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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25F
管理番号 1353094
審判番号 不服2018-10802  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2019-07-23 
事件の表示 特願2014-108351「電動工具用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月14日出願公開、特開2015-223638、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月26日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年10月31日付け:拒絶理由通知
平成30年 1月12日 :意見書の提出
平成30年 4月23日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 8月 7日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
平成30年11月30日 :上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?4に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
本願請求項7に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
本願請求項8に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明並びに引用文献2、3及び4に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-255962号公報
2.特開2013-184266号公報
3.特開2014-21538号公報
4.特開2013-255965号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

本件補正によって、出願時の請求項1の「設定変更が可能な動作条件・・・記憶部」という記載の前に「前記外部機器から送信され、前記通信部にて受信された、前記動作条件の変更要求に従い」と限定を付加する補正(以下、「本件補正1」という。)がなされた。
また、出願時の請求項1の「前記動作条件の内、・・・記憶部と、外部機器との間で通信を行う通信部と、」という記載について、「記憶部」と「通信部」の説明の順番を入れ替え、「外部機器との間で通信を行う通信部と、前記動作条件の内、・・・記憶部と、」とする補正(以下、「本件補正2」という。)がなされた。
これら補正は特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものであるか、また、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。
本件補正1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「設定変更が可能な動作条件」について、限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、本件補正1は、当初明細書の段落【0010】や出願時の請求項2に記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、本件補正2は、本件補正1により「記憶部」に関する説明に「通信部」なる記載を含むこととなったため、「記憶部」と「通信部」の説明の順番を入れ替えたものであり、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、本件補正2は、単に記載の順番を入れ替えたのみであるから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年8月7日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である(下線は請求人が付与)。

「【請求項1】
電動工具、該電動工具に装着されるバッテリ、又は、該バッテリを充電する充電器にて構成される電動工具用装置であって、
予め設定された動作条件に従い電動工具用装置の動作を制御する制御部と、
外部機器との間で通信を行う通信部と、
前記動作条件の内、前記外部機器から送信され、前記通信部にて受信された、前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件を表す設定可能項目及び該動作条件の設定可能範囲が予め記憶された記憶部と、
を備え、前記制御部は、前記通信部にて受信された前記外部機器からの要求に従い、前記記憶部から前記設定可能項目及び設定可能範囲を読み出し、前記通信部を介して前記外部機器に送信することを特徴とする電動工具用装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通信部にて前記外部機器から送信された前記動作条件の変更要求が受信されると、該変更要求が、前記記憶部に記憶された設定可能項目及び設定可能範囲に対応するか否かを判断し、前記変更要求が前記設定可能項目及び設定可能範囲に対応する場合には、当該変更要求に従い前記動作条件を設定変更し、当該変更要求が前記設定可能項目及び設定可能範囲に対応しない場合には、前記動作条件の設定変更を禁止、または、当該変更要求を修正して設定変更、することを特徴とする請求項1に記載の電動工具用装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記変更要求が、前記記憶部に記憶された設定可能項目に対応していて前記設定可能範囲外にある場合には、当該変更要求に従い、前記動作条件を前記設定可能範囲内で前記変更要求に最も近い上限値若しくは下限値に設定することを特徴とする請求項2に記載の電動工具用装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変更要求が前記設定可能項目及び設定可能範囲の少なくとも一方に対応しない場合には、その旨を、報知部を介して報知することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動工具用装置。
【請求項5】
前記記憶部には、前記設定可能項目及び前記設定可能範囲に加え、前記動作条件を設定変更する際の最小単位である設定可能ステップ値が記憶されており、
前記制御部は、前記外部機器からの要求に従い、前記設定可能項目及び設定可能範囲を前記外部機器に送信する際には、前記設定可能ステップ値も送信することを特徴とする請求項1?請求項4の何れか1項に記載の電動工具用装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記通信部にて前記外部機器から送信された前記動作条件の変更要求が受信され、該変更要求に従い前記動作条件を設定変更する際、該変更要求により指定された前記動作条件の変更値が前記設定可能ステップ値に対応しない場合には、当該変更値を前記設定可能ステップ値に対応した変更値に補正し、前記動作条件を設定変更することを特徴とする請求項5に記載の電動工具用装置。
【請求項7】
前記制御部は、当該電動工具用装置の動作制御時に、前記通信部にて前記外部機器から送信された前記動作条件の変更要求が受信されると、前記電動工具用装置の動作を停止させることを特徴とする請求項1?請求項6の何れか1項に記載の電動工具用装置。
【請求項8】
前記通信部は、前記外部機器との間で近接無線通信を行うように構成されていることを特徴とする請求項1?請求項7の何れか1項に記載の電動工具用装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同)。

ア 段落【0043】
「図1及び図2に示すように、電子パルスドライバ1は、ハウジング2と、モータ3と、ハンマ部4と、アンビル部5と、インバータ回路6と、制御部7と、から主に構成されている。ハウジング2は樹脂製であって電子パルスドライバ1の外郭を成しており、略筒状の胴体部21と、胴体部21から延出されるハンドル部22と、ハンドル部22に接続する基板収容部23と、から主に構成されている。胴体部21は、本発明の第1ハウジングに相当し、基板収容部23が本発明の第2ハウジングに相当する。ハンマ部4及びアンビル部5は、本発明の駆動部に相当する。電子パルスドライバ1は、本発明の動力機器の一例である。」

イ 段落【0048】
「基板収容部23には、電子パルスドライバ1を制御する制御部7が設けられている。基板収容部23には、電池26が着脱可能に設けられている。電池26は、基板収容部23の左右方向の両側面に設けられた着脱スイッチ23Aにより基板収容部23に着脱される。・・・」

ウ 段落【0055】
「制御部7は、制御回路基板71と、制御回路基板71の上面に設けられたマイコン83と、制御回路基板71の下面に設けられた接続部72と、を主に備えている。接続部72は、制御回路基板71の下面から下方に突出するように設けられていて、通信ケーブル8(図6)を接続可能である。図3及び図4に示すように、接続部72は、蓋73及び接続端子74を備えており、接続端子74は蓋73によって開閉可能に構成されている。締結作業時は、図3に示すように、蓋73で接続端子74を閉塞することで、接続端子74に粉塵等が付着することを防止できる。外部機器9との接続時には、図4に示すように、蓋73を開けることで通信ケーブル8を接続端子74と接続することができる。接続部72は、本発明の通信手段に相当する。」

エ 段落【0057】
「制御部7は、電池26に接続されると共にトリガ25、インバータ回路6、モード切替スイッチ27A、モード表示ランプ27B、正逆切替レバー28、接続端子74に接続されている。また、制御部7は、電流検出回路75と、スイッチ操作検出回路76と、印加電圧設定回路77と、回転方向設定回路78と、モード設定回路79と、回転子位置検出回路80と、回転数検出回路81と、LED点灯回路82と、を備えている。マイコン83は、電子パルスドライバ1を制御するための制御モード及び各種パラメータを記憶するプログラム格納部83Aを備えている。プログラム格納部83Aは、本発明の記憶部に相当する。」

オ 段落【0066】
「通信ケーブル8は、図6に示すように、通信ケーブル8の一端に設けられ接続端子74に接続可能な端子ボックス85と、端子ボックス85に収容された通信変換回路86と、通信ケーブル8の他端に設けられ外部機器9と接続可能な外部機器接続部87とを備えている。通信変換回路86は、電子パルスドライバ1から出力された通信信号を外部機器9でも読取可能な信号に変換するための回路である。外部機器接続部87は、例えば、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)やシリアルケーブル等である。」

カ 段落【0067】
「外部機器9は、表示部91と、入力部92と、外部機器接続部87と接続可能な被接続部93とを備えている。外部機器9は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)であって、図示せぬCPU、ROM、RAM、等を備えている。外部機器9は、通信ケーブル8を介して電子パルスドライバ1と接続することにより、電子パルスドライバ1と通信することができる。電子パルスドライバ1が外部機器9と接続されているときは、電池26は取り外された状態であるが、電子パルスドライバ1には通信ケーブル8を介して外部機器9から電源が供給されている。従って、モード切替パネル27のモード表示ランプ27Bは、現在選択されている制御モードが点灯した状態である。外部機器9には、電子パルスドライバ1の制御モードを設定するためのアプリケーションソフトウェアがROMに記憶されており、当該ソフトウェアを起動すると、図7に示すウィンドウ94が表示される。」

キ 段落【0074】
「読出ボタン95Bは、外部機器9のROM内に保存された各種パラメータを読み出すためのボタンである。設定値読込ボタン95Cは、電子パルスドライバ1に保存されている各種パラメータを読み込むためのボタンである。設定値読込ボタン95Cを押下すると、領域96-100に電子パルスドライバ1に保存されているパラメータが表示される。具体的には、モード表示ランプ27Bで選択されている制御モードのパラメータが、ウィンドウ94に表示される。保存ボタン95Dは、領域96,98,99の各パラメータを外部機器9のROMに保存するためのボタンである。設定送信ボタン95Eは、領域96、98,99の各パラメータを電子パルスドライバ1に送信するためのボタンである。設定送信ボタン95Eが押下されると、モード表示ランプ27Bで選択されている制御モードの各パラメータがウィンドウ94に表示されているパラメータに更新される。

ク 段落【0087】
「このような構成によると、制御モードを構成するパラメータを外部機器9から制御部7にアクセスして設定可能であるため、作業内容に応じた最適なパラメータを設定することで、ユーザ自身が様々な作業に適した特有の制御モードを容易に作り出すことが可能となる。」

ケ 図6


コ 図7


(2)上記(1)での記載から,引用文献1には,次の技術的事項が開示されていると認められる。

ア 上記(1)ア及びイには、電池26が着脱可能に設けられている電子パルスドライバ1が開示されている。

イ 上記(1)イ、ウ及びクには、制御モードを構成するパラメータに従い、電子パルスドライバ1の動作を制御する制御部7が開示されている。

ウ 上記(1)ウには、外部機器9との間で通信を行う接続部72が開示されている。

エ 上記(1)ウ及びキには、制御モードのパラメータは、外部機器9から送信され、接続部72にて受信されること、外部機器9での設定送信ボタン95Eの操作に従い、パラメータの設定変更が可能なことが開示されている。また、上記(1)エには、パラメータを記憶するプログラム格納部83Aが開示されている。
以上をまとめると、上記(1)ウ、エ及びキには、制御モードのパラメータの内、外部機器9から送信され、接続部72にて受信された、設定送信ボタン95Eの操作に従い設定変更が可能なパラメータが記憶されたプログラム格納部83Aが開示されている。

オ 上記(1)キには、外部機器9の設定値読込ボタン95Cの操作に従い、パラメータが読み出され、外部機器9に送信されることが開示されている。また、上記(1)クから、電子パルスドライバ1内で外部機器9に上記送信する主体は制御部7であると読み取れる。上記(1)ウから、電子パルスドライバ1内で、設定値読込ボタン95Cの操作が受信されるのは、接続部72であり、また、パラメータは接続部72を介して外部機器9に送信されることは自明である。上記(1)エから、パラメータが読み出されるのはパラメータを記憶するプログラム格納部83Aであることは自明である。
以上をまとめると、上記(1)ウ、エ、キ及びクには、制御部7は、接続部72で受信された外部機器9の設定値読込ボタン95Cの操作に従い、プログラム格納部83Aからパラメータを読み出し、接続部72を介して外部機器9に送信することが開示されている。

(3)上記(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「電池26が着脱可能に設けられている電子パルスドライバ1であって、
制御モードを構成するパラメータに従い電子パルスドライバ1の動作を制御する制御部7と、
外部機器9との間で通信を行う接続部72と、
制御モードのパラメータの内、外部機器9から送信され、接続部72にて受信された、設定送信ボタン95Eの操作に従い設定変更が可能なパラメータが記憶されたプログラム格納部83Aと、
を備え、制御部7は、接続部72で受信された外部機器9の設定値読込ボタン95Cの操作に従い、プログラム格納部83Aからパラメータを読み出し、接続部72を介して外部機器9に送信する電子パルスドライバ1。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 段落【0021】
「以下、本発明の第1の実施形態に係る電動工具の一例である電子パルスドライバ1及び電子パルスドライバ1の動作モードである締付トルク特性を変更する外部機器の一例であるPC(パソコン)10との構成(電動工具の動作モード変更システム)について、図1から図11に基づき説明する。」

イ 段落【0022】
「図1に示すように、電子パルスドライバ1は、本体1A及び電池24から構成されている。本体1Aは、ハウジング2と、モータ3と、ハンマ部4と、アンビル部5と、インバータ回路基板6と、制御部7と、回転位置検出素子(ホール素子)8(図2)から主に構成されている。ハウジング2は樹脂製であって電子パルスドライバ1の外郭を成しており、略筒状の胴体部21と、胴体部21から延出されるハンドル部22とから主に構成されている。」

ウ 段落【0033】
「制御部7は、ハンドル部22内の電池24近傍位置に配置された基板に搭載されており、電池24に接続されると共にトリガ25、インバータ回路基板6、図示せぬスイッチ、及び表示部26Aに接続されている。また、図2に示すように、制御部7は、電流検出回路71と、スイッチ操作検出回路72と、印加電圧設定回路73と、回転方向設定回路74と、回転子位置検出回路75と、回転角度検出回路76と、演算部78と、制御信号出力回路79と、表示回路部80と外部接続端子81とを備えている。外部接続端子81は、外部機器であるPC10(図4)を本体1Aに接続するための端子であり、ハンドル部22の電池24に対向する部分に設けられている。PC10の本体1Aへの接続は、電池24を本体1Aから外した状態でのみすることができる。これは、工具使用時に設定変更ができないようにするためである。」

エ 段落【0041】
「演算部78は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)と、データを記憶するための書き換え可能なEEPROM80と、タイマとを備えている。EEPROM80には、締付トルクの基準値として締付トルクの最大値及び最小値と、最大値と最小値との間を所定数等分割して得られる複数の規定値が記憶される。尚規定値の内の最小の規定値は基準値における最小値と同値であり、最大の規定値は基準値における最大値と同値である。これら最大値、最小値、複数の規定値をまとめて設定値と定義する。すなわち、EEPROM80には、締付トルクの最大値及び最小値と、最大値と最小値との間のトルク領域に応じて分割される分割数に応じたトルク値が記憶される。詳細は後述するが、作業者は、締付トルクの最大値及び最小値を設定(決定)し、その後、そのトルク領域を何等分に分割するか(段数)を決定すれば複数の規定値が算出できる。例えば、トルクの最大値5Nm(基準値)、最小値1Nm(基準値)、段数5とした場合を考えると、トルク領域は1?5であり、等分割数が5であるから、複数の規定値(Nm)は、1、2、3、4、5となる。言い換えると、トルク領域を段数で除した値が複数の規定値の最小値となり、その整数倍が複数の規定値となる。」

オ 段落【0044】
「PC10は公知のパソコンであり、図4に示されるように、ケーブル10Aで電子パルスドライバ1と接続されている。PC10においては、図6に示されるように、画面上に動作モード設定ウィンドウ11が表示されている。」

カ 段落【0045】
「動作モード設定ウィンドウ11には、コネクトボタン11Aと、既存設定値表示領域11Bと、設定値入力領域11Cと、設定値表示領域11Dと、設定値読込ボタン11Eと、メッセージ表示領域11Fと、設定値送信ボタン11Gとが主に表示されており、上述の動作モードである最大値等の設定値を設定している。コネクトボタン11Aは、PC10と電子パルスドライバ1とがケーブル10Aで接続された後にクリックされることにより、PC10で電子パルスドライバ1を認識している。既存設定値表示領域11Bは、現在工具内のEEPROM80で記憶している設定値を表示している。設定値入力領域11Cは、新たに書き換える設定値を入力する領域である。設定値表示領域11Dは、設定された新たな設定値を表示する領域である。設定値読込ボタン11Eは設定値入力領域11Cに新たな設定値が入力された後にクリックすることにより、入力された値を設定値として認識している。メッセージ表示領域11Fは、動作モード設定ウィンドウ11の諸状態に対する操作者への要求等を表示している。設定値送信ボタン11Gは、クリックされることにより設定値表示領域11Dに表示されている値を電子パルスドライバ1に送信し、EEPROM80に記憶させている。」

キ 段落【0046】
「上記構成の電子パルスドライバ1及びPC10において、動作モードを設定する工程について図5のフローチャート(基準変更手段)及び動作モード設定ウィンドウ11に基づき説明する。まず、電子パルスドライバ1とPC10とを接続した状態で、S01に進み、コネクトボタン11AをクリックしてEEPROM80に記憶されている設定値を読み込む。S02において電子パルスドライバ1から設定値の返信が無い場合(S02:NO)、具体的には所定時間内(1秒以内)に電子パルスドライバ1が認識されない場合には、S03へ進み、通信異常処理として、メッセージ表示領域11Fに「機器の接続を確信してください」と表示し、S01へと戻る。S02において返信がある場合(S02:YES)には、既存設定値表示領域11BにEEPROM80から読みだした値を表示し、図7のように、メッセージ表示領域11Fに「設定値を入力して下さい」と表示しつつS04へとすすむ。」

ク 段落【0047】
「S04では設定値入力領域11Cに最大値を入力し、次にS05へ進んで最小値を入力し、次にS06へ進んで規定値の元になる動作段数を入力する。最大値及び最小値は、10?1Nmの間で設定可能であり、動作段数は、最大10段である。そしてS07へ進み、設定値読込ボタン11Eをクリックして設定値入力領域11Cに入力された値に基づき、設定値表示領域11Dに表示可能か(設定可能か)を判断する。ここで表示不能(設定不能)と判断された場合(S07:NO)、具体的には、図7、図8に示されるように、設定可能な値より大きな最大値を入力した場合や、最小値より最大値を小さくした場合、或いは最大動作段数を超えて入力した場合には、S08へと進み、メッセージ表示領域11Fに「設定可能範囲を超えています」、「設定値を確認して下さい」と表示し、S06へと戻る。また最大値と最小値とが同値の場合に、“1”以外の値を動作段数として入力すると、メッセージ表示領域11Fに「この場合段数は変更できません」と表示され、段数の表示が“1”に戻される。逆に最大値と最小値とが異なる場合に動作段数を“1”として入力すると、メッセージ表示領域11Fに「設定値は2以上が必要です」と表示され、入力値である“1”は反映されない。」

ケ 図8


(2)上記(1)での記載から,引用文献2には,次の技術的事項が開示されていると認められる。

ア 上記(1)ア及びイには、本体1A及び電池24にて構成される電動工具が開示されている。

イ 上記(1)イには、電動工具の駆動を制御する制御部7が開示されている。

ウ 上記(1)ウには、外部機器との間で通信を行う外部接続端子81が開示されている。

エ 上記(1)エには、締付トルクの最大値及び最小値と、最大値と最小値との間のトルク領域に応じて分割される分割数に応じたトルク値が記憶される電動工具内のEEPROM80が開示されている。

オ 上記(1)エ、ク及びケから、締付トルクの最大値及び最小値は、10?1Nmの間で設定可能であり、最大値と最小値との間のトルク領域に応じて分割される分割数は最大10段で設定可能であることが開示されている。

カ 上記(1)カには、外部機器での入力により変更された設定値が、設定値送信ボタン11Gのクリックにより電動工具に送信され、電動工具内のEEPROM80で記憶されることが開示されている。

キ 上記(1)オ、カ及びキには、外部機器のコネクトボタン11Aのクリックにより、電動工具内のEEPROM80に記憶されている設定値が読み込まれ、外部機器の画面に表示されることが開示されている。

(3)上記(2)から、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。

「本体1A及び電池24にて構成される電動工具であって、
電動工具の駆動を制御する制御部7と、
外部機器との間で通信を行う外部接続端子81と、
を備え、
電動工具の締付トルクの最大値及び最小値は、10?1Nmの間で設定可能であり、最大値と最小値との間のトルク領域に応じて分割される分割数は最大10段で設定可能であること、
外部機器での入力により変更された上記設定値が、設定値送信ボタン11Gのクリックにより電動工具に送信され、電動工具内のEEPROM80で記憶されること、
外部機器のコネクトボタン11Aのクリックにより、電動工具内のEEPROM80に記憶されている設定値が読み込まれ、外部機器の画面に表示されること。」

3.その他の文献について
原査定の拒絶の理由において、請求項7で特定された事項を示唆するものとして引用された引用文献3の段落【0028】には、外部機器から送信された動作条件の変更要求が受信されると、電動工具用装置の運転を禁止することが記載されている。
また、原査定の拒絶の理由において、請求項8で特定された事項を記載するものとして引用された引用文献4の段落【0018】には、電動工具用装置の通信部が、外部機器との間で近接無線通信を行うことが記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「電池26」、「電子パルスドライバ1」、「制御モードを構成するパラメータ」、「制御部7」、「外部機器9」、「接続部72」、「プログラム格納部83A」は、それぞれ、本願発明1における「バッテリ」、「電動工具」及び「電動工具用装置」、「動作条件」、「制御部」、「外部機器」、「通信部」、「記憶部」に相当する。

したがって、引用発明における「電池26が着脱可能に設けられている電子パルスドライバ1」は、本願発明1における「電動工具、該電動工具に装着されるバッテリ、又は、該バッテリを充電する充電器にて構成される電動工具用装置」に相当する。

引用発明における「制御モードを構成するパラメータ」は、予め設定されることは自明であるので、本願発明1における「予め設定された動作条件」に相当する。

引用発明における「設定送信ボタン95Eの操作に従い設定変更が可能な」構成は、本願発明1における「動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な」構成に相当する。

引用発明における「記憶された」は、予め記憶されたことは自明であるので、本願発明1における「予め記憶された」に相当する。

引用発明における「設定送信ボタン95Eの操作に従い設定変更が可能なパラメータ」と本願発明1の「前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件を表す設定可能項目及び該動作条件の設定可能範囲」は、「前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件に関連する情報」という点で一致する。

引用発明における「外部機器9の設定値読込ボタン95Cの操作」は、本願発明1における「前記外部機器からの要求」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点1があるといえる。

(一致点)
「電動工具、該電動工具に装着されるバッテリ、又は、該バッテリを充電する充電器にて構成される電動工具用装置であって、
予め設定された動作条件に従い電動工具用装置の動作を制御する制御部と、
外部機器との間で通信を行う通信部と、
前記動作条件の内、前記外部機器から送信され、前記通信部にて受信された、前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件に関連する情報が予め記憶された記憶部と、
を備え、前記制御部は、前記通信部で受信された前記外部機器からの要求に従い、前記記憶部から前記動作条件に関連する情報を読み出し、前記通信部を介して前記外部機器に送信する電動工具用装置。」

(相違点1)
動作条件に関連する情報が、本願発明1は、「前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件を表す設定可能項目及び該動作条件の設定可能範囲」であるのに対して、引用発明は、動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件である点。

(2)相違点1についての判断
引用文献2には、外部機器の操作者が決定できる締付トルクの最大値及び最小値について記載されている(段落【0045】及び図8等参照)ものの、その最大値や最小値は、操作者が決定したものであり、「設定可能範囲」すなわち、電動工具自体の性能等により機械的に決定されている条件とは異なる。
また、「設定可能範囲」について、引用文献2の段落【0047】には「最大値及び最小値は、10?1Nmの間で設定可能であり、動作段数は、最大10段である」という記載があるものの、当該「10?1Nm」や「最大10段」が、引用文献2記載の電動工具内の記憶部(EEPROM80)に記憶されていて、それを外部機器が読み出したかどうかは明らかでない。
なお、原査定において、電動工具自身に設定可能項目及び設定可能範囲を記憶しておくことについては、引用文献2に示唆されているとの判断がされているが、上述のとおり、引用文献2では、上記「10?1Nm」や「最大10段」がどのように設定されているかは明らかでない。

それに対して、本願発明1では、工具側で動作条件の設定可能範囲を記憶していて、外部機器がそれを読み出して、動作条件を変更できる構成とすることにより、「動作条件を設定変更するには、使用者は、設定可能項目や設定可能範囲を把握している必要がある。そして、このためには、電動工具のマニュアルや製造会社のホームページ等で設定可能項目や設定可能範囲を調べる必要があり、動作条件設定前の準備が面倒であるという問題があった。」(本願明細書の段落【0004】参照)という従来の課題を解決するものであるとされている。

以上のように、引用文献2には、工具側で動作条件の設定可能範囲を記憶していて、外部機器がそれを読み出して、動作条件を変更する旨の記載は無いこと、また、引用文献3及び4のいずれの文献にも当該記載は無いことに鑑みれば、引用発明に接した当業者が、電動工具用装置の記憶部に「設定変更が可能な動作条件を表す設定可能項目及び該動作条件の設定可能範囲が予め記憶され」る構成を採用し、上記相違点1に係る構成とする動機付けを認めることはできない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項等に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?8について
本願発明2?8も、本願発明1を引用するものであり、本願発明1の電動工具用装置の「前記動作条件の内、前記外部機器から送信され、前記通信部にて受信された、前記動作条件の変更要求に従い設定変更が可能な動作条件を表す設定可能項目及び該動作条件の設定可能範囲が予め記憶された記憶部」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3?4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
補正後の請求項1は引用発明と上記相違点1を有し、また、補正後の請求項2?8についても、補正後の請求項1を引用するものであり、上記相違点1を有するものとなった。
そして、上記相違点1は、原査定における引用文献1?4のいずれにも記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1?8は、当業者であっても、原査定における引用文献1?4に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-10 
出願番号 特願2014-108351(P2014-108351)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須中 栄治  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 齋藤 健児
栗田 雅弘
発明の名称 電動工具用装置  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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