたRTS-CTS]
レガシーRTS-CTS変換はここに記述されたように高速制御メッセージングフォーマットに書き直すことが可能である。RTSフレームは図5に示されたようにフォーマットされることが可能であり,そしてCTSフレームは図6に示されるようにフォーマットされることが可能である。このメカニズムは802,11n(のみ)ネットワークにおいてあるいは他のネットワークにおいて使用可能である。
(中略)
【0033】
[使用例;高められたACK]
レガシーフレーム-ACK交換は,ここに記述されたように,高速制御メッセージングフォーマットにおいて書き改めることができるであろう。ACKは図8に示されるようにフォーマットされることが可能であろう。
【0034】
もし前に記されたようにインプリシットアドレシングi8機構を有する高速制御メッセージング使用される場合は、STA識別子は必要とされないであろう。もっとも単純なシナリオにおいて、ACKを指示する制御IDのみが必要とされ、そして図8に示される他のフィールドは除外されることができる。このフレームはレガシーACKの代わりに使用されることができ、そして即時のACKが要求される管理フレームとデータフレームを有するフレーム交換を含む、即時のACKを含む全てのフレーム交換における媒体のオーバーヘッドを減少させるであろう。」



(中略)


シ 「【0040】
今説明されたように,FCMフレームは無線ネットワークの改良された特性そして/あるいは追加の特徴を提供することが可能である。FCMフレームを処理する受信機がFCMフレームそれら自身に関する構造および代替案と同様に詳細に記述された。FCMフレームに対応して,送信機はこれらのFCMフレームを生成しそして送信するために使用されるであろう。かかる送信機は一般的にネットワーキングデバイス(networking device)の一部であり,ここに記載されたFCMフレームを発生するために,適切なPHYレイヤ論理,MACレイヤ論理などを含むであろう。勿論,FCM動作可能なネットワーキングデバイスは,フレームを発生できる送信機とフレームを受信できる受信機を多分結合するであろう。」

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例には,次の技術事項が記載されている。

(ア)上記シの記載によると,送信機は,受信機へ送信するためのFCMフレームを生成するから,FCMフレームを生成するための手段を含む装置が記載されていると認められるところ,上記ア,ウの記載によると,前記FCMフレームは,高速制御メッセージングフォーマットのフレームであるから,受信機への送信機による高速制御メッセージングフォーマットのフレームの送信のための装置であり,高速制御メッセージングフォーマットのフレームを生成するための手段を含む装置が記載されていると認められる。
そして,上記エの記載によると,無線ネットワークにおいて動作する局デバイスは,変調器を含むものであって,送信機を構成する装置が,局デバイスであることは,当業者の技術常識であることから,引用例には,受信機への送信機による高速制御メッセージングフォーマットのフレームの送信のための装置であり,高速制御メッセージングフォーマットのフレームを生成するための手段と,変調器と,を含む装置が記載されていると認められる。

(イ)上記イの記載によれば,高速制御メッセージングフォーマットのフレームは,802.11フォーマットを基準としたフレームであり,上記ウ,オの記載によれば,PLCPヘッダを含むフレームであるから,引用発明には,高速制御メッセージングフォーマットのフレームは,802.11フォーマットを基準としたフレームであり,PLCPヘッダを含むことが記載されていると認められる。

(ウ)上記カ,キの記載によると,PLCPヘッダは,MAC制御ビットフィールドを有するものであるところ,上記ケの記載によると,MAC制御ビットフィールドは,制御IDとそれに対応する制御パラメータから構成されることから,PLCPヘッダは,制御IDと制御パラメータを有するものと認められる。
そして,上記コ,サの記載によると,制御IDは,RTSフレーム,CTSフレーム,ACKフレーム等のフレームの種別を示し,また制御パラメータは,前記フレームの種別に対応したパラメータであると認められる。
そうすると,引用例には,PLCPヘッダは,フレームの種別を表す制御IDと,それに対応するパラメータとを有することが記載されていると認められる。

(エ)上記ク,サの記載によると,PLCPヘッダが有するパラメータは,AID等の目的地局のアドレスを含むパラメータであると認められる。
そして,目的地局のアドレスは,目的地局に対応する受信機のアドレスであることが,当業者の技術常識であるから,引用例には,PLCPヘッダが有するパラメータは,受信機のアドレスを含むパラメータであることが記載されていると認められる。

したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「受信機への送信機による高速制御メッセージングフォーマットのフレームの送信のための装置であって,
前記高速制御メッセージングフォーマットのフレームは,802.11フォーマットを基準としたフレームであり,PLCPヘッダを含み,
前記PLCPヘッダは,制御フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータとを有しており,
前記高速制御メッセージングフォーマットのフレームを生成するための手段と,
変調器と,を含み,
前記PLCPヘッダが有するパラメータは,受信機のアドレスを含むパラメータである,
装置」

(3)周知例の記載事項及び周知技術
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由で引用された,国際公開第2008/069245号(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

(ア)「[0012]
上述した超高速無線LANにおいて規定されているPHYフレームフォーマットは,図60に示したように,同期用のPreamble部と,以降のPSDU部分の変調方式・符号化率とPSDU長などを含むPLCP Header部と,データ部分であるPSDU部から構成される。また必要に応じてTail BitやPadが付加される構成である。さらに,PSDU部は,MAC Headerと実データ部分のMSDUと,MPDUの正誤を判定するFCS(Frame Check Sequence)から構成される。そのため,A-MSDUまたはA-MPDUが非常に構築しやすいフレームフォーマットとなっている。」

(イ)



イ 周知例2
原査定の拒絶の理由で引用された,David Davenport(GE Global Research),MedWiN Physical Layer Proposal,IEEE 802.15-09/0329r1,IEEE,2009年5月4日,インターネット<URL: https://mentor.ieee.org/802.15/dcn/09/15-09-0329-01-0006-medwin-physical-layer-proposal-documentation.doc>(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

(ア)「The PLCP header is the second main component of the PPDU (see Section 2.5). The purpose of this component is to convey the necessary information about the PHY and MAC parameters to aid in decoding of the PSDU at the receiver. The PLCP header can be further decomposed into a RATE field, a LENGTH field, a BURST MODE field, a header check sequence (HCS), BCH parity bits and reserved bits. The BCH parity bits are added in order to improve the robustness of the PLCP header. The PLCP header shall be transmitted using the given header data rate in the operating frequency band.
The PSDU is the last component of the PPDU (see Section 2.6). This component is formed by concatenating the MAC header with the MAC frame body and frame check sequence (FCS). The PSDU is then scrambled and optionally encoded by a BCH code. The PSDU shall be transmitted using any of the available data rates available in the operating frequency band.」(6ページ11行-19行)
(当審訳:「PLCPヘッダはPPDUの第2の主要構成要素である(セクション2.5参照)。この構成要素の目的は,受信機のPSDUの復号化を助けるためにPHYパラメータおよびMACパラメータに関する必要な情報を伝えることである。PLCPヘッダは,RATEフィールド,LENGTHフィールド,BURSTモードフィールド,ヘッダチェックシーケンス(HCS),BCHパリティビット,および予約ビットにさらに分けることができる。 BCHパリティビットは,PLCPヘッダのロバスト性を向上させるために追加される。PLCPヘッダは,動作周波数帯域の所定のヘッダーデータレートを使用して送信される。
PSDUはPPDUの最後の構成要素である(セクション2.6を参照)。この構成要素はMACヘッダとMACフレーム本体およびフレームチェックシーケンス(FCS)とを連結することにより形成される。そして,PSDUはスクランブルされ,BCHコードによって任意に符号化される。PSDUは,動作周波数帯域において利用可能なデータレートのいずれかを使用して送信される。」)

(イ)



上記周知例1,周知例2の記載によれば,以下の事項は本願の国際出願日前に周知であったといえる。(以下,「周知技術」という。)

「無線ネットワークの通信に用いられるフレームでは,MACヘッダをフレームのPSDUに格納する。」


(4)引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の送信機と受信機とは,それぞれ「送信エンティティ」「受信エンティティ」であることが明らかである。
そして,本願明細書の【0007】等の記載によれば,「制御フレーム」は,RTSやCTS,ACKフレームを含むものであって,引用発明の「高速制御メッセージングフォーマットのフレーム」も,RTS,CTS,ACKフレームとして用いられるものであるから,引用発明の「高速メッセージングフォーマットのフレーム」は,本願補正発明の「制御フレーム」に対応する。
そうすると,引用発明の「受信機への送信機による高速制御メッセージングフォーマットのフレームの送信のための装置」は,本願補正発明と「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置」との点で共通する。

イ IEEE 802.11等に規定されたフォーマットにおけるPLCPヘッダは,変調方式などの物理層に関する情報を,送信側から受信側に転送する目的で用いられるヘッダフィールドであることが,当業者の技術常識であるから,引用発明の「PLCPヘッダ」も,「物理層に関する情報を,送信側から受信側に転送する目的で用いられるヘッダフィールド」であるといえる。
そうすると,引用発明の「高速制御メッセージングフォーマットのフレームは,802.11フォーマットを基準としたフレームであり,PLCPヘッダを含」むことは,本願補正発明と,「制御フレームは,物理層に関する情報を転送することを目的とするヘッダフィールドを含」むことで共通する。

ウ 本願明細書の【0018】,【0073】-【0076】,図3A-3D等の記載によれば,本願補正発明の「MAC層のヘッダに関する情報」は,RTS,CTS,ACKなどの制御フレームタイプ,及びそれに対応するパラメータを含むものであって,引用発明の「フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータ」も,RTSフレーム,CTSフレーム,ACKフレーム等の種別を表すID,及びそれに対応するパラメータであるから,引用発明の「制御フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータ」は,本願補正発明の「MAC層のヘッダに関する情報」に対応する。
そして,通信フレームのヘッダフィールドに,該フィールドを構成する情報を挿入することは,通信フレームを生成するために,当然に行われることであるから,引用発明の,高速制御メッセージングフォーマットのフレームを生成するための手段は,ヘッダフィールドである「PLCPヘッダ」に,該フィールドを構成する「制御フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータ」を挿入するユニットであると認められる。
したがって,引用発明の「高速制御メッセージングフォーマットのフレームを生成するための手段」と,本願補正発明とは,「物理層に関するヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニット」で共通する。

エ IEEE 802.11等に規定されたフォーマットのフレームを送信する際には,「PLCPヘッダ」を変調器によって,物理層の変調方式で変調することが,当業者の技術常識であるところ,引用発明の変調器は,ヘッダフィールドである「PLCPヘッダ」を変調するものであることは明らかであるから,「物理層に関する変調技術を使用して前記ヘッダフィールドを変調する変調器」であると認められる。

オ 本願補正発明の「前記MAC層のヘッダに関する前記挿入された情報」は,「物理層に関するヘッダフィールドへ」挿入された「MAC層のヘッダに関する情報」であるから,上記ウのとおり,引用発明のPLCPヘッダに挿入された「制御フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータ」は,本願補正発明の「前記MAC層のヘッダに関する前記挿入された情報」に対応する。
そして,本願明細書の【0072】等の記載によれば,本願補正発明の「受信エンティティに関する1つの識別子」は,受信エンティティに関するAIDなどの簡易化されたMACアドレスを含むものであり,引用発明の「受信機のアドレス」も,受信エンティティに関するAIDを含むものである。
そうすると,引用発明の「制御フレームの種別を表す制御IDとそれに対応するパラメータ」と,本願補正発明とは,「前記MAC層のヘッダに関する前記挿入された情報は,前記受信エンティティに関する1つの識別子を少なくとも含む」ことで共通する。

したがって,本願補正発明と引用発明とは,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置であって,前記制御フレームは,物理層に関する情報を転送することを目的とするヘッダフィールドを含み,
前記物理層に関する前記ヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニットと,
前記物理層に関する変調技術を使用して前記ヘッダフィールドを変調するための変調器と
を含み,
前記MAC層のヘッダに関する前記挿入された情報は,前記受信エンティティに関する1つの識別子を少なくとも含む,
ことを特徴とする装置。」

[相違点1]
一致点の「前記物理層に関する前記ヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニット」に関し,本願補正発明は,「MAC層のヘッダは制御フレームに挿入されない」のに対して,引用発明は,「MAC層のヘッダ」が制御フレームに挿入されないことを特定していない点。

[相違点2]
本願補正発明は,「前記受信エンティティによって,前記受信エンティティの識別子と,前記受信エンティティに関する1つの識別子との間の対応が検出されない場合,前記受信エンティティによって受信される前記MAC層のヘッダに関する情報は前記受信エンティティのMAC層に送信されない」のに対して,引用発明は「受信エンティティ」に関する当該事項について特定していない点。

(5)判断
上記相違点1について検討する。
本願明細書【0018】等の記載によれば,制御フレームにおける「MAC層のヘッダ」であるMACヘッダは,制御フレームのタイプおよびそのパラメータを転送するためのものであるから,引用発明の「PLCPヘッダ」は,「MAC層のヘッダ」と同じ目的で用いられるものであると認められるところ,同じ目的の構成要素を重複して備える必要がないことは,当業者にとって自明である。
また,上記周知技術のとおり「無線ネットワークの通信に用いられるフレームにおいては,MACヘッダは,PSDUに格納する」ことが一般的であると認められるが,上記3(1)ア,オの記載から,引用発明の「高速制御メッセージングフォーマットのフレーム」は,そのようなMACヘッダを格納すべきPDSUを備えないことも明らかである。
そうすると,引用発明の送信機において,「制御フレーム」が「MAC層ヘッダ」を有さないものとし,そのために「MAC層のヘッダは前記制御フレームに挿入」しないことは,当業者にとって格別困難なことではない。
よって,引用発明の「前記物理層に関する前記ヘッダフィールドへのMAC層のヘッダに関する情報の挿入のためのユニット」に関して,「MAC層のヘッダは制御フレームに挿入されない」ものとすることは,当業者が容易に想到できたことである。

上記相違点2について検討する。
本願補正発明は「受信エンティティへの送信エンティティによる制御フレームの送信のための装置」であって,受信エンティティとは異なるものであるところ,「前記受信エンティティによって,前記受信エンティティの識別子と,前記受信エンティティに関する1つの識別子との間の対応が検出されない場合,前記受信エンティティによって受信される前記MAC層のヘッダに関する情報は前記受信エンティティのMAC層に送信されない」との事項は,受信エンティティを特定するものではあるが,本願補正発明の「装置」の構造、機能等を特定するものではない。
そうすると,引用発明と本願補正発明とは,記載上、表現上の相違があるものの、構造、機能等に差異はない。
よって,上記相違点2は,本願補正発明と引用発明とおいて,実質的な相違点ではない。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明,及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,本願補正発明は,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。




4 むすび
上記のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,仮に,本件補正を特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって,本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年1月5日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年6月2日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項4に記載された事項により特定される前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものと認める。


2 原査定の拒絶の理由
原査定は,平成29年3月17日付け拒絶理由の理由3によって拒絶をすべきものとするものであって,当該理由3の概要は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,本願発明の請求項4に係る発明は,以下の引用例1,2及び3(周知技術)から容易に発明をすることができたとするものである。

1 特表2009-508451号公報
2 国際公開第2008/069245号
3 David Davenport(GE Global Research),MedWiN Physical Layer Proposal,IEEE 802.15-09/0329r1,IEEE,2009年5月4日,インターネット<URL: https://mentor.ieee.org/802.15/dcn/09/15-09-0329-01-0006-medwin-physical-layer-proposal-documentation.doc>


3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3及びその記載事項は、上記第2[理由]3(2),及び上記第2[理由]3(3)の項に記載したとおりである。


4 対比・判断
本願発明は,本件補正後の発明から,本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,相違点は,上記第2[理由]3(4)の相違点1であるところ,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した本件補正発明が,上記第2[理由]3の「独立特許要件」の項で検討したとおり,引用例1に記載された発明(以下,「引用発明」という。),及び引用例2ないし3に記載された周知技術(以下,「周知技術」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-06 
結審通知日 2019-02-08 
審決日 2019-02-19 
出願番号 特願2015-515572(P2015-515572)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 脇岡 剛
倉本 敦史
発明の名称 物理層制御フレームの短縮  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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