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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01G
管理番号 1353118
異議申立番号 異議2018-700755  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-18 
確定日 2019-05-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6302958号発明「蓄電デバイス及びそれに使用する炭素材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6302958号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕について訂正することを認める。 特許第6302958号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6302958号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年7月15日に特許出願され、平成30年3月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、平成30年9月18日に特許異議申立人 伊藤 範子により特許異議の申立てがされた。そして、平成30年12月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成31年2月14日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成31年2月28日付けで訂正請求があった旨の通知がされ、それに対し、特許異議申立人から何の応答もされなかったものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成31年2月14日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に

「蓄電デバイスの電極に使用する炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料。」と記載されているのを、

「蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に

「互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、請求項1に記載の炭素材料を含んだ蓄電デバイス。」と記載されているのを、

「互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に

「リチウムイオンキャパシタである請求項2に記載の蓄電デバイス。」と記載されているのを、

「リチウムイオンキャパシタである、互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。」に訂正する。

(4)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2及び3については、引用関係の解消を目的とする訂正であるから、当該請求項についての訂正が認められる場合には請求項2及び3は、請求項1とは別の訂正単位とすることを求める。



2.訂正要件についての判断
(1)一群の請求項要件
訂正前の請求項1-3は、請求項2-3が、訂正の対象である請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、これらの請求項は訂正前において一群の請求項に該当する。本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「酸性官能基」および「塩基性官能基」の量を、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である」として範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、訂正事項1に関して、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件特許明細書等」という。)の発明の詳細な説明の段落【0024】に、「この炭素材料CMaの酸性官能基の量は、一例によれば0.10乃至0.9mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至1.0mmol/gの範囲内にある。また、この炭素材料CMaの塩基性官能基の量は、一例によれば0.1乃至0.6mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至0.8mmol/gの範囲内にある。」との記載がされていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、独立形式請求項に改めるための訂正であって、また、訂正前の請求項1の「酸性官能基」および「塩基性官能基」の量を、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である」として範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2に関して、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0024】の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項2は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、独立形式請求項に改めるための訂正であって、また、訂正前の請求項1の「酸性官能基」および「塩基性官能基」の量を、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である」として範囲を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
そして、訂正事項3に関して、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0024】の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項3は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合する。そして、特許権者から、訂正後の請求項2、3について訂正が認められる場合は、請求項1とは、別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕について請求項ごとに訂正することを認める。


第3.特許異議の申立について
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料。

【請求項2】
互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。

【請求項3】
リチウムイオンキャパシタである、互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。」


2.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1-3に係る発明についての特許に対して平成30年12月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1に「塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」と記載され、「モル比」の範囲についてのみ特定され、塩基性官能基の量、及び酸性官能基の量についての範囲は特定されていない。
これに対して、発明の詳細な説明の段落【0024】には「この炭素材料CMaの酸性官能基の量は、一例によれば0.10乃至0.9mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至1.0mmol/gの範囲内にある。また、この炭素材料CMaの塩基性官能基の量は、一例によれば0.1乃至0.6mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至0.8mmol/gの範囲内にある。」と記載され、また、段落【0077】の【表1】の例1?4には、酸性官能基の量が0.38乃至0.50mmol/gの範囲に対して、塩基性官能基の量が0.39乃至0.53mmol/gとして、酸/塩基比を0.7乃至1.3としたものが記載されているものの、酸性官能基の量及び塩基性官能基の量が、各々1.0mmol/g及び0.8mmol/gを超える実施例の記載はされていない。
また、発明の詳細な説明の段落【0049】には、「・・・、塩基性官能基が過剰に存在していると、温度環境を常温から低温へ変化させた場合に、容量が大幅に減少する。」、また、段落【0050】には、「酸性官能基が過剰に存在していると、温度環境を常温から低温へ変化させた場合に、容量が大幅に減少する。」と記載され、さらに、酸性官能基の量が多いと容量が減少することは技術常識(例えば、特開2010-105885号公報(甲第5号証)の段落【0002】等参照。)である。
したがって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にあるとしても、酸性官能基の量及び塩基性官能基の量が、各々1.0mmol/g及び0.8mmol/gを過剰に超えるような場合にも低温環境下で使用した場合に十分な容量を維持し得るという本件特許の効果を奏するかは不明である。
よって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比の範囲についてのみを特定する請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、請求項1に従属する請求項2、3に係る発明についても同様のことがいえる。


(2)当審の判断
本件訂正により、請求項1の「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲」であると規定され、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
請求項2、3に関しても「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲」であると規定され、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

したがって、当審による取消理由で指摘した不備な点は解消され、本件の請求項1ないし請求項3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。


3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
ア.理由1
訂正前の請求項1-3に係る発明は、甲第1号証に記載され発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同条第1項の規定に違反してされたものである。
イ.理由2
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載され発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同条第1項の規定に違反してされたものである。
訂正前の請求項2-3に係る発明は、甲第2号証に記載され発明と技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ.理由3
訂正前の請求項1-3に係る発明は、甲第4号証に記載され発明と甲第5号証の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ.理由4
請求項1に「塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」と記載されているが、発明の詳細な説明には、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲のものしか記載されておらず、酸性官能基及び塩基性官能基の量が該範囲を超えた範囲で本願発明を実施することができるか不明であって、請求項1-3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものである。


甲第1号証 特開2015-56502号公報
甲第2号証 特開2014-34500号公報
甲第3号証 最新 吸着技術、株式会社総合技術センター、平成5年11月24日、第155?167頁
甲第4号証 特開2008-141060号公報
甲第5号証 特開2010-105885号公報


(2)甲号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「【請求項1】
ハイブリッドキャパシタの電極材料として用いられる活性炭であって、該活性炭の中和滴定に基づく塩基性官能基量が0.3mmol/g以下となるように規定されている、ハイブリッドキャパシタ用活性炭。」

b.「【0004】
ところで、ハイブリッドキャパシタは急速充放電が可能なため、自動車等の車両においてエンジン起動時の電力源や加速時のアシストとしての活用が検討されている。かかる車両は、寒冷地や冬季などの低い気温でも作動可能でなければならず、この場合に備えるべき蓄電デバイスとしての要件は、低温での優れた電気特性である。しかしながら、従来の一般的なハイブリッドキャパシタは、常温(例えば25℃)では比較的高い静電容量を示すものであっても、低温(例えば-30℃)では静電容量が著しく低下する場合があった。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、低温での容量低下が起こりにくいハイブリッドキャパシタの構築に資する高性能な活性炭を提供することである。」

c.「【0033】
活性炭前駆体にアルカリ金属化合物を添加した後に行う熱処理は、例えば不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気中において600℃?1000℃の範囲内に最高到達温度を決定するとよい。前記熱処理温度が低すぎると賦活が十分に進行しないため、適当な細孔をもつ活性炭が得られない場合がある。一方、熱処理温度が高すぎると、アルカリ金属化合物が溶融するため、賦活が不十分になる場合がある。従って、賦活工程における熱処理温度は、概ね600℃?1000℃が適当であり、好ましくは650℃?900℃であり、特に好ましくは700℃?800℃である。熱処理時間(最高到達温度での保持時間)は、賦活が十分に進行するまでの時間とすればよく、通常は5時間?30時間であり、好ましくは8時間?20時間であり、特に好ましくは10時間?15時間である。
好ましくは、室温から600℃?1000℃(例えば700℃)の温度域まで3時間?10時間(好ましくは5時間?10時間)程度かけて昇温するとよい(例えば1℃/min?3℃/min)。そして、当該最高到達温度域にて5時間?30時間程熱処理するとよい。このような加熱スケジュールによって活性炭前駆体を熱処理することにより、比較的大きな比表面積をもつ活性炭を得ることができる。
【0034】
上記のようなスケジュールでの熱処理により得られた活性炭を、好ましくは冷却後、純水でpH11?12程度になるまで濾過洗浄することによって、賦活時に残留したアルカリ成分(典型的には未反応のアルカリ金属化合物や生成アルカリ不純物)を除去することができる。なお、ここでの活性炭のpHは、JIS
K 1474に基づく測定によって把握するものとする。」

d.「【0042】
他方、対極となるリチウムイオンキャパシタ用負極は、従来と同様の手法により作製することができる。例えば負極材料としては、リチウムイオンを吸蔵且つ放出可能な材料であればよい。典型例として黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素等から成る粉末状の炭素材料が挙げられる。あるいは、ポリアセチレンやSnなどの材料であってもよい。特に黒鉛粒子は、粒径が小さく単位体積当たりの表面積が大きいことからより急速充放電(例えば高出力放電)に適した負極材料となり得る。
そして正極と同様、かかる粉末状材料を適当な結着材(バインダ)とともに適当な分散媒体に分散させて混練することによって、ペースト状の負極形成用組成物を調製することができる。このペーストを、好ましくは銅やニッケル或いはそれらの合金から構成される集電体上に適当量塗布しさらに乾燥することによって、リチウムイオンキャパシタ用負極を作製することができる。
本発明の活性炭を正極材料に用いるリチウムイオンキャパシタにおいて、従来と同様のセパレータを使用することができる。例えばポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはそれらの積層体)から成る多孔質のシート等を使用することができる。あるいは、セルロース系の不織布を用いてもよい。」

e.「【0045】
<活性炭の製造>
<サンプル1>
まず、活性炭前駆体としての石炭を粉砕機(株式会社ダルトン製 アトマイザーAIIW-5型)を用いて平均粒径100μmまで粉砕し、一次粉砕品を得た。この一次粉砕品1当量に対して粉末の水酸化カリウム3.2当量を添加し、昇降式焼成炉(美濃窯業株式会社製)で焼成し、賦活処理を行った(賦活工程)。焼成温度(最高到達温度)は700℃、焼成時間(最高到達温度での焼成時間)は10時間とし、室温から2℃/minで昇温した。得られた活性炭を純水でpHが11?12程度になるまで濾過洗浄し、さらに0.1Nの硝酸で12時間酸洗浄を行うことで、活性炭に付着した残留アルカリ成分を除去した(酸洗浄工程)。次いで、純水で濾過洗浄を繰り返し、JIS K 1474に基づくpHが4.4になるまで水洗した(水洗工程)。そして、得られた水洗物を110℃で24時間乾燥した後、粉砕機(ユーラステクノ株式会社製 連続粉砕機)に投入して平均粒径3μmまで粉砕し、二次粉砕品を得た。この二次粉砕品を3体積%の水素雰囲気下、昇降式焼成炉(美濃窯業株式会社製)で焼成した。焼成温度(最高到達温度)は700℃、焼成時間(最高到達温度での焼成時間)は5時間とし、室温から2℃/minで昇温した。このようにして、サンプル1に係る活性炭を得た。
【0046】
<サンプル2>
水洗工程においてpHが4.6になるまで濾過洗浄を繰り返した。水洗工程においてpHが4.6になるまで水洗したこと以外はサンプル1と同じ構成とした。
【0047】
<サンプル3>
水洗工程においてpHが3.5になるまで濾過洗浄を繰り返した。水洗工程においてpHが3.5になるまで濾過洗浄を繰り返したこと以外はサンプル1と同じ構成とした。
【0048】
<サンプル4>
水洗工程においてpHが3.7になるまで濾過洗浄を繰り返した。水洗工程においてpHが3.7になるまで濾過洗浄を繰り返したこと以外はサンプル1と同じ構成とした。
【0049】
<サンプル5>
水洗工程においてpHが4.0になるまで濾過洗浄を繰り返した。水洗工程においてpHが4.0になるまで濾過洗浄を繰り返したこと以外はサンプル1と同じ構成とした。
【0050】
<サンプル6>
賦活工程において水酸化カリウムの添加量を2.1当量に変更し、かつ、水洗工程においてpHが3.5になるまで濾過洗浄を繰り返した。賦活工程において水酸化カリウムの添加量を2.1当量に変更し、かつ、水洗工程においてpHが3.5になるまで濾過洗浄を繰り返したこと以外はサンプル1と同じ構成とした。」

f.「【0055】
上記正極シートを2cm^(2)のコイン状に打ち抜いて、正極を作製した。この正極(作用極)と、負極(対極)としての金属リチウムと、参照極としての金属リチウムと、セパレータと、非水電解質とを用いて三極セルを構築した。具体的には、正極の両面にセパレータを介して負極(対極)を配置し、また参照極として金属リチウムが用いられてなる構成の三極セルを作製した。
セパレータには、厚み30μmのセルロース系不織布を使用した。非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:1の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPF_(6)を約1.5mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。」

g.「【0057】
【表1】




・表1(上記g)によれば、ハイブリッドキャパシタ用活性炭の塩基性官能基量が0.23?0.46mmol/gであることが読み取れる。

上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「ハイブリッドキャパシタの電極材料として用いられる活性炭であって、塩基性官能基量が0.23?0.46mmol/gとなるように規定されている、ハイブリッドキャパシタ用活性炭。」


イ.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【発明の効果】
【0016】
本発明の活性炭は、塩基性官能基量を増加させているため、活性炭の親水性が向上し、水蒸気吸着量の増加効果を発揮できる。」

b.「【0029】
また塩基性官能基の付与によって親水性が向上するため、水との親和性が向上して良好な分散性が得られる。例えば電極材料として用いた場合、塗工性が向上したり、電解液との濡れ性が向上すると共に、酸性官能基量の低下によって耐久性にも優れた電極用活性炭として使用できる。」

c.「【0065】
(実施例1)
<賦活処理工程>
炭素質物質として紙-フェノール樹脂積層板を窒素雰囲気中700℃で2時間処理して炭化して、紙フェノール積層樹脂の炭化物を得た。得られた紙フェノール樹脂炭化物50gに、賦活剤として質量比(賦活剤の質量/炭素質物質の炭化物の質量)で2.5倍の水酸化カリウムを添加し、窒素雰囲気中800℃で2時間処理し、賦活された活性炭を得た。
【0066】
<前処理工程(水洗浄工程)>
得られた活性炭に水(60℃)を2L加えて、100℃で1時間加熱した後、ろ過を行った。ろ過後、水(60℃)を用いて、活性炭のpHが9以下になるまで洗浄と脱水を繰り返し行った。
【0067】
<無機酸洗浄工程>
前処理工程によって得られた活性炭に、水1.7Lと塩酸(濃度35質量%)0.3Lを加えて100℃で1時間加熱した後、ろ過を行った。
【0068】
<後処理工程(水洗工程)>
無機酸洗浄工程によって得られた活性炭に水(60℃)を加えてpHが3以上となるまで洗浄と脱水を繰り返し行った。
【0069】
<塩基性官能基付与工程>
得られた活性炭に、塩基性物質溶解液として0.1質量%の炭酸水素アンモニウム(NH_(4)HCO_(3))水溶液を加えて、活性炭濃度が10質量%のスラリーを調製し、10分間攪拌した後、脱水した。更にこの工程を5回繰り返し行った。
【0070】
<水洗浄工程>
塩基性官能基付与工程によって得られた活性炭に温水(60℃)を加えて、活性炭濃度が10質量%のスラリーを調製し、10分間攪拌した後、脱水して活性炭を得た。
【0071】
<粉砕工程>
水洗工程により得られた活性炭を、ディスクミル型振動ミル(川崎重工株式会社製)を用いて平均粒子径が5?15μmとなるように粉砕を行って、活性炭の粒度を調製した。
【0072】
<加熱処理工程>
得られた活性炭をマッフル炉(光洋サーモ社製)に入れ、窒素流通下(2L/min)、炉内温度800℃まで昇温し(昇温速度:10℃/分)、該温度(800℃)で2時間保持し、その後、炉内で室温まで放冷して活性炭(A)を得た。
【0073】
(実施例2)
塩基性官能基付与工程において、塩基性物質溶解液として0.5質量%の炭酸水素アンモニウム(NH_(4)HCO_(3))水溶液に変更した以外は、上記実施例1と同様にして活性炭(B)を作製した。
【0074】
(実施例3)
塩基性官能基付与工程において、塩基性物質溶解液として5.0質量%の炭酸水素アンモニウム(NH_(4)HCO_(3))水溶液に変更した以外は、上記実施例1と同様にして活性炭(C)を作製した。」

d.「【0086】
【表1】



・表1(上記d)によれば、電極用活性炭の酸性官能基の量が0.436乃至0.500meq/g、塩基性官能基の量が0.516乃至0.588meq/gであって、塩基性官能基の量/酸性官能基の量が1.03?1.35であることが読み取れる。
ここで、塩基性官能基の量及び酸性官能基の量の「meq」はミリ当量を表すものであるから、塩基性官能基の量/酸性官能基の量は当量の比と認められる。

上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。

「電解液との濡れ性が向上した電極用活性炭であって、酸性官能基の量が0.436乃至0.500meq/g、塩基性官能基の量が0.516乃至0.588meq/gであり、塩基性官能基量に対する酸性官能基量の当量比が1.03?1.35である電極用活性炭。」


ウ.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「2.高表面積活性炭の製造条件と各種物性
2.1 KOHと表面積および細孔容積との関係
図2に示したのは、400℃で30分間保持して脱水させた後、賦活温度・時間を800℃100分に固定して得られた活性炭の物性である。横軸にはKOHと石油コークスの重量比をとりBET表面積と細孔容積の変化を調べた。重量比にして4倍程度までKOHの増加とともに表面積が増し、それ以上は頭打ちの傾向が見られた。
・・・中略・・・
そして、KOH比の増加とともに比較的大きめのサイズの細孔が発達することがわかる。」(158-160頁)

b.「2.2 賦活温度と表面積の関係
KOHを炭材の5倍量用いて、賦活温度を変化させた場合の表面積の変化を図4に示した。これより400℃付近でも通常の水蒸気賦活炭なみの表面積が得られ、600?800℃の比較的広い範囲で3000m^(2)/g付近の値が得られることがわかった。
また図3と同様に累積細孔容積でみると、図5のようになり、高温になるほど、わずかながら大きめのサイズの細孔が発達することがわかる。」(160頁)

c.「2.4 高表面積の妥当性
以上からKOH薬品賦活法により、一般に表面積、細孔容積ともに極めて大きい活性炭が得られることが示された。」(161頁)

・159頁の図2から、KOH/炭材が2.5では、細孔半径が4Å以下の細孔容積が0.3mL/g程度であり、細孔半径が150Å以下の細孔容積が1.3mL/g程度であることが読み取れる。
してみると、甲第3号証には、KOH/炭材が2.5とした際に、細孔半径が1?25nmのメソ孔範囲の細孔容積は1.0mL/g程度であることが記載されているといえる。

上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第3号証には、以下の技術事項(以下、「甲第3号証に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「石油コークスを重量比で2.5倍のKOHを用いて、賦活温度・時間を800℃100分で賦活処理を行うと、細孔半径がメソ孔範囲の細孔容積が1.0mL/g程度となること。」

エ.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【請求項1】
比表面積が1800?3400m^(2)/g、全細孔容積が0.8×10^(-6)?2.0×10^(-6)m^(3)/g、平均細孔径が21?30Åであることを特徴とする活性炭。
【請求項2】
比表面積が1900?3000m^(2)/g、全細孔容積が1.0×10^(-6)?1.8×10^(-6)m^(3)/gである請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
電気二重層キャパシタ用電極材料に使用される請求項1または2に記載の活性炭。
【請求項4】
請求項3に記載の活性炭を備えた電気二重層キャパシタ用電極。」

b.「【0012】
本発明に係る活性炭は、所定範囲の比表面積、全細孔容積、および平均細孔径である従来には無かった活性炭であり、低温において大容量かつ低抵抗の電気二重層キャパシタを実現することができる。」

c.「【0018】
【数1】



d.「【0032】
電気二重層キャパシタは、一般的には、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータが配置した構造となっている。電解液を例示すれば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの有機溶剤にアミジン塩を溶解した電解液、過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液、4級アンモニウムやリチウムなどのアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液、4級ホスホニウム塩を溶解した電解液などが挙げられる。また、セパレータを例示すれば、セルロース、ガラス繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。」

e.「【0036】
製造した活性炭の比表面積、全細孔容積、および平均細孔径を表1に示す。なお、表1においては、活性炭製造における活性炭原料の粒径、水酸化カリウム(KOH)の使用量も併せて示している。また、図1に、製造した活性炭の比表面積-平均細孔径の関係を表す散布図を示す。なお、図1の散布図中の楕円囲い内の散布点は、比表面積が1800?3400m^(2)/g、全細孔容積が0.8×10^(-6)?2.0×10^(-6)m^(3)/g、平均細孔径が21?30Åである活性炭を示している。」

上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が開示されていると認められる。

「電気二重層キャパシタ用電極材料に使用される、比表面積が1800?3400m^(2)/g、全細孔容積が0.8×10^(-6)?2.0×10^(-6)m^(3)/g、平均細孔径が21?30Åである活性炭。」


オ.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【0002】
活性炭、特にアルカリ金属化合物で賦活処理された活性炭には、水酸基やカルボキシル基等の酸性官能基が存在することが知られている。これらの酸性官能基は、活性炭の反応性や濡れ性等の特性に影響を与える。例えば、活性炭が電気二重層キャパシタ用電極材料として使用される場合、活性炭に酸性官能基が存在することにより、静電容量等の電極材料としての特性が長期使用の間に低下しやすくなる。
【0003】
長期使用による静電容量の低下を緩和する活性炭の改質方法として、賦活処理された活性炭を加熱処理する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、アルカリ賦活処理された活性炭を、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で900℃?1100℃の温度で加熱処理する方法が開示され、特許文献2には、アルカリ賦活処理された活性炭を、不活性ガス雰囲気下で、昇温速度0.1℃/min?100℃/min、最高温度500℃?1000℃の温度で加熱処理する方法が開示され、特許文献3には、賦活処理された活性炭を、不活性ガス雰囲気下で700℃?1000℃の温度で加熱処理する方法が開示されている。」

b.「【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性炭の比表面積や細孔容積の低下を極力抑えつつ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減できる活性炭の改質方法を提供することにある。また、初期静電容量が高く、長期使用による静電容量の低下が低く抑えられた電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、電気二重層キャパシタを提供することにある。」

c.「【0019】
以上のように、本発明の活性炭の改質方法において用いられる活性炭は、炭素質物質を賦活処理して得られた活性炭が好ましく、炭素質物質をアルカリ賦活処理して得られた活性炭がより好ましい。また、炭素質物質をアルカリ賦活処理して、水および/または酸性液により洗浄して得られた活性炭を用いてもよい。
【0020】
本発明で用いられる活性炭の比表面積としては、500m^(2)/g以上が好ましく、1,000m^(2)/g以上がより好ましく、2,000m^(2)/g以上がさらに好ましく、また4,000m^(2)/g以下が好ましく、3,800m^(2)/g以下がより好ましく、3,500m^(2)/g以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明で用いられる活性炭の細孔容積としては、0.1mL/g以上が好ましく、0.4mL/g以上がより好ましく、1.0mL/g以上がさらに好ましく、また3.0mL/g以下が好ましく、2.5mL/g以下がより好ましく、2.0mL/g以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明で用いられる活性炭の酸性官能基の量としては、0.01meq/g以上が好ましく、0.03meq/g以上がより好ましく、0.05meq/g以上がさらに好ましく、また3.00meq/g以下が好ましく、2.50meq/g以下がより好ましく、2.00meq/g以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の活性炭の改質方法では、加熱処理は不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で行い、加熱処理の温度は500℃?2000℃の範囲にあり、加熱処理の時間は10分未満である。
【0024】
加熱処理で用いる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、還元性ガスとしては、水素ガス、水素ガスと前記不活性ガスとの混合物等が挙げられる。不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことにより、活性炭に存在する水酸基やカルボキシル基等の酸性官能基の分解や脱離が起こりやすくなる。」

d.「【0026】
本発明の活性炭の改質方法において、加熱処理の温度は、加熱処理により得られる改質活性炭の所望する性状に応じて適宜決められる。一般に活性炭は、様々な種類の酸性官能基を有している。活性炭に存在する酸性官能基は加熱処理により分解したり脱離したりするが、分解や脱離が起こる温度は酸性官能基の種類に応じて変わる。従って、加熱処理の温度は、改質活性炭が有していてもよい酸性官能基の種類の設定条件に応じて、適宜決められる。また、後述するように、酸性官能基は加熱処理により速やかに除去されるため、改質活性炭が有していてもよい酸性官能基の量は、加熱処理の時間を増減することで調整することは難しい。従って、加熱処理の温度を適宜設定して除去する酸性官能基の種類を調整することにより、改質活性炭が有する酸性官能基の量を調整することができる。
【0027】
本発明の方法により得られる改質活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料や吸着材等に用いることができるが、改質活性炭が有してもよい酸性官能基の種類や量はその用途に応じて変わる。例えば、改質活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料に適用する場合は、酸性官能基の量はできるだけ少ない方が好ましい。この場合、できるだけ多くの種類の酸性官能基を除去するために、加熱処理の温度は比較的高温に設定される。また、例えば、改質活性炭を吸着材に適用する場合は、吸着材が有する官能基の種類やその量に応じて吸着材の性能が変わるため、所望する吸着材の性能に応じて、加熱処理の温度を設定すればよい。例えば、ある程度酸性官能基を有する吸着材を得る場合には、加熱処理の温度は比較的低温に設定し、改質活性炭を得ればよい。
【0028】
加熱処理の温度は、500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、800℃以上がさらに好ましく、また2000℃以下が好ましく、1600℃以下がより好ましく、1200℃以下がさらに好ましい。加熱処理の温度が500℃以上であれば、酸性官能基の分解や脱離が起こりやすくなる。一方、加熱処理の温度を2000℃まで上げれば大部分の酸性官能基を除去することが容易となるため、加熱処理の温度の上限は2000℃とすればよい。」

e.「【0042】
加熱処理することにより得られる改質活性炭の酸性官能基の量は、所望の用途に応じて適宜設定される。加熱処理により得られる改質活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料に適用する場合は、酸性官能基の量はできるだけ少ない方が好ましく、例えば、1.0meq/g以下が好ましく、0.5meq/g以下がより好ましく、0.2meq/g以下がさらに好ましい。酸性官能基の量が1.0meq/g以下であれば、改質活性炭を電気二重層キャパシタに適用した場合、長期使用による静電容量の低下を低く抑えやすくなる。なお、改質活性炭の酸性官能基の量の下限は特に規定されない。」

f.「【0070】
【表1】



g.「【0071】
【表2】



上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第5号証には、以下の技術事項(以下、「甲第5号証に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「キャパシタの容量低下は電極材料の活性炭の酸性官能基の量によるものであり、できるだけ少なくした方がよく、炭素質物質をアルカリ賦活した活性炭を不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で加熱処理の温度を500?2000℃、加熱処理の時間を10分未満の加熱処理をすると酸性官能基の量を減らせること。」


(3)対比・判断
ア.理由1について
(ア)本件発明1(特許法第29条第1項第3号)について
本件発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

a.甲1発明の「ハイブリッドキャパシタ」は、本件発明1の「蓄電デバイス」に相当する。
また、甲1発明の「塩基性官能基量が0.23?0.46mmol/g」は、本件発明1の「塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/g」に含まれるものである。
そして、甲1発明の「活性炭」は、ハイブリッドキャパシタの電極材料として用いられるものであるから、本件発明1の「蓄電デバイスの電極に使用され、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料」に相当する。

但し、炭素素材が、本件発明1では、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g」の範囲であって、「塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点で相違する。

さらに、炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、、甲1発明では、そのような特定がされていない点で相違する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「蓄電デバイスの電極に使用され、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料。」

<相違点1>
炭素素材が、本件発明1では、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g」の範囲であって、「塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点2>
炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。

このように、本件発明1は、甲1発明と相違点1、2において相違するものであり、これらの点が周知技術であるともいえないことから、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明ではない。

なお、異議申立人は特許異議申立書において、相違点1、2に関して、甲第1号証の活性炭のサンプル1?6の製造方法は、本件発明1の炭素材料の製造方法を満足するものであり、サンプル1?6は相違点1、2の構成を有している蓋然性が高い旨を主張している。
しかしながら、甲第1号証の活性炭のサンプル1?6の製造方法と、本件発明1の炭素材料の製造方法を比較すると、甲第1号証の活性炭の製造方法では、甲第1号証の段落【0033】、【0045】に記載されるように、賦活工程の後に、得られた活性炭を純水でpHが11?12になるまで濾過洗浄を行い、その後、酸洗浄を行うのに対して、本件発明1の炭素材料の製造方法では、賦活工程と酸洗浄の間にそのような濾過洗浄は存在しない。
そして、甲第1号証の濾過洗浄は、段落【0034】に記載されるようにアルカリ成分を除去するために行うものであり、塩基性官能基の量や塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比に影響を与えるものと認められることから、甲第1号証の活性炭のサンプル1?6の製造方法が、本件発明1の炭素材料の製造方法を満足するとはえない。
したがって、甲第1号証の活性炭のサンプル1?6が相違点1、2の構成を有している蓋然性が高いとはいえず、上記異議申立人の主張を採用することはできない。

(b)本件発明2-3について
本件発明2-3は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。


イ.理由2(特許法第29条第1項第3号29条第2項)について

(a)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、

a.甲2発明の「電極用活性炭」は、電解液との濡れ性が向上したものであり、蓄電デバイスに使用される電極と認められることから、本件発明1の「蓄電デバイスの電極に使用される炭素材料」に相当する。

但し、「meq」(ミリ当量)から「mmol」への換算は、官能基が価数によって異なり、甲2発明では、酸性官能基、塩基性官能基の価数が不明であって、「meq」から「mmol」への換算を行うことができない。
したがって、本件発明1では、炭素素材の「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲であって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲2発明では、酸性官能基の量が0.436乃至0.500meq/g、塩基性官能基の量が0.516乃至0.588meq/gであって、塩基性官能基に対する酸性官能基の当量比が1.03乃至1.35の範囲内にある点で相違する。

さらに、炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点で相違する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「蓄電デバイスの電極に使用される炭素材料であって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料。」

<相違点3>
炭素素材が、本件発明1では、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲であって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲2発明では、酸性官能基の量が0.436乃至0.500meq/g、塩基性官能基の量が0.516乃至0.588meq/gであって、塩基性官能基に対する酸性官能基の当量比が1.03乃至1.35の範囲内にある点。

<相違点4>
炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。

このように、本件発明1は、甲2発明と相違点3、4において相違するものであり、これらの点が周知技術であるともいえないことから、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明ではない。

なお、異議申立人は特許異議申立書において、相違点4に関して、甲第3号証には、甲第2号証と同様の賦活処理をすることで、メソ孔に相当する細穴の細孔容積が1.0mL/g程度となることが記載されており、甲2発明のメソ孔の容積が0.3mL/g以上である蓋然性が高い旨を主張している。
しかしながら、賦活処理を行う原料が、甲第3号証では「石油コークス」であるのに対して、甲第2号証では「紙フェノール積層樹脂の炭化物」であって、異なった原料に対して同様の賦活処理を行っても、同じように細孔が形成されるとは認められないことから、甲2発明のメソ孔の容積がどの程度かは不明であって、甲2発明のメソ孔の容積が0.3mL/g以上である蓋然性が高いとはいえず、上記異議申立人の主張を採用することはできない。

(b)本件発明2-3について
本件発明2-3は、本件発明1をさらに減縮したものであって、甲第1号証には上記相違点3、4に関して記載されておらず、甲2発明、甲第1号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。


ウ.理由3(特許法第29条第2項)について
(a)本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比すると、

a.甲4発明の「電気二重層キャパシタ」は、本件発明1の「蓄電デバイス」に相当する。
そして、甲4発明の「活性炭」は、電気二重層キャパシタ用電極材料であるから、本件発明1の「蓄電デバイスの電極に使用される炭素材料」に相当する。

但し、炭素素材が、本件発明1では、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲であ」って、「塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点で相違する。

さらに、炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点で相違する。

そうすると、本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「蓄電デバイスの電極に使用される炭素材料。」

<相違点5>
炭素素材が、本件発明1では、「酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲であって、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある」のに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点6>
炭素素材が、本件発明1では、「メソ孔の容積が0.3mL/g以上」であるのに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点。

上記相違点5について検討する。
甲第5号証には、キャパシタの容量低下は電極材料の活性炭の酸性官能基の量によるものであり、できるだけ少なくした方がよく、炭素質物質をアルカリ賦活した活性炭を不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で加熱処理の温度を500?2000℃、加熱処理の時間を10分未満の加熱処理をすることで酸性官能基の量を減らせることが記載されている。
しかしながら、甲4発明において、容量低下を防止するために、甲第5号証の技術事項を適用しても、酸性官能基の量を減らすことができるが、その際に、塩基性官能基の量、及び、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比がどのようになるかは不明であって、相違点5の構成は導出されない。

したがって、本件発明1は、当業者が甲4発明、甲第5号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

なお、異議申立人は特許異議申立書において、相違点5に関して、甲第5号証には、塩基性官能基の量、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比について開示されていないが、本件発明では、塩基性官能基も酸性官能基も同じ熱処理によって同時に調整されるものであるから、加熱処理後の酸性官能基が同じであれば、該モル比も同じはずである旨を主張している。
しかしながら、甲第5号証における熱処理は段落【0023】に記載されるように、温度は500℃?2000℃の範囲にあり、加熱処理の時間は10分未満であるのに対して、本件発明では、700℃で5時間行うものであって、同じ加熱処理とはいえないことから、上記異議申立人の主張を採用することはできない。

(b)本件発明2-3について
本件発明2-3は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲4発明、甲第5号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

エ.理由4(特許法第36条第4項第1号)について
本件特許明細書の段落【0024】には「この炭素材料CMaの酸性官能基の量は、一例によれば0.10乃至0.9mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至1.0mmol/gの範囲内にある。また、この炭素材料CMaの塩基性官能基の量は、一例によれば0.1乃至0.6mmol/gの範囲内にあり、他の例によれば0.01乃至0.8mmol/gの範囲内にある。」と記載され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲内では実施可能なものであるから、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。


第4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立ての理由によっては、本件発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料。
【請求項2】
互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。
【請求項3】
リチウムイオンキャパシタである、互いから離間した一対の電極と、それら電極間に介在した非水電解液とを備え、前記一対の電極の少なくとも一方は、蓄電デバイスの電極に使用され、酸性官能基の量が0.01乃至1.0mmol/g、塩基性官能基の量が、0.01乃至0.8mmol/gの範囲である炭素材料であって、メソ孔の容積が0.3mL/g以上であり、塩基性官能基に対する酸性官能基のモル比が0.7乃至2.0の範囲内にある炭素材料を含んだ蓄電デバイス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-08 
出願番号 特願2016-140356(P2016-140356)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01G)
P 1 651・ 536- YAA (H01G)
P 1 651・ 113- YAA (H01G)
P 1 651・ 121- YAA (H01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小池 秀介  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 石坂 博明
山澤 宏
登録日 2018-03-09 
登録番号 特許第6302958号(P6302958)
権利者 株式会社キャタラー
発明の名称 蓄電デバイス及びそれに使用する炭素材料  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 堀内 美保子  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 蔵田 昌俊  
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