ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
---|---|
管理番号 | 1353117 |
異議申立番号 | 異議2018-700209 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-03-07 |
確定日 | 2019-05-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6199599号発明「熱融着性フィルム、積層体及び包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6199599号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6199599号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6199599号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-93140号、以下「本願」という。)は、平成25年4月26日に出願人三井化学東セロ株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年9月1日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、平成29年9月20日に特許掲載公報の発行がされたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成30年3月7日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により「特許第6199599号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。 3.以降の手続の経緯 以降の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 6月 4日付け 取消理由通知 平成30年 8月 3日 意見書・訂正請求書 平成30年 8月16日付け 通知書(申立人あて) 平成30年 9月11日 意見書(申立人) 平成30年12月 5日付け 取消理由通知(決定の予告) 平成31年 2月 8日 意見書・訂正請求書 平成31年 2月19日付け 通知書(申立人あて) 平成31年 3月18日 意見書(申立人) (なお、平成31年2月8日付けで訂正請求がされたから、特許法第120条の5第7項の規定により、平成30年8月3日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。) 第2 申立人が主張する取消理由 1.本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)における主張 申立人は、申立書において、下記甲第1号証ないし甲第3号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし4が存するとしているものと認められる。 取消理由1:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由3:本件発明1ないし5は、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載に基づき実施可能であるとはいえないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由4:本件請求項1ないし5の記載では、同各項記載の発明が明確でないから、本件請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 <申立人提示の甲号証> 甲第1号証:特開2012-172124号公報 甲第2号証:三井化学株式会社が発行しているものと認められる「TAFMER A」なるエチレン-α-オレフィン共重合体に係る製品の英文カタログ(頒布日不明・抄訳添付) 甲第3号証:国際公開第2011/129167号 (以下、上記甲第1号証ないし甲第3号証につき「甲1」ないし「甲3」と略していう。) 2.申立人の平成30年9月11日付け意見書における主張 申立人は、上記意見書において、下記甲第4号証及び甲第5号証を提示し、甲第5号証を証拠として、概略、更に以下の取消理由1’及び2’が存するとしているものと認められる。 取消理由1’:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2’:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 <申立人提示の甲号証> 甲第4号証:「プラスチックフィルム・レジン材料総覧2004」2003年12月12日、株式会社 加工技術研究会発行、第431頁 甲第5号証:特開2001-288330号公報 (以下、上記甲第4号証及び甲第5号証につき「甲4」及び「甲5」と略していう。) 第3 当審が通知した取消理由の概要 (1)平成30年6月4日付けで通知した取消理由 当審が上記平成30年6月4日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 「当審は、 申立人が主張する上記取消理由1及び2により、本件発明1ないし5についての特許はいずれも取り消すべきもの、 と判断する。・・(中略)・・ 3.取消理由に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1ないし5は、いずれも、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても、特許を受けることができるものではない。 よって、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。」 (2)平成30年12月5日付けで通知(決定の予告)した取消理由 当審が上記平成30年12月5日付けで通知(決定の予告)した取消理由の概要は、以下のとおりである。 「当審は、 申立人が主張する下記(再掲)取消理由1並びに職権により新たに通知する取消理由1’及び取消理由2’により、本件発明1ないし5についての特許はいずれも取り消すべきもの、 と判断する。以下、詳述する。 取消理由1:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由1’:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2’:本件発明1ないし5は、いずれも、甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 ・・(中略)・・ 4.当審の判断のまとめ よって、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。」 第4 平成31年2月8日付けの訂正請求について 上記平成31年2月8日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。 1.訂正内容 本件訂正は、本件特許に係る特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。(なお、丸数字は、本決定において表現できないので、以下「○1」のように表現する。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「(5)プロピレン重合体成分(A)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.5dl/gの範囲であり、」と記載されているのを、 「(5)プロピレン重合体成分(A)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/gの範囲であり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「・・の範囲であり、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。」と記載されているのを、 「・・の範囲であり、 (6)前記プロピレン重合体組成物は、 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロツク共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「 プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 前記プロピレン重合体成分は、」と記載されているのを、 「プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 当該プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含むものではなく、」に訂正する。 2.検討 なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし5を「旧請求項1」ないし「旧請求項5」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし5を「新請求項1」ないし「新請求項5」という。 (1)訂正の目的要件について 上記訂正事項1ないし3による訂正の目的につき検討すると、訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1に係る発明における「プロピレン重合体成分(A)」の「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)」の範囲につき、「1.5?2.5dl/gの範囲」から上限値を低下させて「1.5?2.3dl/gの範囲」に実質的に限定するものである。 また、訂正事項2及び3に係る訂正では、旧請求項1に係る発明における「プロピレン重合体組成物」について、 「(A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロツク共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物」及び 「当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量部を含むもの」 である各態様を除外することにより、旧請求項1の「プロピレン重合体組成物」を実質的に限定するものである。 してみると、訂正事項1ないし3に係る各訂正は、いずれも、旧請求項1又は同項を引用する旧請求項2ないし5に係る特許請求の範囲を減縮して新請求項1又は同項を引用する新請求項2ないし5としているものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 したがって、上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 (2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし3に係る訂正により、新請求項1及び同項を引用する新請求項2ないし5の特許請求の範囲が旧請求項1及び同項を引用する旧請求項2ないし5の特許請求の範囲に対して実質的に減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし3による訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 (3)一群の請求項等について 本件訂正前の旧請求項2ないし5は、いずれも旧請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (4)独立特許要件について なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし5に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。 3.訂正に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。 第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項 上記訂正後の本件特許に係る請求項1ないし5には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α?オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 当該プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含むものではなく、 (1)プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)とは、(A)/(B)で表した重量比が、80/20?95/5の範囲にあって、 (2)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が2?3.8dl/gの範囲であって、プロピレン単位の含有量が50重量%を超え70重量%未満の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)であり、 (3)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.865?0.900未満(g/cm^(3))であって、組成物中に2?15重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め、 (4)プロピレン重合体組成物のメルトフローレート(230℃)が2?10(g/10分)であり、かつ、エチレン単位の含有量が5?15重量%の範囲であり、 (5)プロピレン重合体成分(A)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/gの範囲であり、 (6)前記プロピレン重合体組成物は、 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕EP+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。 【請求項2】 レトルト食品の包装体に用いられる、請求項1に記載の熱融着性フィルム。 【請求項3】 前記(3)において、成分(B)は、αオレフィン含有量が32?42重量%であって、プロピレン単位の含有量が58重量%以上68重量%以下の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)である請求項1または2記載の熱融着性フィルム。 【請求項4】 請求項1ないし3いずれか一項に記載の熱融着性フィルムの片面に基材層が積層されている、熱融着性積層体。 【請求項5】 請求項4に記載の熱融着性積層体を用いた包装体。」 (以下、上記請求項1ないし5に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。) 第6 当審の判断 当審は、 申立人が主張する各取消理由並びに職権により当審が通知した各取消理由は、いずれも理由がなく、本件発明1ないし5についての特許はいずれも取り消すことはできないもの、 と判断する。以下、詳述する。 1.甲号証に記載された事項及び記載された発明 以下、申立人が主張し当審も先に通知した取消理由1及び2並びに当審が職権により通知した取消理由1’及び2’はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし甲3並びに職権により新たに引用した甲4及び甲5に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1及び甲5に記載された発明の認定を行う。 (1)甲1について ア.甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 (1a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)プロピレン・エチレンブロック共重合体80?96重量%、(b)炭素数3?10のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.86?0.90g/cm^(3)であるエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー2?10重量%、および(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が75?90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.8?2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.5?3.3dl/gであって、かつ、[η]_(H)+0.6≦[η]_(EP)であるポリプロピレン系フィルム。 ・・(中略)・・ 【請求項3】 単層または2層以上のフィルムとアルミニウム箔を有する基材層の片面に請求項1または請求項2に記載のフィルムが積層された積層体。」 (1b) 「【技術分野】 【0001】 本発明はポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関し、さらに詳しくは、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性等に優れ、包装袋または包装袋のシーラントとして大型のレトルト用途にも好適に使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関するものである。」 (1c) 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、パウチの大型化に際しても、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐屈曲白化性、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性等を高いレベルでバランス良く兼備したレトルト包装用シーラントフィルムおよびその積層体を提供することにある。」 (1d) 「【0019】 ここで、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、該ブロック共重合体の20℃キシレン不溶部の割合が75?90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]_(H)と称す)が1.8?2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]_(EP)と称す)が2.5?3.3dl/gであって、かつ、[η]_(H)+0.6≦[η]_(EP)であるプロピレン・エチレンブロック共重合体である。 【0020】 尚、上記20℃キシレン不溶部、および該可溶部とは、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを沸騰キシレンに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間以上放置し、その後、これを析出物と溶液とに濾別した際、析出物を20℃キシレン不溶部と称し、溶液部分(濾液)を乾固して減圧下70℃で乾燥して得られる部分を該可溶部と称す。 【0021】 かかるキシレン不溶部とキシレン可溶部の割合は、該不溶部の割合が75?90重量%の範囲が好ましく、該不溶部が75重量%より小さければ耐ブロッキング性、耐熱性、剛性、耐屈曲白化性が低下し、該不溶部が90重量%より大きければ低温での耐衝撃性が不足する。 【0022】 また、キシレン不溶部の極限粘度([η]_(H))は1.8?2.2dl/gであり、該極限粘度([η]_(H))が1.8dl/gより小さければ耐衝撃性、耐屈曲白化性が不十分となり、2.2dl/gより大きければキャスト成形性が困難になる。 【0023】 また、キシレン可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.5dl/gより小さければフィルムがベタつくなど耐ブロッキング性が悪化し、3.3dl/gより大きければ油性食品を包装した場合、ユズ肌現象が生じ易くなり、また、ゲル、フィッシュアイ等が発生する懸念がある。更に、キシレン可溶部の極限粘度([η]_(EP))は、その不溶部の極限粘度[η]_(H)+0.6より小さければ耐低温衝撃性、ヒートシール強度が低下することから、[η]_(H)+0.6以上が必要であるが、逆に、[η]_(H)+1.0より大きくなるとゲル、フィッシュアイ等が発生し易くなる懸念があることから、[η]_(H)+1.0以下が望ましい。耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の優れた両立を図るためには、かかる関係を満足させることが重要なファクターとなる。 【0024】 尚、キシレン可溶部のエチレン含有率は20?50重量%の範囲が好ましい。該含有率が20重量%より小さければ低温での耐衝撃性が低下し、逆に、50重量%より大きければフィルムの外観及び低温での耐衝撃性が不十分となりやすい。 【0025】 また、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体のメルトフローレートとしては、キャスト成形性の観点及び耐衝撃性の低下やゲル、フィッシュアイの発生懸念の観点から0.5?5g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは、1?3.5g/10分の範囲である。 ・・(中略)・・ 【0028】 共重合体(a)の製造方法として、生産性および耐低温衝撃性の観点から、第1工程で実質的に不活性剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分を重合し、ついで第2工程で気相中でエチレン・プロピレン共重合体部分を重合する方法を用いるのが好ましい。」 (1e) 「【0030】 次に、本発明に用いる(b)成分は、密度0.86?0.90g/cm^(3)のエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーである。 【0031】 すなわち、本共重合体エラストマーは、低結晶性若しくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50?90重量%のエチレンと共重合モノマーのα-オレフィンとのランダム共重合体であり、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。 【0032】 なお、α-オレフィンとしては、炭素数が3?10のプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のものが使用でき、具体的なα-オレフィン共重合体エラストマーとしては、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPRと略称)、エチレン・ブテンランダム共重合体(EBRと略称)、エチレン・オクテンランダム共重合体等を挙げることができ、中でも好ましくはエチレン・プロピレンランダム共重合体或いはエチレン・ブテンランダム共重合体を好ましく用いることができる。 【0033】 かかる共重合体エラストマーの密度は0.86?0.90g/cm^(3)であることが必要であり、密度が0.86g/cm^(3)未満では耐ブロッキング性が悪化し、密度が0.90g/cm^(3)を越えると耐低温衝撃性が悪くなる。 【0034】 また、該共重合体エラストマーのメルトフローレート(MFRと略)としては、190℃、荷重21.18N条件下で、プロピレン・エチレンブロック共重合体との混和性の観点及び耐ブロッキング性の観点から、0.3?6g/10分の範囲が好ましい。 【0035】 該MFRは、より好ましくは、良好なフィルム表面の平滑性が得られることから、0.5?4g/10分の範囲のものが好ましい。」 (1f) 「【0054】 また、本発明は上述したポリプロピレン系フィルムを用いた積層体に関する。本発明に係る積層体は、特に、単層または2層以上のフィルムとアルミニウム箔とが積層された基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルム(以下本フィルムと記載)を積層してなるものである。また、単層または2層以上のフィルムからなる基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルムが積層された積層体である。基材層としては単層または2層以上の透明なフィルムであることが好ましい。本発明の積層体の代表的な構成は、PET-BO/アルミ箔/本フィルム、PET-BO/ON/アルミ箔/本フィルム、PET-BO/アルミ箔/ON/本フィルムである。 【0055】 かかる積層体の製造方法は、積層体の構成フィルムを接着剤を用いて貼合わせる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて本フィルムと基材層の貼合わせには直接ポリプロピレン系樹脂を押出してラミネートする方法も採用できる。 これら積層体は本フィルムをシール層(袋の内面)として、平袋、スタンディングパウチなどに製袋加工され使用される。 【0056】 また、これら積層体の積層構造は、包装袋の要求特性(例えば包装する食品の品質保持期間を満たすためのバリア性能、内容物の重量に対応できるサイズ・耐衝撃性、内容物の視認性など)に応じて適宜選択される。」 (1g) 「【実施例】 【0057】 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。 【0058】 (1)20℃キシレン可溶部の含有量 ポリプロピレンペレット5gを沸騰キシレン(関東化学社製 1級)500mlに完全に溶解させた後に、20℃に降温し、4時間以上放置する。その後、これを析出物と溶液とにろ過して可溶部と不溶部に分離した。可溶部はろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥し、その重量を測定して含有量(重量%)を求めた。 【0059】 (2)重合体および組成物の極限粘度 ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。 【0060】 (3)エチレン含量 高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い、求めた。 プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)中の20℃キシレン可溶部に含まれるエチレンの含有量(重量%)は、次式から計算した。 (20℃キシレン可溶部に含まれるエチレンの含有量)={((a)に含まれるエチレン含有量)-(20℃キシレン不溶部に含まれるエチレンの含有量)×((a)中の該不溶部の含有量)}×100/((a)中の20℃キシレン可溶部の含有量) (含有量の単位:重量%) (4)メルトフローレート(MFR) JIS K7210-1999に準拠し、プロピレン・エチレンブロック共重合体は温度230℃、ポリエチレン系重合体は温度190℃、エチレン・α-オレフィンランダム共重合エラストマーは温度230℃または190℃で、それぞれ荷重21.18Nにて測定した。 【0061】 (5)密度 JIS K7112-1999に基づき、密度勾配管による測定方法で測定した。 ・・(中略)・・ 【0063】 (7)ヒートシール強度 厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(PET-BO)と厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのアルミ箔と本発明のフィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。 積層体構成:PET-BO/接着剤/ON/接着剤/アルミ箔/接着剤/本発明のフィルム この積層体を、平板ヒートシーラーを使用し、シール温度180℃、シール圧力1kg/cm^(2)、シール時間1秒の条件でヒートシールし、135℃で30分レトルト処理した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度でヒートシール強度を測定した。本測定法で135℃で30分間のレトルト処理後のシール強度が60N/15mm以上であれば、業務用の大型用レトルト分野にも良好に使用できる。 ・・(中略)・・ 【0065】 (9)耐低温衝撃性 厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルムと厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのアルミ箔と本発明のフィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。 積層体構成:PET-BO/接着剤/ON/接着剤/アルミ箔/接着剤/本発明のフィルム この積層体2枚を本発明のフィルムが袋の内面になるようにして、富士インパルス社製CA-450-10型ヒートシーラーを使用し、加熱時間1.4秒、冷却時間3.0秒で、製袋サイズ150mm×285mmのスタンディングパウチを作成した。この袋に濃度0.1重量%の食塩水1000cm^(3)を充填した後、135℃で30分レトルト処理する。レトルト処理後の袋を0℃で24時間冷蔵庫で保管した後、50cmの高さから平らな床面に落下させ(n数20個)、破袋に至るまでの回数を記録する。本評価法ではn数20個の平均値で10回以上を耐低温衝撃性良好とした。 【0066】 (10)耐ユズ肌性 厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルムと厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのアルミ箔と本発明のフィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。 積層体構成:PET-BO/接着剤/ON/接着剤/アルミ箔/接着剤/本発明のフィルム この積層体2枚を本発明のフィルムが袋の内面になるようにして、平板ヒートシーラーを使用し、シール温度180℃、シール圧力1kg/cm^(2)、シール時間1秒の条件でヒートシールし、160mm×210mm(内部の寸法)の大きさの3方袋(平袋、シール幅5mm)を作成した。この袋に市販のレトルトカレー(ハウス食品工業社製のレトルトカレー「ククレカレー・辛口」)を充填した後、135℃で30分レトルト処理をした直後の積層体表面の凹凸発生状況を目視判定した。全く発生しないものをランク1、僅かに発生するものをランク2、軽度に発生するものをランク3、明確に発生するものをランク4、重度に発生するものをランク5として評価した。本評価法でランク1、2を耐ユズ肌発生良好とした。 【0067】 (11)耐屈曲白化性 サンプルを135℃で30分レトルト処理をした後、東洋精機製作所製MIT屈曲試験器を用いて、サンプル幅10mm、屈曲角度135度(左右)、荷重514gの条件で、100回屈曲した後、屈曲部の白化状況を目視判定した(n数5個)。全く白化しないものをランク1、僅かに白化するものをランク2、軽度に白化するものをランク3、明確に白化するものをランク4、白化して屈曲部が白くきつい線状となるものをランク5として評価した。本評価方法でランク1、2を耐屈曲白化性良好とした。 ・・(中略)・・ 【0072】 [実施例4] ポリマ(a)として、20℃キシレン不溶部の含有量が86.1重量%、その極限粘度([η]_(H))1.97dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が13.9重量%、その極限粘度([η]_(EP))が2.72dl/g、230℃でのMFRが2.4g/10分であり、酸化防止剤としてSumilizer GP 700ppm及びSumilizer GS 700ppmを含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)ペレットを使用した。 また、エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー(b)として、密度0.88g/cm^(3)、MFR(190℃)3.6g/10分のエチレン・ブテンランダム共重合体(EBRと略称:三井化学株式会社製タフマーA4085)を使用した。 ポリエチレン系重合体(c)としては、実施例3と同様、密度0.950g/cm^(3)でMFR(190℃)が1.1g/10分の高密度ポリエチレンを使用した。 【0073】 前記ポリマ(a)を89重量%、ポリマ(b)を8重量%、ポリマ(c)を3重量%をペレット状態でブレンダーで混合して押出機に供給し、溶融混練して、実施例1と同様に製膜し、厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムはヒートシール性、耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、通常レトルト用途に十分な性能を有するものであった。 【0074】 [実施例5] ポリマ(a)として、20℃キシレン不溶部の含有量が85.5重量%、その極限粘度([η]_(H))1.93dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が14.5重量%、その極限粘度([η]_(EP))が2.75dl/g、230℃でのMFRが2.5g/10分であり、酸化防止剤としてSumilizer GP 1,000ppm含有したプロピレン・エチレンブロック共重体ペレットを使用した。 【0075】 また、エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー(b)として、密度0.88g/cm^(3)、MFR(190℃)0.5g/10分のエチレン・ブテンランダム共重合体(EBRと略称:三井化学株式会社製タフマーA0585)を使用した。 【0076】 ポリエチレン系重合体(c)としては、実施例3と同様、密度0.950g/cm^(3)でMFR(190℃)が1.1g/10分の高密度ポリエチレンを使用した。 【0077】 前記ポリマ(a)を85重量%、ポリマ(b)を8重量%、ポリマ(c)を7重量%をペレット状態でブレンダーで混合して押出機に供給し、溶融混練して、実施例1と同様に製膜し、厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムはヒートシール性、耐低温衝撃性、ユズ肌に優れたものであり、通常レトルト用途に十分な性能を有するものであった。 ・・(中略)・・ 【0086】 [比較例6、7] ポリマ(a)としては、実施例5と同一のものを使用し、ポリマ(b)及びポリマ(c)をそれぞれ表2に示した配合で、実施例5と同様に厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果は表2の通りであり、耐ユズ肌性、耐屈曲白化性が不良であった。」 (1h) 「【0088】 【表2】 」 イ.甲1に記載された発明 甲1には、上記ア.の記載事項(特に【請求項1】及び【請求項3】並びに【0001】に係る記載)からみて、 「包装袋のシーラントとして基材層の片面に積層されて使用されるポリプロピレン系フィルムであって、 当該ポリプロピレン系フィルムが、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体80?96重量%、(b)炭素数3?10のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.86?0.90g/cm^(3)であるエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー2?10重量%、および(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであり、 (a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が75?90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.8?2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.5?3.3dl/gであって、かつ、[η]_(H)+0.6≦[η]_(EP)であるポリプロピレン系フィルム。」 に係る発明(以下「甲1発明1」という。)、 上記ア.の記載事項(特に【請求項1】及び【請求項3】並びに【0065】?【0067】、【0074】?【0075】、【0086】及び【0088】の「比較例6」に係る記載)からみて、 「包装袋のシーラントとして基材層の片面に積層されて使用されるポリプロピレン系フィルムであって、 (a)プロピレン・エチレンブロック共重合体95重量%、(b)密度0.88g/cm^(3)のエチレン・ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製タフマーA4085)5重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであり、 (a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が85.5重量%で、該不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.93dl/gであり、20℃キシレン可溶部の割合が14.5重量%で、該可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.75dl/gであって、かつ、[η]_(H)+0.6≦[η]_(EP)であるポリプロピレン系フィルム。」 に係る発明(以下「甲1発明2」という。)、 「基材層の片面にポリプロピレン系フィルムが積層された包装袋または包装袋のシーラントとしてレトルト用途に使用される積層体であって、 当該ポリプロピレン系フィルムが、甲1発明1又は甲1発明2のポリプロピレン系フィルムである積層体。」 に係る発明(以下「甲1発明3」という。)及び 「2枚の甲1発明3の積層体をポリプロピレン系フィルムを対向させてヒートシールしてなる包装体。」 に係る発明(以下「甲1発明4」という。)が記載されているものといえる。 (なお、甲1発明1ないし甲1発明4を併せて「甲1発明」ということがある。) (2)甲2に記載された事項 甲2には、申立人が申立書第15頁第19行(表)で主張するとおりの、「TAFMER A」なる製品における「A-1085S」及び「A-4085S」なる各グレードのものに係る温度190℃又は230℃で2.16kg/cm^(2)荷重の条件下におけるMFR(メルトフローレート)の数値が、それぞれ、1.2及び3.6(g/10min、190℃)又は2.2及び6.7(g/10min、230℃)であることが記載されている。 (3)甲3に記載された事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0036】次に本発明の背面層の要件は次の通りである。 【0037】即ち、本発明の表面保護フィルムの背面層は、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンから構成することが肝要である。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンのランダム若しくはブロック共重合体、プロピレンとエチレン及びブテンとの共重合体などを挙げることができるが、本発明の構成要件である背面層の表面を粗面化する目的から、プロピレンとエチレンのランダム共重合体単独若しくはホモポリプロピレンとの混合物として用いるのが好ましい。 ・・(中略)・・ 【0039】また、ポリプロピレン系樹脂の230℃下、荷重2.16kg/cm^(2)下でのメルトフローレート(以下MFRと省略する)は5?50g/10分の範囲が好ましい。特に、該MFR10?40g/10分のものは、低温押出でき、かつ、後述の低密度ポリエチレンと組み合わせることで背面層を粗面化し易いことから、より好ましい。尚、2種以上のポリプロピレン系樹脂を用いた場合の混合樹脂のMFRは、測定値があれば、その値を表すが、混合樹脂としてのMFR値が評価されていない場合、それぞれ単独樹脂のMFRの対数をそれぞれの樹脂比率で按分して求めた値を用いるものとする。即ち、樹脂AのMFRを[A]、樹脂BのMFRを[B]とし、その比率をX、Yとすると、混合した樹脂のMFR[C]はX×log[A]+Y×log[B]=log[C]として求めたものとする。」 (4)甲4に記載された事項 甲4には、「タフマー」なる製品における「A-4085」なるグレードのものに係る温度190℃又は230℃でASTM D1238規格の条件下におけるMFR(メルトフローレート)の数値がそれぞれ3.6及び6.7g/10minであり、密度が885kg/m^(3)であることが記載されている。 (5)甲5について ア.甲5に記載された事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 (5a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%であるを有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、並びに(B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であるを有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量%からなるポリプロピレン樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物を押出成形してなるレトルト食品包装用フィルム。」 (5b) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物及びそれを用いたレトルト食品包装用フィルムに関し、さらに詳しくは、プロピレン-エチレン共重合体とエチレン-α-オレフィン共重合体からなり、低温耐衝撃性、ヒートシール強度、透明性、耐屈曲白化性、耐熱性に優れた樹脂組成物及びこの樹脂組成物を成形した食品レトルト食品包装用フィルムに関する。」 (5c) 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、レトルト食品包装用フィルムに不可欠な、低温での良好な耐衝撃性(レトルトパウチに内容物を充填した際の落下破袋強度)とヒートシール強度とを高いレベルで両立させ、しかも透明性及び耐屈曲白化性を、従来のポリプロピレンブロック共重合体を用いたレトルト食品用包装フィルムでは達成困難なレベルまで高めたレトルト食品包装用フィルムを提供することにある。」 (5d) 「【0008】 【発明の実施の形態】本発明のポリプロピレン樹脂組成物において、(A)成分のプロピレン-エチレンブロック共重合体として、以下に示す(a1)?(a3)の性状を有するものを用いる。まず、この共重合体は、(a1)メルトフローレート(MFR)が0.5?20g/10分であることを要する。このMFRが0.5g/10分未満であると、キャスト成形が困難となり、また、MFRが20g/10分を超えると、フィルムの耐衝撃性が低下し、ゲルやフイッシュアイの発生が懸念される。このMFRの好ましい範囲は1?10g/10分である。なお、このMFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃,荷重2160g(21.2N)の条件で測定した値である。 【0009】次に、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであることを要する。パラキシレン不溶部の割合が60重量%未満であると、フィルムの耐ブロッキング性、耐熱性及び剛性が低下し、また、工業的にもフィルムの製造が極めて困難となる。一方、パラキシレン不溶部の割合が90重量%を超えると、フィルムの低温での耐衝撃性が低下する。パラキシレン不溶部の割合は好ましくは70?90重量%である。なお、このパラキシレン不溶部量の測定方法については後述する。パラキシレン不溶部の極限粘度〔η〕_(H)が1.5デシリットル/g未満であると、フィルムの耐衝撃性、透明性及び耐屈曲白化性が不十分となる。また、この極限粘度〔η〕_(H)が2.8デシリットル/gを超えると、MFRが小さくなるため、キャスト成形性が悪化する。極限粘度〔η〕_(H)は、好ましくは1.5?2.3デシリットル/gである。なお、パラキシレン不溶部の極限粘度〔η〕_(H)は、135℃デカリン中において測定した値である。 【0010】さらに、(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%であることを要する。パラキシレン可溶部の割合は好ましくは30?10重量%である。なお、このパラキシレン可溶部の割合は、試料の総量から上記不溶部の値を引いた値である。パラキシレン可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5デシリットル/g未満であると、フィルムの耐ブロッキング性が悪化し、フィルムがべたついたり、ラミネートや製袋等の二次加工適性が悪化したりする。また、この極限粘度〔η〕_(EP)が2.8デシリットル/gを超えると、フィルムの透明性が悪化し、ゲルやフイッシュアイの発生が懸念される。極限粘度〔η〕_(EP)は、好ましくは1.5?2.5デシリットル/gである。なお、パラキシレン可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)は、135℃デカリン中において測定した値である。〔η〕_(EP)>〔η〕_(H)+1であると、フィルムの透明性が悪化するなどの不都合が生じる。好ましくは、〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+0.5である。パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10重量%未満であると、低温におけるフィルムの耐衝撃性が不十分となり、また、このエチレン単位含有量が35重量%を超えると、フィルムの透明性及び耐屈曲白化性が不十分である上に、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体の配合によるフィルムの透明性及び耐屈曲白化性の改良効果が認められない。なお、エチレン単位の測定法については後述する。」 (5e) 「【0011】本発明のポリプロピレン樹脂組成物において、(B)成分のエチレン-α-オレフィン共重合体として、以下に示す(b1)?(b3)の性状を有するものを用いる。まず、この共重合体は、(b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であることを要する。このMFRが0.5g/10分未満であると、ポリプロピレン中での分散性が悪くなるため、フィルムの透明性及び耐屈曲白化性が悪化することとなり、また、MFRが20g/10分を超えると、フィルムの低温での耐衝撃性が十分ではなく、耐ブロッキング性が悪化することなども懸念される。このMFRの好ましい範囲は1?10g/10分である。なお、このMFRは、(A)成分と同様の条件で測定した値である。 【0012】次に、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であることを要する。エチレン単位の含有量が30重量%未満であると、フィルムの低温での耐衝撃性が低下し、また、エチレン単位の含有量が90重量%を超えると、フィルムの耐衝撃性が低下し、外観不良となる。エチレン単位の含有量は好ましくは50?85重量%である。なお、エチレン単位の測定法については後述する。さらに、(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であることを要する。極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときに、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g未満であると、ポリプロピレン樹脂組成物に改質材を添加しても、レトルト用ポリプロピレン共重合体フィルムにおける重要な実用評価物性の一つである落下破袋強度が改善されず、また、耐ブロッキング性の悪化が著しいため、レトルト食品包装用フィルムとして不適当である。また、極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときに、〔η〕_(EPR)>〔η〕_(EP)+0.5であると、フィルムの透明性及び耐屈曲白化性が悪化し、ゲルやフイッシュアイが発生する可能性がある。一方、極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g未満であっても、改質材の添加による落下破袋強度の改良効果が認められる。但し、極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときに、〔η〕_(EPR)>〔η〕_(EP)+0.5であると、フィルムの透明性及び耐屈曲白化性が悪化し、ゲルやフイッシュアイが発生する可能性がある。極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときに、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.8デシリットル/g未満であると、フィルムの透明性及び耐屈曲白化性の更なる改良効果が認められるため、好ましい。(A)成分と(B)成分の配合量は、(A)成分90?99重量%に対して(B)成分10?1重量%であるが、(B)成分の配合量が1重量%未満であると落下破袋強度が不十分となり、10重量%を超えるとレトルト処理後のフィルムのヒートシール温度の低下を招くため、レトルト食品包装用フィルムとして不適当である。好ましくは(A)成分90?97重量%に対して(B)成分10?3重量%である。」 (5f) 「【0023】 【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例等で用いた試験方法は、以下のとおりである。 〔樹脂の特性〕 (1)メルトフローインデックス(MFR)の測定 JIS K 7210に準拠し、温度230℃,荷重2160g(21.2N)の条件で測定した値である。 (2)沸騰パラキシレン溶出試験 パラキシレン不溶部の割合は、パラキシレン700ミリリットルに試料5g及び酸化防止剤としての2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)1gを添加し、加熱しながら攪拌して沸騰温度まで昇温し、完全に溶解させたのち、攪拌しながら25℃になるまで8時間以上放冷し、析出した成分をろ紙によりろ取し、不溶部として求めた値である。パラキシレン可溶部の割合は、サンプル総量から上記不溶部の値を除いた値とした。 (3)極限粘度〔η〕の測定 パラキシレン不溶部の極限粘度〔η〕_(H)の測定は、上記不溶部量の測定に採取したパウダーをよく乾燥したのち、135℃デカリン中において、極限粘度〔η〕_(H)を測定する。同可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)は、以下に示す方法で測定した値である。すなわち、パラキシレン700ミリリットルに試料5g及び酸化防止剤としての2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)1gを添加し、加熱しながら攪拌して沸騰温度まで昇温し、完全に溶解させたのち、攪拌しながら25℃になるまで8時間以上放冷し、析出した成分をろ紙によりろ別する。得られたろ液を大過剰のメタノールに投入して析出させ、ろ紙によりろ別して、これをパラキシレン可溶部とする。次によく乾燥したのち、135℃デカリン中において、極限粘度〔η〕_(EP)を測定する。エチレン-α-オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕_(EPR)も同様に135℃デカリン中において測定する。 ・・(中略)・・ 【0027】〔キャスト成形によるフイルムの作製〕スクリュー径が40mmである単軸押出機にダイス幅500mmのコートハンガー型Tダイスを取り付けたキャスト成形機を用いて、ダイス出口温度250℃、スクリュウ回転数80rpm、チルロール温度30℃、引取速度7.5m/分で厚さ70μmのフイルムを成形した。なお、フイルムにはコロナ処理を施した(処理密度80W/m^(2)/分)。得られたフイルムのフイルム物性の評価を以下に述べる方法にて行った。 〔ラミネート及び製袋〕次いで、このフイルムを外面からPET(12μm)/アルミ箔(7μm)/当該フイルム(60μm)からなる構成で接着剤を介してドライラミネートした。用いた接着剤は武田薬品製A-536/A-50(主剤/硬化剤)を使用し、ラミネート後接着剤の効果のために40℃/5日間エージングを実施した。ラミネートフイルムは下記条件で製袋を行い、150mm×150mmのサイズの平袋を作成した。シール温度はサイドシールが200℃/210℃(2回シール)で、ボトムシールが190℃であった。シール圧力は0.3MPaで、シール時間は0.7秒であった。製袋速度は36袋/分であった。 【0028】・・(中略)・・ (4)ヒートシール強度 上記のように製袋して得た袋に水120ccを充填し、袋の上端をインパルスシーラーにてヒートシールし、120℃、2.0気圧(0.2MPa・G)にて30分間レトルト処理を行った。得られた包装品の実用強度として、レトルト処理前と後のヒートシール強度を測定した。なお、ヒートシール強度については、製袋した袋のサイドシール部を引張試験機にてクロスヘッド速度300mm/分、ロードセル10kgの条件にて剥離する強度を測定する。 (5)落下破袋強度 作製したレトルトパウチに水200ミリリットルを充填し、インパルスシーラーでトップシールを行う。次いで、これをレトルト試験機にて120℃,0.2MPaで30分間レトルト処理を行う。このサンプルを0℃にて24時間以上保管し、同様に作製したサンプルを1袋を重ねて固定した後、90cmの高さからアルミニウム製のパッドに水平に落下させて、袋が破れるまで落下を繰り返し、その落下の平均回数(15回試験した平均)を求めた。 【0029】製造例1 (プロピレン-エチレンブロック共重合体の製造) ・・(中略)・・ 【0030】(4)重合 前段として、内容積200リットルの攪拌機付き重合装置(R-1)に、上記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子換算で3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを413ミリモル/hr(7.5ミリモル/kg-PP)で、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを105ミリモル/hr(1.9ミリモル/kg-PP)でそれぞれ供給し、重合温度80℃、全圧3MPa・Gでプロピレンを重合させた。この際、プロピレン及び水素の供給量を、第2表に示すガス組成になるように調整した。次いで、R-1から連続的にパウダーを抜き出し、内容積200リットルの攪拌機付き重合装置(R-2)へ移送した。R-2では重合温度50℃、全圧1.1MPa・Gでプロピレンとエチレンを共重合させた。この際、プロピレン,エチレン及び水素の供給量を、第2表に示すガス組成になるように調整した。このようにして得られたポリマーの特性を第2表に併記する。 製造例2 重合時のガス組成を第2表に示すように変更した以外は、製造例1と同様にしてプロピレン-エチレンブロック共重合体を作製した。 製造例3 ブロックポリプロピレン(出光石油化学(株)製,F-454NP)を使用した。 【0031】 【表2】 【0032】実施例1 製造例1で得られた共重合体100重量部(150kg)に、酸化防止剤としてのイルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.1重量部とイルガフォス168(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)0.1重量部、中和剤としてのステアリン酸カルシウム0.05重量部及びハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製,DHT-4A)0.05重量部を配合し、2軸押出機にて混練、造粒してペレットを得た。得られたペレット9.5kgと、エチレン-α-オレフィン共重合体(三井化学(株)製,タフマーP-0480)0.5kgをタンブラーブレンダーで混合した。次いで、キャスト成形機にて前述の方法により厚さ70μmのキャストフィルムを成形した。エチレン-α-オレフィン共重合体の特性を第3表に、得られたフィルムの物性評価を第4表に示す。 実施例2?10及び比較例1?3 実施例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体の種類、エチレン-α-オレフィン共重合体の種類及び配合量を第3表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストフィルムを成形した。得られたフィルムの物性評価結果を第4表に示す。 比較例4?6 製造例1?3に示すプロピレン-エチレンブロック共重合体からなる組成物のペレット10kgのみを用いてキャストフィルムを成形した(エチレン-α-オレフィン共重合体を配合しない)。得られたフィルムの物性評価結果を第4表に示す。 【0033】 【表3】 【0034】 【表4】 【0035】 【表5】 【0036】 【表6】 【0037】注)EBM○1:ジェイエスアール(株)製,EBM-2041P EBM○2:三井化学(株)製,タフマーA-1085 EBM○3:三井化学(株)製,タフマーA-0585 EPR :三井化学(株)製,タフマーP-0480 【0038】 【表7】 【0039】 【表8】 【0040】 【表9】 【0041】 【表10】 【0042】実施例1?4と比較例4とを比べると、 (B)エチレン-α-オレフィン共重合体(以下、(B)成分)が配合されていない比較例4は、落下破袋強度が著しく低く、レトルト食品包装フィルム用材料に適していないことがわかる。実施例5?10と比較例5とを比べると、(B)成分が配合されていない比較例5は、落下破袋強度が著しく低く、レトルト食品包装フィルム用材料に適していないことがわかる。比較例1は、プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gであるにもかかわらず、(B)成分の極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g未満であって本発明の範囲外であり、この点以外は実施例5と同様のものである。しかし、実施例5のフィルムの方がブロッキングし難いうえ、落下破袋強度も高いものである。比較例2と実施例6とを比べても同様である。比較例3は、(A)プロピレン-エチレンブロック共重合体における(a3)の条件を満たさない以外は実施例6と同様のものであるが、比較例3のフィルムは耐屈曲白化性が著しく劣るものである。 【0043】 【発明の効果】本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、低温耐衝撃性、ヒートシール強度、透明性、耐屈曲白化性、耐熱性に優れたフィルムを与えるものであり、この樹脂組成物を成形したフィルムはレトルト食品包装用フィルムとして好適に用いられる。」 イ.甲5に記載された発明 上記ア.の記載事項(特に下線部の記載)からみて、甲5には、 「(A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%であるを有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、並びに(B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であるを有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量%からなるポリプロピレン樹脂組成物を押出成形してなるレトルト食品包装用フィルム。」 に係る発明(以下「甲5発明1」という。)、 「甲5発明1のレトルト食品包装用フィルムに基材フィルムをラミネートしてなる積層体。」 に係る発明(以下「甲5発明2」という。)及び 「2枚の甲5発明2の積層体を、レトルト食品包装用フィルムを対向させてヒートシールしてなる包装体。」 に係る発明(以下「甲5発明3」という。)が記載されているものといえる。 (なお、上記甲5発明1ないし甲5発明3を併せて「甲5発明」ということがある。) 2.取消理由に係る検討 (1)プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体について(前提事項) 本件発明と甲1発明又は甲5発明とを対比・検討するにあたり、前提として、甲1発明における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」又は甲5発明における「(A)」成分の「プロピレン-エチレンブロック共重合体」のような、プロピレンとエチレンなどのα-オレフィンとのブロック共重合体につき検討すると、当該「ブロック共重合体」は、一般的に、プロピレン単独又はプロピレンを主成分とする単量体を第1段階として重合した上で、プロピレンとエチレンなどのα-オレフィンとからなる単量体混合物を第2段階として重合する多段重合により製造されたものと理解するのが当業者において自然であって、第1段階で製造されたプロピレン単独又はプロピレンを主成分とする単量体に基づくプロピレン系重合体成分と第2段階で製造されたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(α-オレフィンが過大量であればα-オレフィン系重合体)成分とが独立して混在する混合物となることも当業者に自明である(必要ならば下記ホームページに記載された参考情報、甲1【0028】及び【0029】、甲5【0013】並びに本件特許明細書【0038】を参照。)。 してみると、甲1発明における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」又は甲5発明における「(A)」成分の「プロピレン-エチレンブロック共重合体」は、いずれも、プロピレン系重合体成分とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分とを含有する混合物であるものと認められる。 参考情報(URL):http://www.primepolymer.co.jp/technology/material/pp/02.html及びhttp://www.primepolymer.co.jp/technology/material/pp/04.html (2)取消理由1及び2について 本件の各発明につき、甲1に記載された発明に基づくものである取消理由1及び2を併せて、順次検討する。 ア.本件発明1について ア-1.甲1発明1に基づく検討 (ア)対比 上記(1)の前提事項に照らすと、甲1発明1における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、プロピレン系重合体成分とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分とを含有するものであるから、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)」と「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」とを含有する混合物に相当するものと認められる。 また、甲1発明1における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」の「20℃キシレン不溶部」及び「可溶部」は、20℃において、ポリプロピレンが、トルエン、キシレンなどの溶媒に対して難溶又は不溶であるのに対して、エチレン-プロピレンランダム共重合体などのポリエチレン系重合体が同各溶媒に膨潤・可溶であることが当業者に自明である(必要ならば下記参考文献A参照。)から、それぞれ、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)」及び「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」に相当するものと認められ、さらに、甲1発明1における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が75?90重量%で」は、残部が「可溶部」であるから、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)とは、(A)/(B)で表した重量比が、80/20?95/5の範囲にあって」と、「80/20?90/10」の範囲で重複する。 そして、甲1発明1における「(b)炭素数3?10のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.86?0.90g/cm^(3)であるエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー2?10重量%」は、炭素数4?10のα-オレフィンを含有する点で、本件発明1における「エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)」及び「エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.865?0.900未満(g/cm^(3))であって」に相当し、「組成物中に2?15重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め」に「2?10重量%」の範囲で重複する。 なお、甲1発明1における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体80?96重量%、(b)炭素数3?10のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.86?0.90g/cm^(3)であるエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー2?10重量%、および(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%からなる樹脂組成物」は、「(c)」成分を特に含有する点で、本件発明1における「(6)前記プロピレン重合体組成物は、(A)下記性状(a1)?(a3)(具体的性状は省略)を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、並びに(B)下記性状(b1)?(b3)(具体的性状は省略)を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量%からなるポリプロピレン樹脂組成物」に該当しないものであり、当該「プロピレン重合体ではない」との点に相当し、また、甲1発明1における「包装袋のシーラントとして基材層の片面に積層されて使用されるポリプロピレン系フィルム」は、ポリプロピレン系フィルムの部分で熱による接合・融着することにより、包装袋をシールするものと理解するのが自然であるから、本件発明1における「基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム」に相当するものと認められる。 してみると、本件発明1と甲1発明1とは、 「プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α?オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 (1)プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)とは、(A)/(B)で表した重量比が、80/20?90/10の範囲にあって、 (3)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.865?0.900未満(g/cm^(3))であって、組成物中に2?10重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め、 (6)前記プロピレン重合体組成物は、 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕EP+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。」 で一致しており、以下の点で相違している。 相違点a1:「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」につき、本件発明1では「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が2?3.8dl/gの範囲であって、プロピレン単位の含有量が50重量%を超え70重量%未満の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)であ」るのに対して、甲1発明1では「可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.5?3.3dl/gであって」、プロピレン単位の含有量につき特定されていない点 相違点a2:「プロピレン重合体組成物」につき、本件発明1では「メルトフローレート(230℃)が2?10(g/10分)であり、かつ、エチレン単位の含有量が5?15重量%の範囲であ」るのに対して、甲1発明1では、樹脂組成物のメルトフローレート及びエチレン単位の含有量につき特定されていない点 相違点a3:「プロピレン重合体成分(A)」につき、本件発明1では「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/gの範囲であ」るのに対して、甲1発明1では「不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.8?2.2dl/gであ」る点 相違点a4:本件発明1では、「当該プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含むものではな」いのに対して、甲1発明1では「ポリプロピレン系フィルム」を構成する「樹脂組成物」が「(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%」を含む点 参考文献A:「プラスチック事典」1997年9月20日(初版第2刷)、株式会社朝倉書店発行、第342頁及び第358頁 (イ)検討 事案に鑑み、相違点a4につきまず検討すると、上記相違点a4は、本件発明1において「プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含むものではな」いことを特に規定したものであり、当該「プロピレン重合体組成物」において「密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含む」態様全てを意図的に除外したものと認められるから、当該「ポリエチレン系重合体」を「(A)成分」、「(B)成分」及び「(C)成分」とは独立して含有する態様のみならず、「(B)成分」又は「(C)成分」の少なくとも一部として「密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含む」態様をも除外しているものと認められる。 (なお、甲1発明1における「(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体」としては、甲1の記載(【0036】等)からみて、ポリエチレンのみならず、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、すなわちプロピレン・α-オレフィン(エチレンの場合)共重合体又はエチレン・α-オレフィン共重合体まで包含されるものである。) してみると、甲1発明1では、「(c)密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%」を意図的に含有するものであるから、上記相違点a4は、実質的な相違点であるものと認められる。 そして、甲1の記載内容を検討しても、上記「(c)」成分の2?10重量%を含むものではないとすべき技術事項が存するものとは認められず、「(c)」成分を不使用とした場合を「比較例」としているのである(甲1発明2参照)から、甲1発明1において、当業者が「(c)」成分の2?10重量%を含むものではないとすることを動機付ける事項が存するものとも認められない。 したがって、上記相違点a4は、実質的な相違点であり、甲1発明1において、当業者が適宜なし得ることということもできない。 (ウ)小括 よって、他の相違点につき検討するまでもなく、上記相違点a4で実質的に相違し、当業者が適宜なし得る事項でもないから、本件発明1が、甲1発明1であるということはできず、また、甲1発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 ア-2.甲1発明2に基づく検討 (ア)対比 本件発明1と上記甲1発明2とを対比するにあたり、上記(1)の前提事項に照らすと、甲1発明2における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、プロピレン系重合体成分とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分とを含有するものであるから、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)」と「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」とを含有する混合物に相当するものと認められる。 また、甲1発明2における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」の「20℃キシレン不溶部」及び「可溶部」は、20℃において、ポリプロピレンが、トルエン、キシレンなどの溶媒に対して難溶又は不溶であるのに対して、エチレン-プロピレンランダム共重合体などのポリエチレン系重合体が同各溶媒に膨潤・可溶であることが当業者に自明である(必要ならば上記参考文献A参照。)から、それぞれ、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)」及び「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」に相当するものと認められ、さらに、甲1発明2における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が85.5重量%で」、「20℃キシレン可溶部の割合が14.5重量%で」あるから、本件発明1における「プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)と」の「(A)/(B)で表した重量比が、80/20?95/5の範囲」にあることが明らかであって、「密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量部を含むもの」ではないことも明らかである。 そして、甲1発明2における「(b)密度0.88g/cm^(3)のエチレン・ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製タフマーA4085)」は、本件発明1における「エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)」及び「エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.865?0.900未満(g/cm^(3))であって」に相当し、甲1発明2における「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体95重量%、(b)密度0.88g/cm^(3)のエチレン・ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製タフマーA4085)5重量%からなる」は、その重量比の点で、本件発明1における「組成物中に2?15重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め」との範囲にあることが明らかである。 なお、甲1発明2における「包装袋のシーラントとして基材層の片面に積層されて使用されるポリプロピレン系フィルム」は、ポリプロピレン系フィルムの部分で熱による接合・融着することにより、包装袋をシールするものと理解するのが自然であるから、本件発明1における「基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム」に相当するものと認められる。 してみると、本件発明1と甲1発明2とは、 「プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 当該プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量部を含むものではなく、 (1)プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)とは、(A)/(B)で表した重量比が、85.5/14.5であって、 (2)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)は、極限粘度が2.75dl/gであり、 (3)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.885(g/cm^(3))であって、組成物中に5重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め、 (5)プロピレン重合体成分(A)は、極限粘度が1.93dl/gであり、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。」 で一致し、下記の点で相違しているものと認められる。 相違点b1:「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」につき、本件発明1では「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が2?3.8dl/gの範囲であって、プロピレン単位の含有量が50重量%を超え70重量%未満の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)であ」るのに対して、甲1発明2では「可溶部」に係る「極限粘度([η]_(EP))が2.75dl/g」であり、その測定条件及びプロピレン単位の含有量につき特定されていない点 相違点b2:「プロピレン重合体組成物」につき、本件発明1では「メルトフローレート(230℃)が2?10(g/10分)であり、かつ、エチレン単位の含有量が5?15重量%の範囲であ」るのに対して、甲1発明2では、樹脂組成物のメルトフローレート及びエチレン単位の含有量につき特定されていない点 相違点b3:「プロピレン重合体成分(A)」につき、本件発明1では「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/gの範囲であ」るのに対して、甲1発明2では「不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.93dl/gであ」る点 相違点b4:「プロピレン重合体組成物」につき、本件発明1では「(A)下記性状(a1)?(a3)(具体的性状は省略)を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、並びに(B)下記性状(b1)?(b3)(具体的性状は省略)を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量%からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない」のに対して、甲1発明2では、樹脂組成物が上記「ポリプロピレン樹脂組成物」に該当するのか否か不明である点 (イ)相違点に係る検討 事案に鑑み、上記相違点b1及びb3につき併せて検討すると、甲1には、甲1発明2における各極限粘度の測定方法につき「ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定」することが記載されている(【0059】)ところ、技術常識からみて、本件発明における「135℃デカリン中で測定」した場合と甲1発明2における「135℃テトラリン中で測定」した場合とでは、同一試料につき、前者を100とした際に後者がおおよそ78の測定値となることが当業者に自明である(必要ならば下記参考文献B参照。)。 してみると、甲1発明2における135℃テトラリン中で測定した「可溶部の極限粘度([η]_(EP))が2.75dl/g」及び「不溶部の極限粘度([η]_(H))が1.93dl/g」なる各粘度値は、それぞれ、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)に直すと「3.53dl/g」及び「2.47dl/g」となるものと解されるところ、前者は、本件発明1における「プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)」に係る「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が2?3.8dl/g」なる範囲に、甲1発明2に係るものも含まれるものの、後者は、「プロピレン重合体成分(A)」に係る「極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/g」なる範囲に、甲1発明2に係るものが含まれるものでないから、上記相違点b1は、実質的な相違点であるとはいえないが、上記相違点b3は、実質的な相違点である。 また、甲1には、上記相違点b3に係る「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体」の135℃テトラリン中で測定した「不溶部の極限粘度([η]_(H))」につき、「1.8?2.2dl/g」の範囲が好適でありそれ以下となると耐衝撃性、耐屈曲白化性が不十分となることが記載されており(【請求項1】及び【0022】)、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)に直すと「2.30?2.82dl/g」の範囲が好適であることが記載されているに等しい事項であるから、甲1発明2において、当該「不溶部の極限粘度([η]_(H))」が2.3dl/g以下のものを使用すべき動機となる事項が存するものでもなく、むしろ阻害要因が存するものとも認められる。 したがって、上記相違点b3は、実質的な相違点であり、甲1発明2において、当業者が適宜なし得ることということもできない。 参考文献B:社団法人日本分析化学会ら編「高分子分析ハンドブック」1985年9月1日(第2刷)、株式会社朝倉書店発行、第990?993頁 (ウ)小括 よって、他の相違点につき検討するまでもなく、上記相違点b3で実質的に相違し、当業者が適宜なし得る事項でもないから、本件発明1が、甲1発明2であるということはできず、また、甲1発明2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 ア-3.本件発明1に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ.本件発明2ないし5について 本件発明1を引用する本件発明2ないし5につき検討すると、上記ア.で説示したとおりの理由により、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないのであるから、本件発明1に係る事項を全て具備する本件発明2ないし5のいずれについても、甲1発明1又は甲1発明2並びに同各発明を引用する甲1発明3又は甲1発明4、すなわち、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ.取消理由1及び2に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、いずれも甲1に記載された発明に基づくものである取消理由1及び2は、本件発明1ないし5につき、いずれも理由がない。 (3)取消理由1’及び2’について 本件の各発明につき、甲5に記載された発明に基づくものである取消理由1’及び2’を併せて、順次検討する。 ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲5発明1とを対比すると、甲5発明1の「ポリプロピレン樹脂組成物を押出成形してなるレトルト食品包装用フィルム」は、甲5発明2のとおり、基材フィルムをラミネートして積層体とした後、甲5発明3のとおり、2枚の当該積層体につき、レトルト食品包装用フィルムを対向させてヒートシールして包装体を形成するものであるから、本件発明1における「プロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって」「基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム」に相当するものといえる。 してみると、本件発明1と甲5発明1とは、 「プロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。」で一致し、下記の点で相違するものと認められる。 相違点c1:本件発明1では、 「(6)前記プロピレン重合体組成物は、 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕EP+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない」のに対して、甲5発明1では、 「(A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%であるを有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、並びに(B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)○1プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、○2プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であるを有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量%からなるポリプロピレン樹脂組成物」である点 (イ)相違点c1に係る検討 上記相違点c1につき検討すると、本件発明1における「ポリプロピレン樹脂組成物ではない」と意図的に除外されている「ポリプロピレン樹脂組成物」と甲5発明1の「ポリプロピレン樹脂組成物」とは、いずれの技術事項の点においても完全に一致するものであるから、上記相違点c1は実質的な相違点であることが明らかである。 また、甲5の記載を検討しても、甲5発明1における「ポリプロピレン樹脂組成物」に係る技術事項のいずれかを上記の範囲外に変化させることを動機付ける事項が存するものとは認められないから、上記相違点c1につき、甲5発明1において、当業者が適宜なし得ることであるということもできない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲5発明1、すなわち甲5に記載された発明であるということはできず、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 イ.本件発明2ないし5について 本件発明1を引用する本件発明2ないし5につき検討すると、上記ア.で説示したとおりの理由により、本件発明1は、甲5発明1、すなわち、甲5に記載された発明であるということはできず、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないのであるから、本件発明1に係る事項を全て具備する本件発明2ないし5のいずれについても、甲5発明1並びに同発明を引用する甲5発明2又は甲5発明3、すなわち、甲5に記載された発明であるということはできず、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ.取消理由1’及び2’に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、いずれも甲5に記載された発明に基づくものである取消理由1’及び2’は、本件発明1ないし5につき、いずれも理由がない。 (4)取消理由3及び4について 申立人が本件異議申立書で主張し、当審は通知しなかった取消理由3及び4につき併せて以下検討する。 ア.取消理由3について 申立人が主張する取消理由3は、申立書の記載(第27頁第13行?第29頁第15行)からみて、 ・本件発明に係る「プロピレン重合体組成物」における「プロピレン・α?オレフィンランダム共重合体成分(B)」(及び「エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)」)の組成比は、本件特許に係る明細書に記載された方法(【0014】又は【0035】)により、正確に測定・算出することができるものではないか、測定・算出に過度の負担を強いるものであるから、本件特許に係る明細書は、本件発明を実施するための方法が明確かつ充分に開示されておらず、実施可能要件を満たさない、 というものと認められる。 しかしながら、当該「プロピレン重合体組成物」の実施可能要件については、明細書に記載された事項に基づき、当業者がその技術常識に照らして、その組成物を製造できるか否かにつき論ずれば足り、事後的に検証できること(すなわち組成物の各成分組成比を測定・算出できること)までは要しないものと認められる。 そして、技術常識からみて、本件発明に係る「プロピレン重合体組成物」は、(A)、(B)及び(C)の各成分の組成比が既知の原料組成物を更に特定比で混合すること(本件特許に係る明細書の実施例に係る記載参照。)又は(A)、(B)及び(C)の各成分を個別に準備した上で所望の組成比となるような使用量比で混合することなどにより、当業者ならば容易に所望の組成比を有する組成物を製造し、更に当該組成物に基づきフィルムを構成することが可能であることが、当業者に自明であるものと認められる。 してみると、本件特許に係る明細書の記載は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものというべきである。 したがって、上記取消理由3は、理由がない。 イ.取消理由4について 申立人が主張する取消理由4は、申立書の記載(第29頁第16行?第30頁第7行)からみて、 ・本件発明に係る「プロピレン重合体組成物」における「プロピレン・α?オレフィンランダム共重合体成分(B)」(及び「エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)」)の組成比は、本件特許に係る明細書に記載された方法(【0014】又は【0035】)により、正確に測定・算出することができるものではなく、請求項1における「(A)/(B)で表す重量比」につき正確ではないから、本件特許に係る請求項1及び同項を引用する請求項2ないし5の記載では、同各項に係る発明が明確でない、 というものと認められる。 しかしながら、当該「(クレームの)明確性要件」については、その請求項に記載された事項に基づき、当業者がその技術常識に照らして、また、必要に応じて明細書の定義事項などの記載事項を参酌した上で、同項に記載された事項で特定される発明が明確であるか否かにつき論ずれば足りるものと認められる。 そして、本件の請求項1ないし5の記載を検討すると、発明を不明確化するような技術事項が存するものとは認められず、各項の記載において、発明が明確でないとすべきものとも認められない。 してみると、本件の請求項1ないし5の記載では、同各項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が明確であるというべきものである。 したがって、上記取消理由4は、理由がない。 ウ.小括 よって、申立人が主張する上記取消理由3及び4は、いずれも理由がない。 4.当審の判断のまとめ 以上のとおり、申立人が主張する取消理由及び職権により当審が通知した取消理由は、いずれも理由がないから、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第113条各号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、特許第6199599号の特許請求の範囲を平成31年2月8日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認めるとともに、上記訂正後の特許第6199599号の請求項1ないし5に係る特許を維持すべきものである。 よって、上記結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 プロピレン重合体成分(A)と、 プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)と、 エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)と、の混合物からなるプロピレン重合体組成物からなる熱融着性フィルムであって、 当該プロピレン重合体組成物は、当該プロピレン重合体組成物を100重量部としたとき、密度0.94?0.97g/cm^(3)のポリエチレン系重合体2?10重量%を含むものではなく、 (1)プロピレン重合体成分(A)とプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)とは、(A)/(B)で表した重量比が、80/20?95/5の範囲にあって、 (2)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が2?3.8dl/gの範囲であって、プロピレン単位の含有量が50重量%を超え70重量%未満の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)であり、 (3)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(C)は、その密度が0.865?0.900未満(g/cm^(3))であって、組成物中に2?15重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%とする。〕を占め、 (4)プロピレン重合体組成物のメルトフローレート(230℃)が2?10(g/10分)であり、かつ、エチレン単位の含有量が5?15重量%の範囲であり、 (5)プロピレン重合体成分(A)は、極限粘度(デカリン溶媒中、135℃)が1.5?2.3dl/gの範囲であり、 (6)前記プロピレン重合体組成物は、 (A)下記性状(a1)?(a3) (a1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(a2)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで放冷した際のパラキシレン不溶部の割合が60?90重量%で、その不溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(H)が1.5?2.8デシリットル/gであり、及び(a3)沸騰パラキシレンに溶解後、25℃まで冷却した際のパラキシレン可溶部の割合が40?10重量%で、その可溶部の135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EP)が1.5?2.8デシリットル/gで、かつ〔η〕_(EP)≦〔η〕_(H)+1であり、該パラキシレン可溶部のエチレン単位含有量が10?35重量%である を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体90?99重量%、 並びに (B)下記性状(b1)?(b3) (b1)メルトフローレートが0.5?20g/10分であり、(b2)エチレン単位含有量が30?90重量%であり、及び(b3)▲1▼プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が1.5≦〔η〕_(EP)<2.0デシリットル/gのときには、135℃デカリン中における極限粘度〔η〕_(EPR)が1.5デシリットル/g以上で、かつ〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5であり、▲2▼プロピレン-エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕_(EP)が2.0≦〔η〕_(EP)<2.8デシリットル/gのときには、極限粘度〔η〕_(EPR)が〔η〕_(EPR)≦〔η〕_(EP)+0.5である を有するエチレン-α-オレフィン共重合体10?1重量% からなるポリプロピレン樹脂組成物ではない、 基材層と共に包装体を形成する用途に供される熱融着性フィルム。 【請求項2】 レトルト食品の包装体に用いられる、請求項1に記載の熱融着性フィルム。 【請求項3】 前記(3)において、成分(B)は、αオレフィン含有量が32?42重量%であって、プロピレン単位の含有量が58重量%以上68重量%以下の範囲(但し、プロピレン単位の含有量とα-オレフィン単位の含有量の合計を100重量%とする。)である請求項1または2記載の熱融着性フィルム。 【請求項4】 請求項1ないし3いずれか一項に記載の熱融着性フィルムの片面に基材層が積層されている、熱融着性積層体。 【請求項5】 請求項4に記載の熱融着性積層体を用いた包装体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-08 |
出願番号 | 特願2013-93140(P2013-93140) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 537- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 久保 道弘 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
井上 猛 橋本 栄和 |
登録日 | 2017-09-01 |
登録番号 | 特許第6199599号(P6199599) |
権利者 | 三井化学東セロ株式会社 |
発明の名称 | 熱融着性フィルム、積層体及び包装体 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 速水 進治 |