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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
管理番号 1353112
異議申立番号 異議2018-700653  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-06 
確定日 2019-05-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6275107号発明「吸水性樹脂」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6275107号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6275107号の請求項1ないし3、5ないし9に係る特許を維持する。 特許第6275107号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許に関する出願は、平成23年9月2日(優先権主張 平成22年9月6日(以下「本件優先日」という。) 日本国受理)を国際出願日とする出願(特願2012-532962号)の一部を平成27年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月19日にその特許権が登録設定され、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、同年8月6日に、株式会社日本触媒(以下「申立人」という。)から特許異議の申立てがされ、平成30年11月7日付けで取消理由が通知され、平成31年1月8日に訂正の請求(この訂正の請求を「本件訂正請求」といい、その訂正内容を「本件訂正」という。)がされるとともに特許権者からの意見書(以下「特許権者意見書」という。)が提出され、本件訂正請求に対して同年2月21日に申立人からの意見書(以下「申立人意見書」という。)が提出されたものである。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前、設定登録時の特許請求の範囲は以下のとおりである。なお、分説記号A?N及びE’は当審で付した。
「【請求項1】
A アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、
B 中位粒子径(d)が50?600μmの
C 1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、
D 該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、
E 且つ、中位粒子径(D)が390?2000μmであり、
F 粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、
G 衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上、である、吸水性樹脂。
【請求項2】
A アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、
B 中位粒子径(d)が50?600μmの
C 1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、
D 該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、
E’ 且つ、中位粒子径(D)が100?2000μm(200?400μmを除く)であり、
F 粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、
G 衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上、である、吸水性樹脂。
【請求項3】
H 吸水性樹脂の粒子径の均一度が1.0?2.2である請求項1又は2に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
I 流動性指数が70?200で、且つ繊維への固着性指数が50?100である請求項1?3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項5】
J 1次粒子が、曲面から構成される形状である請求項1?4のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
K 吸水能保持率が84%以上である、請求項1?5のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
L 粉体の流動性指数が110以上である、請求項1?6のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項8】
M 請求項1?7のいずれかに記載の吸水性樹脂と親水性繊維を配合してなる吸収体。
【請求項9】
N 請求項8に記載の吸収体を液体透過性シートと液体不透過性シートで挟持してなる吸収性物品。」
2 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項を含むものである。当審にて訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」とあるのを、
「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、」とあるのを、
「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上」とあるのを、
「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に
「アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」とあるのを、
「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に
「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、」とあるのを、
「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に
「衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上」とあるのを、
「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び請求項5?9も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3のいずれかに記載の」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?9も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3及び5のいずれかに記載の」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7?9も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3、5及び6のいずれかに記載の」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8?9も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれかに記載の」とあるのを、「請求項1?3及び5?7のいずれかに記載の」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する)。
3 訂正要件について
(1)一群の請求項についての判断
ア 訂正前の請求項1及び3?9について、請求項3?8はそれぞれ請求項1を引用し、かつ、請求項9は請求項8を引用しているものであって、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び3?9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 同様に、訂正前の請求項2及び3?9について、請求項3?8はそれぞれ請求項2を引用し、かつ、請求項9は請求項8を引用しているものであって、訂正事項4?6によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2及び3?9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
ウ 前記ア及びイの、両者の一群の請求項はいずれも請求項3?9を含むことから、これらの一群の請求項は組み合わされて、訂正前の請求項1?9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の請求項1に係る特許発明は、1次粒子について、「アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの一次粒子」であることを特定している。これに対して、訂正後の請求項1は、「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの一次粒子」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における一次粒子のアスペクト比を更に限定するものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項1に記載された「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3及び5?9に係る発明における1次粒子のアスペクト比を更に限定するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「アスペクト比が1.1?2.2」が「アスペクト比が1.4?2.2」に減縮されるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0033】及び段落【0108】に掲載の【表1】の実施例2等の記載に基づいて導き出される構成といえる。すなわち、段落【0033】には、「1次粒子のアスペクト比は1.1?200であり・・・さらに好ましくは1.4?50、特に好ましくは1.6?30である。」との記載がなされており、上記【表1】には、実施例2において1次粒子のアスペクト比が「1.4」であることが示されていることから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものといえる。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の請求項1に係る特許発明は、粒子衝突試験後の粒子径保持率について、「82%以上」であることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における粒子衝突試験後の粒子径保持率を更に限定するものである。すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項1に記載された「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3、5?9に係る発明における粒子衝突試験後の粒子径保持率を更に限定するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、」が「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」に減縮されるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項2は、明細書記載の段落【0108】の【表1】の記載に基づいて導き出される構成である。【表1】から、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%の吸水性樹脂」である旨が読み取れることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものといえる。
(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的
(ア)訂正後の請求項1では、訂正前の請求項1に記載されていた「衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上、」を、「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、」と記載したものであって、誤記の訂正である。訂正前の請求項1に記載されていた衝突試験後の荷重下の吸水能の単位g/g」が「ml/g」の誤記であったことは、本件特許明細書記載の段落【0046】及び【0120】?【0124】からも自明である。すなわち、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項1に記載された、「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3及び5?9における衝突試験後の荷重下の吸水能の単位を訂正するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、誤記の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
(ア)上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、誤記の訂正であることから、新規事項の追加か否かは特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書きの規定により、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるか否かを判断することになる。
(イ)そこで、本件特許出願の原出願の願書に最初に添付した明細書の内容が記載された国際公開公報である甲11を参照すると、本件特許明細書の段落【0046】及び【0120】?【0124】の記載は、甲11の段落[0044]及び[0139]?[0143]に同じ文章で記載されていることが分かる。
(ウ)そうすると、当該訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項括弧書きに適合するものである。
(5)訂正事項4について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の請求項2に係る特許発明は、1次粒子について、「アスペクト比が1.1?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの一次粒子」であることを特定している。これに対して、訂正後の請求項2は、「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの一次粒子」との記載により、訂正後の請求項2に係る発明における一次粒子のアスペクト比を更に限定するものである。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項2に記載された「アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3及び5?9に係る発明における1次粒子のアスペクト比を更に限定するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、「アスペクト比が1.1?2.2」が「アスペクト比が1.4?2.2」に減縮されるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0033】及び段落【0108】に掲載の【表1】の実施例2等の記載に基づいて導き出される構成といえる。すなわち、段落【0033】には、「1次粒子のアスペクト比は1.1?200であり・・・さらに好ましくは1.4?50、特に好ましくは1.6?30である。」との記載がなされており、上記【表1】には、実施例2において1次粒子のアスペクト比が「1.4」であることが示されていることから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものといえる。
(6)訂正事項5について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の請求項2に係る特許発明は、粒子衝突試験後の粒子径保持率について、「82%以上」であることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項2は、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」との記載により、請求項2に係る発明における粒子衝突試験後の粒子径保持率を更に限定するものである。すなわち、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項2に記載された「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?92%であり、」との記載を引用することにより、請求項3、5?9に係る発明における粒子衝突試験後の粒子径保持率を更に限定するものであることから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であり、」が「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、」に減縮されるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項5は、明細書記載の段落【0108】の【表1】の記載に基づいて導き出される構成である。【表1】から、「粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%の吸水性樹脂」である旨が読み取れることから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものといえる。
(7)訂正事項6について
ア 訂正の目的
(ア)訂正後の請求項2では、訂正前の請求項2に記載されていた「衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上、」を、「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、」と記載したものであって、誤記の訂正である。訂正前の請求項2に記載されていた衝突試験後の荷重下の吸水能の単位「g/g」が「ml/g」の誤記であったことは、明細書記載の段落【0046】及び【0120】?【0124】からも自明である。すなわち、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(イ)同様に、訂正後の請求項3及び5?9は、訂正後の請求項2に記載された、「衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3及び5?9における衝突試験後の荷重下の吸水能の単位を訂正するものであることから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 実質上の拡張変更の有無
上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、誤記の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
(ア)上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、誤記の訂正であることから、新規事項の追加か否かは特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書きの規定により、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるか否かを判断することになる。
(イ)そこで、本件特許出願の原出願の願書に最初に添付した明細書の内容が記載された国際公開公報である甲11を参照すると、本件特許明細書の段落【0046】及び【0120】?【0124】の記載は、甲11の段落[0044]及び[0139]?[0143]に同じ文章で記載されていることが分かる。
(ウ)そうすると、当該訂正事項6は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項括弧書きに適合するものといえる。
(8)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、請求項4を削除するというものであるから、当該訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張変更の有無
訂正事項7は、請求項4を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項7は、請求項4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項8?11について
ア 訂正の目的
訂正事項8?11は、いずれも訂正事項7により削除された請求項4を引用しないようにした訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
イ 実質上の拡張変更の有無
訂正事項8?11は、いずれも訂正事項7により削除された請求項4を引用しないようにした訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項8?11は、いずれも訂正事項7により削除された請求項4を引用しないようにした訂正であり、何ら実質的な内容の追加を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明について
(1)訂正後の本件発明
前記第2で検討したように本件訂正は認められるから、訂正後の請求項1?3、5?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は以下のとおりである。なお、分説のために本件訂正前にならって分説記号A?Nを付し、訂正された分説は、”を付した。
「【請求項1】
A” アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、
B 中位粒子径(d)が50?600μmの
C 1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、
D 該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、
E 且つ、中位粒子径(D)が390?2000μmであり、
F” 粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、
G” 衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、である、吸水性樹脂。
【請求項2】
A” アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、
B 中位粒子径(d)が50?600μmの
C 1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、
D 該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、且つ、
E’ 中位粒子径(D)が100?2000μm(200?400μmを除く)であり、
F” 粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、
G” 衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、である、吸水性樹脂。
【請求項3】
H 吸水性樹脂の粒子径の均一度が1.0?2.2である請求項1又は2に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
J” 1次粒子が、曲面から構成される形状である請求項1?3のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
K” 吸水能保持率が84%以上である、請求項1?3及び5のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
L” 粉体の流動性指数が110以上である、請求項1?3、5及び6のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項8】
M” 請求項1?3及び5?7のいずれかに記載の吸水性樹脂と親水性繊維を配合してなる吸収体。
【請求項9】
N” 請求項8に記載の吸収体を液体透過性シートと液体不透過性シートで挟持してなる吸収性物品。」
(2)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には次の記載がある。
「【0125】
・・・
吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影した。写真の中から50個の粒子を任意に選択し、各粒子の長手方向の最大長を長径とし、長径の線上に直行する最大長を短径として測定した。各粒子の測定値の平均値を算出し、樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径比)を算出した。」
2 取消理由の概要
当審による、本件訂正前の請求項1?9に対する平成30年11月7日付の取消理由の概要は、次のとおりのものである。
(1)特許法第36条(記載要件)について
ア 理由1-1(荷重下の生理食塩水吸水能)について
「荷重下の生理食塩水吸水能」の単位について、本件請求項1、2においては、g/gとされているのに対し、本件特許明細書においては、ml/gとされており、発明の詳細な説明に記載された発明と本件発明1、2とが相違しているため、本件発明1、2及びそれを引用する本件発明3?9は、特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件を満たしていない。
イ 理由1-2(一次粒子のアスペクト比)について
本件発明1、2においては、一次粒子のアスペクト比が1.1?2.2であることを規定しているが、本件特許明細書の実施例1?3、5において、優れた固着性が確認されているのは、1次粒子のアスペクト比が1.4以上の場合のみであるから、アスペクト比が1.1?1.4未満のものを含む本件発明1、2及びそれを引用する本件発明3?9は、特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件を満たしていない。
ウ 理由1-3(粒子衝突試験後の粒子径保持率)について
本件発明1、2は、粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%以上であることを規定する。当該規定には粒子径保持率の上限が規定されていないので、本件発明1、2に係る吸水性樹脂には、粒子径保持率が100%超の吸水性樹脂も含まれることになり、この点で本件発明1、2及びそれを引用する本件発明3?9は、特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件を満たしていない。
エ 理由1-4(繊維への固着性指数)について
訂正前の請求項4に記載された「繊維への固着性指数」の測定は、吸水性樹脂5.3gと木材パルプ2.2gとを乾式混合して吸収体を作製し、振動によりその吸収体からの吸水性樹脂の脱落を評価するものである。木材パルプの種類によっては、脱落する程度が異なると推認できるところ、「木材パルプ2.2g」について、その繊維長や太さが記載されていない。したがって、本件発明に係る明細書は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすといえない。
(2)新規性進歩性について
ア 引用文献一覧
(ア)特許異議申立書と共に提出されたもの
甲1:特許第3688418号公報
甲2:特開2004-2891号公報
甲3:国際公開第2007/123188号
甲4:特開2006-68731号公報
甲5:特表2000-513392号公報
甲6:特開平9-323038号公報
甲7:特開平2-191604号公報
甲8:特開平2-196802号公報
甲9:特表2006-528708号公報
甲10:実験成績証明書、平成30年7月17日に申立人従業員作成
甲11:国際公開第2012/033025号
(イ)申立人意見書と共に提出されたもの
なお、以下の参考資料は、取消理由通知には採用されていないが、一覧性のため記載するものである。
参考資料1:Fredric L. Buchholz外1名編、Modern Superabsorbent Polymer Technologyの7、73、94及び97頁、平成10年発行
参考資料2:特許第3148220号公報
参考資料3:特許第3333332号公報
イ 本件発明1、2に対して
(ア)理由2-1(甲1に基づく新規性欠如)について
甲1の実施例13に記載された発明は、甲10の実験成績証明書を参照すると、本件発明1、2と同一である。
(イ)理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)について
本件発明1、2は、甲2発明及び甲2に記載された事項または甲2発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができた発明である。
(ウ)理由2-3(甲3に基づく進歩性欠如)について
本件発明1、2は、甲3発明及び甲3に記載された事項及び甲7、甲8に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)理由2-4(甲9に基づく進歩性欠如)について
本件発明1、2は、甲9に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3、5に対して
本件発明3に規定された粒子径の均一度及び本件発明5に規定された粒子の局面は、甲3に記載されており、本件発明3及び5は、上記理由2-1ないし4に加えて、甲3の記載に基いて本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明6に対して
本件発明6において規定された吸水能保持率は、甲3に記載されており、本件発明6は、上記理由2-1ないし2-4に加えて、甲3の記載に基いて本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件発明7に対して
本件発明7において規定された流動性指数は、格別の限定ではないので、上記理由2-1ないし2-4と同様に、本件発明7は、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件発明8に対して
(ア)甲1には、各吸水剤にさらに親水性短繊維を添加し、これにより吸水剤に種々の機能を付与させることもできることが記載されている(【0193】)。したがって、本件発明8の構成Mは甲1に記載されている。このため、本件発明8は、上記理由2-1ないし2-4に加え、甲1に基いて新規性進歩性のない発明である。
(イ)甲2には、吸水性樹脂組成物をセルロース繊維あるいはそのウェブと組み合わせることにより、衛生材料の吸収層として好適な吸収性物品とすることができることが記載されている(【0055】)。したがって、本件発明8の構成Mは甲2に記載されている。このため、本件発明8は、上記理由2-1ないし2-4に加え、甲2に基いて進歩性のない発明である。
(ウ)甲3には、吸水性樹脂粒子と繊維状パルプを空気中で混合しつつ、金属メッシュ上に吸引して積層することで吸収体が製造されることが記載されている(【0006】)。繊維状パルプは親水性繊維に該当する(本件特許明細書の【0005】)。したがって、本件発明8の構成Mは甲3に記載されている。このため、本件発明8は、上記理由2-1ないし2-4に加え、甲3に基いて進歩性のない発明である。
(エ)甲9には、流体は、溶媒、架橋性未架橋ポリマー、任意の架橋剤以外に、添加剤を含むことが記載され、添加剤として、木粉、パルプ繊維、粉末状樹皮、セルロース粉末…またはこれらの物質の混合物が記載されている(【0074】、【0077】)。したがって、本件発明8の構成Mは甲9に記載されている。このため、本件発明8は、上記理由2-1ないし2-4に加え、甲9に基いて進歩性のない発明である。
キ 本件発明9に対して
甲4には、吸収性物品は、吸収体(吸収コア)を作成し、吸収コアを液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)とでサンドイッチして製造されることが記載されている(【0108】)。したがって、本件発明9の構成Nは甲4に記載されている。このため、本件発明9は、上記理由2-1?2-4に加えて、甲4に基いて進歩性のない発明である。
3 上記取消理由についての検討
(1)記載要件について
上記理由1-1?1-4について検討する。
ア 理由1-1(荷重下の生理食塩水吸水能)について
取消理由として通知した上記2(1)アの理由1-1については、本件訂正によって、本件発明1、2における構成G”の荷重下の生理食塩水吸水能の単位が、ml/gに訂正された。よって、理由1-1は解消した。
イ 理由1-2(一次粒子のアスペクト比)について
取消理由として通知した上記2(1)アの理由1-2については、本件訂正により、本件発明1、2における構成A”の一次粒子のアスペクト比は、1.4?2.2であると訂正された。本件特許明細書に記載された実施例2は、アスペクト比が1.4であり、同じく実施例5は、アスペクト比が2.2であるから、本件発明1、2におけるアスペクト比を1.4?2.2とする点は、明細書に裏付けられている。よって、理由1-2は解消した。
ウ 理由1-3(粒子衝突試験後の粒子径保持率)について
本件訂正により、本件発明1、2の構成F”の粒子衝突試験後の粒子径保持率の上限が90%と定められた。本件特許明細書に記載された実施例1は、粒子衝突試験後の粒子径保持率が90%であり、同じく実施例3は、粒子衝突試験後の粒子径保持率が82%であるから、粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%とすることは、明細書にサポートされているといえる。よって、理由1-3は解消した。
エ 理由1-4(繊維への固着性指数)について
本件訂正によって、請求項4が削除されたため、「繊維への固着性指数」という発明特定事項を有する請求項は存在しなくなった。よって、理由1-4は解消した。
(2)刊行物記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項11】
平均粒径子径200μm?800μmの吸水性樹脂造粒物を表面架橋して得られる吸水剤であって、
50g/cm^(2)の加圧下での吸収倍率が20g/g以上であり、吸収速度が25秒以下であり、かつ、造粒破壊率が10重量%以下であることを特徴とする吸水剤。
【請求項12】
上記吸水性樹脂造粒物は、平均粒径10μm?150μmの吸水性樹脂100重量部に水性液70重量部?400重量部を混合して平均粒径0.3mm?10mmの含水ゲル状造粒物を得た後、該含水ゲル状造粒物を、粉砕しない条件下、110℃?300℃で収縮乾燥し、分級してなり、当該吸水剤は、この吸水性樹脂造粒物を表面架橋してなることを特徴とする請求項11記載の吸水剤。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、紙オムツ(使い捨てオムツ)や生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料に好適に用いられる、カルボキシル基を有する吸水性樹脂とこのカルボキシル基と反応し得る架橋剤等を含む水性液とを混合させてなる吸水剤並びに上記吸水剤を含む衛生材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的とする吸水性樹脂を含有する吸水剤が幅広く利用されている。」
(ウ)「【0003】
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、及びカチオン性モノマーの架橋体等が知られている。
【0004】
上記の吸水性樹脂が備えるべき特性としては、体液等の水性液体に接した際の優れた吸水量や吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。しかしながら、これらの諸特性間の関係は必ずしも正の相関関係を示さず、例えば、吸収倍率の高いものほど通液性、ゲル強度及び吸収速度等の物性は低下してしまう。
【0005】
このような、吸水性樹脂の吸水諸特性をバランス良く改良する方法として吸水性樹脂の表面近傍を架橋する技術が知られており、これまでに様々な方法が開示されている。」
(エ)「【0147】
また、本発明では、上述したように、上記吸水剤の製造を、優れた混合性を有する特定の連続押出式混合機を用いて行っている。
【0148】
このため、従来の混合機を用いた吸水剤の製造方法では、吸水性樹脂と水性液との混合をより均一にするため、吸水性樹脂の粒径分布を狭くしたり、150μm以下の粒径を有する粉末、つまり、吸水性樹脂微粉末(以下、単に微粉末と記す場合もある)の量を特定範囲内に制御する必要があったが、本発明によれば、このような粒径の制御を厳密に行わなくても、常に優れた混合性を実現することができる。従って、本発明によれば、粒径150μm以下の微粉末の含有量が多くても、加圧下での吸収倍率等の諸特性を向上させることができる。
【0149】
本発明では、このように、厳密な粒径の制御を必ずしも必要としない。しかしながら、取り扱い性の向上やさらなる物性の向上を目的として、上記吸水性樹脂の製造工程で得られた微粉末、具体的には、粒径150μm以下、特に75μm以下の微粉末を分級して除去することで、微粉末を低減した、粒度分布の狭い吸水性樹脂を吸水剤の原料として用いてもよい。
【0150】
本発明において除去された微粉末は、廃棄することなく、上記連続押出式混合機を用いて造粒することにより、回収し、再び吸水剤の原料として用いることができる。つまり、上記連続押出式混合機は、吸収剤の製造において、表面架橋のみならず、吸水性樹脂の造粒にも用いることができる。
【0151】
上記吸水剤の原料として、造粒によって得られた表面積の大きな吸水性樹脂(吸水性樹脂造粒物)を用いることで、該吸水性樹脂造粒物を架橋してなる表面積の大きな造粒物(架橋造粒物)を含む吸水剤を得ることができる。本発明において、上記造粒に用いられる微粉末は、吸水剤の製造工程によって除去されたものであってもよいが、吸収速度の向上を目的として、粉砕ないし重合条件を調整して意図的に製造したものであってもよい。さらに、本発明では、微粉末を除去せず、微粉末を含む吸水性樹脂をそのまま表面架橋した後、得られた微粉末を含む吸水剤をさらに造粒してもよい。」
(オ)「【0349】
〔実施例13〕
カルボキシル基を有する吸水性樹脂の製造に際して、単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の38重量%水溶液5500部に、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート2.7部を溶解させて反応液とした。単量体成分に対するトリメチロールプロパントリアクリレートの使用量は、0.04モル%である。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。
【0350】
次いで、シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双碗型ニーダーに蓋を付けた反応器に上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら、上記反応器内を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.8部及び還元剤としてのL-アスコルビン酸0.02部を添加し、実施例1と同様の重合操作を行った。この結果、約0.1mm?3mmに細分化された含水ゲル状重合体を得た。
【0351】
次いで、上記含水ゲル状重合体を、実施例1と同様に乾燥した後、粉砕に用いられるロール同士が所定の間隔(ロールギャップ約1.63mm、約0.43mm、約0.15mm)を有するように3段に形成されたロールグラニュレター型粉砕機を用いて粉砕し、次いで、目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、平均粒径が300μmの不定型破砕状の吸水性樹脂(A)を得た。さらに、この吸水性樹脂(A)を、目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、粒径850μm?150μmの吸水性樹脂(A_(1))86.3重量%および粒径150μm未満の吸水性樹脂微粉末(A_(2))13.7重量%を得た。
【0352】
次いで、上記の吸水性樹脂微粉末(A_(2))を、図1に示す連続押出式混合機1に2kg/分の割合で投入すると共に、上記連続押出式混合機1に設けられた口径5mmの液供給口4から、イオン交換水を、吸水性樹脂微粉末(A_(2))100重量部に対してイオン交換水130重量部の割合で投入することによって、上記吸水性樹脂微粉末(A_(2))とイオン交換水とを連続的に混合した。この結果、排出口5から、粒子状の均一な含水ゲル状造粒物が連続的に排出された。得られた粒子状の含水ゲル状造粒物は、個々の粒子の凝集体であり、その大部分が、粒径約1mm?5mmの均一な含水ゲル状造粒物であった。また、上記含水ゲル状造粒物の固形分は、43.6重量%であった。尚、含水ゲル状造粒物の固形分とは、含水ゲル状造粒物中の吸水性樹脂の量(含有量)を示す。
【0353】
次に、この含水ゲル状造粒物を、目開き300μmのJIS標準金網上に、約5cmの厚みになるように広げ、160℃の熱風循環式乾燥機で乾燥させた。この結果、上記含水ゲル状造粒物は均一かつ固形分90重量%以上に十分に乾燥され、造粒粒子同士を手でも容易に解砕することが可能な粉体状の乾燥造粒物が得られた。該乾燥造粒物中の10mmを越える塊は5%に過ぎなかった。
【0354】
次いで、この乾燥造粒物を、前記ロールグラニュレター型粉砕機を用いると共に、ロールギャップを広げて粉砕(最終ロールギャップ約0.27mm)し、目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、吸水性樹脂造粒物(1)を得た。」
(カ)「【0355】
このようにして得られた上記吸水性樹脂造粒物(1)、吸水性樹脂(A)、吸水性樹脂(A_(1))、および吸水性樹脂微粉末(A_(2))の粒度分布、無加圧下での吸収倍率および造粒破壊率を測定した。上記粒度分布を表4に示すと共に、吸収倍率および造粒破壊率の測定結果を合わせて表5に示す。また、上記吸水性樹脂微粉末(A_(2))の電子顕微鏡写真(50倍)を図18に示す。
【0356】
さらに、上記吸水性樹脂造粒物(1)100重量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部、グリセリン0.75重量部、水3重量部、イソプロピルアルコール0.75重量部、および乳酸0.5重量部からなる表面架橋剤を混合し、200℃で40分間加熱することにより、No.13吸水剤を得た。上記測定上記NO.13吸水剤の無加圧下および高加圧下の吸収倍率、吸収速度、および造粒破壊率を測定した。上記測定結果を表6に示す。
【0357】
また、上記吸水性樹脂造粒物(1)の電子顕微鏡写真(50倍)を図19に示す。上記吸水性樹脂造粒物(1)は、原料として図18に示した粒径150μm未満の吸水性樹脂微粉末(A_(2))を用いているにも拘らず、300μm?850μmの粒径を有する粒子が約8割を占める凝似一次粒子の造粒物(凝集体)となり、結果的に、衝撃力(B)によって規定される造粒破壊率が2.4重量%という造粒強度の強い造粒物(凝集体)となっていた。
【0358】
尚、図示はしないが、本実施例にて得られた乾燥前の含水ゲル状造粒物の光学顕微鏡写真では、該含水ゲル状造粒物が個々の一粒一粒の含水ゲルの凝集体である事実や、架橋剤を含まない水で造粒した場合、吸水膨潤後は造粒前の複数の粒子に分かれて膨潤する事実も別途確認されている。」
(キ)「【0384】
【表4】

・・・」
(ク)「【0385】
【表5】

・・・」
(ケ)「【0386】
【表6】


(コ)【図面の簡単な説明】の項
「【図18】
実施例13で得られた粒径150μm未満の吸水性樹脂微粉末(A_(2))の構造を電子顕微鏡写真(50倍)によって示す図面代用写真である。」
(サ)【図18】



イ 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
架橋構造を有する吸水性樹脂の造粒粒子であって、造粒後のアスペクト比(粒子の長径/短径)が1.5以上である造粒粒子。
【請求項2】
短径が0.3?1.5mmである請求項1に記載の吸水性樹脂の造粒粒子。
【請求項3】
表面近傍が架橋されており、かつ平均粒子径が150?800μmである請求項1または2に記載の吸水性樹脂の造粒粒子。
【請求項4】
下記式で定義される見掛け体積膨張率が10%以上である請求項1?3のいずれか一つに記載の吸水性樹脂の造粒粒子。
見掛け体積膨張率(%)=((ゲルの体積/5ml)-1)×100
(ただし、ゲルの体積とは、内径10mm(外径13mm・長さ17cm)の10mlメスシリンダーに0.5gの吸水性樹脂の造粒粒子を入れ、その後5mlの脱イオン水を添加して10分放置したときの、10分後のメスシリンダー中のゲルの体積である。)
【請求項5】
水不溶性無機微粒子または界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の助剤成分をさらに含有してなる請求項1?4のいずれか一つに記載の吸水性樹脂の造粒粒子。
【請求項6】
衛生材料の吸収層用の吸収性物品であって、請求項1?5のいずれか一つに記載の吸水性樹脂の造粒粒子を含んでなる吸収性物品。
【請求項7】
架橋構造を有する吸水性樹脂の造粒粒子の製造方法であって、吸水性樹脂と造粒化剤とを混合し、得られた混合物を球面状多孔板を有する押し出し造粒機から押し出すことを特徴とする製造方法。」
(イ)「【0008】
しかしながら、前記(a)の方法では、生成する造粒物の強度が十分でなく、工場でのラインや輸送中に造粒物の一部が壊れて微粉末が再生する場合があった。また、吸液によって造粒構造が壊れ、微粉末が再生し、そのために十分な通液性が得られなかった。また、前記(b)の方法では、全ての吸水性樹脂が均一に単量体水溶液を吸収させることが困難で、造粒物の生成する割合が低く、また単量体水溶液が樹脂粉末に浸透して重合するため、吸水性樹脂の吸収倍率が低下する結果となる。さらに、上記(c)の方法でも、造粒物は得られるものの、その造粒強度は低く、吸水膨潤時に細かいゲルが再生し、液の通液性および拡散性を妨げるものしか得られないという問題があった。」
(ウ)「【0057】
本発明は平均粒子径10?100μmの吸水性樹脂粒子を造粒する工程、および得られた造粒粒子と平均粒子径150?800μmの吸水性樹脂の一次粒子とを混合する工程を含んでなる吸水性樹脂組成物の製造方法をも提供する。平均粒子径10?100μmの吸水性樹脂を造粒する方法は特に限定されず、従来公知の造粒方法を採用できる。転動造粒法、圧縮型造粒法、撹拌型造粒法、押し出し造粒法、破砕型造粒法、流動層造粒法、噴霧乾燥造粒法等が挙げられる。なかでも球面状ダイからの押し出し造粒法が、得られる造粒粒子の粒子径のコントロールが容易である点と、造粒粒子の造粒強度が大きい点で好ましい。造粒粒子の平均粒子径は150?800μmの範囲が、前述の理由により好ましい。」
(エ)「【0103】
・・・
参考例1
シグマ型羽根を2本有した内容積10リットルのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、アクリル酸ナトリウム75モル%およびアクリル酸25モル%からなる単量体成分の水溶液4400g(単量体成分の濃度37重量%)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート2.72g(0.05モル%対単量体成分)とを入れ、窒素ガスを吹き込んで反応系内を窒素置換した。次いで、2本のシグマ型羽根を、回転させながら、ジャケットに30℃の温水を通すことによって反応系内を加熱しながら、開始剤として過硫酸ナトリウム1.10gと亜硫酸ナトリウム1.10gとを添加した。単量体水溶液は重合の進行に伴い柔らかい含水ゲルを生成し羽根の回転により次第に細分化されていった。重合が始まった後、40分後に含水ゲル状重合体は約1.9mmの平均粒子径に細分化された。得られた含水ゲル状重合体を金網上で150℃の温度条件下に2時間熱風乾燥した。この乾燥物をハンマーミルを用いて粉砕し、40メッシュ(目開き425μm)の金網を通過させる事により参考用吸水性樹脂(1)を得た。参考用吸水性樹脂(1)の諸性能を表4に示した。
【0104】
参考例2
参考用吸水性樹脂(1)100重量部とグリセリン0.5重量部、水2重量部およびイソプロピルアルコール0.5重量部とをタビュライザー(TX-14、ホソカワミクロン株式会社製)で混合し、得られた混合物をパドルドライヤー(NPD-6W、奈良機械株式会社製)により連続的に加熱処理した。このパドルドライヤーの平均滞留時間は20分であった。排出口の材料温度は190℃であった。このように、参考用吸水性樹脂(2)を得た。・・・」
(オ)「【0108】
実施例3
参考例2で得られた参考用吸水性樹脂(2)100重量部を100メッシュ(目開き150μm)金網で分級し、金網上に残ったものを吸水性樹脂の一次粒子(b)、金網を通過したものを吸水性樹脂(b)とした。吸水性樹脂の一次粒子(b)は85重量部、吸水性樹脂(b)は15重量部あった。吸水性樹脂の一次粒子(b)の平均粒子径は220μm、吸水性樹脂(b)の平均粒子径は84μmであった。
【0109】
吸水性樹脂(b)100重量部に対し、グリセリン5重量部とエポミンP-1000(重量平均分子量約7万のポリエチレンイミン、株式会社日本触媒製)の50%水溶液を10重量部とをレディゲミキサー(M5R、レディゲ社製)で約30分間混合し、得られた混合物を球面状ダイを有する前押し出し式スクリュー型押し出し造粒機(ドームグランDG-L1、ダイ孔径=0.6mm、不二パウダル株式会社製)で押し出し造粒した。得られた造粒物を90℃の乾燥器中で約1時間加熱処理をし、吸水性樹脂の造粒粒子(b)を得た。得られた造粒粒子(b)の平均粒子径は550μmであった。造粒粒子(b)15重量部と吸水性樹脂の一次粒子(b)85重量部とをビニール袋に入れ、手で振り回すことで混合し、吸水性樹脂組成物(3)を得た。・・・」
ウ 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
(ア)「[0006] 例えば、使い捨て紙おむつ用の吸収体は、一般にドラムフォーマーと呼ばれる設備において、吸水性樹脂粒子と繊維状パルプを空気中で混合しつつ、金属メッシュ上に吸引して積層することで、吸収体が製造される。その後、吸収体は形状を保持し、強度を上げるため、ロールプレス等によって圧縮されるが、薄型吸収体の製造においては、従来よりも高加圧で圧縮されることに加え、パルプ使用量が低減されているために、吸水性樹脂粒子に大きな力がかかり、粒子の破壊が起こりやすい傾向にある。」
(イ)「[0032]1次粒子の形状は、真球状、楕円球状などの表面が円滑な球状の単粒子である。このような球状の吸水性樹脂粒子を得るために、一般的に分散安定剤のHLB(親水性親油性バランス)が指標となるが、使用される分散安定剤の種類によって、球状粒子が得られるHLBの範囲が異なるため、特に限定されない。」
(ウ)「[0036]本発明の製造方法における、第1段目重合時の1次粒子径の制御は、例えば、各種の攪拌翼を用いて、重合反応時の攪拌回転数を変更することによって行なうことができる。攪拌翼としては、例えば、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファゥドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、スーパーミックス翼(サタケ化学機械工業(株)製)等を使用することが可能である。通常、同一種の撹拌翼であれば、撹拌回転数を高めるほど1次粒子径は小さくなる。
[0037]また、1次粒子径は、第1段目の単量体水溶液に増粘剤を添加して、水溶液粘度を変えることによつても調整できる。増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を用いることができる。通常、撹拌回転数が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど1次粒子径は大きくなる。」
(エ)「請求の範囲
[1](1)水溶性エチレン性不飽和単量体を、石油系炭化水素溶媒中、分散安定剤の存在下に第1段目の逆相懸濁重合反応を行なって、中位粒子径(d)が30?130μmの球状の1次粒子を得る工程、
(2)該重合反応液を冷却して、前記分散安定剤を析出させる工程、および
(3)該重合反応液に、第2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体を添加して、第2段目の逆相懸濁重合反応を行ない、1次粒子を凝集させて中位粒子径(D)が200?500μmの2次粒子を得る工程、
を含む、1次粒子の中位粒子径(d)と2次粒子の中位粒子径(D)が式、5d/3+150<D<5d+150の関係にある吸水性樹脂粒子の製造方法。
[2]分散安定剤が、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
[3]分散安定剤として、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレンおよびエチレン・アクリル酸共重合体から選ばれた少なくとも1種を併用する請求項2記載の製造方法。
[4]水溶性エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸、メタアクリル酸またはそのアルカリ金属塩である請求項1?3のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]第2段目の逆相懸濁重合反応後に架橋剤を添加し、後架橋処理を施すことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
[6]請求項1?5いずれか記載の製造方法により得られうる球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子であって、粒子径分布の均一度が1.2?2.2である吸水性樹脂粒子。
[7]請求項1?5いずれか記載の製造方法により得られうる球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子であって、粒子衝突試験後の粒子径保持率が80%以上である吸水性樹脂粒子。
[8]請求項1?5いずれか記載の製造方法により得られうる球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子であって、粒子衝突試験前の加圧下吸水能が30ml/g以上、かつ粒子衝突試験後の加圧下吸水能保持率が80%以上である吸水性樹脂粒子。」
エ 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下」
(イ)「【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の粒子状吸水剤の製造方法であって、
酸酸及びプロピオン酸の含有量が500ppm以下、かつアクリル酸ダイマーの含有量が1000ppm以下であるアクリル酸を準備する工程、
該アクリル酸及び/又はその塩をモノマーの主成分とする不飽和モノマーを疎水性有機溶媒中で、逆相懸濁重合する反応工程、
重合して得られた、下記(a)、(b)及び(c)を満たす架橋ポリマー粒子に、有機溶媒を含まない、表面架橋剤水溶液を添加する工程、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子が0質量%以上5質量%以下
並びに
温度150℃以上250℃以下で加熱して表面架橋する工程を含む製造方法。」
(ウ)「【0017】
ここで、略球状体とは、真球状体を含む概念であって、粒子の平均長径と平均短径との比が1.0以上3.0以下、上限が、好ましくは2.0、さらに好ましくは1.5であり、角を有しない、球状又は楕円体状の粒体をいう。略球状体の凝集体とは、一次粒子である略球状体が凝集して、葡萄状の粒子となったものをいう。具体的には、後述する図1の電子顕微鏡写真に示されたものが挙げられる。略球状体由来の凝集体とは、一次粒子である略球状体が凝集して融着し、一体化されて、岩石状の粒子、米粒状の粒子等となったものをいう。具体的には、後述する図2及び図3の電子顕微鏡写真に示されたものが挙げられる。この場合、外観上は一次粒子の略球状体の存在は確認出来ない。さらに、逆相懸濁重合で得られる粒子形状として、EP516925B1(WO92/16565)号の図1?図4に記載の皺のある粒子、図5に記載の真球状、及び米国特許4973632号の図2に記載のソーセージ状の形状が例示される。本発明の吸水性樹脂粒子は、略球状体、その凝集体、及び略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種、又は2種以上であり、また、略球状体、その凝集体、及び略球状体由来の凝集体の中から選択され得る。」
オ 甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
3. 下記特性範囲:
固有吸収能 55g/g以下、
保持力 21?29g/g、
毛細管吸収能(5kPa、1.5gの樹脂) 21g/g以上、
多孔度 1.000以上g、
ゲル化時間 120?230秒
を有する毛細管吸収能の高い超吸収体粉末と、下記特性範囲:
固有吸収能 62g/g以上、
保持力 32?36g/g、
毛細管吸収能(5kPa、1.5gの樹脂) 8?12g/g、
多孔度 20g以下、
ゲル化時間 90?120秒
を有する固有吸収能が高い超吸収体粉末とを、25:75?60:40の重量比で混合し
て、下記特性:
固有吸収能 53g/g以上、
保持力 25?35g/g、
毛細管吸収能(5kPa、1.5gの樹脂) 20g/g以上、
多孔度 50?800g、
ゲル化時間 100?200秒
を有する吸収体粉末を製造する方法。
4. 毛細管吸収能が高い超吸収体粉末と、固有吸収能が高い超吸収体粉末とが、親水性の飽和エチレン系モノマーである部分的に塩化され部分的に架橋されたアクリル酸の逆相懸濁重合で得られる粒度が0.1?1mmのポリマーの球で構成される請求項3に記載の方法。
5. 毛細管吸収能の高い粉末が、逆相懸濁重合の後に後架橋時の無水ポリマーに対する含水量が0.3?0.50で且つポリマー無水物に対する架橋剤の最小量が500ppmである条件下で後架橋して得られるアクリル酸のポリマー粉末である請求項3または4に記載の方法。
・・・」
(イ)5頁2?5行
「圧力下での毛細管吸収能(SC)は、1.5gの超吸収体のベッドが荷重(5kPa)下で0.9g/lの塩水を吸収する能力を測定する。これは圧力または荷重下での毛細管吸収能とよばれる周知の特性である(英国ではAUL(absorption under load)ともいわれる)。その操作は一般的に行なわれている方法である。」
(ウ)7頁下14行?8頁12行(空行含まず)
「2種類の超吸収体粉末を種々の比率で混合する。一方の粉末Aはコア/シェル構造のポリアクリル超吸収体粉末であり、毛細管吸収能は高いが、固有吸収能は低い。他方の粉末Bは従来のポリアクリル超吸収体粉末であり、固有吸収能は良いが、毛細管吸収能は低い。
粉末Aはフランス国特許出願第96 01502号の記載に従って下記のように製造される。所定温度の熱交換液が内部を流れるジャケットを備えた攪拌反応器に、ヘプタンを用いて調製したHLBの低い(<6)界面活性剤の溶液を導入する。この溶液を加熱(80℃)し、予備調製したアクリルモノマーの水溶液(39重量%)(すなわちソーダで中和した75mol%のアクリル酸の水溶液で、さらに重合開始剤としての過硫酸カリウムと、濃化剤としてのカルボキシメチルセルロースと、架橋剤としてのエチレングリコール-ジグリシジルエーテルとを含む水溶液)を加え、攪拌して逆相懸濁液とよばれる分散液を得る。温度を70℃に保持しながらこの系を重合させる。この第1の反応物の重合が実際上終わりに達するときに、ソーダで中和した75%のアクリル酸の第2の溶液(39重量%)(反応器の温度の著しい低下を避けるために)を一滴ずつ導入する。この第2の溶液は第1の反応物の成分と、凝集性親水性のHLBが高い(>15)界面活性剤、例えばフランス特許出願第95 04325号に記載のもの、例えば50molの酸化エチレンを有するエトキシ化されたノニルフェノールを含む。さらに攪拌を徐々に強くする。第2の反応物の重合と同時にポリマー粒子の凝集が生じる。第2の重合の終了後、温度を共沸混合物 水/ヘプタンの沸騰温度に上げて系の水の一部を除去する。無水ポリマー(RESA)中に残る水の重量比が0.4になるまで系から水を抜く。このとき、後架橋剤として900ppm(無水ポリマー全体に対して)のエチレングリコール-ジグリシジルエーテルを系に導入する。その後、乾燥段階で水およびヘプタンの残部を抜く。得られる生成物は球形粒子の凝集体で構成される粉末であり、この凝集体の85重量%が0.1?1mmの粒度分布にあり、1%以下が0.1mmの篩いを通る。」
カ 甲6の記載事項
甲6には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 生理食塩水吸収能が少なくとも50g/gで、ゲルベッドの生理食塩水吸収能が20g/gで、ゲルベッドの多孔度が少なくとも 500gである、部分的に架橋した超吸収ポリマー。
・・・
【請求項4】 粒径が 100?800 μmで、100 μm未満の通過分が1%以下である請求項1?3のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー。
【請求項5】 ヘプタン等の炭化水素中に懸濁した超吸収ポリマー粉末に架橋剤の水溶液を用いて後架橋処理する請求項1に記載の製品の製造方法であって、無水の超吸収ポリマーの重量に対する水の重量で表した超吸収ポリマーの水分含有率を0.30?0.50にすることを特徴とする方法。
・・・
【請求項8】 超吸収ポリマーが逆相懸濁重合法で得られた乾燥粉末である請求項5に記載の方法。
・・・」
(イ)「【0013】
溶媒は共沸化合物として水と共沸する沸点を有するもの、例えば石油系溶剤画分にするのが有利であり、ヘプタンが好ましい。最終超吸収体が粒子の凝集体である場合には、後架橋は凝集の前か後のいずれかに行うことができる。しかし、後架橋によってその後の凝集が影響を受けるので、後架橋の前に凝集を行うのが好ましい。本発明方法の好まし形態は逆相懸濁液中で重合し、個々の粒子を凝集させる方法であり、下記段階a)?h)を含む:
a) 分散媒体を調製する段階
b) 第1のモノマー溶液を調製する段階
c) 分散媒体中にこのモノマーを導入し、分散させ、さらに重合させる段階
d) 凝集溶液とよばれる第2のモノマー溶液を調製する段階
e) 各重合粒子の第1集団が予め懸濁状態で含まれる分散媒体に凝集溶液を導入し、さらに重合する段階
f) 炭化水素流体を流して懸濁液中の凝集体から共沸化合物として水を取り除く段階
g) 架橋剤を添加してシェルを形成する段階
h) 残留する水と液体炭化水素流とを蒸発させ、生成した粉末を回収する最終段階。」
(ウ)「【0014】
【実施例】以下、本発明超吸収体の調製法の実施例と比較例とを示す。各生成物の吸収特性は本章の最後で比較・検討する。
実施例1
架橋勾配を有するコアを用いたコア/シェル粒子の凝集体の調製
段階a)固体または液体反応物を導入する手段、蒸気を凝縮させ、凝縮物を相分離した後再循環させるシステム、攪拌羽根、不活性ガスのパージ用システム、温度計および内部を流れる熱交換液の温度を所定値に調節するジャッケットから成る加熱/冷却装置を備えた1リットル容の反応器に、258 gのヘプタンを導入し、窒素パージ下、400 回転/分で攪拌しながら、温度約80℃で、1.06gの無水マレイン酸で改質されたポリエチレン(Hi-Wax 1105 A :三井石油化学)と0.52gのサッカロースジ/トリステアレートとを導入する。内容物が完全に溶解するのに必要な時間だけ溶液を80℃に保ち、その後、設定温度を70℃に戻す。
【0015】段階b)80重量%のアクリル酸を含む水溶液86gと、22.62 %の苛性ソーダ液127.10gとを上記反応器に類似した1リットル容の反応器に導入する。この操作は30℃以下の温度で緩やかに行う。この溶液に2gのカルボキシメチルセルロースを添加し、次いで2重量%のエチレングリコールグリシジルエーテルを含む溶液 0.130gと、2%の過硫酸カリウムを含む溶液 3.017gとを導入した。
【0016】段階c)ヘプタンをベースとする溶液を入れた反応器を窒素パージ下に400 回転/分で攪拌しながら、上記で調製した水溶液相を素早く添加してヘプタンの逆相懸濁液を作製する。水溶液相を反応器に導入することによって混合物の温度が瞬間的に低下するが、この温度低下はジャケット(内部は熱交換液が70℃に温度設定されている)を用いた熱交換によって迅速に補償される。重合が起こり、その発熱作用によって混合物の温度が一時的に上昇するが、すぐに設定温度の70℃に戻る。この温度に保持されたポリマー懸濁液が得られる。
【0017】段階d)段階c)を行いながら、段階a)の反応器と同様な装備を有する反応器内で22.62 %の苛性ソーダ液127.10gを用いて80重量%のアクリル酸を含む水溶液86gを中和する。この操作は温度が30℃以上にならないよう除々に行う。この部分的に中和された(75モル%)アクリル酸溶液に2gのカルボキシメチルセルロースと、10%のノニルフェノール(50モルのエチレンオキシドを用いてエトキシ化したもの:REMCOPAL 31250 CECA S. A.)を含む水溶液0.46gとを添加し、次いで、2重量%の過硫酸カリウムを含む水溶液3gと、2%のエチレングリコールジグリシジルエーテルを含む水溶液 1.5gとを添加する。
【0018】段階e)段階d)で調製したモノマーを段階c)の終了段階の反応器に一滴ずつ添加する。添加は約30分かけて行う。窒素パージを継続し、攪拌速度を400 ?600 回転/分に保つ。反応器内の温度は、低温の反応物が導入されることと、重合反応が発熱反応であることによって変動する傾向がある。この変動が63-73℃の幅を越えないように注意する。一般に、ジャケット内の熱交換液液の温度設定によってこの変動を十分減少させることができる。添加物を全て導入し終わった時点で、攪拌速度を800 回転/分に上げ、反応器を20分程度この条件に保つ。重合は発熱反応であるので反応器の温度は一時的に上昇するが、自然にジャケット内の熱交換液の設定温度に戻る。
【0019】段階f) 第2の添加物の重合が終了した時点で、ヘプタン/水混合物を蒸発させるためにジャケットの温度を120 ℃に上げる。ヘプタン相は反応器に再循環させ、分離された水が分離器内で目に見える状態に保つ。操作は反応器内のポリマーのRWASが0.40に達するのに必要な時間だけ継続する。
【0020】段階g)RWAS値が0.40に達した時点で、熱交換液の設定温度を60?75℃に戻して蒸留を停止する。反応器内の温度平衡が達成されたら、2重量%のエチレングコールジグリシジルエーテルを含む溶液7.75gを導入する。
【0021】段階h) 設定温度を 115?130 ℃まで上げて水とヘプタンとを除去する。蒸発完了後、ビーズが凝集した粉末状の超吸収ポリマーが得られる。100 ミクロンの篩を通過する割合は1%以下であり、生理食塩水吸収能はポリマー1g当たり55gである。」
キ 甲7の記載事項
甲7には、次の記載がある。
(ア)「特許請求の範囲
・・・
2.粒子の平均長径と平均短径の比が1.5?20であって角を有しない非球状吸水性樹脂。
3.粒子の長径が100?10,000μm、短径が10?2,000μmである請求項2記載の吸水性樹脂。
・・・
6.水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度を5,000?1,000,000cpsに調整し、分散剤としてショ糖脂肪酸エステルのみを用いるようにする請求項4記載の吸水性樹脂の製造方法。」
(イ)3頁右下欄7行?13行
「さらに、上記の製造方法を実施する場合において上記のごとく定義される粘度を5,000?1,000,000cpsに調整するようにし、かつ、分散剤としてショ糖脂肪酸エステルのみを用いるようにすれば、粒子の平均長後と平均短径の比が1.5?20の範囲にある、角を有しない非球状の吸水性樹脂を得ることが出来る。」
(ウ)10頁左下欄下8行?11頁左上欄2行
「実施例9
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下ろうとを付した2lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0lをとり、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、DK-エステルF-50、HLB=6)4.0gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹きこんで溶存酸素を追い出した。別にフラスコ中にアクリル酸ナトリウム84.6g、アクリル酸21.6gおよびN、N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらに増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、HEC-ダイセルEP-850)3.2gを溶解させ、モノマー濃度35重量%、粘度35,000cpsのモノマー水溶液を調整した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹きこんで水溶液内に溶存する酸素を追いだした。
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて230rpmで撹拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去し、濾過した後80℃で減圧乾燥し、平均長径3000μm、平均短径550μmである、やや細長いウィンナーソーセージ状の吸水性樹脂[C-1]を得た。なお、球状の粒子は全く混在しなかった。」
ク 甲8の記載事項
甲8には、次の記載がある。
(ア)「特許請求の範囲
・・・
2. 粒子の平均長径と平均短径の比が1.5?20で角を有しない非球状であって、粒子表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂。
3. クレーム2において、粒子の長径が100?10,000μm、短径が10?2,000μmである吸水性樹脂。
・・・」
(イ)5頁右下欄1行?7行(行数に図は含まない。)
「上記5,000cps以上の粘度範囲内であっても、粘度が5,000?20,000cpsでは、非球状重合体と球状重合体が混在し、粘度が20,000cpsより高くなると、ほぼ 非球状重合体のみが得られる。なお、粘度が1,000,000cpsよりも高いと、単量体水溶液を反応器に供給する場合に困難を伴うことがある。」
(ウ)11頁右下欄下2行?12頁左上欄9行
「実施例9
増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、EP-850)の量を5.3gに変更した以外は実施例2と同様の条件で重合を行った。モノマー水溶液の粘度は240,000cpsであった。重合終了後共沸脱水して濾過し80℃で減圧乾燥し、平均長径3500μm、平均短径600μmである、細長いウインナーソーセージ状の重合体粉体〔A09〕を得た。
この重合体粉体を実施例2と同様に表面架橋処理して吸水性樹脂〔A19〕を得た。」
ケ 甲9の記載事項
甲9には、次の記載がある。
(ア)「特許請求の範囲(当審注:平成18年4月28日の補正前)
【請求項1】
(A)少なくとも40重量%が150μm未満の粒径を有する超吸収体微粒子を、流体の総重量に基づいて10重量%を超える量の架橋性未架橋ポリマーを含む流体であって、前記架橋性未架橋ポリマーが前記架橋性未架橋ポリマーの総重量に基づいて少なくとも20重量%のエチレン性不飽和酸性基含有モノマーまたはその塩を含む流体と接触させる工程と、
(B)前記流体と接触させた前記超吸収体微粒子を20?300℃で加熱することによって、前記架橋性未架橋ポリマーを少なくとも部分的に架橋させる工程と、を含み、
(a)前記架橋性未架橋ポリマーが、前記エチレン性不飽和酸性基含有モノマーに加えて、縮合反応、付加反応または開環反応によって酸性基含有モノマーと反応することができるエチレン性不飽和モノマー(M)を含み、及び/または(b)前記流体が前記架橋性未架橋ポリマーに加えて架橋剤を含むことを特徴とする凝集した超吸収体粒子を製造する方法。
・・・
【請求項8】
前記工程(B)時または前記行程(B)後、工程(C)として後架橋剤を添加することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の超吸収体粒子を製造する方法。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法によって得られる超吸収体粒子。
・・・
【請求項14】
前記超吸収体粒子が以下の特性;
a1)粒子の少なくとも80重量%が20μm?5mmの粒径を有する粒径分布、
a2)遠心分離保持容量(CRC)が少なくとも5g/g、
a3)0.7psiでの圧力下吸収(AAP)が少なくとも5g/g、
a4)16時間抽出の後の水溶性ポリマー含有率が25重量%未満、
の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項9?13のいずれか1項に記載の超吸収体粒子。」
(イ)「【背景技術】
【0002】
超吸収体ポリマーは、大量の水性液体を吸収することができる。従って、超吸収体ポリマーはおむつや生理用ナプキン等の衛生用品に使用されることが多い。
【0003】
超吸収体ポリマーは、逆相懸濁重合、逆相乳化重合、水溶液重合または有機溶媒中での溶液重合によって製造することが好ましい。これらの方法によって得られた超吸収体ポリマーは、乾燥し、必要に応じて粉砕する。
【0004】
上述した重合法によって得られる超吸収体粒子は、平均粒径が55μm未満の微粒子を大量に含む。これらの微粒子は、超吸収体の製造方法によっては35重量%に達する場合もある。衛生用品の製造においては、微粒子の処理は困難であるだけではなく、微粒子はダストを形成する傾向が強いため、特に衛生用品の製造に携わる従業員の健康の点で問題がある。このため、超吸収体粒子は衛生用品の製造に使用する前にふるい分けによって処理し、150μm未満の粒径を有する微粒子を分離する。
【0005】
このようにして分離された超吸収体微粒子を大きな粒子構造に凝集させ、衛生用品の製造に使用することができるようにする方法が文献に開示されている。」
(ウ)「【0054】
内側部分と内側部分と接する表面部分とを有する超吸収体微粒子は、粒子状ポリマー(P)のその他の粒子から分離する前または分離した後に表面近傍の超吸収体微粒子の反応基を後架橋することによって好ましくは得られる。後架橋は熱的、光化学的または化学的に行うことができる。」
(エ)「【0099】
また、本発明は、75重量%、好ましくは85重量%、特に好ましくは90.5重量%、より好ましくは92重量%、さらに特に好ましくは95重量%を超える超吸収体微粒子を含む超吸収体粒子であって、
(A1)超吸収体微粒子は、超吸収体微粒子の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは100重量%がERT420.1-99に従って測定した150μm未満の粒径を有すると共に、少なくとも部分的に架橋ポリマーのマトリックスと接触しており、超吸収体粒子に基づいて、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも4重量%の架橋ポリマーがマトリックスを構成し、
(A2)架橋ポリマーは、架橋ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%が酸性基含有モノマーまたはその塩からなり、
(A3)架橋ポリマーが、超吸収体微粒子と異なる化学組成を有するか、物理的特性において超吸収体微粒子と異なり、
(A4)超吸収体粒子が、本明細書に記載する安定性試験を行った後に、超吸収体粒子の総重量に基づいて、50重量%未満、好ましくは30重量%未満、特に好ましくは25重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満のERT420.1-99に従って測定した150μm未満の粒径を有する粒子を含むことを特徴とする超吸収体粒子に関する。」
(オ)「【0106】
上述した超吸収体粒子の好ましい実施形態では、超吸収体粒子は以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを有する。
a1)粒子の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%が、20μm?5mm、好ましくは150μm?1mm、特に好ましくは200?900μmのERT420.1-99による平均粒径を有する粒径分布。
a2)ERT441.1-99による遠心分離保持容量(CRC)が少なくとも5g/g、好ましくは少なくとも10g/g、特に好ましくは少なくとも20?100g/g。
a3)ERT442.1-99による0.7psiでの圧力下吸収(AAP)が少なくとも5g/g、好ましくは少なくとも7g/g、特に好ましくは少なくとも15?100g/g。
a4)ERT470.1-99による16時間の抽出後の水溶性ポリマー含有量が、超吸収体粒子の総重量に基づいて25重量%未満、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは18重量%未満。」
(カ)「【0117】
安定性試験
【0118】
粉末化媒体127g(24個の円筒状の磁器、USストーンウェア社製、1/2”O.D.×1/2”)と粒径が150?850μmの超吸収体ポリマー粒子10gをボールミルポットに秤量した。ボールミルポットを密閉し、ロールミル上で95rpmで6分間回転させた。機械的に圧力を与えた超吸収体をポットから取り出し、100メッシュ篩によって粒径分布を分析した。使用した超吸収体ポリマー粒子の量を考慮に入れ、ERT420.1-99に従って超吸収体ポリマー粒子のふるい分けで100メッシュ篩上に保持された(150μmを超える粒径を有する)粒子の割合を決定することによって、150μm未満の粒径を有する部分を求めた。」
(キ)「【0119】
(実施例)
I.超吸収体微粒子の製造
【0120】
300gのアクリル酸を2分した。一方を429.1gの蒸留水に添加した。トリアリルアミン0.36g、アリルオキシエチレングリコールアクリル酸エステル1.05g、メトキシポリエチレングリコール(22EO)メタクリレート12gを他方のアクリル酸に溶解して、混合物を水に添加した。溶液を10℃に冷却した。次に、233.1gの50%水酸化ナトリウムを温度が30℃を超えないように冷却しながら徐々に添加した。次に、溶液を20℃の窒素でフラッシュし、さらに冷却した。開始温度である4℃に達した時に、炭酸ナトリウム0.9gと開始剤溶液(蒸留水10gに溶解した2,2’-アゾビス-アミノジプロパン-ジヒドロクロリド0.1g、蒸留水10gに溶解したペルオキシ二硫酸ナトリウム0.15g、蒸留水1gに溶解した30%過酸化水素溶液0.1g、水2gに溶解したアスコルビン酸0.01g)を添加した。最終温度に達した後、得られたゲルを粉砕し、150℃で90分間乾燥した。乾燥物は粗く粉末化し、粉砕し、表1の中のデータに従ってふるい分けた。
【0121】
II.作用材料を使用しない場合の超吸収体微粒子の凝集
【実施例1】
【0122】
Huttlin社(BWI Huttlin、Daimlerstrase 7、D-79585 シュタイネン)の流動床コーター「Unilab-5-TJ」内で、製造例Iで得られた表1に示す粒子分布を有する超吸収体微粒子1,600gに、水酸化ナトリウムで50モル%が中和された未架橋ポリアクリル酸(Mw:約100,000g/モル)の20%溶液(架橋剤としての2%のポリグリコール300を含む)400gを20分間にわたって吹き付けた。供給温度は50℃、生成系温度は30?35℃とし、1,698gの最終生産物を得た。水含有量は、使用したポリマー微粒子の水含有量に対して1%増加させた。生成物を190℃で10分間循環空気内で保持した。得られた反応生成物の粒径分布の変化を表1に示す。
【0123】
【表1】
(当審注:摘記は省略する。)」
(ク)「【0128】
III.凝集した超吸収体微粒子の後架橋
【実施例4】
【0129】
攪拌ビーカー内で、実施例1で得た凝集物50gを、蒸留水1gとアセトン2gの混合物に炭酸エチレン250mgを溶解した溶液に、Krups 3-Mix攪拌機の最高速度で攪拌しながらスポイトによって添加し、凝集物をさらに30秒撹拌した。生成物を30分間放置した後、空気循環乾燥棚内で190℃で30分間乾燥した。吸収特性の変化を表4に示す。
【0130】
【表4】
(当審注:摘記は省略する。)」
コ 甲10の記載事項
甲10の実験成績証明書には、次の記載がある。
(ア)4.実験の目的
「特許第6275107号(以下、「本件特許」と記載する。)の請求項1に係る特許発明(以下、「本件発明1」と記載する。)が、特許第3688418号(以下、「甲第1号証」と記載する。)に記載されていることを確認するために、本実験を実施する。」
(イ)5.実験内容
「実験1.物性評価用の吸水性樹脂の製造
・・・粒径150μm未満の吸水性樹脂微粉末(A_(2))を得た。
・・・上記吸水性樹脂造粒物(1)100重量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部、グリセリン0.75重量部、水3重量部、イソプロピルアルコール0.75重量部、及び乳酸0.5重量部からなる表面架橋剤を混合し、200℃で40分間加熱することにより、No.13吸水剤を得た。
実験2.物性評価
実験1で得られた吸水性樹脂微粉末(A_(2))(=1次粒子)、及び吸水性樹脂微粉末(A_(2))の凝集体を表面架橋したNo.13吸水剤(=2次粒子)について、(ア)アスペクト比、及び(イ)中位粒子径を測定した。また、No.13吸水剤 (=2次粒子)について、(ウ)粒子衝突試験後の粒子径保持率、及び(エ)衝突試験後の荷重下の吸水能を測定した。
・・・なお、(ウ)、(エ)の測定で実施する「粒子衝突試験」は、甲第1号証の請求項5に記載された衝撃力(B)を与える操作に変更して行った。」
(ウ)6.実験結果
「上記吸水性樹脂微粉末(A_(2))、No.13吸水剤の物性(ア)?(エ)は以下の通りであった。


サ 甲11
甲11については、原出願の国際公開公報であるため、摘記は省略する。
(3)新規性進歩性について
前記理由2-1?2-4について検討する。
ア 甲1を主引用例とする新規性について(理由2-1)
(ア)甲1発明
甲1の実施例13に注目すると、前記(2)アに摘記した甲1の記載自体から把握できる発明は、以下のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)である。
「a’アスペクト比が不明で、且つ、
b’ 中位粒子径が不明の
c 吸水性樹脂微粉末(A_(2))が凝集した2次粒子の形態を有するNo.13吸水剤であって、
d’ No.13吸水材の有する形態が、アスペクト比が不明で、
e’ 且つ、簡易計算による中位粒子径が382μmであり、
f’ 造粒破壊率が0.9%の
g’ 衝突試験後の荷重下の吸水能が不明である、吸水性樹脂。」
(イ)甲1-13発明
甲1の実施例13に記載された発明は、前記(ア)の甲1発明の構成及び前記(2)コに摘記した甲10の再現実験結果から、以下の発明(以下「甲1-13発明」という。)が本件優先日前に存在したことが推認できる。
「a アスペクト比が1.36で、且つ、
b 中位粒子径が105μmの
c 吸水性樹脂微粉末(A_(2))が凝集した2次粒子の形態を有するNo.13吸水剤であって、
d No.13吸水材の有する形態が、アスペクト比が1.29で、
e 且つ、中位粒子径が391μmであり、
f 粒子衝突試験後の粒子径保持率が99%であり、
g 衝突試験後の荷重下の吸水能が20g/ml以上、である、吸水性樹脂。」
(ウ)一致点の検討
a アスペクト比について
甲1-13発明の1.36というアスペクト比は、有効桁数を2桁にすると1.4となる。本件発明1及び2における構成A”においては、1.4以上とされており、有効桁数は2桁である。甲1-13発明の構成aは、本件発明1及び2における構成A”と相違がない。
b 一次粒子の中位粒子径について
甲1-13発明の一次粒子径は、本件発明1及び2における構成Bの数値範囲に含まれるので相違がない。
c 2次粒子の形態について
甲1-13発明の形態と本件発明1及び2における構成Cとは、相違がない。
d 2次粒子のアスペクト比について
甲1-13発明の2次粒子のアスペクト比1.29は、本件発明1及び2における構成Dの数値範囲に含まれるから、相違がない。
e 2次粒子の中位粒子径について
甲1-13発明の2次粒子の中位粒子径391μmは、本件発明1の構成Eの数値範囲に含まれるが、本件発明2の構成E’の数値範囲には含まれない。
f 2次粒子の粒子衝突試験後の粒子径保持率について
甲1-13発明の粒子衝突試験後の粒子径保持率は、99%であるから、本件発明1及び2の構成F”の数値範囲(82?90%)には含まれない。
(エ)甲1からの新規性について
前記(ウ)で検討したように、甲1-13発明は、本件発明1との対比では、粒子衝突試験後の粒子径保持率において相違があり、この相違は実質的なものである。また、甲1-13発明は、本件発明2との対比では、粒子衝突試験後の粒子径保持率及び2次粒子の中位粒子径とにおいて相違があり、この相違は実質的なものである。したがって、本件発明1、2及びそれらを引用する本件発明3、5?9は、甲1-13発明に対して相違があり、新規性を欠くということができない。
(オ)小括
本件発明は、甲1-13発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明ではないから、特許法第113条第2号に該当せず、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
イ 甲2を主引用例とする進歩性について(理由2-2)
(ア)甲2の実施例3には、水溶液重合法で得られた参考用吸水性樹脂(2)を分級して得られた、平均粒径84μmの吸水性樹脂(b)を造粒して凝集物である造粒粒子(b)を得たこと、得られた造粒粒子(b)の平均粒子径は550mmであったことが開示されている(甲2の【0108】、【0109】、【0080】)。甲2における、吸水性樹脂(b)が1次粒子に相当し、その凝集体である造粒粒子(b)が2次粒子に相当する。
(イ)甲2発明
前記(ア)から次の発明(以下「甲2発明」という。が認定できる。
「a アスペクト比が不明の
b 平均粒子径が84μmの
c 吸水性樹脂(b)から造粒された2次粒子の形態を有する造粒粒子(b)であって、
d 造粒粒子のアスペクト比が1.5以上で、
e 平均粒子径が550μmであり、吸水性樹脂。」
(ウ)対比
本件発明1及び2と甲2発明とを対比すると、本件発明においては、構成A”に対応する、「一次粒子」のアスペクト比が1.4?2.2とする点で、一次粒子のアスペクト比が明らかでない甲2発明と相違する。甲2には、この点は、記載も示唆もされていない。
(エ)申立人は、この点について、甲2の吸水性樹脂(b)は、重合後粉砕されているのであるから、甲10の実験成績証明書と同様のアスペクト比になると主張するが、あくまでも甲10は甲1の実施例13の再現実験したものであるから、甲2発明の吸水性樹脂(b)のアスペクト比は明らかでなく、1.4?2.2の範囲とすることに動機づけもない。
(オ)小括
以上から、本件発明1及び2は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明ではない。したがって、本件発明1、2及びそれらを引用する本件発明3、5?9に係る特許は特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
ウ 甲3を主引用例とする進歩性について(理由2-3)
(ア)甲3には、中位粒子径(d)が30?130μmの球状の1次粒子を得る工程と、1次粒子を凝集させて中位粒子径(D)が200?500μmの2次粒子を得る工程とを含む吸水性樹脂粒子の製造方法(甲3の【請求項1】)が開示されている。したがって、本件発明1及び2の構成B?Cは甲3に記載されている。
(イ)また、甲3には、1次粒子の形状が、真球状、楕円球状などの表面が円滑な球状の単粒子であることが記載されている(甲3の【0032】)。
(ウ)甲3発明
甲3から、次の発明(以下「甲3発明」という。)が認定できる。
「a 略球状(球状または楕円球状)の
b 中位粒子径が30?130μmの
c 1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂粒子であり、
d 吸水性樹脂粒子のアスペクト比が不明で、
e 且つ、中位粒子径が200?500μmであり、
f 粒子衝突試験後の粒径保持率が80%以上であり、
g 衝突試験後の荷重下の吸水能が、30×80%=24ml/g以上である、吸水性樹脂。」
(エ)相違点について
本件発明1及び2と甲3発明とは、本件発明1及び2が構成A”、すなわち、一次粒子のアスペクト比が1.4?2.2と特定されているのに対し、甲3発明では、略球状(球状または楕円球状)である点で相違する。
(オ)甲3の楕円球状という示唆が具体的なアスペクト比を示すものではなく、本件発明1及び2の構成A”のようにアスペクト比を具体的に1.4?2.2の範囲とすることが、本件優先日前に当業者にとって容易想到であったと認めるに足りる証拠はない。
(カ)なお、甲7及び甲8には、前記(2)キ、クに摘記したように、逆相懸濁重合時の粘度を増加させることにより、粒子の平均長径と平均短径の比を1.5?20とすることが、本件優先日前に知られていたと認められるが、粒子の平均長径と平均短径の比(アスペクト比に相当)を調整可能というだけでは、本件発明1及び2の構成A”のようにアスペクト比を具体的に1.4?2.2の範囲とすることが、本件優先日前に当業者にとって容易想到であったということはできないし、甲7及び甲8の具体例では、前記(2)キ(ウ)及び(2)ク(ウ)に摘記したように、本件発明1及び2の構成A”の最大値2.2よりもはるかに大きい比のものしか開示されていない。
(キ)以上から、本件発明1及び2は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明ではない。したがって、本件発明1、2及びそれらを引用する本件発明3、5?9に係る特許は特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
エ 甲9を主引用例とする進歩性について(理由2-4)
(ア)甲9には、少なくとも40重量%が150μm未満の粒径を有する超吸収体微粒子を、架橋性未架橋ポリマーを含む流体と接触させる工程と、前記流体と接触させた前記超吸収体微粒子を20?300℃で加熱することによって前記架橋性未架橋ポリマーを少なくとも部分的に架橋させる工程と、を含む、凝集した超吸収体粒子を製造する方法が記載されている(【請求項1】、【0119】【0120】【0123】)。したがって、本件発明1及び2の構成B?Cは甲9に記載されている。
(イ)甲9には、1次粒子のアスペクト比は明記されていないが、甲9の実施例の段落【0120】には、超吸収体微粒子が、水溶液重合により得られたゲルを粉砕し、乾燥、粉砕して得られたものであることが記載されている。
(ウ)甲9発明
上記から、甲9には、次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認定できる。
「a アスペクト比が不明な、
b 平均粒子径が150μm以下の、
c 超吸収体微粒子が後架橋により凝集した2次粒子の形態の超吸収体粒子であり、
d 超吸収体粒子のアスペクト比が不明で、
e 且つ、平均粒径が200?900μmである吸水性樹脂。」
(エ)対比
本件発明1及び2と甲9発明とを対比すると、本件発明1及び2においては、構成A”に対応する、「一次粒子」のアスペクト比が1.4?2.2とする点で、一次粒子のアスペクト比が明らかでない甲9発明と相違する。甲9には、この点は、記載も示唆もされていない。
(オ)申立人は、この点について、甲9の吸水性樹脂(b)は、重合後粉砕されているのであるから、甲10の実験成績証明書と同様のアスペクト比になると主張するが、あくまでも甲10は甲1の実施例13の再現実験したものであるから、甲9発明の超吸収体微粒子のアスペクト比は明らかでなく、1.4?2.2の範囲とすることに動機づけもない。
(カ)以上から、本件発明1及び2は、甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明ではない。したがって、本件発明1、2及びそれらを引用する本件発明3、5?9に係る特許は特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
4 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)記載要件について
ア 一次粒子の製造方法について
(ア)申立人は、本件特許明細書に記載された実施例においては、一次粒子の製造方法が逆懸濁重合法により得られた楕円球状の一次粒子に限られるから、一次粒子の製造方法に関して特定のない請求項1?3、6?9に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定の要件、いわゆるサポート要件を満たさないと主張する。
(イ)しかしながら、本件発明における課題を解決するために、一次粒子として逆懸濁重合法により得られた楕円球状の一次粒子に限られるということはいえないため、この理由によりサポート要件を満たさないとはいえない。
イ 衝突試験後の荷重下の吸水能について
(ア)申立人は、本件発明1、2の衝突試験後の荷重下の吸水能に上限が規定されていない点で請求項1?3、6?9に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定の要件、いわゆるサポート要件を満たさないと主張する。
(イ)しかしながら、衝突試験後の荷重下の吸水能が高すぎることによって、本件発明1、2が、その課題を解決できないといえないから、この理由によりサポート要件を満たさないとはいえない。
(2)請求項4に関して
ア 申立人は、訂正前の請求項4に対して、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるとも主張した。
イ しかしながら、合議体は、訂正前の請求項4については、明確でないから、甲号証との対比が困難であると考え、記載不備の理由のみを通知した。
ウ 前記第2に記載したとおり、訂正前の請求項4は削除されたため、請求項4に対する異議申立て自体が不適法なものとなった。
(3)分割の適法性について
ア 申立人は、原出願時には、衝突試験後の荷重下の吸水能が「ml/g」で規定されていたのに対し、本件登録時には、「g/g」で規定されているから、分割不適法であり、甲11として提示した原出願の国際公開が引用文献になると主張する。
イ しかしながら、本件訂正によって、衝突試験後の荷重下の吸水能が「ml/g」に訂正されたため、上記アの主張は成り立たない。
(4)甲1に記載された発明に基づく進歩性の欠如
ア 申立人は、甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如も主張した。
イ 甲1発明
甲1の記載自体から認定できる発明は、前記3(3)ア(ア)に記載した甲1発明である。再掲すると、
「a’アスペクト比が不明で、且つ、
b’ 中位粒子径が不明の
c 吸水性樹脂微粉末(A_(2))が凝集した2次粒子の形態を有するNo.13吸水剤であって、
d’ No.13吸水材の有する形態が、アスペクト比が不明で、
e’ 且つ、簡易計算による中位粒子径が382μmであり、
f’ 造粒破壊率が0.9%の
g’ 衝突試験後の荷重下の吸水能が不明である、吸水性樹脂。」
ウ 検討
本件発明1、2と甲1発明とを比較すると、特にアスペクト比の相違についての判断が、前記3(3)イにおける甲2を主引用例とする判断と同様であり、本件発明が甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
なお、前記3(3)ア(イ)に示した甲1-13発明は、そもそも、前記甲1発明と甲1の再現実験結果から推認できる発明であるが、仮にこのことを不問とするとしても、甲1には記載が全くされていない「衝突試験後の粒径保持率」について、その範囲を82?90%にする動機があるとはいえない。
(5)甲4に記載された発明に基づく進歩性の欠如
ア 甲4には、前記3(2)エ(ウ)で摘記したように「略球状体とは、真球状体を含む概念であって、粒子の平均長径と平均短径との比が1.0以上3.0以下、上限が、好ましくは2.0、さらに好ましくは1.5であり、角を有しない、球状又は楕円体状の粒体をいう。略球状体の凝集体とは、一次粒子である略球状体が凝集して、葡萄状の粒子となったものをいう。」と記載されているが、楕円体状の具体例は記載されていない。
イ そして、甲4の記載は、球状体の定義をするものであって、あえて楕円体状の粒体を選択するためのものということはできない。
ウ そして、上記記載が本件発明の構成A”を示唆するものということもできず、本件発明が甲4に記載された発明から当業者が容易に発明できたものということはできない。
(6)甲5又は甲6に記載された発明と甲7又は甲8に記載された発明との組合せに基づく進歩性の欠如
ア 甲5及び甲6は、逆相懸濁重合により製造された吸収体1次粒子を後重合により2次粒子とすることが記載されている。
イ 甲7及び甲8には、前記(2)キ、クに摘記したように、逆相懸濁重合時の粘度を増加させることにより、粒子の平均長径と平均短径の比を1.5?20とすることが、本件優先日前に知られていたと認められるが、粒子の平均長径と平均短径の比(アスペクト比に相当)を調整可能というだけでは、本件発明の構成A”のようにアスペクト比を具体的に1.4?2.2の範囲とすることが、本件優先日前に当業者にとって容易想到であったということはできないし、甲7及び甲8の具体例では、前記(2)キ(ウ)及び(2)ク(ウ)に摘記したように、本件発明の構成A”の最大値2.2よりもはるかに大きい比のものしか開示されていない。
ウ したがって、本件発明は、甲5又は甲6に記載された発明及び甲7又は甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立人意見書における主張について
(1)アスペクト比について
ア 申立人は、本件発明1、2における一次粒子のアスペクト比である1.4?2.2について、一般的な水溶液重合における重合・含水ゲルの乾燥・粉砕後の不定形破砕状吸水性樹脂粉末の一般的な1次粒子のアスペクト比の範囲であると主張し、前記2(2)ア(イ)の参考資料1及びその図面に基いて、(参照;参考資料1のFigure 1. 3.の(a)に示される1次粒子のアスペクト比=20/12=1. 67、Figure 3. 9. に示される1次粒子のアスペクト比=28/18=1. 56)などと主張する。しかしながら、本件特許明細書におけるアスペクト比の測定は、前記1(2)に摘記したように、50個の粒子の平均値により定められるものであり、一つの粒子の写真からアスペクト比を計測しても、対比することも困難である。
イ 申立人は、甲1の図面代用写真である、前記3(2)ア(サ)で摘記した図18から、本件発明1、2における一次粒子のアスペクト比である1.4?2.2であることは読み取れると主張していると解される。しかしながら、申立人は、アスペクト比の計算過程及び計算結果も示していないから、採用できるものではない。
(2)本件発明の効果についての主張
申立人は、「訂正後のアスペクト比の規定は発明の効果のない範囲を含む」と主張し、甲1の図19、図20の例、甲4の図2及び図3、参考資料2の例、参考資料3の例を取り上げて、本件特許明細書の図1における溝Cのような1次粒子間の溝が存在しないから、「繊維に対する固着性の改善」という効果を奏し得ないと主張する。しかしながら、申立人の主張する例においても、2次粒子表面には凹凸が存在し、凹部すなわち溝は存在するものであるから、本件発明が「繊維に対する固着性の改善」という効果を奏し得ないという主張は、その前提に誤りがあり採用できない。
(3)また、申立人は、「本件記載の方法ではアスペクト比を規定できない場合がある」と主張する。この主張の趣旨が明確でないが、2次粒子のSEM写真からは、1次粒子が明確に区別できない場合があるから、1次粒子のアスペクト比が計算できないと主張していると解される。しかしながら、申立人自身が甲10で行ったように、1次粒子のアスペクト比は、1次粒子のSEM写真から、前記1(2)で摘記した本件特許明細書の段落【0125】の方法で計算すべきものであり、申立人の主張は失当である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?3、5?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3、5?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4は、本件訂正により削除されたため、請求項4に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、且つ、中位粒子径(D)が390?2000μmであり、
粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、
衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、
である、吸水性樹脂。
【請求項2】
アスペクト比が1.4?2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50?600μmの1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0?1.7で、且つ、中位粒子径(D)が100?2000μm(200?400μmを除く)であり、
粒子衝突試験後の粒子径保持率が82?90%であり、
衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上、
である、吸水性樹脂。
【請求項3】
吸水性樹脂の粒子径の均一度が1.0?2.2である請求項1又は2に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
1次粒子が、曲面から構成される形状である請求項1?3のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
吸水能保持率が84%以上である、請求項1?3及び5のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
粉体の流動性指数が110以上である、請求項1?3、5及び6のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【請求項8】
請求項1?3及び5?7のいずれかに記載の吸水性樹脂と親水性繊維を配合してなる吸収体。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収体を液体透過性シートと液体不透過性シートで挟持してなる吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-09 
出願番号 特願2015-253656(P2015-253656)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61F)
P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 536- YAA (A61F)
P 1 651・ 537- YAA (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 米村 耕一  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 門前 浩一
横溝 顕範
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6275107号(P6275107)
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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